説明

水性懸濁状農薬組成物

【課題】優れた性能を有する水性懸濁状農薬組成物を提供すること。
【解決手段】クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、及び、多糖類高分子物質を含有する水性懸濁状農薬組成物は優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性懸濁状農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業就労者の高年齢化、就労者数の減少等から、より簡便な方法で農薬活性化合物を散布することのできる農薬製剤が求められている。例えば湛水下の水田に畦畔から直接散布することのできる水性懸濁状農薬組成物も実用化されている。
しかしながら、水性懸濁状農薬組成物に含有される農薬活性化合物の種類や、使用場面によっては懸濁状態が安定に維持できずにケーキングを生じるため、畦畔からの水田への直接散布において、農薬容器内に多量の農薬活性化合物が残留するなど、必ずしも十分満足できるものではなく、優れた性能を有する水性懸濁状農薬組成物が求められている。
殺虫活性を有するの農薬活性化合物として、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−157308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた性能を有する水性懸濁状農薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、優れた性能を有する水性懸濁状農薬組成物を見出すべく検討の結果、クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、及び、多糖類高分子物質を含有する水性懸濁状農薬組成物が、優れた性能を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、次に〔1〕〜〔9〕の通りである。
〔1〕 クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、及び、多糖類高分子物質を含有する水性懸濁状農薬組成物。
〔2〕 クロチアニジンの含有量が、1〜50重量%である〔1〕記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔3〕 クロチアニジン 1〜50重量%、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質 0.1〜10重量%、ポリアクリル酸塩 0.1〜10重量%、リグニンスルホン酸塩 0.1〜10重量%、且つ、多糖類高分子物質 0.01〜5重量%の含有量である〔1〕記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔4〕 ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔3〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔5〕 ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル基を有する界面活性物質におけるポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキサイド基の平均付加モル数が、8〜48である〔1〕〜〔4〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔6〕 ポリアクリル酸塩が、分子量3000〜60000のポリアクリル酸ナトリウムである〔1〕〜〔5〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔7〕 リグニンスルホン酸塩が、分子量1000〜80000のリグニンスルホン酸ナトリウムである〔1〕〜〔6〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔8〕 多糖類高分子物質が、ザンサンガム、アラビアガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ウェラントガム、デンプン及びカルボキシメチルセルロース塩からなる群より選ばれる1種以上である〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔9〕 多糖類高分子物質がキサンタンガムであり、その1重量%水溶液の20℃でのB型粘度計(ローターNo.3、回転数:60rpm)による測定時の粘度が、500〜2000mPa・sである〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、懸濁状態を安定に維持しケーキングの発生が抑制できるため、水性懸濁状農薬組成物を農薬容器内で長期間保存後に畦畔から水田への直接散布などに用いた場合においても、農薬容器などへの残存が低減できることから散布によるロスを抑制でき、農薬活性化合物として含有されるクロチアニジンの効力を十分に発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、及び、多糖類高分子物質を含有するものである。
【0008】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、含有される界面活性物質の少なくとも1種として、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質が用いられる。かかるポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質とは、界面活性成分の分子構造がポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルであるもの、及び、部分構造としてポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有し、且つ、他の置換基により置換されたものが挙げられる。該ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造におけるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基が挙げられる。本発明に用いられるポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数は、通常3〜120程度、好ましくは8〜48程度である。
【0009】
かかるポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルとしては、具体的には、例えばニューカルゲン FS−1(ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、竹本油脂製)、SORPOL T−10(ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、SORPOL T−15(ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、SORPOL T−20(ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、SORPOL T−26(ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、SORPOL T−32(ポリオキシエチレントリスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、SORPOL T−18D(ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル、東邦化学工業製)、ノイゲン EA−137(ポリオキシエチレンジスチリル化エーテル、第一工業製薬製)、ノイゲン EA−157(ポリオキシエチレンジスチリル化エーテル、第一工業製薬製)、ノイゲン EA−167(ポリオキシエチレンジスチリル化エーテル、第一工業製薬製)、ノイゲン EA−177(ポリオキシエチレンジスチリル化エーテル、第一工業製薬製)、ノイゲン EA−197(ポリオキシエチレンジスチリル化エーテル、第一工業製薬製)、エマルゲン A−60(ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル)、エマルゲン A−90(ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル)及びエマルゲン A−500(ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル)が挙げられる。
【0010】
部分構造としてポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質としては、例えばポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸塩及びポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸塩が挙げられ、具体的には、例えば、ニューカルゲン FS−7PG(ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、竹本油脂製)、ニューカルゲン FS−3PG(ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸アンモニウム塩、竹本油脂製)、Soprophor FLK(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル燐酸カリウム塩、ローディア日華製)、Sorpol T−10SPG(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、東邦化学工業製)、Sorpol T−15SPG(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、東邦化学工業製)、Sorpol T−20SPG(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、東邦化学工業製)、ディクスゾール 60A(ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、第一工業製薬製)及びF−6205H(ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、第一工業製薬製)が挙げられる。
【0011】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質が少なくとも1種含有されるが、その含有量は本発明の水性懸濁状農薬組成物の全量に対して、合計で通常0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0012】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、ポリアクリル酸塩が含有される。かかるポリアクリル酸塩における塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられ、ポリアクリル酸塩としては、その分子量が通常1000〜150000程度、好ましくは3000〜60000程度のものが用いられる。かかるポリアクリル酸塩として具体的には、例えばトキサノン GR−31A(分子量約10000のポリアクリル酸ナトリウム塩、三洋化成工業製)、トキサノン GR−30(分子量約10000のポリアクリル酸ナトリウム塩、三洋化成工業製)、サンスパール PS−30(分子量約20000のポリアクリル酸アンモニウム塩、三洋化成工業製)及びSNディスパーサント 5468(分子量約10000のポリアクリル酸アンモニウム塩、三洋化成工業製)が挙げられる。
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるポリアクリル酸塩が通常0.01〜15重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度含有される。
【0013】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、リグニンスルホン酸塩が含有される。かかるリグニンスルホン酸塩における塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩及びカルシウム塩が挙げられ、リグニンスルホン酸塩としては、その分子量が通常500〜150000程度、好ましくは1000〜80000程度のものが用いられる。かかるリグニンスルホン酸塩として具体的には、例えば、ニューカルゲン WG−4(リグニンスルホン酸ナトリウム塩、竹本油脂製)、ニューカルゲン RX−B(リグニンスルホン酸ナトリウム、竹本油脂製)、REAX 910(リグニンスルホン酸ナトリウム、MeadWestvaco製)、サンエキス P201(リグニンスルホン酸カルシウム、日本製紙ケミカル製)、サンエキス P252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル製)、サンエキス P321(リグニンスルホン酸マグネシウム、日本製紙ケミカル製)、バニレックス N(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル製)、バニレックス RN(リグニンスルホン酸ナトリウム、分子量、日本製紙ケミカル製)及びパールレックス NP(リグニンスルホン酸ナトリウム、分子量、日本製紙ケミカル製)が挙げられる。
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるリグニンスルホン酸塩が通常0.02〜15重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度含有される。
【0014】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、多糖類高分子物質が含有される。かかる多糖類高分子物質としては、例えば、ザンサンガム、アラビアガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ウェラントガム、デンプン及びカルボキシメチルセルロース塩が挙げられる。かかる多糖類高分子物質のうち、キサンタンガムが好ましく、その1重量%水溶液の20℃におけるB型粘度計(ローターNo.3、回転数:60rpm)による測定時の粘度が、通常300〜3000mPa・s程度、好ましくは500〜2000mPa・s程度のものが用いられる。かかるキサンタンガムとしては、具体的には、ロードポール 23(ローディア日華製、20℃におけるB型粘度計(ローターNo.3、回転数:60rpm)による測定時の粘度:1200〜1800mPa・s)及びケルザン S(三晶製、20℃におけるB型粘度計(ローターNo.3、回転数:60rpm)による測定時の粘度:900〜1200mPa・s)
【0015】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、クロチアニジンと、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質と、ポリアクリル酸塩と、リグニンスルホン酸塩と、多糖類高分子物質とともに、通常の水性懸濁状農薬組成物において用いられる製剤助剤を必要に応じて含有されることができる。かかる製剤助剤としては、例えば、凍結防止剤、pH調整剤、消泡剤及び防腐剤が挙げられる。これらの製剤助剤は、本発明の水性懸濁状農薬組成物に用いられる各成分の種類や含有量等に応じて適宜選択することができる。
【0016】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩及び多糖類高分子物質、並びに、必要に応じて用いられる製剤助剤が、水媒体に分散若しくは溶解されてなる組成物である。本発明の水性懸濁状農薬組成物が含有する水は特に制限されることはなく、水道水、井水及びイオン交換水等の通常の水性懸濁状農薬組成物に用いられる水を用いることができる。本発明の水性懸濁状農薬組成物には、水が通常30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%程度含有される。
【0017】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、例えば以下に示す方法により、製造することができる。
クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩及び多糖類高分子物質、並びに、必要に応じて用いられる製剤助剤を水に添加し、該混合物を、例えば、高速撹拌機により十分に撹拌、混合した後に、ダイノミル、マイクロフルイダイザー等の湿式粉砕機で微粉砕及び分散する方法(製法1)、及び、
クロチアニジンの原末をジェットマイザー等の乾式粉砕機によって微粉砕した後、これを他の成分とともに水に添加し、該混合物を高速撹拌機で約30〜90分間程度撹拌、混合して、分散させる方法(製法2)
が挙げられる。
【0018】
本発明の水性懸濁状農薬組成物においてクロチアニジンは、水中に微粒子の形で分散させられており、該微粒子の体積中位径は10μm以下、好ましくは0.2〜5μmである。
【0019】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、公知の方法に従ってそのまま或いは所望により水で希釈して散布することにより使用することができるが、例えば湛水下水田等へ畦畔より直接散布することもできる。本発明の水性懸濁状農薬組成物を水田等へそのまま散布する場合は、本発明の水性懸濁状農薬組成物が入った容器を使用前に軽く振り混ぜた後、畦畔に沿って少量ずつ散布することにより使用する。本発明の水性懸濁状農薬組成物を水で希釈して散布する場合は、水田、畑地、果樹園、芝地、非農耕地等に、公知の散布器等を用いて土壌表面散布、茎葉散布等により使用する。また、該水希釈液を用いて、種子処理、育苗箱処理等に使用することもできる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
なお特記しない限り、部とは重量部を表す。
【0021】
まず本発明の水性懸濁状農薬組成物の製造例を示す。
【0022】
製造例1
クロチアニジン 20.6部、イソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.08部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製) 0.3部、プロピレングリコール 6.0部、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルサルフェートアンモニウム(ニューカルゲンFS−7PG、竹本油脂製)2.0部、リグニンスルホン酸塩(ニューカルゲンWG−4、竹本油脂製)1.0部、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(トキサノンGR−31A、三洋化成工業製) 2.5部、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業製)0.6部及び35%硫酸水溶液 0.9部を、イオン交換水 46.02部に加えて撹拌した後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、クロチアニジンを含有する粉砕懸濁液(以下、粉砕懸濁液(a)と記す)を得た。
一方、キサンタンガム(ロードポール23、ローディア日華製) 0.14部及びイソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.02部をイオン交換水 19.84部に溶解させて、キサンタンガムの水溶液(以下、キサンタンガム水溶液(A)と記す)を得た。
粉砕懸濁液(a)80部に、キサンタンガム水溶液(A)20部を加えて撹拌し、水性懸濁状農薬組成物(以下、本発明組成物(1)と記す)を得た。
【0023】
製造例2
クロチアニジン 20.6部、イソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製)0.08部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製)0.3部、プロピレングリコール 6.0部、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル(ニューカルゲンFS−1、竹本油脂製) 1.0部、リグニンスルホン酸塩(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂製) 0.2部、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(トキサノンGR−31A、三洋化成工業製) 2.0部、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業製) 0.6部、ポリエチレングリコール(PEG6000S、三洋化成工業成) 3.0部及び35%硫酸水溶液 0.3部を、イオン交換水 45.92部に加えて撹拌した後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、クロチアニジンを含有する粉砕懸濁液(以下、粉砕懸濁液(b)と記す)を得た。
一方、キサンタンガム(ロードポール23、ローディア日華製) 0.12部及びイソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.02部をイオン交換水 19.86部に溶解させて、キサンタンガムの水溶液(以下、キサンタンガム水溶液(B)と記す)を得た。
粉砕懸濁液(b)80部に、キサンタンガム水溶液(B)20部を加えて撹拌し、水性懸濁状農薬組成物(以下、本発明組成物(2)と記す)を得た。
【0024】
次に比較用の水性懸濁状農薬組成物の参考製造例を示す。
【0025】
参考製造例1
クロチアニジン 20.6部、イソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.08部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製)0.3部、プロピレングリコール 6.0部、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル(ニューカルゲンFS−1、竹本油脂製) 1.0部、リグニンスルホン酸塩(ニューカルゲンWG−4、竹本油脂製) 1.0部、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業製) 0.7部及び35%硫酸水溶液 0.1部を、イオン交換水 50.22部に加えて撹拌した後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、クロチアニジンを含有する粉砕懸濁液(以下、粉砕懸濁液(c)と記す)を得た。
一方、キサンタンガム(ロードポール23、ローディア日華製)0.1部及びイソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.02部をイオン交換水 19.88部に溶解させて、キサンタンガムの水溶液(以下、キサンタンガム水溶液(C)と記す。)を得た。
粉砕懸濁液(c) 80部に、キサンタンガム水溶液(C) 20部を加えて撹拌し、水性懸濁状農薬組成物(以下、比較組成物(1)と記す)を得た。
【0026】
参考製造例2
クロチアニジン 20.6部、イソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.08部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製) 0.3部、プロピレングリコール 6.0部、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルサルフェートアンモニウム(ニューカルゲンFS−7PG、竹本油脂製) 2.0部、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(トキサノンGR−31A、三洋化成工業製) 3.0部、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業製)0.6部及び35%硫酸水溶液 1.0部を、イオン交換水 46.42部に加えて撹拌した後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、クロチアニジンを含有する粉砕懸濁液(以下、粉砕懸濁液(d)と記す)を得た。
一方、キサンタンガム(ロードポール23、ローディア日華製) 0.08部及びイソチアゾリン−3−オン誘導体(バイオホープL、ケイ・アイ化成製) 0.02部をイオン交換水 19.9部に溶解させて、キサンタンガムの水溶液(以下、キサンタンガム水溶液(D)と記す。)を得た。
粉砕懸濁液(d) 80部に、キサンタンガム水溶液(D) 20部を加えて撹拌し、水性懸濁状農薬組成物(以下、比較組成物(2)と記す)を得た。
【0027】
次に上記で製造した水性懸濁状農薬組成物を用いて、下記の試験例1〜4の試験を行った。
【0028】
試験例1(体積中位径の測定)
レーザー回折式粒度分布測定装置(HEROS&RODOS、日本レーザー製、測定条件:焦点距離20mm、分散媒はイオン交換水)を用いて、体積中位径を測定した。
【0029】
試験例2(pH測定)
pHメーター(F−22型、堀場製作所製)を用いて、水性懸濁状農薬組成物のpHを測定した。
【0030】
試験例3
B型粘度計(RB−85L型、東機産業製、ローターNo.2使用、回転数6rpm及び60rpm)を用いて、水性懸濁状農薬組成物の25℃における粘度を測定した。
【0031】
試験例4(ケーキング量測定)
水性懸濁状農薬組成物 約40gを50mlの遠沈管に入れ、回転数900rpmで6時間遠心分離した。遠心分離後、遠沈管の口を下に向けて垂直に立てた状態で該水性懸濁状農薬組成物を排出し、液滴が落下する時間の間隔が10秒より長くなった時点で排出を終了した。排出終了時点に遠沈管に残った水性懸濁状農薬組成物の重量を測定し、これを試験に用いた水性懸濁状農薬組成物の全重量で除した値の百分率を、ケーキング率として算出した。
【0032】
各試験例の結果を〔表1〕に示す。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロチアニジン、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質、ポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、及び、多糖類高分子物質を含有する水性懸濁状農薬組成物。
【請求項2】
クロチアニジンの含有量が、1〜50重量%である請求項1記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項3】
クロチアニジン 1〜50重量%、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質 0.1〜10重量%、ポリアクリル酸塩 0.1〜10重量%、リグニンスルホン酸塩 0.1〜10重量%、且つ、多糖類高分子物質 0.01〜5重量%の含有量である請求項1記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性物質が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項5】
ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル基を有する界面活性物質におけるポリオキシアルキレン鎖のアルキレンオキサイド基の平均付加モル数が、8〜48である請求項1〜4いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項6】
ポリアクリル酸塩が、分子量3000〜60000のポリアクリル酸ナトリウムである請求項1〜5いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項7】
リグニンスルホン酸塩が、分子量1000〜80000のリグニンスルホン酸ナトリウムである請求項1〜6いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項8】
多糖類高分子物質が、ザンサンガム、アラビアガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ウェラントガム、デンプン及びカルボキシメチルセルロース塩からなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜7いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項9】
多糖類高分子物質がキサンタンガムであり、その1重量%水溶液の20℃でのB型粘度計(ローターNo.3、回転数:60rpm)による測定時の粘度が、500〜2000mPa・sである請求項1〜7いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。

【公開番号】特開2011−57614(P2011−57614A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209066(P2009−209066)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】