説明

水栓取付具および水栓取付方法

【課題】施工の際に水栓取付具の台座に設けた角度表示を参考にして取り付けられるようにした水栓取付具および水栓取付方法を提供することを課題とする。
【解決手段】水栓の筒状に形成された下端部を嵌め込む筒部とこの筒部の端部に形成した鍔状の座とを設けた鍔付き筒形状の台座により、水栓の向き規定する水栓取付具において、台座の筒部の外周面又は鍔部の外周面に、直線又は点状の角度表示を刻設するか、又は、上記台座の筒部の端面又は鍔部の筒部側に向いた端面に直線又は点状の角度表示を刻設するように構成し、流しの正面中央部で作業する作業者の位置に蛇口を向けた水栓を固定するに際し、角度表示として刻設されている角度表示に基づき台座を軸心周りに回動して、台座の向きを定め、その後に台座と固定具とにより天板を挟持するように取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厨房設備におけるシンク直近の天板に水栓を固定するための水栓取付具および水栓取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水栓取付具には、例えば鍔付き円筒形に形成されたアダプタ装置と、このアダプタ装置にボルトで組み付けられるホルダとからなり、あるいは、このホルダの下端面にボルト止めされて外周側に回り込むクランプシューあるいは舌状片に形成された係止部材とを備え、天板を貫通した断面円形の孔から固定具及び係止部材を下側に挿入してから固定具又は係止部材を回動することにより天板を挟持できるようにしたものがあった(特許文献1)。
このアダプタ装置と水栓とは、水栓本体の下端部に形成された円筒部をアダプタ本体に外嵌し、止めビスによって水栓本体の開口とアダプタ本体の雌ねじ孔を連結することにより、互いに回転不能となるように連結固定している。
【0003】
また、コック・ハウジングを外嵌する段付きスリーブが下方に筒状部を延ばし、この下方に延ばした筒状部には下端面に舌状片あるいはクランプシューを外方へ突出可能に設け、天板に係止する時には舌状片あるいはクランプシューを外方へ突出して天板を挟持できるように形成したものがあった(特許文献2)。
このコック・ハウジングと段付きスリーブとは、錠止ピンにより互いに回転不能となるように連結固定している。
さらに、水栓が外嵌する固定具が下方に筒状部を延ばして天板の下側に突出するように設けられ、その表面に形成したねじ部にナットを螺合して、ナットにより天板を挟持できるようにしたものがあった(特許文献3)。
また、この水栓と固定具とは、割りピンなどの締結部材を水栓の下部と固定具の上端部との嵌合部に挿通して、互いに回転不能となるように連結固定している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−318398号公報
【特許文献2】特開昭63−312435号公報
【特許文献3】特開平10−072855号公報
【0005】
〔問題点〕
このような従来の技術においては、天板を水栓を取り付けるアダプタ本体、コック・ハウジング、固定具、あるいは上面施工ユニット、台座等と呼ばれる水栓取付け具の本体と固定具又はクランプシューあるいは舌状片等の係止部材或いはナット等を用いて挟持することにより水栓取付具を天板に取り付けられるようにしていたため、設置場所の制限がないが、使用の便が考慮されてシンクの正面中央部奥側の天板に立設されていた。
【0006】
しかし、近年ではキッチンユニットの背面を壁に密着して配置するものだけでなく、リビングやダイニング側に向いて調理することができるように配置する対面型キッチン、シンクやコンロ部分を壁から離れた島のように独立した状態に配置するアイランド型キッチン等が増加したことにより、水栓の配置位置もシンク正面の奥側に限らず、キッチンシンク側面の角部すなわちシンクコーナーの近傍等、正面以外の場所に水栓を設置する場合が増えてきている。
【0007】
このような場合には、水栓の正面をシンクの正面側に位置する作業者に向かせるように回転させて設置する必要が生じるため、施工時では施工指示に従った角度に取り付けることが要求される。
しかし、従来の水栓取付具を用いた水栓の取付では、キッチンメーカーから施工業者へ取付角度等の水栓取付に関する指示が出ている場合、現場責任者から現場打合せの時に口頭で指示が出されるだけであるため、取付角度は作業者に任された状態になっていた。このため、水栓を回転して設置する取付作業では、水栓取付具に角度の目印になるものがなく、特別な道具もないため、必要な角度に回転して設置することが容易ではなく、大雑把に取付角度が定められて取付けられていた。特に、水栓上部に設けられたレバーの回転操作によって湯水の混合比率を切り換える湯水混合水栓の場合には、水栓の設置角度がレバーの設置角度と連動するため、水栓が適正な角度で設置されていないと湯水混合の調整がしづらくなることがあった。
【0008】
また、通常、水栓の吐水口が首振り回動可能な構造に形成されており、吐水口の回動範囲は水栓を正面に配置した際を基準として設計されているから、水栓を正面以外の向きに設置する場合には、角度を調整して配置しないと、水栓の吐出口がシンクからはみ出してしまい、吐水中に吐水口を回動させたときに水がシンク外に出てしまうことも起こり得る。
このような不具合が生じないように水栓を正面以外の角度に向けて配置するために、配置場所に応じて、水栓に角度規制構造を設けると水栓のコスト高につながる。
このため、施工現場では、施行指示に従った角度に施工することが要求されても、従来の水栓取付具には角度の目印になるようなものがなく、角度を測定するための道具が別に必要であっても現実にはなく、また取付けに手間がかかるため、取り付けられた角度は大雑把な設定にならざるを得ず、使用に不都合を生じた場合は、取付直しを行わなければならないこともあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の技術における前記問題点を解消するためのものであり、そのための課題は、施工の際に水栓取付具の台座に設けた角度表示を参考にして取り付けられるようにした水栓取付具および水栓取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における前記課題が効果的に解決される水栓取付具および水栓取付方法を特定するために、必要と認める事項の全てが網羅され、具体的に構成された、課題解決手段を以下に示す。
水栓取付具に係る第1の課題解決手段は、水栓の筒状に形成された下端部を嵌め込む筒部を設けた筒形状の台座により、水栓を所定の取付け箇所に取り付けられるようにする水栓取付具において、上記台座の目視可能な位置に、角度表示を複数設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、水栓取付具に係る第2の課題解決手段は、前記台座の目視可能な位置は、筒部の外周面、内周面および上端面、ならびに筒部の下端部に座となる鍔部が形成されている場合には鍔部の上端面および外周面のいずれかであることを特徴とする。
また、水栓取付具に係る第3の課題解決手段は、前記角度表示は、直線や点列などに形成された凹みや突起あるいは印刷物のいずれかにより表示されることを特徴とする。
【0012】
水栓取付方法に係る第1の課題解決手段は、天板の表面側に位置した台座と上記天板に穿設された貫通孔を介して裏面側に位置する固定具とにより上記貫通孔の周縁部を挟持する水栓取付具を、水栓の取付前に、水栓の取付角度に従い、水栓取付具の向きを定めて固定する水栓取付方法において、流しの正面中央部で作業する作業者の位置に上記水栓の正面を向けて固定するに際し、上記台座に設けられている角度表示に基づき、上記台座を軸心周りに回動して、上記台座に規定されている水栓の正面が上記流しの正面中央部に向くように上記台座の向きを定め、その後に上記台座と上記固定具とにより上記貫通孔の周縁部を挟持して水栓取付具を固定することを特徴とするものである。
【0013】
また、水栓取付方法に係る第2の課題解決手段は、前記台座の向きを前記角度表示に基づき指定された角度に向けるには、前記台座の正面位置から順に対応する角度が決められている角度表示の位置に応じて、指定された角度に該当する順位の角度表示の位置まで回動することにより取付角度を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の水栓取付具に係る第1の課題解決手段では、台座の目視可能な位置に設けられた角度表示によって、指定された角度に該当する表示に合わせて台座を回すことにより、水栓を取り付ける前に水栓の取付角度を設定することができ、作業性が改善でき、作業効率が向上して、取付費用を低減できる。
【0015】
また、水栓取付具に係る第2の課題解決手段では、台座の目視可能位置を、筒部の外周面、内周面および上端面、ならびに筒部の下端部に座となる鍔部が形成されている場合には鍔部の上端面および外周面のいずれかとしたから、水栓取付具の角度表示が斜め上方から見やすく、水栓を取り付けずに水栓の取付角度を設定することが台座の角度表示から容易にできる。
また、水栓取付具に係る第3の課題解決手段では、角度表示は、直線や点列などに形成された凹みや突起あるいは印刷物のいずれかにより表示することができるから、角度表示が水栓取付具の設置時に容易に識別できて、作業が容易になり、水栓を取り付けずに水栓の取付角度を設定することが容易にできる。
【0016】
水栓取付方法に係る第1の課題解決手段では、流しの正面中央部で作業する作業者の位置に向けて水栓の正面が向くように、目視可能な位置に角度表示を設けた台座を角度表示に従い軸心周りに回動して、台座に規定されている水栓の正面が流しの正面中央部に向くように台座の向きを定め、台座の向きが確定してからボルトを締め付けて、台座と固定具とにより貫通孔の周縁部を挟持することにより、水栓取付具の向きを容易に所望の向きに設定することができて、台座に取り付ける水栓を容易に所望の角度で取り付けることができるようになり、水栓取付作業の作業性が改善でき、作業効率が向上して、取付時間が短縮でき、取付費用を低減できる。
【0017】
また、水栓取付方法に係る第2の課題解決手段では、台座の向きを角度表示に基づき指定された角度に向けるには、台座の向きを目視可能な位置に設けられて角度表示に基づき、正面からの表示順序により対応する角度が決められている表示に応じて、指定された角度に該当する表示順序の表示位置まで回動することにより任意の取付角度に設定でき、台座の向きが決まれば、台座に取り付ける水栓も所望の角度で取り付けられることになり、水栓取付作業の作業性が改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における以下の実施の形態では、湯水混合水栓取付具の場合について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0019】
〔構成〕
図1に示すように、水栓取付具10は、鍔付き筒状体に形成された台座11と、三日月状あるいは馬蹄形状に形成された固定具12と、これらを結合する2本のボルト13と、取付作業の時に台座11と固定具12とを結び付けて固定具12を所定の向きに向ける市販の結束用樹脂紐(以下、単に紐という)14(図8〜10参照)と、天板1に穿設された貫通孔1aの内面に当接して貫通孔1aとの相対位置を適当範囲に制限するストッパとなるピン15,15(図8,10,12参照)とからなる。
【0020】
台座11は、図2,3に示すように、円筒部11aの一端から放射方向に板材を張出すことにより天板1の上に置く場合の座となる鍔部11bを形成した鍔付き円筒形に形成し、円筒部11aの内面側に部分的に突出した厚肉部11c,11cを形成して、それぞれの厚肉部11c,11cには各1本ずつボルト13,13を挿通するためのボルト孔11d,11dとピン15,15を植設するためのピン孔11e,11eとを中心軸と並行に穿設する。
ボルト孔11d,11dの一方の近傍には、ピン孔穿設位置と反対側の位置に、紐挿通孔11hを中心軸と平行に穿設する。
円筒部11aの外周面には、内側に突出した両厚肉部11c,11cのある位置で2つに分けられる外周面で周長が短い方の中央位置に水栓固定ねじ21b(図18参照)の先端部が挿入される円錐状に形成されたねじ先端部挿入穴11fを刻設し、このねじ先端部挿入穴11fの刻設位置の両側には、中心軸に平行な多数の浅い溝からなる角度指定溝11g,…,11gを刻設する。
【0021】
この角度指定溝11g,…,11gは、ねじ先端部挿入穴11fから中心角30度の位置に軸心と平行な浅い線状の溝からなる第1の角度指定溝11gを形成し、この第1の角度指定溝11gから中心角15度間隔でさらに3つの第2乃至第5の角度指定溝11g,…,11gを刻設し、ねじ先端部挿入穴11fの刻設位置に対して反対側に位置する外周面に対しても同様に角度指定溝11g,…,11gを刻設して、ねじ先端部挿入穴11fの刻設位置の両側に角度指定溝11g,…,11gによる角度表示をする。
角度表示については、水栓を正面に取り付ける際の基準となる角度表示と、水栓を回転させて取り付ける際の角度表示とが必要であり、したがって、角度表示は複数存在することが必要となる。本実施例においては、台座11に設けられたねじ先端部挿入穴11fが基準(すなわち角度0度)となる角度表示としての機能を果たしているため、角度表示のための角度指定溝11gは最低あと1本あれば役割を果たすが、本例では角度表示を多数設けることにより、さまざまな角度指定に対応できるように形成している。
【0022】
固定具12は、図4に示すように、平面形状を馬蹄形に形成し、板厚の厚い部材で剛性が高く変形しにくい形状に形成する。下面側の外周端縁を大きくカットして面取りし、面取りしない方の上面には外周端縁部に略等間隔で配置されたすべり止め12aを多数個突出する。このすべり止め12aは先端に向けて先細りになる横断面が略三角形の突起を形成する。この固定具12の湾曲した形状の内周面側には、台座11の突出した厚肉部11c,11cに対応する位置に同様に内側へ突出した突出部12b,12bを設け、この突出部12b,12bにボルトを螺合するためのねじ孔12c,12cを設ける。
また、台座11側の紐挿通孔11hの近傍に設けられたボルト孔11dに対応する位置のねじ孔12cの近傍には、台座11側の紐挿通孔11hに対応する位置に紐挿通孔12hを穿設して、紐14を挿通可能に形成する。この紐挿通孔12hは、中央部から上部にいくほど径が徐々に大きくなる広がり角が小さい円錐面を形成し、紐14の先端部14bが上方から入り易い形状に形成する(図7参照)。
ボルト13は、天板1の板厚よりも長く、少なくとも天板1の板厚と台座11の高さと固定具12の厚みとを加えた長さよりも長くし、ボルト13のねじ形成部の先端にはスナップリング16が嵌まり込む溝13aを形成する。
【0023】
紐14は、図5,6に示すように、長尺で可撓性のある樹脂によって成形されており、手元側の端部には台座11の上端に当接する摘み部14aを、先端部には固定具12に穿設された紐挿通孔12hを貫通して摘み部14a側に引っ張られても抜けないように放射方向に広がる複数個の抜止め部材14cを有する先端部14bを備える。
摘み部14aは、台座11の紐挿通孔11hの径より大きく、少なくとも紐14が下方にずり落ちない程度の大きさとする。
先端部14bは、円周方向等間隔に2つの抜止め部材14c,14cを備えた捕鯨用の銛のような形状としており(図6(b),7(a)参照)、抜止め部材14c,14cの拡がりは、固定具12の紐挿通孔12hにおける下端の径よりも大きくし、使用材料の可撓性を利用して、固定具12の紐挿通孔12hを通過中は孔径の窄まりに従って広がり範囲を狭くし(図7(b)参照)、通過後には紐挿通孔12hによる圧迫から開放されて広がり範囲を広げ、引抜方向に引かれた場合に抜止め部材14c,14cが紐挿通孔12hの外縁部に当接して引抜を阻止する(図7(c)参照)。
【0024】
紐14の取付けは、図8,9に示すように、一本の紐14を始めに台座11の紐挿通孔11hに挿通し、その後に固定具12の紐挿通孔12hに挿通して、紐14により台座11と固定具12とをボルト締めしなくても1セットとして扱えるようにする。
このため、図10に示すように、台座11のボルト孔11dと固定具12のねじ孔12cとの中で、紐挿通孔11h,12hが近傍に位置していない方のボルト孔11dとねじ孔12cとに、1本のボルト13を挿通、螺合して、取り付けると、このボルト13を中心として固定具12を回動して向きを変えると、天板1の貫通孔1aに固定具12を天板1の裏側まで通し易い形状の状態になり、ボルト13と紐14とにより結び付けられている台座11と固定具12とを、台座11の向きを任意に変えるとともに紐14を操作して固定具12の向きを変えることにより、容易に天板1を挟持可能な状態にできるようになる。
【0025】
〔取付方法〕
このように構成した実施形態においては、図11に示すように、台座11と固定具12をボルト13,13により結合して流しの天板1に取り付けようとする時、紐14の先端部14bを台座11の紐挿通孔11hおよび固定具12の紐挿通孔12hに通して、台座11と固定具12との間に紐14を架け渡す。なお、この作業は事前に工場等で行っても良い。
【0026】
次に、ボルト13,13が両方とも取り付けられている場合には、紐14が取り付けられている方のボルト13を外し、またボルト13,13が取り付けられていない場合には、台座11の紐14を取り付けた方と反対側のボルト孔11dにボルト13を挿通し、続けて固定具12の対応する位置に設けられたねじ孔12cにボルト13を螺合して、1本のボルト13により台座11と固定具12とを結合した状態にして、ボルト13を中心にして固定具12を紐14の緩みに応じて回動し、図12に示すように、全体を横向きに倒して固定具12を天板1に設けられている貫通孔1aに通す。
【0027】
固定具12が天板1の貫通孔1aを通り抜けてから、全体の向きを元に戻し、その後、図13に示すように、紐14の摘み部14aを引っ張ることにより、ボルト13を中心にして固定具12を回動させて固定具12の向きを変え、台座11のボルト孔11dと固定具12のねじ孔12cとの中心軸を同軸にしてボルト挿通位置を合わせる。
ボルト13が挿入されていない方の同軸になった台座11のボルト孔11dと固定具12のねじ孔12cとに、もう一本のボルト13を通して螺合することにより台座11と固定具12とを2本のボルト13,13によって支持する。
それから、図14に示すように、台座11を正面側または背面側に位置をずらし、天板1の貫通孔1aにピン15,15が当接して移動できなくなってから、図15に示すように、4mmの六角レンチ17により各ボルト13,13を均等に締めて、台座11と固定具12により天板1を強く挟持する。
【0028】
天板1の挟持後、図16に示すように、水栓21を所定の向きにして下方に突き出した各配管を台座11の内部を通して天板1を貫通させることにより天板1の下側へ配置し、水栓21の位置固定用ボルト21b(図18参照)が螺合するねじ孔21aとねじ先端部挿入穴11fとの位置合せを行い、図17に示すように、各孔21a,11fが同軸になって位置が一致したところで位置固定用ボルト21bをねじ孔21aに螺合して、六角レンチ18により位置固定用ボルト21bを、図18の断面図に示すように、位置固定用ボルト21bの先端部が台座11のねじ先端部挿入穴11fに挿入されて止まるまで締め込み、水栓21の位置固定をする。
【0029】
水栓21の取付位置は、図19に示すように、台所30の流し31における向かい側の壁面に沿った中央部に、たわし等の洗い道具を入れるための道具入れ32が設けられている場合、正面に立ったときに、道具入れ32を正面に見ると、道具入れ32の左側の縁部に蛇口の向きが正面向きよりも約30度の角度で流しの中央部に向けられた水栓21が設けられる。
【0030】
このような水栓21の位置と向き(角度)を適切に設置するには、図20に示すように、台座11の位置と向きは、台座11に設けられたねじ先端部挿入穴11fが正面に向いている場合を傾きが0度とすると、図19の場合のように30度の傾きで取り付けるには、角度指定溝11g,…,11gのうち、ねじ先端部挿入穴11fの中心となす角度(以下、中心角という)が30度の位置に刻設された角度指定溝11gを正面向きにして固定すると、この台座11に取り付けられる水栓21は蛇口が正面から30度傾いた状態で取り付けられるようになる。
【0031】
また、中央部からもっと離された場合で45,60度の傾きで取り付ける場合には、角度指定溝11g,…,11gのうちそれぞれ中心角45,60度の位置に刻設された角度指定溝11gを正面向きにして固定すると、この台座11に取り付けられる水栓21は蛇口がそれぞれ正面から45,60度傾いた状態で取り付けられることになる。
このように、水栓21の取付けが台座11の向きによって一意的に決まり、容易に取付け角度を設定することができるようになる。
【0032】
〔作用効果〕
このように実施形態の水栓取付具10では、台座11に設けられた角度指定溝11g,…,11gによる角度表示を利用することにより、取付角度を容易に設定することができ、水栓21の取付作業が効率よく進められ、作業効率が向上し、生産コストが低下する。
水栓21の取付角度の設定には、台座11に設けられた角度指定溝11g,…,11gのうち取付角度に相当する角度指定溝11gを正面に向けるだけで必要な角度に設定できるため、特別な器具を使用する必要がなく、道具立てが少なくて済み、準備に手間を取らず、作業がし易いだけでなく、道具使用に際して生じがちな作業の無用の混乱を避けることができ、作業のミスを未然に回避することができる。
また、上面施工の場合、水栓取付具に水栓本体を取り付けた状態での角度調整ができないから、水栓を取り付ける土台となる水栓取付具を固定する際に予め調整することで、水栓の取付が容易になり、角度があっていない場合の手直し(再調整)がなくなる等、調整時間の短縮が図れる。
ユニット前面にのみ角度表示を設けるだけでなく、対角線上にも角度表示を設けることにより、直線性が出し易くなる。
最近のシステムキッチンでは、水栓をシンクに向って斜め方向に向けて設ける(シンクコーナーに設ける)ことが主流となり、正面に取り付けるものが皆無に近くなり、角度調節が必須になってきているから、角度表示を設けることは時流にも沿っている。
なお、この水栓取付具10は、他の部品の取付け、例えば手すり等の壁面への取付具としても利用可能な構造となっているから利用性に富むものである。
【0033】
〔別態様〕
この実施の形態および実施例は、発明の趣旨を理解し易くするため具体的に説明しているが、発明内容を限定するものではないから、特に説明されていない別の態様を制限するものではなく、適宜変更しても良い。このような意味で発明の趣旨に沿ういくつかの別態様を以下に示す。例えば、
台座11には実施の形態で例示した円筒部11aの外周面に刻設した角度指定溝11g(図21(A))の他に、例えば、台座11の鍔部11bの外周面に角度表示として角度指定溝あるいは角度指定点11iを軸方向に刻設(図21(B))、また台座11の円筒部11aの端面(上端面)に角度表示として角度指定溝あるいは角度指定点11jを径方向に刻設(図21(C))、また台座11の鍔部11bにおける筒部側に向いた端面(上面)に角度表示として角度指定溝11kを径方向に刻設(図21(D))しても良い。
角度表示は、線状でも、点状でも認識可能であれば良く、また、点状であっても点列を形成しているものであっても良い。また、角度表示の形成形態は、台座に実施形態のような溝を刻設する以外に、突起を形成する場合でも印刷による表示を設けるものであっても良い。
台座の形状は、実施の形態では鍔部を設け、安定良く設置でき、鍔部と天板との間にシール部材を挟むことができるようになって水密性を高くすることができるようにしているが、この他に、鍔部のない形状の台座(図22,23参照)41を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態における水栓取付具の取付状態を示す部分断面斜視説明図である。
【図2】同上水栓取付具の台座を示す斜視図である。
【図3】同上水栓取付具の台座を示す図面で、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(A)におけるA−A断面図である。
【図4】同上水栓取付具の固定具を示す図面で、(A)は底面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
【図5】同上水栓取付具の紐を示す外観図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】同上水栓取付具の紐を示す拡大図で、(a)は摘み部の拡大正面図、(b)は先端部の拡大正面図である。
【図7】同上水栓取付具の紐が固定具の紐挿通孔を通過する状態を示す拡大部分断面説明図で、(a)は紐が固定具の紐挿通孔を通過する直前の状態、(b)は紐が固定具の紐挿通孔を通過中の状態、(c)紐が固定具の紐挿通孔を通過した直後の状態を示す。
【図8】同上水栓取付具の紐を台座と固定具とに挿通した状態を示す斜視説明図である。
【図9】同上水栓取付具の紐を台座と固定具とに挿通した状態を示す断面説明図である。
【図10】同上水栓取付具の紐使用時における固定具の天板通過時を示す斜視説明図である。
【図11】同上水栓取付具の組付けにおける初期状態を示す斜視説明図である。
【図12】同上水栓取付具の組付け時における横転時を示す斜視説明図である。
【図13】同上水栓取付具の組付け時における固定具の位置合せを示す斜視説明図である。
【図14】同上水栓取付具の組付け時における台座ずらし時を示す斜視説明図である。
【図15】同上水栓取付具の組付け時における天板挟持用ボルト締めを示す斜視説明図である。
【図16】同上水栓取付具の組付け時における水栓嵌合せ作業を示す斜視説明図である。
【図17】同上水栓取付具の組付け時における水栓のねじ止めを示す斜視説明図である。
【図18】同上水栓取付具の組付けにおける水栓と台座との組合せ状態を示す横断面図である。
【図19】同上水栓取付具を流しの天板へ取り付けた状態を示す平面説明図である。
【図20】同上水栓取付具の取付方法を示す平面説明図である。
【図21】同上水栓取付具の角度表示の種類を示す斜視外観図で、(A)は実施の形態と同じく台座の円筒部外周面に角度表示を刻設した例、(B)は台座の鍔部外周面に角度表示を刻設した例、(C)は台座の円筒部上端面に角度表示を刻設した例、(D)は台座の鍔部上面に角度表示を刻設した例である。
【図22】本発明の実施形態の別態様における鍔なし台座を有する水栓取付具を示す斜視図である。
【図23】同上鍔なし台座を有する水栓取付具を示す正面部分断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 天板
1a 貫通孔
10 水栓取付具
11,41 台座
11a 円筒部(筒部)
11b 鍔部(座)
11c 厚肉部
11d ボルト孔
11e ピン孔
11f ねじ先端部挿入穴
11g,11i,11j,11k 角度指定溝(角度表示)
11h 紐挿通孔
12 固定具
12a すべり止め
12b 突出部
12c ねじ孔
12h 紐挿通孔
13 ボルト
14 紐
14a 摘み部
14b 先端部
14c 抜止め部材
15 ピン
16 スナップリング
17,18 六角レンチ
21 水栓
21a (位置固定用ボルト用の)ねじ孔
21b 位置固定用ボルト
30 台所
31 流し
α、β、γ 角度(30度、45度、60度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の筒状に形成された下端部を嵌め込む筒部を設けた筒形状の台座により、水栓を所定の取付け箇所に取り付けられるようにする水栓取付具において、
上記台座の目視可能な位置に、角度表示を複数設けたことを特徴とする水栓取付具。
【請求項2】
前記台座の目視可能な位置は、筒部の外周面、内周面および上端面、ならびに筒部の下端部に座となる鍔部が形成されている場合には鍔部の上端面および外周面のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の水栓取付具。
【請求項3】
前記角度表示は、直線や点列などに形成された凹みや突起あるいは印刷物のいずれかにより表示されることを特徴とする請求項1記載の水栓取付具。
【請求項4】
天板の表面側に位置した台座と上記天板に穿設された貫通孔を介して裏面側に位置する固定具とにより上記貫通孔の周縁部を挟持する水栓取付具を、水栓の取付前に、水栓の取付角度に従い、水栓取付具の向きを定めて固定する水栓取付方法において、
流しの正面中央部で作業する作業者の位置に上記水栓の正面を向けて固定するに際し、上記台座に設けられている角度表示に基づき、上記台座を軸心周りに回動して、上記台座に規定されている水栓の正面が上記流しの正面中央部に向くように上記台座の向きを定め、その後に上記台座と上記固定具とにより上記貫通孔の周縁部を挟持して水栓取付具を固定することを特徴とする水栓取付方法。
【請求項5】
前記台座の向きを前記角度表示に基づき指定された角度に向けるには、前記台座の正面位置から順に対応する角度が決められている角度表示の位置に応じて、指定された角度に該当する順位の角度表示の位置まで回動することにより取付角度を変えることを特徴とする請求項4記載の水栓取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2007−291605(P2007−291605A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117112(P2006−117112)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(597147980)有限会社寿通商 (8)
【Fターム(参考)】