説明

水性インク用印刷媒体及びその製造方法

【課題】
被印刷面が接着面としても機能する印刷媒体であって、鮮明な画像を形成することができ、接着性に優れ、印刷された画像の耐水性が良好となる水性インク用印刷媒体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
基材と、該基材の一面上に設けられたインク受容層とを備える水性インク用印刷媒体であって、インク受容層は、親水性を有する第一の樹脂と疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂とを含む樹脂組成物から構成されており、少なくとも基材に面していないインク受容層の面において第一の樹脂と第二の樹脂とから形成されたミクロ相分離構造を有する、水性インク用印刷媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インク用印刷媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から印刷媒体としては、紙、合成紙、樹脂フィルム等様々なものが知られており、これらの印刷媒体は、例えば、印刷媒体に対して接着剤を塗布したり、両面粘着テープを貼り付けたりすることで、様々な対象に貼付されて使用されている。
【0003】
そして近年では、接着剤の塗布等の作業を必要とせず、被印刷面が接着面としても機能するような印刷媒体が知られるようになっている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276613号公報
【特許文献2】特開平11−165457号公報
【特許文献3】特開2008−087276号公報
【特許文献4】特開2008−087324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被印刷面が接着面としても機能するような印刷媒体においては、被印刷面としての特性と接着面としての特性との双方を両立することが求められる。具体的には、被印刷面としての特性としては、印刷されたインクが滲むことなく鮮明な印刷画像を形成することが可能となるような印刷性が要求される。また、接着面としての特性としては、容易に剥離しない接着性が要求される。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の印刷媒体では、上述のような印刷性と接着性とを両立することが必ずしも容易とはいえなかった。
【0007】
さらに、特許文献1〜4に記載の印刷媒体では、水性インクを用いた場合に、印刷された画像の耐水性が劣る場合もあった。
【0008】
そこで本発明は、被印刷面が接着面としても機能する印刷媒体であって、良好な接着性と印刷性をあわせもつとともに、印刷された画像の耐水性が良好な水性インク用印刷媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の水性インク用印刷媒体は、基材と、該基材の一面上に設けられ、基材に面していない面を被印刷面として持つインク受容層とを有する。さらに、このインク受容層は、親水性を有する第一の樹脂と疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂とを含み、上記被印刷面において、上記第一の樹脂と上記第二の樹脂とから形成されたミクロ相分離構造を有する。
【0010】
また、別の態様の水性インク用印刷媒体の製造方法は、親水性を有する第一の樹脂と、疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂と、溶媒と、を含有する溶液を基材上に塗布し、基材上に塗膜を形成する第一の工程と、上記塗膜から上記溶媒を除去するとともに、上記第一の樹脂と上記第二の樹脂とをミクロ相分離させる第二の工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の水性インク用印刷媒体、または別の態様の水性インク用印刷媒体の製造方法により製造された水性インク用印刷媒体によれば、被印刷面に、第一の樹脂と第二の樹脂とから形成されたミクロ相分離構造を有するため、第一の樹脂が水性インク受容部として、第二の樹脂が接着部として、それぞれ機能し得る。また、第二の樹脂が疎水性であるため、被印刷面に耐水性が付与できる。したがって、被印刷面が接着面としても機能する印刷媒体であって、良好な接着性に優れ、印刷された画像の耐水性が良好となる水性インク用印刷媒体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例3で得られた印刷媒体のインク受容層の表面光学顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性インク用印刷媒体の好適な実施形態について以下に説明する。
【0014】
実施形態の水性インク用印刷媒体は、基材と基材上に設けられた、親水性を有する第一の樹脂と疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂とを含む樹脂組成物からなるインク受容層を有するものであり、被印刷面となるインク受容層の面において、第一の樹脂と第二の樹脂とから形成されたミクロ相分離構造を有することを特徴とする。
【0015】
被印刷面が、第一の樹脂と第二の樹脂とがミクロ相分離構造をなしており、第一の樹脂が水性インク受容部として、第二の樹脂が接着部として、それぞれ機能し得る。そのため、第一の樹脂と第二の樹脂とがミクロ相分離構造をなしている面は、被印刷面としても接着面としても機能することができる。
【0016】
また、被印刷面において、インク受容部をなす第一の樹脂と接着部をなす第二の樹脂とがミクロ相分離構造を形成しているため、鮮明な画像を印刷形成することと、接着性に優れることとを両立することができるとともに、水性インクを用いた場合でも印刷された画像の耐水性が良好となる。
【0017】
このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、被印刷面においては、第一の樹脂がなす微細なインク受容部と、第二の樹脂がなす微細な接着部とが、入り組んだ構造となっている。そして第二の樹脂が疎水性を有しているため、接着部には水性インクが浸透し難い。そのため、インク受容部に供された水性インクが被印刷面上で滲みにくく、鮮明な画像を形成することができると考えられる。また、水性インクが印刷された後も、水性インクが滲むことが防止されるため、印刷された画像が耐水性に優れたものとなると考えられる。さらに、第二の樹脂がなす微細な接着部が全面に形成されているため、被印刷面が優れた接着性を有するものとなると考えられる。
【0018】
第一の樹脂は、ポリアルキレンオキサイド樹脂を含有していてもよい。この場合には、ポリアルキレンオキサイド樹脂が水性インクの受容性に優れるとともに、接着性をも具備するため、被印刷面の印刷性及び接着性が一層優れるものとなる。
【0019】
また、第二の樹脂は、ポリエステル樹脂、疎水性ポリウレタン樹脂及びポリエステルウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有していてもよい。この場合には、上記の樹脂が疎水性及び接着性に優れるため、水性インクの滲みを一層防止することができるとともに、良好な接着力が得られる。すなわち、上記の構成によれば、被印刷面の印刷性及び接着性が一層優れるものとなる。
【0020】
さらに、上記ミクロ相分離構造は、海部及び該海部内に配されている複数の島部を有する海島構造とすることができる。
【0021】
また上記の場合に、上記海部は上記第二の樹脂から形成されており、上記島部は上記第一の樹脂から形成されているものとすることができる。この場合には、水性インクの滲みが一層防止されるため、被印刷面が印刷性に一層優れるようになるとともに、印刷された画像の耐水性が一層良好になる。
【0022】
実施形態の水性インク用印刷媒体において、上記インク受容層における上記第一の樹脂の含有量は、上記第一の樹脂及び上記第二の樹脂の合計100質量部に対して、20〜70質量部とすることができる。この場合には、さらに良好な印刷性、接着性および耐水性が発揮される。
【0023】
また、インク受容層の厚みが25〜40μmの場合には、被印刷面の印刷性及び接着性が一層良好になる。
【0024】
以下、本実施形態に係る水性インク用印刷媒体を構成するインク受容層及び基材について、それぞれ詳述する。
【0025】
インク受容層は、親水性を有する第一の樹脂と、疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂とを含む樹脂組成物から構成される。そして、少なくとも基材に面していない面であって、第一の樹脂と第二の樹脂とがミクロ相分離構造をなしている面(被印刷面)を有する。
【0026】
被印刷面では、第一の樹脂が水性インク受容部として、第二の樹脂が接着部として、それぞれ機能し得る。そのため、被印刷面は、水性インクにより画像印刷可能であるとともに接着面としても機能する。
【0027】
被印刷面は、インク受容部をなす第一の樹脂と接着部をなす第二の樹脂とがミクロ相分離構造をなしている。そのため、鮮明な画像を形成することと接着層に優れることとを両立することができるとともに、水性インクを用いた場合でも印刷された画像の耐水性が良好となる。
【0028】
被印刷面においては、第一の樹脂がなす微細なインク受容部と、第二の樹脂がなす微細な接着部とが、入り組んだ構造となっている。そして第二の樹脂が疎水性を有しているため、接着部には水性インクが浸透し難い。そのため、インク受容部に供された水性インクが被印刷面上で滲みにくく、鮮明な画像を形成することができると考えられる。また、水性インクが印刷された後も、水性インクが滲むことが防止されるため、印刷された画像が耐水性に優れたものとなると考えられる。さらに、第二の樹脂がなす微細な接着部が被印刷面の全体にわたって形成されているため、被印刷面が優れた接着性を有するものとなると考えられる。
【0029】
なお、ここで「親水性を有する」とは、水性インクを吸収し得る性質を有すること、「疎水性を有する」とは、水性インクをはじき得る性質を有することを意味する。例えば、水滴に対し十分広い樹脂面に水を滴下した場合に、ほぼ数秒以内の瞬時に水滴を吸収した場合、「親水性を有する」樹脂と判断でき、樹脂面に水を滴下した場合に、水滴をほとんど吸収せず,水滴がはじかれる場合は、「疎水性を有する」樹脂と判断できる。なお、親水性を有する樹脂とは、いわゆる「親水性樹脂」に相当し、疎水性を有する樹脂は、いわゆる「疎水性樹脂」に相当するものである。
【0030】
第一の樹脂は、親水性を有する樹脂であればよく、例えば、ポリアルキレンオキサイド樹脂、親水性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性ポリウレタン樹脂、親水性エチレンビニルアルコール等を用いることができ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
第一の樹脂は、ポリアルキレンオキサイド樹脂を含有することが好ましい。この場合には、ポリアルキレンオキサイド樹脂が水性インクの受容性に優れるとともに、接着性をも具備するため、被印刷面の印刷性及び接着性が一層優れるものとなる。
【0032】
ポリアルキレンオキサイド樹脂としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、等が挙げられる。
【0033】
第二の樹脂は、疎水性と感熱接着性を有する樹脂であればよく、例えば、ポリエステル樹脂、疎水性ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、疎水性アクリル樹脂、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンビニルアセテート等を用いることができ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
第二の樹脂は、ポリエステル樹脂、疎水性ポリウレタン樹脂及びポリエステルウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合には、上記の樹脂が疎水性及び接着性に優れるため、水性インクの滲みを一層防止することができるとともに、良好な接着力が得られる。すなわち、第二の樹脂として上記の樹脂を含有することにより、被印刷面の印刷性及び接着性が一層優れるものとなる。
【0035】
ここで、ミクロ相分離構造とは、第一の樹脂及び第二の樹脂が微視的な相分離構造を示すものである。本実施形態において、例えば、第一の樹脂及び第二の樹脂の少なくとも一方が、被印刷面において独立した相をなし、該相の平均直径が100μm以下である場合をミクロ相分離構造という。なお、相の平均直径は、例えば、表面光学顕微鏡写真、電子顕微鏡写真等で観測した任意の数、10〜100の相の直径を相加平均して求めることができる。
【0036】
ミクロ相分離構造としては、上記の独立した相の平均直径が、被印刷面に供される水性インクのドット径以下であることが好ましい。例えば、インクジェット印刷において、インクドットの平均径が30μm、あるいは20μmとなるように印刷を行った場合、上記の独立した相が、平均直径30μm以下、あるいは20μm以下の微細なサイズとなっていることが好ましい。この場合には、一層鮮明な画像を形成することができる。
【0037】
なお、上記の独立した相の直径の最小値は、特に限定はないが、0.01μm以上、あるいは0.1μm以上であってもよい。
【0038】
ミクロ相分離構造とは、例えば、海島構造、シリンダ構造、ラメラ構造、共連続体構造等が挙げられる。
【0039】
ミクロ相分離構造は、海部(以下、場合により「マトリックス相」と称する。)及び該海部内に配されている複数の島部(以下、場合により「分散相」と称する。)を有する海島構造とすることができる。この場合には、上記の効果が一層顕著に奏される。
【0040】
このような海島構造においては、直径0.01〜30μmの微細な分散相が、マトリックス相に複数分散配置されている。ここで、分散相の直径とは、分散相の外縁の2点間の距離のうち最大のものをいう。また、分散相の直径は、例えば、表面光学顕微鏡写真等で観測した任意の数、10〜100の分散相の直径を、相加平均して求めることができる。なお、本実施形態で形成されるミクロ相分離構造のように、被印刷面上に極めて均質な分散構造を形成できる場合は、観測数は少なくとも大きな誤差は生じにくい。
【0041】
分散相の直径は、被印刷面に供される水性インクのドット径(例えば、インクジェット印刷におけるインクドットの径)より十分小さいことが好ましく、例えば、0.1〜10μm、あるいは0.5〜5μmであることが好ましい。
【0042】
ミクロ相分離構造が海島構造であるとき、マトリックス相が第二の樹脂から形成されており、分散相が第一の樹脂から形成されていることが好ましい。この場合には、水性インクの滲みが一層防止されるため、被印刷面が印刷性に一層優れるようになるとともに、印刷された画像の耐水性が一層良好になる。
【0043】
被印刷面において、第一の樹脂がなすインク受容部の総面積(S)と第二の樹脂がなす接着部の総面積(S)との比(S/S)は、例えば、0.2〜4であり、あるいは0.25〜0.6である。このような面積比でインク受容部と接着部とを備えることで、印刷性、接着性及び耐水性に一層優れるようになる。
【0044】
また、インク受容層を構成する樹脂組成物中の第一の樹脂の含有量は、第一の樹脂及び第二の樹脂の合計100質量部に対して、20〜70質量部とすることが好ましく、20〜35質量部とすることがより好ましい。また、樹脂組成物中の第二の樹脂の含有量は、第一の樹脂及び第二の樹脂の合計100質量部に対して、30〜80質量部とすることが好ましく、65〜85質量部とすることがより好ましい。このような含有量であると、上記の好適な面積比が達成されやすいこと等が理由と考えられるが、上記の本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0045】
インク受容層の厚みは、例えば、25〜40μmとすることができる。このような厚みとなるように作製されたインク受容層は、被印刷面の印刷性及び接着性が一層良好になる。
【0046】
インク受容層は、光透過性を有することが好ましい。このようなインク受容層によれば、被印刷面以外の面から、被印刷面に印刷された画像を見ることができる。なお、この場合は後述する基材も併せて光透過性を有することが好ましい。
【0047】
基材としては、インク受容層を設けることが可能な面を有しているものであればよい。具体的には、例えば、紙;合成紙;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂からなる樹脂フィルム又は樹脂板;等が挙げられる。
【0048】
基材は、光透過性を有していることが好ましい。基材とインク受容層との双方が光透過性を有することで、被印刷面に印刷された画像を、インク受容層と基材とを介してみることができるようになる。
【0049】
次に、本実施形態に係る水性インク用印刷媒体の使用態様について説明する。なお、本発明に係る水性インク用印刷媒体の用途は、下記の使用態様に限定されるものではない。
【0050】
本実施形態に係る水性インク用印刷媒体は、被印刷面に水性インクにより鮮明な画像を印刷することができる。また、被印刷面が接着面としても機能するため、別途の接着処理等を施すことなく、容易に接着を行うことができる。
【0051】
本実施形態に係る水性インク用印刷媒体は、例えば、ICカード等に貼り付けられるフィルムとして好適に用いることができる。この場合には、例えば、第一に水性インク用印刷媒体の被印刷面に水性インクにより印刷を施し、第二に印刷が施された被印刷面とICカードとを対向配置して熱ラミネートする。
【0052】
このような使用形態においては、水性インク用印刷媒体が印刷性、接着性及び耐水性に優れるものであることから、鮮明な画像を有するICカードを迅速に製造することができるとともに、製造されたICカードが耐水性に優れるものとなる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る水性インク用印刷媒体は、被印刷面がミクロ相分離構造を有していることから、例えば一度ICカード等に貼り付けた後に剥がそうとすると、インク受容部が破壊されて印刷内容が判読できなくなる。したがって、ICカードの不正な再利用等を防止することができる。
【0054】
本実施形態に係る水性インク用印刷媒体に対して水性インクを印刷する方法は、特に制限されないが、インクジェット印刷が好ましい。インクジェット印刷によれば、例えば上記の使用態様において一層迅速にICカードを製造することができる。
【0055】
次に、本実施形態に係る水性インク用印刷媒体の製造方法について詳述する。なお、本発明に係る水性インク用印刷媒体は、下記の製造方法により製造されるものに限定されるものではない。
【0056】
本製造方法は、親水性を有する第一の樹脂と、疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂と、溶媒と、を含有する溶液からなる塗膜を、基材上に形成する第一の工程と、上記塗膜から溶媒を除去するとともに、第一の樹脂と第二の樹脂とをミクロ相分離させる第二の工程と、を備える。
【0057】
このような第一の工程及び第二の工程を備える製造方法によれば、第一の樹脂と第二の樹脂とがミクロ相分離構造をなす面を有するインク受容層が、基材上に容易に形成される。そのため、このような製造方法によれば、被印刷面が接着面としても機能する印刷媒体であって、鮮明な画像を形成することができ、接着性に優れ、印刷された画像の耐水性が良好となる水性インク用印刷媒体を、容易に製造することができる。また、このような溶液塗布法を用いて被印刷面に形成されたミクロ相分離構造は、第一の樹脂と第二の樹脂の成分が均質に溶解した溶液を用いて形成されるため、被印刷面内にほぼ均質なミクロ相分離構造を容易に形成できる。
【0058】
ここで、第一の工程における上記溶液では、第一の樹脂及び第二の樹脂が溶媒に溶解している。
【0059】
第一の樹脂が親水性を有する一方で、第二の樹脂は疎水性を有するものであるが、共通の良溶媒を用いれば均一に溶解させることが出来る。しかし、第二の工程において有機溶媒を除去し始めると、第一の樹脂と第二の樹脂は相分離し始めて、微細構造(例えば、海島構造における島部)をなす。
【0060】
溶媒としては、有機溶媒を用いることができる。なお、例えば室温においては、第一の樹脂に対する溶解能が低く、第二の樹脂に対する溶解能が高いものであっても加温することで用いることができる。
【0061】
上記のような有機溶媒としては、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;が挙げられる。これらは単独で又は複数を混合して用いることができる。なお、用いる溶媒は有機溶媒に限らず、水や水とアルコールの混合液等を用いることも可能である。
【0062】
第一工程における上記溶液は、第一の樹脂及び第二の樹脂を溶解させるために、適宜加熱されていてもよい。例えば、第一の樹脂がポリアルキレンオキサイド樹脂、第二の樹脂がポリエステル樹脂、有機溶媒がトルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒であるとき、上記溶液は、55〜80℃に加熱することで第一の樹脂及び第二の樹脂の双方を溶解させることができる。
【0063】
上記溶液における第一の樹脂の含有量は、上記溶液における第一の樹脂及び第二の樹脂の合計100質量部に対して、20〜70質量部とすることが好ましく、20〜35質量部とすることがより好ましい。また、上記溶液における第二の樹脂の含有量は、上記溶液における第一の樹脂及び第二の樹脂の合計100質量部に対して、30〜80質量部とすることが好ましく、65〜80質量部とすることがより好ましい。このような含有量であると、上記の好適な面積比を有する被印刷面を形成することができる。
【0064】
上記塗膜は、基板の一面上に上記溶液を塗布することにより形成することができる。塗布方法は特に制限されず、ナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、シルクスクリーンコート法、グラビュアコート法、等の公知の塗布方法を用いることができる。
【0065】
上記塗膜は、第二の工程を経て形成されるインク受容層の厚みが25〜40μmとなるように形成されることが好ましい。このような厚みとなるように上記塗膜を形成すると、得られるインク受容層の被印刷面が、印刷性及び接着性に一層優れるものとなる。このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、25μm以上の厚みにおいて第二の樹脂の接着力は効果的に発揮され、良好な接着力を確保できるとともに、40μm以下において、より均質で微細なミクロ相分離構造が形成されやすくなるためと考えられる。
【0066】
第二の工程では、上記塗膜から有機溶媒を除去する。有機溶媒を除去する方法としては、加熱により有機溶媒を揮発させて除去する方法、風乾法等が挙げられる。第二の工程において、上記塗膜中の有機溶媒は必ずしも全て除去される必要はなく、インク受容層が有機溶媒を含有していてもよい。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
親水性を有する第一の樹脂としてアクアコーク(登録商標、住友精化株式会社製、ポリアルキレンオキシド、固形分100質量%)を用い、疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂としてバイロン200(登録商標、東洋紡績株式会社製、非晶性ポリエステル、ガラス転移温度:67℃、固形分100質量%)及びバイロン630(登録商標、東洋紡績株式会社製、非晶性ポリエステル樹脂、ガラス転移温度:7℃、固形分100質量%)を用いた。
【0070】
具体的には、上記アクアコークを、トルエン及びメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(質量比50:50(トルエン:MEK))に60℃で溶解させ、固形分濃度が15質量%の溶液A1を調製した。
【0071】
また、上記バイロン200を、トルエン及びメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(質量比50:50(トルエン:MEK))に溶解させ、固形分濃度30質量%の溶液B1を調製した。
【0072】
また、上記パイロン630を、トルエン及びメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(質量比50:50(トルエン:MEK))に溶解させ、固形分濃度30質量%の溶液B2を調製した。
【0073】
そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が30質量部、バイロン200由来の固形分が35質量部、バイロン630由来の固形分が35質量部となるように、溶液A1、溶液B1及び溶液B2を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C1を得た。65℃の混合溶液C1中、第一の樹脂及び第二の樹脂はいずれも完全に溶解していた。
【0074】
次いで、混合溶液C1を、ナイフコート法により厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にキャストし、80℃のオーブン中10分間乾燥させて該PETフィルム上にインク受容層を形成することにより、印刷媒体1を得た。このとき、乾燥後に形成されるインク受容層の厚みが30μmとなるように調整した。なお、受容層の厚みの調整は、PETフィルム面とナイフ面との間隙(ギャップ)の調整により行った。
【0075】
得られた印刷媒体1を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体1のインク受容層が略均一なミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体1において、ミクロ分散構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。測定は、光学顕微鏡写真を撮影し、任意の場所における島部の直径を写真上のスケールバーを用い測定した。
【0076】
得られた印刷媒体1について、下記の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。なお、以下の実施例についても下記の評価方法に従って評価した。
【0077】
[印刷性の評価]
印刷媒体のインク受容層に対して、エプソンインクジェットプリンターPX−502Aを用いて、水性顔料インク4色印刷で、人物写真及び文字を印刷した。印刷された画像を、目視にて判断して、5段階で評価した。「E」が最も印刷された画像が不鮮明だったことを示し、「D」、「C」、「B」の順で印刷された画像の鮮明さがより良好であることを示し、「A」が最も印刷された画像が鮮明であったことを示す。
【0078】
[常温接着力の評価]
上記印刷性の評価と同様にして印刷媒体のインク受容層に画像を印刷した。次いで、印刷媒体とPET−G(非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂)カードとを、印刷媒体の被印刷面とPET−Gカードの一面とが対向するように配置し、ローラー式ヒートラミネーター(条件:120℃、1秒)で熱接着させ、測定サンプルを得た。
【0079】
得られた測定サンプルを、23℃で24時間放置した後、23℃中、引張試験機にて180°ピール強度(N/25mm)を測定した。測定条件は、引張速度200mm/minとした。測定結果を下記表に示す。なお、表中、容易に剥がれて180°ピール強度の測定ができなかった場合を「−」で示した。
【0080】
[高温接着力の評価]
常温接着力の評価と同様にして、測定サンプルを得た。得られた測定サンプルを、23℃で24時間放置した後、80℃中、引張試験機にて180°ピール強度(N/25mm)を測定した。測定条件は、引張強度200mm/minとした。測定結果を下記表に示す。なお、表中、容易に剥がれて180°ピール強度の測定ができなかった場合を「−」で示した。
【0081】
[耐水性の評価]
上記の常温接着力の評価と同様にして、測定サンプルを得た。測定サンプルを常温水(25℃)に24時間浸漬した後の外観変化を目視で確認した。なお、耐水性は、外観変化なしを「A」、接着端部膨潤を「B」、接着剤層溶出を「C」、フィルムめくれを「D」として4段階で評価した。
【0082】
(実施例2)
第一の樹脂として実施例1と同様に上記アクアコークを用い、第二の樹脂としてバイロン240(登録商標、東洋紡績株式会社製、非晶性ポリエステル、ガラス転移温度:60℃、固形分100質量%)及びバイロン670(登録商標、東洋紡績株式会社製、非晶性ポリエステル、ガラス転移温度:7℃、固形分100質量%)を用いた。
【0083】
実施例1と同様にして、上記アクアコークを含有する溶液A1を調整した。
【0084】
また、上記バイロン240を、トルエン及びMEKの混合溶媒(質量比50:50(トルエン:MEK))に溶解させ、固形分濃度が30質量%の溶液B3を調製した。
【0085】
また、上記パイロン670を、トルエン及びMEKの混合溶媒(質量比50:50(トルエン:MEK))に溶解させ、固形分濃度が30質量%の溶液B4を調製した。
【0086】
そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が30質量部、バイロン240由来の固形分が50質量部、バイロン670由来の固形分が20質量部となるように、溶液A1、溶液B3及び溶液B4を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C2を得た。65℃の混合溶液C2中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0087】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C2を用いること以外は実施例1と同様にして、印刷媒体2を得た。
【0088】
得られた印刷媒体2を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体2のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体2において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体2について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。
【0089】
(実施例3)
実施例2と同様にして調整した溶液A1、溶液B3及び溶液B4を、アクアコーク由来の固形分が30質量部、バイロン240由来の固形分が35質量部、バイロン670由来の固形分が35質量部になるように混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C3を得た。65℃の混合溶液C3中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0090】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C3を用いること以外は実施例1と同様にして、印刷媒体3を得た。
【0091】
得られた印刷媒体3を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体3のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体3において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体3について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。なお、図1に、実施例3で得られた印刷媒体のインク受容層の表面光学顕微鏡写真を示す。
【0092】
(実施例4)
第一の樹脂として実施例1と同様に上記アクアコークを用い、第二の樹脂としてバイロンUR−1400(登録商標、東洋紡績株式会社製、ポリエステルウレタン樹脂、ガラス転移温度:83℃、質量比50:50(トルエン:MEK)の溶液、固形分30質量%)及びバイロンUR−3200(登録商標、東洋紡績株式会社製、ポリエステルウレタン樹脂、ガラス転移温度:−3℃、固形分30質量%)
【0093】
実施例1と同様にして、上記アクアコークを含有する溶液A1を調整した。
【0094】
そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が30質量部、バイロンUR−1400由来の固形分が35質量部、バイロンUR−3200由来の固形分が35質量部となるように、溶液A1、バイロンUR−1400及びバイロン−3600を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C4を得た。65℃の混合溶液C4中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0095】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体4を得た。
【0096】
得られた印刷媒体4を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体4のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体4において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体4について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。
【0097】
(実施例5)
実施例1と同様にして溶液A1を調整し、実施例2と同様にして溶液B3を調整した。そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が30質量部、バイロン240由来の固形分が50質量部、バイロンUR−3200由来の固形分が20質量部となるように、溶液A1、溶液B3及びバイロンUR−3200を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C5を得た。65℃の混合溶液C5中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0098】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体5を得た。
【0099】
得られた印刷媒体5を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体5のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体5において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体5について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表1に示すとおりであった。
【0100】
(実施例6)
実施例1と同様にして溶液A1を調整し、実施例2と同様にして溶液B4を調整した。そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が35質量部、バイロン670由来の固形分が45質量部、バイロンUR−3200由来の固形分が20質量部となるように、溶液A1、溶液B4及びバイロンUR−3200を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C6を得た。65℃の混合溶液C6中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0101】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体6を得た。
【0102】
得られた印刷媒体6を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体6のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体6において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体6について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0103】
(実施例7)
実施例1と同様にして溶液A1を調製した。また、バイロンGK570(登録商標、東洋紡績株式会社製、非晶性ポリエステル、ガラス転移温度:0℃、固形分100質量%)を、トルエン及びMEKの混合溶液(質量比50:50(トルエン:MEK))に溶解させ、固形分濃度が30質量%の溶液B5を調製した。
【0104】
そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が40質量部、バイロンGK570由来の固形分が40質量部、バイロンUR−3200由来の固形分が20質量部となるように、溶液A1、溶液B5及びバイロンUR−3200を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C7を得た。65℃の混合溶液C7中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0105】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体7を得た。
【0106】
得られた印刷媒体7を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体7のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体7において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体7について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0107】
(実施例8)
実施例1と同様にして溶液A1を調整し、実施例2と同様にして溶液B3及び溶液B4を調整した。そして、ガラス容器中で、アクアコーク由来の固形分が20質量部、バイロン240由来の固形分が60質量部、バイロン670由来の固形分が20質量部となるように、溶液A1、溶液B3及び溶液B4を混合し、65℃で撹拌して、混合溶液C8を得た。65℃の混合溶液C8中、第一の樹脂及び第二の樹脂は完全に溶解した。
【0108】
次いで、混合溶液C1に替えて混合溶液C8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体8を得た。
【0109】
得られた印刷媒体8を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体8のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体8において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体8について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0110】
(実施例9)
実施例3と同様にして、混合溶液C3を調製した。そして、混合溶液C1に替えて混合溶液C3を用い、乾燥後に形成されるインク受容層の厚みが15μmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、印刷媒体9を得た。
【0111】
得られた印刷媒体9を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体9のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体9において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体9について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0112】
(実施例10)
実施例3と同様にして、混合溶液C3を調製した。そして、混合溶液C1に替えて混合溶液C3を用い、乾燥後に形成されるインク受容層の厚みが43μmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、印刷媒体10を得た。
【0113】
得られた印刷媒体10を表面光学顕微鏡で観察し、印刷媒体10のインク受容層がミクロ相分離構造を有していることを確認した。印刷媒体10において、ミクロ相分離構造は海島構造であり、島部の直径は3μmであった。また、得られた印刷媒体10について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0114】
(比較例1)
30質量部のアクアコーク、35質量部のバイロン240及び35質量部のバイロン670を混合した混合物を、溶融混練機(HAAKE社製、製品名「マイクロレオロジーコンパウンダミニラボ」))にて、200℃で7分間混合し、押し出し、基材PETと剥離処理PETの間に混連練物を配し、これをホットプレス装置を用いて160℃で1分間プレス成形しフィルム化した。
【0115】
得られた印刷媒体11を表面光学顕微鏡で観察したが、インク受容層にミクロ相分離構造は見られなかった。また、得られた印刷媒体11について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表3に示すとおりであった。
【0116】
(比較例2)
第一の樹脂を含有する溶液としてダイアロマーIJ−2101(登録商標、大日精化工業株式会社製、ポリウレタン系樹脂、固形分25質量%、溶媒:トルエン及びIPA)(Daiallomer IJ−2101,Dainichiseika Color&Chemicals Mfg.CO.,LTD.製,Polyurethane type,25wt% solid)を用いた。また、実施例2と同様にして、溶液B3及びB4を調製した。
【0117】
調製した溶液B3及びB4と、ダイアロマーIJ−2101とを、ダイアロマーIJ−2101由来の固形分が30質量部、バイロン240由来の固形分が35質量部、バイロン670由来の固形分が35質量部になるように混合し、65℃で撹拌して、混合液C13を得た。65℃の混合液C13中、第一の樹脂及び第二の樹脂は均一に分散せず不溶分が生じた。
【0118】
次いで、混合溶液C1に替えて混合液C13を用いたこと以外は実施例1と同様にして、印刷媒体13を得た。
【0119】
得られた印刷媒体13を表面光学顕微鏡で観察したが、島の直径が粗大化し、インク受容層にミクロ相分離構造は得られなかった。また、得られた印刷媒体13について、実施例1と同様の評価方法に従って印刷性、耐水性、常温接着力及び高温接着力を評価した。評価結果は、表3に示すとおりであった。
【0120】
(比較例3)
第一の樹脂を含有する溶液としてパラテコールEG−4X(登録商標、DIC武士機会社製、カチオン性水性ポリウレタン樹脂、固形分25質量%、溶媒:水)(Patelacol EG−4X,DIC Corporation製,Water born polyurethane resin cationic emulsion type,25wt% solid)を用い、第二の樹脂を含有する溶液として比較例2と同様にバイロナールMD−1200及びバイロナールMD−1480を用いた。
【0121】
具体的には、ガラス容器中で、パラテコールEG−4X由来の固形分が30質量部、バイロナールMD−1200由来の固形分が35質量部、バイロナールMD−1480由来の固形分が35質量部となるように、パラテコールEG−4X、バイロナールMD−1200及びバイロナールMD−1480を混合し、65℃で撹拌したところ、固形分がゲル状となった。そのため、比較例3では、印刷媒体を形成することができなかった。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一面上に設けられ、前記基材に面していない面を被印刷面として持つインク受容層とを有し、
前記インク受容層は、親水性を有する第一の樹脂と疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂とを含み、前記被印刷面において前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とから形成されたミクロ相分離構造を有する、水性インク用印刷媒体。
【請求項2】
前記第一の樹脂は、ポリアルキレンオキサイド樹脂を含有する、請求項1に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項3】
前記第二の樹脂は、ポリエステル樹脂、疎水性ポリウレタン樹脂及びポリエステルウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1又は2に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項4】
前記ミクロ相分離構造は、海部及び該海部内に配されている複数の島部を有する海島構造である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項5】
前記海部は前記第二の樹脂から形成されており、前記島部は前記第一の樹脂から形成されている、請求項4に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項6】
前記インク受容層における前記第一の樹脂の含有量は、前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂の合計100質量部に対して、20〜70質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項7】
前記インク受容層の厚みは、25〜40μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク用印刷媒体。
【請求項8】
親水性を有する第一の樹脂と、疎水性及び感熱接着性を有する第二の樹脂と、溶媒と、を含有する溶液を基材上に塗布し、塗膜を基材上に形成する第一の工程と、
前記塗膜から前記溶媒を除去するとともに、前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とをミクロ相分離させる第二の工程と、
を備える、水性インク用印刷媒体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−255650(P2011−255650A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134429(P2010−134429)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】