説明

水洗便器のリム吐水口構造

【課題】安定したリム吐水を行うことが出来る水洗便器のリム吐水口構造を提供する。
【解決手段】本発明は、水洗便器本体(1)に形成されたリム部(12)及びこのリム部に洗浄水を供給するリムノズル(26、56、66)を有する水洗便器のリム吐水口構造であって、リムノズルから吐出される洗浄水を受け止めるように形成された空間部(S、Sa、Sb)と、この空間部の先端側に形成され洗浄水をリム部に吐出するためのリム吐水口(22、52、62)と、空間部内でリムノズルの吐水口に対向する位置に設けられリムノズルから吐水される洗浄水が衝突する遮蔽部(48、58、68)と、を有し、洗浄水は遮蔽部に衝突した後にリム吐水口から吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器のリム吐水口構造に係り、特に、水洗便器本体に形成されたリム部及びこのリム部に洗浄水を供給するリムノズルを有する水洗便器のリム吐水口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リム吐水を行う場合、清掃性の向上や外観デザインを損なわないようにボウル部側には陶器のリム吐水口しか見えないようにし、そのためその吐水口の手前に空間部を設け、その空間部に吐水ノズル先端を位置させた吐水構造が知られている。ところが、ノズルから吐出された洗浄水が空間内の空気を巻き込みながら陶器の吐水口から吐出されるので、吐水が不安定になったり、水はねや異音の発生を引き起こす場合があった。
【0003】
ここで、特許文献1には、水洗便器本体のリム部に洗浄水を流して便器を洗浄すると共に汚物を流すようにした水洗便器が開示されている。この特許文献1に開示された水洗便器によれば、図11に示すように、洗浄水を吐出する洗浄水ノズル100の出口側に空間Scを設け、この空間Sc内に洗浄水を一時的に滞留させ、その空間Scの出口である陶器吐水口102に水圧を加えることにより、吐水口102から吐出される洗浄水の整流化等を行うようにしている。この特許文献1に記載の水洗便器では、リム吐水用の洗浄水ノズルの手前に空気取入部を設けることにより、エジェクタ効果により空気を吸気して、気泡を含んだ洗浄水をリム吐水の洗浄水として流して、水跳ねや騒音が少なくなるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−156308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の水洗便器では、リム吐水用の洗浄水ノズルの手前に空気取入部を設けることにより部品点数が増えてコストが増大するという問題があった。さらに、そのような空気取入部の固定収納スペースの確保が出来ないレイアウトには適用できないという不具合があった。そこで、本発明者らは、空気取入部を設けないリム吐水を実現すべく研究を重ねた。
【0006】
ところが、空気を混入させないで洗浄水をノズルから一気に吐出させると、吐出される洗浄水は、陶器吐水口付近の内壁に当たりながら一気に吐水口を塞ぐことになる。その際、吐出された洗浄水の一部は、一気に陶器吐水口から直接吐出されることになり、また、空間内には、大きな気泡(空気)を閉じこめてしまう。陶器吐水口から一気に吐出される洗浄水は、空気を巻き込みながら吐出される。また、大きな気泡と洗浄水との間の界面は、表面張力が相対的に小さいため安定せず、その結果、流れが不安定となり、空気を巻き込みながら陶器吐水口から吐出される。
【0007】
そして、ノズルから吐出される洗浄水の流速が比較的大きな場合、比較的大きな気泡を巻き込みながら洗浄水が陶器吐水口から吐出されるので、特にリム吐水による洗浄の初期段階において、例えば「ボンッ」という音や「ポンポンポン」というような空気の炸裂音或いは混じり音が生じたり、大流量では水(しぶき)が飛んでしまうという問題があった。
【0008】
なお、空間部を設けない場合には、樹脂或いは金属製のリムノズルを陶器導水路の出口に近接して或いは直接設ける必要があるが、この場合は、ノズルによる吐水方向及び旋回方向の所定の精度を得るために、組立時の高い組立精度が求められる。また、排泄物や汚水の付着や、陶器導水路内の衛生も保てない場合があるので現実的ではない。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、安定したリム吐水を行うことが出来る水洗便器のリム吐水口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、水洗便器本体に形成されたリム部及びこのリム部に洗浄水を供給するリムノズルを有する水洗便器のリム吐水口構造であって、リムノズルから吐出される洗浄水を受け止めるように形成された空間部と、この空間部の先端側に形成され洗浄水をリム部に吐出するためのリム吐水口と、空間部内でリムノズルの吐水口に対向する位置に設けられリムノズルから吐出される洗浄水が衝突する遮蔽部と、を有し、洗浄水は遮蔽部に衝突した後にリム吐水口から吐出されることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、リムノズルから吐出される洗浄水を受け止めるように形成された空間部内でリムノズルの吐水口に対向する位置に設けられ、リムノズルから吐出される洗浄水が衝突する遮蔽部を有し、洗浄水は遮蔽部に衝突した後にリム吐水口から吐出される。このような構成では、遮蔽部に衝突した洗浄水はその流速が小さくなる。従って、洗浄水が直接吐水口へ向け早い流速で突入することを防止し、洗浄水を空間部に一時的に滞留させることが出来ると共に空間部の空気をゆっくりと押し出すようにして、空気が多く残留しないようにしながら、洗浄水の吐出を安定させることが出来る。また、洗浄水の流速が小さいので、洗浄水が空気を大きく巻き込みながら吐出されることを防止することが出来る。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、遮蔽部は、リムノズルの先端部に対向する位置でリムノズルに取り付けられている。
このように構成された本発明においては、遮蔽部のリムノズルの先端部からの距離を適正に設定し易くなる。また、ノズルに併設するので、陶器からなる便器側の構造を複雑にしなくて済む。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、遮蔽部は、リムノズルに取り付けられるキャップ部に形成され、そのキャップ部の周囲に、そのキャップ部の遮蔽部に衝突した洗浄水が流出する開口部が形成されている。
このように構成された本発明においては、キャップ部に遮蔽部を形成し、遮蔽部に衝突した洗浄水が流出する開口部がキャップ部の周囲に形成されている。このような構成により、遮蔽部に洗浄水が衝突すると共にキャップ部の周囲に形成された開口部から側方に洗浄水が流れるので、簡易な構成で洗浄水の流速を下げることが出来、さらに、空間部の空気を押し出し易くなる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、キャップ部は、基端部と、遮蔽部を構成する終端部と、を有し、開口部は、基端部に隣接してキャップ部のほぼ全周にわたって設けられ、その開口部と終端部との間には、終端部に衝突した洗浄水の流速を下げるための所定長さの導水路が形成されている。
このように構成された本発明においては、遮蔽部として形成された終端部と、導水路とキャップの基端部との間に形成された開口部とを有し、さらに、終端部に衝突した洗浄水の流速を下げるための所定長さの導水路を有するので、より確実に洗浄水の流速を下げることが出来る。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、開口部には、整流部材が取り付けられている。
このように構成された本発明においては、洗浄水をより確実に終端部に衝突させることが出来る。即ち、整流部材を設けない場合には、洗浄水が終端部に届く前に開口部から流出して空気を巻き込んで陶器吐水口から吐出させてしまう恐れがあるが、開口部に整流部材を取り付けることにより、洗浄水の整流性を確保して、洗浄水をより確実に終端部に衝突させることが出来る。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、整流部材は、開口部のほぼ全周にわたり取り付けられている網である。
このように構成された本発明においては、整流部材が網であるので、終端部に衝突してから逆流してくる流速の小さい洗浄水の開口部からの洗浄水の流出も可能である。
【0016】
また、本発明において、好ましくは、空間部内のリムノズルの吐水口に対向した位置に、上方或いは下方から突出して遮蔽部となる遮蔽部材が一体成型され或いは取り付けられている。
このように構成された本発明においては、簡易な構成で遮蔽部を形成することが出来る。
【0017】
また、本発明において、好ましくは、さらに、空間部の上方に設けられ空間部内に滞留した空気を排出する空気ポートを有し、リム吐水口の断面積は空間部の断面積よりも小さく、空間部に遮蔽部が形成され、空間部内に吐出された洗浄水が空間部に溜まるにつれて空間部に残留した空気が空気ポートから吐出されるようになっている。
このように構成された本発明においては、リムノズルから吐出された洗浄水がリム吐水口で圧損を受けるが、この場合でも、さらにリムノズルから洗浄水が吐出されるため、空間部内の空気を、洗浄水と置換されるように、空気ポートから排出させることが出来る。
【0018】
また、本発明において、好ましくは、空間部を形成する壁部の一部が遮蔽部を構成している。
このように構成された本発明においては、簡易な構成で遮蔽部を形成することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安定したリム吐水を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、図1により、本発明の実施形態による水洗便器のリム吐水口構造が適用された水洗便器を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による水洗便器の平面図である。なお、第2実施形態及び第3実施形態も、この図1と同様の水洗便器に適用したものである。
図1に示すように、水洗便器1は、バルブユニット2、このバルブユニット2からリム側へ給水するリム側給水路4、バルブユニット2からタンク6側へ給水するタンク側給水路8を有する。また、水洗便器1は、その本体にボウル部10及びリム部12が形成されている。ボウル部10には、ゼット口14が形成されており、タンク6から電動ポンプ(図示せず)により給水される。
【0021】
次に、図2及び図3により、本発明の第1実施形態によるリムノズル及び空間部の構造を説明する。図2は、図1のIIの部分を拡大して示すリムノズル及び空間部を上方から見た断面図であり、図3は、図1のIII-III線に沿って見たリムノズル及び空間部の側方から見た断面図である。
図2及び図3に示すように、リム吐水部20は、陶器吐水口22、空間部(陶器導水路)S、リムノズル取付口24及びこのリムノズル取付口24に取り付けられたリムノズル26を有する。このリムノズル26には、リム側給水路4が接続されており、洗浄時には、洗浄水が、リム側給水路4、リムノズル26、空間部Sを順に通って、陶器吐水口22から吐出されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、空間部Sは、平面視で、先端の陶器吐水口22に向かうにつれて徐々にその幅が小さくなるように形成されている。また、図3に示すように、側面視では、空間部Sは、一定の高さで形成された部分S1と、その先端側で徐々にその高さが小さくなるように形成された部分S2と、陶器吐水口22に向けて管状に延びる部分S3が形成されている。
【0023】
次に、図3により、本発明の第1実施形態によるリムノズルの構造を説明する。
図3に示すように、リムノズル26は、ノズル本体30と、このノズル本体30をリムノズル取付口24に取り付けるためのL字型パッキン32、スペーサ34及び鍔付きナット36を有している。さらに、ノズル本体30の先端側には、ノズルキャップ40が取り付けられている。
【0024】
さらに、図3により、本発明の第1実施形態によるリムノズルのノズルキャップ40の構造を説明する。
先ず、図3に示すように、ノズル本体30には、洗浄水が通る導水路30aが形成され、ノズルキャップ40には、ノズル本体30の先端側に取り付けられ導水路30aに対して開口している基端部42が形成されている。また、ノズルキャップ40には、この基端部42に隣接して洗浄水吐出開口部44が形成されている。洗浄水吐出開口部44は、♯20以下のメッシュ(網)で形成されノズルキャップ40のほぼ全周にわたって延びると共に所定の軸線方向長さ(例えば、十数mm)を有する。さらに、この洗浄水吐出開口部44に隣接して、キャップ導水路46が形成され、このキャップ導水路46の先端側には、閉口して洗浄水が衝突するようになっている終端部(遮蔽部)48が形成されている。キャップ導水路46は、12mm〜13mmの軸線方向長さLを有している。
【0025】
次に、図4により本発明の第1実施形態の作用効果を説明する。図4は、図3と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
第1実施形態では、先ず、洗浄水W1が、導水路30aを通り、その水圧で、洗浄水吐出開口部44を通り過ぎ、キャップ導水路46まで届く。このキャップ導水路46に届いた洗浄水W1は、終端部48に衝突する。この衝突により、洗浄水W1の流速は一時的に0(ゼロ)となり、その後、洗浄水W2のように、キャップ導水路46を洗浄水W1の流れとは逆の方向に且つ洗浄水W1の流速より小さい流速で流れ、そして、洗浄水吐出開口部44を経て空間部Sに吐出される。
【0026】
このように本発明の第1実施形態によれば、キャップ導水路46に届いた洗浄水W1は、終端部48に衝突することで、その流速が小さくなる。このように流速が小さくなることで、主に以下の3つの効果が得られる。
先ず、第1に、洗浄水の流速が小さくなり且つ洗浄水吐出開口部44から側方に向けて洗浄水が流れることで、陶器吐水方向へ直接向かうことなく、洗浄水を空間部Sに一時的に滞留させることが出来る。そして、空間部S、特に、空間部S3はもちろん、空間部S2、S1の空気をゆっくりと押し出して、空間部Sに空気が多く滞留することを防止することが出来る。その結果、陶器吐水口22から空気を押し出した後に陶器吐水口22を洗浄水で塞ぐようにして洗浄水が吐出されるので、洗浄水の吐出を安定させることが出来る。
なお、洗浄水の流速を小さくするために、キャップ導水路46の軸線方向長さLが12mm〜13mmであるのが好ましい。
【0027】
次に、第2に、特に空間部S1には、空気が残留し易いが、ノズルから吐出される洗浄水の流速が小さいので、その空気を閉じこめたままにすることが出来る。即ち、洗浄水の流速が小さいので、洗浄水が空気を多く巻き込みながら陶器吐水口22から吐出されることを防止することが出来る。その結果、特にリム吐水による洗浄の初期段階において、例えば「ボンッ」という音や「ポンポンポン」というような空気の炸裂音或いは混じり音が生じたり、大流量では水(しぶき)が飛んでしまうということを防止することが出来る。特に、空間部S1、S2では洗浄水の流速が小さく効果的である。一方、空間部S3では、空間部S1、S2より断面積が小さいので流速が大きくなり、陶器吐水口22からリム部全体に洗浄水がいきわたるような有効なリム吐水をさせることが出来る。
【0028】
次に、第3に、上述した第1及び第2の作用が得られるので、従来のようにノズル本体30の導水路30a及び洗浄水吐出開口部44の開口面積を小さくして洗浄水の流速を早くしてイジェクター効果を高める必要がなく、開口面積を大きくとることが出来、その結果、リムノズルでの洗浄水の圧損を少なくすることが出来る。
【0029】
次に、終端部(遮蔽部)48は、リムノズル本体30の先端部の開口に対向する位置でリムノズル本体48に取り付けられ、ノズルキャップ40に形成されている。従って、終端部48のノズル本体30の先端部からの距離を適正に設定し易くなる。また、ノズルに併設するので、陶器からなる便器側の構造を複雑にしなくて済む。
【0030】
次に、終端部48は、ノズルキャップ40に形成され、そのノズルキャップ40の周囲に、そのノズルキャップ40の終端部48に衝突した洗浄水が流出する洗浄水吐出開口部44が形成されている。このように、ノズルキャップ40に終端部48を形成し、終端部48に衝突した洗浄水が流出する洗浄水吐出開口部44がノズルキャッ40の周囲に形成されている。従って、終端部48に洗浄水が衝突すると共にノズルキャップ40の周囲に形成された洗浄水吐出開口部44から側方に洗浄水が流れるので、簡易な構成で洗浄水の流速を下げることが出来、さらに、空間部Sの空気を押し出し易くなる。
【0031】
次に、ノズルキャップ40は、基端部42と、洗浄水を遮蔽する終端部48と、を有し、洗浄水吐出開口部44は、基端部42に隣接してノズルキャップ40のほぼ全周にわたって設けられ、その洗浄水吐出開口部44と終端部48との間には、終端部48に衝突した洗浄水の流速を下げるための所定長さの導水路が形成されている。従って、洗浄水を遮蔽する終端部48と、キャップ導水路46とノズルキャップ40の基端部42との間に形成された洗浄水吐出開口部44とを有し、さらに、終端部48に衝突した洗浄水の流速を下げるための所定長さのキャップ導水路46を有するので、より確実に洗浄水の流速を下げることが出来る。
【0032】
次に、洗浄水吐出開口部44には、そのほぼ全周にわたり網(メッシュ)が取り付けられているので、洗浄水をより確実に終端部48に衝突させることが出来る。即ち、仮に網を設けない場合には、洗浄水が終端部48に届く前に洗浄水吐出開口部44から流出して空気を巻き込んで陶器吐水口22から吐出させてしまう恐れがあるが、洗浄水吐出開口部44に網を取り付けることにより、洗浄水の整流性を確保して、洗浄水をより確実に終端部48に衝突させることが出来、さらに、網であるので、終端部48に衝突してから逆流してくる流速の小さい洗浄水の洗浄水吐出開口部44からの洗浄水の流出も可能である。なお、洗浄水の整流性を確保して、洗浄水をより確実に終端部に衝突させることが出来るものであれば、樹脂や金属のシートに小径の穴を多数空けたもの、多孔質材料など網(メッシュ)以外でも良い。また、ノズルキャップの開口を小径の穴を多数空けたものとして、一体に形成しても良い。
【0033】
次に、図5及び図6により、本発明の第2実施形態によるリムノズル及び空間部の構造を説明する。図5は、本発明の第2実施形態によるリムノズル及び空間部を側方から見た断面図であり、図6は、本発明の第2実施形態によるリムノズル及び空間部の上方から見た断面図である。
図5及び図6に示すように、リム吐水部50は、陶器吐水口52、空間部(陶器導水路)Sa、リムノズル取付口54及びこのリムノズル取付口54に取り付けられたリムノズル56を有する。リムノズル56には、リム側給水路が接続されており、洗浄時には、洗浄水が、リム側給水路、リムノズル56、空間部Saを順に通って、陶器吐水口52から吐出されるようになっている。
【0034】
リムノズル56は、上述した第1実施形態のノズル本体30と同様の構成をしており、そのノズル本体30を空間部Saに向けて延ばしたものであり、第1実施形態と同様の導水路56a(第1実施形態では、30a)がそのまま空間部Saで開口している。
空間部Saには、このリムノズル56に対向するように遮蔽部材58が形成されている。この遮蔽部材58は、陶器で便器と一体に形成しても良いし、樹脂やプラスチック製で便器に取り付けるようにしても良い。遮蔽部材58は、上方から見ると図6に示すように、空間部Saをその幅方向にわたって閉じるように延び、側方から見ると図5に示すように、上方から下方に向けて突出して形成され、その下方部分に、洗浄水が通る隙間Sa1が形成されている。なお、図7に示すように、上方から見た場合に、遮蔽部材58の両側に隙間Sa2が形成されていても良い。また、遮蔽部材58は下方から上方に向けて突出するようにしても良い。この図7は、本発明の第2実施形態の変形例によるリムノズル及び空間部の上方から見た断面図である。
【0035】
次に、図8により本発明の第2実施形態の作用効果を説明する。図8は、図5と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
第2実施形態では、先ず、洗浄水Wa1が、リムノズル導水路56aを通り、その水圧で、勢いよく遮蔽部材58に衝突する。この衝突により、洗浄水Wa1の流速は一時的に0(ゼロ)となり、その後、洗浄水Wa2のように、洗浄水Wa1の流れとは逆の方向に且つ洗浄水Wa1の流速より小さい流速で流れ、そして、隙間Sa1(変形例ではSa1及びSa2)を経て陶器吐水口52に吐出される。
【0036】
このように本発明の第2実施形態によれば、リムノズル導水路56aを通った洗浄水Wa1は、遮蔽部材58に衝突することで、その流速が小さくなる。このように流速が小さくなることで、上述した第1実施形態と同様に主に以下の3つの効果が得られる。
先ず、第1に、洗浄水の流速が小さくなることで、洗浄水を空間部Saに一時的に滞留させることが出来る。そして、空間部Saの空気をゆっくりと押し出して、空間部Saに空気が多く滞留することを防止することが出来る。その結果、陶器吐水口52から空気を押し出した後に洗浄水が吐出されるので、洗浄水の吐出を安定させることが出来る。
【0037】
次に、第2に、特に空間部Saには、空気が残留し易いが、ノズルから吐出される洗浄水の流速が小さいので、その空気を閉じこめたままにすることが出来る。即ち、洗浄水の流速が小さいので、洗浄水が空気を巻き込みながら隙間Sa1から吐出されることを防止することが出来る。その結果、特にリム吐水による洗浄の初期段階において、空気の炸裂などが生じたり、大流量での水(しぶき)が飛んでしまうということを防止することが出来る。
【0038】
次に、第3に、上述した第1及び第2の作用が得られるので、リムノズル導水路56aの開口面積を小さくして洗浄水の流速を早くしてイジェクター効果を高める必要がなく、開口面積を大きくとることが出来、その結果、リムノズルでの洗浄水の圧損を少なくすることが出来る。
【0039】
次に、図9により、本発明の第3実施形態によるリムノズル及び空間部の構造を説明する。図9は、本発明の第3実施形態によるリムノズル及び空間部を側方から見た断面図である。
図9に示すように、リム吐水部60は、陶器吐水口62、空間部(陶器導水路)Sb、リムノズル取付口64及びこのリムノズル取付口64に取り付けられたリムノズル66を有する。リムノズル66には、リム側給水路が接続されており、洗浄時には、洗浄水が、リム側給水路、リムノズル66、空間部Sbを順に通って、陶器吐水口62から吐出されるようになっている。
【0040】
リムノズル66は、上述した第1実施形態のノズル本体30と同様の構成をしており、そのノズル本体30を空間部Sbに向けて延ばしたものであり、第1実施形態と同様の導水路66a(第1実施形態では、30a)がそのまま空間部Sbで開口している。
空間部Sbには、このリムノズル66に対向するようにリム遮蔽壁部68が形成されている。図9に示すように、リム遮蔽壁部68は、側方から見ると、上方から下方に向けて斜めに延び、その下方部分から、洗浄水が通り陶器吐水口62に至るリム導水管Sb1が形成されている。
【0041】
さらに、この第3実施形態では、空間部Sbの上方に空気ポート70が設けられている。この空気ポート70は、空間部Sb内の空気が孔部72を通り、空気入りのボール74の側方を通って、孔部76から、通路78へと空気が逃げるようにしたものである。そして、空間部Sbが満水になると、ボール74が上昇して孔部76を塞ぎ、洗浄水が通路78へ逃げることを防止するようになっている。
なお、第2実施形態で説明した遮蔽部材58をこの第3実施形態による空間部Sb内に設置しても良い。
【0042】
次に、図10により本発明の第3実施形態の作用効果を説明する。図10は、図9と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
第3実施形態では、先ず、洗浄水Wb1が、リムノズル導水路66aを通り、その水圧で、勢いよくリム遮蔽壁部68に衝突する。この衝突により、洗浄水Wb1の流速は一時的に0(ゼロ)となり、その後、洗浄水Wb2のように、洗浄水Wb1の流れとは逆の方向に且つ洗浄水Wb1の流速より小さい流速で流れ、そして、隙間Sb1を経て陶器吐水口62に吐出される。
【0043】
このように本発明の第3実施形態によれば、リムノズル導水路66aを通った洗浄水Wb1は、リム遮蔽壁部68に衝突することで、その流速が小さくなる。このように流速が小さくなることで、上述した第1実施形態と同様に主に以下の3つの効果が得られる。
先ず、第1に、洗浄水の流速が小さくなることで、洗浄水を空間部Sbに一時的に滞留させることが出来る。そして、空間部Sbの空気をゆっくりと押し出して、空間部Sbに空気が多く滞留することを防止することが出来る。その結果、陶器吐水口62から空気を押し出した後に洗浄水が吐出されるので、洗浄水の吐出を安定させることが出来る。
【0044】
次に、第2に、空間部Sbには、空気が残留し易いが、この空気を空気ポート70により外部に逃がすことが出来る。この空気ポート70の作用については後述する。そして、まだ空気が残っている間でも、リムノズル66から吐出される洗浄水の流速が小さいので、洗浄水が空気を巻き込みながらリム導水管Sb1へと吐出されることを防止することが出来る。その結果、特にリム吐水による洗浄の初期段階において、空気の炸裂などが生じたり、大流量での水(しぶき)が飛んでしまうということを防止することが出来る。
【0045】
次に、第3に、上述した第1及び第2の作用が得られるので、リムノズル導水路66aの開口面積を小さくして洗浄水の流速を早くしてイジェクター効果を高める必要がなく、開口面積を大きくとることが出来、その結果、リムノズルでの洗浄水の圧損を少なくすることが出来る。
【0046】
さらに、空気ポート70の作用効果を説明する。
リムノズル66から吐出された洗浄水は、陶器吐水口62の吐水流路(リム導水管)Sb1で圧損を受けるが、この場合でも、さらにリムノズル66から洗浄水が吐出されるため、空間部Sb内の空気(符号Air)は、洗浄水と置換されるように、孔部72を通り、孔部76及び通路78から排出される。
【0047】
空間部Sb内の空気の置換が終わると、空気ポート70へ向かう流路途中に設けられているボール74がその浮力により空気ポート70の孔部76を塞ぎ、洗浄水が空気ポート70から排出されないようになっている。このため空間部Sb内は満水状態となり、安定した吐出が可能となる。なお、空気ポート70から洗浄水が若干流出される恐れがある場合には、その洗浄水をボウル内やタンク内に排出出来るようにボムホースなどを接続して排出流路を形成しておくのが良い。
【0048】
次に、第3実施形態では、空間部Sbの上方に設けられ空間部Sb内に滞留した空気を排出する空気ポート70を有し、陶器吐水口62の断面積は空間部Sbの断面積よりも小さく、空間部Sbにはノズル本体の開口部に対向して遮蔽部となる壁面部68が形成され、空間部Sb内に吐出された洗浄水が空間部Sbに溜まるにつれて空間部Sbに残留した空気が空気ポートから吐出されるようになっている。このような構成によれば、リムノズル66から吐出された洗浄水が隙間Sb1及び陶器吐水口62で圧損を受けるが、この場合でも、さらにリムノズル66から洗浄水が吐出されるため、空間部Sb内の空気を、洗浄水と置換されるように、空気ポート70から排出させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗便器の平面図である。
【図2】図1のIIの部分を拡大して示すリムノズル及び空間部を上方から見た断面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿って見たリムノズル及び空間部の側方から見た断面図である。
【図4】図3と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
【図5】本発明の第2実施形態によるリムノズル及び空間部を側方から見た断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるリムノズル及び空間部の上方から見た断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例によるリムノズル及び空間部の上方から見た断面図である。
【図8】図5と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
【図9】本発明の第3実施形態によるリムノズル及び空間部を側方から見た断面図である。
【図10】図9と同様に示すリムノズル及び空間部の断面図に、洗浄水の流れの様子を模式的に示したものである。
【図11】従来技術によるリム吐水口構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 水洗便器
12 リム部
20、50、60 リム吐水部
22、52、62 陶器吐水口(リム吐水口)
26、56、66 リムノズル
30 ノズル本体
30a 導水路
40 ノズルキャップ
42 基端部
44 洗浄水吐出開口部
46 キャップ導水路
48 終端部(遮蔽部)
58 遮蔽部材
68 リム遮蔽壁部
70 空気ポート
72、76 孔部
74 ボール
78 通路
S(S1、S2、S3)、Sa、Sb 空間部(陶器導水路)
Sa1、Sa2 洗浄水が通る隙間
Sb1 リム導水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器本体に形成されたリム部及びこのリム部に洗浄水を供給するリムノズルを有する水洗便器のリム吐水口構造であって、
上記リムノズルから吐出される洗浄水を受け止めるように形成された空間部と、
この空間部の先端側に形成され洗浄水を上記リム部に吐出するためのリム吐水口と、
上記空間部内で上記リムノズルの吐水口に対向する位置に設けられ上記リムノズルから吐出される洗浄水が衝突する遮蔽部と、を有し、
洗浄水は上記遮蔽部に衝突した後に上記リム吐水口から吐出されることを特徴とする水洗便器のリム吐水口構造。
【請求項2】
上記遮蔽部は、上記リムノズルの先端部に対向する位置で上記リムノズルに取り付けられている請求項1に記載の水洗便器のリム吐水口構造。
【請求項3】
上記遮蔽部は、上記リムノズルに取り付けられるキャップ部に形成され、そのキャップ部の周囲に、そのキャップ部の遮蔽部に衝突した洗浄水が流出する開口部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の水洗便器のリム吐水口構造。
【請求項4】
上記キャップ部は、基端部と、上記遮蔽部を構成する終端部と、を有し、上記開口部は、上記基端部に隣接して上記キャップ部のほぼ全周にわたって設けられ、その開口部と上記終端部との間には、遮蔽部に衝突した洗浄水の流速を下げるための所定長さの導水路が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水洗便器のリム吐水口構造。
【請求項5】
上記開口部には、整流部材が取り付けられている請求項4に記載のリム吐水口構造。
【請求項6】
上記整流部材は、開口部のほぼ全周にわたり取り付けられている網である請求項5に記載の水洗便器のリム吐水口構造。
【請求項7】
上記空間部内の上記リムノズルの吐水口に対向した位置に、上方或いは下方から突出して上記遮蔽部となる遮蔽部材が一体成型され或いは取り付けられている請求項1に記載のリム吐水口構造。
【請求項8】
さらに、上記空間部の上方に設けられ上記空間部内に滞留した空気を排出する空気ポートを有し、
上記リム吐水口の断面積は上記空間部の断面積よりも小さく、上記空間部に上記遮蔽部が形成され、
上記空間部内に吐出された洗浄水が上記空間部に溜まるにつれて上記空間部に残留した空気が上記空気ポートから吐出されるようになっている請求項1に記載のリム吐水口構造。
【請求項9】
上記空間部を形成する壁部の一部が上記遮蔽部を構成している請求項8に記載のリム吐水口構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−46835(P2009−46835A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212139(P2007−212139)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】