説明

水平多関節ロボット

【課題】水平多関節ロボットにおいて、コストを増加させずに、ケーブルの耐久性を高めることの可能な水平多関節ロボットを提供する。
【解決手段】ロボット10は、フレームあるいはアームカバーと一体構造を有するケーブル保持部を提供し、ケーブルが固定される端部はアームの回動中心軸と平行とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水平多関節ロボットにおけるケーブル等の保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2には、複数の水平線回するアームを有する水平多関節ロボットが記載されている。特許文献1には、アームと配線ダクトの構造および位置関係に関して記載されている。特許文献2では、外周が分割される割体で構成される配線ダクトに関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−58180号公報
【特許文献2】特開2010−142905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献には、配線ダクトの構造を好適にすることによって、ロボットの旋回運動時等においても、配線ダクトに不要な応力が加わらないようにすることが記載されている。しかし、これらの配線ダクトに収納されたケーブルの一端部が配線ダクトから露出される場合に、このケーブルの一端がどのように保持されるかは示されていない。
【0005】
ロボットの軽量化、小型化、低価格化等を目的として、ケーブルはますます細くなる傾向にある。線径が細いケーブルでは不要な応力が加わると、断線等の不具合が発生しやすい。配線ダクトに収納されたケーブルに対して、配線ダクトに保護されないケーブルの一端は特に断線しやすい。また、このケーブルの断線を低減できる保持部品を別途設けることは、逆に軽量化、小型化、低価格化にとって好ましくない。
従って、部品点数を増やすことなく、ケーブルの断線等を低減できることが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本発明の水平多関節ロボットは、基台と、前記基台に回動可能に連結される第1アームと、前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、動力源あるいは制御信号を伝達するケーブルと、前記ケーブルを案内する配線ダクトと、前記配線ダクトを保持するフレームと、前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、を備え、前記配線ダクトの一端は前記第2アームの回動中心軸と同軸に位置し、前記ケーブル保持部は前記フレームと一体構造である。
【0008】
この水平多関節ロボットによれば、配線ダクトを保持するフレームと一体構造として設置されたケーブル保持部がケーブルを保持することによって、ケーブルの断線等を低減でき、部品点数を増加させることがないのでコストを好適にできる。
【0009】
[適用例2]
この水平多関節ロボットでは、前記ケーブル保持部は前記フレームと連続した面を共有して延伸した板形状である。
この水平多関節ロボットによれば、フレームの材料が金属等の塑性加工可能な材料であれば、プレス加工等の簡便な加工方法で、上述のケーブル保持部を形成できるので、加工費用が安くなる。
【0010】
[適用例3]
この水平多関節ロボットでは、前記ケーブル保持部は屈曲部を有している。
この水平多関節ロボットによれば、屈曲部を有することによって、ケーブルを保持するのに好適な形状を形成することができる。
【0011】
[適用例4]
この水平多関節ロボットでは、前記屈曲部は第1の屈曲部と第2の屈曲部を有し、前記第1の屈曲部では、前記第2アームの回動中心軸に対して鋭角になるように折り曲げられ、前記第2の屈曲部では、前記第1の屈曲部からように折り曲げられている。
この水平多関節ロボットによれば、ケーブル保持部は第1の屈曲部と第2の屈曲部によって、前記第2アームの回動中心軸に対して平行となるので、この平行な部分に固定されるケーブルは外部からの応力を受けにくいので断線しにくい。
【0012】
[適用例5]
本発明の水平多関節ロボットでは、前記保持部の端部の一部が凹凸を有する波形状である。
この水平多関節ロボットによれば、ケーブルをケーブル保持部の端部に結束バンド等で固定する場合において、波形状の端部によって確実に保持できる。
【0013】
[適用例6]
本発明の水平多関節ロボットは、基台と、前記基台に回動可能に連結される第1アームと、前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、動力源あるいは制御信号を伝達するケーブルと、第2アームを外装するアームカバーと、前記ケーブルを案内する配線ダクトと、前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、を備え、前記配管部材の一端は前記第2アームの回動中心軸と同軸に位置し、前記ケーブル保持部は前記アームカバーと一体構造である。
【0014】
この水平多関節ロボットによれば、アームカバーと一体構造として設置されたケーブル保持部がケーブルを保持することによって、部品点数を増加させることがないのでコストを好適にすることができる。
[適用例7]
本発明の水平多関節ロボットでは、前記ケーブル保持部は前記アームカバーの壁面から延伸したフック形状である。
この水平多関節ロボットによれば、フレームの材料が樹脂、メタルインジェクション等であれば、金型による一体成型等の簡便な加工方法で、上述のケーブル保持部を形成できるので、加工費用が安くなる。
【0015】
[適用例8]
本発明の水平多関節ロボットでは、前記ケーブル保持部は屈曲部を有している。
この水平多関節ロボットによれば、屈曲部を有することによって、ケーブルを保持するのに好適な形状を形成することができる。
【0016】
[適用例9]
本発明の水平多関節ロボットでは、前記屈曲部の先端は前記第2アームの回動中心軸に対して平行になるように設置されている。
この水平多関節ロボットによれば、ケーブル保持部は第1の屈曲部と第2の屈曲部によって、前記第2アームの回動中心軸に対して平行となるので、この平行な部分に固定されるケーブルは外部からの応力を受けにくいので断線しにくい。
【0017】
[適用例10]
本発明の水平多関節ロボットは、前記保持部の端部の一部は凹凸を有する波形状の端部である。
この水平多関節ロボットによれば、ケーブルをケーブル保持部の端部に結束バンド等で固定する場合において、波形状の端部によって確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるロボットの正面構造を示す正面図。
【図2】第2水平アームの内部構造を示す斜視図であって、アームカバーを取り外した状態を示す斜視図。
【図3】本発明のフレームの形状を示す断面図。
【図4】本発明のフレームの形状を示す斜視図。
【図5】本発明のケーブル保持部と結束バンドを示す斜視図。
【図6】本発明のアームカバーの形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる水平多関節ロボットの一実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示されるように、水平多関節ロボットであるロボット10では、床面等に設置される基台11の上端部に、鉛直方向に沿う軸心C1を中心にして、基台11に対して回動する第1アームとしての第1水平アーム12の基端部が連結されている。基台11内には、第1水平アーム12を回動させる第1駆動源としての第1モーター13に連結されている。そして第1水平アーム12は、第1モーター13の駆動力が伝達されることによって、基台11に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。第1水平アーム12は、鋳鉄などの金属材料で形成されており、その長さ方向及び旋回方向などに高い剛性を有している。
【0020】
第1水平アーム12の先端部には、鉛直方向に沿う軸心C2を中心にして第1水平アーム12に対して回動する第2アームとしての第2水平アーム15が連結されている。第2水平アーム15内には、第2水平アーム15を回動させる第2駆動源としての第2モーター16と、該第2モーター16の回転軸16aに連結されている。そして第2水平アーム15は、第2モーター16の駆動力が伝達されることによって、軸心C2を中心にして第1水平アーム12に対して水平方向に回動、すなわち水平旋回する。第2水平アーム15は、鋳鉄などの金属材料で形成されており、その長さ方向及び旋回方向などに高い剛性を有している。
【0021】
第2水平アーム15は、その基端部から先端部にかけてアーム本体の上側を第2モーター16などを含めて覆うアームカバー17を有している。アームカバー17は、例えば樹脂材料で形成され、第2モーター16などの装置を保護する一方、それらの装置から発生する粉塵が周辺に飛散することを抑制する。
【実施例1】
【0022】
図2に示されるように、第2水平アーム15内には回転モーター20、第2モーター16、が設置されている。フレーム14は第2水平アーム15の底部に固定されている。また、フレーム14は配線ダクト33の一端を保持している。ケーブル36とケーブル35は配線ダクト33の内壁の通路34を通って、基台等から第2水平アーム15内へ導かれる。なお、例示したケーブルの本数は2本に限らず、ケーブルの本数は限定しない。ケーブル保持部38はフレーム14と一体構造で形成されている。
【0023】
図3には、フレーム14の断面図を示し、図4にはフレーム14の斜視図を示す。図3において、左上の図は配線ダクト33を固定する側から観察した上面図であり、左下の図は切断面XX’の断面図であり、右上の図は切断面YY’の断面図である。ケーブル保持部38はフレーム14と連続した面を共有して延伸した板状であって、第1の屈曲部18と第2の屈曲部19を備えている。第1の屈曲部18ではフレーム14が第2水平アーム15に設置された場合に第2水平アーム15の回動中心軸に対して概ね鋭角になるように予め折り曲げられている。また、第2の屈曲部19ではフレーム14が第2水平アーム15に設置された場合に第2水平アーム15の回転軸(回動中心軸)16aに対して平行になるように予め折り曲げられている。
【0024】
第1の屈曲部18と第2の屈曲部19の屈曲構造によって、ケーブル保持部38でケーブルを固定する箇所が第2水平アーム15の回転軸16aに対して平行になるように設置されるので、固定されたケーブルへの加わる外部応力が小さい。
【0025】
図3および図4に示すように、ケーブル保持部38の端部は凹凸を有する波形状であるので、ケーブルを結束バンド等で固定する場合の作業性が良い。図5に結束バンド31を用いてケーブル保持部38にケーブル35、36を固定した例を示す。ケーブル保持部38の端部が凹凸を有する波形状であるので、ケーブル35、36を安定して固定できるともに、結束バンド31が不用意にずれることがない。
【実施例2】
【0026】
ケーブル保持部の位置、構造を除いて、水平多関節ロボットの一実施の形態に関しては実施例1と同様である。
図6に断面図を示す。ケーブル保持部39はアームカバー17の壁面から延伸されたフック形状である。ケーブル35とケーブル36等は配線ダクト33の内壁に導かれ、ケーブル保持部39に到達する。ケーブル保持部39において結束バンド等で固定された後、モーターやセンサー部へ導かれる。第1屈曲部と第2屈曲部の構造は実施例1と同様である。このアームカバー17は樹脂の射出成型やメタルインジェクションで形成してもよい。
【0027】
本発明では、配線ダクトから露出したケーブルが断線することを低減できるケーブル保持部を提供し、且つコストが増えない構造を発明した。フレームあるいはアームカバーと一体構造を有するケーブル保持部を提供し、ケーブルが固定される端部はアームの回動中心軸と平行にし、端部は凹凸のある波形状とすることによって、ケーブルの断線等を低減することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…ロボット、11…基台、12…第1水平アーム、13…第1モーター、14…フレーム、15…第2水平アーム、16…第2モーター、16a…回転軸、17…アームカバー、18…第1の屈曲部、19…第2の屈曲部、20…回転モーター、31…結束バンド、33…配線ダクト、34…通路、35,36,37…ケーブル、38,39…ケーブル保持部、40…コントローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に回動可能に連結される第1アームと、
前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、
動力源あるいは制御信号を伝達するケーブルと、
前記ケーブルを案内する配線ダクトと、
前記配管部材を保持するフレームと、
前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、を備え、
前記配線ダクトの一端は前記第2アームの回動中心軸と同軸に位置し、
前記ケーブル保持部は前記フレームと一体構造であることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記ケーブル保持部は前記フレームと連続した面を共有して延伸した板形状であることを特徴とする、請求項1に記載の水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記ケーブル保持部は屈曲部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
前記屈曲部は、第1の屈曲部と第2の屈曲部を有し、
前記第1の屈曲部では、前記第2アームの回動中心軸に対して鋭角になるように折り曲げられ、
前記第2の屈曲部では、前記第1の屈曲部から前記第2アームの回動中心軸に対して平行になるように折り曲げられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の水平多関節ロボット。
【請求項5】
前記保持部の端部の一部が凹凸を有する波形状であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の水平多関節ロボット。
【請求項6】
基台と、
前記基台に回動可能に連結される第1アームと、
前記第1アームに回動可能に連結される第2アームと、
動力源あるいは制御信号を伝達するケーブルと、
第2アームを外装するアームカバーと、
前記ケーブルを案内する配線ダクトと、
前記ケーブルを保持するケーブル保持部と、を備え、
前記配線ダクトの一端は前記第2アームの回動中心軸と同軸に位置し、
前記ケーブル保持部は前記アームカバーと一体構造であることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項7】
前記ケーブル保持部は前記アームカバーの壁面から延伸したフック形状であることを特徴とする、請求項6に記載の水平多関節ロボット。
【請求項8】
前記ケーブル保持部は屈曲部を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の水平多関節ロボット。
【請求項9】
前記屈曲部の先端は、前記第2アームの回動中心軸に対して平行になるように設置されていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の水平多関節ロボット。
【請求項10】
前記保持部の端部の一部は凹凸を有する波形状の端部であることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の水平多関節ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6243(P2013−6243A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140634(P2011−140634)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】