説明

水垢固着防止製品及びその製造方法

【課題】水垢固着防止効果に優れ、この水垢固着防止効果が長期間に亘って持続し、さらに、固着した水垢を容易に取り除くことが可能な水垢固着防止製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の水垢固着防止製品は、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下であり、膜厚が0.1μm以上かつ10μm以下の水垢固着防止コーティング膜を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水垢固着防止製品及びその製造方法に関し、特に、水垢固着防止効果の持続性に優れ、水垢が製品を構成する基体の表面に固着しても容易に取り除くことが可能な水垢固着防止製品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水垢が固着することにより生じる汚れは、キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所等、水が付着し乾燥する条件のあらゆる場所で認められる。
水垢は、水に溶解した無機成分が水の蒸発に伴って析出したものであり、特に長期的に放置された場合、これを取り除くことができなくなるほど強固に固着してしまい、この水垢を薬品や研磨材等を用いて無理に取り除こうとすると、製品の基体自体を損傷してしまうという不都合が生じる。
そこで、従来では、水垢の固着防止を目的として、製品を構成する基体の表面に親水性コーティング膜または撥水性コーティング膜を形成した水垢固着防止製品が提案されている。
【0003】
例えば、基体の表面に親水性コーティング膜を形成した水垢固着防止製品としては、リチウム含有シリカ質膜にポリアクリル酸またはポリアクリル酸モノマーを含む共重合体を含有した親水性膜を基体表面に形成することにより、親水性膜と基体表面との接着性を向上させた水垢固着防止製品が提案されている(特許文献1〜3)。
また、衛生用陶器等の施釉製品の釉薬層の表面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂を塗布し硬化させて撥水性コウティング膜とした水垢固着防止製品も提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2003−301273号公報
【特許文献2】特開2003−299606号公報
【特許文献3】特開2002−302637号公報
【特許文献4】国際公開第2001/044592号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水垢固着防止製品においては、親水性コーティング膜や撥水性コーティング膜に下記のような問題点があった。
すなわち、親水性コーティング膜では、膜の上で水が薄く広がるために、これが乾燥して水垢が析出しても、非常に目立ち難くなる。しかしながら、この水垢を長期間放置し、その間に水濡れ及び乾燥を繰り返していると、水垢の厚みが増し、やはり強固に固着して取り除くことができなくなってしまうという問題点があった。
【0005】
一方、撥水性コーティング膜では、膜が傾斜していた場合、膜の上で水が水玉となり、この水玉が傾斜面を転がり落ちてしまうために、水垢の固着を防止することができるが、膜が水平になっていた場合、膜の上に水玉が留まり、そのまま水が蒸発すると、水玉の跡が水垢となり、著しく水垢が目立った状態となって残ってしまうという問題点があった。さらに、この水垢を長期間放置し、その間に水玉の発生及び乾燥を繰り返していると、この水垢が強固に固着し、取り除くことができなくなってしまうという問題点があった。
また、撥水性コーティング膜と基体との密着性が悪く、長期間に亘って水垢固着防止効果を得ることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、水垢固着防止効果に優れるとともに、この水垢固着防止効果が長期間に亘って持続し、かつ水垢が基体の表面に固着した場合であっても、この固着した水垢を容易に取り除くことが可能な水垢固着防止製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である水垢固着防止コーティング膜を形成すれば、水垢固着防止効果に優れるとともに、この水垢固着防止効果が長期間に亘って持続し、しかも、水垢が基体の表面に固着しても容易に取り除くことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の水垢固着防止製品は、基体の表面に水垢固着防止コーティング膜を形成してなる水垢固着防止製品であって、前記水垢固着防止コーティング膜は、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下であることを特徴とする。
【0009】
前記水垢固着防止コーティング膜の厚みは0.1μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の水垢固着防止製品の製造方法は、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素の、前記酸化ジルコニウムと前記酸化ケイ素の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を400℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする。
【0011】
前記ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドと、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることが好ましい。
前記ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物と、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水垢固着防止製品によれば、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である水垢固着防止コーティング膜を形成したので、水垢固着防止効果に優れたものとすることができ、この水垢固着防止効果を長期間に亘って持続させることができる。したがって、水垢が基体の表面に固着した場合であっても、水垢を簡単な操作で容易に取り除くことができ、労力を削減するとともに、作業効率を向上させることができる。
また、固着した水垢を取り除くための強い薬品類や研磨材が不要であるから、環境への負荷を低減することができる。
【0013】
本発明の水垢固着防止製品の製造方法によれば、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である水垢固着防止コーティング膜を形成した水垢固着防止製品を、簡単かつ効率よく作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の水垢固着防止製品及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
本実施形態の水垢固着防止製品は、基体の表面に水垢固着防止コーティング膜を形成したものであり、この水垢固着防止コーティング膜は、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である。
本実施形態において「水垢の固着」とは、「水垢が製品を構成する基体の表面に付着し、この付着した水垢が固化しても基体から容易に取り除くことができない」状態のことであり、また、「水垢固着防止」とは、「固着した水垢を基体の表面から容易に取り除くことができる」ことである。
【0016】
この水垢固着防止製品としては、格別の制限はなく、ガラス、陶磁器等のセラミックスからなる製品、ステンレス鋼等の金属からなる製品等を例示することができる。中でも、水垢固着防止効果が優れている点で、便器、洗面器等の衛生陶器、浴室で用いられるタイル等のセラミックス部材、皿や鉢等の食器等、施釉(釉懸け)された製品を例示することができる。
【0017】
この水垢固着防止コーティング膜を形成する領域としては、基体の表面のうち、少なくとも水垢が付着する虞のある領域とする必要があるが、この水垢固着防止コーティング膜を基体の表面全体に洩れなく形成した構成としてももちろんかまわない。
【0018】
ここで、水垢固着防止コーティング膜の組成を、ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率を1重量%以上かつ40重量%以下とした理由は、酸化ケイ素(SiO)の重量百分率が1重量%を下回ると、優れた水垢固着防止効果が長期間に亘って持続し、水垢が基体の表面に固着した場合においても、水垢を水拭き程度の簡単な操作で容易に取り除くことができるものの、水垢固着防止コーティング膜と基体との密着性が充分ではなく、長期間使用した場合に水垢固着防止コーティング膜が剥離する虞があるからであり、一方、酸化ケイ素(SiO)の重量百分率が40重量%を越えると、水垢固着防止効果が不十分となり、また、水垢を簡単な操作で容易に取り除くことができないからである。
【0019】
この水垢固着防止コーティング膜の水垢固着防止のメカニズムは、以下の通りと考えられる。
水垢には、酸化ケイ素(SiO)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)が多く含まれている。これらのうち、カルシウム分やマグネシウム分は取り除くことが比較的容易で、水垢による汚れの成分としてはそれほど深刻なものではない。しかし、酸化ケイ素(SiO)は固着性が強く、容易に取り除くことができない。水垢に含まれる酸化ケイ素(SiO)の固着性が強いのは、基体の表面の釉薬中にも多量の酸化ケイ素(SiO)が含まれており、水垢に含まれる酸化ケイ素(SiO)が釉薬中の酸化ケイ素(SiO)と結合するためと考えられる。
【0020】
水垢中の酸化ケイ素(SiO)と釉薬中の酸化ケイ素(SiO)との結合を防止するためには、基体の表面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂の撥水層を形成し、水垢中の酸化ケイ素(SiO)が釉薬中の酸化ケイ素(SiO)と直接結合しないようにするのが効果的であるが、シリコーン樹脂やフッ素樹脂は基体との結合が弱いために、剥離が発生し易く、長期間の水垢固着防止効果を期待することができない。
そこで、本実施形態の水垢固着防止製品では、基体の表面に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂の替わりに酸化ジルコニウム(ZrO)を主成分とする水垢固着防止コーティング膜を形成した。
【0021】
この酸化ジルコニウム(ZrO)には撥水性はないが、水の沸点(100℃/1気圧)以下では水垢の成分である酸化ケイ素(SiO)と強固に化学結合することもなく、たとえ水垢が付着しても容易に取り除くことができる。
しかしながら、酸化ジルコニウム(ZrO)単体では、基体の表面との結合が弱いためにコーティング膜が剥離する等の不具合が生じることとなり、長期間に亘る水垢固着防止効果を期待することができない。
そこで、本実施形態の水垢固着防止製品では、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率を1重量%以上かつ40重量%以下とした。
【0022】
このように、酸化ジルコニウム(ZrO)及び酸化ケイ素(SiO)を含むことにより、基体と水垢固着防止コーティング膜との間の結合が強くなる一方、水垢固着防止コーティング膜と水垢中の酸化ケイ素(SiO)との結合は強くならないこととなった。
その理由は、水垢の固着は通常、室温あるいは少なくとも水の沸点(100℃)以下にて発生するものであり、このような比較的低温域では、酸化ケイ素(SiO)と酸化ジルコニウム(ZrO)との間に強い結合は生ぜず、一方、コーティング膜の焼付け温度である高温域(400℃以上)では、強い結合が生じるからと考えられる。
【0023】
この水垢固着防止コーティング膜の厚みは0.1μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。
この膜の厚みが0.1μmを下回ると、水垢固着防止が不充分となるので好ましくなく、一方、厚みが10μmを越えると、膜の耐衝撃性が低下してクラックが入り易く、また、透明性が低下して水垢固着防止製品自体の色調等の意匠性が低下するので好ましくない。
【0024】
この水垢固着防止製品は、例えば、次のような方法により製造することができる。
すなわち、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素の、前記酸化ジルコニウムと前記酸化ケイ素の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を400℃以上の温度にて熱処理する。
【0025】
この塗布液においては、上記のジルコニウムアルコキシドとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシドを例示することができる。これらジルコニウムテトラノルマルブトキシドやジルコニウムテトラプロポキシドは、適度な加水分解速度を有し、しかも、取り扱い易いので、膜質が均一なコーティング膜を形成することができる。
【0026】
また、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジルコニウムテトラノルマルブトキシドの加水分解物、ジルコニウムテトラプロポキシドの加水分解物を例示することができる。この加水分解物の加水分解率としては、特に制限はなく、0モル%超〜100モル%の範囲内のものを使用することができる。
【0027】
これらジルコニウムアルコキシドやジルコニウムアルコキシドの加水分解物は、吸湿性が高く、不安定であり、貯蔵安定性も充分でないので、取り扱う際には、非常に注意を要する。
そこで、取り扱いの容易さの点では、これらジルコニウムアルコキシドやジルコニウムアルコキシドの加水分解物をキレート化したジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物が好ましい。
【0028】
上記のジルコニウムアルコキシドのキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドと、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤(化合物)との反応生成物を例示することができる。ここで、加水分解抑制剤とは、ジルコニウムアルコキシドとキレート化合物を形成し、このキレート化合物の加水分解反応を抑制する作用を有する化合物のことである。
【0029】
また、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドと、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤(化合物)との反応生成物を例示することができる。加水分解抑制剤の定義は、上述した通りである。
【0030】
この加水分解抑制剤の、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物に対する割合は、このジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物に含まれるジルコニウム(Zr)の0.5モル倍〜4モル倍、好ましくは1モル倍〜3モル倍が好ましい。
上記の割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の安定性が不充分なものとなるからであり、一方、4モル倍を超えると、熱処理した後においても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その結果、薄膜の硬度が低下するからである。
【0031】
これらジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物を溶媒中に溶解し、さらに加水分解抑制剤を添加し、得られた溶媒中にてキレート化反応を生じさせたものであってもよい。
【0032】
上記のケイ素成分としては、熱処理により酸化ケイ素となり得るケイ素化合物であれば特に制限はないが、例えば、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの加水分解物を例示することができる。この加水分解物の加水分解率としては、特に制限はなく、0モル%超〜100モル%の範囲内のものを使用することができる。
【0033】
上記の溶媒としては、上述したジルコニウム成分及びケイ素成分を溶解または分散させることのできる溶媒であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の低級アルコールが好適である。特に、溶媒として水を用いる場合、アルコキシドの加水分解量以上の量の水を含有させると、塗布液の安定性が低下するので好ましくない。
【0034】
ここで、ジルコニウム成分としてジルコニウムアルコキシドおよび/またはジルコニウムアルコキシドの加水分解物を用いる場合、あるいは、ケイ素成分としてシリコンアルコキシドおよび/またはシリコンアルコキシドの加水分解物を用いる場合には、このジルコニウム成分またはケイ素成分の加水分解反応を制御する触媒を添加してもよい。
この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。また、この触媒の添加量は、通常、塗布液中のジルコニウム成分及びケイ素成分の合計量に対して0.01〜10重量%程度が好ましい。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞があるので好ましくない。
【0035】
この点、ジルコニウム成分としてジルコニウムアルコキシドのキレート化合物またはジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物を用い、ケイ素成分としてコロイダルシリカを用いると、加水分解反応を制御する触媒である酸を添加する必要がなく、したがって、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞がないので好ましい。
【0036】
この塗布液においては、ジルコニウム成分とケイ素成分の合計の含有率は、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)にそれぞれ換算したときの、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素の合計の含有率が1重量%以上かつ10重量%以下であることが好ましい。
合計の含有率が1重量%を下回ると、所定の膜厚のコーティング膜を形成することが困難となり、一方、合計の含有率が10重量%を超えると、所定の膜厚を超えてコーティング膜が白化したり、剥離する原因となるので好ましくない。
【0037】
次いで、上記の塗布液を、水垢固着防止製品の本体を構成する基体の表面に塗布する。塗布方法としては特に制限はなく、スプレー法、ディップ法、刷毛塗り法等が適用できる。塗布に当たっては、塗布膜の厚みを、熱処理後の膜厚が0.1μm〜10μmの範囲になるように調製することが好ましい。
【0038】
このようにして得られた塗布膜を400℃以上、好ましくは500℃以上の温度にて熱処理する。
熱処理温度が400℃を下回ると、得られたコーティング膜の膜強度が低下するので好ましくない。なお、熱処理温度が高すぎると、基体が変形する虞があるため、熱処理温度を水垢固着防止製品を構成する基体の材質に応じて調整する。熱処理時の雰囲気は特に制限されず、通常、大気雰囲気中で行う。
【0039】
このようにして得られたコーティング膜は、下記の(1)〜(4)のいずれかの組成を有している。
(1)ケイ素(Si)原子とジルコニウム(Zr)原子が酸素(O)原子を介して結合した下記式(1)
【化1】

にて表される化学結合を分子骨格中に有するケイ素−ジルコニウム酸化物により構成され、このケイ素−ジルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成した無機物質。
【0040】
(2)ジルコニウム(Zr)原子同士が酸素(O)原子を介して結合した下記式(2)
【化2】

にて表される化学結合を分子骨格中に有するジルコニウム酸化物により構成され、このジルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成し、この三次元網目構造の中にケイ素酸化物の微粒子が閉じ込められた無機物質。
【0041】
(3)ケイ素酸化物微粒子とジルコニウム酸化物微粒子が互いに分散している無機物質。
(4)上記の(1)〜(3)のいずれか1種または2種以上の無機物質が混在した状態のもの。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の水垢固着防止製品によれば、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である水垢固着防止コーティング膜を形成したので、水垢固着防止効果に優れたものとすることができ、この水垢固着防止効果を長期間に亘って持続させることができる。したがって、この基体の表面に水垢が固着しても、水拭き程度の簡単な動作で、水垢汚れを簡単に除去することができる。
また、このコーティング膜は、高屈折率材料である酸化ジルコニウム(ZrO)を主成分としたので、屈折率が大きく、深みのある反射が得られ、見た目にも美しく、意匠性も向上したものとなる。
【0043】
本実施形態の水垢固着防止製品の製造方法によれば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素の、前記酸化ジルコニウムと前記酸化ケイ素の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を400℃以上の温度にて熱処理するので、本実施形態の水垢固着防止製品を、簡単な装置で簡便に製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
ジルコニウムテトラブトキシド6重量部、アセト酢酸エチル3重量部、2−プロパノール90.9重量部を室温(25℃)下で30分混合し、ジルコニウムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させた。次いで、この溶液にテトラメトキシシラン0.1重量部を添加し、塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は2重量%であった。
【0045】
次いで、この塗布液を、施釉された衛生陶器(便器)の表面に塗布量(固形分換算)が3g/mとなるようにスプレー塗装し、大気雰囲気中、700℃にて20分間、熱処理して、衛生陶器の表面にコーティング膜を形成し、実施例1の衛生陶器を得た。
このコーティング膜の厚みは1μmであり、衛生陶器の表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
【0046】
次いで、この衛生陶器の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、評価項目及び評価方法は次のとおりである。
(1)水垢汚れの除去容易性
衛生陶器の表面に水道水を1ml滴下し、大気中、100℃にて1時間加熱して水分を蒸発させ、水垢を析出させた。次いで、水を含ませた布を用いて水垢を水拭きし、除去の容易性を評価した。
(2)耐水性
衛生陶器を、水道水を沸騰させた沸騰水中に1ヶ月間浸漬し、その後、束子で擦ってコーティング膜の状態を観察した。
【0047】
「実施例2」
ジルコニウムテトラブトキシドを2.3重量部に、アセト酢酸エチルを1.2重量部に、2−プロパノールを96.0重量部に、テトラメトキシシランを0.5重量部に変更した他は、実施例1に準じて実施例2の塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は25重量%であった。
【0048】
次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準じて実施例2の衛生陶器を得た。
このコーティング膜の厚みは1μmであり、衛生陶器の表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
次いで、この衛生陶器の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を実施例1に準じて評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
「実施例3」
ジルコニウムテトラブトキシドを2.0重量部に、アセト酢酸エチルを1.0重量部に、2−プロパノールを96.3重量部に、テトラメトキシシランを0.7重量部に変更した他は、実施例1に準じて実施例3の塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は35重量%であった。
【0050】
次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準じて実施例3の衛生陶器を得た。
このコーティング膜の厚みは1μmであり、衛生陶器の表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
次いで、この衛生陶器の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を実施例1に準じて評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
「比較例1」
ジルコニウムテトラブトキシド6重量部、2−プロパノール93重量部、60重量%の硝酸1重量部を混合して、塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準じて比較例1の衛生陶器を得た。このコーティング膜の厚みは1μmであった。
次いで、この衛生陶器の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を実施例1に準じて評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
「比較例2」
ジルコニウムテトラブトキシドを1.7重量部に、アセト酢酸エチルを0.8重量部に、2−プロパノールを96.6重量部に、テトラメトキシシランを0.9重量部に変更した他は、実施例1に準じて比較例2の塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は45重量%であった。
【0053】
次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準じて比較例2の衛生陶器を得た。このコーティング膜の厚みは1μmであった。
次いで、この衛生陶器の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を実施例1に準じて評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1によれば、実施例1〜3では、水垢汚れの除去容易性、耐水性共に良好であったのに対し、比較例1、2では、水垢汚れの除去容易性、耐水性のいずれか一方のみが良好であった。
したがって、水垢汚れの除去容易性、耐水性の双方共に良好なのは、コーティング膜中のSiOの含有率が1重量%〜40重量%の範囲であることが分かった。
【0056】
「実施例4」
ジルコニウムテトラブトキシド10重量部、アセチルアセトン5重量部、2−プロパノール84.5重量部を混合し、ジルコニウムテトラブトキシドとアセチルアセトンとのキレート化合物を生成させた。次いで、この溶液にテトラメトキシシラン0.5重量部を添加し、塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は7.2重量%であった。
【0057】
次いで、この塗布液を、施釉されたタイルの表面に塗布量(固形分換算)が1.5g/mとなるようにスプレー塗装し、大気雰囲気中、600℃にて10分間、熱処理して、タイルの表面にコーティング膜を形成し、実施例4の水垢固着防止コーティング膜付きタイルを得た。
このコーティング膜の厚みは0.5μmであり、水垢固着防止コーティング膜付きタイルの表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
【0058】
「実施例5」
ジルコニウムテトラアセチルアセトネート15重量部、30重量%のコロイダルシリカを含む2−プロパノール分散液0.5重量部、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)84.5重量部を混合し、塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は4重量%であった。
【0059】
次いで、この塗布液を、ステンレス鋼板の表面の琺瑯上に塗布量(固形分換算)が6g/mとなるようにディップ塗装し、大気雰囲気中、500℃にて30分間、熱処理して、琺瑯上にコーティング膜を形成し、実施例5の水垢固着防止コーティング膜付きステンレス鋼板を得た。
このコーティング膜の厚みは2μmであり、水垢固着防止コーティング膜付きステンレス鋼板の表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
【0060】
「実施例6」
ジルコニウムテトラブトキシド10重量部、アセチルアセトン5重量部、2−プロパノール84重量部を混合し、ジルコニウムテトラブトキシドとアセチルアセトンとのキレート化合物を生成させた。次いで、この溶液にテトラエトキシシラン1重量部を添加し、塗布液を得た。
この塗布液における、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(SiO)の、酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率は8.6重量%であった。
【0061】
次いで、この塗布液を、ガラス板の表面に塗布量(固形分換算)が1.5g/mとなるようにディップ塗装し、大気雰囲気中、1200℃にて5分間、熱処理して、このガラス板の表面にコーティング膜を形成し、実施例6の水垢固着防止コーティング膜付きガラス板を得た。
このコーティング膜の厚みは0.5μmであり、水垢固着防止コーティング膜付きガラス板の表面は、コーティング膜の形成前よりも光沢が増し、美しい表面を示した。
【0062】
次いで、実施例4〜6各々の水垢汚れの除去容易性及び耐水性を実施例1に準じて評価したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の水垢固着防止製品は、基体の表面に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である水垢固着防止コーティング膜を形成したことにより、水垢固着防止効果に優れ、また、水垢が基体の表面に固着した場合であっても、水垢の汚れを水拭き程度の簡単な動作で容易に取り除くことができるものであるから、衛生陶器、セラミックス部材、食器、洗面器等の水回り製品はもちろんのこと、これらの製品以外の水垢固着防止性が要求される各種部材や各種部品等に対しても適用可能であり、その工業的意義は極めて大きいものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に水垢固着防止コーティング膜を形成してなる水垢固着防止製品であって、
前記水垢固着防止コーティング膜は、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO)に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO)に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO)の、前記酸化ジルコニウム(ZrO)と前記酸化ケイ素(SiO)の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下であることを特徴とする水垢固着防止製品。
【請求項2】
前記水垢固着防止コーティング膜の厚みは0.1μm以上かつ10μm以下であることを特徴とする請求項1記載の水垢固着防止製品。
【請求項3】
ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO)に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO)にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素の、前記酸化ジルコニウムと前記酸化ケイ素の合計量に対する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を400℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする水垢固着防止製品の製造方法。
【請求項4】
前記ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドと、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項3記載の水垢固着防止製品の製造方法。
【請求項5】
前記ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物と、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項3記載の水垢固着防止製品の製造方法。

【公開番号】特開2008−297433(P2008−297433A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145022(P2007−145022)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】