説明

水性重合体分散液の製造方法

小さい重合体粒子を有する水性重合体分散液を製造するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mを少なくとも1つのラジカル開始剤および少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の存在下で水性重合媒体中でラジカル開始重合させることにより、数平均粒径100nm以下を有する重合体粒子の水性分散液を製造するための方法であって、その際に、重合のために、少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量(全単量体量)に対して少なくとも1つの分散助剤1質量%以下および少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体5質量%以上および60質量%以下が使用され、および、その際に、少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体が高度に枝分かれした重合体1グラム当たり酸基0.3mmol以上を有する、数平均粒径100nm以下を有する重合体粒子の水性分散液を製造するための上記方法であり、この方法は、水性重合媒体中で最初に
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量の10質量%以上および場合により
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量の50質量%以下だけを予め装入し、
引続き重合条件下で場合により残留する、少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の残りの量を添加し、少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量または場合により残留する残りの量を添加し、単量体変換率が80質量%以上になるまで重合させることによって特徴付けられる。
【0002】
同様に、本発明の対象は、本発明による方法により得られる水性重合体分散液、これから得られる重合体粉末ならびに水性重合体分散液または重合体粉末の使用である。
【0003】
高度に枝分かれした重合体を使用して水性重合体分散液を製造するために、次の公知技術水準から出発する。
【0004】
即ち、WO 2004/072125には、水性エチレン/ビニルエステル共重合体分散液を圧力下で製造することが開示されており、この場合、水相には、大量の分散剤と共に微少量の樹枝状重合体が添加される。好ましい樹枝状重合体は、少なくとも6個のヒドロキシル基を有する。
【0005】
米国特許第7109237号明細書Bには、無機または有機固体粒子の水性分散液が開示されており、この場合水相中での前記固体粒子の分散のために、枝分かれしたかまたは高度に枝分かれしたポリエチレンオキシドが使用される。
【0006】
米国特許第2007/202071号明細書の記載によれば、水性系中の分散助剤として疎水性構成要素および親水性構成要素から構成された、一般に樹枝状の重合体が開示されている。数多くの用途の下で、疎水性構成要素および親水性構成要素から構成された樹枝状重合体が水性乳化重合において分散助剤として使用されてもよいという一般的な指摘が見出させる。
【0007】
公知技術水準の前記背景から、重合体粒子が数平均粒径100nm以下を有する水性重合体分散液を製造するための特殊な方法に本発明の課題が課された。
【0008】
この課題は、冒頭に記載された方法を準備することによって解決された。
【0009】
数平均粒径100nm以下を有する重合体粒子の水性分散液(重合体分散液)の製造のために、澄明な水、有利に脱イオン水が使用され、この脱イオン水の全体量は、これがそれぞれ水性重合体分散液に対して30〜95質量%、有利に50〜85質量%であるように定められる。この場合、本発明によれば、水の少なくとも1つの部分量は、水性重合媒体として重合容器中に予め装入される。次に、場合により残留する残りの量の水は、重合媒体に重合条件下で非連続的に1つ以上の分量で供給されてよいか、または連続的に不変の流れで、または変化する量の流れで供給されてよい。好ましくは、場合により残留する残りの量の水は、エチレン系不飽和単量体Mおよび/またはラジカル開始剤と一緒に水性重合媒体に重合条件下で供給され、この場合好ましくは、残留する残りの量の水は、ラジカル開始剤と一緒に供給される。
【0010】
本発明によれば、エチレン系不飽和単量体Mとして、通常当業者によく知られたラジカル開始される水性乳化重合において使用される、全てのエチレン系不飽和単量体が使用されてよい。単量体Mとして、20℃および1atm(絶対圧力)で脱イオン水1000g当たり溶解度100g未満、有利に60g未満、殊に有利に20g未満を有する、全てのエチレン系不飽和単量体がこれに該当し、例えばオレフィン、例えばエチレンまたはプロピレン、ビニル芳香族単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニルまたは塩化ビニリデン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニル−n−ブチレート、ビニルラウレートおよびビニルステアレート、特に3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸およびα,β−モノエチレン系不飽和ジカルボン酸、例えば殊にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸と、一般に1〜20個、特に1〜8個、殊に1〜4個のC原子を有するアルカノールとのエステル、例えば特にアクリル酸−およびメタクリル酸メチル−、−エチル−、−n−ブチル−、−イソブチル−、−ペンチル−、−ヘキシル−、−ヘプチル−、−オクチル−、−ノニル−、−デシル−および−2−エチルヘキシルエステル、フマル−およびマレイン酸ジメチルエステルまたは−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマル酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリルならびにC4〜8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン(ブタジエン)およびイソプレンである。前述の単量体は、たいてい主要単量体を形成し、この主要単量体は、単量体Mの全体量に対して、30質量%以上、頻繁に50質量%以上、しばしば80質量%以上の割合を占める。
【0011】
また、単量体Mとして、20℃および1atm(絶対圧力)で脱イオン水1000g当たり溶解度200g以上、有利に300g以上、殊に有利に500g以上を有する、全てのエチレン系不飽和単量体がこれに該当する。この種の高い水溶性を有する単量体Mは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素(UMA)、N−(2−アクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートのように、しばしば少なくとも1個の酸基、殊にカルボン酸基またはスルホン酸基、ヒドロキシアルキル基、アミド、エチレン尿素基、アセトアセトキシ基を有する。アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドおよび/またはAMPSは、殊に好ましい。勿論、本発明によれば、1個の酸基、殊に1個のカルボン酸基またはスルホン酸基を有する前記単量体のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩をも含むことを意図することは、評価されるであろう。この水溶性単量体Mの量は、一般に、それぞれ単量体Mの全体量に対して10質量%以下、有利に0.5質量%以上および5質量%以下、殊に有利に1質量%以上および3質量%以下である。
【0012】
通常、重合体マトリックスのフィルムの内部強度を増加させる単量体Mは、常に、少なくとも2個の非共役エチレン系不飽和二重結合を有する。このための例は、2個のビニル基を有する単量体、2個のビニリデン基を有する単量体ならびに2個のアルケニル基を有する単量体である。この場合、2価アルコールとα,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に好ましく、このカルボン酸のうちアクリル酸およびメタクリル酸が有利である。この種の2つの非共役エチレン系不飽和二重結合を有する単量体の例は、アルキレングリコールジアクリレートおよび−ジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレートならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、シクロペンタンジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートである。このいわゆる架橋性単量体Mの量は、一般に、それぞれ単量体Mの全体量に対して0.01質量%以上および60質量%以下、有利に0.5質量%以上および50質量%以下、殊に有利に1質量%以上および30質量%以下である。
【0013】
勿論、本発明によれば、種々の単量体Mの混合物が使用されてもよい。
【0014】
本発明によれば、好ましくは、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとのエステル30〜99.9質量%、または
スチレンおよび/またはブタジエン30〜99.9質量%、または
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン30〜99.9質量%、または
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン30〜99.9質量%を含有する単量体Mの混合物を使用することができる。
【0015】
殊に、本発明によれば、好ましくは、
少なくとも1つの3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド0.1〜5質量%および
アクリル酸および/またはメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとの少なくとも1つのエステル30〜99.9質量%、または
少なくとも1つの3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド0.1〜5質量%および
スチレンおよび/またはブタジエン30〜99.9質量%、または
少なくとも1つの3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド0.1〜5質量%および
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン30〜99.9質量%、または
少なくとも1つの3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン系不飽和モノ−および/またはジカルボン酸および/またはこれらのアミド0.1〜5質量%および
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン30〜99.9質量%を含有する単量体Mの混合物を使用することができる。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、重合により得られる重合体がガラス転移温度−50℃以上および180℃以下、殊に−10℃以上および120℃以下、好ましくは0℃以上および100℃以下を有する、単量体Mの混合物が使用される。この場合、当業者には、単量体Mの種類および量を意図的に選択することによって、本発明により得られる重合体のガラス転移温度を調節することが可能である。ガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移温度の限界値を意味し、G.カニッヒ(G.Kanig)(コロイドマガジン&重合体マガジン第190巻1頁、方程式1(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere,Bd.190,Seite 1,Gleichung 1))によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にある。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点値測定、DIN53765)により測定される。
【0017】
フォックス(Fox)(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1956[Ser.II]1,第123頁およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie,第19卷,第18頁,第4版,Verlag Chemie,Weinheim,1980)により、次の良好な近似式が最大で弱く架橋された共重合体のガラス転移温度に適用される:
1/Tg=x1/Tg1 + x2/Tg2 + ....xn/Tgn、
上記式中、x1,x2,....xnは、単量体1,2,....nの質量分数を表わし、Tg1,Tg2,Tgnは、それぞれ単量体1,2,...nの1つから形成された重合体のケルビン度でのガラス転移温度を表わす。多くの重合体の単独重合体のTg値は、公知であり、例えばウールマン工業化学百科事典、第5版、A21巻、第169頁、化学出版、ヴァインハイム、1992年(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Aufl.,Vol.A21,第169頁,Verlag Chemie,Weinheim,1992)に記載されており、さらに、単独重合体のガラス転移温度についての出典は、例えばJ.ブランドララップ、E.H.イマーグート著、ポリマーハンドブック、第1版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1966年、第2版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1975年および第3版、J.ウィレイ社、ニューヨーク、1989年(J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,1st Ed.,J.Wiley,New York,1966,2nd Ed.J.Wiley,New York,1975および3rd Ed.J.Wiley,New York,1989)である。
【0018】
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−プロピルヘプチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、第三ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−プロピルヘプチルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−n−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、アクリルニトリルおよびメタクリルニトリルを含む群から選択された主要単量体Mは、特に有利である。
【0019】
本発明によれば、本発明による方法の範囲内で、全単量体量に対して少なくとも1つの分散助剤1質量%以下は、共用されてよい。分散助剤として、このラジカル水性乳化重合の実施に慣用的に使用される保護コロイドならびに乳化剤がこれに該当する。双方の物質種は、当業者によく知られている。
【0020】
適した保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体またはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/または4−スチレンスルホン酸を含有する共重合体およびそのアルカリ金属塩、また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ基含有アクリレート、メタクリラート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド含有単独重合体および共重合体である。更に、適した保護コロイドは、ホウベンーヴェイル(Houben−Weyl)の有機化学の手法第XIV/1巻、高分子材料、ゲオルグティエメ出版、シュツットガルト在、1961年、第411〜420頁(Methoden der organischen Chemie,Band XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,Seiten 411 bis 420)に詳細に記載されている。
【0021】
勿論、保護コロイドおよび/または乳化剤からなる混合物が使用されてもよい。しばしば分散助剤として、相対分子量が保護コロイドとは異なって通常1000未満である乳化剤のみが使用される。前記乳化剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性の性質であってよい。界面活性剤物質の混合物を使用する場合には、個々の成分は互いに相溶性でなければならず、このことが疑わしい場合には少しの予備試験に基づいて検査してよいことは勿論である。一般には、アニオン性乳化剤は、互いに相溶性であり、かつ非イオン性乳化剤と相溶性である。同様のことがカチオン性乳化剤に対しても当てはまり、その一方でアニオン性およびカチオン性乳化剤は、多くの場合に相互に相溶性ではない。好適な乳化剤の概要は、例えばホウベンーヴェイル(Houben−Weyl)の有機化学の手法XIV/1巻、高分子材料、ゲオルグティエメ出版、シュツットガルト、1961年、192〜208頁(Methoden der organischen Chemie,Band XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,Seiten 192 bis 208)に見出される。
【0022】
しかし、本発明によれば、分散助剤として、殊に乳化剤が使用される。
【0023】
常用の非イオン乳化剤は、例えばエトキシ化されたモノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)ならびにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。このための例は、BASF社のLutensol(登録商標)A商標(C12〜C14−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:3〜8)、Lutensol(登録商標)AO商標(C13〜C15−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜30)、Lutensol(登録商標)AT商標(C16〜C18−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:11〜80)、Lutensol(登録商標)ON商標(C10−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜11)およびLutensol(登録商標)TO商標(C13−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜20)である。
【0024】
通常の陰イオン性乳化剤は、例えばアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0025】
更に、一般式(I)
【化1】

〔式中、R1およびR2は、H原子またはC4〜C24−アルキルを表わし、同時にはH原子ではなく、M1およびM2は、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい〕で示される化合物は、他の陰イオン乳化剤として有効であることが証明された。一般式(I)においては、R1およびR2は、有利に6〜18個、殊に6、12および16個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または水素原子を表わし、その際、R1およびR2は同時にH原子ではない。M1およびM2は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであることが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。M1およびM2がナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖状のアルキル基であり、かつR2がH原子であるかまたはR1である化合物(I)が特に有利である。特に、50〜90質量%のモノアルキル化生成物の含量を有する工業用混合物、例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Company社の商標)が使用される。化合物(I)は、例えば米国特許第4269749号明細書の記載から一般に公知であり、かつ市販されている。
【0026】
好適な陽イオン活性乳化剤は、一般にC6〜C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環式基を有する第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。例示的に、ドデシルアンモニウムアセテートまたは相応するスルフェート、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルのスルフェートまたはアセテート、N−セチルピリジニウムスルフェート、N−ラウリルピリジニウムスルフェートならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムスルフェートならびにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジスルフェート、エトキシル化された獣脂脂肪アルキル−N−メチルアンモニウムスルフェートおよびエトキシル化されたオレイルアミン(例えば、BASF SE社のUniperol(登録商標)AC、約12個のエチレンオキシド単位)が挙げられる。数多くの他の例は、H.Staeche,Tensid−Taschenbuch,Carl−Hanser−Verlag,Muenchen,Wien,1981中、およびMcCutcheon’s,Emulsifiers & Detergents,MC Publishing Company,Glen Rock,1989中に見出される。例えばペルコレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレートおよびカルボキシレート、例えばアセテート、トリフルオロアセテート、トリクロロアセテート、プロピオネート、オキサラート、シトレート、ベンゾエート、ならびに有機スルホン酸の共役アニオン、例えばメチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネートおよびパラ−トルエンスルホネートのように陰イオン性対基が可能な限り弱い求核性であるならば、更にテトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートまたはヘキサフルオロアンチモナートが有利である。
【0027】
分散助剤として使用される乳化剤および/または保護コロイドの全体量は、それぞれ全単量体量に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、殊に好ましくは0.1質量%以下である。しばしば、分散助剤は、全く使用されない。
【0028】
しかし、分散助剤を使用する場合には、少なくとも1つの分散助剤の少なくとも1つの部分量を予め装入し、場合により残留する残りの量を水性重合媒体に重合条件下で供給することは、可能である。勿論、少なくとも1つの分散助剤の全体量を重合条件下で供給することも可能である。この場合、分散助剤は、それぞれ重合条件下で非連続的に1つ以上の分量で計量供給することができるか、または連続的に変化するかまたは不変の量の流れで計量供給することができる。
【0029】
水性重合媒体中でのエチレン系不飽和単量体Mの重合反応は、少なくとも1つの重合開始剤によって開始される。この場合、本発明によれば、ラジカル開始される水性乳化重合から当業者に公知である、全てのラジカル開始剤を使用することができる。このラジカル重合開始剤は、原理的にペルオキシドならびにアゾ化合物であることができる。勿論、レドックス開始剤系もこれに該当する。ペルオキシドとしては、原理的に、無機ペルオキシド、例えば過酸化水素またはペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩またはジアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、例えばモノナトリウム塩およびジナトリウム塩、モノカリウム塩およびジカリウム塩またはアンモニウム塩または有機ペルオキシド、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えば第三ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシドまたはクミルヒドロペルオキシド、ならびにジアルキルペルオキシドまたはジアリールペルオキシド、例えばジ−第三ブチルペルオキシドまたはジクミルペルオキシドが使用されてよい。アゾ化合物としては、本質的に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako Chemicals社のV−50に相当)が使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤としては、主として上述のペルオキシドが挙げられる。相応する還元剤としては、酸化度が低い硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、例えばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウムおよび/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アルカリ金属塩、特に脂肪族スルフィン酸のカリウム塩および/またはナトリウム塩、ならびにアルカリ金属硫化水素、例えば硫化水素カリウムおよび/または硫化水素ナトリウム、多価金属塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、燐酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸ならびに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンを使用することができる。一般に、使用されるラジカル開始剤の量は、全単量体量に対して0.01質量%以上および5質量%以下、有利に0.1質量%以上および3質量%以下、殊に0.2質量%以上および1.5質量%以下である。
【0030】
本発明によれば、ラジカル開始剤の全体量は、水性重合媒体中で重合反応の開始前に予め装入されてよい。しかし、場合により単位にラジカル開始剤の部分量を水性重合媒体中で重合反応の開始前に予め装入し、次に重合条件下で本発明による重合反応中に全体量または場合により残留する残りの量を使用量に応じて連続的または非連続的に添加することもできる。
【0031】
高度に枝分かれした重合体は、本発明の範囲内で全く一般的な重合体であり、この重合体は、強く枝分かれした構造および高い官能性を示す。高度の枝分かれした重合体の一般的な定義については、P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,第2718〜2723頁、およびH.Frey et.al.,Chem.Eur.J.2000,6,Nr.14,第2499〜2506頁が引き合いに出される(そこには、本明細書中で選択された定義からずれて、"超分枝鎖状重合体"と呼称されている)。
【0032】
デンドリマーおよび超分枝鎖状重合体の群からなる、特に樹枝状重合体は、本発明の範囲内で、高度に枝分かれした重合体に含まれる。
【0033】
デンドリマーは、構造的に星形重合体から導き出されるが、しかし、この場合、個々の鎖は、それぞれそれらの側で星形に枝分かれし、互いに同形であり、したがって高度に対称の構造を生じる。デンドリマーは、小さな分子から出発して、この分子に絶えず繰返し定義される反応結果により枝分かれ単位を有する単量体が付加されて生じる。こうして単量体末端基の数は各反応工程とともに指数的に増加し、その際、末端では理想的な場合には球形の樹木構造が生じる。この樹木構造の簡単な構造(理想的な場合には、全ての枝は、正確に同数の単量体単位を含む)のために、デンドリマーは、本質的に単分散であり、すなわち一般に規定されたモル質量を有する。
【0034】
分子的および構造的に均一に高度に枝分かれした重合体は、以下、一律にデンドリマーと呼称される。
【0035】
超分枝鎖状重合体は、本発明の範囲内で、前記のデンドリマーとは異なり分子的ならびに構造的に不均一である、高度に枝分かれした重合体を意味する。この超分枝鎖状重合体は、異なる長さおよび枝分かれの側鎖および/または側枝ならびにモル質量分布(多分散度)を有する。
【0036】
高度に枝分かれした重合体は、その枝分かれ度(分岐度、DB)によって特性決定することができる。この場合、分岐度DBは、
DB(%)=(T+Z)/(T+Z+L)×100
として定義されており、但し、
Tは、末端に結合した単量体単位の平均数であり、
Zは、枝分かれを形成する単量体単位の平均数であり、
Lは、線状に結合した単量体単位の平均数である。
【0037】
高度に枝分かれした重合体は、本発明の範囲内で10〜100%、有利に10〜90、殊に有利に10〜80%の分岐度を有する。
【0038】
デンドリマーは、一般に少なくとも99%、殊に99.9〜100%の分岐度DBを有する。
【0039】
超分枝鎖状重合体は、10〜95%、有利に25〜90%、殊に有利に30〜80%の分岐度DBを有する。
【0040】
重合体粒子の水性分散液を製造するための本発明による方法の範囲内で、原理的に構造的および分子的に均一なデンドリマーならびに分子的および構造的に不均一な超分枝鎖状重合体を使用することができる。
【0041】
一般に、超分枝鎖状重合体は、比較的簡単に、ひいてはより経済的にデンドリマーとして製造可能である。すなわち、例えば単分散のデンドリマーの製造は、全ての結合工程において保護基を導入し、再び除去しなければならないことによって複雑になり、これとは異なり、超分枝鎖状重合体の合成は、多くの場合に一槽反応で行なうことができる。超分枝鎖状重合体を製造するための合成による種々の取り組み方は、例えばC.Gao,D.Yan,Prag.Polym.Sei.29(2004)、第183〜275頁中に記載されている。
【0042】
本発明により適した超分枝鎖状重合体は、原理的に重縮合または重付加によって得ることができる。重縮合は、低分子量化合物、例えば水、アルコールまたはHClを除去しながら、官能性化合物と適した反応性化合物とを繰返し化学的に反応させることを意味する。これに関連して、重付加は、低分子量化合物の除去なしに、官能性化合物と適した反応性化合物とを繰返し化学的に反応させることを意味する。
【0043】
本発明によれば、特にエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基、ウレタン基および尿素基から選択される、重付加または重縮合によって生じる基を有する、高度に枝分かれした重合体は、適している。
【0044】
本発明によれば、特にヒドロキシル基、ならびにカルボン酸基、スルホン酸基またはホスホン酸基から有利に選択される官能基を有する、高度に枝分かれした重合体は、適している。
【0045】
殊に、高度に枝分かれした重合体として、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ならびにこれらの混合形、例えばポリ(尿素ウレタン)、ポリ(エーテルアミン)、ポリ(エステルアミン)、ポリ(エーテルアミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(エステルカーボネート)、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(エーテルエステルカーボネート)等が使用されてよい。
【0046】
高度に枝分かれした重合体の製造は、殊に次の刊行物中に記載されている:
WO−A 2005/026234(高度に枝分かれした、特に超分枝鎖状のポリカーボネート)、
WO−A 01/46296、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10163163号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10219508号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10240817号明細書(超分枝鎖状のポリエステル)、
WO−A 09/101141、WO−A 03/062306、WO−A 00/56802、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10211664号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第19947631号明細書(超分枝鎖状のポリエステル)、
WO−A 06/087227[超分枝鎖状の窒素原子含有重合体、特にポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステルアミン)]、
WO−A 97/02304およびドイツ連邦共和国特許出願公開第19904444号明細書[超分枝鎖状のポリウレタンおよび超分枝鎖状のポリ(尿素ウレタン)]、
WO−A 03/066702、WO−A 05/044897およびWO−A 05/075541(超分枝鎖状のポリ尿素)、
WO−A 05/007726[超分枝鎖状のアミノ基含有重合体、特にポリ(エステルアミン)]、
WO−A 99/16810および欧州特許出願公開第1036106号明細書[超分枝鎖状のポリ(エステルアミド)]、
WO−A 06/018125(超分枝鎖状のポリアミド)および
WO−A 06/089940[超分枝鎖状のポリ(エステルカーボネート)]。
【0047】
本発明によれば、高度に枝分かれした重合体1グラム当たり酸基0.3mmol以上、好ましくは0.5mmol以上および20mmol以下、有利に0.5mmol以上および15mmol以下を有する、高度に枝分かれした重合体が使用される。本発明の範囲内で、酸基は、20℃で脱イオン水中で2以上および10以下のpH値でプロトンの放出によってイオン化された形に変換されうる、全ての官能基を有する。これに関連して、酸基は、有利にカルボン酸基(−CO2H)、スルホン酸基(−SO3H)および/またはホスホン酸基(−PO32)から選択され、この場合、カルボン酸基が殊に好ましい。勿論、本発明によれば、前記酸の塩、殊に前記酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩が含まれていてもよい。
【0048】
酸基含有の高度に枝分かれした重合体の製造は、当業者によく知られている。
【0049】
すなわち、カルボン酸基含有の高度に枝分かれした重合体は、例えばWO 2006/089930中の高度に枝分かれしたポリカーボネートの例につき開示されているように、ヒドロキシル基および/または第1アミノ基および第2アミノ基を含有する、高度に枝分かれした重合体と、カルボン酸クロリドまたは環式カルボン酸無水物との反応によって得ることができる。これに関連して、高度に枝分かれした重合体1グラム当たりのmg KOHでのカルボン酸基の含量は、DIN 53402による酸価の測定によって分析測定されることができ、相応して、重合体1グラム当たりのmmol カルボン酸で換算されうる。
【0050】
スルホン酸基含有の高度に枝分かれした重合体は、例えば少なくとも三官能性のアルコールと少なくとも二官能性のイソシアネートとの反応によって高度に枝分かれしたポリウレタンに変え、ポリウレタン中に残留するイソシアネート基とナトリウム2−アミノエタンスルホネートとの引続く反応によって得ることができる。超分枝鎖状のポリウレタンの合成は、例えばWO 2004/101624中に記載されている。この刊行物の記載とは異なり、本発明の範囲内で有利に使用される三官能性のアルコールは、1〜20モル過剰量の酸化エチレン、酸化プロピレンまたはこれら双方の混合物と反応された、グリセリンまたはトリメチロールプロパンのアルコキシレートである。これに関連して、スルホン酸基の含量は、高度に枝分かれした重合体1グラム当たりのmmolでスルホン酸基を有する本発明による超分枝鎖状重合体の硫黄含量を測定することによって元素分析により測定されることができる。
【0051】
好ましくは、酸基含有の高度に枝分かれした重合体は、酸基と共になおヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する。このような基は、例えば、高度に枝分かれした重合体がポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ならびにこれらの混合形、例えばポリ(尿素−ウレタン)、ポリ(エーテルアミン)、ポリ(エステルアミン)、ポリ(エーテルアミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(エステルカーボネート)、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(エーテルエステルカーボネート)である場合に、高度に枝分かれした重合体中に含有されている。
【0052】
同様に、酸基含有の高度に枝分かれした重合体またはヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する酸基含有重合体が付加的になおエチレン系不飽和二重結合を含有することは、好ましい。このような基は、例えば、高度に枝分かれした重合体が少なくとも1つの三官能性のアルコールと少なくとも1つの少なくとも三官能性のカルボン酸との反応によって得られたポリエステルである場合に、高度に枝分かれした重合体中に含有されており、この場合、少なくとも二官能性のカルボン酸の少なくとも25質量%は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらの誘導体、例えば無水物またはモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルから選択され、このポリエステルには、合成中または合成後にカルボン酸クロリドまたは環式カルボン酸無水物との反応によって付加的なカルボン酸基が設けられる。
【0053】
更に、このようなエチレン系不飽和基は、例えば少なくとも1つの三官能性アルコールと少なくとも1つの有機カーボネートとの反応によって得られる、高度に枝分かれしたポリカーボネート中に含有されており、この場合には、合成中または合成後に、エチレン系不飽和二重結合ならびにヒドロキシル基および/またはカーボネート基と比較して反応性の官能基を有する化合物で変性されていてよい。適した化合物は、例えばイソプレノール、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらの誘導体、例えば無水物またはモノアルキルエステルもしくはジアルキルエステルである。
【0054】
本発明により使用可能な酸基含有の高度に枝分かれした重合体は、一般に数平均分子量700g/mol以上および100000g/mol以下、有利に1000g/mol以上および50000g/mol以下を有する。数平均分子量の測定法は、当業者によく知られており、特にゲル浸透クロマトグラフィーによって行なわれ、この場合試料がよりいっそう良好な可溶性を有する溶剤に依存して、ポリメチルメタクリレートは、標準として使用され、およびテトラヒドロフランまたはジメチルアセトアミドは、溶離剤として使用される。この方法は、Analytiker Taschenbuch 第4巻,第433〜442頁,Berlin 1984中に記載されている。
【0055】
高度に枝分かれした重合体の本発明により使用される量は、それぞれ全単量体量に対して、5質量%以上および60質量%以下、有利に5質量%以上および30質量%以下、殊に有利に5質量%以上および25質量%以下である。
【0056】
本発明にとって本質的なことは、水性重合媒体中に最初に単に
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量の10質量%以上および場合により
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量の50質量%以下
を予め装入し、引続き重合条件下で少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の場合により残留する残りの量を添加し、少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量または場合により残留する残りの量を添加し、および単量体の変換率が80質量%以上になるまで重合することにある。
【0057】
本発明によれば、少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量の10質量%以上、好ましくは50質量%以上、有利に90質量%以上が水性重合媒体中に重合の開始前に予め装入される。特に有利には、少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量は、水性重合媒体中に予め装入される。高度に枝分かれした重合体の場合により残留する残りの量は、水性重合媒体に重合条件下で非連続的に1つ以上の分量で供給されてよいか、または連続的に不変の流れで、または変化する量の流れで供給されてよい。
【0058】
本発明にとって本質的なことは、全単量体量の50質量%以下が水性重合媒体中に予め装入されることにある。しばしば、20質量%以下または10質量%以下が水性重合媒体中に予め装入される。しかし、水性重合媒体中に単量体Mを予め装入しないことも可能である。更に、単量体Mの全体量または場合により残留する残りの量は、水性重合媒体に重合条件下で非連続的に1つ以上の分量で供給されてよいか、または連続的に不変の流れで、または変化する量の流れで供給されてよい。また、単量体Mの組成は、計量供給中に変化してよい(例えば、段階法または密度勾配法)。
【0059】
単量体Mの部分量が予め装入された場合には、この予めの装入は、単量体Mを重合するのに不適当である条件下で行なわれる。例えば、ラジカル開始剤が予め装入されないかまたはラジカル開始剤が予め装入される場合には、これらは、ラジカル開始剤の崩壊を開始させるのに不適当な温度条件下および/または圧力条件下で行なわれる。
【0060】
特に有利には、単量体Mは、重合条件下で連続的に不変の量の流れで添加される。好ましくは、単量体Mは、バルクの状態で添加される。本発明によれば、好ましくは、単量体Mは、添加のそれぞれの時点で既に添加された全単量体Mの80質量%以上、有利に90質量%以上が重合されているような重合条件下で添加される。これに相応する方法は、当業者によく知られている(例えば、反応熱量計の使用)。
【0061】
本発明の範囲内で、重合条件とは、一般に、ラジカル開始される重合反応が十分な重合速度で進行するような温度および圧力を意味する。重合条件は、殊に使用されるラジカル開始剤に依存する。好ましくは、ラジカル開始剤の種類および量、重合温度および重合圧力は、重合反応を開始するかまたは維持するために常に十分に開始ラジカルが存在するように選択される。殊に、重合温度および重合圧力は、使用されるラジカル開始剤の半減期が3時間以下、好ましくは1時間以下、殊に好ましくは30分間以下であるように選択される。
【0062】
本発明による方法のための反応時間として、0〜170℃の全範囲がこれに該当する。この場合、一般に50〜120℃、特に60〜110℃、有利に70〜100℃の温度が適用される。本発明による方法は、1atm[1013バール(絶対圧)大気圧]より小さい圧力、これと同じ圧力またはこれより大きい圧力で実施されてよく、したがって、この重合温度は100℃を超過しており、かつ170℃までであってよい。易揮発性の単量体、例えばエチレン、ブタジエンまたは塩化ビニルを、圧力を高めて重合させることは、好ましい。この場合、1.2、1.5、2、5、10、15バール(絶対圧)の圧力または更に高い値を設定してよい。重合反応を低圧で実施する場合には、950ミリバール、特に900ミリバール、有利には850ミリバール(絶対圧)の圧力に調節される。好ましくは、本発明による方法は、1atmで酸素の遮断下で、例えば不活性ガスの雰囲気下、例えば窒素またはアルゴンの下で実施される。
【0063】
水性重合媒体は、場合により付加的になお水性重合体分散液の全体量に対して20℃および1atm(絶対圧)で脱イオン水1000g当たり200g以上の溶解度を有する水溶性の有機溶剤を微少量、一般に10質量%以下、しばしば5質量%以下、頻繁に1質量%以下含有することができる。例示的に脂肪族C1〜C5アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールならびにその異性体混合物、n−ペンタノールならびにその異性体化合物等、脂肪族C3〜C4ケトン、例えばアセトンまたはエチルメチルケトンならびに環式エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサンが挙げられる。好ましくは、本発明によれば、有機溶剤は、全く使用されない。
【0064】
本発明によれば、好ましくは、水性重合媒体は、2以上および10以下、有利に5以上および9以下、殊に有利に7以上および8.5以下の範囲内のpH値を有する。pH値の調節は、当業者によく知られており、好ましくは、無機酸または有機酸、例えば塩酸、硫酸または酢酸、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウム、または通常の緩衝液混合物である。水性重合媒体のpH値は、室温で市販の校正型pHメーターにより測定される。
【0065】
特に好ましくは、本発明による方法は、変換率が80質量%以上、好ましくは95質量%以上、殊に好ましくは99質量%以上になるまで単量体Mが重合条件下で反応されるように行なわれる。しばしば、重合の終結後に得られる水性重合体分散液が残留単量体含量を減少させるための後処理に掛けられることは、好ましい。これに関連して、後処理は、化学的に、例えば効果的なラジカル開始剤系を使用することによって重合反応を完結させることにより行なわれ、および/または物理的に、例えば水性重合体分散液を水蒸気または不活性ガスでストリッピングさせることによって行なわれる。相応する化学的方法および/または物理的方法は、当業者によく知られている[例えば、欧州特許出願公開第771328号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19624299号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19621027号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19741184号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19741187号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19805122号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19828183号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19839199号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19840586号明細書および19847115参照]。これに関連して、化学的後処理と物理的後処理とからの組合せは、反応されていない単量体Mと共に、なお別の支障のある易揮発性有機成分(いわゆるVOCs[volatile organic Compounds])が水性重合体分散液から除去されるという利点を提供する。
【0066】
本発明による方法により得られる重合体粒子は、擬似弾性光散乱(ISO規格13321)により測定される、0を上廻りかつ100nm以下の数平均粒径(累積z平均)を有する。好ましくは、数平均粒径は、5nm以上および90nm以下、殊に好ましくは10nm以上および70nm以下である。
【0067】
本発明による方法により得られる水性重合体分散液は、一般に狭い粒径分布を有する重合体粒子を有する。
【0068】
狭い粒径分布とは、本明細書の範囲内で分析による超遠心分離分析法により測定される、質量平均粒子直径Dw50の数平均粒径DN50[Dw50/DN50]に対する比が2.0以下、有利に1.5以下、殊に有利に1.2以下または1.1以下であるを意味する(これに関しては、S.E.ハーディングら著、生化学およびポリマー科学における超遠心分析、ロイヤルソサエティー・オブ・ケミストリー、ケンブリッジ、英国、1992年、第10章、Eight−Cell−AUC−マルチプレクサーを用いるポリマー分散液の分析(S.E.Harding et al.,Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,Chapter 10,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell−AUC−Multiplexer):高分解粒径分布および密度勾配テクニック、W.メヒトル著、第147〜175頁(High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,Seiten 147 bis 175)を参照のこと)。
【0069】
本発明により得られる水性重合体分散液は、通常、それぞれ水性重合体分散液に対して、5質量%以上および70質量%以下、しばしば10質量%以下および50質量%以下、頻繁に15質量%以上および40質量%以下を有する。
【0070】
本発明による水性重合体分散液が場合により、当業者によく知られた他の助剤、例えば所謂増粘剤、消泡剤、中和剤、緩衝剤および/または防腐剤を含有していてよいことは、本質的なことである。
【0071】
本発明による水性重合体分散液は、好ましくは、接着剤、シーラント、漆喰(polymeric renders)、紙用コーティングスリップ、繊維フリース、塗料、化粧用配合物およびフォームの製造ならびに鉱物質の結合材およびプラスチックの変性に適している。
【0072】
更に、本発明による少なくとも1つの成獣交代分散液から簡単な方法(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)で相応する重合体粉末を得ることができる。前記の本発明により得られる重合体分散液は、同様に、接着剤、シーラント、漆喰、紙用コーティングスリップ、繊維フリース、塗料、化粧用配合物およびフォームの製造ならびに鉱物質の結合材およびプラスチックの変性に使用することができる。
【0073】
本発明は、次の制限のない例につき詳説される。
【実施例】
【0074】

ポリオール1:1モル当たり酸化プロピレン5.2モルとランダムに反応されたトリメチロールプロパン(TMP)をベースとするポリエーテロール。
ポリオール2:1モル当たり酸化プロピレン15.6モルとランダムに反応されたトリメチロールプロパン(TMP)をベースとするポリエーテロール。
【0075】
DBTLは、触媒のジ−n−ブチル錫ジラウレートについての略符号である。
【0076】
高度に枝分かれした重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにつき検出器としての屈折計を用いて分析された。移動相としてテトラヒドロフラン(THF)またはジメチルアセトアミド(DMAc)が使用され、分子量を測定するための標準としてポリメチルメタクリレート(PMMA)が使用された。OH価は、DIN 53240、第2部により測定された。酸価は、DIN 53402により測定された。
【0077】
NCO含量は、DIN EN ISO 11909により測定された。
【0078】
a)高度に枝分かれした重合体の製造
例1:高度に枝分かれした重合体1(HVP1)
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を装備した4 lのフラスコ中に、室温でポリオール1 2150g、ジエチルカーボネート709gならびに固体の水酸化カリウム0.9gを予め装入した。この反応混合物を撹拌下に140℃に加熱し、反応混合物の温度が遊離するエタノールの沸騰冷却により約110℃の一定の温度に低下するまで沸騰を維持した。更に、還流冷却器を、捕集容器を備えた下降凝縮器によって切り換え、反応の際に生じた留出物を除去し、これに関連して、反応混合物の温度は、220℃にまで上昇された。この留出物を冷却された丸底フラスコ中に捕集し、秤量し、こうして理論的に可能な完全変換率に対して変換率を百分率で算出した。94%の変換率が達成された後に、この反応混合物を室温に冷却し、および85質量%の水性燐酸を添加することにより7のpH値にもたらした。引続き、この反応混合物を再び加熱し、200℃の温度で4時間乾燥窒素を通過させ、なお残留する残りの量の揮発性成分を除去した。その後に、この反応を室温への冷却によって終結させた。本発明による重合体1(前駆体)を明黄色の油として得た。
【0079】
次に、前記の高度に枝分かれした重合体前駆体830gを室温で無水コハク酸215gと混合し、攪拌しながら100℃に加熱し、およびこの温度で5時間攪拌した。その後に、この反応を室温への冷却によって終結させた。HVP1を黄色の油として得た(GPC(THF):Mn=1540g/mol、Mw=15210g/mol;OH価=HVP1 1グラム当たり18mg KOH;酸価=HVP1 1グラム当たり122mg KOH)。
【0080】
例2:高度に枝分かれした重合体1(HVP1)
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を装備した4 lのフラスコ中に、室温で2,4−トルイレンジイソシアネート435gを予め装入した。次に、50分の時間に亘り、ポリオール1 1075gを、反応フラスコ中の内部温度が40℃を超えて上昇しないように攪拌しながら添加した。添加が行なわれた後、反応混合物を、7.6質量%のNCO含量が達成されるまで、35℃で0.5時間攪拌した。引続き、ポリオール1 1175gを添加し、この反応混合物を室温で16時間攪拌し、この場合NCO含量は、0質量%に減少した。高度に枝分かれした重合体2 2300g(前駆体)が得られた。
【0081】
次に、前記の高度に枝分かれした重合体前駆体1000gを室温で無水コハク酸250gと混合し、攪拌しながら110℃に加熱し、およびこの温度で6時間攪拌した。その後に、この反応を室温への冷却によって終結させた。HVP2を黄色の油として得た(GPC(THF):Mn=1380g/mol、Mw=5330g/mol;OH価=HVP2 1グラム当たり74mg KOH;酸価=HVP2 1グラム当たり115mg KOH)。
【0082】
例3:高度に枝分かれした重合体3(HVP3)
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を装備した5 lのフラスコ中に、室温でポリオール1 3010g、ジエチルカーボネート1034gならびに固体の水酸化カリウム0.9gを予め装入した。この反応混合物を攪拌しながら沸騰するまで加熱し、反応混合物の沸騰温度が遊離するエタノールの沸騰冷却によって一定の温度(約126℃)に低下するまで沸騰を維持した。引続き、還流冷却器を、捕集容器を備えた下降凝縮器によって切り換え、生じた留出物を除去し、これに関連して、反応混合物の温度は、190℃にまで上昇された。更なる留出物がもはや生じなかった場合に、この反応混合物を室温に冷却し、および85質量%の水性燐酸を添加することによって7のpH値にもたらした。引続き、反応混合物を攪拌しながら加熱し、および排気し、引続き140℃の温度で100ミリバール(絶対圧)で30分間維持することにより、残留する揮発性成分を除去した。次に、このバッチ量を室温に冷却した。重合体3(前駆体)を明黄色の油として得た。
【0083】
次に、前記の高度に枝分かれした重合体前駆体700gを室温で無水コハク酸142gと混合し、130℃に加熱し、およびこの温度で2時間攪拌した。その後に、この反応混合物を60℃に冷却し、還流冷却器中で昇華された無水コハク酸をアセトン5mlでの洗い落としによって再び反応混合物に供給した。アセトンを留去しながら、この反応混合物を1時間内で再び130℃に加熱し、この温度でさらに30分間攪拌した。その後に、この反応を室温への冷却によって終結させた。HVP3を黄色の油として得た(GPC(DMAc):Mn=2200g/mol、Mw=21500g/mol;OH価=HVP3 1グラム当たり54mg KOH;酸価=HVP3 1グラム当たり102mg KOH)。
【0084】
例4:高度に枝分かれした重合体4(HVP4)
攪拌機、内部温度計および捕集容器を備えた下降凝縮器を装備した4 lのフラスコ中に、室温でポリオール2 2048g、無水マレイン酸174gならびにDBTL0.1gを予め装入した。この反応混合物を攪拌しながら180℃に加熱し、反応混合物の酸価が重合体1グラム当たり43mg KOHに低下するまで前記の温度に維持した。次に、この反応を室温への冷却によって終結させた。次に、この反応混合物を室温で無水コハク酸275gと混合し、攪拌しながら130℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。その後に、この反応を室温への冷却によって終結させた。HVP4を黄色の油として得た(GPC(DMAc):Mn=1700g/mol、Mw=3600g/mol;OH価=HVP4 1グラム当たり59mg KOH;酸価=HVP4 1グラム当たり104mg KOH)。
【0085】
例5:高度に枝分かれした重合体5(HVP5)
攪拌機、内部温度計および還流冷却器を装備した2 lのフラスコ中に、室温でヘキサメチレンジイソシアネート200gを予め装入した。次に、5分の時間に亘り、攪拌しながら塩化ベンゾイル0.1gと混合したポリオール2 1236gを、反応フラスコ中の内部温度が40℃を超えて上昇しないように添加した。添加が行なわれた後、反応混合物を50〜60℃で2.5時間攪拌した。得られた反応混合物は、4.7質量%のNCO含量を有していた。引続き、この反応混合物をDBTL0.2gと混合し、3.6質量%のNCO含量が達成されるまで60℃でさらに攪拌した。引続き、この反応を2−アミノプロパンスルホン酸160gと脱イオン水1200g中の水酸化ナトリウム51gとからなる溶液を添加することによって停止させ、および室温に冷却した。HVP5を無色の粘稠な素材として得た(GPC(DMAc):Mn=2395g/mol、Mw=30900g/mol)。
【0086】
b)水性重合体分散液の製造
例6:
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水642g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液9.2gおよびHVP1 30gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1を2時間に亘って供給し、および供給材料2を3時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、重合混合物は、90℃でさらに1.5時間、後重合のために放置され、その後、同時に開始して供給材料3および供給材料4を一定の流量で1時間に亘って供給した。添加が行なわれた後に、反応内容物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0087】
供給材料1:
スチレン107g
メタクリル酸1.2g
1,4−ジビニルベンゼン12g。
【0088】
供給材料2:
脱イオン水109g
過硫酸アンモニウム1.2g。
【0089】
供給材料3:
脱イオン水48g
第三ブチルヒドロペルオキシド2.4g。
【0090】
供給材料4:
脱イオン水48g
亜硫酸水素ナトリウム0.24g
アセトン0.16g。
【0091】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して14.7質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、122℃であることが測定され、および数平均粒径は、27nmであることが測定された。
【0092】
固体含量を一般に、規定された量の水性重合体分散液(約0.8g)をMettler Toledo社の水分計HR73を用いて130℃の温度で一定の質量になるまで乾燥することにより測定した(約2時間)。それぞれ、2回の測定を実施した。それぞれ記載された値は、この測定の平均値を表わす。
【0093】
重合体粒子の数平均粒径を一般に、23℃で、Malvern Instruments社,EnglandのAutosizers NCを用いる0.005〜0.01質量%水性重合体分散液での動的光散乱によって算出した。測定された自己相関関数の累積評価(累積z平均)の平均直径が記載される(ISO規格13321)。
【0094】
ガラス転移温度を一般にDSC法によりMettler Toledo社の示差走査熱量計を用いて測定した(示差走査熱量測定法、20K/分、中点測定、DIN 53765)。
【0095】
例7:
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水600g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液11.5gおよびHVP2 30gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1を2時間に亘って供給し、および供給材料2を3時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、この重合混合物を90℃でさらに1.5時間、後重合させることができた。更に、その後この重合混合物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0096】
供給材料1:
スチレン112g
1,4−ジビニルベンゼン48g。
【0097】
供給材料2:
脱イオン水208g
過硫酸アンモニウム1.6g。
【0098】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して19.6質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、185℃であることが測定され、および数平均粒径は、43nmであることが測定された。
【0099】
例8:
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水460g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液0.5g、HVP3 3gおよび供給材料1 10gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1の残りの量および供給材料3の全体量を2時間に亘って供給し、および供給材料2を3時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、この重合混合物を90℃でさらに1.5時間、後重合させることができた。更に、その後この重合混合物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0100】
供給材料1:
スチレン89g
メタクリル酸1.0g
1,4−ジビニルベンゼン10g。
【0101】
供給材料2:
脱イオン水130g
過硫酸アンモニウム1.0g。
【0102】
供給材料3:
脱イオン水300g
HVP3 17g
25質量%のアンモニア水溶液4.6g。
【0103】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して11.7質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、122℃であることが測定され、および数平均粒径は、51nmであることが測定された。
【0104】
例9:
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水288g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液12.3gおよびHVP4 80gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1を3時間に亘って供給し、および供給材料2を3.5時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、この重合混合物を90℃でさらに1.5時間、後重合させることができた。更に、その後この重合混合物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0105】
供給材料1:
スチレン320g。
【0106】
供給流2:
脱イオン水200g
過硫酸アンモニウム4.0g。
【0107】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して44.3質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、105℃であることが測定され、および数平均粒径は、55nmであることが測定された。
【0108】
例10:
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水624g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液12.3gおよびHVP5 80gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1を2時間に亘って供給し、および供給材料2を3時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、この重合混合物を90℃でさらに1.5時間、後重合させることができた。更に、その後この重合混合物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0109】
供給材料1:
メチルメタクリレート112g
n−ブチルアクリレート48g。
【0110】
供給材料2:
脱イオン水96g
過硫酸アンモニウム1.6g。
【0111】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して20.3質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、39.8℃であることが測定され、および数平均粒径は、47nmであることが測定された。
【0112】
例11(比較)
この比較例11の製造は、単量体の全体量に対してHVP5質量%を用いて行なわれた。このHVP量の中、5%を予め装入し、および95%を計量供給した。
【0113】
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水550gおよび供給材料3 5gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1および供給材料3の残りの量を3時間に亘って供給し、および供給材料2を3.5時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。引続き、この重合混合物を90℃でさらに1.5時間、後重合させることができた。更に、その後この重合混合物を室温に冷却し、および100μmの篩を介して濾過した。
【0114】
供給材料1:
スチレン98g
1,4−ジビニルベンゼン2.0g。
【0115】
供給材料2:
脱イオン水130g
過硫酸アンモニウム1.0g。
【0116】
供給材料3:
脱イオン水100g
HVP3 5g
25質量%のアンモニア水溶液1.2g。
【0117】
得られた水性重合体分散液は、水性分散液の全質量に対して11.6質量%の固体含量を有していた。重合体粒子のガラス転移温度は、110℃であることが測定され、および数平均粒径は、117nmであることが測定された。
【0118】
例12(比較)
この比較例12の製造は、単量体の全体量に対してHVP1質量%を用いて行なわれた。HVPの全体量を予め装入した。
【0119】
1個の攪拌機および4個の計量供給装置を装備した2 lのフラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水744g、25質量%の水酸化アンモニウム水溶液0.2gおよびHVP2 1.20gを予め装入した。この混合物を室温で2時間攪拌し、引続き加熱した。温度が95℃に到達した際に、供給材料1を2時間に亘って供給し、および供給材料2を3時間に亘って供給し、この場合供給は、同時に開始され、および一定の流量で行なった。供給材料1および2の供給の開始から約40分後に、深刻なフロキュレーションが起こり、したがって試験を中断させなければならなかった。
【0120】
供給材料1:
スチレン94.8g
1,4−ジビニルベンゼン24g
メタクリル酸1.2g。
【0121】
供給材料2:
脱イオン水156g
過硫酸アンモニウム1.2g。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mを少なくとも1つのラジカル開始剤および少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の存在下で水性重合媒体中でラジカル開始重合させ、この場合重合のために少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量(全単量体量)に対して少なくとも1つの分散助剤1質量%以下および少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体5質量%以上および60質量%以下が使用され、および少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体が高度に枝分かれした重合体1グラム当たり酸基を0.3mmol以上有する、ことにより、数平均粒径100nm以下を有する重合体粒子の水性分散液を製造するための方法において、
水性重合媒体中に最初に単に
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量の10質量%以上および場合により
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量の50質量%以下
を予め装入し、引続き重合条件下で少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の場合により残留する残りの量を添加し、少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量または場合により残留する残りの量を添加し、および単量体の変換率が80質量%以上になるまで重合することを特徴とする、数平均粒径100nm以下を有する重合体粒子の水性分散液を製造するための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体は、高度に枝分かれした重合体1グラム当たり酸基を0.5mmol以上および20mmol以下有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の酸基は、カルボン酸基(−CO2H)、スルホン酸基(−SO3H)および/またはホスホン酸基(−PO32)から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体は、樹枝状重合体である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体が数平均分子量700g/mol以上および50000g/mol以下を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量は、全単量体量に対して5質量%以上および30質量%以下である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの高度に枝分かれした重合体の全体量を予め装入する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mの全体量は、少なくとも2個の非共役エチレン系不飽和二重結合を有する、少なくとも1つの単量体Mを0.01質量%以上および60質量%以下含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのエチレン系不飽和単量体Mを重合条件下でバルクの状態で添加する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水性重合媒体は、2以上および10以下の範囲内のpH値を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法により得られた水性重合体分散液。
【請求項12】
請求項11記載の水性重合体分散液を乾燥させることにより得られた重合体粉末。
【請求項13】
接着剤、シーラント、漆喰、紙用コーティングスリップ、繊維フリース、塗料、化粧用配合物およびフォームを製造するため、ならびに鉱物質の結合材およびプラスチックを変性するための、請求項11記載の水性重合体分散液または請求項12記載の重合体粉末の使用。

【公表番号】特表2013−517358(P2013−517358A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549315(P2012−549315)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050494
【国際公開番号】WO2011/089078
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】