説明

水田の雑草生育防止装置

【課題】 水田に雑草が生えることを防止する為に土壌表面に点在する種子を地中に埋没させる雑草生育防止装置の提供。
【解決手段】 フレーム1の前方には複数の鋤2,2・・を等間隔で取付けると共に該鋤には前回転羽根11と後回転羽根12を所定の間隔をおいて回転自在に軸支し、そして前回転羽根及び後回転羽根には複数枚の羽根14,14・・を回転体16から外方向へ湾曲して延ばし、そして、フレーム1の後方には上記鋤2,2・・の間の空間位置に複数本のクサリ3,3・・を吊設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水田に生えようとする雑草を抑制することが出来る水田の雑草生育防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田は米を生産するものであるが、稲の他に多くの雑草が生え易い環境にある。近年では整地した水田に田植え機によって苗が植えられ、苗の生育と共に土の中に混在している種から雑草が発生する。そこで、この雑草が生えないように多量の除草剤を散布しなくてはならない。除草剤を散布するならば、雑草の生育は防止出来るが、非常に毒性の強い薬剤であって、水田に散布された除草剤は必然的に苗が吸収し、ひいては成長して実った米にも含有される。
【0003】
このような米を長年にわたって食することは健康を害することは言うまでもない。勿論、除草剤を使うことなく生育した雑草を手作業にて除去することは可能であるが、大変な重労働となってしまう。特に、最近では農業に携わる人の年齢は高くなっており、老人ともなれば手作業での雑草除去は困難に近い。
【0004】
近年では、田植え前の水田の均し、(整地)はトラックターに乗って行い、田植えは乗用田植え機が使用され、稲刈りはコンバインが使われている。このように、農作業を顧みると、水田に生える雑草の除去作業が大きな問題として残されている。勿論、水田に生育する雑草を除去することが出来る除草機も幾つか存在している。
【0005】
例えば、特開2004−180628号に係る「水田の除草装置」は、従来の慣行農法による水田の除草作業は、除草爪によって除草した雑草を水中に浮遊させて枯死する方法を取っていたが、この除草方法では一旦水中に放り出されて浮遊している雑草が、沈下して土壌表面に活着して枯死をまぬがれて成長する課題があった。そこで、前進に伴って水田土壌から除草した雑草を、水中に浮遊させて枯死する方式の除草を可能とした除草機と、水田に米糠を散布して水田土壌の表面に米糠による還元層を形成するための米糠散布機とをトラクタに搭載して構成している。
【0006】
また、特開2003−230303号に係る「水田除草機」は、雑草を除草するときに、次に除草する隣接部の植付苗を押し倒したり、又は埋没させることを防止するものである。そこで、左右へ揺動移動して雑草を除草する左右揺動ツース式除草装置と、回転して除草する回転ドラム式除草装置とは、前後に並設すると共に、該回転ドラム式除草装置の側方部の左右両側には、左右へ揺動移動して雑草を除草する揺動ツース装置を設け、また左右揺動ツース式除草装置は上下調節可能な構成としている。
【0007】
実用新案登録第3168458号に係る「条間除草機」は、水田の除草を簡便に行うことができ、条間に生えた雑草のみを機械的に除草することができる条間除草機である。そこで、動力源を伝達されて回転する回転ギア部分に、コの字型の形状をし、その両先端を下向きに装着した除草刃部と、除草の飛散防止と稲苗の保護のための推進保護カバー部と、浮力を推進できる形状をした安定板部とを有している。
【0008】
【特許文献1】特開2004−180628号に係る「水田の除草装置」
【特許文献2】特開2003−230303号に係る「水田除草機」
【特許文献3】実用新案登録第3168458号に係る「条間除草機」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、水田に生える雑草を除去する為の除草機は色々知られている。また、この他にも各種除草機が存在しているが、雑草が生え易い土壌環境にある水田から雑草の生育を阻止することは容易でない。本発明はこのような土壌環境の水田から雑草の発育を出来る限り抑えることが出来る除草機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
田植えをした水田には一定間隔で苗が植えられ、苗が植えられている条部と苗が植えられていない条間とに区別する場合、雑草は上記条間はもとより、条部に植えられている苗の周囲にも雑草は生えて生育する。本発明では水田に生えて生長した雑草を除去するのではなく、雑草が生えないように作用する雑草生育防止装置である。すなわち、水田の土壌に混在している種子から雑草が生える前段階で本装置を使用して雑草の生育を抑えることが出来る。
【0011】
そこで、本発明の雑草生育防止装置は、苗が生育する条間には回転羽根が配置され、条部にはクサリが配置される。本発明の雑草生育防止装置は上記回転羽根とクサリを備えていて、苗が植えられている条部に沿って移動することが出来、この移動と共に回転羽根が回転して水田の土壌表面を押圧し、クサリは土壌表面に沿って滑ることが出来る。
【0012】
ここで、雑草生育防止装置全体の具体的な構造は限定せず、一般的には田植え機やトラックターのように作業者が乗って運転することが出来るようにしている。そして、上記回転羽根及びクサリは交互に配置され、水平に延びるフレームに取付けられている。そして、アームは揺動して先端が上昇することが出来る構造と成っている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る雑草生育防止装置は、回転羽根とクサリを取付けていて、移動に伴って回転羽根は条間を回転しながら移動し、クサリは条部を滑りながら移動する。本発明の雑草生育防止装置は大きく生育した雑草を除去するのではなく、雑草として生育する前の段階で使用される。従って、土壌表面に点在する種子は土壌に埋められて発芽することはない。そして、回転羽根は前方に位置し、クサリは後方に配置されることで互いに一部が重複してほぼ均一に均される為に、水田全面での種子の発芽が抑制される。
【0014】
そして、クサリは苗が生育している条部を滑るように移動するが、苗を倒したり傷つけることなく、しかも全面をほぼ均一に滑り移動する為に、すなわち条部に沿って植えられている苗間に存在する種子もクサリの重みによって地中に埋められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の雑草生育防止装置の概略図。
【図2】前回転羽根と後回転羽根を取付けた鋤の具体例。
【図3】フレームに鋤とクサリを取付けた場合。
【図4】本発明の雑草生育防止装置を装着したトラックター。
【図5】本発明の雑草生育防止装置を装着したトラックター。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の雑草生育防止装置の主要部を示す実施例である。同図の1は長方形をしたフレームを表し、このフレーム1に回転羽根を備えた鋤2,2・・・とクサリ3,3・・・が取付けられている。ここで、鋤2,2・・・は上記フレームの前側に等間隔で配置され、クサリ3,3・・・は後側5に等間隔で吊設されている。
【0017】
そして、後側に吊設されているクサリ3,3・・・は、上記前側に取着している鋤2,2・・・の間に位置している。また、横方向へ細長く延びているフレーム1は、前桟4と後桟5を有し、しかも該フレーム1は3分割されていて、中央フレーム部6と両側フレーム部7,7とから成り、両側フレーム部7,7は中央フレーム部6の先端に継手8,8・・・を介して連結している。従って、両側フレーム部7,7は継手8.8・・・を介して上方へ旋回して持ち上げることが出来る。
【0018】
すなわち、フレーム1は横に長い為にトラックターに装着した場合、該トラックターから両外側へ大きく突出して延びる為に、使用しないときには上方へ持ち上げておく方が保管スペースが小さくて便利である。ここで、鋤2の取付け構造は限定しないが、一般には前桟4と後桟5に掛架した取付け部材にネジ止めにて取着されている。一方のクサリ3は後桟5に吊設されている。
【0019】
図2は回転羽根を取付けている鋤2を示す具体例である。同図に示すように鋤2は前方に水田の土壌表面を滑るように移動する鋤部9を有し、鋤部9の両側から後方へ側桟10,10を延ばし、両側桟10,10に跨って前回転羽根11と後回転羽根12が所定の間隔をおいて軸13,13を介して回転自在に取付けられている。そこで、鋤2が水田の土壌表面を移動するならば、前回転羽根11及び後回転羽根12は回転することが出来る。また、鋤部9は側桟10,10の先端に設けた軸15,15を基点として揺動可能と成っている。
【0020】
上記前回転羽根11及び後回転羽根12には複数枚の湾曲した羽根14,14・・・が軸13を中心として回転する回転体16の外周から湾曲して延びているが、該羽根14の湾曲方向は前・後回転羽根11,12の回転に伴って水田の土壌表面を押圧することが出来る形状と成っている。図2の場合、鋤部9が前方と成って移動する訳であり、前回転羽根11及び後回転羽根12は鋤2が移動する際には反時計方向に回転する。
【0021】
従って、回転体16から湾曲して延びる羽根14,14・・・は土壌表面から地中に食込み、土壌表面に点在して発芽しようとする種子を地中に埋没させることが出来る。その為に、回転体16の外周から湾曲して延びる羽根14,14・・・は土壌表面を均等に押えることが出来るように、その位置は交互に配置されている。すなわち、前回転羽根11が少なくとも1回転することで鋤2の幅に相当する水田土壌表面を均等に押圧して地中に食込むことが出来るようにしている。
【0022】
そして、該鋤2には前回転羽根11と後回転羽根12を配置し、しかも後回転羽根12の羽根14は幅広としている。従って前・後回転羽根11、12にて水田の土壌表面に点在している種子はほぼ全て地中に埋没することになり、その結果、発芽は阻止される。ところで、前記図1に示しているように、フレーム1に装着している鋤2,2・・・の間には横幅寸法Mの空間17が存在している。
【0023】
この空間17の領域では前回転羽根11及び後回転羽根12が通過しない為に、鋤2が通過した後をクサリ3が通過する。横幅寸法Mの空間17より幅広として後桟5に複数本のクサリ3,3・・・を吊設している。クサリ3は鉄製で重く、水田土壌表面を滑るように移動することで、表面に点在する雑草の種子は地中に埋没する。その為に、クサリ3,3・・・の長さは、その下端部が土壌表面に横たわることが出来る長さと成っている。
【0024】
ところで、図1のようにフレーム1に取付けた鋤2,2・・・、及びクサリ3,3・・・は水田の土壌表面を滑るように移動することが出来、ここで、水田に生育している苗の間を各鋤2,2・・・が通過する。すなわち、苗が鋤2,2・・・によって倒れないように空間17,17・・・が設けられている。そして、後方に吊設しているクサリ3,3,3・・・は苗が生育している条部を通過する。クサリ3,3・・・はジグザグして屈曲及び湾曲することで、苗に絡まるように周りを滑り移動することが出来、苗周りの種子を地中に埋没させることが出来る。
【0025】
図3はフレーム1に取付けられている鋤2,2・・・とクサリ3,3・・・を示している。このように、先ず鋤2,2・・・が通過することで土壌表面に点在する種子を地中に埋没させ、鋤2,2・・・が通過しない領域ではクサリ3,3・・・が土壌表面を滑るように移動することで点在する種子は地中に埋没する。ところで、鋤2,2・・・、及びクサリ3,3・・・を取付けたフレーム1はトラックターに装着することが出来る。
【0026】
トラックターの具体的な形態は限定しないが、トラックターに装着することで作業者はトラックターに乗って鋤2,2・・・、及びクサリ3,3・・・を土壌表面を滑らすことで雑草を抑えることが可能である。ただし、雑草が生育した状態ではなく、種子が発芽すえ手前の状態、又は発芽間際であってまだ雑草が小さい状態のときに使用することで水田に雑草が生えなくなる。
【0027】
図4、図5はフレーム1をトラックターに装着した具体的な実施例を示しめしている。このトラックターは前方に1個の小さい車輪17を有し、後方には2個の大きな車輪18,18を備えている。そして、後方には椅子が設けられ、作業者はこの椅子に座って運転することが出来る。
【符号の説明】
【0028】
1 フレーム
2 鋤
3 クサリ
4 前桟
5 後桟
6 中央フレーム部
7 側フレーム部
8 継手
9 鋤部
10 側桟
11 前回転羽根
12 後回転羽根
13 軸
14 羽根
15 軸
16 回転体
17 車輪
18 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に雑草が生えることを防止する為の雑草生育防止装置において、フレームの前方には複数の鋤を等間隔で取付けると共に該鋤には前回転羽根と後回転羽根を所定の間隔をおいて回転自在に軸支し、そして前回転羽根及び後回転羽根には複数枚の羽根を回転体から外方向へ湾曲して延ばし、羽根の湾曲方向は鋤が前進した際に回転羽根が回転することで水田の土壌表面に点在する雑草の種子を押圧して地中に埋没させる方向とし、そして、フレームの後方には上記鋤の間の空間位置に複数本のクサリを吊設し、鋤の前進移動に伴って水田の土壌表面を滑ることで表面に点在する雑草の種子を地中の埋没させることを特徴とする水田の雑草生育防止装置。
【請求項2】
上記フレームは中央フレームの両側に側フレーム部を継手を介して連結し、不使用時には両側フレーム部を該継手を介して屈曲して上方へ持ち上げることが出来るようにした請求項1記載の水田の雑草防止装置。
【請求項3】
鋤は先端に鋤部を有し、鋤部から後方へ側桟を延ばすと共に両側桟に跨って前回転羽根と後回転羽根を回転自在に取付けた請求項1、又は請求項2記載の水田の雑草生育防止装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate