説明

水底地層に基礎要素を設置するためのシステムおよびその方法

本発明は、液圧式ドライバー(4)と、アンビル(5)と、アンビル(5)からのエネルギーを基礎要素(2)の先端(8)へと伝達するためのアダプター(7)と、を具備してなる、水底地層(3)に、開口端部を有する筒状基礎要素、特に(単体)パイル(2)を設置するためのシステム(1)に関し、アダプター(7)は筒状基礎要素(2)の内部に嵌まり込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地層に、基礎要素、特に(単体)パイルを設置するためのシステムおよびその方法に関し、当該システムは油圧ドライバーおよびアンビルを備える。本発明はさらに、そうしたシステムにおいて使用されるアダプター、ならびに水底地層に基礎要素を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、たとえば、穿孔プラットフォームおよび風力タービンのための基礎を形成するために、海上杭打ち作業が水中で実施される。風力タービンに関しては、4メートル超の直径を備えた大きな単体パイルが海底に打ち込まれる。この打ち込みは、かなりの水中騒音の投入につながり、これは海洋動物相へ好ましくない影響を与えることがある。
【0003】
水中騒音投入を低減するために、特許文献1に記載の方法およびデバイスにおいては、打ち込まれる材は、固定式浸水スリーブによって取り囲まれる。このスリーブは、有利なことには、サンドイッチ状構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 989 358号(これは独国特許出願公開第10 2006 008095号に対応する)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、比較的コンパクトな手段によって騒音投入を低減し、そして好ましくは、IHC SあるいはSCクラス油圧式ハンマーといった既存のドライバーおよびアンビルの使用を可能とする(すなわち、これらのツールに著しい変更を課すことのない)システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明に基づくシステムは、アンビルからのエネルギーを基礎要素の先端へと伝達するためのアダプターを具備し、当該アダプターは筒状基礎要素の内部に嵌まり込む。
【0007】
したがって、打ち込みに起因するパイル内の圧力波は、パイルの先端(シュー)においてあるいはその近傍で最も大きく、そして、いったんパイルの先端が土に侵入すると、周囲の水に到達する前に土によって部分的に吸収される。アダプターの下端はパイルの先端に対応して形成でき、一方、アダプターの上端は使用されるアンビルおよびドライバーに対応して形成できる。
【0008】
基礎要素およびアダプターのアセンブリの突出領域すなわち「フットプリント」へのアダプターの影響を制限するために、アダプターは筒状下部セクションを具備してなり、この筒状下部セクションは、少なくともその底部において開口しており、かつ、アダプターが基礎要素の内部に配置されると要素と平行に延在することが好ましい。ある実施形態では、アダプターの下部セクションの断面は、形状に関して、基礎要素の断面に対応し、たとえば、アダプターの下部セクションおよび基礎要素はいずれも円筒形であり、かつ、円形断面を有する。
【0009】
好ましい実施形態では、その先端における、あるいはその近傍の基礎要素の内壁はアダプターのためのサポートを備え、当該サポートは、いわゆるドライブシューとして機能する。さらに特定の実施形態では、サポートは、基礎要素の内壁から突出するショルダー、たとえば基礎要素の内壁と一体のあるいはそれに対して溶接されたリングを具備してなる。サポートのポジションに関して、「先端の近傍」との用語は、基礎要素の長さの25%よりも小さな、好ましくは10%よりも小さなかつ/または5メートルよりも小さな、先端からの距離として規定される。
【0010】
さらなる実施形態では、それがサポートに着座する場所でのアダプターの内径は、サポートの内径とは異なっており、アセンブリの内壁に段を、好ましくは、0.5ないし2センチメートルの範囲の段を、好ましくはサポートの全周にわたって提供するようになっている。そうしたオーバーカットは、アセンブリと土との間の、打ち込み中の摩擦を低減する。
【0011】
本発明はさらに、液圧式ドライバーによって、水底地層に、開口端部を有する筒状基礎要素、特に、(単体)パイプを設置するための方法に関し、本方法は、
筒状基礎要素内に、好ましくは、その先端にあるいはその近傍において、基礎要素の内壁上のサポート上に、アダプターを配置するステップと、
アダプターの上端にアンビルを配置するステップと、
アンビルの上端に液圧式ドライバーを配置するステップと、
基礎要素の先端へとアダプターを介してアンビルからのエネルギーを伝達することによって、水底地層内に基礎要素を打ち込むステップと、を具備することを特徴とする。
【0012】
したがって、先に説明したように、打ち込みに起因するパイル内の圧力波は、周囲の水に到達する前に土によって部分的に吸収される。
【0013】
アダプターは、好ましくは、筒状下部セクションを具備してなり、この筒状下部セクションは、いったんアダプターが基礎要素の内部に配置されると、上記要素と平行に延在する。
【0014】
基礎要素自体を、騒音投入を低減するための手段として使用することができる。このために、アンビルが基礎要素内に配置されることが、かつ/または、少なくとも打ち込みの部分の間、空気によって、基礎要素の内壁からアンビルが分離させられるように、基礎要素から水が除去されることが好ましい。ある実施形態では、複数の筒状基礎要素が、同一のアダプターによって、連続的に設置される。
【0015】
完全性のために以下の従来技術を参照されたい。
【0016】
米国特許第3,824,797号明細書は、真空チューブ内に形成される液圧式ラムあるいはスピアを用いて、浸水した土地に長いパイルを打ち込むことを開示している。パイルが十分な長さおよび直径を有する場合、そしてまた、長尺なアセンブリのハンドリングを容易にするために、ハンマーチューブ(米国特許第3,824,797号明細書の図2および図3の参照数字4)が、内部カップリング(たとえば参照数字40で示されるカップリング)用いて、パイル内に配置可能である。これは、パイル(1)が底(100)に打ち込まれるとき、ハンマーの漸進的な上向きの再位置決めを可能とする。それはまた、パイルの上端よりも地盤(100)に近いポジションにおいてパイルに対するドライバーの連結を可能とし、改善された打ち込み作用をもたらす。
【0017】
欧州特許第1 482 094号明細書は、地面に後退可能なチューブを押し込むことによる基礎パイルの造成に関し、このチューブは、続いて、任意選択で補強材を備えて、硬化性材料、たとえばコンクリートで満たされる。チューブの後退によって、補強材を備えた部分的に硬化した材料は、地中に残り、そして硬化後、地中の受け層の上で支持する基礎パイルを形成する。チューブは、その下端に、交換可能なマウスピースを備えるが、このマウスピースは消滅端部フランジによって閉塞される。
【0018】
英国特許第561,765は、パイルの上端であるいは底部において内部的に動作するパイルハンマーによって打ち込まれることを意図された中空インターロックパイルに関する。パイルは、両端において中空円筒体に開口を与える連続壁として形成され、かつ、隣接するパイルのそれと横方向に相互に噛み合うための外部長手方向部材を備える。
【0019】
国際公開第2006/117380号パンフレットは、海底地層に基礎要素を設置するためのシステムに関し、これは、油圧ドライバーと、ドライバーのための液体に圧力を発生させるためのパワーコンバータとを備える。ドライバーおよびコンバータは基礎要素内に嵌り込むよう構成される。
【0020】
英国特許第2 089 407号明細書は、水中杭打ち装置に関する。特開昭60-159218号公報は「弾性素材によって形成されかつベローズの形状に形成される周囲部分がパイルの周りに配置され、パイルと周囲部分との間の空間が液体で満たされ、そして液中にはガスが混合状態で存在する方法」に関する。独国特許第1 7884 396号明細書は、テレスコープ式吸音スリーブを備えたパイルドライバーを開示している。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明について詳しく説明するが、図は本システムの好ましい実施形態を示している。図は大まかなものであり、本発明を理解するのに必要でない細部は省略されていることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】水底地層3に単体パイル2を設置するための本発明に基づくシステム1の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図は水底地層3に単体パイル2を設置するための本発明に基づくシステム1の実施形態を示している。この例では、単体パイル2は円形断面および四(4)メートルの直径を有し、かつ、設置後、風車の基礎として機能するよう意図されている。
【0024】
パイル2に加えて、システム1は、水上船舶(図示せず)の搭載パワーパックに接続された油圧ドライバー4(たとえばIHC Hydrohammer S-1800)と、アンビル5と、スリーブ6と、パイル2の先端(シュー)8へとアンビル5からのエネルギーを伝達するためのアダプター7とを備える。パイルは、その内壁から突出する環状ショルダー9を、その先端に備えており、当該ショルダーはアダプターを支持しかついわゆるドライブシューとして機能する。この例では、ショルダーはパイルのシューの一体部分である。
【0025】
アダプター7は筒状下部セクション7Aを備え、これはパイル2内に密接に嵌まり込む。概して、一方では、パイル内でのアダプターの好都合な位置決めを可能とし、かつ、他方では、アダプターとサポートとの間の十分な接触を可能とするために、アダプターの筒状セクションの外径は、パイルの内径よりも1cmないし5cm小さい範囲にあることが好ましい。
【0026】
アダプターはさらに、下部筒状セクション7Aの直径からアンビル5およびスリーブ6のそれよりも僅かに小さい直径へと収束する円錐台形の移行セクション7Bと、アンビル5を支持すると共にアダプター7にスリーブ6を搭載するための筒状上部セクション7Cとを備える。十分に強固でかつ不釣合いに長くない移行部を実現するために、移行セクション(7B)の勾配は1:5ないし1:15(半径方向の幅:軸方向の長さ)の範囲内にあることが概して好ましい。アダプター7の外壁は、騒音防止材を備え、たとえば騒音防止ビチューメンペーストが塗布される。
【0027】
パイル打ち込みの間、ドライバーの打撃エネルギーは、アダプターの上部セクションの周囲にわたってアンビルによって配分され、そしてパイルの先端(シュー)へとアダプターを介して伝達される。打撃のたびに、パイルの先端およびアンビルは土中により深く押し込まれ、パイルは土中に引き動かされる。したがって、打ち込みに起因する圧力波は、パイルの先端においてあるいはその近傍において最も強く、いったんパイルの先端が土に侵入すると、周囲の水に達する前に土によって部分的に吸収される。
【0028】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の中で、さまざまな様式で変更可能である。本発明に基づくシステムは、特に、ドライバーを収容するのに十分なほど大きな直径を有する(単体)パイルを設置するのに有利であるが、それはまた、より小さな直径を有する筒状基礎要素と共に使用可能である。原理的には、基礎要素の内径はドライバーの有効径より小さくてもよい。この場合、アダプターの下部セクションの直径はドライバーのそれよりも小さく、しかも、任意選択で、上向きに広がる移行セクションを備える。
【符号の説明】
【0029】
1 システム
2 単体パイル
3 水底地層
4 油圧ドライバー
5 アンビル
6 スリーブ
7 アダプター
7A 下部セクション
7B 移行セクション
7C 上部セクション
8 先端(シュー)
9 環状ショルダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式ドライバー(4)と、アンビル(5)と、を具備してなる、水底地層(3)に、開口端部を有する筒状基礎要素、特に(単体)パイル(2)を設置するためのシステム(1)であって、
前記アンビル(5)からのエネルギーを前記基礎要素(2)の先端(8)へと伝達するためのアダプター(7)を具備してなり、前記アダプター(7)は前記筒状基礎要素(2)の内部に嵌まり込むことを特徴とするシステム(1)。
【請求項2】
前記アダプター(7)は筒状下部セクション(7A)を具備してなり、この筒状下部セクション(7A)は、少なくともその底部において開口しており、かつ、前記アダプター(7)が前記基礎要素(2)の内部に配置されると前記要素(2)と平行に延在することを特徴とする請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記アダプター(7)の前記下部セクション(7A)の断面は、形状に関して、前記基礎要素(2)の断面に対応することを特徴とする請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
その先端(8)における、あるいはその近傍の前記基礎要素(2)の内壁は前記アダプター(7)のためのサポート(9)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記サポートは、前記基礎要素(2)の前記内壁から突出するショルダー(9)を具備してなることを特徴とする請求項4に記載のシステム(1)。
【請求項6】
それが前記サポート(9)に着座する場所での前記アダプター(7)の内径は、前記サポート(9)の内径とは異なっており、前記アセンブリ(2,7)の内壁に段を提供するようになっていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のシステム(1)において使用するのに適したアダプター(7)であって、筒状基礎要素(2)の内壁によって支持される筒状セクション(7A)を具備してなることを特徴とするアダプター(7)。
【請求項8】
前記アダプター(7)は、前記筒状セクション(7A)の寸法から、使用される前記アンビル(5)のそれに対応する寸法へと収束する移行セクション(7B)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシステム(1)あるいはアダプター(7)。
【請求項9】
前記移行セクション(7B)の勾配は、1:5ないし1:15の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のシステム(1)あるいはアダプター(7)。
【請求項10】
前記アダプター(7)の外壁の少なくとも一部は、防音材を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のシステム(1)あるいはアダプター(7)。
【請求項11】
液圧式ドライバー(4)によって、水底地層(3)に、開口端部を有する筒状基礎要素、特に、(単体)パイプ(2)を設置するための方法であって、
前記筒状基礎要素(2)内にアダプター(7)を配置するステップと、
その先端(8)においてあるいはその近傍で、前記基礎要素(2)の前記内壁に対して前記アダプター(7)を連結するステップと、
前記アダプター(7)の上端に前記アンビル(5)を配置するステップと、
前記アンビル(5)の上端に前記液圧式ドライバーを配置するステップと、
前記基礎要素(2)の前記先端(8)へと前記アダプター(7)を介して前記アンビル(5)からのエネルギーを伝達することによって、前記水底地層(3)内に前記基礎要素(2)を打ち込むステップと、を具備することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記アンビル(5)は前記基礎要素(2)内に配置されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも打ち込みの部分の間、空気によって、前記基礎要素(2)の内壁から前記アンビル(5)が分離させられるように、前記基礎要素(2)から水が除去されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アダプター(7)の前記先端は、少なくとも打ち込みの部分の間、地中に存在することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の筒状基礎要素(2)が、同一のアダプター(7)によって、連続的に設置されることを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−507551(P2013−507551A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533622(P2012−533622)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065355
【国際公開番号】WO2011/045345
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(507009331)
【Fターム(参考)】