水洗大便器
【課題】臭気が飛散することを防止すると共にサイホン切れ音の低減を十分に行うことができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、貯水タンク6からボウル部4に洗浄水を導く導水路8と、サイホン作用を発生させるトラップ排水路14と、一端にトラップ排水路の入口14aの上縁よりも上方に位置し且つトラップ排水路に連通する導気孔40が形成され、他端に待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さH1,H2,H3だけ水没し且つ洗浄動作開始後に大気開放される空気吸込口が形成された導気通路30と、を有し、導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が導気孔からトラップ排水路へ排出され、さらに、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入される。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、貯水タンク6からボウル部4に洗浄水を導く導水路8と、サイホン作用を発生させるトラップ排水路14と、一端にトラップ排水路の入口14aの上縁よりも上方に位置し且つトラップ排水路に連通する導気孔40が形成され、他端に待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さH1,H2,H3だけ水没し且つ洗浄動作開始後に大気開放される空気吸込口が形成された導気通路30と、を有し、導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が導気孔からトラップ排水路へ排出され、さらに、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
サイホン作用により汚物を含む溜水を排出する水洗大便器が広く用いられている。このタイプの水洗大便器においては、ボウル部内の溜水が汚物と共にサイホン作用によりトラップ排水路から排出されるが、溜水面がトラップ排水路の入口の上縁まで低下してくるとサイホン切れ音(ゴボゴボ音)が発生し、耳障りとなっている。このサイホン切れ音を低減させるために、例えば、特許文献1には、サイホン作用終了直前にトラップ排水路内に空気を導入して、サイホン作用の引き力を低下させ、空気の吸い込み力を緩和して、サイホン切れ音を低減させることが提案されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1の水洗大便器は、貯水タンク内で常時大気開放の吸気管から、導気室を経由して、トラップ排水路に開口している導気孔よりサイホン作用終了直前に空気を放出するようにしたものである。この水洗大便器においては、初期状態では、ボウル部内の溜水面と導気室の溜水面は同じ水位であるが、サイホン作用開始によりそれぞれの溜水面の水位が低下してくる。このとき、導気室の空間がボウル部の空間より小さいので、導気室の溜水面の低下の方が早くなり、そのため、ボウル部内から空気を吸い込むよりも早く導気孔から空気をトラップ排水路へ空気を放出することができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006‐152664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、先ず、導気孔から導気室に汚水が入り込む可能性があるため、導気室の空気に臭気が溜まり、吸気管から臭気が放出される恐れがある。次に、導気室は、便器の形状や各便器毎に変動するので、サイホン作用終了直前よりも早く又は遅く導気孔から空気を放出してしまう恐れがある。このような変動を防止するために、特許文献1のものでは、吸気管に空気導入量を調整する空気導入調整弁を設け、この空気導入調整弁を絞って空気の導入量を減らして導気孔からの空気の放出タイミングを調整しているが、空気の導入量を減らした場合には、トラップ排水路に投入される空気量も少なくなるので、サイホン作用の低減が十分でなく、サイホン切れ音の低減を十分に行えないという新たな問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、臭気が飛散することを防止すると共にサイホン切れ音の低減を十分に行うことができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、貯水タンクから便器本体のボウル部に洗浄水を導くように形成された導水路と、ボウル部の排出口に接続されサイホン作用を発生させるトラップ排水路と、一端にトラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置し且つトラップ排水路に連通する導気孔が形成され、他端に待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放される空気吸込口が形成された導気通路と、を有し、導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が導気孔からトラップ排水路へ排出され、さらに、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入されるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、導気通路の他端に形成された空気吸込口が、待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放されるようになっているので、待機状態のとき及び洗浄開始後空気吸込口が大気開放されるまでの間は、便器本体のボウル部にある汚物による臭気が導気通路を経由して吸気管から放出されることがない。次に、導気通路の導気孔がトラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置しているので、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入され、これにより、トラップ排水路におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。その結果、ボウル部からトラップ排水路に空気が導入され、サイホン作用が終了するとき、既に、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【0008】
本発明は、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没長さが、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるように設定されている。
このように構成された本発明においては、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるので、サイホン作用を有効に利用することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるように設定されている。
このように構成された本発明においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン発生中)に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるので、大気開放時には、待機状態の水位を保っていた導気通路内の水位が待機状態の水位よりも上方にあるボウル部の水位に合わせようとするので、導気通路内に洗浄水が流入し、その分サイホン作用が弱められるので、サイホン作用が強い又は強すぎる水洗大便器に有効である。
【0010】
本発明において、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没高さが、サイホン作用発生後で終了前に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるように設定されている。
【0011】
このように構成された本発明においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン発生中)に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるので、大気開放時には、待機状態の水位を保っていた導気通路内の水位が待機状態の水位よりも下方にあるボウル部の水位に合わせようとするので、導気通路から洗浄水が排出され、これにより、導気通路からのトラップ排水路内への空気の導入を遅らせることができるので、汚物のトラップ排水路の通過がつまりぎみになりがちの水洗大便器には、サイホン作用を低減せずにサイホン作用を有効に利用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、臭気が飛散することを防止すると共にサイホン切れ音の低減を十分に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。図1は本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図2は図1のII‐II線に沿って見た水洗大便器の断面図であり、図3は図2のIII‐III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【0014】
本実施形態による水洗大便器1は、便器本体2を有し、この便器本体2は陶器製であり、便器本体1の前方上部にはボウル部4が形成され、後方上部には洗浄水を貯水する貯水タンク8が形成されている。また、ボウル部4の上縁にはリム5が形成され、このリム5は内側にオーバーハングした形状となっている。貯水タンク8とボウル部4の間には、貯水タンク8内の洗浄水をボウル部4に導くための導水路8が形成されている。この導水路8は、貯水タンク6の底面に形成された給水口10を経て洗浄水が供給されるようになっている。また、導水路8の下流側には、上記便器本体1のリム5の内周面に形成されたリム吐水口12が形成され、リム吐水口12から導水路8からの洗浄水をボウル部4に吐水して洗浄するようになっている。
【0015】
ボウル部4の底部にはボウル排出口4aが形成され、このボウル排出口4aの後方側には、サイホン作用を発生するためのトラップ排水路14が接続(連通)して設けられている。このトラップ排水路14は、入口14a、この入口14aから後方に上昇して延びる上昇路14b、下降する下降路14cから構成されている。この下降路14cが排水ソケット15を介して配水管(図示せず)に接続されている。また、トラップ排水路14は、上側頂部14dと下側頂部14eを備えている。
なお、図2に示すように、ボウル部4の溜水は、洗浄動作開始前の初期状態の水位L1となっている。
【0016】
次に、貯水タンク6には、操作レバー16、フロート(図示せず)を備えたボールタップ18、オーバーフロー管20、ボールタップ18から分岐してオーバーフロー管20に洗浄水を供給するリフィール管22、排水弁24が設けられている。使用者が操作レバー16を操作すると、排水弁24が開き、貯水タンク6内の洗浄水が、供給口10を経て導水路8に洗浄水が供給され、ボウル部4の洗浄が開始される。この際、ボールタップ18のフロートが降下することによりボールタップ18の給水弁(図示せず)が開いて、貯水タンク6内、リフィール管22、オーバーフロー管20を経由してボウル部4内への給水が行われるようになっている。
【0017】
次に、本実施形態による水洗大便器1の便器本体1は、導気通路30を備えている。この導気通路30は、貯水タンク6内に設けられた吸気管32と、この吸気管32と貯水タンク6の底部に形成された吸気孔34を介して連通する導気室36とにより構成されている。吸気管32の上方部は、U字形状となり、その先端が空気吸込口38となっている。この空気吸込口38は、洗浄待機状態では、所定の長さH1だけ、貯水タンク6内の洗浄水中に水没し、洗浄開始後における貯水タンク6の水位の低下に伴い大気に開放されるようになっている。
【0018】
導気通路30の導気室36は、便器本体2のトラップ排水路14の側面及び上面に沿って形成されている。また、導気室36がトラップ排水路14の側面から上面に変化する部分には空気連絡口36aが形成されている。この導気室36の下端部には、スリット形状の導気孔40が形成されている。この導気孔40は、上述したトラップ排水路14の入口14aの上縁よりもhだけ上方に位置し、さらに、トラップ排水路14の入口より少しだけ下流側の部位と連通している。
【0019】
次に、図4乃至図9により、上述した本実施形態による水洗大便器の作用(動作)を説明する。ここで、図4は洗浄モード1(初期状態)、図5は洗浄モード2(ボウル部水位上昇)、図6は洗浄モード3(空気吸込口大気開放)、図7は洗浄モード4(サイホン作用開始)、図8は洗浄モード5(サイホン作用終了直前)、図9は洗浄モード6(サイホン作用終了)をそれぞれ示す本実施形態による水洗大便器の断面図である。
【0020】
先ず、図4に示すように、洗浄動作開始前である洗浄モード1(初期状態)においては、ボウル部4の水位と導気室36(導気通路30)は同じ初期状態の水位L1であり平衡状態となっている。
【0021】
次に、図5に示すように、使用者が操作レバー16を操作して、洗浄動作が開始されると、貯水タンク6内の洗浄水が導水路8を経由してリム吐水口12からボウル部4へ吐水されるので、洗浄モード2(ボウル部水位上昇)となり、ボウル部4の水面が上昇する。このとき、導気室36(導気通路30)の水位は、吸気管32の空気吸込口38が水没しているため、空気吸込口38が大気に対して縁切りされているため、初期状態のままで変動しない。
【0022】
ここで、洗浄動作開始前の初期状態(図4参照)及びボウル部水位上昇状態(図5参照)において、吸気管32の空気吸込口38は、貯水タンク6内に水没しているため、便器本体2のボウル部4にある汚物による臭気が導気室36を経由して吸気管32から放出されることがない。
【0023】
次に、図6に示すように、貯水タンク6の水位が低下し、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されると、洗浄モード3(空気吸込口大気開放)となり、導気室36(導気通路30)の水位は、ボウル部4の水位まで上昇する。
【0024】
次に、図7に示すように、トラップ排水路14が満水となりサイホン作用が開始されると、洗浄モード4(サイホン作用開始)となり、サイホン作用により、ボウル部4の洗浄水と導気室36(導気通路30)の洗浄水がトラップ排水路14内に吸い込まれ、ボウル部4の水位と導気室36(導気通路30)の水位がほぼ同じ高さを保ちながら降下する。
【0025】
次に、図8に示す洗浄モード5(サイホン作用終了直前)となり、導気室36(導気通路30)の下端に形成された導気孔40がトラップ排水路14の入口14aの上縁よりもhだけ上方に位置しているので、空気吸込口38で吸入された空気が、導気孔40からトラップ排水路14の入口14aからの空気よりも先行して導入される。これにより、トラップ排水路14におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。
【0026】
次に、図9に示す洗浄モード6(サイホン作用終了)となり、ボウル部4の水位がさらに低下して、トラップ排水路14の入口14aの上縁以下となると、トラップ排水路14の入口14aから空気が導入され、サイホン作用が終了する。このとき、既に、導気孔40からトラップ排水路14内に空気が導入され、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【0027】
次に、図10により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。図10は本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
この第2実施形態による水洗大便器の基本構造は、図1乃至図3に示す第1実施形態による水洗大便器と同じであるが、導気通路30の吸気管32の水没長さH2が第1実施形態の水没長さH1よりも長くなっており、サイホン作用発生後に、空気吸込口38が大気開放されるようになっている。
【0028】
第2実施形態による水洗大便器は、サイホン作用発生前においては、導気通路30の吸気管32の空気吸込口38は水没して大気開放されておらず、そのため、この状態では、導気室36の水位は、初期状態の水位L1に維持されている。
【0029】
第2実施形態による水洗大便器においては、図10に示すように、吸気管32の水没長さH2が、サイホン作用発生後で終了前(サイホン作用中)で、ボウル部4の水位が初期状態の水位L1よりも上方にあるときに、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されるように設定されている。
【0030】
第2実施形態による水洗大便器においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン作用中)に、空気吸込口38が大気開放されると、初期状態の水位L1を保っていた導気室36の水位が初期状態の水位L1よりも上方にあるボウル部4の水位に合わせようとするので、導気室36内に洗浄水が引き込まれ、その分、サイホン作用による吸い込み力が弱まる。その結果、水洗大便器の吸気管32の水没長さをH2と長く設定した第1例は、サイホン作用が強い又は強すぎる水洗大便器に有効である。
【0031】
次に、図11により、本発明の第3実施形態による水洗大便器を説明する。図11は本発明の第3実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
この第3実施形態による水洗大便器の基本構造も、図1乃至図3に示す第1実施形態による水洗大便器と同じであり、さらに、第2実施形態と同様に、サイホン作用発生後に、空気吸込口38が大気開放されるようになっているが、導気通路30の吸気管32の水没長さH3が、第2実施形態の水没長さH2よりも長くなっている。
【0032】
この第3実施形態による水洗大便器においても、第2実施形態と同様に、サイホン作用発生前においては、導気通路30の吸気管32の空気吸込口38は水没して大気開放されておらず、そのため、この状態では、導気室36の水位は、初期状態の水位L1に維持されている。
【0033】
第3実施形態による水洗大便器においては、図11に示すように、吸気管32の水没長さH3が、サイホン作用発生後で、ボウル部4の水位が初期状態L1の水位よりも下方にあるときに、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されるように設定されている。
【0034】
第3実施形態による水洗大便器においては、サイホン作用発生後終了前(サイホン作用中)に空気吸込口38が大気開放されると、初期状態の水位L1を保っていた導気室36の水位が初期状態の水位L1よりも下方にあるボウル部4の水位に合わせようとして、導気室36内の洗浄水が排出され、導気室36内の水位が下降する。この導気室36の水位が待機状態の水位L1から下降する時間のために、第2例の水洗大便器においては、導気室36の導気孔40から空気がトラップ排水路14内に導入されるタイミングが遅くなる。
【0035】
一方、公共トイレのように大量の汚物が使用されることが想定される場合、汚物がつまりぎみにトラップ排水路を通過する頻度が高いため、トラップ排水路がボウル部の水を吸い込む前に導気室から空気が導入されサイホン作用が低減されるのは好ましくない。
第3実施形態による水洗大便器においては、導気室36の導気孔40から空気がトラップ排水路14内に導入されるタイミングが遅くなるので、この問題を解決することができる。
【0036】
上述した第2実施形態及び第3実施形態ともに、サイホン作用終了直前に、導気室36(導気通路30)の導気孔40からからトラップ排水路14の入口14aからの空気よりも先行して導入され、これにより、トラップ排水路14におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。そのため、トラップ排水路14の入口14aから空気が導入され、サイホン作用が終了するとき、既に、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【図2】図1のII‐II線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【図3】図2のIII‐III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄モード1(初期状態)を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による洗浄モード2(ボウル部水位上昇)を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による洗浄モード3(空気吸込口大気開放)を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による洗浄モード4(サイホン作用開始)を示す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による洗浄モード5(サイホン作用終了直前)を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による洗浄モード6(サイホン作用終了)を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 貯水タンク
8 導水路
10 給水口
12 リム吐水口
14 トラップ排水路
14a 入口
30 導気通路
32 吸気管
34 吸気口
36 導気室
38 空気吸込口
40 導気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
サイホン作用により汚物を含む溜水を排出する水洗大便器が広く用いられている。このタイプの水洗大便器においては、ボウル部内の溜水が汚物と共にサイホン作用によりトラップ排水路から排出されるが、溜水面がトラップ排水路の入口の上縁まで低下してくるとサイホン切れ音(ゴボゴボ音)が発生し、耳障りとなっている。このサイホン切れ音を低減させるために、例えば、特許文献1には、サイホン作用終了直前にトラップ排水路内に空気を導入して、サイホン作用の引き力を低下させ、空気の吸い込み力を緩和して、サイホン切れ音を低減させることが提案されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1の水洗大便器は、貯水タンク内で常時大気開放の吸気管から、導気室を経由して、トラップ排水路に開口している導気孔よりサイホン作用終了直前に空気を放出するようにしたものである。この水洗大便器においては、初期状態では、ボウル部内の溜水面と導気室の溜水面は同じ水位であるが、サイホン作用開始によりそれぞれの溜水面の水位が低下してくる。このとき、導気室の空間がボウル部の空間より小さいので、導気室の溜水面の低下の方が早くなり、そのため、ボウル部内から空気を吸い込むよりも早く導気孔から空気をトラップ排水路へ空気を放出することができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006‐152664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、先ず、導気孔から導気室に汚水が入り込む可能性があるため、導気室の空気に臭気が溜まり、吸気管から臭気が放出される恐れがある。次に、導気室は、便器の形状や各便器毎に変動するので、サイホン作用終了直前よりも早く又は遅く導気孔から空気を放出してしまう恐れがある。このような変動を防止するために、特許文献1のものでは、吸気管に空気導入量を調整する空気導入調整弁を設け、この空気導入調整弁を絞って空気の導入量を減らして導気孔からの空気の放出タイミングを調整しているが、空気の導入量を減らした場合には、トラップ排水路に投入される空気量も少なくなるので、サイホン作用の低減が十分でなく、サイホン切れ音の低減を十分に行えないという新たな問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、臭気が飛散することを防止すると共にサイホン切れ音の低減を十分に行うことができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、貯水タンクから便器本体のボウル部に洗浄水を導くように形成された導水路と、ボウル部の排出口に接続されサイホン作用を発生させるトラップ排水路と、一端にトラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置し且つトラップ排水路に連通する導気孔が形成され、他端に待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放される空気吸込口が形成された導気通路と、を有し、導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が導気孔からトラップ排水路へ排出され、さらに、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入されるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、導気通路の他端に形成された空気吸込口が、待機状態では貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放されるようになっているので、待機状態のとき及び洗浄開始後空気吸込口が大気開放されるまでの間は、便器本体のボウル部にある汚物による臭気が導気通路を経由して吸気管から放出されることがない。次に、導気通路の導気孔がトラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置しているので、ボウル部の溜水の水位が低下してボウル部からトラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔からトラップ排水路内に導入され、これにより、トラップ排水路におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。その結果、ボウル部からトラップ排水路に空気が導入され、サイホン作用が終了するとき、既に、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【0008】
本発明は、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没長さが、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるように設定されている。
このように構成された本発明においては、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるので、サイホン作用を有効に利用することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるように設定されている。
このように構成された本発明においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン発生中)に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるので、大気開放時には、待機状態の水位を保っていた導気通路内の水位が待機状態の水位よりも上方にあるボウル部の水位に合わせようとするので、導気通路内に洗浄水が流入し、その分サイホン作用が弱められるので、サイホン作用が強い又は強すぎる水洗大便器に有効である。
【0010】
本発明において、好ましくは、導気通路の空気吸込口の水没高さが、サイホン作用発生後で終了前に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるように設定されている。
【0011】
このように構成された本発明においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン発生中)に空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるので、大気開放時には、待機状態の水位を保っていた導気通路内の水位が待機状態の水位よりも下方にあるボウル部の水位に合わせようとするので、導気通路から洗浄水が排出され、これにより、導気通路からのトラップ排水路内への空気の導入を遅らせることができるので、汚物のトラップ排水路の通過がつまりぎみになりがちの水洗大便器には、サイホン作用を低減せずにサイホン作用を有効に利用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、臭気が飛散することを防止すると共にサイホン切れ音の低減を十分に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。図1は本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図2は図1のII‐II線に沿って見た水洗大便器の断面図であり、図3は図2のIII‐III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【0014】
本実施形態による水洗大便器1は、便器本体2を有し、この便器本体2は陶器製であり、便器本体1の前方上部にはボウル部4が形成され、後方上部には洗浄水を貯水する貯水タンク8が形成されている。また、ボウル部4の上縁にはリム5が形成され、このリム5は内側にオーバーハングした形状となっている。貯水タンク8とボウル部4の間には、貯水タンク8内の洗浄水をボウル部4に導くための導水路8が形成されている。この導水路8は、貯水タンク6の底面に形成された給水口10を経て洗浄水が供給されるようになっている。また、導水路8の下流側には、上記便器本体1のリム5の内周面に形成されたリム吐水口12が形成され、リム吐水口12から導水路8からの洗浄水をボウル部4に吐水して洗浄するようになっている。
【0015】
ボウル部4の底部にはボウル排出口4aが形成され、このボウル排出口4aの後方側には、サイホン作用を発生するためのトラップ排水路14が接続(連通)して設けられている。このトラップ排水路14は、入口14a、この入口14aから後方に上昇して延びる上昇路14b、下降する下降路14cから構成されている。この下降路14cが排水ソケット15を介して配水管(図示せず)に接続されている。また、トラップ排水路14は、上側頂部14dと下側頂部14eを備えている。
なお、図2に示すように、ボウル部4の溜水は、洗浄動作開始前の初期状態の水位L1となっている。
【0016】
次に、貯水タンク6には、操作レバー16、フロート(図示せず)を備えたボールタップ18、オーバーフロー管20、ボールタップ18から分岐してオーバーフロー管20に洗浄水を供給するリフィール管22、排水弁24が設けられている。使用者が操作レバー16を操作すると、排水弁24が開き、貯水タンク6内の洗浄水が、供給口10を経て導水路8に洗浄水が供給され、ボウル部4の洗浄が開始される。この際、ボールタップ18のフロートが降下することによりボールタップ18の給水弁(図示せず)が開いて、貯水タンク6内、リフィール管22、オーバーフロー管20を経由してボウル部4内への給水が行われるようになっている。
【0017】
次に、本実施形態による水洗大便器1の便器本体1は、導気通路30を備えている。この導気通路30は、貯水タンク6内に設けられた吸気管32と、この吸気管32と貯水タンク6の底部に形成された吸気孔34を介して連通する導気室36とにより構成されている。吸気管32の上方部は、U字形状となり、その先端が空気吸込口38となっている。この空気吸込口38は、洗浄待機状態では、所定の長さH1だけ、貯水タンク6内の洗浄水中に水没し、洗浄開始後における貯水タンク6の水位の低下に伴い大気に開放されるようになっている。
【0018】
導気通路30の導気室36は、便器本体2のトラップ排水路14の側面及び上面に沿って形成されている。また、導気室36がトラップ排水路14の側面から上面に変化する部分には空気連絡口36aが形成されている。この導気室36の下端部には、スリット形状の導気孔40が形成されている。この導気孔40は、上述したトラップ排水路14の入口14aの上縁よりもhだけ上方に位置し、さらに、トラップ排水路14の入口より少しだけ下流側の部位と連通している。
【0019】
次に、図4乃至図9により、上述した本実施形態による水洗大便器の作用(動作)を説明する。ここで、図4は洗浄モード1(初期状態)、図5は洗浄モード2(ボウル部水位上昇)、図6は洗浄モード3(空気吸込口大気開放)、図7は洗浄モード4(サイホン作用開始)、図8は洗浄モード5(サイホン作用終了直前)、図9は洗浄モード6(サイホン作用終了)をそれぞれ示す本実施形態による水洗大便器の断面図である。
【0020】
先ず、図4に示すように、洗浄動作開始前である洗浄モード1(初期状態)においては、ボウル部4の水位と導気室36(導気通路30)は同じ初期状態の水位L1であり平衡状態となっている。
【0021】
次に、図5に示すように、使用者が操作レバー16を操作して、洗浄動作が開始されると、貯水タンク6内の洗浄水が導水路8を経由してリム吐水口12からボウル部4へ吐水されるので、洗浄モード2(ボウル部水位上昇)となり、ボウル部4の水面が上昇する。このとき、導気室36(導気通路30)の水位は、吸気管32の空気吸込口38が水没しているため、空気吸込口38が大気に対して縁切りされているため、初期状態のままで変動しない。
【0022】
ここで、洗浄動作開始前の初期状態(図4参照)及びボウル部水位上昇状態(図5参照)において、吸気管32の空気吸込口38は、貯水タンク6内に水没しているため、便器本体2のボウル部4にある汚物による臭気が導気室36を経由して吸気管32から放出されることがない。
【0023】
次に、図6に示すように、貯水タンク6の水位が低下し、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されると、洗浄モード3(空気吸込口大気開放)となり、導気室36(導気通路30)の水位は、ボウル部4の水位まで上昇する。
【0024】
次に、図7に示すように、トラップ排水路14が満水となりサイホン作用が開始されると、洗浄モード4(サイホン作用開始)となり、サイホン作用により、ボウル部4の洗浄水と導気室36(導気通路30)の洗浄水がトラップ排水路14内に吸い込まれ、ボウル部4の水位と導気室36(導気通路30)の水位がほぼ同じ高さを保ちながら降下する。
【0025】
次に、図8に示す洗浄モード5(サイホン作用終了直前)となり、導気室36(導気通路30)の下端に形成された導気孔40がトラップ排水路14の入口14aの上縁よりもhだけ上方に位置しているので、空気吸込口38で吸入された空気が、導気孔40からトラップ排水路14の入口14aからの空気よりも先行して導入される。これにより、トラップ排水路14におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。
【0026】
次に、図9に示す洗浄モード6(サイホン作用終了)となり、ボウル部4の水位がさらに低下して、トラップ排水路14の入口14aの上縁以下となると、トラップ排水路14の入口14aから空気が導入され、サイホン作用が終了する。このとき、既に、導気孔40からトラップ排水路14内に空気が導入され、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【0027】
次に、図10により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。図10は本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
この第2実施形態による水洗大便器の基本構造は、図1乃至図3に示す第1実施形態による水洗大便器と同じであるが、導気通路30の吸気管32の水没長さH2が第1実施形態の水没長さH1よりも長くなっており、サイホン作用発生後に、空気吸込口38が大気開放されるようになっている。
【0028】
第2実施形態による水洗大便器は、サイホン作用発生前においては、導気通路30の吸気管32の空気吸込口38は水没して大気開放されておらず、そのため、この状態では、導気室36の水位は、初期状態の水位L1に維持されている。
【0029】
第2実施形態による水洗大便器においては、図10に示すように、吸気管32の水没長さH2が、サイホン作用発生後で終了前(サイホン作用中)で、ボウル部4の水位が初期状態の水位L1よりも上方にあるときに、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されるように設定されている。
【0030】
第2実施形態による水洗大便器においては、サイホン作用発生後で終了前(サイホン作用中)に、空気吸込口38が大気開放されると、初期状態の水位L1を保っていた導気室36の水位が初期状態の水位L1よりも上方にあるボウル部4の水位に合わせようとするので、導気室36内に洗浄水が引き込まれ、その分、サイホン作用による吸い込み力が弱まる。その結果、水洗大便器の吸気管32の水没長さをH2と長く設定した第1例は、サイホン作用が強い又は強すぎる水洗大便器に有効である。
【0031】
次に、図11により、本発明の第3実施形態による水洗大便器を説明する。図11は本発明の第3実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
この第3実施形態による水洗大便器の基本構造も、図1乃至図3に示す第1実施形態による水洗大便器と同じであり、さらに、第2実施形態と同様に、サイホン作用発生後に、空気吸込口38が大気開放されるようになっているが、導気通路30の吸気管32の水没長さH3が、第2実施形態の水没長さH2よりも長くなっている。
【0032】
この第3実施形態による水洗大便器においても、第2実施形態と同様に、サイホン作用発生前においては、導気通路30の吸気管32の空気吸込口38は水没して大気開放されておらず、そのため、この状態では、導気室36の水位は、初期状態の水位L1に維持されている。
【0033】
第3実施形態による水洗大便器においては、図11に示すように、吸気管32の水没長さH3が、サイホン作用発生後で、ボウル部4の水位が初期状態L1の水位よりも下方にあるときに、吸気管32の空気吸込口38が大気開放されるように設定されている。
【0034】
第3実施形態による水洗大便器においては、サイホン作用発生後終了前(サイホン作用中)に空気吸込口38が大気開放されると、初期状態の水位L1を保っていた導気室36の水位が初期状態の水位L1よりも下方にあるボウル部4の水位に合わせようとして、導気室36内の洗浄水が排出され、導気室36内の水位が下降する。この導気室36の水位が待機状態の水位L1から下降する時間のために、第2例の水洗大便器においては、導気室36の導気孔40から空気がトラップ排水路14内に導入されるタイミングが遅くなる。
【0035】
一方、公共トイレのように大量の汚物が使用されることが想定される場合、汚物がつまりぎみにトラップ排水路を通過する頻度が高いため、トラップ排水路がボウル部の水を吸い込む前に導気室から空気が導入されサイホン作用が低減されるのは好ましくない。
第3実施形態による水洗大便器においては、導気室36の導気孔40から空気がトラップ排水路14内に導入されるタイミングが遅くなるので、この問題を解決することができる。
【0036】
上述した第2実施形態及び第3実施形態ともに、サイホン作用終了直前に、導気室36(導気通路30)の導気孔40からからトラップ排水路14の入口14aからの空気よりも先行して導入され、これにより、トラップ排水路14におけるサイホン作用が十分に低減され、空気の吸い込み力が弱まる。そのため、トラップ排水路14の入口14aから空気が導入され、サイホン作用が終了するとき、既に、サイホン作用は十分に低減されているので、サイホン切れ音(ゴボゴボ音)を十分に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【図2】図1のII‐II線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【図3】図2のIII‐III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄モード1(初期状態)を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による洗浄モード2(ボウル部水位上昇)を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による洗浄モード3(空気吸込口大気開放)を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による洗浄モード4(サイホン作用開始)を示す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による洗浄モード5(サイホン作用終了直前)を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による洗浄モード6(サイホン作用終了)を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による水洗大便器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 貯水タンク
8 導水路
10 給水口
12 リム吐水口
14 トラップ排水路
14a 入口
30 導気通路
32 吸気管
34 吸気口
36 導気室
38 空気吸込口
40 導気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、
貯水タンクから便器本体のボウル部に洗浄水を導くように形成された導水路と、
上記ボウル部の排出口に接続されサイホン作用を発生させるトラップ排水路と、
一端に上記トラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置し且つ上記トラップ排水路に連通する導気孔が形成され、他端に待機状態では上記貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放される空気吸込口が形成された導気通路と、を有し、
上記導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が上記導気孔から上記トラップ排水路へ排出され、さらに、上記ボウル部の溜水の水位が低下して上記ボウル部から上記トラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に上記導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔から上記トラップ排水路内に導入されるように構成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に上記空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に上記空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項1】
貯水タンクから給水される洗浄水により便器本体のボウル部を洗浄し、このボウル部内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、
貯水タンクから便器本体のボウル部に洗浄水を導くように形成された導水路と、
上記ボウル部の排出口に接続されサイホン作用を発生させるトラップ排水路と、
一端に上記トラップ排水路の入口の上縁よりも上方に位置し且つ上記トラップ排水路に連通する導気孔が形成され、他端に待機状態では上記貯水タンク内の洗浄水中に所定高さだけ水没し且つ洗浄動作開始後の貯水タンクの水位の低下に伴い大気に開放される空気吸込口が形成された導気通路と、を有し、
上記導気通路は、待機状態で溜水が溜まっており、サイホン作用により導気通路内の溜水が上記導気孔から上記トラップ排水路へ排出され、さらに、上記ボウル部の溜水の水位が低下して上記ボウル部から上記トラップ排水路内に空気が引き込まれる直前に上記導気通路内の溜水の排出が終了して大気が導気孔から上記トラップ排水路内に導入されるように構成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、洗浄動作開始後サイホン作用発生前に上記の空気吸込口が大気に開放されるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に上記空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも上方にあるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記導気通路の空気吸込口の水没長さが、サイホン作用発生後で終了前に上記空気吸込口が大気に開放され、且つ、大気開放時にボウル部の水位が待機状態の水位よりも下方にあるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−243172(P2009−243172A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91754(P2008−91754)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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