説明

水栓装置

【課題】水または湯水の混合水の流路の凍結を簡便に抑制することのできる水栓装置を提供すること。
【解決手段】給水路2と、給湯路3と、給水路および給湯路に連通する吐水路4とを備え、給水路には、給水量の調節を行う電動式給水弁6が設けられ、給湯路には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁7が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁8が、吐水路に設けられるか、または給水路および給湯路のそれぞれに設けられ、これらの電動式給水弁、電動式給湯弁および電磁弁がケース5の内部に収納され、ケースの内部には、ケース内の温度を測定する温度センサ15が設けられ、設定温度以下の温度が温度センサにより検出されたときに、電動式給水弁による給水停止および電動式給湯弁による給湯停止を行わせた後に、電磁弁に通電する制御手段16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結が抑制された水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冬場の水道配管の凍結対策としては、配管に断熱材やヒータを巻き付けたり、定期的に吐水を行ったりすることが一般的である。しかしながら、断熱材やヒータは、水栓装置に取り付けなければならないので、その分コストが高騰し、取り付けのための手間を要するという問題が指摘される。また、定期的な吐水は、節水の観点からすると、好ましいものではない。
【0003】
下記特許文献1には、流路と、流路の流量を調節する弁体と、弁体に連結された鉄心と、鉄心に電磁力を付与する電磁コイルと、温度検出器と、温度検出器によって流路の凍結状態を判断する凍結判定手段とを備えた流量制御装置が記載されている。この流量制御装置は、給湯の開閉を行う手動式または自動式の開閉弁を閉じて給湯を停止すると、給湯停止を検出して凍結防止モードの作動を開始する。この凍結防止モードでは、水温が温度検出器により検出され、凍結判定手段で凍結の危険性があると判断すると、電磁コイルへ通電し、電磁コイルが有する抵抗によって電磁コイルが発熱し、また、電磁誘導によって鉄心が加熱される。このときの熱を利用して流量制御装置は、保温し、凍結を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−271434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された流量制御装置では、湯水を混合する混合弁本体に鉄心と電磁コイルが設けられるので、混合弁の構成および構造に改変を加える必要があり、混合弁のコストの高騰が懸念される。水と湯の供給量を調節する電動弁と、水、湯または湯水の混合された混合水の供給の開始と停止を行う電磁弁とをそのまま用いて簡便に流路の凍結を抑制するための方策の実現が要望される。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、水または湯水の混合水の流路の凍結を簡便に抑制することのできる水栓装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の水栓装置は、水を供給する給水路と、湯を供給する給湯路と、給水路および給湯路に連通し、給水路から供給される水、給湯路から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する吐水路とを備えた水栓装置であって、給水路には、給水量の調節を行う電動式給水弁が設けられ、給湯路には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁が、吐水路に設けられるか、または給水路および給湯路のそれぞれに設けられ、これらの電動式給水弁、電動式給湯弁および電磁弁がケースの内部に収納され、ケースの内部には、ケース内の温度を測定する温度センサが設けられ、設定温度以下の温度が温度センサにより検出されたときに、電動式給水弁による給水停止および電動式給湯弁による給湯停止を行わせた後に、電磁弁に通電する制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この水栓装置においては、電磁弁は、通電時に開き、吐水路を開放することが好ましい。
【0009】
この水栓装置においては、制御手段は、電磁弁への通電および非通電を繰り返して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水栓装置によれば、水または湯水の混合水の流路の凍結を簡便に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の水栓装置の第1実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】図1に示した水栓装置に設けられた電動式給水弁および電動式給湯弁の一形態を示した要部斜視図である。
【図3】本発明の水栓装置の第2実施形態を概略的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の水栓装置の第1実施形態を概略的に示した構成図である。
【0013】
水栓装置1は、水を供給する給水路2と、湯を供給する給湯路3と、給水路2および給湯路3に連通する吐水路4とを備えている。給水路2と給湯路3は、それぞれの下流端において接続し、吐水路4の上流端に接続されている。吐水路4は、給水路2および給湯路3の下流側に位置している。このため、吐水路4には、給水路2から供給される水、給湯路3から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する。吐水路4には、給湯路3から湯が供給されないときに水のみが流通し、給水路2から水が供給されないときに湯のみが流通する。給水路2および給湯路3のそれぞれから水および湯が供給されるときは、湯水が混合された混合水が吐水路4を流通する。給水路2、給湯路3および吐水路4は、いずれも配管により形成されており、たとえば樹脂などから形成することのできるケース5の内部に収納されている。
【0014】
また、水栓装置1では、給水路2に、給水量の調節を行う電動式給水弁6が設けられ、給湯路3に、給湯量の調節を行う電動式給湯弁7が設けられている。吐水路4には、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁8が設けられている。これらの電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8もケース5の内部に収納されている。
【0015】
図2は、図1に示した水栓装置に設けられた電動式給水弁および電動式給湯弁の一形態を示した要部斜視図である。
【0016】
電動式給水弁6および電動式給湯弁7は、給水路2または給湯路3に接続される接続口9を有する外筒10と、外筒10の内部に回動自在に設けられた内筒11とを備えている。外筒10および内筒11は、ともに有底円筒状の部材であり、各々の側面部には開口12、13が形成されている。内筒11の底部には、外筒10の底部から外方に突出する回転軸14が設けられており、回転軸14は、モータの回転軸に減速機構などを介して接続される。回転軸14の突出を可能とするために、外筒10の底部には、回転軸14を通すことのできる貫通孔が形成されている。回転軸14は、その貫通孔を通じて外筒10の底部から外方に突出している。
【0017】
モータに電力が供給されると、モータの回転力が回転軸14に伝達され、回転軸14が回動して内筒11が、外筒10の内部を回動する。内筒11の回動にともない、内筒11の側面部に形成された開口13が外筒10の側面部に形成された開口12と重なる面積が変化する。開口12、13の重なり合う面積が大きいときには、接続口9を通じて外筒10、内筒11の順に流入し、開口13から流出する水または湯の流量が多くなる。逆に開口12、13の重なり合う面積が小さいときには、開口13から流出する水または湯の流量が少なくなる。また、開口12、13が互いに重なり合わないときには、電動式給水弁6および電動式給湯弁7は閉じ、開口13からの水または湯の流出が停止する。このようにして、電動式給水弁6および電動式給湯弁7は、給水量または給湯量の調節を行う。
【0018】
なお、内筒11の開口13の下流側は、給水路2または給湯路3に接続され、この接続部は、外筒10の接続口9よりも下流側に位置している。また、内筒11の開口13の大きさは、必ずしも外筒10の開口12よりも小さくする必要はなく、開口12と同じ大きさとすることができる。また、開口13は、大きさの異なるものを内筒11の側面部に間隔をあけて形成することもできる。この場合には、外筒10の開口12に一致させる開口13を変えるように内筒11が回動して給水量および給湯量の調節を行うことができる。
【0019】
一方、図1に示した水栓装置1では、電磁弁8は、水、湯または混合水の量の調節を行うものではなく、通電および非通電により開閉し、水、湯または混合水の供給の開始および停止のみを行う。通電時に電磁弁8が開き、吐水路4を開放するように設定すると、水、湯または混合水の供給停止は非通電により実現されるため、消費電力の低減を図ることができる。
【0020】
また、水栓装置1では、ケース5の内部に、ケース5内の温度を測定する温度センサ15が設けられている。温度センサ15には、たとえばサーミスタなどを採用することができる。
【0021】
また、水栓装置1では、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作を制御する制御手段16が設けられている。制御手段16は、電動式給水弁6、電動式給湯弁7、電磁弁8および温度センサ15と電気的に接続されている。
【0022】
制御手段16では、温度設定が可能とされている。温度は、給水路2および吐水路4内で水の凍結が起こりやすい0℃から10℃の範囲内で設定することができ、たとえば、操作パネルなどを介したユーザの直接入力などが可能である。制御手段16での温度設定はあらかじめ行うこともでき、この場合、決まった温度に固定しておくことができる。制御手段16には、温度センサ15で検出するケース5内の温度に関する電気信号が入力される。入力される温度に関する電気信号に対し、制御手段16は、設定された温度と比較し、温度センサ15で検出したケース5内の温度が設定温度以下であるとき、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作を制御する。すなわち、制御手段16は、設定温度以下の温度が温度センサ15により検出されたときには、電動式給水弁6による給水停止および電動式給湯弁7による給湯停止を行わせた後に、電磁弁8に通電する。
【0023】
電磁弁8は、通電により発熱する。この発熱を利用してケース5内の温度を上昇させ、給水路2および吐水路4内の水の凍結を抑制する。制御手段16による電磁弁8への通電は、断続的に行うこともでき、通電および非通電を繰り返して行うようにすることができる。通電および非通電の繰り返しによって、制御手段16に設定された温度付近に近づけることができ、水の凍結を抑制するための電磁弁8への通電時間が短縮し、消費電力の低減が図られる。また、設定温度を0〜10℃の範囲とすることは、水の凍結の抑制に必要とされる電磁弁8の発熱量を低く抑えることができ、通電時間の短縮が推進され、消費電力の低減に有効ともなる。また、電磁弁8の通電時には、電動式給水弁6による給水停止および電動式給湯弁7による給湯停止が行われているため、電磁弁8に通電し、通電により電磁弁8が開いて吐水路4が開放されても、水栓装置1からの水、湯または混合水の流出を防ぐことができる。
【0024】
このように、水栓装置1は、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の構成および構造に改変を加えることなく、給水路2および吐水路4内での水の凍結を抑制することができ、水の凍結の抑制が簡便に実現される。
【0025】
ケース5内の温度を5℃に保持するために必要とされる消費電力を以下にシミュレーションする。
【0026】
ケース5はABS樹脂製とし、厚さ2mm(0.002m)、内部の大きさを10cm(0.1m)×10cm(0.1m)×10cm(0.1m)とする。ABS樹脂は、比熱が1500J/kg・℃、密度が1.05g/cm、熱伝導率が0.28W/m・Kである。温度センサ15(サーミスタ)の設定温度を5℃とし、外気温度は−10℃とする。
【0027】
ケース5内を5℃に保持するために必要とされる熱量Qは、次式(1)で示される
Q(kcal/h)=K・A・ΔT (1)
ここで、Aは、ケース5の伝熱面積(総表面積)、ΔTは、設定温度と外気温度の温度差である。
【0028】
また、K=1/Rであり、熱抵抗Rは、次式(2)で示される。
R=1/α1+1/α2+t/λ (2)
ここで、α1は、ケース5の内部熱伝達率、α2は、ケース5の外部熱伝達率、tは、ケース5の厚さ、λは、ケース5の熱伝導率である。
【0029】
自然対流であるとして、α1=α2=11.6(W/m・℃)とすると、
R=1/11.6+1/11.6+0.002/0.28=583.2/3248
となり、
K=3248/583.2≒5.6(W/m2・℃)
となる。
【0030】
したがって、Q=5.6×(0.1×0.1×6)×{5−(−10)}≒5(W)
このように、5W程度でケース5内の温度を保持することが可能であり、電磁弁8の放熱ロスを30%と見積もれば、15W程度の電磁弁8を使用することができ、実用的であることが分かる。
【0031】
なお、制御手段16は、上記のとおりの電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作制御を行うように、あらかじめプログラミングされたマイクロコンピュータなどを備えることができる。
【0032】
図3は、本発明の水栓装置の第2実施形態を概略的に示した構成図である。
【0033】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分には図3図中に同一の符号を付し、以下においてその説明を省略する。
【0034】
水栓装置17では、電磁弁8が、吐水路4に設けられているのではなく、給水路2および給湯路3のそれぞれに設けられ、電磁弁8は、電動式給水弁6および電動式給湯弁7の上流側に配置されている。いずれの電磁弁8も制御手段16に電気的に接続されている。電磁弁8を給水路2および給湯路3のそれぞれに設ける場合には、電磁弁8は、電動式給水弁6および電動式給湯弁7の下流側に配置することもできる。
【0035】
一方、水栓装置17においても制御手段16は、温度センサ15が検出するケース5内の温度を設定された温度と比較し、温度センサ15で検出したケース5内の温度が、設定温度以下であるとき、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作を制御する。すなわち、制御手段16は、設定温度以下の温度が温度センサ15により検出されたときには、電動式給水弁6による給水停止および電動式給湯弁7による給湯停止を行わせた後に、電磁弁8に通電する。
【0036】
したがって、水栓装置17は、図1に示した水栓装置1と同様に、制御手段16の上記のとおりの電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作制御によって、給水路2および吐水路4内での水の凍結を簡便に抑制することができる。
【0037】
本発明は、以上の実施形態によって限定されるものではない。制御手段の構成および構造については様々なものが採用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1、17 水栓装置
2 給水路
3 給湯路
4 吐水路
5 ケース
6 電動式給水弁
7 電動式給湯弁
8 電磁弁
15 温度センサ
16 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給する給水路と、湯を供給する給湯路と、給水路および給湯路に連通し、給水路から供給される水、給湯路から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する吐水路とを備えた水栓装置であって、
前記給水路には、給水量の調節を行う電動式給水弁が設けられ、前記給湯路には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁が、前記吐水路に設けられるか、または前記給水路および前記給湯路のそれぞれに設けられ、これらの電動式給水弁、電動式給湯弁および電磁弁がケースの内部に収納され、
前記ケースの内部には、ケース内の温度を測定する温度センサが設けられ、
設定温度以下の温度が前記温度センサにより検出されたときに、前記電動式給水弁による給水停止および前記電動式給湯弁による給湯停止を行わせた後に、電磁弁に通電する制御手段が設けられている
ことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
電磁弁は、通電時に開き、吐水路を開放することを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
制御手段は、電磁弁への通電および非通電を繰り返して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2157(P2013−2157A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134992(P2011−134992)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】