説明

水気を有する床を清掃するための清掃用具

【課題】使用者の腰に負担をかけずに効率的に浴室等の床を清掃することができるようにする。
【解決手段】浴室等の水気を有する部屋の床を清掃するための清掃用具であって、ほぼ平板状をなし使用者の足にほぼ対応する底板部10と、鼻緒90とを有し、その底板部10が使用者の足の下側に位置した状態で使用者の足に装着されて使用されるものである。底板部10は、おもて側の層として、非透水性及び弾性的な可撓性を有する材質からなるおもて層12を有し、床の側の層として、含水性を有するとともに弾性的に変形可能な材質からなる含水層12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等の水気を有する床を清掃するための清掃用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室等の水気を有する床(正確には、浴室等、床に水気がある部屋の当該床)を清掃する際には、一般的に、次のようにされている。
清掃しようとする人は、洗浄液を含んだスポンジ等を手で把持し、屈んだ姿勢となり、そのスポンジ等によって床を擦ることによって、床の清掃を行っている。
すなわち、手でスポンジ等を床に対して圧接させつつ、そのスポンジ等を床に沿って何度も往復移動させることによって、床の清掃を行っている。
【0003】
しかしながら、上述のように屈んだ姿勢で清掃作業を行うことは、その人の腰等に大きな負担をかけ、腰痛等の原因ともなり得る。また、床に水気があるために、上述のように屈んだ姿勢で清掃作業を行う際には、その人のスカート等の衣服が濡れるおそれがあり、それを防止するための対策も別途必要である。
さらには、上述のように洗浄液を含んだスポンジ等を手で把持して清掃作業を行うことによって、その人の手の皮膚が荒れる(手荒れが生じる)こともあり得る。
【0004】
なお、水気を有さない一般的な床を清掃するための清掃用具としては、特許文献1及び2に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−038010号公報
【特許文献2】特開2007−075572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用者の腰に負担をかけず効果的に浴室等の床を清掃することができる清掃用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、浴室等の水気を有する部屋の床を清掃するための清掃用具であって、ほぼ平板状をなし使用者の足にほぼ対応する底板部を有し、その底板部が当該使用者の足の下側に位置した状態で当該使用者の足に装着されて使用されるものであり、前記底板部のうちの少なくとも前記床の側の面を含む層が、含水性を有するとともに弾性的に変形可能な材質からなる含水層である、清掃用具である。
【0008】
この発明の清掃用具では、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具が使用者の足に装着され、含水層に洗浄液が含浸された状態で、使用者が足に所定の体重をかけ(その際、含水層が弾性的に圧縮される)、その足を床上において移動させることによって、その床の清掃が行われる。
こうして、使用者は、腰を屈めることなく床の清掃を行うことができ、腰痛等の発生も防止することができる。また、床に対して含水層を容易に圧接させることができ、効果的に清掃することができる。また、腰を屈める必要がないために、使用者のスカート等の被服が濡れるおそれもなく、使用者は靴下を脱ぐのみで足りることとなる。さらには、使用者の手荒れを防止することもできる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の清掃用具であって、前記底板部は、前記含水層よりもおもて側の層として、非透水性を有する材質からなる非透水層を有する、清掃用具である。
【0010】
この発明の清掃用具では、請求項1に係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具は、含水層よりもおもて側の面の層として非透水層を有しているため、含水層に含浸した洗浄液が直接的には使用者の足に接触せず、その洗浄液によって使用者の足の皮膚が荒れることを防止又は低減することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の清掃用具であって、前記非透水層は、さらに、弾性的な可撓性を有する材質からなるものである、清掃用具である。
【0012】
この発明の清掃用具では、請求項2に係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具では、全体としても弾性的な可撓性が得られることが可能となる。このため、その場合は、床に凹凸等がある場合においても、使用者の足とともにこの清掃用具が全体として変形することによって、その凹凸等に含水層が到達し、その凹凸等の部分も確実に清掃することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の清掃用具であって、前記底板部の先端部には、上方に向かって湾曲する爪先保護部が形成されている、清掃用具である。
【0014】
この発明の清掃用具では、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具では、底板部の先端部に爪先保護部が形成されているために、使用者が壁に向かって足を滑らせた場合でも、使用者の爪先が直接的に壁に衝突することが防止される。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の清掃用具であって、前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分には、使用の際に当該踵が露出し前記床に接触する踵露出用孔部が形成されている、清掃用具である。
【0016】
この発明の清掃用具では、請求項1〜請求項4に係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具では、踵露出用孔部を通して踵が露出して床に接触するために、その踵において床との間の滑り止めが図られ、使用者が足を滑らせることを防止することができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の清掃用具であって、前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分は欠落している、清掃用具である。
【0018】
この発明の清掃用具では、請求項1〜請求項4に係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具では、踵露出用孔部を通して踵が露出して床に接触するために、その踵において床との間の滑り止めが図られ、使用者が足を滑らせることを防止することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の清掃用具であって、前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分には、使用の際に前記床に吸着する吸着材が設けられている、清掃用具である。
【0020】
この発明の清掃用具では、請求項1〜請求項4に係る発明の清掃用具の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この清掃用具では、吸着材において床との間の滑り止めが図られ、使用者が足を滑らせることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の清掃用具を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の清掃用具の使用状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施例1の清掃用具のうちの一例に特有な使用状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施例2の清掃用具を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例2の変形例の清掃用具を示す側面図である。
【図6】本発明の実施例3の清掃用具を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は使用状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施例4の清掃用具を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は使用状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施例5の清掃用具を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1について、図1〜図3に基づいて説明する。
この清掃用具は、使用者の足に装着して使用される。このため、履物(サンダル)としてとらえて、清掃用履物(清掃用サンダル)と称することも可能である。
この清掃用具は、一般的には左右一対で一組とされるが(あえて一方のみでもよい)、図面上は便宜的にそのうちの一方のみを示す(以下同様である)。
図1及び図2に示すように、この清掃用具は、底板部10及び鼻緒90を有している。
【0023】
底板部10は、使用者の足の形状に対応した形状を有しており、足の大きさよりも若干大きな大きさを有している。
底板部10は、おもて層11及び含水層12によって形成されている。
【0024】
おもて層11は、おもて側(上側)の層であり、含水層12よりも薄く形成されている。おもて層11は、ゴム,合成樹脂等、非透水性を有し、弾性的な可撓性を有する材質にによって形成されている。このおもて層が、本発明の非透水層に該当する。
【0025】
含水層12は、おもて層11の下側において底板部10の大半を占める層である。含水層12は、スポンジ等、含水性(正確には、洗浄液等の液体を含む性質)を有するとともに、弾性的に変形(圧縮)可能な材質によって形成されている。
【0026】
鼻緒90は、ゴム,合成樹脂等によって形成されている。
鼻緒90の3つの各端部(先端部,左右一対の後端部)に対応して底板部10のおもて層11に取付孔(符号省略)が形成されており、鼻緒90の3つの各端部近傍は各取付孔に挿通されている。鼻緒90の3つの各端部には抜け止め部91が形成され、底板部10からの鼻緒90の抜け止めがされている。
【0027】
鼻緒90には、2点鎖線で示すように、踵保持材92が設けられていてもよい。踵保持材92は、特に、長さ調整機能を有しているものであることが望ましい。
【0028】
次に、この清掃用具の使用方法及び作用効果について説明する。
図2に示すように、使用者は、両足(又は片足)に清掃用具を装着するとともに、清掃用具の含水層12に洗浄液を含浸させる。
【0029】
そして、その足(次述の操作を行おうとする足)に所定の体重をかけて、清掃用具(含水層12)を浴室等の床Fに対して圧接する。その状態で、床F上において足を各種の方向に移動させることによって、含水層12によって床Fを擦る。こうして、その床Fの清掃が行われる。
【0030】
このようにして、使用者は、手で清掃を行っていた従来とは異なり、腰を屈めることなく床Fの清掃を行うことができ、腰痛等の発生を防止することができる。
また、その際、操作を行う足に体重をかけることによって含水層12を床Fに対して強く圧接させることができるため、床Fを効果的に清掃することができる。
また、使用者は、腰を屈める必要がないために、使用者のスカート等の被服が濡れるおそれもなく、靴下を脱ぐのみで足りることとなる。
さらには、使用者は、この清掃用具を使用することによって、洗浄液によって手が荒れることを防止することもできる。
【0031】
なお、鼻緒90に踵保持材92が設けられている場合には、使用中に、この清掃用具が足から外れることが防止され、便利である。
【0032】
また、この清掃用具は、非透水性を有するおもて層11を有しているため、含水層12に含浸した洗浄液が直接的には使用者の足に接触せず、その洗浄液によって使用者の足の皮膚が荒れることが防止又は低減される。
【0033】
また、含水層12とともにおもて層11も可撓性を有しているため、全体としても可撓性を有することとなり、次の作用効果も得られる。特に、可撓性が大きい場合は、その効果は顕著となる。
すなわち、図3に示すように、床Fの縁近傍であって壁との境界部分(入隅部)Cや、床Fに設けられた溝Dのような、平面状ではない部分においても、足の操作によって、おもて層11とともに含水層12が、その清掃の対象の形状に対応して弾性的に変形する(含水層12は圧縮される)。こうして、平面状ではない部分も、容易に適切に清掃することができる。
【0034】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について、実施例1との相違点を中心に、図4に基づいて説明する。実施例1と同一の要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。このことは以下同様である。
【0035】
この清掃用具には爪先保護部23が形成されている。すなわち、おもて層11の先端部が上方に湾曲しており、含水層12もそれに追従した形状を有している。
【0036】
以上のため、この清掃用具では、使用中に壁に向かって足を滑らせた場合においても、その爪先が直接的に壁に衝突することが防止され、安全に使用することができる。
特に、浴室等の水気を有する床においては、足を滑らせやすいが、爪先保護部23によって安全に清掃を行うことができる。
【0037】
上述の実施例2の変形例について、図5に基づいて説明する。
この清掃用具では、爪先保護部23にブラシ34が設けられている。このため、そのブラシ34によって、壁(床の近傍)の清掃も行うことができる。
【0038】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3について、実施例1との相違点を中心に、図6に基づいて説明する。
この清掃用具においては、底板部10のうちの使用者の踵に該当する部分には、おもて層11及び含水層12にわたって、踵露出用孔部45が形成されている。
【0039】
このため、使用者の足に装着した際には、使用者の足の踵は、踵露出用孔部45を通して露出する。そして、少なくとも、その足に所定以上の体重をかけることによって含水層12が薄くなった際には、その踵が床Fに対して接触(圧接)する(そのようになるように、踵露出用孔部45の大きさが設定されている)。
こうして、その踵において床Fとの間の滑り止めが図られ、使用者が足を滑らせることが防止される。なお、その際、予め、その踵に滑り止め用の処置(滑り止め用のシールの貼着等)が行われると、さらに効果的である。
【0040】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4について、実施例1及び3との相違点を中心に、図7に基づいて説明する。
この清掃用具では、底板部10(おもて層11及び含水層12)のうち、使用者の足の踵に該当する部分が存在しない(欠落している)。すなわち、使用者の踵に対応する部分には、踵露出用切欠部55が形成されているといえる。
【0041】
このため、使用者の足に装着した際には、使用者の足の踵が、踵露出用切欠部55を通して露出し、その踵が床Fに対して接触(圧接)する。
こうして、その踵において床Fとの間の滑り止めが図られ、使用者が足を滑らせることが防止される。なお、その際、予め、その踵に滑り止め用の処置(滑り止め用のシールの貼着等)が行われると、さらに効果的である。
【0042】
[実施例5]
次に、本発明の実施例5について、実施例1との相違点を中心に、図8に基づいて説明する。
この清掃用具においては、使用者の踵に該当する部分において、含水層12には孔部65が形成され、その部分に複数の円筒状の吸盤66(吸着材)が設けられている。各吸盤66はおもて層11に対して固定されている。
【0043】
このため、この清掃用具は、一方の足(図8に図示)においては踵に体重をかけて吸盤66を床Fに吸着させ当該一方の足を固定させ、他方の足(図8に図示しない)においては踵を浮かせて吸盤66が床Fに吸着しないようにして、当該他方の足で床Fを擦るようにして使用される。
こうして、この清掃用具では、吸盤66において床Fとの間の滑り止めが図られ、その足を滑らせることが防止される。
【0044】
なお、上記のものはあくまで本発明の数例の実施例にすぎず、当業者の知識に基づき種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
10 底板部
11 おもて層(非透水層)
12 含水層
23 爪先保護部
45 踵露出用孔部
55 踵露出用切欠部
66 吸盤(吸着材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室等の水気を有する部屋の床を清掃するための清掃用具であって、
ほぼ平板状をなし使用者の足にほぼ対応する底板部を有し、その底板部が当該使用者の足の下側に位置した状態で当該使用者の足に装着されて使用されるものであり、
前記底板部のうちの少なくとも前記床の側の面を含む層が、含水性を有するとともに弾性的に変形可能な材質からなる含水層である、
清掃用具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃用具であって、
前記底板部は、前記含水層よりもおもて側の層として、非透水性を有する材質からなる非透水層を有する、
清掃用具。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃用具であって、
前記非透水層は、さらに、弾性的な可撓性を有する材質からなるものである、
清掃用具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の清掃用具であって、
前記底板部の先端部には、上方に向かって湾曲する爪先保護部が形成されている、
清掃用具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の清掃用具であって、
前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分には、使用の際に当該踵が露出し前記床に接触する踵露出用孔部が形成されている、
清掃用具。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の清掃用具であって、
前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分は欠落している、
清掃用具。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の清掃用具であって、
前記底板部のうち前記使用者の踵に該当する部分には、使用の際に前記床に吸着する吸着材が設けられている、
清掃用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−67324(P2011−67324A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220152(P2009−220152)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(502261668)
【出願人】(309030171)
【Fターム(参考)】