説明

水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤

【技術課題】
帯電防止性能及び無臭性で密着性の高い水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤を提供する。
【解決手段】
アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸とアクリル酸(メタを含む)モノマーとの共重合体を配合して成るアルカリ塩から成る水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤であって、これに固形分重量比4〜6%の酢酸亜鉛または酢酸マグネシウムを添加して水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤に関し、更に詳しくは、カチオン型帯電防止剤に劣らない帯電防止性能を発揮することができると共に基材への密着性に優れ、カチオン型特有のアミン臭のない水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子帯電防止剤には特許文献1、2に紹介されているカチオン型のものと非イオン型及びアニオン型があり、帯電防止性能としては非イオン型≦アニオン型<カチオン型の順に大きいと評価されていて、例えばカチオン型の表面電気抵抗値はE6〜E10Ω/□の性能を発揮することから、電子材料、塗装剤、接着剤等の帯電防止剤としての用途に多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226866号公報
【特許文献2】特開2009−035659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カチオン型帯電防止剤は、帯電防止性能は高いものの、耐熱性、カチオン系特有のアミン臭、変色性などの問題があることから、食品包装材などの用途には使用されていない。そこで、特に食品包装材などの分野においては、臭気の問題のないアニオン型の帯電防止剤が使用されているが、これらの帯電防止剤は、上記のようにカチオン型に比較して帯電防止性能が劣るという欠点がある。
【0005】
また、アニオン型帯電防止剤は、プラスチックフィルムや紙類にコートしたときに、密着性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、カチオン型と同等の帯電防止性能を有し、臭気がなく、コートしたときの密着性が高い水溶性アニオン型の帯電防止塗布剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤において、アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸とアクリル酸(メタを含む)モノマーとの共重合体を配合してなるアルカリ塩からなることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によると、カチオン型と同等の帯電防止性能を発揮することができると共に臭気もないことから、食品包装材としての用途に適している。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤において、請求項1に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤に固形分重量比の4〜6%の酢酸亜鉛または酢酸マグネシウムを本塗布剤水溶液に添加してなることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によると、表面抵抗値をE8乃至E10Ω/□まで高めることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤において、請求項1に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤の固形分重量比の5〜10%のポリビニルアルコールを請求項2の本塗布剤に添加してなることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止剤において、アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸とアクリル酸(メタを含む)との重量配合比率を20〜80乃至40〜60に設定し、且つ分子量を1万〜10万となし、水溶液の固形分濃度を20重量%に設定してなることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によると、実用的に使い勝手が良く、最も良好な帯電防止性能と無臭性及び密着性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電子材料、塗布剤、接着剤は勿論のこと、特に食品包装材のように、臭気を嫌う物品の包装材等に有効な帯電防止塗布剤として、水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤を提供する。
【0015】
本発明の水溶性アニオン型高分子がプラスチックフィルムや紙類への密着性に優れた特性を持つ基本構造として、アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸(ATBS)とアクリル酸(メタを含む)(AA)モノマーとの共重合体のアルカリ塩であることを見出した。
【0016】
なお、本発明の基本重合物にカチオン型帯電防止剤の表面電気抵抗値と同程度の性能を有する、すなわち、E8乃至E10Ω/□の水溶性高分子組成物とするために、少量の酢酸金属塩、特に酢酸亜鉛あるいは酢酸マグネシュウムを本水溶液に添加するのが望ましく、表面電気抵抗値としてE8乃至E10Ω/□の性能値を出すことができた。
【0017】
ここで、添加する酢酸金属塩の量は、4〜6%の範囲が望ましく、4%以下であると表面電気抵抗値が大となり、カチオン型に比べて劣る傾向となり、6%以上であると水溶液塗布液が溶解不十分で半透明となる。
【0018】
更に、コート基材(プラスチックフィルムや紙類)への本発明のコート液の濡れ性とタック性の改善のために少量のポリビニルアルコール水溶液の添加が望ましい。
【0019】
ここで添加するポリビニルアルコール水溶液は、5〜10%が望ましく、5%以下では塗布面のタック性改善が十分でなく、10%以上の添加では塗布液がゲル化する。
【0020】
上記基本共重合物組成モノマーのATBSモノマーとAAモノマーとのモノマーの重量比率は20/80〜40/60で、分子量=1万〜10万の範囲で、水溶液の固形分濃度=20重量%の高分子水溶液が望ましい。
【0021】
そして、この比率及び分子量以下及び以上であると、目的とする帯電防止性能を発揮することができないばかりか、水溶液としての性状が悪くなり、実用的な塗布性能を悪化させる。
【0022】
また、上記高分子水溶液に対して固形分濃度比3〜5%の酢酸亜鉛水溶液を添加混合し、高分子混合水溶液を3%濃度の水溶液に調製した。この水溶液を12ミクロンのPETフィルムに塗布した乾燥塗膜の電気抵抗値は7.0XE8〜4.0XE9Ω/□(43%RH、21.7℃)であった。
【0023】
上記の高分子調製水溶液はプラスチックフィルム例えばPETフィルムに対して低濃度水溶液の塗膜で本基本高分子の粘性によるタック性と濡れ性によるハジキ現象が生じる傾向がある。これらの傾向の改善策としてのポリビニルアルコールの添加量は、高分子水溶液の固形分に対して5〜10重量%の固形分量で十分であった。
【0024】
この重量%以下であると改善効果が小さく、以上であっても改善効果には殆んど変化が認められない。
【実施例1】
【0025】
本発明のアクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸(ATBS)とアクリル酸(メタを含む)(AA)モノマーとの共重合体のアルカリ塩である水溶性アニオン型(以下単に「アニオン型」という。)高分子のナトリウム塩で分子量がそれぞれ1万と10万のものを選びそこへ酢酸亜鉛とアニオン変成したポリビニルアルコールと水を加え固形分3重量%でPH8の水溶液を調製した(表1)。
【0026】
【表1】

【0027】
配合液を各種合成樹脂フィルムにメーヤーバー(R.D.S.03 Webster N.Y.)にて塗布し乾燥し塗膜の接着力と帯電防止性能を温度24.4℃、36%RHの環境下で評価した(表2)。評価基準:◎=良好 ○=良 ×=効果弱
【0028】
【表2】

【0029】
尚、表面固有抵抗値の測定はelectro−tech systems,inc製の測定器 Model 860を使用した。
【0030】
同環境下で摩擦帯電圧を測定した。測定方法は、各種フィルムの塗布、未塗布表面を毛織物で約300mm間を10往復擦摩し直後に測定器より100mm離した位置にフィルムを固定し測定した。比較には当該配合液を塗布しない各種フィルム(ブランク)を用い同様の測定方法で評価した(表3)。測定器は日本スタテック株式会社製静電気測定器SV−511を使用した。
【0031】
【表3】

【0032】
表3中のPLAはポリ乳酸樹脂フィルムである。
【実施例2】
【0033】
本発明のアクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸(ATBS)とアクリル酸(メタを含む)(AA)モノマーとの共重合体のアルカリ塩である水溶性アニオン型高分子のナトリウム塩で分子量がそれぞれ1万と10万のものを選びそこへ酢酸亜鉛とカルボン酸変成したポリビニルアルコールと水を加え、更に紙に噴霧塗布する際に塗布ムラを確認する目的で食用色素の水溶液を加え固形分1%でPH8の水溶液を調製した(表4)。
【0034】
【表4】

【0035】
洋紙としてA4サイズコピー用紙を、和紙として星高製紙株式会社製の特選清書用「吉野」を使用した。各々の紙20枚を横5枚×縦5枚、突き合わせた状態で隙間無く並べ、食用色素で緑色に着色した上記の配合液を噴霧器でムラなく塗布し直ちに紙重量を計測し塗布量(固形分重量/m)を算出した。塗布後2日間室内で自然乾燥したところ塗布面はサラサラした状態に仕上がった。尚、各々の紙の面積は、
洋紙 ――― 幅21.0cm×長さ29.7cm = 623.7cm
和紙 ――― 幅24.2cm×長さ33.3cm = 804.7cm
で、20枚の各々の塗布固形分量は面積換算で別表(表5、表6)の値となった。
【0036】
また、この塗布剤紙の場合、紙粉の発生は認められなかった。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
乾燥後の各々の紙を22.2℃、47.6%RHの環境に2時間放置した。塗布面の表面固有抵抗値は別表(表7、表8)の値となった。
【0040】
【表7】

【0041】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸とアクリル酸(メタを含む)モノマーとの共重合体を配合してなるアルカリ塩からなる水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤。
【請求項2】
請求項1に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤に固形分重量比の4〜6%の酢酸亜鉛または酢酸マグネシウムを本塗布剤水溶液に添加してなる水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤。
【請求項3】
請求項1に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤の固形分重量比の5〜10%のポリビニルアルコールを請求項2の本塗布剤に添加してなる水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤。
【請求項4】
アクリルアミド−ターシャルブチルスルフォン酸とアクリル酸(メタを含む)との重量配合比率を20〜80乃至40〜60に設定し、且つ分子量を1万〜10万となし、水溶液の固形分濃度を20重量%に設定してなる請求項2又は3に記載の水溶性アニオン型高分子帯電防止塗布剤。

【公開番号】特開2011−231230(P2011−231230A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103426(P2010−103426)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(503149071)
【出願人】(593031849)
【Fターム(参考)】