説明

水平多関節ロボット、および水平多関節ロボットのキャリブレーション方法

【課題】簡略な方法で、かつ正確にキャリブレーションを実行することができる水平多関節ロボット、および水平多関節ロボットのキャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】水平多関節ロボットは、基台と、前記基台に回動可能に連結される第1アームと、前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、前記第1アームを前記基台に対して水平方向に回動する第1駆動部と、前記第2アームを前記基台に対して水平方向に回動する第2駆動部と、を備え、前記第1アームの前記基台との連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第1アームの回動方向に第1の幅を有した第1のマークが設けられ、前記基台の前記第1アームとの連結部には、前記基台と一体成型され前記第1の幅と同じ幅の第2のマークが設けられ、前記第1アームが前記基台に対して所定の位置に回動すると、前記第1のマークと前記第2のマークとが対向するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水平多関節ロボット、および水平多関節ロボットのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、コンピューターと所定のプログラムを記憶したメモリーを有する制御装置を備えたロボットについて、ロボット定数の測定誤差およびツールオフセットの測定誤差を自動的に補正する、ロボット定数の自動補正方式が知られている。この種のロボットでは、教示点から教示点への軌跡の制御に補間機能を用いているが、補間機能が十分な機能を果たすためには、ロボット定数やツールオフセットの設定が正確であること、すなわちキャリブレーションが正確に行われている必要がある。そこで、特許文献1では、あらかじめ定められた1点にツール先端が一致するようにロボットを教示装置を介して教示し、このときの各軸の姿勢を制御装置内の記憶装置に記憶するという動作を、同一の教示点についてロボットの姿勢を変えて複数回、繰り返すとともに、定数とツールオフセットを補正するプログラムを実行して、各軸の姿勢、初期設定定数、およびツールオフセットから、自動的に定数とツールオフセットを正確な値に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−133409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、定数やツールオフセットを正確な値に補正するため、あらかじめ定められた1点にツール先端位置が一致するようにロボットを教示装置を介して教示し、このときの各軸の姿勢を制御装置内の記憶装置に記憶するという動作を、同一点についてロボットの姿勢を変えて複数回、繰り返さなければならない。かかる動作は、時間を要する上、目視でツール先端位置を教示点に一致するように保持する必要があり、キャリブレーションを行なう作業者に負担を強いるという課題もある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡略な方法で、かつ正確にキャリブレーションを実行することができる水平多関節ロボット、および水平多関節ロボットのキャリブレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る水平多関節ロボットは、基台と、前記基台に回動可能に連結される第1アームと、前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、前記第1アームを前記基台に対して水平方向に回動する第1駆動部と、前記第2アームを前記基台に対して水平方向に回動する第2駆動部と、を備え、前記第1アームの前記基台との連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第1アームの回動方向に第1の幅を有する第1のマークが設けられ、前記基台の前記第1アームとの連結部には、前記基台と一体成型され前記第1の幅を有する第2のマークが設けられ、前記第1アームが前記基台に対して所定の位置に回動すると、前記第1のマークと前記第2のマークとが対向するように配置されていることを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、第1アームの基台との連結部には第1の幅を有する第1のマークが設けられており、基台の第1アームとの連結部には第1の幅を有する第2のマークが設けられており、さらに第1アームを基台に対して所定の位置に回動すると、第1のマークと第2のマークとが対向する位置になるように配置されていることから、第1のマークと第2のマークとを合わせることにより、第1アームのキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第1のマーク、第2のマークは、それぞれ第1アーム、基台と一体整型されていることから、第1のマーク、第2のマークを精度良く形成することが可能であり、精度良く形成された第1のマークおよび第2のマークを使用することにより、第1アームの正確なキャリブレーションも可能になる。
【0008】
この発明に係る水平多関節ロボットは、基台と、前記基台に回動可能に連結される第1アームと、前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、前記第1アームを前記基台に対して水平方向に回動する第1駆動部と、前記第2アームを前記基台に対して水平方向に回動する第2駆動部と、を備え、前記第2アームの前記第1アームとの連結部には、前記第2アームと一体成型され前記第2アームの回動方向に第2の幅を有する第3のマークが設けられ、前記第1アームの前記第2アームとの連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第2の幅を有する第4のマークが設けられ、前記第2のアームが前記第1アームに対して所定の位置に回動すると、前記第3のマークと前記第4のマークが対向する位置になるように配置されていることを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、第2アームの第1アームとの連結部には第2の幅を有する第3のマークが設けられており、第1アームの第2アームとの連結部には前記第2の幅を有する第4のマークが設けられており、さらに第2アームを第1アームに対して所定の位置に回動すると、第3のマークと第4のマークとが対向する位置になるように配置されていることから、第3のマークと第4のマークとにより第2アームのキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第3のマーク、第4のマークは、それぞれ第2アーム、第1アームと一体整型されていることから、第3のマーク、第4のマークを精度良く形成することが可能であり、精度良く形成された第3のマークおよび第4のマークを使用することにより、第2アームの正確なキャリブレーションも可能になる。
【0010】
この発明に係る水平多関節ロボットは、前記第2アームの前記第1アームとの連結部には、前記第2アームと一体成型され前記第2アームの回動方向に第2の幅を有する第3のマークが設けられ、前記第1アームの前記第2アームとの連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第2の幅を有する第4のマークが設けられ、前記第2のアームが前記第1アームに対して所定の位置に回動すると、前記第3のマークと前記第4のマークが対向する位置になるように配置されていてもよい。
【0011】
この発明によれば、第2アームの第1アームとの連結部には第2の幅を有する第3のマークが設けられており、第1アームの第2アームとの連結部には第2の幅を有する第4のマークが設けられており、さらに第2アームを第1アームに対して所定の位置に回動すると、第3のマークと第4のマークとが対向する位置になるように配置されていることから、第3のマークと第4のマークとにより第2アームのキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第3のマーク、第4のマークは、それぞれ第2アーム、第1アームと一体整型されていることから、第3のマーク、第4のマークを精度良く形成することが可能であり、精度良く形成された第3のマークおよび第4のマークを使用することにより、第2アームの正確なキャリブレーションも可能になる。
【0012】
この発明に係る水平多関節ロボットのキャリブレーションの方法は、複数のアームを有し、前記複数のアームを基準点に位置決めするマークを備える水平多関節ロボットのキャリブレーション方法であって、前記マークによる位置決めを行う第1の工程と、前記第1の工程後、前記アームの回動位置を検出するエンコーダーのパルスを読みとる第2の工程と、前記第2の工程後、前記エンコーダーを多回動数の情報をリセットする第3の工程と、前記第3の工程後、前記エンコーダーのパルスを読みとる第4の工程と、前記第4の工程後、前記第2の工程における前記パルスと前記第4の工程における前記パルスとを比較する第5の工程と、前記第5の工程後、前記複数のアームの少なくとも1つを回動させる第6の工程と、を有することを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、第1の工程で、位置決めマークを用いて第1水平アーム12または第2水平アーム15を基準点に位置決めするので、簡略な方法でかつ正確に、第1水平アーム12または第2水平アーム15を基準点に位置決めすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる水平多関節ロボットの正面構造を示す正面図。
【図2】本発明の一実施の形態にかかる水平多関節ロボットの基台と第1水平アームの連結部を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態にかかる水平多関節ロボットの第1水平アームと第2水平アームの連結部を示す斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態にかかる水平多関節ロボットのキャリブレーション方法を示すフローチャート。
【図5】本発明の一実施の形態にかかる水平多関節ロボットのキャリブレーション方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる水平多関節ロボットの一実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、水平多関節ロボットであるロボット10では、床面等に設置される基台11の上端部に、鉛直方向に沿う軸心C1を中心にして、基台11に対して回動する第1アームとしての第1水平アーム12の基端部が連結されている。基台11内には、第1水平アーム12を回動させる第1駆動源としての第1モーター13と、該第1モーターの回動軸13aに連結され、その出力軸14aが第1水平アーム12に連結固定された減速機14とが設置されている。そして第1水平アーム12は、第1モーター13の駆動力が減速機14を介して伝達されることによって、基台11に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。基台11および第1水平アーム12は、鋳鉄などの金属材料で形成されており、その長さ方向及び旋回方向などに高い剛性を有している。
【0016】
基台11の第1水平アーム12との連結部には、図2に示すように、基台11と一体成型され、第1水平アーム12の回動方向に第1の幅を有する第2のマーク31が形成されている。また、第1水平アーム12の基台11との連結部には、第1水平アーム12と一体成型され第1水平アーム12の回動方向に第1の幅を有する第1のマーク30が形成されている。さらに、第1水平アーム12が基台11に対して回動して所定の位置関係あるとき、基台11に形成された第2のマーク31と第1水平アーム12に形成された第1のマーク30とは、対向するように配置されている。
【0017】
すなわち、本願発明に係る水平多関節ロボット10は、基台11に第1水平アームの回動方向に第1の幅を有する第2のマーク31を形成し、第1水平アーム12にその回動方向に第1の幅を有する第1のマーク30を形成するとともに、第1水平アーム12が基台11に対して回動して所定の位置関係あるとき、第1のマーク30と第2のマーク31とが対向するように第1のマーク30と第2のマーク31とが配置されている。この結果、第1水平アーム12を回動させ、第1のマーク30と第2のマーク31を合わせるという簡単な方法により、第1水平アーム12のキャリブレーションが可能になるという効果を奏する。
【0018】
特に、第1のマーク30と第2のマーク31は、どちらも第1の幅を有する。この結果、第1のマーク30の一端と第2のマーク31の一端とで位置合わせを行うとともに、第1のマーク30の他端(もう一方の端)と第2のマーク31の他端(もう一方の端)とでも位置合わせを行うことが可能である。2ヶ所で同時に位置合わせを行うことができるので、1ヶ所のみで位置合わせを行う場合と比して、正確な位置合わせが可能となる。さらに、第1水平アーム12が基台11に対して回動して所定の位置関係あるとき、第1のマーク30と第2のマーク31とが対向するように第1のマーク30と第2のマーク31が配置されている。位置合わせの際には、第1のマーク30と第2のマーク31とが対向しているので、位置合わせが容易であるとともに、正確な位置合わせが可能になる。
【0019】
さらに、第1のマーク30および第2のマーク31は、第1水平アームまたは基台11と一体成型によって形成されている。第1のマーク30および第2のマーク31の形成を、基台または第1水平アームと一体で成型することにより、高精度にマークを形成することが可能となり、ひいては正確な位置合わせが可能になる。
【0020】
図2では、第1のマーク30および第2のマーク31として、マーク部が窪んだ凹状形状のものを例示しているが、マーク部の形状はかかる形状に限定されるものではない。第1のマーク30および第2のマーク31の形状として、マーク部が隆起した凸状形状、窪んだ凹状形状、切欠き形状等、種々の形状が考えられ、第1水平アームの回動方向に第1の幅を有し、かつ基台11または第1水平アーム12と一体成型で形成する限り、その形状は限定されない。
【0021】
第1水平アーム12の先端部には、鉛直方向に沿う軸心C2を中心にして第1水平アーム12に対して回動する第2アームとしての第2水平アーム15が有するアーム本体15aの基端部が連結されている。第2水平アーム15内には、第2水平アーム15を回動させる第2駆動源としての第2モーター16と、該第2モーター16の回動軸16aに連結され、その出力軸17aが第1水平アーム12に連結固定された減速機17とが設置されている。そして第2水平アーム15は、第2モーター16の駆動力が減速機17を介して伝達されることによって、軸心C2を中心にして第1水平アーム12に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。第2水平アーム15は、鋳鉄などの金属材料で形成されており、その長さ方向及び旋回方向などに高い剛性を有している。
【0022】
第1水平アーム12の第2水平アーム15との連結部には、図3に示すように、第1水平アーム12と一体成型され、第2水平アーム15の回動方向に第2の幅を有する第4のマーク34が形成されている。また、第2水平アーム15の第1水平アーム12との連結部には、第2水平アーム15と一体成型され第2水平アーム15の回動方向に第2の幅を有する第3のマーク32が形成されている。さらに、第2水平アーム15が第1水平アーム12に対して回動して所定の位置関係あるとき、第1水平アーム12に形成された第4のマーク34と第1水平アーム12に形成された第3のマーク32とは、対向するように配置されている。
【0023】
すなわち、本願発明に係る水平多関節ロボット10は、第1水平アーム12に第2水平アーム15の回動方向に第2の幅を有する第4のマーク34を、第2水平アーム15にその回動方向に第2の幅を有する第3のマーク32を、それぞれ形成するとともに、第2水平アーム15が第1水平アーム12に対して回動して所定の位置関係あるとき、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向するように第3のマーク32と第4のマーク34とが配置されている。この結果、第2水平アーム15を回動させ、第3のマーク32と第4のマーク34を合わせるという簡単な方法により、水平多関節ロボット10のキャリブレーションが可能になるという効果を奏する。
【0024】
第3のマーク32と第4のマーク34は、どちらも第2の幅を有する。この結果、第3のマーク32の一端と第4のマーク34の一端とで位置合わせを行うとともに、第3のマーク32の他端(もう一方の端)と第4のマーク34の他端(もう一方の端)とでも位置合わせを行うことが可能である。2ヶ所で同時に位置合わせを行うことができるので、1ヶ所のみで位置合わせを行う場合と比して、正確な位置合わせが可能となる。さらに、第2水平アーム15が第1水平アーム12に対して回動して所定の位置関係あるとき、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向するように第3のマーク32と第4のマーク34が配置されている。位置合わせの際には、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向しているので、位置合わせが容易であるとともに、正確な位置合わせが可能になる。
【0025】
さらに、第3のマーク32および第4のマーク34は、第2水平アーム15または第1水平アームと一体成型によって形成されている。第3のマーク32および第4のマーク34の形成を、第2水平アーム15または第1水平アーム12と一体で成型することにより、高精度にマークを形成することが可能となり、ひいては正確な位置合わせが可能になる。
【0026】
図3では、第3のマーク32としてマーク部が隆起した凸状形状のものを、第4のマーク34としてマーク部が切り欠かれた切欠き形状のものをそれぞれ例示したが、マーク部の形状はかかる形状に限定されるものではない。第3のマーク32および第4のマーク34の形状として、マーク部が隆起した凸状形状、くぼんだ凹状形状、切欠き形状等、種々の形状が考えられ、第2水平アームの回動方向に第2の幅を有し、かつ第1水平アーム12または第2水平アーム15と一体成型で形成する限り、その形状は限定されない。
【0027】
第2水平アーム15は、その基端部から先端部にかけてアーム本体15aの上側を第2モーター16などを含めて覆うアームカバー18を有している。アームカバー18は、例えば樹脂材料で形成され、第2モーター16などの装置を保護する一方、それらの装置から発生する粉塵が周辺に飛散することを抑制する。本実施形態の第2水平アーム15は、アーム本体15aとアームカバー18とによって構成されている。
【0028】
第2水平アーム15の先端部には、アーム本体15aとアームカバー18とを貫通し、第2水平アーム15に対して変位する変位部材としての上下回動軸19が設けられている。上下回動軸19は、円柱状の軸体であって、その周表面には図示しないボールねじ溝とスプライン溝とがそれぞれ形成されている。図2に示されるように、上下回動軸19は、そのスプライン溝が第2水平アーム15の先端部に配置されたスプラインナット19Sの中心に嵌め合わされるように挿通され、そのボールねじ溝がこれも第2水平アーム15の先端部に配置されたボールねじナット19Bの中心に螺合されるように挿通されている。これにより上下回動軸19は、第2水平アーム15に対して回動可能に、かつ、上下方向に移動可能に支持されている。
【0029】
第2水平アーム15内には、第3駆動源としての図示しない回動モーターが設置されている。上記回動モーターは、その駆動力がベルト21を介してスプラインナット19Sに伝達される。すなわち上下回動軸19は、上記回動モーターによってスプラインナット19Sが正逆回動されることによって、鉛直方向に沿う自らの軸心C3を中心にして正逆回動される。
【0030】
第2水平アーム15内には、第3駆動源としての図示しない昇降モーターが設置されている。昇降モーターは、その駆動力が図示しないベルトを介してボールねじナット19Bに伝達される。すなわち上下回動軸19は、上記昇降モーターによってボールねじナット19Bが正逆回動されることによって、鉛直方向に昇降移動する。そして、その昇降移動によってその下端部である作業部25を上下方向に昇降させる。
【0031】
上下回動軸19の作業部25には、ツール、例えば被搬送物を把持するものや被加工物を加工するもの等の取り付けが可能になっている。そして、ロボットは、作業部25に取り付けられた各ツールによって、部品を搬送したり、部品を加工したりするようになっている。
【0032】
次に、図4を用いて、本発明に係る水平多関節ロボットの第1水平アーム12のキャリブレーション方法を説明する。
まず、第1水平アーム12を回動させ、ゼロ位置に移動する(S11)。具体的には、第1水平アーム12の基台11との連結部に形成された第1のマーク30と、基台11の第1水平アーム12との連結部に形成された第2のマーク31とが一致するよう、第1水平アーム12を回動させる。
【0033】
ところで、本発明に係る水平多関節ロボット10は、第1モーター13の駆動力を、減速機14を介して第1水平アーム12に伝達する一方、第1モーター13の1回動(360度)中における回動位置をエンコーダーが記憶している。従って、第1水平アーム12をゼロ位置に復帰させる際、第1水平アームをゼロ位置に対して第1モーター13の1回動の範囲内に復帰させることができれば、第1モーター13のエンコーダーが記憶しているパルスカウントの情報を利用することにより、ゼロ位置の調整を行なうことなくロボットの使用が可能となる。例えば、減速機14の減速比が1:80の場合、第1水平アーム12を4.5度(±2.25度)の精度でゼロ位置に復帰させることができれば、第1モーター13の1回動の範囲内に収束することが可能である。かかる場合、第1モーター13のエンコーダーが記憶しているパルスカウントの情報を利用することにより、第1水平アームのゼロ位置の調整を省略することが可能となる。
【0034】
本発明に係る水平多関節ロボットのキャリブレーション方法は、第1のマーク30と第2のマーク31とを一致させることにより、第1水平アーム12をゼロ位置に復帰させたときのゼロ位置とのずれ(誤差)を、第1モーター13の1回動分の範囲内に収束させることを可能とするものである。
【0035】
このとき、第1のマーク30は第1水平アーム12の回動方向に第1の幅を有するとともに、第2のマーク31も第1水平アーム12の回動方向に第1の幅を有しているので、第1のマーク30の一端と第2のマーク31の一端とで位置合わせを行うとともに、第1のマーク30のもう一方の端と第2のマーク31のもう一方の端とでも位置合わせを行うことが好ましい。マークの両側を使って位置合わせを行うことにより、1ヶ所のみで位置合わせを行う場合と比して、正確な位置合わせが可能となる。
【0036】
次いで、第1モーター13のエンコーダーの多回動量の情報のリセットを行なう(S12)。第1モーター13のエンコーダーは、第1モーター13の1回動(360度)中における回動位置に関する情報であるパルスカウントの情報と、第1モーター13の回動数(何周回動したか)に関する情報である多回動数の情報とを有する。本ステップでリセットするのは後者の多回動量の情報である。
【0037】
引き続き、第1水平アーム12がゼロ位置にあるとき、エンコーダーのパルスがリセット前後で合致しているか比較する(S13)。なお、エンコーダーのパルスがリセット前後で一致している場合は、第1水平アーム12がゼロ位置に対して第1モーター13の1回動の範囲内に復帰していることを意味し、エンコーダーのパルスがリセット前後で一致していない場合は、第1水平アーム12がゼロ位置に対して第1モーター13の1回動の範囲外であるという意味である。
【0038】
ゼロ位置のパルスがリセット前後で一致している場合は、第1モーター13のエンコーダーが記憶しているパルスカウントの情報を利用することが可能である。第1モーター13のパルスリセット、あるいは第1水平アーム12のゼロ位置のリセットは必要ない。第1水平アーム12に関しては、第1モーター13のエンコーダーが記憶しているパルスカウントの情報を利用し、第1水平アームのキャリブレーションを終了することができる(S14)。
【0039】
本発明のキャリブレーション方法は、第1のマーク30と第2のマーク31を使用して高精度に第1水平アーム12をゼロ位置に復帰させることが可能であるので、第1水平アームをゼロ位置に復帰させたときのゼロ位置との誤差を、第1モーター13の1回動分の範囲内に収束させることが可能である。この結果、第1モーター13のエンコーダーが位置を記憶している1回動分に入るため、第1モーター13のエンコーダーのパルスリセット、および第1水平アーム12のゼロ位置の調整は必要ないということになる。
【0040】
一方、第1のマーク30および第2のマーク31を使用することなく、目視で第1水平アーム12をゼロ位置に移動する場合は、第1水平アーム12をゼロ位置に正確に復帰させることは容易ではない。ゼロ位置のパルスがリセット前と一致していない場合、すなわち、第1水平アーム12を、ゼロ位置に対し、第1モーター13の1回動分の範囲内となるように復帰させることができない場合は、第1モーター13のエンコーダーのパルスリセット、また第1水平アーム12のゼロ位置の調整が必要になる(S15)。
【0041】
本発明に係る水平多関節ロボットの第1水平アーム12のキャリブレーション方法は、第1水平アーム12の基台11との連結部に設けられた第1のマーク30と、基台11の第1水平アーム12との連結部に設けられた第2のマーク31を使用して、第1水平アーム12をゼロ位置に復帰させる、というものである。第1のマーク30と第2のマーク31は、ともに第1水平アーム12の回動方向に第1の幅を有し、さらに、第1水平アーム12が基台11に対して所定の位置に回動したとき、第1のマーク30と第2のマーク31とが対向する位置になるように配置されている。この結果、第1水平アーム12を、正確にゼロ位置に復帰させることを可能とするものである。すなわち、第1水平アーム12を、第1モーター13の1回動分以下のずれ(誤差)誤差で、第1水平アーム12のゼロ位置に復帰させることを可能とする。この結果、第1モーター13のエンコーダーのパルスリセットが不要となり、さらに煩雑な作業である第1水平アーム12のゼロ位置調整が必要ない、という効果を奏する。
【0042】
引き続き、図5を用いて、本発明に係る水平多関節ロボットの第2水平アーム15のキャリブレーション方法を説明する。なお、第2水平アーム15のキャリブレーション方法は、上述の第1水平アーム12のキャリブレーション方法と重複する部分が多いので、同じ部分は記載を省略、または簡略化して記載し、異なる点を中心に説明する。
【0043】
まず、第2水平アーム15を回動させ、ゼロ位置に移動する(S21)。具体的には、第3のマーク32と第4のマーク34とが一致するよう、第2水平アーム15を回動させる。第3のマーク32と第4のマーク34とを一致させることにより、第2水平アームをゼロ位置に復帰させたときのゼロ位置とのずれ(誤差)を、第2モーター16の1回動分の範囲内に収束させることが可能になる。
【0044】
次いで、第2モーター16のエンコーダーの多回動量の情報のリセットを行なう(S22)。
【0045】
さらに、第2水平アーム15がゼロ位置にあるとき、エンコーダーのパルスがリセット前後で一致しているか比較する(S23)。
ゼロ位置のパルスがリセット前後で一致している場合は、右腕/左腕の補正を行なう(S24)。右腕/左腕の補正とは、水平多関節ロボット10の作業部25で、同一の教示点を異なる2種類の姿勢で教示し、第1水平アーム12および第2水平アーム15の微調整を行うものである。
【0046】
一方、ゼロ位置のパルスがリセット前後で合致していない場合は、右腕/左腕の補正の前に、第2水平アーム15に対して第2モーターのエンコーダーのパルスリセット、第2水平アーム15のゼロ位置調整を行う(S25)。
【0047】
本発明に係る水平多関節ロボットの第2水平アーム15のキャリブレーション方法は、第2水平アーム15の第1水平アーム12との連結部に設けられた第3のマーク32と、第1水平アーム12の第2水平アーム15との連結部に設けられた第4のマーク34を使用して、第2水平アーム15をゼロ位置に復帰させる、というものである。第3のマーク32と第4のマーク34は、第2水平アーム15の回動方向に第2の幅を有し、さらに、第2水平アーム15が第1水平アームに対して所定の位置に回動すると、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向する位置になるように配置されている。この結果、第2水平アーム15を、正確にゼロ位置に復帰させることが可能となる。すなわち、第2水平アーム15を、第2モーター16の1回動分以下のずれ(誤差)で、第2水平アーム15のゼロ位置に復帰させることを可能とする。この結果、第2モーター16のエンコーダーのパルスリセットが不要となり、第2水平アーム15のゼロ位置の補正が必要なくなるという効果を奏する。
【0048】
一方、第3のマーク32および第4のマーク34を使用することなく、目視で第2水平アーム15をゼロ位置に移動する場合は、第2水平アーム15をゼロ位置に正確に復帰させることは容易ではない。ゼロ位置のパルスがリセット前と一致していない場合、すなわち、第2水平アーム15を、ゼロ位置に対し、第2モーター16の1回動分の範囲内となるように復帰させることができない場合は、第2モーター16のエンコーダーのパルスリセット、また第2水平アーム15のゼロ位置の調整が必要になる(S25)。
【0049】
さらに、本発明に係る第2水平アームの調整方法は、第3のマーク32、第4のマーク34を使用することにより、第2水平アーム15を正確にゼロ位置に復帰させることを可能にするが、この結果、その後に行なう右腕/左腕の補正のステップにおいて、第3のマーク32、第4のマーク34を使用せずに第2水平アーム15をゼロ位置に移動する場合に比べ、右腕/左腕の補正をやり直す回数が極めて少なくてすむという効果を奏する。第3のマーク32および第4のマーク34を使用することなく、目視で第2水平アーム15をゼロ位置に移動した場合は、第2水平アーム15が正確にゼロ位置に復帰できない場合が多い。このため、右腕/左腕の補正のステップにおいて、補正をやり直す回数が増えるという課題がある。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係る水平多関節ロボットおよび水平多関節のキャリブレーション方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0051】
(1)上記実施形態によれば、第1水平アーム12の基台11との連結部には第1の幅を有する第1のマーク30が設けられており、基台11の第1水平アーム12との連結部には第1の幅を有する第2のマーク31が設けられており、第1水平アーム12を基台11に対して所定の位置に回動すると、第1のマーク30と第2のマーク31とが対向する位置になるように配置されていることから、第1のマーク30と第2のマーク31とを合わせることにより、第1水平アーム12のキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第1のマーク30、第2のマーク31は、それぞれ基台11、第1水平アーム12と一体整型されていることから、精度良く整形することが可能であり、精度良く整形された第1のマーク30および第2のマーク31を使用することにより、第1水平アーム12の正確なキャリブレーションも可能になる。
【0052】
(2)上記実施形態によれば、第2水平アーム15の第1水平アーム12との連結部には第2の幅を有する第3のマーク32が設けられており、第1水平アーム12の第2水平アーム15との連結部には第2の幅を有する第4のマーク34が設けられており、第2水平アーム15を第1水平アーム12に対して所定の位置に回動すると、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向する位置になるように配置されていることから、第3のマーク32と第4のマーク34とにより第2水平アーム15のキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第3のマーク32、第4のマーク34は、それぞれ第1水平アーム12、第2水平アーム15と一体整型されていることから、精度良く整形することが可能であり、精度良く整形された第3のマーク32および第4のマーク34を使用することにより、第2水平アーム15の正確なキャリブレーションも可能になる。
【0053】
(3)上記実施形態によれば、第2水平アーム15の第1水平アーム12との連結部には第2の幅を有する第3のマーク32が設けられており、第1水平アーム12の第2水平アーム15との連結部には第2の幅を有する第4のマーク34が設けられており、第2水平アーム15を第1水平アーム12に対して所定の位置に回動すると、第3のマーク32と第4のマーク34とが対向する位置になるように配置されていることから、第3のマーク32と第4のマーク34とにより第2水平アーム15のキャリブレーションを簡略な方法で行なうことが可能になる。さらに、第3のマーク32、第4のマーク34は、それぞれ第1水平アーム12、第2水平アーム15と一体整型されていることから、精度良く整形することが可能であり、精度良く整形された第3のマーク32および第4のマーク34を使用することにより、第2水平アーム15の正確なキャリブレーションも可能になる。
【0054】
(4)上記実施態様によれば、第1の工程で、位置決めマークを用いて第1水平アーム12または第2水平アーム15を基準点に位置決めするので、簡略な方法でかつ正確に、第1水平アーム12または第2水平アーム15を基準点に位置決めすることが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
10…ロボット、11…基台、12…第1水平アーム、13…第1モーター、13a…回動軸、14…減速機、14a…出力軸、15…第2水平アーム、15a…アーム本体、16…第2モーター、16a…回動軸、17…減速機、17a…出力軸、18…アームカバー、19…上下回動軸、19B…ボールねじナット、19S…スプラインナット、25…作業部、30…第1のマーク、31…第2のマーク、32…第3のマーク、33…配線ダクト、34…第4のマーク、35,36,37…電気配線、40…コントローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に回動可能に連結される第1アームと、
前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、
前記第1アームを前記基台に対して水平方向に回動する第1駆動部と、
前記第2アームを前記基台に対して水平方向に回動する第2駆動部と、を備え、
前記第1アームの前記基台との連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第1アームの回動方向に第1の幅を有する第1のマークが設けられ、
前記基台の前記第1アームとの連結部には、前記基台と一体成型され前記第1の幅を有する第2のマークが設けられ、
前記第1アームが前記基台に対して所定の位置に回動すると、前記第1のマークと前記第2のマークとが対向する位置になるように配置されていることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
基台と、
前記基台に回動可能に連結される第1アームと、
前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、
前記第1アームを前記基台に対して水平方向に回動する第1駆動部と、
前記第2アームを前記基台に対して水平方向に回動する第2駆動部と、を備え、
前記第2アームの前記第1アームとの連結部には、前記第2アームと一体成型され前記第2アームの回動方向に第2の幅を有する第3のマークが設けられ、
前記第1アームの前記第2アームとの連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第2の幅を有する第4のマークが設けられ、
前記第2のアームが前記第1アームに対して所定の位置に回動すると、前記第3のマークと前記第4のマークが対向する位置になるように配置されていることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記第2アームの前記第1アームとの連結部には、前記第2アームと一体成型され前記第2アームの回動方向に第2の幅を有する第3のマークが設けられ、
前記第1アームの前記第2アームとの連結部には、前記第1アームと一体成型され前記第2の幅を有する第4のマークが設けられ、
前記第2のアームが前記第1アームに対して所定の位置に回動すると、前記第3のマークと前記第4のマークが対向する位置になるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
複数のアームを有し、前記複数のアームを基準点に位置決めするマークを備える水平多関節ロボットのキャリブレーション方法であって、
前記マークによる位置決めを行う第1の工程と、
前記第1の工程後、前記アームの回動位置を検出するエンコーダーのパルスを読みとる第2の工程と、
前記第2の工程後、前記エンコーダーを多回動数の情報をリセットする第3の工程と、
前記第3の工程後、前記エンコーダーのパルスを読みとる第4の工程と、
前記第4の工程後、前記第2の工程における前記パルスと前記第4の工程における前記パルスとを比較する第5の工程と、
前記第5の工程後、前記複数のアームの少なくとも1つを回動させる第6の工程と、を有することを特徴とする水平多関節ロボットのキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6242(P2013−6242A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140633(P2011−140633)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】