説明

水洗槽の給水装置

【課題】給水を制御するための電気伝導度計測用センサーの汚れを防止して水洗水の電気伝導度を精度よく計測し、水洗水の供給不足によるめっき不良を防止するとともに、水洗水が無駄に供給されることのない水洗槽の給水装置を提供する。
【解決手段】電磁弁11を通して給水される水洗槽の給水口となるセンサー保持器2の内部の液面より下方位置に電気伝導度を検出するセンサー1を設けた。更に、このセンサー1により電気伝導度を計測する変換器5と、電気伝導度の計測値と伝導度設定器7により設定される設定値とを比較して計測値が設定値を超えたときに信号を発生する比較器6と、比較器6が信号を発生したとき時限設定器9により設定された一定時間出力を発生する時限装置8と、時限装置8が信号を発生したとき前記電磁弁11を駆動する電磁弁駆動装置10とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置の水洗槽に水洗水を供給する水洗槽の給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき処理装置において、ワークは各工程から次工程に移る間に水洗される。この水洗はめっき品質に関わることから、水洗水の水質を一定以上に保つ必要があり、水洗槽に清浄な水を供給して不純物濃度の上昇を抑えるようにしている。多くの場合、この水洗槽への水洗水の供給、停止は作業者がバルブを開閉して行っており、装置の稼働中はワークの量、有無にかかわらず連続して供給されている。節水の観点からは、ワークの量が少ないときに給水量を減らしたり、始業時、終業時等水洗槽にワークがないときに給水を停止したりすることが望ましいのであるが、作業者の手間を要するため殆ど行われておらず、水洗水が無駄に供給されているのが現状である。
【0003】
水洗水が無駄に供給されることは経済的にも、環境的にも好ましいことではなく、例えば非特許文献1に示されるように、水洗槽に電気伝導度計を設置して給水用電磁弁を制御し、水洗水の量を節減する方法が提案されている。この非特許文献1には多段向流水洗の最終水洗槽に電気伝導度計を設けたものが示されており、水道料金と排水処理費が節約できると記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「電気めっき排水処理の管理と実際」 昭和63年度通産省主催ブロック別研修会テキスト 全国鍍金工業組合連合会 P42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来は水洗水が無駄に供給されるという問題があった。非特許文献1に示されるような方法はこの問題を解決する一つの手段であり、水洗槽に電気伝導度計を設けて水洗水の電気伝導度を計測し、電気伝導度が設定した値より大きくなったら給水し、設定した値より小さくなったら給水を停止するものである。ところが、電気伝導度計のセンサーは常時水洗水中に浸漬されるため表面に汚れが付着して電気伝導度の測定精度が低下し、水洗水の水質が悪化しても検知できずに給水されないことがあり、洗浄不良によるめっき不良が生じるという問題があった。また、電気伝導度計のヒステリシスが大きい場合は電気伝導度が小さくなっても電気伝導度計が復帰せず、過剰に給水されるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点を解決しようとするものであり、電気伝導度計測用センサーの汚れを防止して水洗水の電気伝導度を精度よく計測し、水洗水の供給不足によるめっき不良を防止するとともに、水洗水が無駄に供給されることのない水洗槽の給水装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の水洗槽の給水装置は、水洗槽の給水口内部の液面より下方位置に設けられ水洗水の電気伝導度を検出するセンサーと、このセンサーの出力信号から電気伝導度を計測する計測手段と、電気伝導度の計測値と設定値とを比較して計測値が設定値を超えたときに信号を発生する比較手段と、比較手段が信号を発生したとき一定時間出力を発生する時限手段と、時限手段が信号を発生したとき前記給水口の電磁弁を開くように駆動する電磁弁駆動手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、前記給水口のセンサー近傍の外周に通水孔を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、センサーは給水口内部に設けられているので、給水されたときその供給された清浄な水洗水により洗浄されることになり、汚れが付着することはない。
また、給水口のセンサー近傍の外周に通水孔を設けた場合は、給水の停止後センサー近傍に供給された清浄な水洗水と水洗槽内に存在した水洗槽の混合が速やかに行われ、水洗槽内の水洗水の電気伝導度の変化を大きな遅れなく計測できる。
【0009】
このように本発明では、給水されるたびにセンサーが清浄な水洗水により洗浄されるので汚れが付着することがなく、電気伝導度の測定精度が低下することがない利点がある。これにより水洗水の水質が悪化した時は確実に給水することができ、洗浄不良によるめっき不良の発生を防止することができる効果がある。また、センサーのヒステリシスが大きくても一回の給水は時限手段により終了させられるので過剰に給水されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】水洗槽に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0012】
図において1は水洗水の電気伝導度を検出するセンサーであり、絶縁材からなる筒状のセンサー保持器2に収納されている。センサー保持器2は水洗槽に給水する給水管3の先端に取り付けられて給水口となっており、センサー保持器2の側面には複数の通水孔4、4が設けられている。水洗槽は従来の水洗槽と同様にオーバーフローで液面が一定に保たれており、センサー保持器2はセンサー1及び通水孔4、4が水洗槽の液面Lより下方になるように設置されている。センサー1には計測手段である変換器5から駆動信号が与えられており、変換器5からは電気伝導度の計測信号が出力される。
【0013】
変換器5の出力は比較手段である比較器6に与えられており、比較器6は変換器5から入力される計測信号が伝導度設定器7によって設定された電気伝導度を超えると出力を発生するように構成されている。比較器6の出力は時限手段である時限装置8に与えられており、時限装置8は比較器6から信号が与えられると時限設定器9によって設定された時間だけ出力を発生するように構成されている。時限装置8の出力は電磁弁駆動手段である電磁弁駆動装置10に与えられており、電磁弁駆動装置10は時限装置8から出力が与えられている間だけ給水管3の途中に設けられた電磁弁11を駆動して電磁弁11を開くように構成されている。
【0014】
このように構成された本発明の水洗槽の給水装置において、センサー保持器2はセンサー1及び通水孔4、4が水洗水の液面Lより下方になるようにして水洗槽に設置される。多段向流水洗の場合は最終水洗槽に設置される。センサー保持器2は途中に電磁弁11と水栓12が設けられた給水管3を介して水源の配水管に接続される。この水栓12は必要に応じて設けられるものである。これらのセンサー保持器2、給水管3、電磁弁11等は図2に示すように一体に構成することが可能であり、一体に構成することにより水洗槽のフランジ部に容易に設置することができる。
【0015】
伝導度設定器7によりこれ以下に維持したいという水洗槽内の水洗水の電気伝導度の目標値を設定し、時限設定器9により一回当たりの給水時間を設定しておく。時限設定器9により設定される時間は水洗槽の容量と一定時間当たりの給水量から適宜定められるもので、例えば30秒というような時間とする。水洗槽に前工程からワークに付着した処理液が持ち込まれると、水洗槽内の水洗水の電気伝導度が上昇してセンサー1により検知され、変換器5から比較器6に電気伝導度の計測信号が与えられる。この計測信号が伝導度設定器7により設定された設定値を超えると比較器6から時限装置8に信号が与えられる。
【0016】
時限装置8に信号が与えられると、時限設定器9によって設定された時間だけ時限装置8から電磁弁駆動装置10に信号が与えられる。電磁弁駆動装置10に信号が与えられるとその間だけ電磁弁駆動装置10により電磁弁11が駆動されて開かれる。電磁弁11が開かれると給水管3、センサー保持器2を通して水洗槽に給水され、センサー保持器2に収納されるセンサー1はセンサー保持器2内を流れる清浄な水洗水により洗浄される。このとき、センサー1は清浄な水洗水の電気伝導度を検出することになって変換器5により計測される電気伝導度は伝導度設定器7の設定値を下回ることになり、時限装置8には比較器6から信号が与えられなくなるが、時限装置8は時限設定器9によって設定された時間だけ継続して信号を出力する。
【0017】
時限設定器9によって設定された時間が経過すると、電磁弁駆動装置10には時限装置8から信号が与えられなくなり、電磁弁11は駆動されなくなって閉じられ、給水が停止する。給水が停止するとセンサー1付近の水洗水は通水孔4、4及び先端の開口を通して周囲の水洗水と混じり合い、計測される電気伝導度が上昇することになる。電気伝導度が上昇して伝導度設定器7により設定された設定値を超えると、再度上記のように時限設定器9によって設定された時間だけ電磁弁11が開かれ、水洗水が水洗槽に供給される。以後これが繰り返され、給水が停止した後の電気伝導度が伝導度設定器7により設定された設定値を超えなくなるまで続けられる。これにより水洗槽内の水洗水の電気伝導度は、次にワークが水洗槽に入るまで設定値以下に維持される。
【0018】
また、水洗槽で設定値を超えたことを検知して給水を開始した後、センサー1の検知した値が小さくなった時から時間計測を開始することもできる。即ち、比較器6から一旦出力が出て、その後、出力がなくなった時から、時限装置8は信号を与えられるようにし、これを繰り返すのである。この方法の場合は、一定時間給水をしても値が低下しなかった場合に、電磁弁11を閉じることなく連続して給水をすることができる。
【0019】
以上説明したように、本発明の水洗槽の給水装置では、センサー1は給水されるたびに清浄な水洗水により洗浄されるので汚れが付着することがない。これにより電気伝導度の測定精度が低下することがないので、水洗水の水質が悪化した時は確実にそれを検知して給水することができ、洗浄不良によるめっき不良の発生を防止することができる。また、センサー1のヒステリシスが大きくても一回の給水は時限装置8により終了するので過剰に給水されることはない。
【符号の説明】
【0020】
1 センサー
2 センサー保持器
3 給水管
4 通水孔
5 変換器
6 比較器
7 伝導度設定器
8 時限装置
9 時限設定器
10 電磁弁駆動装置
11 電磁弁
12 水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗槽の給水口内部の液面より下方位置に設けられ水洗水の電気伝導度を検出するセンサーと、このセンサーの出力信号から電気伝導度を計測する計測手段と、電気伝導度の計測値と設定値とを比較して計測値が設定値を超えたときに信号を発生する比較手段と、比較手段が信号を発生したとき一定時間出力を発生する時限手段と、時限手段が信号を発生したとき前記給水口の電磁弁を開くように駆動する電磁弁駆動手段とを設けたことを特徴とする水洗槽の給水装置。
【請求項2】
給水口のセンサー近傍の外周に通水孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水洗槽の給水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−74478(P2011−74478A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229582(P2009−229582)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000150202)株式会社中央製作所 (35)