説明

水晶体吸引術吸引装置用の吸引制御

本発明は、a)吸引機能を持つ、ハンドピース(22)、b)制御コンソール(12)、c)少なくとも部分的に前記制御コンソール内に配置されて、かつ、前記ハンドピースに吸引ライン(20)を介して真空を供給する、吸引ポンプ(16)、d)前記吸引ライン内で前記ハンドピースと前記ポンプとの間に配置された、吸引ベント(30)、及び、e)前記制御コンソール内に配置され、かつ、ユーザーの指示に基づいて、前記吸引ベント、及び/又は、前記吸引ポンプを操作する、ユーザーが調整可能な入力装置、を具備する、水晶体吸引術吸引装置用の吸引制御に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、白内障外科処置の分野に関し、より具体的には、外科処置装置あるいは外科処置コンソールの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も単純に言うと、人の眼は、光を角膜と呼ばれる透明な外側の部分を通して伝達して、水晶体レンズによって網膜上に像の焦点を合わせることによって、視界を提供するように機能する。焦点を合わされた像の質は、眼の大きさ及び形状、並びに角膜及び水晶体レンズとの透明度を含む多くのファクターに依存する。
【0003】
加齢、あるいは、疾病によって水晶体レンズの透明度が下がったとき、網膜に伝達される光の量が減ることによって、視界が劣化する。この眼の水晶体レンズの欠陥は、眼科医療分野において白内障として知られている。このような状態に対する処置として、水晶体レンズを外科的に取除き、そのレンズ機能を人工的な眼球内レンズ(IOL)で置き換える処置が受け入れられている。
【0004】
米国においては、白内障を患った水晶体レンズの大半は、水晶体吸引術と呼ばれる外科処置技術によって取除かれている。この処置の過程で、細いあるいは薄い水晶体吸引術切断チップを患部水晶体レンズ内に挿入して超音波的に振動させる。この振動する切断チップによって、水晶体レンズを液状化あるいは乳化して、水晶体レンズを眼の外へ吸引することができる。患部水晶体レンズは、一旦、取除かれると、人工的なレンズに置き換えられる。
【0005】
眼科外科処置に適している、典型的な超音波外科処置装置は、超音波駆動ハンドピース、取り付けられた切断チップ、及び潅注スリーブと電子的な制御コンソールから構成されている。このハンドピース・アセンブリは、電気ケーブルと柔いチューブによって制御コンソールに取り付けられている。電気ケーブルを介して、コンソールは、ハンドピースによって取り付けられた切断チップへ伝達されるパワー・レベルを変化させ、柔いチューブは、ハンドピース・アセンブリを介して、潅注流体を眼に供給して、吸引流体を眼から吸引する。
【0006】
ハンドピースの作動部分は、圧電性結晶の組に直接取り付けられ、かつ、中心に配置された、共鳴バーあるいは共鳴ホーンである。これらの結晶は、水晶体吸引術の施術中にホーンと取り付けられた切断チップとの双方を駆動するために要求される必要な超音波振動を提供し、コンソールによって制御される。この結晶/ホーン・アセンブリは、中空の本体内あるいはハンドピースの殻に柔軟な取り付け部材によって吊るされている。ハンドピースの本体は、本体の末端部で、直径が小さくなっている部分あるいはノーズコーン(円錐状の頭部)内で終端する。このノーズコーンは、外側にねじが切られており、潅注スリーブを受け入れる。同様に、ホーン・ボアは、その末端部で内側にねじが切られており、切断チップの外側に切られたねじを受ける。潅注スリーブは、ノーズコーンの外側に切られたねじにねじ込まれる、内側にねじが切られたボアも備えている。切断チップが潅注スリーブの開放端を超えて所定の量だけ突出するように、切断チップは調整されている。
【0007】
使用時、切断チップと潅注スリーブの端部は、角膜、強膜、その他の部位内の所定の幅を持つ小さな切開口の中へ挿入される。切断チップは、結晶駆動超音波ホーンにより、潅注スリーブ内の自身の長手方向軸に沿って超音波振動することによって、選択された組織をその本来の場所で乳化する。切断チップの中空のボアは、ホーン内のボアと連通し、ホーンは、ハンドピースからコンソールへ延びる吸引ラインと連通する。コンソール内の圧力あるいは真空度が下がることによって、眼から、切断チップの開口端、切断チップ、ホーン・ボア、及び吸引ラインを通して、収集装置へ、乳化した組織を吸引する。乳化した組織の吸引は、生理食塩水フラッシング溶液、あるいは、潅注スリーブの内側面と切断チップとの間の小さな環状のギャップを介して外科処置術部内へ注入される潅注によって加速される。一旦、水晶体レンズの硬い部分が乳化されて取除かれると、通常、超音波切断ステップに、吸引することのみでより柔らかい水晶体レンズ物質を取除く、潅注/吸引(I/A)ステップが続く。
【0008】
吸引されるべき物質の断片がその大きさが、ハンドピースの先端を通って制限されずに流れることができるようになるまで小さくなっている間に、しばしば、それらの断片は、吸引ポートをブロックして吸引ポートを通過しなくなる。このような場合、ユーザーは、通常、ベントする(すなわち、吸引ラインから真空を解放する)。このようにベントすることによって、ユーザーは、ブロックしている断片を解放することができ、その後、元に戻して、さらに、吸引することができる。いくつかの例では、吸引ポートは、虹彩あるいは後区嚢などの吸引を意図しない組織を偶然的に捕獲してしまうことがある。このような場合、ユーザーは、捕獲された組織を解放して組織の損傷を防止するために、ベントも使用することができる。
【0009】
ベント・プロセスは、通常、真空を解放するためのベント・バルブを開放するステップ、及び装置の圧力をベント・ソースの圧力に持って行くステップを含む。ベント装置のタイプ(流体ベント、あるいは、空気ベント)に依存して、ベント圧力が変化する。例えば、空気ベント装置は、大気圧(すなわち、ゼロ)までベントする。流体ベント装置は、潅注ボトル、すなわち、ボトルの高さの関数である静水圧までベントする。いくつかの装置は、また、吸引ポンプを逆回転させるような、別のあるいは追加のベント方法を使用する。すべての場合で、装置の圧力は、装置の設計で決まる、自動的に固定されたレベルに持って行かれる。
【0010】
最近の装置の設定状態(例えば、ボトルの高さ、真空限界)、及び最近の水晶体吸引術チップとその付属品の種類は多岐に渡っており、通常、固定圧力のベントが行われている間にユーザーが得るベント作用の一貫性に影響を与えてしまうことがある。さらに、ユーザーの技術の習熟度の多様さによってベント作用も多様に変化してしまう。例えば、あるユーザーの技術ではベント不足の結果を招き、ユーザーは再度のフラッシングを頻繁にしなければならなくなる。別の場合においては、その別のユーザーの技術ではベント過剰の傾向にあり、この結果、過剰な水晶体レンズ物質の逆流を招いてしまう。使用される外科処置技術に依存して、この自動作動は、過度に真空がベントされてしまったり、反対に、真空のベントが不十分になってしまう。最近では、非常に多くのタイプのチップ、技術、付属品が入手可能なので、このような事実は、特に、顕著になって来ている。
【0011】
したがって、外科処置コンソール上で吸引ベントを変化可能に制御する方法に対する必要性は引続き存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許公報第5,267,956号明細書
【特許文献2】米国特許公報第5,364,342号明細書
【特許文献3】米国特許公報第5,499,969号明細書
【特許文献4】米国特許公報第5,899,674号明細書
【特許文献5】米国特許公報第6,962,488 B2号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ユーザーがベントのレベルを選択的に変化させることができる、可変制御装置を備えた外科処置装置を提供することによって、従来技術を改良するものである。したがって、本発明の1つの目的は、外科処置コンソール装置を提供することである。
【0014】
別の本発明の1つの目的は、ユーザーがベンチ操作を調整あるいは制御できる、外科処置コンソール制御装置を提供することである。
【0015】
本発明のこれら及びその他効果及び目的は、発明の詳細な記載と特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明と共に使用できる、例示的な外科処置制御コンソールの斜視図である。
【図2】本発明と共に使用できる、装置とカセットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の装置10は、一般に、外科処置コンソール12とカセット14を含む。コンソール12は、米国テキサス州、フォート。ウォースのアルコン・ラボラトリー社から入手可能な、INFINITI(登録商標)ビジョン・システムのような、適切に変更された商業的に入手可能な如何なる外科処置コンソールであることもできる。カセット14は、Beuchatらの特許文献1、特許文献2、及び特許文献3、Jungらの特許文献4、又は、Davisらの特許文献5に記載されているような、適切に変更された商業的に入手可能な如何なる外科処置カセットであることもできる。カセット14は、当該技術分野で周知の手段によってコンソール12と作動可能に連携している。
【0018】
図2からわかるように、コンソール12は、一般に、当該技術分野で広く知られている様々なポンプなどの、流体あるいは真空ベースの如何なる適切なポンプであることもできる、吸引ポンプ機構16を含んでいる。例えば、吸引ポンプ機構16は、吸引ライン20と吸引排出ライン34によって形成される、蠕動ポンプのチューブと相互作用する、蠕動ポンプのローラー・ヘッドであることができる。吸引ライン20は、外科処置ハンドピース22に一方の端部で接続されて、ハンドピース22と反対側の吸引ライン20の端部18は、ポンプ機構16と相互作用して、ハンドピース22を通して流体を引くことによって、ハンドピース22に吸引機能を提供する。吸引ライン20は、ハンドピース22と端部18との間で吸引ベント・ライン24によって横切られている。当該技術分野で周知の侵襲性センサあるいは非侵襲性センサのバリエーションの1つであることができる、圧力センサ26は、吸引ベント・ライン24と流体的に連通している。
【0019】
カセット14は、一般に、流体リザーバー28を含んでいる。ベント・バルブ30を介して吸引ベント・ライン24に流体的に接続されている、吸引ベント・ライン32は、リザーバーの底29で、あるいは、その近傍でリザーバー28から延びる。吸引ポンプ機構16からの吸引あるいは排出は、吸引排出ライン34を介してリザーバー28の中へと向かう。リザーバー28は、また、抗菌性フィルター38を含むことができる、リザーバー・ベント・ライン36を介して大気中へとベントされている。
【0020】
上で議論したように、ポンプ機構16は、蠕動ポンプ・ローラー・ヘッドであって、吸引ライン20と吸引排出ライン34は1つの連続体として形成されて、ポンプ機構16と相互作用する蠕動ポンプ・チューブを形成することが好ましい。しかしながら、当該技術分野の当業者は、吸引ライン20と吸引排出ライン34は、分離された単一の部品、あるいは、複数の部品として形成すること、あるいは、カセット14と一体的に形成することができること、さらに、リニア蠕動ポンプのような、蠕動ポンプ・ローラー・ヘッド以外の吸引ポンプ機構16を利用することができることを理解するであろう。
【0021】
さらに、圧力センサ26は、コンソール12内に含まれているものとして図示されているが、圧力隔膜(図示しない)のような、圧力センサ26のいくつかの部分は、カセット14上に、あるいは、カセット14内に含まれて、コンソール12内に含まれているフォース・トランスデューサあるいはその他手段(図示しない)と相互作用することができることを当該技術分野の当業者は理解するであろう。
【0022】
使用時、カセット14は、コンソール12上、あるいは、コンソール12内に搭載されて、当該技術部分野で周知の手段でコンソール12のカセット受容領域5でコンソール12と連携作動できるように保持されている。装置10は、初期状態においては、清浄な外科処置流体で満たされており、少ない量の流体でリザーバー28を満たしている。外科処置中においては、ポンプ機構16は、吸引物質をハンドピース22を介してリザーバー28内へ吸引する。吸引ライン20内の真空度が高過ぎてベントされる必要があれば、ベント・バルブ30が開かれて、吸引流体は、リザーバーの底29で、あるいは、その近傍でリザーバー28から(リザーバー28が大気圧、又はその近傍にある)、吸引ベント・ライン24を通って、吸引ライン20(真空になっている)内へ引かれることができる。吸引ライン20に対するリザーバー28の垂直方向の位置を変化させることによって、様々なベント・ヘッド圧を達成できることを当該技術分野の当業者は理解するであろう。さらに、また、吸引ライン20の圧力を上げるために、圧力センサ26を監視しながら、ポンプ16を、逆回転させることもできるので、これにより、吸引ライン20内の真空度の下がりを促進することができる。
【0023】
本発明は、ユーザーがベント・バルブ30とポンプ16のベンチ作動を調整できる。このような調整は、当該技術分野の当業者の能力の範囲内で十分扱えるソフトウェア・コマンドによって、コンソール12に備えられた、タッチ・スクリーン113、あるいは、コンソール12に接続されたフット・スイッチ115のような、数多の、通常、商業的に入手可能な、入力装置、あるいは、外科処置コンソールにみられる入力機能の如何なるものを使用して行うことができる。このような調整は、ベント・バルブ30の作動タイミング、要求される真空度の低下を可変的に変化させる、又は、変位する吸引流体の量を変化させるというような、様々な方法で実施することができる。さらに、装置10は、事前にプログラムされた、ベンチ調整“レベル”(例えば、高(強)、中(適度)、低(弱))を含むこともできる。
【0024】
本記載は、例示と説明を目的とするものである。当該技術に関連する分野の当業者にとって本発明の思想と範囲を逸脱せずに上述の本発明に変更等ができることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置装置であって、
a)吸引機能を持つ、ハンドピース、
b)制御コンソール、
c)少なくとも部分的に前記制御コンソール内に配置されて、かつ、前記ハンドピースに吸引ラインを介して真空を供給する、吸引ポンプ、
d)前記吸引ライン内で前記ハンドピースと前記ポンプとの間に配置された、吸引ベント、及び
e)前記制御コンソール内に配置され、かつ、ユーザーの指示に基づいて、前記吸引ベント、及び/又は、前記吸引ポンプを操作する、ユーザーが調整可能な入力装置、
を具備する、外科処置装置。
【請求項2】
外科処置装置であって、
a)吸引機能を持つ、ハンドピース、
b)制御コンソール、
c)少なくとも部分的に前記制御コンソール内に配置されて、かつ、前記ハンドピースに吸引ラインを介して真空を供給する、吸引ポンプ、
d)前記吸引ライン内で前記ハンドピースと前記ポンプとの間に配置された、吸引ベント、及び
e)前記制御コンソールに接続されて、かつ、ユーザーの指示に基づいて、前記吸引ベント、及び/又は、前記吸引ポンプを操作する、ユーザーが調整可能な入力装置、
を具備する、外科処置装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−509155(P2011−509155A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542333(P2010−542333)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/030392
【国際公開番号】WO2009/089319
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)