説明

水洗装置

【課題】イルミネーションの効果を際立たせることができ、かつ設計の自由度が向上するとともに組付けが容易な水洗装置を提供する。
【解決手段】水を吐水流Wとして吐出させる吐水具15と、吐水流Wを受ける鉢12とを備えた水洗装置10であり、洋風水洗便器1のロータンク6に設けられる。水洗装置10は、指向性のある光を照射可能であり、吐水流Wが直接当たる反射板17から離れて位置し、反射板17から吐水流W内に光を入射可能なLED16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の図1、2、4及び特許文献2の図1に示すように、水を吐水流として吐出させる吐水具と、吐水流を受ける鉢とを備えた水洗装置が知られている。
【0003】
特許文献1の水洗装置では、光源で照射された光を光ファイバで導き、光ファイバの一端から照射された光を反射部で反射して吐水口付近を照明している。また、特許文献2の水洗装置では、光源からの光を直接照射して吐水口付近を照明している。そのため、これらの水洗装置によれば、使用者の手元を明るく照らすことができるとともに、室内のイルミネーションともなる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−336709号公報
【特許文献2】特開2004−108089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の水洗装置では、吐水流を吐水の外部より照射していることから、照射された光の大部分が吐水流の表面で乱反射される。このため、照射された光の大部分が吐水流に沿って進むことができず、吐水流のごく一部が照明されるだけである。また、吐水流の表面で乱反射された光が吐水口付近でさらに乱反射を繰り返すため、不必要な部分まで照明されることとなり、ぼやけたような、いわゆる切れの悪い照明になってしまう。こうして、従来の水洗装置では、せっかくのイルミネーションの効果が減殺されてしまう。
【0006】
また、上記従来の水洗装置では、吐水口付近を照明することから、光ファイバや光源を吐水口付近に設置する必要がある。このため、水洗装置の外観を損なわないようにするためには、光ファイバや光源の配置及び配線等に制約が生じ、設計の自由度が低下する上、組付けも困難である。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、イルミネーションの効果を際立たせることができ、かつ設計の自由度が向上するとともに組付けが容易な水洗装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水洗装置は、水を吐水流として吐出させる吐水具と、該吐水流を受ける鉢とを備えた水洗装置において、
指向性のある光を照射可能であり、前記吐水流が直接当たる受け部から離れて位置し、該受け部から該吐水流内に該光を入射可能な光源を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の水洗装置では、吐水流が直接当たる受け部から離れて位置する光源により受け部から吐水流内に指向性のある光を入射する。このため、水流の光導波路効果により、光が水中を全反射して上方に伝播しつつ、少しづつ拡散されて水中から漏れ出てくる。こうして、光が不必要な部分を照明することが少なくなるため、吐水流自体が発光するように見え、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流が綺麗な光の柱として視認され、驚きを演出する効果が大きい。また、この水洗装置では、光源を吐水口付近に設置する必要がないため、光源の配置や配線等の設計の自由度が向上する上、組付けも容易である。
【0010】
したがって、本発明の水洗装置によれば、イルミネーションの効果を際立たせることができ、かつ設計の自由度が向上するとともに組付けが容易である。
【0011】
なお、光源としては、高輝度LED、レーザーダイオード(LD)等を採用することができる。また、三原色の光源を採用すれば、任意の色の光を照射することができる。
【0012】
本発明の水洗装置では、鉢は排水口を有し、吐水流は排水口内に直接吐出され、鉢の裏側に受け部及び光源が位置していることが好ましい。この場合、吐水流が排水口内に直接吐出され、鉢の裏側の受け部に当たることから、吐水流は鉢面に当たることがない。また、人は排水口より上部の吐水流を見ることになるため、必要部分のみを見ることとなる。このため、光源から照射された光は柱状の吐水流を照明することとなり、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。また、吐水流が排水口から立ち上る綺麗な光の柱として視認され、よりイルミネーションの効果を際立たせることができる。
【0013】
また、吐水流は吐水具から鉛直下方に吐出されていることが好ましい。こうであれば、水圧が変化しても吐水角度が変わることがなく、吐水流が排水口内に確実に吐出されるため、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になるとともに、よりイルミネーションの効果を際立たせることができる。
【0014】
さらに、受け部は光を反射させる反射板とすることができる。こうであれば、吐水流と光源とがともに反射板の表面側に位置する場合、本発明を具体化可能である。
【0015】
また、受け部は光を透過させる透光板とすることもできる。こうであれば、吐水流が反射板の表面側、光源が反射板の裏面側に位置する場合、本発明を具体化可能である。この際、透光板を有色のものとすれば、吐水流が光源の色と異なる色で発光するように見え、イルミネーションとしての幅を広げることができる。
【0016】
さらに、鉢が受け部を一体に有していることが好ましい。これにより、別部品が不要となり、製造コストが削減される。
【0017】
また、受け部には防音又は防振手段が施されていることが好ましい。これにより、吐水時の音を小さくすることができるとともに、振動を抑制することができる。
【0018】
さらに、光源は砲弾型LEDであることが好ましい。小型である上、省電力だからである。
【0019】
本発明の水洗装置は、特に洋風水洗便器のロータンクに設けることにより、その効果を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0021】
図1に示すように、実施例1の水洗装置10は洋風水洗便器1のロータンク6に設けられている。洋風水洗式便器1は、陶磁器製の洋風便器本体2、便座3、便蓋4及びタンクカバー5を備えている。タンクカバー5は、ロータンク6を内蔵し、水洗装置10を上部に配置している。
【0022】
水洗装置10は、図2及び図3に示すように、本体11と吐水具15とを備えている。本体11はタンクカバー5の上部に嵌着され、本体11には吐水流Wを受ける鉢12が一体として凹設されている。鉢12の底部には、吐水流Wを鉢12から排出するとともにロータンク6内に導く排水口12aが設けられている。また、本体11の後方には、水を吐水流Wとして吐水口15aから吐出させる吐水具15が固定されている。吐水口15aは吐水流Wが鉛直下方に吐出されるようにされており、この吐水流Wは排水口12a内に直接吐出されるようになっている。
【0023】
また、タンクカバー5には支持板5aが一体として設けられており、支持板5aには、防音及び防振手段としてのポリウレタンフォーム等のクッション19を介して金属フィルムシールからなる反射板17が貼着されている。この反射板17は、吐水口15aから吐出された吐水流Wが直接当たる受け部をなしている。また、反射板17から離れた位置に、光源としての砲弾型LED16が設けられている。LED16は指向性のある光を照射可能であり、この光は反射板17の表面で反射されて吐水流W内に入射される。こうして、この水洗装置10では、鉢12の裏側に反射板17及びLED16が位置し、吐水流WとLED16とがともに反射板17の表面側に位置する関係になっている。
【0024】
以上の構成をした水洗装置10では、吐水口15aから鉛直下方に吐出された吐水流Wは、排水口12aを通過して、反射板17の表面に当たった後、ロータンク6内に導かれる。また、LED16から照射された光は、矢印で示すように、反射板17の表面で反射された後、吐水流Wに沿って上方に進む。この際、水流の光導波路効果により、光が吐水流W中を全反射して上方に伝播しつつ、少しづつ拡散されて吐水流Wから漏れ出てくる。すなわち、反射板17の表面で反射された光は、大部分が水流と大気との境界面で全反射されるため、吐水流Wに沿って上方に進むことになる。そして、吐水流W中に混入した空気等のため、その光はあらゆる方向に拡散されつつ少しづつ吐水流Wから漏れ出てくることになる。こうして、光が不必要な部分を照明することが少なくなるため、吐水流W自体が発光するように見え、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。
【0025】
また、この水洗装置10では、吐水流Wは排水口12a内に直接吐出され、鉢12の裏側に位置する反射板17に当たることから、吐水流Wは鉢12に当たることがない。また、人は排水口12aより上部の吐水流Wを見ることになるため、必要部分のみを見ることとなる。このため、LED16から照射された光は柱状の吐水流Wを照明することとなり、くっきりした、いわゆる切れのよい照明になる。特に、暗闇の中では、吐水流Wが排水口12aから立ち上る綺麗な光の柱として視認され、驚きを演出する効果が大きい。さらに、この水洗装置10では、吐水流Wは吐水具15の吐水口15aから鉛直下方に吐出されているため、水圧が変化しても吐水角度が変わることがなく、吐水流Wが排水口12a内に確実に吐出されるため、よりくっきりした、いわゆる切れのよい照明になるとともに、よりイルミネーションの効果を際立たせることができる。
【0026】
また、この水洗装置10では、LED16を吐水口15a付近に設置する必要がないため、LED16の配置や配線等の設計の自由度が向上する上、組付けも容易である。
【0027】
したがって、実施例1の水洗装置10によれば、イルミネーションの効果を際立たせることができ、かつ設計の自由度が向上するとともに組付けが容易である。
【0028】
また、この水洗装置10では、鉢12の裏側にLED16が位置していることから、LED16や配線等を外部から隠蔽することができ、水洗装置10の外観を損なうことがない。また、LED16に砲弾型LEDを用いているため、小型で消費電力を少なくできる。
【実施例2】
【0029】
図4に示す実施例2の水洗装置20も、実施例1と同様、図1に示す洋風水洗便器1のロータンク6に設けられる。以下、実施例1の水洗装置10と異なる部分のみを説明する。
【0030】
図4に示すように、本体21には鉢22が一体として凹設され、鉢22の底部には排水口22aが設けられているとともに、支持板22bが一体として設けられている。この支持板22bにはクッション19及び反射板17が固定されている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0031】
この水洗装置20では、鉢22にはクッション19及び反射板17が固定された支持板22bが一体として設けられているため、別部品が不要となり、製造コストが削減される。その他の作用・効果は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0032】
図5及び図6に示す実施例3の水洗装置30も、実施例1と同様、図1に示す洋風水洗便器1のロータンク6に設けられる。以下、実施例1の水洗装置10と異なる部分のみを説明する。
【0033】
図5及び図6に示すように、本体31には鉢32が一体として凹設され、鉢32の底部には排水口32aが設けられているとともに、支持板32bが一体として設けられている。この支持板32bには、光を透過させる有色透明の透光板18が固定されている。また、透光板18の裏面側には、光源としての砲弾型LED16が設けられている。こうして、この水洗装置30では、鉢32の裏側に透光板18及びLED16が位置し、吐水流Wが透光板18の表面側、LED16が透光板18の裏面側に位置する関係になっている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0034】
以上の構成をした水洗装置30では、吐水口15aから鉛直下方に吐出された吐水流Wは、排水口32aを通過して、透光板18の表面に当たった後、ロータンク6内に導かれる。また、LED16から照射された光は、図6の矢印で示すように、透光板18を通過した後、吐水流Wに沿って上方に進む。
【0035】
この水洗装置30では、鉢32には透光板18が固定された支持板32bが一体として設けられているため、別部品が不要となり、製造コストが削減される。また、有色透明の透光板18を用いていることから、吐水流WがLED16の色と異なる色で発光するように見え、イルミネーションとしての幅を広げることができる。その他の作用・効果は実施例1と同様である。
【0036】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は洋風水洗便器等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1〜3に係り、洋風水洗式便器の斜視図である。
【図2】実施例1の水洗装置の断面図である。
【図3】実施例1の水洗装置の拡大断面図である。
【図4】実施例2の水洗装置の断面図である。
【図5】実施例3の水洗装置の断面図である。
【図6】実施例3の水洗装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10、20、30…水洗装置
15…吐水具
12、22、32…鉢
12a、22a、32a…排水口
17、18…受け部(17…反射板、18…透光板)
16…光源(LED)
19…防音及び防振手段(クッション)
W…吐水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐水流として吐出させる吐水具と、該吐水流を受ける鉢とを備えた水洗装置において、
指向性のある光を照射可能であり、前記吐水流が直接当たる受け部から離れて位置し、該受け部から該吐水流内に該光を入射可能な光源を備えていることを特徴とする水洗装置。
【請求項2】
前記鉢は排水口を有し、前記吐水流は該排水口内に直接吐出され、該鉢の裏側に前記受け部及び前記光源が位置している請求項1記載の水洗装置。
【請求項3】
前記吐水流は前記吐水具から鉛直下方に吐出されている請求項2記載の水洗装置。
【請求項4】
前記受け部は前記光を反射させる反射板である請求項1乃至3のいずれか1項記載の水洗装置。
【請求項5】
前記受け部は前記光を透過させる透光板である請求項1乃至3のいずれか1項記載の水洗装置。
【請求項6】
前記透光板は有色のものである請求項5記載の水洗装置。
【請求項7】
前記鉢が前記受け部を一体に有している請求項1乃至6のいずれか1項記載の水洗装置。
【請求項8】
前記受け部には防音又は防振手段が施されている請求項1乃至7のいずれか1項記載の水洗装置。
【請求項9】
前記光源は砲弾型LEDである請求項1乃至8のいずれか1項記載の水洗装置。
【請求項10】
洋風水洗便器のロータンクに設けられている請求項1乃至9のいずれか1項記載の水洗装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−32071(P2007−32071A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216290(P2005−216290)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】