説明

水準器

【目的】 計測後、計測容器を移動や傾斜させても計測時の液体量を保持してているので、正確な水準差を確実に計測することができ、且つ、容易に計測することもでき、携帯や保管が便利である水準器を提供する。
【構成】 上部に通気口6 を備え、下部に通液口5 を備え、この通気口6 と通液口5 間を連通してその内部に液体C を保有した透明もしくは一部透明の容器1 と、この容器1 と上記通気口6 及び上記通液口5 との間を開閉するための、永久磁石体155 の磁力で作動する弁体153 と、上記容器1 に平行密着させて組み合わされた計測用物差しを備えたケース106 とによって構成すると共に全長を必要最小限に縮小した一対の計測容器A1,A2 を設け、この一対の計測容器A1,A2 に設けられた通液口5 間を連通管B により連通させた。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、建築関連工事等で複数の地点間の高低差を計測する水盛り手法を用いた水準器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築関連工事等で複数の地点間の高低差を計測する場合、水盛り手法を用いた水準器によりその高低差を計測する方法がある。この水準器に関する出願としては、本考案者が先に出願した実用新案登録願(実願平2−94662号)があり、本願はこの水準器を、更に改良した水準器に関するものである。なお、以下の説明文中において上記先に出願した実用新案登録願を「先の出願」と省略記載する。
【0003】
図19(イ) は、先の出願の第4図(ロ)を示したものであり、上部に通気口6 を備え、下部に通液口5 を備え、その内部に液体C を保有した透明もしくは一部透明で、その内部が円筒形又は長方形の面で形成された縦長の容器1 と、該容器1 内の液体C を連通管B により連通させることにより容器1 の液面C1により水準差が計測できるように構成されたものであり、容器1 と通気口6 及び通液口5 の間に手動弁112 を装着したものである(以下、第1例という)。
【0004】
また、図19(ロ)は、先の出願の第5図(ロ)を示したものであり、上記第1例に示した例が手動弁112 を装着しているのに対し、容器1 と通液口5 の間を2ラインのハンドバルブ113 に変更したものである(以下、第2例という)。
【0005】
図19(ハ)は、先の出願の第6図(ハ)を示したものであり、上記第1例に示した例の手動弁112 を電磁弁117 に変更するとともに、ケース106 内に巻尺103 を組込んだものである。なお電池22は電磁弁117 を作動させるためのものである(以下、第3例という)。
【0006】
そして、これら3例は、いずれも容器1 と通液口5 の間に弁112,113,117 を設けることにより、容器1 内の液体が流出しないようにした計測容器A1,A2 を有する水準器である。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、第1例に示す水準器は、実用上操作している間に計測の基準となる液面が動いて不正確になり易く、第2例に示す水準器は、操作を早くできるため正確な計測ができるが重量が増えて取扱い難く製造費用が高くつくという欠点を有している。また第3例に示す水準器は、操作を早くできるため正確な計測ができるが、そのケース106 内に巻尺103 を組込んだ計測容器A1,A2 はそれだけ寸法も重量も増えて取扱いも不便で製造費用も高くつくという欠点を有している。
【0008】
そこで、本考案は上述のごとき課題を解決し、容易に取扱えて便利で実用に適した水準器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案における水準器は、上部に通気口を備え、下部に通液口を備え、該通気口と通液口間を連通してその内部に液体を保有した透明もしくは一部透明の容器と、該容器と上記通気口及び上記通液口との間を開閉するための、永久磁石体の磁力で作動する弁体と、該容器に平行密着させて組み合わされた計測用物差しを備えたケースとによって構成すると共に全長を必要最小限に縮小した一対の計測容器を設け、該一対の計測容器に設けられた通液口間を連通管により連通させたことを特徴とするものである。
【0010】
【作用】
上記構成により、一対の計測容器あるいは容器に設けたケースの計測用物差しを用いることにより水準差を計測し、計測と同時に永久磁石体の磁力で弁体を作動させて、容器と通気口及び通液口との間を閉鎖する。このことにより、計測後、計測容器を移動させたり、傾斜させたりしても計測時の液体量が保持されるので、正確な水準を常に保つことができる。
また、計測容器の全長が必要最小限に縮小されているので、軽く取扱いも容易となる。
【0011】
【実施例】
以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で用いる液体C は、水以外の液体でもよく、粘性が低く流動性がよい,粘度の変化が少ない,蒸発しない,凍結点が低い,体積膨張収縮が少ない,引火点が高い(もしくは不燃),毒性が低い(もしくは無い),変質しない,着色性が良い,透明である等の条件に適したものを選定する必要があり、ジメチルポリシロキサン構造をもったシリコーンオイル,植物多糖体溶液などが適当である。
【0012】
図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)は計測容器A1,A2 の外形を示したものであり、図1(イ)は左側面図,(ロ)は正面図、図2(イ)は右側面図,(ロ)は背面図をそれぞれ示し、図3は図1(ロ)のa〜a’断面図であり計測容器A1,A2 の内部構造を示したものである。図4(イ)〜(ホ)も、図1及び図2の計測容器A1,A2 を示したものであり、(イ)は図2(イ)の平面図,(ロ)は図2(イ)の底面図,(ハ)は図2(イ)のb−b’断面図,(ニ)は図2(イ)のc−c’断面図,(ホ)は図2(イ)のd−d’断面図である。図5は図2(イ)
のe−e’断面図である。
【0013】
図示するように、1 は容器、2 は物差し、2aは寸法目盛り、3 は上端部、4 は下端部、5 は通液口、6 は通気口(ケース106 内、図3参照)、102 は基本水位線、106 はケース、116 は締付金具、118 は永久磁石であり、114 はL型の開口部を用いた支持枠である。そして、これらにより構成された計測容器A1,A2 は、必要最小限に短くした縦長のものであり、通液口5 に連通管B を接続し、内部に所定量の液体C(水等)を保有させている。なお、C1は液面(又は水位)を示している。また、この実施例では計測容器A1,A2 の必要最小限な長さ(高さ)を全長45cmとしているが、40cm〜70cm程度の長さであれば容易に操作でき、本考案者が実験を行った結果、最も一般的な計測に適し、また携帯の容易さを考慮した長さは、容器1 の長さが約35cm程度で全長が約60cm程度のものである。
【0014】
そして、本考案の特徴部分としては、ケース106 の右側面の透明カバー146 内に計測容器A1,A2 を計測時に垂直に保持するための下げ振り37を設け、その下方に永久磁石弁D1,D2 (ケース106 内に装着)用の操作用レバー159a,159b を外側面より操作できるように設けている。また、計測容器A1,A2 の上端部3 及び下端部4 には巻尺式延長尺105 (図13参照)を装着固定するための板バネ147 を有する取付溝148 が設けられている。更に、ケース106 背面の上方及び下方に開閉が容易にできる保守点検蓋149 が設けられている。
【0015】
この内部構造は、図3に示すように、上部にエアーフィルター16を設け、上端部3 と下端部4 には内ネジの穴78が設けられ、容器1 の上端部にはワンタッチ受継手108 が設けられている。133 は通液穴、139 は通気穴、150 は漏液防止弁である。そして、通液口5 と容器1 の間に通液用永久磁石弁D1及び容器1 と通気口6 の間に通気用永久磁石弁D2が組み込まれている。
【0016】
この一対の永久磁石弁D1,D2 の弁体153 は円柱形で、永久磁石弁体155 の磁気に引きつけられる材質のもので作られており、この弁体153 で弁体上方の通液穴133 又は弁体下方の通気穴139 を塞ぐ面には柔らかい材質(ゴム、樹脂など)のシール材154 が貼り付けられている。
【0017】
以下に、上記計測容器A1,A2 の作動状態を、図6(イ),(ロ),(ハ)に示す容器内の液体の移動状態を示す断面図と、図7(イ),(ロ),(ハ)に示す永久磁石弁D1,D2 の内部機構を透視した斜視図と共に説明する。
【0018】
弁体153 はシリンダー形の弁座151 内にピストン状に嵌め込まれ、永久磁石体155 が弁座151 を隔てて隣接している時には、その永久磁石体155 の磁力により永久磁石体155 側に引きつけられ、このために通液穴133 及び通気穴139 が共に開き(図3,図6(ロ)、図7(ロ)に示した状態)、計測容器A1と計測容器A2の水準差に従って、それぞれの容器1 内の液体C が上下動しつつ図10に示すように水準線nで静止する。
【0019】
また、永久磁石体155 を弁体153 より離すために横に移動させ、その永久磁石体155 の磁力が弁体153 に作用しなくすれば、弁体153 は圧縮コイルバネ152 の反発力により通気穴139 及び通液穴133 を塞ぎ、通液及び通気を遮断して容器1 内の液面C1を静止させることができる(図6(イ)、図7(イ)に示した状態)

【0020】
このように計測作業直前に弁体153 を開き、計測直後に弁体153 を閉じれば、容器1 の手振れによって生ずる液面C1の誤表示を防げ、計測終了後においてもそのまま横置や携帯や保管ができて便利である。
【0021】
上記永久磁石体155 を横に移動させる手段としては、図3,図4(ハ)〜(ホ),図7(イ)〜(ハ)に示すように、ケース106 の上端部3 と下端部4 の内面間にわたって支持軸156 が立設され、その支持軸156 に二本の回転パイプ157a,157b が上下に重なるように差し込まれ、この回転パイプ157a,157b が支持軸156 の外周部で回転可能となっている。
【0022】
下段の回転パイプ157aの下端部側面に、支持板158 及び筒状ケース165(図3参照)を介して通液用永久磁石弁D1の永久磁石体155 が保持固定され、上段の回転パイプ157bの上端部側面に支持板158 及び筒状ケース165 を介して通気用永久磁石弁D2の永久磁石体155 が保持固定されている。また、下段の回転パイプ157aの上端部側面に通液用レバー159aが固定されており、上段の回転パイプ157bの下端部側面に通気用レバー159bが固定されている。そして両レバー159a,159b をケース106 外面から、共に一動作で動かせるように、その各々の先端部を近接させ並列させた操作面161 を設けている。
【0023】
上記両レバー159a,159b には一端がケース106 に支持された引張りコイルバネ160aが取り付けられており、図7に示すような作用をする。
すなわち図7(イ)に示すように両レバー159a,159b の操作面161 を引張りコイルバネ160aによりケース106 の前寄りに位置させることにより、永久磁石体155 をその磁力が弁体153 に作用しない位置に移動させることとなり、それにともなって弁体153 が図6(イ)に示すように、圧縮コイルバネ152 の反発力により通液穴133 及び通気穴139 を閉じた状態となる。
【0024】
次に図7(ロ)に示すように、両レバー159a,159b の操作面161 を人為的に指でケース106 の後寄りに押しやることにより、永久磁石体155 をその磁力が弁体153 に作用する位置に移動させることとなり、それにともなって弁体153 が図6(ロ)に示すように永久磁石体155 に引きつけられて通液穴133 及び通気穴139 を開いた状態となる。
【0025】
計測時、上記のように両レバー159a,159b を人為的に指で押した状態では、図7に示すように両レバー159a,159b をケース106 後寄りに押しやると支持軸156bに支持されたストッパー162 がレバー159aにより下に押し下げられ、両レバー159a,159b がストッパー162 のフック部163 の上を通過すると、ストッパー162 は取り付けられた引張りコイルバネ160bの反発力により上方定位置に復元し、更にそのフック部163 により上記両レバー159a,159b が引張りコイルバネ160aの反発力により、ケース106 の前寄りに戻ろうとする動きを止めそのまま保持するようになされている。
【0026】
そして、計測終了時にはストッパー162 の下側に設けた遮断ボタン164 を押し下げることにより両レバー159a,159b がフック部163 より外れ引張りコイルバネ160aの反発力によりケース106 の前寄りに、回転パイプ157a,159b を軸として回転移動し所定位置で停止するようになされている。この時には、上述したように永久磁石体155 の磁力が弁体153 に作用しないので、圧縮コイルバネ152 の反発力により通液穴133,通気穴139 共閉じた状態となる。
【0027】
図8は、一対の計測容器A1,A2 と巻取器45を組合わせた基本的構成の水準器を示したものである。
一対の計測容器A1,A2 は、上述した図1から図7にわたって説明したものであり、その構成は、上部に通気口6 を、下部に通液口5 を備え、その内部に基本水位線102 まで液体C を保有した透明もしくは一部透明で、上記液体C の上下動により計測に使用される部分が実質的に均等な横断面積を有する縦長筒形の容器1 、尚且つ上記通気口6 と容器1 の間を開閉するための、永久磁石体155 の磁力で作動する弁体153 を備え、更に上記通液口5 と容器1 の間を開閉するための、永久磁石体155 の磁力で作動する弁体153 を備えた上記容器1 と、該容器1 内の液体C の液面C1により水準差が計測できるように該容器1 に平行密着させて組合わされた計測用物差し2 を備えたケース106 、尚且つその物差し2 の機能に必要な部分が直方体の組み合わせ的形状を有するケース106 、尚且つその全長の1/2 の位置に基本水位線を印したケースとによって構成された計測容器(A1又はA2)が一対と、更に上記一対の計測容器A1,A2 を構成する一対の容器1 に備えられた通液口5 に接続され、上記容器1 内に保有する液体C が連通しうるようになされた、液体C を充填した連通管B とにより構成され静水の自由表面が水平となる原理を応用して物体の水準差の計測を行おうとするものである。
【0028】
図9(イ〜ハ)は図8に示した巻取器45の詳細図であり(イ)は正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は(イ)のf−f’断面図である。
巻取器45は支持ケース166 と巻取リール167 より構成されており、巻取リール167 にはセンターパイプ168 、調節コック169 、ワンタッチ受継手108 、巻取ハンドル170 が取り付けられている。また、計測容器A1と計測容器A2間と連通接続している連通管B は、その長さの中間部を巻取器45の巻取リール167 のセンターパイプ168 に接続され(図9(ハ)に示す連通管B1,B2 のように)巻取リール167 を経て、それぞれ計測容器A1及び計測容器A2に接続される。
【0029】
図10は図8に示した水準器を用いて計測を行った実施例であり一対の計測容器A1,A2 の液面C1が水準線nで静止しており、計測容器A1の液面C1と基本水位線102 の差が高さ寸法l1下り、計測容器A2の液面C1と基本水位線との高さの差が寸法l1上りになっており、その結果、この二点の計測点の水準差はH1 =l1×2であることが即座に算出できる。
【0030】
ところで、上述したように、この実施例では下げ振り37を設けることにより計測容器A1,A2 を垂直に保持しようとしているが、図14の計測容器A1,A2 の一部斜視図に示すように、ケース106 の前面に全方位水平器32を設ければ更に容易に垂直状態を計測することができる。
【0031】
この全方位水平器32は、この例ではケース106 の容器1 の下端に位置する部分を前方に突出させ、この上面に全方位水平器32を設けたものである。
この全方位水平器32は、計測容器A1,A2 を計測時垂直に保持するために用いられ、計測時に全方位水平器32の中の気泡32a が中心にくるように保持すれば、計測容器A1,A2 を自ずと垂直に保持することができる。また、この全方位水平器32を、計測容器A1,A2 に対して収納可能とするように構成してもよい。
【0032】
一方、計測作業中あるいは移動中に、計測容器A1,A2 内の液体C が通気口6 から流出しないように注意を払わなければならないという問題がある。
この対策としては、図6及び図15(イ)(ロ)の容器1 上部を示す拡大断面図に示すように、漏流防止弁150 を設けることにより防止できる。
【0033】
この漏流防止弁150 は、通気穴139 のすぐ下方に、中央部に球形弁10を保持した受皿11を水平に固定する。受皿11には、所定数の通気穴12を設け、計測時の通気を行う。また、球形弁10の真上位置には、球形弁10の直径より小さい円形の通気穴139 が位置している。そして、球形弁10の真下に支持軸17を設け、その支持軸17の下端に所定大の浮子18を取り付けており、支持軸17は受皿の中心に設けられた軸受部19により保持されている。なお、円形の通気穴139 の下面側に、軟質のパッキンを張り付けてもよい。また、球形弁10は液体C よりも比重の軽い材質、例えば中空の樹脂球,ゴム球などを用いる。
【0034】
このように構成した漏流防止弁150 は、計測時、液体C が容器1 内を上昇してくると、浮子18が液体C により浮き上がり、支持軸17を介して球形弁10を押し上げ真上の円形通気穴139 を塞いで通気を遮断して、液体C の上昇を防止する。
このようにすることにより、強い浮圧を得て通気を遮断することができ、液体の漏流を防止できる。
【0035】
また、この水準器が注意しなければいけないのが気泡の存在である。
図20は先の出願の第21図を示したものであり、水準器の計測容器A1,A2 内及び連通管B 内に侵入し滞留している気泡の除去装置である。これは、水準器に使用する液体C の補充用予備液を入れたポリ瓶132 を活用するものであり、小型ポンプ134,送液管135,還流管136,排気管137 を装着した特殊蓋138 を準備しておき、気泡抜き作業を行う時にこの特殊蓋138 をポリ瓶132 に取り付ける。
【0036】
そして、送液管135 の先端にはワンタッチ差込継手140 を取り付けてあり計測容器A2の気泡抜きワンタッチ受継手108 に挿入する。また、還流管136 の先端にも同じく差込継手140 を取り付けてあり計測容器A1の同じくワンタッチ受継手108 に挿入する。以上により液体の循環経路ができあがる。ポンプ134 を駆動すると図示した矢印の方向に液体C が循環し、保有水中の気泡が流されてポリ瓶132 内に排出されポリ瓶132 の排気口137 より大気中に排出される。
【0037】
しかし、この除去装置では循環ラインの気泡は除去できるがそれより上方(例えば継手、弁類の中)に滞留している気泡が抜けにくく、尚且つ気泡抜き作業の最終段階で行う容器1 内の液面C1を基本水位線102 に一致させる作業に手間がかかるという欠点を有している。
【0038】
例えば、図10に示した計測において連通管B や弁や継手中に侵入した気泡は滞留しており、それに気が付かず計測を行った場合には、気泡の作用により液面C1が正常な位置に静止せず、それよりも高い位置で静止するため正確な水準差を計ることができない。このような気泡の存在を調べる方法は、図8に示すように一対の計測容器を水平なる面上に立て、交互に上に持ち上げて水準差をつくり、その後水平なる位置にもどして基本水位線102 と液面C1が一致するかどうか調べれば確認できる。
【0039】
図11は上記の気泡を除去するための手段を示したものである。
まずこの水準器に使用する液体C の補充用予備液C を入れたポリ瓶132 を気泡除去用に活用する。そして、小型ポンプ134 、送液管135 、還流管136 、排気管137 を装着した特殊蓋138 を準備しておき、気泡抜き作業を行う必要が生じた時にその特殊蓋138 を通常の密栓と入れ替えてポリ瓶132 に装着する。そして先端にワンタッチの差込継手140 を有する送液管135 を巻取器45のワンタッチ受継手108 と接続する。また、還流管136 は中間で2系統に分岐し、それぞれその先端に備えたワンタッチ差込継手140 を計測容器A1及び計測容器A2に備えたワンタッチ受継手108 に差込み接続する。
【0040】
このようにして構成された気泡抜き装置を運転して以下のように水準器内の気泡を除去する。
巻取器45の調節コック169 を開きポンプ134 を運転することにより、ポリ瓶132 内の液体C が点線矢印の方向に流れて気泡と共にポリ瓶132 内に還流し、気泡は排気管137 より大気中に排出される。
【0041】
なお、ポリ瓶132 内に還流する液体C の流入の衝撃による気泡の発生とポンプによる気泡吸引を防ぐために網や間仕切等の衝撃緩衝部材172 を備えている。また、この気泡抜き作業を行う場合には、計測容器A1,A2 の通液用レバー159aのみ操作して図7(ハ)に示すように通液用永久磁石弁D1のみを開き通気用永久磁石弁D2は閉じておくようにする。
【0042】
以上の操作よって、計測容器A1,A2 中の液体C は図6(ハ)に示すように、気泡を残留させない流れとなり、その排出を容易に行える。
気泡の除去が完了すれば、調節コック169 を一旦締めてからポンプ134 を停止し、その後上記調節コック169 を容器1 内の液体C が基本水位線102 まで減少するように、少しづつ開いて調節しつつ液抜きを行う。
【0043】
そして調節の最後に、容器1 内の液面C1と基本水位線102 の間に微妙な差が残った場合には、以下に説明する計測容器A1,A2 に装着した基本水位調節弁101 により一致させる。
この基本水位調節弁101 は、上記の気泡抜き作業時の液面C1の調節以外に、環境気温の影響による計測容器A1,A2 や連通管B の膨張や収縮によって生ずる基本水位線101 と液面C1の微妙なずれを調節する機能も備えている。
【0044】
この基本水位調節弁101 は、図3あるいは図6及び図16の拡大断面図に示すように、容器1 の下方に設けたピストン式調節器であり、シールリング51を有するピストン129 を連通管ヘッダー48内に挿入し、ピストン129 に接続された外ネジを有するロッド130 の端部にハンドル131 を設けたものである。そして、このハンドル131 を回すことによりピストン129 が前後に動き、液体C の内容積を調節する。なお、この基本水位調節弁101 はダイヤフラム式調節器でもよい。なお、一対の計測容器A1,A2 の基本水位線102 とその容器1 内の液面C1を一致させる作業は、図8に示すような水平な台の上で行うことが望ましい。
【0045】
図12は直線板状物差し111 を用いた図面であり、先の出願の第4図(ニ)で記載説明したものと基本的には同じ構造で、ケース106 に設けた支持枠114 に直線板状物差し111 を差し込んで、所定の位置に設けた締結金具116 により固定するものである。そして、本考案では、支持枠114 に差し込み延長尺として用いる直線板状物差し111 を、その撓みを防ぐためにL型のアングル状にしており、それに伴って支持枠114 もL型の枠を用いている。なお、この場合のL型の直線板状物差し111 に印される寸法目盛り2aの上端部を零として下方に行くに従ってその数字が増えて行くものと、逆に下端部を零にして上方に行くに従ってその数字が増えて行くものと、二通り並列して印すことが望ましい。
【0046】
図13は巻尺式延長尺105 を用いた図面であり、装着用フック171 を有する巻尺式延長尺105 を計測容器A1,A2 の上下両面に備えた取付溝148 に装着する状態を示したものである。
巻尺式延長尺105 は直方体のケース106bにより形作られており、そのケース106bそのものが装着する計測容器A1,A2 に印された寸法目盛り2aと同じ尺度(例えば mm, in 等)の継続数字が印された延長尺であり、尚且つ巻尺式延長尺105 より引き出した物差し2 を所定位置で仮固定保持するためのストッパー109 を備えたものである。このストッパー109 は、図17(イ)(ロ) に示す断面図のように、所定大のガイド板110 を設けて受台の機能を持たせることにより延長尺105 の延長方向が計測容器A1,A2 の延長線と平行に支持固定することができる。また、このように計測容器A1,A2 に巻尺式延長尺105 を着脱できる構造にすれば、小さい水準差の計測を行う場合には巻尺式延長尺105 を必要とせず、必要に応じて装着できるため取扱い易く経済的である。
【0047】
一方、上記直線板状物差し111 は計測が正確に行え、また、図18の側面図に示すように、計測を1名で行うために計測容器A2を基本水準設定用液槽56として固定する際の支持柱としても活用できる利点を有している。これは、直線板状物差し111 の下端部をアジャスター付ベースプレート119 の差込み穴120 に差込み、締付金具116 で固定した後計測容器A2を所定の高さにスライドさせて締付金具116 で固定した例を示している。しかし、製作できる長さや携帯できる長さには限度がある。
【0048】
それに較べて巻尺式延長尺105 は、その正確さにおいて劣るものの大きな水準差の計測が可能であり、また携帯するのに小型で便利であり、両方を併用し状況に応じて適宜使い分ければ便利である。
【0049】
【考案の効果】
本考案は上述したごとく構成されているので、一対の計測容器あるいは容器に設けたケースの計測用物差しを用いることにより簡単な操作で手軽に水準差を計測することができ、また、計測と同時に永久磁石体の磁力で弁体を作動させることにより、即座に容器と通気口及び通液口との間を閉鎖することができるので、計測後、計測容器を移動させたり、傾斜させたりしても計測時の液体量が保持されるので、正確な水準差を確実に保持し計測することができる。
【0050】
また、1名でも容易に水準差を計測することもでき、更に、計測容器の長さが短いので携帯や保管が便利であるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の水準器を示す図面であり(イ)は左側面図,(ロ)は正面図である。
【図2】同水準器を示す図面であり(イ)は右側面図,(ロ)は背面図である。
【図3】図1(ロ)のa−a’断面図である。
【図4】(イ)は図2(イ)の平面図,(ロ)は図2(イ)の底面図,(ハ)は図2(イ)のb−b’断面図,(ニ)は図2(イ)のc−c’断面図,(ホ)は図2R>2(イ)のd−d’断面図である。
【図5】図2(イ)のe−e’断面図である。
【図6】(イ),(ロ),(ハ)は、容器内の液体の移動状態を示す断面図である。
【図7】(イ),(ロ),(ハ)は、内部機構を透視した部分拡大斜視図である。
【図8】巻取器を含む配置図である。
【図9】巻取器を示す図面であり、(イ)は正面図,(ロ)は側面図,(ハ)は(イ)のf−f’断面図である。
【図10】水準器の使用状態を示す配置図である。
【図11】気泡除去循環経路を示す配置図である。
【図12】直線板状物差しを用いた例を示す斜視図である。
【図13】巻尺式延長尺を用いた例を示す斜視図である。
【図14】全方位水平器を示す斜視図である。
【図15】(イ)(ロ)は漏流防止弁の作動を示す側面視における断面図である。
【図16】基本水位調節弁の側面視における拡大断面図である。
【図17】(イ)はストッパーを示す側面視における断面図,(ロ)は同平面視における断面図である。
【図18】基本水準設定用液槽として使用した状態を示す側面図である。
【図19】従来の水準器を示す図面であり、(イ)は正面図,(ロ)は別な例の正面図,(ハ)は別な例の断面図である。
【図20】従来の気泡除去循環経路を示す配置図である。
【符号の説明】
A1…計測容器
A2…計測容器
B,B1,B2 …連通管
C …液体
C1…液面
D1…通液用永久磁石弁
D2…通水用永久磁石弁
1 …容器
2 …物差し
2a…寸法目盛り
3 …上端部
4 …下端部
5 …通液口
6 …通気口
45…巻取器
101 …基本水位調節弁
102 …基本水位線
105 …巻尺式延長尺
106,106b…ケース
111 …直線板状物差し
133 …通液穴
139 …通気穴
150 …漏液防止弁
151 …弁座
153 …弁体
155 …永久磁石体
159a…通液用制御レバー
159b…通気用制御レバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 上部に通気口(6) を備え、下部に通液口(5) を備え、該通気口(6) と通液口(5) 間を連通してその内部に液体(C) を保有した透明もしくは一部透明の容器(1) と、該容器(1) と上記通気口(6) 及び上記通液口(5) との間を開閉するための、永久磁石体(155) の磁力で作動する弁体(153) と、上記容器(1) に平行密着させて組み合わされた計測用物差し(2) を備えたケース(106) とによって構成すると共に全長を必要最小限に縮小した一対の計測容器(A1),(A2) を設け、該一対の計測容器(A1),(A2) に設けられた通液口(5) 間を連通管(B) により連通させたことを特徴とする水準器。

【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】実開平6−4612
【公開日】平成6年(1994)1月21日
【考案の名称】水準器
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−82731
【出願日】平成3年(1991)10月11日
【出願人】(592019534)株式会社三富商店 (1)