説明

水栓の取付構造

【課題】水栓の本体ボデーを樹脂製とした場合においても本体ボデーの変形を有効に防止することのできる水栓の取付構造を提供する。
【解決手段】内部に弁カートリッジ80が組み込まれる樹脂製の本体ボデー12の筒状の周壁部18をカウンタ20から上向きに突出させて、突出部分の外面の雄ねじ部23への本体固定ナット26のねじ込みにより本体ボデー12をカウンタ20に固定する水栓の取付構造において、周壁部18の外周側に位置し、周壁部18の外面に径方向に当接して周壁部18の拡開変形を規制するリング状のストッパ92を本体固定ナット26に一体成形し且つこれを、本体ボデー12の雄ねじ部23と本体固定ナット26の内面の雌ねじ部24との間の径方向の間隙(クリアランス)よりも小距離で周壁部18の外面に近接して設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水栓の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の周壁部を有する本体ボデーの内部に、弁機能部等の水栓機能部を組み込んで成る形態の水栓にあっては、(特に本体ボデーが内部に導かれる給水圧の作用を受けるものにおいては、)従来、内圧の作用を受ける本体ボデーに耐圧性を持たせるために本体ボデーを金属にて構成していた。
【0003】
近年水栓においても樹脂化が進んでおり、この場合上記の本体ボデーを樹脂化したときに、本体ボデーの筒状の周壁部が内部からの給水圧の作用を受けて拡がり変形を生じる恐れがある。
このような本体ボデーの変形は、本体ボデーの破損や漏水にも繋がる恐れがあり、また本体ボデーの変形が生じると内部の水栓機能部に影響が及び、水栓の性能の悪化にも繋がりかねない。
【0004】
また、例えば水栓の本体ボデーを筒状の周壁部を有し且つ軸線方向の一端側に開口部を有する形状となして、その開口部を通じて本体ボデーの内部に水栓機能部を組み込み、そして組み込んだ水栓機能部を、本体ボデーの内面の雌ねじ部に対する機能部固定ナットのねじ込みにより本体ボデーに押圧し固定する形態のものにおいては、機能部固定ナットのねじ込みの際の反力が本体ボデーの開口側の部分を外方向に押す力となって働き、この場合本体ボデーが金属よりも剛性の低い樹脂製であると、その開口側の部分が外方向に拡がり変形しようとする。
そしてそのような機能部固定ナットのねじ込みの際の力に、内部からの給水圧の作用が加わって、本体ボデーの開口側の部分がより変形を生じ易くなる。
【0005】
尚、下記特許文献1にはナットのねじ込みによって水栓を取付基体としての天板に取付固定する構造のものが開示されているが、この特許文献1に開示のものは、ナットのねじ込みによる力が水栓の本体ボデーに対して直接作用しない構造のものであり、上記の課題を解決する手段については開示がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−262775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、水栓の本体ボデーを樹脂製とした場合においても本体ボデーの変形を有効に防止でき、本体ボデーの変形に起因する本体ボデーの破損や漏水、或いは本体ボデーの変形により内部の水栓機能部に影響が及んで水栓の性能が悪化する恐れを解消することのできる水栓の取付構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して請求項1のものは、筒状の周壁部を有し、内部に水栓機能部が組み込まれる樹脂製の本体ボデーを、軸線方向の一端側を取付基体から突出させて、該突出部分の外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより該取付基体に取付固定する水栓の取付構造であって、前記周壁部の外周側に位置し、該周壁部の外面に対し径方向に当接して該周壁部の拡開変形を規制するリング状のストッパを、前記本体ボデーの雄ねじ部と前記本体固定ナットの内面の雌ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離で該周壁部の外面に近接して設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2のものは、請求項1において、前記本体固定ナットが樹脂製であって、前記ストッパが該本体固定ナットに一体に成形してあることを特徴とする。
【0010】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記本体ボデーを、前記軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、該開口部を通じて前記水栓機能部を該本体ボデー内部に組み込み且つ該組み込んだ水栓機能部を、前記本体ボデーの前記一端側の内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて該本体ボデーに押圧し固定するようになしてあり、前記ストッパを、前記本体ボデーの雌ねじ部に対して径方向に対向する位置に配置してあることを特徴とする。
【0011】
請求項4のものは、請求項3において、前記本体ボデーの外面の雄ねじ部と前記内面の雌ねじ部とは、前記軸線方向において異なった位置且つ互いに重複しない位置に設けてあることを特徴とする。
【0012】
請求項5のものは、筒状の周壁部を有し、内部に水栓機能部が組み込まれる樹脂製の本体ボデーを、軸線方向の一端側を取付基体から突出させて、該突出部分の外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより該取付基体に取付固定する水栓の取付構造であって、前記本体ボデーは、前記軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、該開口部を通じて前記水栓機能部を該本体ボデーの内部に組み込み且つ該組み込んだ水栓機能部を、該本体ボデーの前記一端側の内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて該本体ボデーに押圧し固定するようになしてあり、該本体ボデーの前記雄ねじ部は、該本体ボデーの前記雌ねじ部よりも軸線方向の中心側に位置をずらせて且つ該雌ねじ部に対して重複しない位置に配置してあり、前記本体固定ナットには、前記ねじ込み後に本体ボデーの内面の雌ねじ部に対し径方向に対向する位置で径方向内方に環状に突出する突出部が設けてあって、該突出部にて、前記本体ボデーの前記雄ねじ部と前記本体固定ナットの内面の雌ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離で前記周壁部の外面に近接して位置し、前記周壁部の外面に径方向に当接して該周壁部の拡開変形を規制するリング状のストッパを構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0013】
以上のように本発明は、内部に水栓機能部が組み込まれる樹脂製の本体ボデーを、軸線方向の一端側をカウンタ等の取付基体から突出させて、その突出部分の外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより、取付基体に取付固定するようになし、そして本体ボデーの周壁部の外周側に、周壁部の外面に径方向に当接して周壁部の拡開変形を規制するリング状のストッパを周壁部の外面に近接して、詳しくは本体ボデーの外面の雄ねじ部と本体固定ナットの内面の雌ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離で近接した状態に設けたものである。
【0014】
本発明によれば、本体ボデーにおける周壁部が外方向に拡がり変形しようとしたとき、周壁部の外周側に位置しているリング状のストッパと周壁部外面との当接によるストッパ作用によって周壁部の拡がり変形を有効に防止することができる。
【0015】
従って本体ボデーを樹脂製とした場合においても、本体ボデーの周壁部の拡がり変形を防止することで、本体ボデーの変形に起因する本体ボデーの破損や漏水の恐れを無くし、また本体ボデーの変形が内部の水栓機能部に影響を及ぼして水栓の性能が悪化するのを有効に防止することができる。
【0016】
尚、上記のようなリング状のストッパを設けない場合、本体ボデーの周壁部が拡がり変形すると、あるところで本体固定ナットの雌ねじ部と本体ボデーの外面の雄ねじ部との径方向の間隙(クリアランス)が消失して、本体固定ナットと本体ボデーとがねじ部全体に亘って径方向に当った状態となる。
その段階で本体ボデーの変形は一応は規制されるが、本体固定ナットの雌ねじ部と、本体ボデーの雄ねじ部との間の径方向の間隙は寸法的に大きく、従って本体ボデーの変形を小さく抑制することはできない。
【0017】
またこの場合、本体固定ナットの雌ねじ部に対して本体ボデーからの力が加わり、ねじ部が損傷したり、或いは本体固定ナットを樹脂製とした場合には、雌ねじ部の谷部への応力集中によってそこから本体固定ナットに亀裂が入り、本体固定ナットそのものが破損してしまう恐れが生ずる。
しかるに本発明では、本体ボデーの雄ねじ部が本体固定ナットの雌ねじ部に当る前にリング状のストッパが本体ボデーに当って変形規制するため、こうした不具合を生じない。
【0018】
本発明では、上記本体固定ナットを樹脂製として、上記のリング状のストッパを本体固定ナットに一体に成形しておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、リング状のストッパを本体固定ナットと別体に構成する場合に比べて、所要部品点数及び組付けの工数を少なくすることができる。
【0019】
またリング状のストッパを本体固定ナットに一体に成形しておくことで、本体固定ナットをねじ込んだ状態においてストッパの径方向位置を確実に狙いとする位置に位置させること、即ち本体固定ナットの雌ねじ部と本体ボデーの雄ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離でストッパが本体ボデーに近接して位置するように、ストッパの位置を正確に位置出しすることができる。
しかも本体固定ナットをねじ込み作業するだけで、そのままストッパを設定した適正位置に位置させることができる。
【0020】
本発明においてはまた、本体ボデーを軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、その開口部を通じて水栓機能部を本体ボデーの内部に組み込み、且つ組み込んだ水栓機能部を、本体ボデーの一端側の内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて本体ボデーに押圧し固定するようになすとともに、上記のストッパを、機能部固定ナットのねじ込部分である本体ボデーの内面の雌ねじ部に対して径方向に対向する位置に配置しておくことができる(請求項3)。
【0021】
本体ボデーは、このように開口部を有する形状となしておくことによってその開口部の側が拡き方向に変形を生じ易い。
加えてその開口部の側の本体ボデーの内面の雌ねじ部に対して、水栓機能部を本体ボデーに押圧し固定する機能部固定ナットがねじ込まれることによって、本体ボデーにおける周壁部の開口部側の部分に、機能部固定ナットのねじ込みの際の反力が本体ボデーを拡開させる方向の力として加わり、本体ボデーがより一層変形し易い。
【0022】
しかるにこの請求項3では、本体ボデーの周壁部に対して拡がり方向に変形力を加える機能部固定ナットに対し、具体的には本体ボデーの内面の雌ねじ部に対し径方向に対向する位置に上記のストッパが配置してあるため、その変形を効果高く防止することができる。
【0023】
次に請求項4は、本体ボデーの外面の雄ねじ部と、内面の雌ねじ部とを軸線方向において異なった位置且つ互いに重複しない位置に設けたものである。
ねじ部は応力集中のし易い個所であり、そのようなねじ部が軸線方向の同じ位置で本体ボデーの内面と外面との両方とに設けてあると、それら雌ねじ部と雄ねじ部とを設けた個所において本体ボデーが強度的に弱くなってしまう。
【0024】
また内面の雌ねじ部と外面の雄ねじ部とが軸線方向の同じ位置に設けてあると、そこの部分において本体ボデーの肉厚が薄くなり、そのことによっても強度が弱くなってしまう。
しかるにこの請求項4では、それら雌ねじ部と雄ねじ部とが軸線方向において異なった位置に且つ重複しない位置に設けてあるため、そのような不都合を良好に回避することができる。
【0025】
本発明では、本体ボデーの外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより、本体ボデーを取付基体に取付固定するようになし、また本体ボデーは軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、その開口部を通じて水栓機能部を本体ボデー内部に組み込み、且つ組み込んだ水栓機能部を、本体ボデーの内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて、本体ボデーに押圧し固定するようになし、更に本体ボデーの外面の雄ねじ部は内面の雌ねじ部に対して軸線方向の中心側に位置をずらせて配置し、そして本体固定ナットには、ねじ込み後において本体ボデーの内面の雌ねじ部に径方向に対向する位置で径方向内方に環状に突出する突出部を設けて、その突出部を上記のリング状のストッパとして構成しておくことができる。
この請求項5によれば、上記開口部側において本体ボデーが拡開変形するのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の水栓の取付構造を示した断面図である。
【図2】同実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図3】同実施形態の取付構造を分解して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は水栓の要部を表しており、この図において、10は水栓本体、12は水栓本体10における本体ボデーで、この本体ボデー12には流入側の1次側水路14と、流出側の2次側水路16とが形成されている。
本体ボデー12は、円筒状をなして立ち上がる周壁部18を有しており、この周壁部18が、取付基体としてのカウンタ20の取付穴22を挿通して上向きに突き出している。
【0028】
周壁部18は、カウンタ20から軸線方向の上向きに突き出した部分の外面に雄ねじ部23を有しており、そこに内面に雌ねじ部24を有する本体固定ナット26が螺合されている。
本体ボデー12は、この本体固定ナット26のねじ込みにより、本体固定ナット26とカウンタ20下側の段付部28とで、カウンタ20を上下両側から挟持する状態に、カウンタ20に固定される。
【0029】
本体ボデー12の内部には弁機能部が組み込まれている。この実施形態では弁機能部が弁カートリッジ80として構成されている。
周壁部18は上端が開口形状とされており、上記弁カートリッジ80は、この開口部88を通じて本体ボデー12の内部に組み込まれている。
30はその弁カートリッジ80のカートリッジケースで、このカートリッジケース30は上部30-1と、下部30-2と、中間部30-3とに分割されていて、それらが図中上下方向に組み付けられている。
【0030】
ここで中間部30-3には、図3に示しているように上下に間隔を隔てて一対の突起82が設けられており、一方上部30-1と下部30-2とには対応する穴部84が形成されており、これら上部30-1と下部30-2及び中間部30-3とは、突起82に対して穴部84を嵌め合せることによって上下に組み付けられている。
【0031】
周壁部18はまた、上端部内面に雌ねじ部31を有しており、そこに外面に雄ねじ部33を有する機能部固定ナット35がねじ込まれている。
カートリッジケース30は、この機能部固定ナット35のねじ込みにより本体ボデー12に対して下向きに押し付けられ、固定されている。
【0032】
上記1次側水路14と2次側水路16とから成る主水路上には主弁32が配設されている。
主弁32は、下部30-2における円筒部の上端にて構成された主弁座34に着座して主水路を閉鎖し、また主弁座34から図中上向きに離間することによって主水路を開き、1次側水路14から2次側水路16に向けて水を流通させる。
また主弁座34からの離間量即ち弁開度に応じて、流れる水の流量を増減変化させる。
【0033】
主弁32はダイヤフラム弁であって、シール材を兼ねたゴム製のダイヤフラム膜36と、これを保持する硬質の主弁本体38とを有しており、ダイヤフラム膜36の外周部においてカートリッジケース30に固定されている。
【0034】
主弁32の図中上側の背後には背圧室40が形成されている。
この背圧室40は、内部の水の圧力を主弁32に対して閉弁方向の押圧力として下向きに作用させる。
主弁32には、1次側水路14と背圧室40とを連通させる貫通の導入小孔(図示省略)が設けられており、この導入小孔を通じて1次側水路14の水が背圧室40に流入せしめられることで、背圧室40の圧力が増大する。
【0035】
主弁32にはまた、その中心部にこれを上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、そこに後述のパイロット弁42が挿入可能となっている。
この貫通孔の内周面と後述の駆動軸47との間には微小な環状のパイロット水路44が形成され、背圧室40内の水が水抜路としてのパイロット水路44を通じ2次側水路16へと流出可能となっている。
【0036】
主弁32の貫通孔周りには、シール材としてのOリング46を有するパイロット弁座48が設けられている。
47は弁部、詳しくはパイロット弁42を駆動する駆動軸で、この駆動軸47の下端側且つ細径部49の上側にパイロット弁42が一体に構成されている。
【0037】
図1は、パイロット弁42がパイロット弁座48のOリング46に嵌合してパイロット水路44を閉鎖した状態、即ち閉弁状態にあり、このとき背圧室40と2次側水路16とは遮断された状態にある。
従って主弁32もまた主弁座34に着座し、閉弁した状態にある。
【0038】
この状態からパイロット弁42が上向きに後退移動して、パイロット弁42とパイロット弁座48、具体的にはOリング46との間に隙間が生じると(即ちパイロット弁42が開弁すると)、背圧室40の水がパイロット水路44を通じて2次側水路16へと流出し、背圧室40の圧力が減少する。
すると1次側水路14の圧力が背圧室40の圧力に打ち勝つに到り、主弁32をその圧力で上向きに押し上げる。ここにおいて主弁32が開弁する。
【0039】
主弁32が開弁すると、即ち図中上向きに後退移動すると、パイロット弁42とOリング46との間の隙間即ちパイロット水路44の開度が小となり、ここにおいて背圧室40からパイロット水路44を通じて流出する水の流量が少なくなって、背圧室40の圧力が次第に上昇し、そして背圧室40の圧力と1次側水路14の圧力とが釣合う位置で主弁32の後退移動が停止する。
【0040】
以後、主弁32は背圧室40の圧力と1次側水路14の圧力とをバランスさせるようにしてパイロット弁42の後退移動に追従してパイロット弁42と同方向に移動し、主水路の開度を大きくする。
逆にパイロット弁42が図中下向きに前進移動すると、主弁32がこれに追従して同方向の図中下向きに前進移動し、主水路の開度を小として主水路を流れる水の流量を減少させる。
【0041】
駆動軸47の上端部には、これとは別体をなす雄ねじ部材50がボールジョイントを介して駆動軸47に対し傾動可能に結合されている。
この雄ねじ部材50は、平面形状が図中左右方向に長い偏平な形状をなしていて、紙面と直角方向の前面と後面とが平坦な係合面とされている。
そしてそれら前,後の係合面が回止め部材52の一対の挟持片54にて前後に挟持されて、雄ねじ部材50が回止めされている。
この雄ねじ部材50には、図中左右の周面に雄ねじ部が設けられおり、この雄ねじ部が、その外側に配置された筒状の雌ねじ部材56の内面の雌ねじ部に螺合されている。
【0042】
この雌ねじ部材56には、その外側に配置された押ボタン58が一体回転状態に組み付けられ、更にこの押ボタン58に対して、その外側に配置されたスリーブ60が同じく一体回転状態に組み付けられている。
一方押ボタン58の下側には回転子62が配置されており、この回転子62が、雌ねじ部材56の外向きのフランジ部64の上面に相対回転可能に載置されている。
【0043】
この雌ねじ部材56のフランジ部64の下面にはスプリング(ここではコイルスプリング)66の上端が上向きに当接しており、このスプリング66によって雌ねじ部材56,回転子62,押ボタン58,雌ねじ部材56にねじ結合された雄ねじ部材50及びパイロット弁42を一体に備えた駆動軸47が図中上向きに付勢されている。
【0044】
この実施形態では、スリーブ60が回転動作すると、その回転の動きが押ボタン58から筒状の雌ねじ部材56へと伝えられて雌ねじ部材56が回転運動し、そしてその雌ねじ部材56の回転運動によって、パイロット弁42を一体に備えた駆動軸47が雄ねじ部材50を介してねじ送りで図中上下方向に進退移動する。
【0045】
即ちパイロット弁42が進退移動し、またこれに伴って主弁32が追従して進退移動することで主弁32の弁開度が変化し、主水路の水の流量が変化する。
即ちこの実施形態ではスリーブ60を回転動作させることで流量調節が行われる。
【0046】
一方、押ボタン58を下向きに押し込むごとに回転子62が回転して、径方向外方に突出した突部を、スリーブ60の内面に形成されたカム形状の係合歯に噛み合う位置と、縦に延びる溝に入り込む位置とに位置変化させ、そのことによってパイロット弁42が押込位置と上昇位置、詳しくは閉弁位置と開弁位置とに交互に位置変化してそれぞれの位置に位置保持される。
【0047】
上記の回転子62,スリーブ60,スプリング66等はスラストロック機構をなしており、そのスラストロック機構により、押ボタン58を押し込むごとにパイロット弁42、つまり主弁32が閉弁位置と開弁位置とに交互に位置変化し且つそれぞれの位置に位置保持される。
【0048】
この実施形態では駆動軸47,雄ねじ部材50,雌ねじ部材56,押ボタン58,スリーブ60,スプリング66等によって弁部を駆動する駆動部86が構成されている。
ここでは駆動部86が弁カートリッジ80に組み付けられて、それらが1つのユニットを成しており、弁カートリッジ80及び駆動部86がユニットとして本体ボデー12に組み込まれている。
尚これら弁部及びその駆動部の構造は基本的に特開2007−46770号公報に開示されたものと同様の公知のものであるので、ここでは更に詳しい説明は省略する。
【0049】
図1において、68は操作装置で、プッシュ操作式の吐止水操作部70と、これを取り囲むリング状の回転操作式の流調ハンドル(流量調節ハンドル)78とを有している。
流調ハンドル78は、上記スリーブ60に一体回転状態に結合されている。
また吐止水操作部70には、中心部に下向きに立ち下がる形状で押ボタン58を下向きに押す押圧部72が設けられている。
また外周部には、径方向外方に環状に突出する抜止部74が設けられており、この抜止部74が、流調ハンドル78の上端部の内向きのフランジ部76に当接することによって、吐止水操作部70が抜け防止されている。
【0050】
図1に示しているように、この実施形態では本体ボデー12における円筒状の周壁部18の上端部の内面、詳しくは開口部88に続く下側の内面に上記の雌ねじ部31が形成され、そこに機能部固定ナット35がねじ込まれ、カートリッジケース30を図中下向きに押圧し、固定している。
【0051】
また周壁部18の外面において、内面の雌ねじ部31とは軸線方向の異なった位置、詳しくは雌ねじ部31よりも下側位置で雌ねじ部31と上下方向に重複しない位置に雄ねじ部23が形成され、そこに本体固定ナット26がねじ込まれ、ワッシャ90を介しこの本体固定ナット26がカウンタ20の上面に押し付けられている。
【0052】
本実施形態において本体ボデー12及び本体固定ナット26は何れも樹脂製とされている。
詳しくは、本体ボデー12は強化材としてガラス繊維を含有したPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂にて形成され、本体固定ナット26は強化材としてのガラス繊維を含有したPOM(ポリオキシメチレン(ポリアセタール))樹脂にてそれぞれ形成されている。
尚、機能部固定ナット35は金属(黄銅)にて形成されている。
【0053】
この実施形態では、機能部固定ナット35を下向きにねじ込んでカートリッジケース30を本体ボデー12に下向きに押圧し固定したとき、機能部固定ナット35に対する上向きの反力によって、機能部固定ナット35を介し本体ボデー12における周壁部18の上端部に、これを外向きに押し拡げる向きの、即ち周壁部18の上端部を拡開変形させる向きの力が作用する。
【0054】
本体ボデー12にはまた、内部の給水圧の作用によってカートリッジケース30を介し周壁部18を直接径方向外向きに押す力、及び機能部固定ナット35を上向きに押す力即ち周壁部18の開口部88側の端部を機能部固定ナット35を介し外向きに押し拡げる向きの力が作用する。
周壁部18はこれらの力によって、特に開口部88側の上端側が外向きに拡開変形しようとする。
【0055】
この実施形態ではその変形を防止すべく、周壁部18の外周側に位置して周壁部18の外面に径方向に当接し、その拡開変形を規制するリング状のストッパ92が本体固定ナット26に一体成形で構成してある。
ここでリング状のストッパ92は、周壁部18の外面の雄ねじ部23と本体固定ナット26の内面の雌ねじ部24との間の径方向の間隙(クリアランス)よりも小距離で周壁部18の外面に近接して位置する状態に設けられている。
【0056】
詳しくは、図2(B)の部分拡大図に示しているようにストッパ92と周壁部18の外面との間の間隙Sが、本体固定ナット26における内面の雌ねじ部24と周壁部18の外面の雄ねじ部23との間の径方向の間隙(クリアランス)Kよりも小となるように、ストッパ92が周壁部18の外面に近接して位置させられている。
この実施形態において、間隙Sは片側寸法で0.05〜0.1mmの範囲内とされている。
一方間隙Kは0.25〜0.5mmである。
【0057】
本体固定ナット26に一体に構成されたストッパ92は、本体固定ナット26をねじ込んだ状態で周壁部18の内面の雌ねじ部31に径方向に対向した状態となる位置において、本体固定ナット26の一部(図中上端部)を径方向内方に環状に突出させることによって設けられている。
【0058】
従ってこの実施形態では、本体ボデー12における周壁部18が径方向外向きに拡開変形しようとしたとき、本体固定ナット26に一体に構成したストッパ92が、いち早く周壁部18の外面に当ってストッパ作用をなし、周壁部18の拡開変形を阻止するように働く。
尚この実施形態において、本体固定ナット26は周壁部18よりも強度が強く、変形に対する抵抗力の大きなものとされている。
【0059】
以上のような本実施形態によれば、本体ボデー12における周壁部18が外方向に拡がり変形しようとしたとき、周壁部18の外周側に位置しているリング状のストッパ92と周壁部外面との当接によるストッパ作用によって、周壁部18の拡がり変形を有効に防止することができる。
【0060】
従って本体ボデー12を樹脂製とした場合においても、本体ボデー12の周壁部18の拡がり変形を防止することで、本体ボデー12の変形に起因する本体ボデー12の破損や漏水の恐れを無くし、また本体ボデー12の変形が内部の水栓機能部に影響を及ぼして水栓の性能が悪化するのを有効に防止することができる。
【0061】
上記のリング状のストッパ92を設けない場合、本体ボデー12の周壁部18が拡がり変形すると、あるところで本体固定ナット26の雌ねじ部24と本体ボデー12の外面の雄ねじ部23との径方向の間隙K(クリアランス)が消失して、本体固定ナット26と本体ボデー12とがねじ部全体に亘って径方向に当った状態となる。
その段階で本体ボデー12の変形は一応は規制されるが、本体固定ナット26の雌ねじ部24と本体ボデー12の雄ねじ部23との間の径方向の間隙Kは寸法的に大きく、従って本体ボデー12の変形を小さく抑制することはできない。
【0062】
またこの場合、本体固定ナット26の雌ねじ部24に対して本体ボデー12からの力が加わり、ねじ部が損傷したり、或いは雌ねじ部24の谷部への応力集中によってそこから本体固定ナット26に亀裂が入り、本体固定ナット26そのものが破損してしまう恐れが生ずる。
しかるに本実施形態では、本体ボデー12の雄ねじ部23が本体固定ナット26の雌ねじ部24に当る前に、リング状のストッパ92が本体ボデー12に当って変形規制するため、こうした不具合を生じない。
【0063】
本実施形態では、本体固定ナット26を樹脂製としてリング状のストッパ92をこれに一体に成形していることから、リング状のストッパ92を本体固定ナット26と別体に構成した場合に比べて所要部品点数及び組付けの工数を少なくすることができる。
【0064】
またリング状のストッパ92を本体固定ナット26に一体に成形しておくことで、本体固定ナット26をねじ込んだ状態においてストッパ92の径方向位置を確実に狙いとする位置に位置させること、即ち本体固定ナット26の雌ねじ部24と本体ボデー12の雄ねじ部23との間の径方向の間隙Kよりも小距離でストッパ92が本体ボデー12の周壁部18の外面に近接して位置するように、ストッパ92の位置を正確に位置出しすることができる。
しかも本体固定ナット26をねじ込み作業するだけで、そのままストッパ92を設定した適正位置に位置させることができる。
【0065】
本実施形態では、本体ボデー12の外面の雄ねじ部23と内面の雌ねじ部31とを軸線方向の異なった位置且つ互いに重複しない位置に設けている。
ねじ部は応力集中のし易い個所であり、そのようなねじ部が軸線方向の同じ位置で本体ボデー12の内面と外面との両方とに設けてあると、それら雌ねじ部31と雄ねじ部23とを設けた個所において本体ボデー12が強度的に弱くなってしまう。
【0066】
また内面の雌ねじ部31と外面の雄ねじ部23とが軸線方向の同じ位置に設けてあると、そこの部分において本体ボデー12の肉厚が薄くなり、そのことによっても強度が弱くなってしまう。
しかるにこの実施形態では、それら雌ねじ部31と雄ねじ部23とが軸線方向において異なった位置に且つ重複しない位置に設けてあるため、そのような不都合を良好に回避することができる。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上例以外の様々な形態の水栓に対して適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0068】
12 本体ボデー
18 周壁部
20 カウンタ
23,33 雄ねじ部
24,31 雌ねじ部
26 本体固定ナット
35 機能部固定ナット
80 弁カートリッジ
88 開口部
92 ストッパ
S,K 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の周壁部を有し、内部に水栓機能部が組み込まれる樹脂製の本体ボデーを、軸線方向の一端側を取付基体から突出させて、該突出部分の外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより該取付基体に取付固定する水栓の取付構造であって、
前記周壁部の外周側に位置し、該周壁部の外面に対し径方向に当接して該周壁部の拡開変形を規制するリング状のストッパを、前記本体ボデーの雄ねじ部と前記本体固定ナットの内面の雌ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離で該周壁部の外面に近接して設けたことを特徴とする水栓の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、前記本体固定ナットが樹脂製であって、前記ストッパが該本体固定ナットに一体に成形してあることを特徴とする水栓の取付構造。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記本体ボデーを、前記軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、該開口部を通じて前記水栓機能部を該本体ボデー内部に組み込み且つ該組み込んだ水栓機能部を、前記本体ボデーの前記一端側の内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて該本体ボデーに押圧し固定するようになしてあり、
前記ストッパを、前記本体ボデーの雌ねじ部に対して径方向に対向する位置に配置してあることを特徴とする水栓の取付構造。
【請求項4】
請求項3において、前記本体ボデーの外面の雄ねじ部と前記内面の雌ねじ部とは、前記軸線方向において異なった位置且つ互いに重複しない位置に設けてあることを特徴とする水栓の取付構造。
【請求項5】
筒状の周壁部を有し、内部に水栓機能部が組み込まれる樹脂製の本体ボデーを、軸線方向の一端側を取付基体から突出させて、該突出部分の外面の雄ねじ部に対する本体固定ナットのねじ込みにより該取付基体に取付固定する水栓の取付構造であって、
前記本体ボデーは、前記軸線方向の一端に開口部を有する形状となして、該開口部を通じて前記水栓機能部を該本体ボデーの内部に組み込み且つ該組み込んだ水栓機能部を、該本体ボデーの前記一端側の内面の雌ねじ部にねじ込んだ機能部固定ナットにて該本体ボデーに押圧し固定するようになしてあり、
該本体ボデーの前記雄ねじ部は、該本体ボデーの前記雌ねじ部よりも軸線方向の中心側に位置をずらせて且つ該雌ねじ部に対して重複しない位置に配置してあり、
前記本体固定ナットには、前記ねじ込み後に本体ボデーの内面の雌ねじ部に対し径方向に対向する位置で径方向内方に環状に突出する突出部が設けてあって、該突出部にて、前記本体ボデーの前記雄ねじ部と前記本体固定ナットの内面の雌ねじ部との間の径方向の間隙よりも小距離で前記周壁部の外面に近接して位置し、前記周壁部の外面に径方向に当接して該周壁部の拡開変形を規制するリング状のストッパを構成してあることを特徴とする水栓の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−80339(P2011−80339A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235759(P2009−235759)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】