説明

水田水位管理装置

【課題】水田の水位を管理する、消費電力が低減された水田水位管理装置の提供。
【解決手段】水田Fの水位を測定する水位測定手段12によって所定の時間間隔をもって計測した水位の差を算出する水位差算出手段32と、水位差算出手段32によって算出した水位差と前記所定の時間間隔とに基づいて水田Fにおける水位の増加率を算出する水位増加率算出手段33と、水位増加率算出手段33によって算出された水位の増加率と、水位測定手段12で測定した水位と目標水位との差とに基づいて、水位測定手段12によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する時間算出手段34とを有し、時間算出手段34によって算出された時間間隔の経過時に水位測定手段12によって計測し、この計測された水位が目標水位以上であるときに、給水制御手段31により水田への給水を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田の水位を管理する水田水位管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水田の水位管理に要する労力を低減することなどを目的として、水位管理を自動的に行なう装置に関する技術が、種々提案されている。かかる技術は、例えば〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕等において開示されており、これらは何れも、水田の水位を感知する手段を有し、この手段の感知に基づいて、水田への給水を制御するようになっている。
【0003】
一般に、このような制御を行なうには、電源を必要とするが、通常は制御に大きな電力が要らないこと、水田が商用電力供給地域外にある場合などを考慮して、電源として電池を用いることが多い。電池としては、乾電池、太陽電池等の電池が挙げられるが、コストの面からは、乾電池が適している。
【0004】
しかし、上述のように、制御に大きな電力を要しないとはいえ、乾電池を使用した場合、これが消耗して制御を行うことができなくなるようなことがあっては、水田の水位管理に要する労力の低減という、水田の水位管理の自動制御の本来の目的を達することができない。乾電池の消耗によって制御不能に陥る可能性がある場合には、乾電池の消耗状態を管理しなければならず、乾電池が消耗したときには交換する必要があるためである。
よって、かかる目的の達成には、少なくとも乾電池が1シーズンの間、交換することなく使用できるように、消費電力を極力抑制しなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−163935号公報
【特許文献2】特開平9−9800号公報
【特許文献3】特開平8−56504号公報
【特許文献4】特開2004−280743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、例えば上述の〔特許文献1〕、〔特許文献2〕に記載されているように、従来の装置においては、水田の水位を測定するタイミングが10〜30分の間隔で設定されているため、これでは、電源として乾電池を使用した場合には、1シーズン終了前に乾電池が消耗してしまうこともあり得る。よってかかる装置では、その本来の目的を達することができない可能性がある。また、乾電池の交換にはコストがかかる。さらに、電源として商用電力を使用する場合であっても、消費電力は極力抑制することが好ましいことはいうまでもない。
【0007】
本発明は、水田の水位を管理する、消費電力が低減された水田水位管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明は、水田の水位を測定する水位測定手段と、水田への給水を制御する給水制御手段と、前記水位測定手段によって所定の時間間隔をもって計測した水位の差を算出する水位差算出手段と、前記水位差算出手段によって算出した水位差と前記所定の時間間隔とに基づいて当該水田における水位の増加率を算出する水位増加率算出手段と、前記水位増加率算出手段によって算出された前記増加率と、前記水位測定手段で測定した水位と目標水位との差とに基づいて、前記水位測定手段によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する時間算出手段とを有し、前記時間算出手段によって算出された時間間隔の経過時に前記水位測定手段によって計測し、この計測された水位が目標水位以上であるときに、前記給水制御手段により水田への給水を停止する水田水位管理装置にある。
【0009】
また、前記水位増加率算出手段によって前記増加率の初回の算出を行なうときには、前記所定の時間間隔は、予め定められたものであることとした。
【0010】
また、前記水位増加率算出手段によって前記増加率の2回目以降の算出を行なうときには、前記所定の時間間隔は、前記水位測定手段によって新たに水位の測定を行った時と、前記水位測定手段によって過去に水位の測定を行った時との時間間隔であることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水田の水位を測定する水位測定手段と、水田への給水を制御する給水制御手段と、前記水位測定手段によって所定の時間間隔をもって計測した水位の差を算出する水位差算出手段と、前記水位差算出手段によって算出した水位差と前記所定の時間間隔とに基づいて当該水田における水位の増加率を算出する水位増加率算出手段と、前記水位増加率算出手段によって算出された前記増加率と、前記水位測定手段で測定した水位と目標水位との差とに基づいて、前記水位測定手段によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する時間算出手段とを有し、前記時間算出手段によって算出された時間間隔の経過時に前記水位測定手段によって計測し、この計測された水位が目標水位以上であるときに、前記給水制御手段により水田への給水を停止するので、水位測定手段による測定回数を低減し、消費電力を低減することができる水田水位管理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にかかる水田水位管理装置では、目標水位との誤差が大きくなることを防止するために水位の計測を短時間の間隔で行わなければならなかった従来の装置に比べて、水位測定手段による水位の測定を、水田の水位が目標水位に達したと推定される適切なタイミングで行う。よって、水位測定手段による測定回数が低減され、消費電力が低減されるから、たとえばこの電源として乾電池を用いた場合にも電池の消耗が低減され、制御不能に陥る可能性が極めて小さくなっている。また、電源が乾電池である場合にはその交換頻度が減少し、水田の水位管理に要する労力、環境への負担が大きく低減される。
【0013】
電源が乾電池である場合のみならず消費電力が低減されるので、ランニングコストが削減され、また環境への負担軽減に配慮した装置となる。
水位測定手段による水位の測定を、水田の水位が目標水位に達したと推定される適切なタイミングで行うので、目標水位との誤差が小さくなり、給水が過剰に行われることが防止されて水田に供給される水の無駄が抑制される。
【0014】
また、本発明にかかる水田水位管理装置では、水位増加率算出手段によって水位の増加率の初回の算出を行なうときには、水位を測定する所定の時間間隔は、予め定められたものとする。
【0015】
したがって、かかる所定の時間間隔を、出荷前に、またはユーザーにより、適切に設定することで、かかる初回の算出を行なう際に既に目標水位を超えてしまうことが防止され、給水が過剰に行われることが防止されて水田に供給される水の無駄が抑制される。
【0016】
またかかる所定の時間間隔を、出荷前に、またはユーザーにより、適切に設定することで、水田の表面の凹凸に起因する水位の増加率の測定誤差が低減され、計算される水位の増加率と実際の水位の増加率とが大きく異なることが防止される。よって、水位測定手段による水位の測定回数が抑制され、消費電力が低減され、よって上述と同様に水田の水位管理に要する労力、環境への負担、ランニングコスト等が低減される。
【0017】
また、本発明にかかる水田水位管理装置では、水位増加率算出手段によって水位の増加率の2回目以降の算出を行なうときには、水位を測定する所定の時間間隔は、水位測定手段によって新たに水位の測定を行った時と、水位測定手段によって過去に水位の測定を行った時との時間間隔であることとすることができる。
【0018】
したがって、水位の増加率の2回目以降の算出を行なうにあたっては、過去に測定した水位及びその時刻を用いることにより、新たな水位の測定は1回で済み、したがって新たに2回の水位の測定を行う必要がないから、さらに消費電力が抑制され、よって上述と同様に水田の水位管理に要する労力、環境への負担、ランニングコスト等が低減される。
【0019】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1に本発明を適用した水田水位管理装置を示す。
水田水位管理装置100は、その全般の制御を行なう制御手段10と、制御手段10に所定の情報を入力する入力手段11と、水田Fに設置され水田Fの水位を測定する水位測定手段12と、水田Fに供給される水の水源Sと水田Fとの間に配設された給水弁13と、制御手段10によって制御され給水弁13の開閉駆動を行なう給水弁駆動回路14と、給水弁13と一体をなし制御手段10を内蔵した図示しない筐体とを有している。
【0020】
制御手段10は、中央演算処理装置であるCPU21と、所定の情報を記憶、記録する記憶手段22と、CPU21からの命令に基づいて時刻を出力したり所定の時間間隔を測定して出力したりするタイマ23と、電力を必要とする水田水位管理装置100のすべての部位に必要な電力を供給する電源24とを有している。
【0021】
制御手段10はマイコンである。筐体は、内部に水が浸入して制御手段10が濡れることを防止するよう、防水処理が施されており、防水手段として機能する。
電源24は市販の乾電池であり、筐体内において制御手段10に着脱・交換自在に一体化されている。電源24はコスト面から乾電池であることが望ましいが、太陽電池、バッテリー、商用電力とすることもできる。
【0022】
CPU21は、水田Fへの給水を制御する給水制御手段31と、水位測定手段12によって所定の時間間隔をもって計測した水位の差を算出する水位差算出手段32と、水位差算出手段32によって算出した水位差と所定の時間間隔とに基づいて水田Fにおける水位の増加率、言い換えると水位の上昇率を算出する水位増加率算出手段33と、水位測定手段12によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する時間算出手段34として機能するようになっている。
【0023】
入力手段11は、図示しないテンキー、確定キー、キャンセルキー、起動スイッチ等を有しており、水田Fにおける所望の水位すなわち目標水位、水田水位管理装置100の動作開始指示等の情報を制御手段10に入力することができるようになっている。入力手段11は、制御手段10を内蔵した筐体の表面に配設されている。
【0024】
水位測定手段12は、制御手段10の指示するタイミングにおいて水田Fの水位を測定するものであり、測定した水位に関する情報を制御手段10に送信するようになっている。水位測定手段12は、周知の構成の水位計であって、水田Fの取りうる水位の範囲内のどのような値も測定できるように設計されている。
【0025】
給水弁13は自己保持型電磁弁であり、給水弁駆動回路14に通電されたタイミングで開閉を切り替えるとともに、その状態を保持するようになっている。給水弁13が開いた状態では、水源Sから水田Fに水が流入して供給され給水が行なわれる。また、給水弁13が閉じた状態では、水源Sから水田Fへの水の流入が断たれ、給水が停止される。
【0026】
給水弁駆動回路14は、制御手段10によって通電を制御され、通電により給水弁13を駆動して給水弁13の開閉を切り替えるものである。給水弁駆動回路14は、制御手段10を内蔵した筐体内において、制御手段10とは別体をなし、給水弁13に電気的に接続されている。
【0027】
水田Fは、水稲等の、育成に水を必要とする作物を育てる場所であって、かかる作物を育成する際に水を溜めるように構成された場所である。かかる作物は、育成に水を必要とするものであれば、水稲のみならず、どのようなものであっても良い。
【0028】
水源Sは、用水路など、水田Fにて育成する作物を育てるのに十分な水を水田Fに供給することができるものであればどのようなものであっても良く、用水路の他、河川、池、湖沼などが挙げられる。
【0029】
記憶手段22は図示しないROMとRAMとを有している。
記憶手段22は、水田水位管理装置100を制御するための各種プログラムの他、かかるプログラムによって水田水位管理装置100を動作させるために必要な各種数値等がROMに記録されている。かかる数値としては、後述する増加率の、初回の算出を行なうときに使用するための、水位測定手段12によって水田Fの水位を測定する時間の間隔が挙げられる。
【0030】
記憶手段22は、入力手段11によって入力された水田Fにおける目標水位に関する情報、水位測定手段12によって測定した水田Fの水位に関する情報、タイマ23によって出力された時刻に関する情報、その他、水位差算出手段32によって算出した水位差に関する情報、水位増加率算出手段33によって算出した水位の増加率に関する情報、時間算出手段34によって算出した時間間隔に関する情報等の各種情報をRAMに記憶する。
【0031】
制御手段10は、水位測定手段12によって水田Fの水位を測定した時刻をタイマ23に出力させ、記憶手段22において、測定した水位とその時刻とを関連させて、RAMにおいてテーブルを作成して記憶するようになっている。
【0032】
給水制御手段31は、給水弁駆動回路14を制御して水田Fへの給水を制御する。なお、給水弁駆動回路14は、給水制御手段31の一部として備えられていても良い。すなわち制御手段10に備えられていても良い。
【0033】
水位差算出手段32は、水位測定手段12によって計測した水位の差を算出するとともに、算出した水位差に関する情報を記憶手段22に出力し、RAMに記憶させる。水位差算出手段32は水位測定手段12によって計測した2つの水位をRAMから読み出して減算し、水位差を算出する。水位差算出手段32は、RAMから読み出した水位測定手段12で測定した水位と目標水位との差を計算するものでもある。
【0034】
水位増加率算出手段33は、水位差を求めるために用いた2つの水位に関連付けられた時刻をRAMから読み出すとともに、その時間間隔を算出し、当該水位差を、当該時間間隔で除算することで水田Fにおける水位の増加率を算出するようになっている。算出した増加率は、記憶手段22に出力され、RAMに記憶される。
【0035】
時間算出手段34は、水位増加率算出手段33によって算出された水位の増加率と、水位測定手段12で測定した水位と目標水位との差とに基づいて、水位測定手段12によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する。すなわち、水位測定手段12で測定した水位と目標水位との差を、水位増加率算出手段33によって算出された水位の増加率で除算して、水田Fの水位が目標水位に達するまでに要すると推測される時間を算出する。算出した時間後に水位測定手段12によって再度水位を測定し、目標水位に達したか否かの判断を行なうためである。水位測定手段12で測定した水位と目標水位との差は、水位差算出手段32にて計算される。
【0036】
CPU21は、時間算出手段34によって算出された時間が経過した時にその旨の信号をCUP21に送信するようにタイマ23に命令し、かかる信号を受けた時に水位測定手段12に水田Fの水位を測定させる。時間算出手段34によって算出された時間間隔は記憶手段22に出力され、RAMに記憶される。
【0037】
制御手段10は、時間算出手段34によって算出された時間間隔の経過時に水位測定手段12によって計測された水位が目標水位以上であるときには、給水制御手段31により給水弁駆動回路14への通電を行い、給水弁13を閉じて水田Fへの給水を停止する。
【0038】
このような水田水位管理装置100の使用及び動作について説明する。
給水弁13を、制御手段10及びこれを内蔵する筐体とともに水源Sと水田Fとの間の適切な位置に設置し、また、水位測定手段12を水田Fの適切な位置に設置する。制御手段10の防水のため、電源24を予めセットしたうえで設置することが望ましい。給水弁13は開いた状態とし、水源Sから水田Fに給水が行われるようにしておく。
【0039】
入力手段11を操作して水田水位管理装置100を起動した状態とし、目標水位を入力しさらに水田水位管理装置100の動作開始指示を行なうと、水位測定手段12によって水田Fの水位測定が行われる(図2(S1))。この水位の初回の測定と同時にその時刻がタイマ23から出力され、水位に関するデータとともにその時刻がRAMに記憶される。
【0040】
水位の増加率の初回の算出を行なうときに使用するための、水位測定手段12によって水田Fの水位を測定する時間間隔が、水位の初回の測定と同時に、ROMから読み出され、この時間間隔経過時にその旨の出力を行なうようにタイマ23に命令が出される。
【0041】
なお、かかる時間間隔は、本例ではROMに記録されることによって予め定められたものとなっているが、入力手段11により入力することによって予め定めておくようにしても良い。この入力の時期は、入力手段11によって水田水位管理装置100の動作開始指示を行なうよりも前であれば良く、例えば目標水位を入力する前後とすることができる。
【0042】
一般に、水田Fに十分な水を溜めるまで、すなわち目標水位に達するまでの時間は、給水を開始してから数日を要するため、かかる時間間隔は例えば24時間とすることができる。かかる時間間隔は、目標水位に達する時間よりも短くなるよう、かつ、例えば水田Fの表面の凹凸に起因する水位の増加率の測定誤差を低減することなどを目的とし、計算される水位の増加率と実際の水位の増加率とが大きく異なることのないよう、できるだけ大きく設定される。
【0043】
なお、水田Fの表面の凹凸に起因する水位の増加率の測定誤差を低減することを目的として、初回の水位の測定を、水田水位管理装置100の動作開始指示を行なってから、所定の時間を経過した時に行うようにしてもよい。かかる所定の時間は、水田Fに供給された水の水面が水田F表面の凹凸を覆うのに十分な時間とされる。
【0044】
タイマ23からかかる時間間隔が経過した旨の出力が出されると、水位測定手段12によって2回目の水田Fの水位測定が行われ、同時にその時刻がタイマ23から出力され、水位に関するデータとともにその時刻がRAMに記憶される。
【0045】
初回の水位と2回目の水位とがRAMから読み出され、水位差算出手段32によって2回目の水位から初回の水位が減算されてその水位差が算出される(図2(S2))。なお、新たに測定された2回目の水位はRAMを経由せずに減算に供されるようにしても良い。このことは新たに測定した3回目以下の水位を減算に供する場合も同様である。
【0046】
初回の測定時刻と2回目の測定時刻とがRAMから読み出され、水位増加率算出手段33によって2回目の測定時刻から初回の測定時刻が減算されてその時間差すなわち時間間隔が算出される。なお、新たに測定された際の2回目の測定時刻はRAMを経由せずに減算に供されるようにしても良い。このことは新たに測定した3回目以下の時刻を減算に供する場合も同様である。
【0047】
水位増加率算出手段33によって、2回目測定時の水位と初回測定時の水位との水位差が2回目の測定時刻と初回の測定時刻との時間間隔で除算され、水位の増加率が測定、計算される(図2(S3))。算出された水位の増加率はRAMに記憶される。
【0048】
入力手段11からの入力によってRAMに記憶されていた目標水位に関するデータが読み出され、水位差算出手段32によって、2回目に測定した水位との減算が行なわれ、目標水位との水位差が計算される(図2(S4))。算出された水位差はRAMに記憶される。
【0049】
初回の水位測定から2回目の水位測定までの時間間隔は、上述のように目標水位に達する時間よりも短くなるように設定されるが、2回目に測定した水位がすでに目標水位以上である場合には、給水制御手段31により給水弁駆動回路14に通電し、給水弁13を閉じて給水を停止するように構成しても良い。このように構成すれば、かかる時間間隔をユーザー等が入力手段11によって設定するようにした場合に、誤った入力を行っても、給水の無駄を極力抑えることができる。
【0050】
RMAに記憶されている、ステップS2で求めた水位の増加率と、ステップS3で求めた水位差とが読み出され、時間算出手段34によって、水位差が増加率で除算され、次の水位測定までの時間間隔である時間Tが算出される(図2(S5))。算出と同時に時間TがRAMに記憶されるとともに、時間T経過時にその旨の出力を行なうようにタイマ23に命令が出される。
【0051】
タイマ23から時間Tが経過した旨の出力が出されるまで、CPU21は待機する(図2(S6))。タイマ23から時間Tが経過した旨の出力が出されると、水位測定手段12によって3回目の水田Fの水位測定が行われ(図2(S7))、同時にその時刻がタイマ23から出力され、水位に関するデータとともにその時刻がRAMに記憶される。
【0052】
目標水位に関するデータがRAMから読み出され、水位差算出手段32によって、3回目に測定した水位との比較が行なわれ、目標水位に達したか否かが判断される(図2(S8))。この比較に供される、3回目に測定した水位に関するデータは、RAMから読み出されたものであっても、RAMを経由していないものであっても良い。
【0053】
比較の結果、目標水位以上であると判断した場合には、給水制御手段31により給水弁駆動回路14に通電し、給水弁13を閉じて給水を停止する(図2(S9))。
比較の結果、目標水位に満たないと判断した場合、すなわち測定した水位が目標水位未満であると判断した場合には、水位差算出手段32により再度水位差を算出する(図2(S2))。すなわち、3回目に測定した水位と2回目に測定した水位との水位差を算出する。
【0054】
また水位測定手段12により水位増加率が再度測定される(図2(S3))。そのために、2回目の測定時刻と3回目の測定時刻とがRAMから読み出され、水位増加率算出手段33によって3回目の測定時刻から2回目の測定時刻が減算されてその時間差すなわち時間間隔が算出されるとともに、水位差算出手段32により算出した3回目測定時の水位と2回目測定時の水位との水位差が、算出した時間間隔で除算され、水位の増加率が計算される。算出された水位の増加率はRAMに記憶される。
【0055】
このように、水位増加率算出手段33によって水位の増加率の2回目以降の算出を行なうときには、計算に用いられるかかる時間間隔は、水位測定手段12によって新たに水位の測定を行った時と過去に水位の測定を行ったときとの時間間隔であるため、新たに水位の測定を行った時点で、かかる増加率を算出するために必要な情報は揃っている。よって、2回目以降は、増加率を測定するというよりも、増加率を単に算出するものとなっている。
【0056】
本例では、水位増加率算出手段33によって水位の増加率の2回目以降の算出を行なうときには、新たに測定した水位及びその時刻と、その過去の直近の水位及びその時刻とを用いるようにしている。このように構成すれば、気温、湿度、天候等が比較的短時間に変化する環境下において目標水位に達するまでの時間Tを推測することに優れる。また、水田Fに給水を開始した直後に水田水位管理装置100を動作させた場合には、水田F表面の土等の凹凸に起因して水位の増加率が安定しないが、過去の直近の水位及びその時刻を用いるようにすれば、かかる凹凸に起因する影響が低減されまたはかかる影響がなくなる。
【0057】
しかし、気温、湿度、天候等が比較的安定した環境化において使用する場合や、水田Fの面積が大きく水田F表面の凹凸が無視できる場合には、外乱の影響を低減する等の観点から、水位増加率算出手段33によって水位の増加率の2回目以降の算出を行なうときにも、新たに測定した水位及びその時刻と、初回の測定における水位及びその時刻とを用いるようにしてもよい。
【0058】
水位増加率算出手段33によって、2回目の水位増加率の計算を行なうと、RAMに記憶されている目標水位に関するデータが読み出され、水位差算出手段32によって、3回目に測定した水位との減算が行なわれ、目標水位との水位差が計算される(図2(S4))。ただし、上述のステップS7において、目標水位に達したか否かを判断するに際し、水位差算出手段32によって、目標水位と3回目に測定した水位との比較が行われたときに、かかる比較が減算によって行なわれその水位差が計算されている場合には、この結果をかかる水位差として用いてもよい。この水位差はRAMから読み出されたものであっても、RAMを経由していないものであっても良い。いずれの場合も算出された水位差はRAMに記憶される。
【0059】
時間Tの算出(図2(S5))以下のステップが、既に述べたのと同様に、水田Fの水位が目標水位に達したと判断され、給水制御手段31により給水弁駆動回路14に通電され、給水弁13が閉じられて給水が停止されるまで繰り返される。
【0060】
なお、かかる動作によれば、初回の水位増加率測定のための時間間隔よりも、2回目の水位増加率測定のための時間間隔のほうが長くなることもあるが、3回目以降は前回よりも短くなり、回を重ねるにつれて収斂する。
かかる時間間隔が、例えば30分未満となった場合など、ある程度短くなったら、電力節減のため、目標水位に達したとみなして給水を停止しても良い。また、同様に、電力節減のため、かかる時間間隔が、例えば30分未満となった場合など、ある程度短くなったら、目標水位を大きく上回ることがない範囲で、例えば30分など一定時間経過時に目標水位に達したかどうかの水位測定を行うようにしても良い。さらに、目標水位と測定された水位との差が、例えば1cm未満となった場合など、ある程度小さくなったら、電力節減のため、目標水位に達したとみなして給水を停止しても良い。
【0061】
以上、本発明を適用した水田水位管理装置を説明したが、本発明にかかる水田水位管理装置を構成する各要素については前述し例の各要素に限らず任意に変更可能である。
【0062】
上述の例では、目標水位と測定水位との水位差を求める手段を、測定水位同士の差を求める水位差算出手段が兼ねているが、かかる水位差を求める手段は水位差算出手段と別に設けても良い。
水位を計測した時間差すなわち時間間隔を算出する手段を、水位増加率算出手段が備えているが、かかる時間間隔を算出する手段は水位増加率算出手段と別に設けても良い。
2回目以降新たに水位の増加率を求める際には、既に水位の増加率を求めるのに用いた測定済みの水位及びその時刻を用いるのでなく、新たに2つの時刻でそれぞれ水位の測定を行うようにしてもよい。
【0063】
本発明にかかる水田水位管理装置は、水源から水田に供給された水の量を計測する水量計測手段としての水量計を備えていてもよい。水量計を備えていれば、ある時間間隔において水量計によって計測した水量を、その時間間隔における水位差で除算することで水田の面積を求めることができる。このような構成では、目標水位との水位差を計算してさらに給水し、その後、水量計で計測した給水量の積算値を、求めた面積で除算し、その値がかかる水位差に一致したときに、水位測定手段で測定し目標水位と比較するようにすれば、水源から水田への給水量が時々刻々と変化する場合であっても、上述と同様に、目標水位に達するまで給水を行うことができる。
【0064】
本発明にかかる水田水位管理装置は、初回に求めた水位の増加率に基づいてフィードフォワード制御を行なうとともに、水位測定手段によって計測された水位が目標水位以上となるまで2回以降に求める水位の増加率によってフィードバック制御を行なう構成となっている。しかし、水位の増加率を求めるのを初回の1回のみにして、この初回に求めた水位の増加率をかかるフィードバック制御に用いるようにしてもよいし、かかるフィードフォワード制御のみを行うようにしても良い。
【0065】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を適用した水田水位管理装置のブロック図である。
【図2】図1に示した水田水位管理装置の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
12 水位測定手段
31 給水制御手段
32 水位差算出手段
33 水位増加率算出手段
34 時間算出手段
F 水田
S 水源
T 再度水位を測定するまでの時間間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田の水位を測定する水位測定手段と、
水田への給水を制御する給水制御手段と、
前記水位測定手段によって所定の時間間隔をもって計測した水位の差を算出する水位差算出手段と、
前記水位差算出手段によって算出した水位差と前記所定の時間間隔とに基づいて当該水田における水位の増加率を算出する水位増加率算出手段と、
前記水位増加率算出手段によって算出された前記増加率と、前記水位測定手段で測定した水位と目標水位との差とに基づいて、前記水位測定手段によって再度水位を測定するまでの時間間隔を算出する時間算出手段とを有し、
前記時間算出手段によって算出された時間間隔の経過時に前記水位測定手段によって計測し、この計測された水位が目標水位以上であるときに、前記給水制御手段により水田への給水を停止する水田水位管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の水田水位管理装置において、
前記水位増加率算出手段によって前記増加率の初回の算出を行なうときには、前記所定の時間間隔は、予め定められたものであることを特徴とする水田水位管理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の水田水位管理装置において、
前記水位増加率算出手段によって前記増加率の2回目以降の算出を行なうときには、前記所定の時間間隔は、前記水位測定手段によって新たに水位の測定を行った時と、前記水位測定手段によって過去に水位の測定を行った時との時間間隔であることを特徴とする水田水位管理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−151428(P2007−151428A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348612(P2005−348612)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)