説明

水性液体染料を用いたポリ(メタ)アクリレートの着色法及び水性液体染料

本発明は、熱可塑性プラスチックを着色するための水性着色調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性着色調製物を用いて熱可塑性プラスチック成形材料を着色する方法に関し、使用されるプラスチック成形材料は、たとえばポリメチル(メタ)アクリレート成形材料である。本発明はさらに、水性着色調製物にも関する。
【0002】
従来技術
米国特許第3,956,008号は、2〜50μmのサイズの無機粒子及びソルビトールエステルから構成される界面活性系からなる、プラスチック製物品を着色するための分散液を記載する。水性系の記載はない。
【0003】
米国特許第3,992,343号(Degussa)は、有機又は無機顔料粒子、水及び分散液からなる水性分散液系であって、分散剤が非常に特殊である水性分散液系を記載する。
【0004】
米国特許第4,091,034号は、トリフェニルメタン染料の青色水溶性染料配合物を記載する。これは、織物を着色するために水性分散液の形態で使用される。
【0005】
米国特許第4,167,503号は、ポリオキシエチレン誘導体、PEG及びさらなる添加剤から構成される担体ベースの液体配合物を記載する。水は溶媒として使用されない。
【0006】
米国特許第4,169,203号は、非発色団ポリマー骨格およびこれに化学的に結合した発色団からなる水溶性ポリマー顔料を記載する。
【0007】
米国特許第4,341,565号は、固体顔料、長鎖アルコール及び長鎖酸のエステルから構成される液相、並びにゲル化助剤から構成される液体染料配合物を記載する。
【0008】
米国特許第4,871,416号は同様に、有機系配合物を記載する。
【0009】
米国特許第4,634,471号は、有機溶媒を含む配合物を記載する。
【0010】
米国特許第4,804,719号は、ポリマーを含む水分散性配合物を記載する。
【0011】
米国特許第4,910,236号は、水及び乳化剤からなる水性エマルジョン並びにオレフィン系樹脂及び顔料から構成される有機相から形成される印刷用インクを記載する。その後の工程で、水は配合物から除去される。
【0012】
米国特許第5,043,376号は、非水性系を記載する。
【0013】
米国特許第5,104,913号は、米国特許第5,043,376号の部分出願であり、水性染料分散液(水中油)の製造法を記載する。
【0014】
米国特許第5,308,395号は同様に、有機溶液を記載する。
【0015】
親水性着色剤及び水を米国特許第5,328,506号では成形してペーストにし、このペーストは、染料製造において慣例的な手段及び機械を用いてさらに加工することができる。
【0016】
米国特許第5,759,472号は、ポリマーを成形する方法であって、担体(10〜75%)、水(0〜15%)、分散剤(0.1〜10%)及び着色剤(10〜80%)からなる有色混合物を製造する工程からなる方法を記載する。加えて、ポリオールも存在し得る。さらなる加工工程において、粉状ポリマーを提供し、次いで担体系をポリマー粉末と混合し、加工して、混合物(PE)を得る。従属クレームは、1〜14%の水量を対象とする。
【0017】
米国特許第6,428,733号は、揮発性系を記載し;これはグリセロール及び水の混合物を含む。
【0018】
米国特許第6,649,122号は、熱可塑性プラスチックを着色する方法を記載し、この方法では、10〜80パーセントの着色剤及び30パーセント以下の分散剤を使用し;残りは溶媒としての水である。使用される分散剤はポリビニルピロリドン、たとえばSokolan(登録商標)HP50(BASF)又は中和されたポリアクリル酸、リグノスルホン酸の塩、ナフタレンスルホン酸の塩若しくはポリマーカルボン酸の塩である。非イオン性分散剤、たとえばノニルフェノール又はオクチルフェノールを使用するのが好ましい。
【0019】
従来技術の溶液の欠点は、着色剤配合物においてかなりの有機溶媒を使用することである。プラスチック成形材料において有機溶媒を使用すると、ポリマー中の低分子量有機化合物の濃度が上昇し、したがってポリマーの性質が劣化し、たとえばビカー軟化温度が低下する、または当該ポリマーから製造される物品の応力亀裂感受性が高くなる。
【0020】
市場で入手可能な液体染料は、一般的に、脂肪酸エステル又はホワイトオイルをバインダーとして含み、これらは着色後もポリマー中に残留し、ビカー軟化温度の低下につながる。加えて、射出成形においては堆積物の形成が観察され得る。
【0021】
課題
したがって、本発明の目的は、水性着色調製物及び、先に概要を述べた従来技術の欠点を有さず、熱可塑性プラスチック成形材料を着色するための問題のない代替案として使用可能な、熱可塑性プラスチック成形材料の着色法を提供することである。
【0022】
使用される熱可塑性プラスチック成形材料は、たとえば、ポリメチル(メタ)アクリレート成形材料又はポリカーボネート成形材料である。
【0023】
ポリメチル(メタ)アクリレート成形材料は、以下、重合アルキルメタクリレートから構成されるプラスチック成形材料及び重合アルキルアクリレートから構成されるプラスチック成形材料、並びに2つのモノマー種の混合物から構成されるプラスチック成形材料を意味すると解釈される。
【0024】
解決法
目的は、請求項1に記載のポリアクリレート乳化剤を使用し、水性着色調製物によって達成される。着色された熱可塑性プラスチック成形材料及びこれから製造可能なプラスチック成形体は後のクレームで保護される。
【0025】
本発明は、熱可塑性プラスチック成形材料を着色するための水性着色調製物であって、
・ 1質量%〜49質量%の改質ポリアクリレート、
・ 0.5質量%〜50質量%の顔料混合物及び
・ 0質量%〜50質量%の通常の助剤及び
・ 脱イオン水(ここで、成分の質量部は合計100質量%になる)を含むことを特徴とする水性着色調製物に関する。
【0026】
本発明の水性着色調製物を使用することにより、意外な予期せぬ方法で、熱可塑性プラスチック成形材料を良好に着色することに加えて、この着色された熱可塑性プラスチック成形材料から製造されるプラスチック成形体のビカー軟化温度を一定に保ち、さらには上昇させることができる。プラスチック成形体のその他の機械的特性は未変化のままである。
【0027】
発明の効果
熱可塑性プラスチック成形材料及びその製造
ポリメチル(メタ)アクリレートは、一般的に、メチルメタクリレートを含む混合物のフリーラジカル重合によって得られる。一般的に、これらの混合物は、モノマーの質量基準で、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも80質量%のメチルメタクリレートを含む。
【0028】
加えて、ポリメチル(メタ)アクリレートを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレートと共重合可能なさらなる(メタ)アクリレートを含んでもよい。「(メタ)アクリレート」という表現は、メタクリレート及びアクリレート並びに両者の混合物を包含する。
【0029】
これらのモノマーは周知である。飽和アルコール由来の(メタ)アクリレート、たとえばメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコール由来の(メタ)アクリレート、たとえばオレイル(メタ)アクリレート、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、たとえばベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレート(ここで、アリール基はそれぞれ非置換であっても、若しくは最高4置換されていてもよい);シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、たとえば3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリコールジ(メタ)アクリレート、たとえば1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、たとえばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミド及びニトリル、たとえばN−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール;硫黄含有メタクリレート、たとえばエチルスルフィニルエチル(メタ)アクリレート、4−チオシアナトブチル(メタ)アクリレート、エチルスルホニルエチル(メタ)アクリレート、チオシアナトメチル(メタ)アクリレート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)スルフィド;多官能性(メタ)アクリレート、たとえばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
上記に詳述した(メタ)アクリレートに加えて、重合される組成物は、メチルメタクリレート及び前記(メタ)アクリレートと共重合可能な、さらなる不飽和モノマーも含み得る。
【0031】
1−アルケン、たとえばヘキセン−1、ヘプテン−1;分岐アルケン、たとえばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチルペンテン−1;アクリロニトリル;ビニルエステル、たとえば酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、たとえばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン;複素環式ビニル化合物、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール;
ビニル及びイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、たとえばマレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミド;並びにジエン、たとえばジビニルベンゼンが挙げられる。
【0032】
一般的に、これらのコモノマーは、モノマーの質量基準で0質量%〜60質量%、好ましくは0質量%〜40質量%、より好ましくは0質量%〜20質量%の量で使用され、化合物は個別に、又は混合物として使用することができる。
【0033】
重合は、一般的に、既知のフリーラジカル開始剤を用いて開始される。好適な開始剤としては、技術分野で周知のアゾ開始剤、たとえばAIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、並びにパーオキシ化合物、たとえばメチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、tert−ブチルパー−2−エチルヘキサノエート、ケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−パーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルパーオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、2以上の前記化合物同士の混合物、及び前記化合物と同様にフリーラジカルを形成可能な特定されていない化合物との混合物が挙げられる。
【0034】
これらの化合物は、多くの場合、モノマーの質量基準で0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜3質量%の量で用いられる。
【0035】
ここで、分子量又はモノマー組成等が異なる様々なポリ(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0036】
耐衝撃性改質ポリ(メタ)アクリレートプラスチック
耐衝撃性改質ポリ(メタ)アクリレートプラスチックは、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%のポリ(メタ)アクリレートマトリックス、及び80〜20質量%、好ましくは70〜30質量%の、10〜150nm(たとえば超遠心法による測定値)の平均粒子径を有するエラストマー粒子から構成される。
【0037】
ポリ(メタ)アクリレートマトリックス内に分配されたエラストマー粒子は、軟質エラストマー相とこれに結合した硬質相を有するコアを有する。
【0038】
耐衝撃性改質ポリ(メタ)アクリレートプラスチック(szPMMA)は、少なくとも80質量%のメチルメタクリレート単位及び場合により0〜20質量%のメチルメタクリレートと共重合可能なモノマー単位から重合されたある割合のマトリックスポリマー、並びにマトリックス中に分配されたある割合の架橋ポリ(メタ)アクリレートベースの耐衝撃性改質剤から構成される。
【0039】
マトリックスポリマーは、特に80質量%〜100質量%、好ましくは90質量%〜99.5質量%程度のフリーラジカル重合したメチルメタクリレート単位、及び場合により0質量%〜20質量%程度、好ましくは0.5質量%〜10質量%程度のさらなるフリーラジカル重合したコモノマー、たとえばC1〜C4−アルキル(メタ)アクリレート、特にメチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレートから構成される。マトリックスの平均分子量Mw(質量平均)は、90000g/mol〜200000g/mol、特に100000g/mol〜150000g/molの範囲内である(較正基準としてのポリメチルメタクリレートに基づくゲル透過クロマトグラフィーによるMwの測定)。分子量Mwは、たとえばゲル透過クロマトグラフィー又は散乱光法によって測定することができる(たとえばH. F. Mark et al., Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Edition, Vol. 10, pages 1 ff., J. Wiley, 1989を参照)。
【0040】
90質量%〜99.5質量%のメチルメタクリレート及び0.5質量%〜10質量%のメチルアクリレートから構成されるコポリマーが好ましい。ビカー軟化温度VET(ISO 306−B50)は少なくとも90、好ましくは95〜112℃の範囲内であり得る。
【0041】
衝撃改質剤
ポリメタクリレートマトリックスは衝撃改質剤を含み、これは、たとえば2又は3シェル構造の衝撃改質剤であってよい。
【0042】
ポリメタクリレートプラスチック用衝撃改質剤は十分によく知られている。耐衝撃性改質ポリメタクリレート成形材料の製造及び構造は、たとえばEP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049及びEP−A0683028に記載されている。
【0043】
衝撃改質剤
ポリメタクリレートマトリックスは、1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜20質量%、より好ましくは3質量%〜15質量%、特に5質量%〜12質量%の衝撃改質剤を含み、これは架橋ポリマー粒子から構成されるエラストマー相である。衝撃改質剤は、ビーズ重合又は乳化重合によりそれ自体既知の方法で得られる。
【0044】
最も簡単な場合、衝撃改質剤は、ビーズ重合によって得られ、10〜150nm、好ましくは20〜100、特に30〜90nmの範囲の平均粒径を有する架橋粒子である。これらは一般的に、少なくとも40質量%、好ましくは50質量%〜70質量%のメチルメタクリレート、20質量%〜40質量%、好ましくは25質量%〜35質量%のブチルアクリレート、及び0.1質量%〜2質量%、好ましくは0.5質量%〜1質量%の架橋性モノマー、たとえば多官能性(メタ)アクリレート、たとえばアリルメタクリレート、及び場合によりさらなるモノマー、たとえば0質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%のC1〜C4−アルキルメタクリレート、たとえばエチルアクリレート若しくはブチルメタクリレート、好ましくはメチルアクリレート、又は他のビニル重合性モノマー、たとえばスチレンから構成される。
【0045】
好適な衝撃改質剤は、2シェル又は3シェルのコア−シェル構造を有し得、乳化重合によって得られるポリマー粒子である(たとえばEP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049及びEP−A0683028を参照)。しかし、本発明のためには、これらのエマルジョンポリマーの好適な粒径は、10〜150nm、好ましくは20〜120nm、より好ましくは50〜100nmの範囲内でなければならない。
【0046】
1つのコア及び2つのシェルを有する3層又は3相構造は、次のように構成することができる。最内(硬質)シェルは、たとえば本質的にメチルメタクリレートと、少量のコモノマー、たとえばエチルアクリレートと、クロスリンカーフラクション、たとえばアリルメタクリレートとからなる。中間(軟質)シェルは、たとえばブチルアクリレートと、場合によりスチレンとから形成することができ、最外(硬質)シェルは、通常、本質的にマトリックスポリマーに相当し、これによってマトリックスに対する適合性と良好な結合とが得られる。衝撃改質剤中のポリブチルアクリレート含有量は、耐衝撃性改質作用に極めて重要であり、好ましくは20質量%〜40質量%の範囲、より好ましくは25質量%〜35質量%の範囲である。
【0047】
耐衝撃性改質ポリメタクリレート成形材料
押出機において、衝撃改質剤及びマトリックスポリマーを溶融状態で混合し、耐衝撃性改質ポリメタクリレート成形材料を形成することができる。排出された材料を一般的にはまず切り出して顆粒にする。後者をさらに押出又は射出成形によって加工し、成形品、たとえばスラブまたは射出成形品を得る。
【0048】
EP0528196A1の二相衝撃改質剤
好ましくは、特にフィルム製造のために、これに限定されるものではないがEP0528196A1から原則として既知の系を用い、これは:
a1)a11)80質量%〜100質量%(a1基準)のメチルメタクリレート及び
a12)0質量%〜20質量%の1以上のさらなるエチレン性不飽和フリーラジカル重合性モノマー
から構成される、70℃超のガラス転移温度Tmgを有する連続硬質相、10質量%〜95質量%、及び
a2)a21)50質量%〜99.5質量%のC1〜C10−アルキルアクリレート(a2基準)
a22)0.5質量%〜5質量%の2以上のエチレン性不飽和フリーラジカル重合基を有する架橋性モノマー、及び
a23)場合により、さらなるエチレン性不飽和フリーラジカル重合モノマー
から構成される、硬質相中に分配された−10℃以下のより低いガラス転移温度Tmgを有する強靱相、90質量%〜5質量%
から構成され、硬質相a1)の少なくとも15質量%が強靱相a2)と共有結合している、二相耐衝撃性改質ポリマーである。
【0049】
二相衝撃改質剤は、たとえばDE−A3842796に記載のように、水中二段階乳化重合によって得られる。第1段階において、強靱相a2)を得、これは少なくとも50質量%程度、好ましくは80質量%超程度の低級アルキルアクリレートから構成され、このためにこの相のガラス転移温度Tmgは−10℃以下になる。使用される架橋性モノマーa22)は、ジオールの(メタ)アクリル酸エステル、たとえばエチレングリコールジメタクリレート又は1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2個のビニル若しくはアリル基を有する芳香族化合物、たとえばジビニルベンゼン、又は2個のエチレン性不飽和フリーラジカル重合基を有する他の架橋剤、たとえばグラフトリンカーとしてのアリルメタクリレートである。3個以上の不飽和フリーラジカル重合性基、たとえばアリル基又は(メタ)アクリロイル基を有する架橋剤の例として、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、並びにペンタエリスリチルテトラアクリレート及びテトラメタクリレートが挙げられる。これに関するさらなる例は、US4,513,118に記載されている。
【0050】
a23)に指定されているエチレン性不飽和フリーラジカル重合性モノマーは、たとえば、アクリル酸又はメタクリル酸並びに1〜20個の炭素原子を有するそれらのアルキルエステルであり得る。ただし、これらはまだ記載されていないものとし、アルキル基は直鎖、分岐又は環状であってよい。加えて、a23)は、アルキルアクリレートa21)と共重合可能なさらなるフリーラジカル重合性脂肪族コモノマーを含んでもよい。しかし、たとえばスチレン、アルファ−メチルスチレン又はビニルトルエン等の大部分の芳香族コモノマーは除外されていなければならない。なぜなら、これらが、特に風化の場合、成形材料Aの望ましくない特性をもたらすためである。
【0051】
第1段階において強靱相を得る際、粒径及びその多分散性を慎重に設定しなければならない。強靱相の粒径は、本質的に乳化剤の濃度に依存する。有利には、粒径はシードラテックスの使用によって制御することができる。130nm未満、好ましくは70nm未満の平均粒径(質量平均)を有し、0.5未満、好ましくは0.2未満の多分散性U80(U80は、超遠心によって測定される粒径分布の積分処理から計算する。好ましくは0.2未満のU80=[(r90−r10)/r50]−1(式中、r10、r50、r90は、粒径の10、50、90%がこの値よりも低く、粒径の90、50、10%がこの値よりも高い平均積分粒径))は、水相基準で0.15〜1.0質量%の乳化剤濃度で得られる。これは特にアニオン性乳化剤、たとえば特に好適なアルコキシ化及び硫酸化パラフィンに該当する。使用される重合開始剤は、たとえば水相基準で0.01質量%〜0.5質量%のアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩又はアンモニウムペルオキソ二硫酸塩であり、重合は20〜100℃の温度で誘発される。酸化還元系、たとえば0.01質量%〜0.05質量%の有機ヒドロペルオキシドと0.05質量%〜0.15質量%のヒドロキシメチルスルフィン酸ナトリウムの組み合わせを20〜80℃の温度で用いることが好ましい。
【0052】
少なくとも15質量%程度まで強靱相a2)と共有結合した硬質相a1)は、低くとも70℃のガラス転移温度を有し、メチルメタクリレートからのみ構成され得る。コモノマーa12)としては、20質量%までの1以上のさらなるエチレン性不飽和フリーラジカル重合性モノマーが硬質相中に存在してもよく、アルキル(メタ)アクリレート、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキルアクリレートを、ガラス転移温度が前記よりも低くならないような量で用いる。
【0053】
硬質相a1)の重合は、第2段階で同様にたとえば強靱相a2)の重合にも使用されるような通常の助剤を用いてエマルジョン中で進行する。
【0054】
好適な実施形態において、硬質相は、低分子量及び/又は共重合したUV吸収体を、硬質相中のコモノマー成分a12)の構成成分としてA基準で0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%の量で含む。特にUS4576870に記載の重合性UV吸収体の例として、2−(2’−ヒドロキシフェニル)−5−メタクリロイルアミドベンゾトリアゾール又は2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノンが挙げられる。低分子量UV吸収体は、たとえば2−ヒドロキシベンゾフェノン若しくは2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールの誘導体又はサリチル酸フェニルであってよい。一般的に、低分子量UV吸収体は2×103(g/mol)未満の分子量を有する。処理温度で低揮発性を有し、ポリマーAの硬質相a1)と均一な混和性を有するUV吸収体が特に好ましい。
【0055】
主成分としてポリ(メタ)アクリレートを含むブレンド
加えて、PMMAと、PMMAと適合するさらなるプラスチックとの混合物を使用することができる。PMMAと適合するプラスチックの例として、ABSプラスチック又はSANプラスチックが挙げられる。
【0056】
PMMAプラスチック成形材料は、Evonik Roehm GmbHによってPLEXIGLAS(登録商標)という銘柄で販売されている。
【0057】
PMMAプラスチック成形材料及びさらなるプラスチック成形材料は、典型的にはカラーマスターバッチまたは液体染料を用いて着色される。
【0058】
ポリカーボネート
ポリカーボネートは技術分野で既知である。ポリカーボネートは、正式には炭酸と脂肪族又は芳香族ジヒドロキシ化合物とから形成されるポリエステルと見なすことができる。これらは、重縮合又はエステル交換反応により、ジグリコール又はビスフェノールをホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって容易に得られる。
【0059】
これに関して、ビスフェノール由来のポリカーボネートが好ましい。これらのビスフェノールとして、特に
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールC)、
2,2’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビスフェノールA)及び2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラメチルビスフェノールA)が挙げられる。
【0060】
典型的には、当該芳香族ポリカーボネートは、界面重縮合又はエステル交換反応によって製造され、その詳細は、Encycl. Polym. Sei. Engng. 11, 648−718に記載されている。
【0061】
界面重縮合において、ビスフェノールを塩化メチレン、クロロベンゼン又はテトラヒドロフランなどの不活性有機溶媒中水性アルカリ性溶液として乳化させ、段階的反応でホスゲンと反応させる。使用される触媒はアミンであり、立体障害ビスフェノールの場合には、相転移触媒も使用される。得られるポリマーは、使用される有機溶媒に可溶性である。
【0062】
ポリマーの特性は、ビスフェノールの選択によって大幅に変わり得る。異なるビスフェノールを同時に使用する場合、多段重縮合でブロックポリマーを形成することもできる。
【0063】
着色剤
以下の着色剤群を本発明の教示に従って使用することができる:
1.有機着色顔料、たとえばジアゾ染料、フタロシアニン、ペリレン、アントラキノン、
2.有機可溶性染料、たとえばアントラピリミジン、キノフタロン、ペリノン又はモノアゾ染料、たとえばThermoplastrot(登録商標)454、Macrolexgelb(登録商標)G、Sandoplast(登録商標)Rot G又はSolvaperm(登録商標)Rot G、
3.1及び2の混合物、
4.無機顔料(たとえばクロム酸亜鉛、硫化カドミウム、酸化クロム、ウルトラマリン顔料及び金属フレーク、並びにBaSO4及びTiO2
5.1、2及び4の混合物、並びに
6.カーボンブラック。
【0064】
着色剤の量は、着色調製物の合計量基準で、0.5質量%〜50質量%の範囲であってよい。
【0065】
ポリアクリレート
使用されるポリアクリレートは、たとえばCiba Specialty ChemicalsによりEFKA(登録商標)−4550という銘柄で販売されているポリアクリレートである。ポリマーは、本質的に、モノマー:アルファ−メチルスチレン、2−エチルヘキシルアクリレート及びMPEGメタクリレートからなる。
【0066】
改質ポリアクリレートは、48質量%〜52質量%の範囲の活性物質含有量を有する水溶液の形態で使用される。
【0067】
ポリアクリレートの量は、着色調製物の合計量基準で、5質量%〜50質量%であってよい。
【0068】
ポリアクリレートは、水性コーティング系及び顔料濃縮物における顔料解膠のためにpH非依存性分散剤として使用される。
【0069】
さらなる助剤
加えて、あらゆる通常の助剤を場合により、たとえば腐敗、細菌による分解を防止するための薬剤、殺菌剤、レベリング助剤及び消泡剤などを着色調製物に添加することができる。
【0070】
着色剤組成物の最適粘度を得るために、たとえば、脱塩水を使用する。
【0071】
熱可塑性成形材料は、着色調製物を未着色プラスチック成形材料に添加することによって直接、又はマスターバッチを経て着色することができる。
【0072】
マスターバッチは、着色調製物及びプラスチック成形材料から構成される配合物を意味すると解釈され、マスターバッチ中の着色調製物の濃度は、このマスターバッチを使用して未着色プラスチック成形材料を着色する場合、望ましい色の印象をもたらすように規定される。
【0073】
実施例
着色熱可塑性プラスチック成形材料の製造
着色調製物を用いた着色
実施例1〜4を次のようにして製造した:
ポリマー顆粒及び着色調製物を回転ミキサー中で使用して混合物を製造し、漏斗を用いて一軸押出機の吸入ゾーンに計り入れた。排出ゾーンを真空ポンプに接続した。押出機の下流に造粒機を接続した。第2処理工程で、ビカー軟化温度測定のための試料を、このようにして得た顆粒から射出成形した。
【0074】
有機バインダー(脂肪酸エステル)を用いた着色に関する比較例1
組成:
・ 着色剤:
・ 0.06質量%のThermoplastrot(登録商標)454
・ 0.016質量%のMacrolexgelb(登録商標)G
・ 0.3質量%のオクタデセン酸(オリゴエチレングリコールモノ及びジエステルとして約70mol%程度で存在し、残りの30%は糖/糖アルコールでエステル化されている)
・ 99.62質量%のPLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料
ビカー軟化温度:106℃
比較:
0.06質量%のThermoplastrot(登録商標)454及び0.016質量%のMacrolexgelb(登録商標)Gを含み、C18脂肪酸を含まないPLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料のビカー軟化温度:107℃
Battenfeld BA 350CDでの射出成形:
射出時間:1.76秒
材料温度:250℃
シリンダー温度:250〜230℃
成形温度:68℃
射出から内部型圧力560バールでの圧力保持へ切替
合計サイクル時間:50秒
オープンベント型シリンダーを用いた射出成形
30ショット後に深刻な成形堆積物及び赤色染料堆積物
【0075】
実施例2:着色顔料を含まない純粋な水性バインダーの添加
組成:
・ 0.32質量%の蒸留水
・ 0.17質量%のEFKA(登録商標)4550(50%の水性改質ポリアクリレート)
・ 0.01質量%の消泡剤
・ 0.0006質量%の防腐剤
・ 99.5質量%のPLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料
Arburg 221での射出成形:堆積物は形成されない
射出時間:1.5秒
材料温度:250℃
シリンダー温度:250〜225℃
成形温度:68℃
射出から圧力保持へ経路依存的切替
合計サイクル時間:30秒
オープンベント型シリンダーを用いた射出成形
この実験では、ビカー軟化温度の上昇は観察されず;ビカー軟化温度は、バインダーの有無にかかわらず107℃であった。
【0076】
実施例3:水性液体染料形態のThermoplastrot 454を用いた着色
組成:
・ 0.193質量%の蒸留水
・ 0.1質量%のEFKA(登録商標)4550(50%水性改質ポリアクリレート)
・ 0.006質量%の消泡剤
・ 0.00035質量%の防腐剤
・ 0.2質量%のThermoplastrot(登録商標)454
・ 99.5質量%のPLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料
Battenfeld BA 350CDでの射出成形:堆積物は形成されない
射出時間:1.77秒
材料温度:248℃
シリンダー温度:250〜230℃
成形温度:68℃
射出から内部型圧力565バールでの圧力保持へ切替
合計サイクル時間:50秒
オープンベント型シリンダーを用いた射出成形
未着色PLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料と比較して、ビカー軟化温度は106℃から108.5℃へ2.5℃上昇した。
【0077】
実施例4:水性液体染料形態のPaliotogelb(登録商標)K2270を使用した着色
組成:
・ 0.193質量%の蒸留水
・ 0.1質量%のEFKA(登録商標)4550(50%水性改質ポリアクリレート)
・ 0.006質量%の消泡剤
・ 0.00035質量%の防腐剤
・ 0.2質量%のPaliotogelb(登録商標)K2270(ピグメントイエロー183)
・ 99.5質量%のPLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料
Battenfeld BA 350CDでの射出成形:堆積物は形成されない
射出時間:1.76秒
材料温度:250℃
シリンダー温度:250〜230℃
成形温度:68℃
射出から内部型圧力560バールでの圧力保持へ切替
合計サイクル時間:50秒
オープンベント型シリンダーを用いた射出成形
未着色PLEXIGLAS(登録商標)8N成形材料と比較して、ビカー軟化温度は106℃から108.5℃へ2.5℃上昇した。
【0078】
実施例5及び実施例6の液体染料をそれぞれドラム処理(回転ミキサー)によって0.5質量%程度までPLEXIGLAS(登録商標)8Nに塗布し、230℃にて30mmStork一軸押出機で混合した。真空開放領域では真空でなかった。Arburg 221で化合物を射出成形する際、成形堆積物は観察されなかった。
【0079】
射出時間:1.5秒
材料温度:250℃
シリンダー温度:250〜225℃
成形温度:68℃
射出成形から圧力保持へ経路依存的切替
合計サイクル時間:30秒
オープンベント型シリンダーを用いた射出成形
成形材料のビカー軟化温度は108℃で一定のままであった。
【0080】
実施例5:
【表1】

【0081】
実施例6:
【表2】

【0082】
二酸化チタンを分散させた後、ドラムミルに添加した。
【0083】
結果から、ビカー軟化温度は降下せず、場合により上昇し、本発明の着色調製物で着色された熱可塑性プラスチック成形材料の射出成形に際しては、射出成形品上に堆積物は形成されないことがわかる。
【0084】
ポリマーのビカー軟化温度はISO306で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチック成形材料を着色するための水性着色調製物であって、
・ 48質量%〜52質量%の水溶液形態の改質ポリアクリレート1質量%〜49質量%と、
・ 着色剤又は着色剤混合物0.5質量%〜50質量%と、
・ 通常の助剤0質量%〜50質量%と、
・ 脱塩水と、
を含有する(ここで、成分の質量部は合計100質量%になる)ことを特徴とする、水性着色調製物。
【請求項2】
熱可塑性プラスチックを着色するための、請求項1に記載の水性着色調製物の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の着色調製物で着色されていることを特徴とする、熱可塑性プラスチック。
【請求項4】
請求項1に記載の着色調製物で着色されていることを特徴とする、ポリ(メタ)アクリレート。
【請求項5】
熱可塑性プラスチックを着色する方法であって、請求項1に記載の着色調製物を使用することを特徴とする前記方法。
【請求項6】
熱可塑性プラスチックとしてポリ(メタ)アクリレートを使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性プラスチックとして耐衝撃性改質ポリ(メタ)アクリレートを使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法によって得られる熱可塑性プラスチック成形材料。
【請求項9】
請求項8に記載の熱可塑性プラスチック成形材料の射出成形又は押出成形によって製造されるプラスチック成形体。

【公表番号】特表2012−500312(P2012−500312A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523365(P2011−523365)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058784
【国際公開番号】WO2010/020474
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】