説明

水晶体画像解析装置

【課題】白内障診断におけるNUC分類の評価を客観的かつ自動で行うことが可能な水晶体画像解析装置を提供する。
【解決手段】被検眼を撮影することにより得られた被検眼の光学切断面画像データを取得する画像取得手段200と、取得された光学切断面画像データから、胎生核領域を少なくとも部分的に含む、あるいは、胎生核領域の近傍に設定される特定領域41を水晶体領域40の内部に設定する特定領域設定手段202と、設定された特定領域41に中心間層が存在するか否かを検出する中心間層検出手段203と、中心間層が存在する場合は、核白内障評価用のNUC分類グレードが低い第1グレード群に属するものと判定し、中心間層が存在しない場合は、NUC分類グレードが高い第2グレード群に属するものと判定するグレード判定手段204と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師による白内障の進行度の診断を補助するための水晶体画像解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリットランプを用いて被検眼の角膜や水晶体の光学切断面画像を撮影する前眼部観察装置が知られている。特に、下記特許文献1に開示される前眼部観察装置は、奥行きのある対象物の広い範囲に焦点を合わせることができ、安定した高品質の光学切断面画像を撮影することができる。
【0003】
白内障の治療において、医師は、画像を見ながら白内障の進行度を目視判断し、患者に対して手術を行うか否か等の治療方法の説明を行っている。白内障手術の術前検査で広く使用されている国際基準の1つとして、NUC分類(WHO Cataract Grading Group."A Simplified Cataract Grading System" のGrading Nuclear Cataract(核白内障の分類))と呼ばれるものがある。加齢性の水晶体核の変化には、混濁と着色が伴うが、上記NUC分類は、混濁の観点から定義されるものである。
【0004】
このNUC分類に基づくグレードは、図18に示すように4つのグレードに分類される。医師は、被検眼の光学切断面画像を観察し、これを標準画像と比較しながらグレード判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−56149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、NUC分類の判定には熟練も要求され、容易に判定できるものではない。また、医師の個人差により判定結果に差が生じることもありうる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、白内障診断におけるNUC分類の評価を客観的かつ自動で行うことが可能な水晶体画像解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る水晶体画像解析装置は、
被検眼を撮影することにより得られた被検眼の光学切断面画像データを取得する画像取得手段と、
取得された光学切断面画像データから、胎生核領域を少なくとも部分的に含む、あるいは、胎生核領域の近傍に設定される特定領域を水晶体領域の内部に設定する特定領域設定手段と、
設定された前記特定領域に中心間層が存在するか否かを検出する中心間層検出手段と、
前記中心間層が存在する場合は、核白内障評価用のNUC分類グレードが低い第1グレード群に属するものと判定し、前記中心間層が存在しない場合は、NUC分類グレードが高い第2グレード群に属するものと判定するグレード判定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
この構成による水晶体画像解析装置の作用・効果を説明する。まず、被検眼の光学切断面画像データを取得し、NUC分類グレードの判定のために、切断面画像内に特定領域を設定する。特定領域は、胎生核領域を少なくとも部分的に含むか、あるいは、胎生核領域の近傍に設定される。ここで胎生核とは水晶体核を構成する一部であり、水晶体核は、最も芯の部分である胎生核と、その周りを囲む胎児核、さらにそれらを囲む成人核よりなる。本発明は、その胎生核に着目している。白内障が進行すると、水晶体核の硬度が硬くなり、胎生核領域やその近傍の混濁度が顕著に変化していくためである。
【0010】
特定領域が設定されると、その特定領域に中心間層が存在するか否かを検出する。中心間層とは、通常は、胎生核の前後方向のほぼ中央に位置し、散乱反射光の少ない領域(透明な領域)のことを指している。白内障が進行すると、混濁により中心間層の検出が困難になる。従って、中心間層の有無に基づいて、グレード分けすることができる。具体的には、中心間層が存在すればグレードが低い第1グレード群に属するものと判定し、中心間層が存在しなければグレードが高い第2グレード群に属するものと判定する。これにより、白内障診断におけるNUC分類の評価を客観的かつ自動で行うことが可能な水晶体画像解析装置を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記特定領域の前部領域と後部領域の輝度値をそれぞれ演算する第1輝度値演算手段と、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較する第1輝度値比較手段と、を備え、
前記グレード判定手段により、前記第1グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定手段は、前記第1輝度値比較手段による比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することが好ましい。
【0012】
中心間層が存在する第1グレード群の場合、更に、最終的なグレードを判定するために、特定領域の前部領域と後部領域の輝度値をそれぞれ演算する。白内障が進行してくると、前部領域も後部領域も共に混濁してくるが、それほど進行していないときは、前部領域は透明に近い状態になる。そこで、上記前後の輝度値を演算してグレードが既知のサンプルデータと比較することで、最終的なグレードを判定することができる。
【0013】
本発明において、前記特定領域内の輝度値を演算する第2輝度値演算手段と、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較する第2輝度値比較手段と、を備え、
前記グレード判定手段により、前記第2グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定手段は、前記第2輝度値比較手段による比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することが好ましい。
【0014】
中心間層が存在しない第2グレード群の場合、更に、最終的なグレードを判定するために、特定領域の輝度値を演算する。これは、白内障が進行してくると、特定領域が全体的に混濁してくるからである。そこで、特定領域内の輝度値を演算してグレードが既知のサンプルデータと比較することで、最終的なグレードを判定することができる。
【0015】
上記第2グレード群の場合、前記特定領域は、前記水晶体領域の後部に設定されることが好ましい。核白内障が進行してくると、特に水晶体領域の後部領域の混濁度が進行してくる。従って、より精度のよいグレードを判定するために、水晶体領域の後部に特定領域を再設定することが好ましい。
【0016】
本発明において、前記特定領域内の輝度値が所定レベル以下の透明度であるか否かを判定する透明度判定手段を備え、
前記グレード判定手段は、前記特定領域内の輝度値が前記所定レベル以下と判定された場合、中心間層の有無に関係なく、NUC分類グレード中、最も低いグレードであると判定することが好ましい。
【0017】
特定領域内の輝度値が所定レベル以下の透明度の場合、混濁の程度が低く、白内障はそれほど進行していないと判定可能である。従って、中心間層の有無に関係なく、NUC分類グレード中、最も低いグレードであると判定することができる。これにより、判定までの処理時間を短縮化することができる。
【0018】
本発明において、取得された光学切断面画像データから画像処理により水晶体領域を抽出する水晶体抽出手段を備え、
前記特定領域設定手段は、前記特定領域を前記水晶体領域の内部に設定することが好ましい。
【0019】
この構成によると、画像処理により水晶体領域を抽出する。NUC分類のグレードの判定のために、水晶体領域の内部に特定領域を設定する。従って、最初に水晶体領域を抽出してから特定領域を設定するので、特定領域の設定を確実にし、精度を高めることができる。
【0020】
本発明において、前記特定領域設定手段は、予め設定された形状をスキャンさせながら、相関関数値を算出し、もっとも相関度の高い位置を特定領域として設定することが好ましい。
【0021】
特定領域を設定するにあたり、予め、その形状は設定しておく。この設定されている形状をスキャンする。スキャンしながら、相関関数値を算出し、算出された相関度がもっとも高い位置を特定領域として設定する。相関関数値の求め方は、特定領域を設定するに好適な求め方を予め決めておけばよく、種々の演算方法が考えられる。これにより、特定領域を適切な位置に自動的に設定することができる。
【0022】
<水晶体画像解析プログラム>
本発明に係る水晶体画像解析装置は、下記の特徴を有する水晶体画像解析プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0023】
すなわち、上記課題を解決するため本発明に係る水晶体画像解析プログラムは、
被検眼を撮影することにより得られた被検眼の光学切断面画像データを取得するステップと、
取得された光学切断面画像データから、胎生核領域を少なくとも部分的に含む、あるいは、胎生核領域の近傍に設定される特定領域を水晶体領域の内部に設定するステップと、
設定された前記特定領域に中心間層が存在するか否かを検出するステップと、
前記中心間層が存在する場合は、核白内障評価用のNUC分類グレードが低い第1グレード群に属するものと判定し、前記中心間層が存在しない場合は、NUC分類グレードが高い第2グレード群に属するものと判定するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0024】
本発明において、前記特定領域の前部領域と後部領域の輝度値をそれぞれ演算するステップと、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較するステップと、を備え、
前記判定するステップにより、前記第1グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定するステップは、前記比較するステップによる比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することが好ましい。
【0025】
本発明において、前記特定領域内の輝度値を演算するステップと、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較するステップと、を備え、
前記判定するステップにより、前記第2グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定するステップは、前記比較するステップによる比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することが好ましい。
【0026】
本発明において、前記特定領域は、前記水晶体領域の後部に設定されることが好ましい。
【0027】
本発明において、前記特定領域内の輝度値が所定レベル以下の透明度であるか否かを判定するステップを備え、
前記グレード判定するステップは、前記特定領域内の輝度値が前記所定レベル以下と判定された場合、中心間層の有無に関係なく、NUC分類グレード中、最も低いグレードであると判定することが好ましい。
【0028】
さらに、取得された光学切断面画像データから画像処理により水晶体領域を抽出するステップを備え、前記特定領域設定ステップは、前記特定領域を前記水晶体領域の内部に設定することが好ましい。
【0029】
上記特定領域設定ステップは、予め設定された形状をスキャンさせながら、相関関数値を算出し、もっとも相関度の高い位置を特定領域として設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】水晶体画像解析装置を含む前眼部観察装置の機能を示すブロック図
【図2】演算器の機能を説明するブロック図
【図3】眼球の水平断面図を部分的に示す図
【図4A】グレードを判定するまでの手順を示すフローチャート
【図4B】グレードを判定するまでの手順を示すフローチャート
【図5】光学切断面画像をモニターに表示させた図
【図6】水晶体領域内における特定領域の設定を示す図
【図7】特定領域を表す楕円形の長軸に対して直交する線分の設定を示す図
【図8】明るさ分布データを示す図
【図9】特定領域を決定するまでの手順を示すフローチャート
【図10】中心間層の有無を確認するための手順を示す図
【図11】中心間層の有無を判定するための詳細な条件を示す図
【図12】前部領域と後部領域を示す図
【図13】グレード0,1のサンプルデータを示す図
【図14】特定領域を水晶体領域の後部に設定した状態を示す図
【図15】グレード2,3のサンプルデータを示す図
【図16】特定領域の設定する別実施形態を説明する図
【図17】特定領域を設定する別実施形態を説明する図
【図18】NUC分類の内容を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る水晶体画像解析装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、水晶体画像解析装置を含む前眼部観察装置の機能を示すブロック図である。
【0032】
<前眼部観察装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の前眼部観察装置100は、光学装置1と水晶体画像解析装置として機能する解析装置2とを備えている。なお、図1において、光学装置1については、画像解析に関する構成のみ示されている。この解析装置2には、NUC分類のグレードを自動判定するための機能が設けられている。
【0033】
光学装置1は、被検眼の縦方向の光学切断面の画像(以下、縦光学切断面画像という)を撮像してこれを出力する縦断面撮像素子10と、被検眼の横方向の光学切断面の画像(以下、横光学切断面画像という)を撮像してこれを出力する横断面撮像素子11とを備えている。光学装置1は、この他、種々の光学素子等を備えている。なお、光学装置1の具体的な構成は、本出願人による特開2009−56149号公報に開示される光学装置の構成をそのまま利用することができる。
【0034】
解析装置2は、演算器20と、モニター21と、入力装置22とを備えている。水晶体解析装置2は、例えばパーソナルコンピュータとその周辺機器で構成され、演算器20は本体たるパーソナルコンピュータで構成され、モニター21は、画像表示装置で構成され、入力装置22は、マウス、キーボード等のデータ入力用の操作具で構成されている。
【0035】
演算器20は、例えば、CPUと主メモリを備えていて、主メモリには後述する水晶体解析プログラム含む所定のプログラムが格納されている。そして、このプログラムをCPUが読み出して実行することにより、所要の処理及び制御が遂行される。具体的には、演算器20は、縦断面撮像素子10及び横断面撮像素子11から、それぞれ、縦光学切断面画像及び横光学切断面画像が入力されて、これらに基づき被検眼の角膜及び水晶体の前後面の曲率半径を計測する。また、後述するように水晶体画像を解析してNUC分類のグレードを判定する。また、入力装置22から入力される情報や光学装置1から入力される画像データに基づき、モニター21に必要な表示を行い、かつ光学装置1の全体的な動作を制御する。
【0036】
<演算器の機能構成>
次に、演算器20の機能について図2のブロック図により説明する。解析装置2は、水晶体画像解析以外の解析機能も備えているが、図2には、水晶体画像解析に関係する機能のみを示す。
【0037】
画像取得手段200は、光学装置1により撮影された被検眼の光学切断面画像データを取得する。ここでの光学切断面画像は、縦断面撮像素子10により撮影された画像である。水晶体抽出手段201は、得られた光学切断面画像データから画像処理技術を用いて水晶体領域を抽出する。水晶体領域を抽出する具体例は後述するが、水晶体領域を抽出する技術自体は公知である。なお、縦断面撮像素子10ではなく横断面撮像素子11を用いてもよいが、縦断面の方が瞼の影響を受けにくく、解析を行いやすい。
【0038】
特定領域設定手段202は、抽出された水晶体領域の内部に特定領域を設定する。特定領域は、水晶体領域よりも小さな面積を有し、かつ、胎生核領域を少なくとも部分的に含むか、胎生核領域の近傍に設定される。
【0039】
ここで胎生核について説明する。図3は、眼球の垂直断面図を部分的に示す図である。眼球の前方から順に角膜30、瞳孔31、水晶体32、硝子体33が位置する。水晶体32は、ほぼ回転楕円体形状(凸レンズ形状)を有しており、そのほぼ中央部に胎生核32aが位置する。この胎生核32aを少なくとも部分的に含む領域あるいは胎生核32aの近傍を特定領域として設定する。この特定領域内の混濁度を見ることにより、核白内障の進行度(NUC分類グレード)を判定することができる。
【0040】
核白内障の進行度を判定する基準として、WHOのNUC分類によるグレード分けがある。図18は、その各グレードの内容を示す図である。この分類は、核白内障の進行に伴い、混濁が徐々に拡大することに着目したものである。グレードは0,1,2,3の4段階であり、数値が大きいほど、白内障が進行した状態を示す。
【0041】
グレード判定するために、標準画像が3種類用意されており、被検者の光学切断面画像をNUC標準1、NUC標準2、NUC標準3と比較することで医師による判定が行われている。すなわち、NUC標準1未満の場合はグレード0、NUC標準1以上2未満の場合はグレード1、NUC標準2以上3未満の場合はグレード2、NUC標準3以上の場合はグレード3と判定される。なお、判定不能の場合はグレード9と判定される。
【0042】
ちなみに、NUC標準1は、症例として考慮するには十分であり、臨床的に顕著な核白内障である。前後の核が通常よりも顕著に乳白色を呈するが、中心間層は全体的に認識できるレベルである。NUC標準2は、核白内障が相当進行した状態である。核領域は一様に不透明であり、中心間層も明瞭に認識できない。核領域の後部領域は不透明であると共に赤い反射が徐々に暗くなっていく。NUC標準3は、手術を考慮するには十分な深刻な状態である。核領域は、その端部まで一様に拡大した混濁を伴った濃い不透明さを呈し、核の特徴は部分的に認識できるレベルである。赤い反射は鈍い状態になる。
【0043】
本発明は、上記標準画像に基づく目視判定ではなく、標準画像は使用せず、演算処理により最終的なグレードを演算器20により演算する。なお、NUC分類グレードは4段階であるので、NUC分類グレードが低いグレード0,1を第1グレード群と定義し、NUC分類グレードが高いグレード2,3を第2グレード群と定義する。
【0044】
グレードの数値が大きくなるほど、混濁が徐々に拡大していく。本発明においては、特定領域を設定して、その領域内の混濁度を調べ、グレードを自動判定しようとするものである。
【0045】
中心間層検出手段203は、特定領域設定手段202により設定された特定領域に、中心間層が存在するか否かを検出する機能を有する。
【0046】
グレード判定手段204は、NUC分類グレードを最終判定する機能を有する。また、中心間層検出手段203の検出結果に基づき、中心間層が存在する場合は、グレードは第1グレード群(グレード0,1)に属するものと判定し、中心間層が存在しない場合は、グレードは第2グレード群(グレード2,3)に属するものと判定する。
【0047】
第1輝度値演算手段205は、グレード判定手段204により第1グレード群に属するものと判定された場合、特定領域の前部領域と後部領域の輝度値を夫々演算する。
【0048】
第1輝度値比較手段206は、第1輝度値演算手段205により演算された輝度値をグレードが既知のサンプルデータと比較して、グレード判定手段204により最終的なグレードを判定する。すなわち、グレード0か1かを最終判定する。
【0049】
第2輝度値演算手段207は、グレード判定手段204により第2グレード群に属するものと判定された場合、特定領域の輝度値を演算する。
【0050】
第2輝度値比較手段208は、第2輝度値演算手段207により演算された輝度値をグレードが既知のサンプルデータと比較して、グレード判定手段204により最終的なグレードを判定する。すなわち、グレード2か3かを最終判定する。
【0051】
透明度判定手段209は、特定領域内の輝度値が所定レベル以下の透明度であるか否かを判定する。グレード判定手段204は、輝度値が所定レベル以下であると判定された場合、最終的に最も低いグレード、すなわち、グレード0であると判定する。
【0052】
データ記憶手段210は、NUC分類のグレードが既知のデータが多数記憶されている。グレード0〜4の各グレードについて、過去のデータが種々の形式で記憶されている。記憶されているデータ数は、1つのグレードについて1つだけではなく、多数のデータを記憶させておくことが好ましい。これにより、判定精度を高くすることができる。データ記憶手段210は、ハードディスク等の大容量記憶装置や、外部記憶装置を使用することができる。
【0053】
<グレード判定手順>
次に、グレードを判定するまでの手順を図4A、図4Bのフローチャートに沿って説明する。図5に光学装置1により撮影された光学切断面画像を取得し(S1)、モニター21に表示させた状態を示す。まず、画像処理により角膜30を抽出する(S2)。角膜30は、図5でもわかるように眼の一番前に位置しており、角膜30の前後は画像が暗くなっている。このような特性に着目し、角膜30の前ライン30aと後ろライン30bをそれぞれ画像処理により抽出する。これにより、角膜30を抽出することができる。
【0054】
次に、水晶体32を抽出する(S3)。水晶体32は、角膜30の後部に位置することはわかっている。また、水晶体32は緑がかった色調を呈していることと、水晶体32の周囲は暗くなっていることから、まず、水晶体32の前部境界32bを画像処理により抽出する。次に、同様に後部境界32cを抽出する。
【0055】
水晶体32の全体形状は楕円形に近似できるので、上記のように前部境界32bと後部境界32cが抽出されると、水晶体全体を楕円形で近似することができ、これを水晶体領域40とする。図6は、楕円形で近似された水晶体領域40を示す。これにより、水晶体32の位置が確定する。水晶体領域40が決まると、次に、特定領域41を設定する必要があるが、まず、特定領域41の形状を設定する(S5)。形状は、水晶体領域40と相似形の楕円形であり、所定比率で縮小することで決められる。例えば、長軸の長さが40〜60%になるように縮小する。好ましくは、50%前後になるように設定する。
【0056】
次に、水晶体領域40の中に、特定領域41の位置を設定する必要がある。そのために、上記楕円形状のスキャン処理を実行する(S6)。これは、図6に示すように、水晶体領域内で楕円形状を最前部(41aで示す)から最後部(41bで示す)へとスキャンしながら、相関関数値を演算する処理である。なお、特定領域41は、水晶体領域40の左右方向の中央位置にあると推定されるので、スキャンする方向は、中央最前部(41a)から中央最後部(41b)まで行えば十分である。この処理に関して、以下、図9のフローチャートを参考にしながら詳しく説明する。
【0057】
<特定領域の抽出>
まず、図7に示すように、特定領域41を表す楕円形の長軸410(左右方向になる)に対して直交する線分411を設定する。その線分411を、長軸410の上側部分411aと下側部分411bに分ける。この線分411における明るさの分布は、例えば、図8(a)のように示される。ただし、この分布はカラー画像データのうち、G(緑)の成分である。R(赤)成分は水晶体領域40の後方に偏り、B(青)成分は前方に偏る傾向があるのに対して、G成分は前後に偏りがない。従って、特定領域41を設定するための画像処理は、Gの成分に基づいて行われる。
【0058】
次に、上側部分411aについて明るさの平均値を求めると共に、下側部分411bについても明るさの平均値を求める(S20)。次に、明るさの分布値を求められた平均値で減算すると、図8(b)に示すように、直流成分が除去され、0に対して±に変動する分布データになる。これを上側部分411aと、下側部分411bのそれぞれについて行う。さらに、図8(a)に示す明るさ分布データについて標準偏差σを求める(S21)。図8(b)に示す分布データを標準偏差σで割り算する。これにより、変動の範囲は、標準偏差を1とした値に正規化される(S22)。これも上側部分411aと、下側部分411bのそれぞれについて行う。
【0059】
以上のようにして、上側部分411aと下側部分411bのそれぞれについて、正規化された明るさの分布データが得られる。そして、上側部分411aの分布データを表す関数と、下側部分411bの分布データを表す関数の間で相関関数値を求める(S23)。これは、上下の分布データがどの程度類似しているかを表す値である。
【0060】
上記の相関関数値を楕円形の長軸410に沿って、例えば、左から右へスキャンし(S24)、各線分411について相関関数値を演算し、それらを全て加算して加算相関値を求める(S25)。この加算相関値を、その位置における特定領域41の相関度とする。
【0061】
前述のように、楕円形状を中央最前部(41a)から中央最後部(41b)までスキャンし(S26)、各位置における相関度を演算する。各位置での相関度を図6の左側にグラフ[A]で示す。相関度が最も高い位置を特定領域41として設定する(S7,S27)。以上のようにして、特定領域41を自動的に設定することができる。
【0062】
図4のフローチャートに戻り、特定領域41が設定されると、次に、特定領域内の輝度値を演算する(S8)。この輝度値の演算は、特定領域41を構成する画素のそれぞれの輝度値を求め、その平均値を演算する。演算された輝度値の平均値が所定レベル以下であれば、グレード判定手段204は、最終的なグレードとしてグレード0と判定する(S40)。核白内障が進行していない正常な状態では、特定領域41(胎生核領域)の透明度が高いので、後述する中心間層の検出処理をするまでもなく、最も低いグレード0であると判定可能である。所定レベルについては、適宜設定することができる。
【0063】
所定レベル以下でない場合は、中心間層の検出処理を行う(S11)。NUC分類によれば、グレード0と1(第1グレード群)では中心間層が存在し、グレード2と3(第2グレード群)では存在しない。
【0064】
<中心間層>
中心間層の有無検出は次のような手順で行う。図10は、特定領域41を長軸410に平行な線分412でスライスした状態を示す。中心間層とは、通常は、胎生核32aの前後方向のほぼ中央に位置し、散乱反射光の少ない領域(透明な領域)のことを指している。
【0065】
上記スライスした線分412は、特定領域41の短軸413を構成する画素数に対応した数だけ存在する。各線分412について、G(緑)の成分についてのみ平均値を演算する。その平均値をグラフ化したものを図10の右側に示している。中心間層が存在すれば、その部分は暗くなるので、そのグラフ[B]は、図10に示すように左側に凹みが生じる。この凹みの有無により、中心間層の有無を判定することができる。なお、Gの成分ではなく、他の色であるR(赤)やB(青)、あるいは白黒の輝度値を用いて演算してもよい。
【0066】
図11は、図10のグラフ[B]のみを抜き出したものである。まず、グラフのうち、カーブの極小点と、その極小点を挟む凹エリアを抽出する。極小点は、グラフの中に複数存在することが多い。例えば、図11では、P1,P2,P3等に示すように複数の極小点が見られる。そして、これら極小点P1,P2,P3を挟む凹エリアLP1,LP2,LP3を検出できる。これら複数の極小点が検出された場合は、凹エリアが最も長いものを以後の演算対象として決定する。この場合、凹エリアLP1の長さが最も長いので、極小点P1を含む凹エリアLP1を対象として決定する。次に、この凹エリアLP1が中心間層に相当するものか否かの判定基準は、次のように設定されている。
【0067】
すなわち、
(A)凹エリアの長さがカーブ全長の1/5以上であること。
(B)隣接する極大点までの傾きが閾値以上であること。
(C)中央部1/3に凹エリアがかかっていること。
(D)凹エリアの深さが閾値以上であること。
【0068】
ここでカーブ全長はLtで表わされる。すなわち、特定領域41を構成する楕円の短軸の長さがカーブ全長に相当する。上記LP1がLt×1/5以上であれば、上記条件(A)を満たす。中心間層は、所定以上の長さを有していると考えられるからである。
【0069】
極大点は図11のようにQ1,Q2,Q3で表わされるので、隣接する極大点はQ1あるいはQ3である。極小点P1と極大点Q1あるいはQ3を結ぶ線分の傾きを演算し、この傾きが閾値以上であれば、条件(B)を満たす。なお、極大点の取り方は上記のように小さな周期の凹凸は無視して、図11(b)に示すように、所定以上の大きな周期のカーブを演算して、当該カーブでの極大点Q10あるいはQ11を用いて傾きを演算してもよい。この図で極小点と極大点を結ぶ線分は破線で示される。傾きが閾値よりも小さければ、輝度値の差がそれほど大きくないということになる。
【0070】
次に、中央部1/3の領域は図11にLcで示される。全長Ltを三等分して、その真ん中の部分がLcとして表わされる。LP1で示される凹エリアが上記Lcの領域にかかっていれば(オーバーラップしていれば)条件(C)を満たす。どの程度かかっていれば条件(C)を満たすかについては、適宜設定することができる。例えば、少しでもかかっていれば条件を満たすと判定してもよいし、ある程度以上の長さのオーバーラップがなければ、条件を満たさないと決めてもよい。
【0071】
凹エリアの深さは図11においてhで示される。この深さhが閾値以上であれば、条件(D)を満たす。閾値の大きさについては、適宜決めることができる。中心間層は、他のエリアに比べて透明度が高いと考えられるので、凹エリアが中心間層であれば、深さhは所定以上になると考えられるからである。
【0072】
以上のように設定した条件(A)〜(D)のすべてを満たした時に中心間層が存在すると判定することができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の条件を付加してもよい。あるいは、条件(A)〜(D)のうち、少なくとも、任意の1つ以上を満たした時に中心間層が存在すると判定してもよい。
【0073】
ステップS11において、中心間層が存在すると判定された場合、グレードは第1グレード群に属すると判定され、中心間層が存在しないと判定された場合は、グレードは第2グレード群に属するものと判定される(S12,S30)。第1グレード群に属すると判定された場合、更に、グレード0か1かを最終的に決定する必要がある。
【0074】
<グレード0,1判定>
グレード0と1の違いは、図12に示すように、特定領域41(胎生核領域)の前部領域A1と後部領域A2の混濁度の比で表わされる。特定領域41を構成する楕円の長軸により2等分して、前部領域A1と後部領域A2に分割することができる。グレード0では、後部領域A2は混濁しているが前部領域A1は透明で輝度は暗い状態であるが、グレード1では、前部領域A1の混濁度が後部領域A2に近くなる。そこで、特定領域41の前部領域A1と後部領域A2の輝度値を夫々演算する(S13)。輝度値は、それぞれの領域を構成する画素の輝度値の平均値として求めることができる。
【0075】
演算された輝度値(平均値)を既知のサンプルデータと比較する(S14)。図13は、データ記憶手段210に記憶されているサンプルデータを示しており、過去に解析されたデータ群を二次元的に表示している(輝度値マップ)。グレード0を●でプロットし、グレード1を○でプロットしている。データは、x軸は後部の輝度値、y軸は前部の輝度値の二次元座標でプロットしている。このサンプルデータは、白黒の輝度値データに基づいて作成されるが、RGBいずれか1つのカラー情報の輝度値を用いてもよい。
【0076】
図13において、実際に演算された輝度値がXでプロットされている。この輝度値がグレード0か1かは、既知のグレード0群のデータとXとの距離、既知のグレード1群のデータとXとの距離を求めて、近いほうのグレードを最終的なグレードとして判定する(S15)。距離の演算方法としては、マハラノビス法に基づいて演算することができる。
【0077】
なお、グレード0か1かの判定方法としては上記に限らず種々の変形例が考えられる。図13に示す方法は、前部領域A1と後部領域A2の輝度値の比に基づいて演算する方法であるが、比ではなく輝度値の差に基づいて判定してもよい。例えば、前部領域A1の輝度値(平均値)と後部領域A2の輝度値(平均値)の差を演算し、この値が閾値以上であればグレード0、閾値未満であればグレード1と判定することができる。この場合、既知のサンプルデータは必要ない。
【0078】
更に別の方法として、画素のカラー情報を利用する方法も考えられる。例えば、前部領域A1のRGB輝度値情報(三次元情報になる)と、後部領域A2のRGB輝度値情報とを三次元空間上にプロットする。この場合の輝度値も平均値を用いる。そして、前部領域のプロット点と後部領域のプロット点とのベクトルを取り、このベクトルの長さと方向がグレード0とグレード1とでは異なる点に着目して、最終的なグレードを判定してもよい。
【0079】
<グレード2,3判定>
ステップS30において、第2グレード群に属するものと判定された場合は、グレード2か3かを最終的に決定する必要がある。
【0080】
グレード2と3の違いは、特定領域41内における混濁の拡がりにより決めることができる。グレード3においては、水晶体領域40の後部領域にも混濁が拡がる。そこで、水晶体領域の後部領域における混濁度によりグレード2か3の判定を行う。そこで、図14に示すように、特定領域41を水晶体領域の後部に設定する(S31)。具体的には、図6の41bで示す位置に設定するものであり、その大きさと形状は同じでよい。
【0081】
次に、設定された特定領域41における輝度値(平均値)を演算する(S32)。輝度値は、特定領域内の各画素の輝度値の平均値として求められる。この演算された輝度値をデータ記憶手段210に記憶してあるサンプルデータと比較する(S33)。このサンプルデータを図15に示す。
【0082】
サンプルデータはヒストグラムとして表示され、x軸が輝度値であり、y軸が頻度を表している。ここには、グレード2のヒストグラムとグレード3のヒストグラムがそれぞれ示されている。ここで、演算された輝度値がXでプロットされている。このプロット点とグレード2群のデータとの距離、プロット点とグレード3群の点との距離を演算し、より近いほうのグレードを最終的なグレードとする(S34)。なお、距離の演算方法については、前述のマハラノビス法により演算することができる。
【0083】
上記では、白黒の輝度値に基づいて演算しているが、グレード0,1の場合と同様に、カラーのRGB輝度値に基づいて演算してもよい。
【0084】
グレード2か3かの判定方法は、上記に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。グレード2と3の違いは、胎生核における混濁度に拡がりの違いであるから、これに基づいて判定することができる。例えば、水晶体領域の範囲内で胎生核領域よりも大きな適当な領域(前述の特定領域に相当)を設定する(図16参照)。水晶体領域の中心をSOとして、領域内の各画素(SAで示す)と中心SOとの距離をDとした場合、混濁度分布のモーメント(SAの輝度値×D)を求める。例えば、領域内の全画素についてモーメントを演算し、そのモーメントの平均値あるいは総和を演算する。この値が大きいほど、混濁度が周辺部に進行していると考えられる。従って、適宜閾値を設定することで、グレード2かグレード3かを判定することができる。
【0085】
以上のようにして、NUC分類グレードであるグレード0〜3を自動判定することができる。本発明では、NUCの標準画像を用いることなくソフトウェアにより判定するものである。従って、医者の経験とか個人差の影響はなく、統一性のあるNUC分類を行うことができる。
【0086】
<中心間層の有無を検出する別実施形態>
中心間層の有無を検出する方法としては、本実施形態以外の方法も種々考えられる。例えば、水晶体領域におけるおよその中心間層の位置(例えば、前後方向の中心に所定幅の層を設定する)を定めておく。この位置における輝度値の平均値と、それ以外の領域における輝度値の平均値とを比較し、輝度値の比もしくは差が所定の閾値以上であれば、中心間層が存在すると判定し、閾値未満であれば中心間層は存在しないと判定することができる。
【0087】
<水晶体抽出手段を設けない別実施形態>
本実施形態では、水晶体抽出手段201を設けて水晶体領域40を抽出してから特定領域41の設定を行っているが、水晶体領域40を抽出しないで特定領域41を設定する構成を採用してもよい。例えば、次のような構成が考えられる。
【0088】
特定領域の画像データ(パターン)を予め用意しておき、このパターンを得られた光学切断面画像内をスキャンさせる。そして、最も近似度の高い位置を特定領域として設定することができる。例えば、胎生核は中心間層を有しているなど、特有の画像パターンを有している。このパターンをスキャンすることで、胎生核を含む領域を抽出することができる。
【0089】
また、光学切断面画像の断面パターンを予め記憶しておき、この断面パターンを実際に撮影された光学切断面画像の断面データと比較して特定領域を抽出する方法が考えられる。図17に示すように、眼球の前方から角膜30、前眼房34、水晶体32が位置しており、その輝度分布も推定可能である。そこで、予め代表的な輝度分布パターンを断面パターンとして記憶しておき(図17(a))、これを実際に取得された光学切断面画像の断面データ((b)で示す)と比較する。比較する時に、眼の大きさの違いを考慮して、(a)に対して比率(矢印D方向)を掛けた状態で比較し、最も合致した時の比率における断面パターンから特定領域を抽出する。なお、特定領域の位置は、断面パターンの中で決まっている(Eで示す)ので、この位置と比率とから特定領域を設定することができる。
【0090】
本実施形態では、予め決められた楕円形の形状を水晶体領域40の内部でのみスキャンさせているが、水晶体領域40を抽出あるいは設定しない場合は、光学切断面画像の前から後ろへと広い範囲でスキャンし、本実施形態と同様に相関関数値の最も高いところを特定領域と設定してもよい。
【0091】
<水晶体抽出手段を設ける場合の別実施形態>
特定領域41の設定の仕方は他にも種々考えられる。本実施形態では、相関度を求めて、最も相関度の高い位置を特定領域41として設定している。設定される特定領域41は、水晶体領域40のほぼ中央にあると推定されるので、水晶体前面から後面が確実に映っている画像であれば、水晶体領域40の中央に設定してもよい。
【0092】
本実施形態では、特定領域を楕円形に設定しているが、この形状に限定されるものではない。楕円以外にも円形、長円形、長方形、正方形等、種々の形状を設定することができる。また、楕円形を設定する場合にも相似形である必要はない。特定領域の形状や大きさにより、設定された特定領域内に胎生核が完全に含まれることもあり、部分的に含まれることもある。あるいは、再設定される特定領域のように、胎生核が部分的に含まれたり、あるいは、胎生核の範囲外であるが、近傍に設定される場合もある。
【0093】
本実施形態では、水晶体領域40の左右方向の中央部に特定領域41を設定しているが、これに限定されるものではなく、左右のいずれかに偏った位置に設定されてもよい。
【0094】
本実施形態では、特定領域41を再設定する時に(図4BのS31参照)、水晶体領域40内の最後方に設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、最初に設定した特定領域の所定距離分だけ後方に設定するようにしてもよい。再設定される特定領域41の大きさは、最初に設定した特定領域41の大きさや形状と同じでもよいし異なっていてもよい。
【0095】
<相関関数値を求める時の別実施形態>
本実施形態では、特定領域41を設定するまでの画像処理は、Gの成分(特定の色データ)に基づいて行っている。これに代えて、Gの成分とRの成分(これらも特定の色データに相当)の両方により、相関値の分布を求めておき、G成分に基づいて得られた特定領域の位置が不適切な場合、R成分に基づいて相関値の最も高い位置に特定領域を再設定してもよい。混濁が拡大すると、色調にR成分が増加してくるので、上記のように設定することで、特定領域の位置精度を高めることができる。
【0096】
また、Gの成分に基づいて行うのではなく、RGB成分を合成した白黒画像データ(輝度データ)に基づいて、本実施形態と同様の手順で相関値を求めてもよい。
【0097】
あるいは、R,G,Bの各成分について、本実施形態と同様の手順で相関値の分布を求めておく。そして、しきい値以上の相関値を有する位置のうち、水晶体領域の前後に偏っていない位置(胎生核が存在していると推定される位置)を特定領域の候補位置として抽出し、その中から、適切な位置を選択することができる。
【0098】
本実施形態では、水晶体32の後部境界32cが不明瞭な画像であっても、前部境界32bを抽出できれば、水晶体領域40を設定可能である。前部境界32bを表す曲線の曲率から、水晶体領域40を表す楕円形を推定できるからである。
【0099】
本実施形態では、輝度値を演算する時に領域内の全画素の輝度値の平均値により演算しているが、これに限定されるものではない。例えば、全画素ではなく、所定の比率で画素を間引いて演算してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 光学装置
2 解析装置
20 演算器
200 画像取得手段
201 水晶体抽出手段
202 特定領域設定手段
203 中心間層検出手段
204 グレード判定手段
205 第1輝度値演算手段
206 第1輝度値比較手段
207 第2輝度値演算手段
208 第2輝度値比較手段
209 透明度判定手段
210 データ記憶手段
21 モニター
22 入力装置
30 角膜
32 水晶体
32a 胎生核
40 水晶体領域
41 特定領域
A1 前部領域
A2 後部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を撮影することにより得られた被検眼の光学切断面画像データを取得する画像取得手段と、
取得された光学切断面画像データから、胎生核領域を少なくとも部分的に含む、あるいは、胎生核領域の近傍に設定される特定領域を水晶体領域の内部に設定する特定領域設定手段と、
設定された前記特定領域に中心間層が存在するか否かを検出する中心間層検出手段と、
前記中心間層が存在する場合は、核白内障評価用のNUC分類グレードが低い第1グレード群に属するものと判定し、前記中心間層が存在しない場合は、NUC分類グレードが高い第2グレード群に属するものと判定するグレード判定手段と、を備えたことを特徴とする水晶体画像解析装置。
【請求項2】
前記特定領域の前部領域と後部領域の輝度値をそれぞれ演算する第1輝度値演算手段と、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較する第1輝度値比較手段と、を備え、
前記グレード判定手段により、前記第1グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定手段は、前記第1輝度値比較手段による比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することを特徴とする請求項1に記載の水晶体画像解析装置。
【請求項3】
前記特定領域内の輝度値を演算する第2輝度値演算手段と、
前記演算された輝度値とグレードが既知のサンプルデータとを比較する第2輝度値比較手段と、を備え、
前記グレード判定手段により、前記第2グレード群に属すると判定された場合、前記グレード判定手段は、前記第2輝度値比較手段による比較結果に基づいて、最終的なグレードを判定することを特徴とする請求項1に記載の水晶体画像解析装置。
【請求項4】
前記特定領域は、前記水晶体領域の後部に設定されることを特徴とする請求項3に記載の水晶体画像解析装置。
【請求項5】
前記特定領域内の輝度値が所定レベル以下の透明度であるか否かを判定する透明度判定手段を備え、
前記グレード判定手段は、前記特定領域内の輝度値が前記所定レベル以下と判定された場合、中心間層の有無に関係なく、NUC分類グレード中、最も低いグレードであると判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水晶体画像解析装置。
【請求項6】
取得された光学切断面画像データから画像処理により水晶体領域を抽出する水晶体抽出手段を備え、
前記特定領域設定手段は、前記特定領域を前記水晶体領域の内部に設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水晶体画像解析装置。
【請求項7】
前記特定領域設定手段は、予め設定された形状をスキャンさせながら、相関関数値を算出し、もっとも相関度の高い位置を特定領域として設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水晶体画像解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−239639(P2012−239639A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112524(P2011−112524)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000143282)株式会社コーナン・メディカル (15)