説明

水密カバー

【課題】カーゴタンク、バラストタンクあるいは飲料水タンクのサンプリング及び目視検査、又は、液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスを簡単に行うことができる水密カバーを提供する。
【解決手段】甲板の上に突出された立ち上げ管2の管開口部に取り付けるための取付部材10と、管開口部を閉鎖するための閉鎖部材20と、閉鎖部材20を取付部材10に対して固定するための固定部材30とを備える。閉鎖部材20は、蓋21と、蓋21を開閉可能に支持するアーム22とを有し、アーム22は一端部が取付部材10に対して回動可能に配設され、他端部には固定部材30を係止するための係止部27が設けられている。固定部材30は、取付部材10に対して回動可能に配設されたヒンジボルト31と、ヒンジボルト31に配設されたナット32とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のタンクに連結された立ち上げ管を密閉する水密カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶では、カーゴタンク及びバラストタンク等に液面計又は液面警報装置等を設置してタンク内の液面を管理している。これら液面計又は液面警報装置等は、例えば、一端部が船舶のタンクに連結し、他端部が甲板の上に突出された立ち上げ管内に配設されている。立ち上げ管には、液面計又は液面警報装置等のメンテナンスを行うための管開口部が設けられており、通常時は、板状の盲フランジを管開口部に設けられた取付フランジに対して例えば8本のねじで固定することにより閉鎖している。
【0003】
また、カーゴタンク、バラストタンク又は飲料水タンクでは、例えば、タンク内液を直接サンプリングして検査したり、タンク内を目視で検査するための立ち上げ管が設けられている(特許文献1参照)。この立ち上げ管にも、サンプリング又は目視検査のための管開口部が設けられており、通常時は、板状の盲フランジで閉鎖している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−120204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メンテナンス又はサンプリング等の度に、盲フランジを外したり留めたりするのは面倒であるという問題があった。特に、近年は、海洋環境が問題となっており、バラスト水のサンプリングを行う必要性が高まっている。
【0006】
本発明は、このような問題に基づき開発されたものであり、カーゴタンク内、バラストタンク内あるいは飲料水タンク内のサンプリング及び目視検査、又は、液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスを簡単に行うことができる水密カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水密カバーは、一端部が船舶のタンクに連結し、他端部が甲板の上に突出された立ち上げ管に対して配設され、立ち上げ管の管開口部を閉鎖することにより立ち上げ管を密閉する水密カバーであって、管開口部に設けられた取付フランジに取り付けるためのカバー取付フランジ、及び、管開口部に連通するカバー開口部を有する取付部材と、カバー開口部を閉鎖する蓋、及び、この蓋をカバー開口部に対して開閉可能に支持するアームを有する閉鎖部材と、取付部材に対して回動可能に配設され、閉鎖部材を取付部材に対して固定するための固定部材とを備え、アームは一端部が取付部材に対して回動可能に配設され、他端部には固定部材を係止するための係止部が設けられ、固定部材は、取付部材に対して回動可能に配設されたヒンジボルト、及び、このヒンジボルトに配設されたナットを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水密カバーによれば、カバー開口部を閉鎖する蓋をアームにより支持し、アームの一端部を取付部材に対して回動可能に配設すると共に、他端部に係止部を設け、固定部材により固定するようにしたので、固定部材を係止部から外し、アームを回動させることにより、簡単に蓋を開けることができる。また、逆に、アームを回動させて係止部を固定部材により固定することにより、簡単に蓋を閉めることができる。よって、ワンタッチで蓋を開閉することができ、簡単に、カーゴタンク内、バラストタンク内あるいは飲料水タンク内のサンプリングあるいは目視検査、又は、液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスを行うことができる。
【0009】
また、ナットが、対向する一対の平面よりなる平側面と、この一対の平側面の対向する端部をそれぞれ結ぶように設けられた一対の曲面よりなる曲側面とを有するようにすれば、ナットの形状に合わせた専用ハンドルを用いてナットを回転させるようにすることができる。
【0010】
更に、ナットとの間に間隔を開けて外周を覆うように保護部材を設けるようにすれば、ナットをスパナなどの工具を用いて強制的に回転させて蓋が開けられることを防止することができる。よって、専用ハンドルを用いなければ蓋を開けることができず、海賊対策とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水密カバーの構成を表す図である。
【図2】図1に示した水密カバーの断面構造を表す図である。
【図3】図1に示した水密カバーをI方向から見た構成を表す図である。
【図4】図1に示した水密カバーをII方向から見た構成を表す図である。
【図5】図1に示したナットの構成を拡大して表す図である。
【図6】図1に示した水密カバーの動作を説明するための図である。
【図7】図6に続く動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る水密カバー1の構成を表すものであり、図2は断面構造を表すものであり、図3はI方向から見た構造を表すものであり、図4はII方向から見た構造を表すものである。なお、図2は、図3に示したIII−III線に沿った断面構造を表している。
【0014】
この水密カバー1は、一端部が船舶のタンクに連結し、他端部が甲板の上に突出された立ち上げ管2に対して配設され、立ち上げ管2に設けられた管開口部2Aを閉鎖することにより立ち上げ管2を密閉するものである。この水密カバー1は、立ち上げ管2に対して取り付けるための取付部材10と、管開口部2Aを閉鎖するための閉鎖部材20と、閉鎖部材20を取付部材10に対して固定するための固定部材30とを備えている。
【0015】
取付部材10は、管開口部2Aに設けられた取付フランジ2Bに取り付けるためのカバー取付フランジ11を有している。カバー取付フランジ11には、例えば、複数の貫通孔12が設けられており、カバー取付フランジ11は取付ボルト13等により取付フランジ2Bに固定される。カバー取付フランジ11の内側には、管開口部2Aに連通するカバー開口部14が設けられている。カバー開口部14の周りは、閉鎖部材20が当接する当接領域となっており、Oリングなどのシール部材15が配設されている。カバー取付フランジ11には、また、閉鎖部材20の側に、例えば、閉鎖部材20を回動可能に支持する閉鎖部材支持部16、及び、固定部材30を回動可能に支持する固定部材支持部17が配設されている。
【0016】
閉鎖部材20は、カバー開口部14を閉鎖する蓋21と、この蓋21をカバー開口部14に対して開閉可能に支持するアーム22とを有している。蓋21は、例えば平板状であり、例えば取付部材10の側の表面には、中心部から外側に向かい複数の突条部23が設けられている。蓋21の強度を向上させるためである。蓋21は、例えば、取付部材10と反対側の中心部において接合部24によりアーム22と結合されている。
【0017】
アーム22は、一方向に伸長されており、例えば、一端部に設けられたアーム回転軸25により閉鎖部材支持部16に対して回動可能に配設されている。アーム22の一端部には、例えば、突起部26が設けられており、アーム22がアーム回転軸25を中心として回動した際に、カバー取付フランジ11からアーム22の側に突出されたアーム停止部18に当接して、アーム22の回動を停止させるようになっている。アーム22の一端部と反対側の他端部には、固定部材30を係止するための係止部27が設けられている。係止部27には、先端から一端部側に向かい、固定部材30を間に挟んで係止する切込み28が設けられている。係止部27の先端は、取付部材10と反対側に向かって傾斜している。固定部材30を確実に係止するためである。また、アーム22には、例えば、厚みを薄くするための複数の凹部29が設けられている。強度を確保しつつ重さを軽くするためである。
【0018】
固定部材30は、取付部材10に対して配設されたヒンジボルト31と、このヒンジボルト31に配設されたナット32とを有している。ヒンジボルト31は、例えば、ヒンジボルト回転軸33により固定部材支持部17に対して回動可能に配設されている。ナット32は、例えば、図5に示したように、対向する一対の平行な平面よりなる平側面32Aと、この一対の平側面32Aの対向する端部をそれぞれ結ぶように設けられた一対の曲面よりなる曲側面32Bとを有していることが好ましい。このような形状とすることにより、ナット32を回転させるにはナット32の形状に合わせた専用ハンドルを必要とすることができるからである。なお、図5において、(A)は平側面32Aを正面にして見た図であり、(B)は(A)に示したIV方向から見た図である。
【0019】
また、ナット32の周りには、例えば、ナット32との間に間隔を開けてナット32の外周を覆うように保護部材34が設けられることが好ましい。ナット32をスパナなどの一般工具を用いて強制的に回転させることを防止することができ、海賊対策となるからである。保護部材34の係止部27と反対側は、ナット32の専用ハンドルを挿入することができるように開口されている。保護部材34の係止部27の側には、例えば、係止部27の側面に沿うように突出された回転防止部35が設けられていることが好ましい。
【0020】
この水密カバー1は、立ち上げ管2の管開口部2Aに対して配設して用いられる。通常時は、例えば図1に示したように、閉鎖部材20を閉めて立ち上げ管2を密閉する。また、立ち上げ管2の内に配設された液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスを行う際、又は、カーゴタンク、バラストタンク、あるいは飲料水タンクのタンク内液をサンプリングする際、又は、タンク内を目視検査等する際には、閉鎖部材20を開ける。
【0021】
図6及び図7は、水密カバー1の動作を表すものである。蓋21を開ける際には、まず、例えば図6に示したように、ナット32を専用ハンドル40を用いて回転させ、緩める。次いで、例えば図7に示したように、保護部材34を持ち上げながら、ヒンジボルト31をヒンジボルト回転軸33を中心として回転させて係止部27から倒し、アーム22をアーム回転軸25を中心として回転させて蓋21を持ち上げる。蓋21は、突起部26がアーム停止部18に当接するまで開く。
【0022】
蓋21を閉める際には、逆に、アーム22をアーム回転軸25を中心として回転させて蓋21を取付部材10に当接させて閉める。次いで、ヒンジボルト31をヒンジボルト回転軸33を中心として回転させて係止部27の切込み28に挿入し、保護部材34の回転防止部35を係止部27に当接させて係止する。続いて、専用ハンドル40を用いてナット32を回転させ、締める。すなわち、1つのナット32を緩めたり締めたりするだけで、蓋21が簡単に開閉される。
【0023】
このように、本実施の形態に係る水密カバー1によれば、カバー開口部14を閉鎖する蓋21をアーム22により支持し、アーム22の一端部を取付部材10に対して回動可能に配設すると共に、他端部に係止部27を設け、固定部材30により固定するようにしたので、固定部材30を係止部27から外し、アーム22を回動させることにより、簡単に蓋21を開けることができる。また、逆に、アーム22を回動させて係止部27を固定部材30により固定することにより、簡単に蓋21を閉めることができる。よって、ワンタッチで蓋21を開閉することができ、簡単に、カーゴタンク内、バラストタンク内あるいは飲料水タンク内のサンプリングあるいは目視検査、又は、液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスを行うことができる。
【0024】
また、ナット32が、対向する一対の平面よりなる平側面32Aと、この一対の平側面32Aの対向する端部をそれぞれ結ぶように設けられた一対の曲面よりなる曲側面32Bとを有するようにすれば、ナット32の形状に合わせた専用ハンドルを用いてナット32を回転させるようにすることができる。
【0025】
更に、ナット32との間に間隔を開けて外周を覆うように保護部材34を設けるようにすれば、ナット32をスパナなどの一般工具を用いて強制的に回転させて蓋21が開けられることを防止することができる。よって、専用ハンドルを用いなければ蓋21を開けることができず、海賊対策とすることができる。
【0026】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、立ち上げ管2の頂部に管開口部2Aが設けられている場合について図示したが、立ち上げ管2の側部に管開口部2Aが設けられていてもよく、立ち上げ管2の側部に設けられた管開口部2Aに対して水密カバー1を配設するようにしてもよい。例えば、カーゴタンク、バラストタンクあるいは飲料水タンクのサンプリング、又は、目視検査をする場合には、立ち上げ管2の頂部に水密カバー1を配設した方が作業しやすく、液面計あるいは液面警報装置等のメンテナンスをする場合には、立ち上げ管2の側部に水密カバー1を配設した方が作業しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
船舶に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…水密カバー、2…立ち上げ管、2A…管開口部、2B…取付フランジ、10…取付部材、11…カバー取付フランジ、12…貫通孔、13…取付ボルト、14…カバー開口部、15…シール部材、16…閉鎖部材支持部、17…固定部材支持部、18…アーム停止部、20…閉鎖部材、21…蓋、22…アーム、23…突条部、24…接合部、25…アーム回転軸、26…突起部、27…係止部、28…切込み、29…凹部、30…固定部材、31…ヒンジボルト、32…ナット、32A…平側面、32B…曲側面、33…ヒンジボルト回転軸、34…保護部材、35…回転防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が船舶のタンクに連結し、他端部が甲板の上に突出された立ち上げ管に対して配設され、前記立ち上げ管の管開口部を閉鎖することにより前記立ち上げ管を密閉する水密カバーであって、
前記管開口部に設けられた取付フランジに取り付けるためのカバー取付フランジ、及び、前記管開口部に連通するカバー開口部を有する取付部材と、
前記カバー開口部を閉鎖する蓋、及び、この蓋を前記カバー開口部に対して開閉可能に支持するアームを有する閉鎖部材と、
前記取付部材に対して回動可能に配設され、前記閉鎖部材を前記取付部材に対して固定するための固定部材とを備え、
前記アームは一端部が前記取付部材に対して回動可能に配設され、他端部には前記固定部材を係止するための係止部が設けられ、
前記固定部材は、前記取付部材に対して回動可能に配設されたヒンジボルト、及び、このヒンジボルトに配設されたナットを有する
ことを特徴とする水密カバー。
【請求項2】
前記ナットは、対向する一対の平面よりなる平側面と、この一対の平側面の対向する端部をそれぞれ結ぶように設けられた一対の曲面よりなる曲側面とを有することを特徴とする請求項1記載の水密カバー。
【請求項3】
前記固定部材は、前記ナットとの間に間隔を開けて外周を覆うように設けられた保護部材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水密カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157008(P2011−157008A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21396(P2010−21396)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(592001230)新倉工業株式会社 (2)