説明

水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制する方法

【課題】ネオニコチノイド殺虫化合物を含有する農薬製剤を水田の水面に施用する方法では、水稲吸汁性害虫による水稲被害を十分に抑制することができない場合がある。
【解決手段】ネオニコチノイド系殺虫化合物の25℃水中における溶出持続期間が20日間以上である徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料を、水稲が移植された水田に、好ましくは水稲の出穂60日前から出穂20日後までの期間に、水面施用する工程を有することを特徴とする水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水稲分野においてカメムシ類に代表される水稲吸汁性害虫による水稲被害が重大になってきている。特にカメムシ類が水稲の穂を加害した場合は、収穫された米の品質を大きく低下するため、高い防除効果を要求される。このため、ネオニコチノイド殺虫化合物を含有する農薬製剤を水田の水面に施用して、カメムシ類による水稲被害を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−104906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法においても、自然条件によっては水稲吸汁性害虫による吸汁被害を抑制することが困難となる場合もあり、必ずしも常に満足できるものではなかった。そこで、水稲吸汁性害虫による水稲被害を常に安定的に抑制するための一つの手段として、上記方法よりもネオニコチノイド殺虫化合物の一層高い効果を発揮することができる方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、このような状況において鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の発明等を提供するものである。
[発明1]
ネオニコチノイド殺虫化合物の25℃水中における溶出持続期間が20日間以上である徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料を、水稲が移植された水田に水面施用する工程を有することを特徴とする水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制する方法。
[発明2]
水面施用する時期が水稲の出穂60日前から出穂20日後までの期間であることを特徴とする発明1に記載された方法。
[発明3]
ネオニコチノイド殺虫化合物がクロチアニジンである発明1又は2に記載された方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、カメムシ類に代表される水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられるネオニコチノイド殺虫化合物(以下、本殺虫化合物と記す。)とは、ニトロ基又はシアノ基が置換したC=N二重結合又はC=C二重結合と複素環とを有することを特徴とする、易水溶性(20℃の水への溶解度が0.1g/L以上)の殺虫化合物の一群であり、具体的にはジノテフラン、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム等のニトログアニジン系ネオニコチノイド殺虫化合物、ニテンピラム等のニトロメチレン系ネオニコチノイド殺虫化合物、アセタミプリド等のシアノイミノ系ネオニコチノイド殺虫化合物が挙げられる。本発明においては、ニトログアニジン系ネオニコチノイド殺虫化合物が好ましく、特にクロチアニジンが好ましい。
本殺虫化合物は単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。
【0008】
本殺虫化合物を含有し、本殺虫化合物の25℃水中における溶出持続期間が20日間以上である徐放化農薬製剤(以下、本徐放化農薬製剤と記す。)とは、例えば、本殺虫化合物、固体の不活性担体、必要に応じて結合剤、界面活性剤、安定化剤、着色剤等と混練し、造粒して得られる核粒剤を、樹脂等の被膜形成物質により被覆してなる被覆粒剤;本殺虫化合物、疎水性熱可塑物質(例えば、ワックス、高級脂肪酸エステル、ポリオレフィン等)、固体の不活性担体、必要に応じて界面活性剤、安定化剤、着色剤等と混練し、押出し造粒して得られる練込み粒剤であり、本殺虫化合物の溶出が制御されて一定期間の溶出が持続する農薬製剤である。本徐放化農薬製剤は好ましくは25℃水中における初期10日間の本殺虫化合物の溶出率が、本徐放化農薬製剤中の本殺虫化合物の全量に対して10〜80%、更に好ましくは20〜70%である。
上記の被覆粒剤において、本殺虫化合物を含有する粒剤100重量部に対して、被膜形成物質の量は通常1〜20重量部の割合であり、練込み粒剤において、疎水性熱可塑物質の含有量は通常5〜40重量%の範囲である。
また、本徐放化農薬製剤は、本殺虫化合物を通常0.01〜70重量%含有する。
本徐放化農薬製剤において、本殺虫化合物の25℃水中における溶出持続期間及び初期10日間の溶出率は、本殺虫化合物の水溶解度に応じて、被覆粒剤においては被膜形成物質の種類及び量を、練込み粒剤においては疎水性熱可塑物質の種類及び量を適宜調整することにより、変化させることができる。通常、該皮膜形成物質又は疎水性熱可塑物質の割合を増やすことにより、本徐放化農薬製剤における本殺虫化合物の溶出持続期間が長くなり、溶出率を低くすることができる。
【0009】
本徐放化農薬製剤における本殺虫化合物の溶出率は下記に示す方法により、測定することができる。
・25℃水中における溶出特性の測定法
25℃の3度硬水300mlに対して、本徐放化農薬製剤中の本殺虫化合物の全量が溶出した場合の濃度が50ppmとなる量の本徐放化農薬製剤を加えて、攪拌する。攪拌を持続し、所定期間の後に水をサンプリングし、本殺虫化合物の濃度を測定して、溶出率を算出する。
【0010】
本徐放化農薬製剤は、例えば特開昭62−277301号公報、特開平9−268103号公報、特開2001−220301号公報、特開2003−252702号公報に記載されている方法により製造することができる。より具体的には、例えば以下に記載の方法で製造することができる。
1)本殺虫化合物0.2〜70重量部、固体の不活性担体(例えば、カオリン鉱物、モンモリロナイト鉱物、シリカ、炭酸カルシウム、珪藻土等) 25〜99.5重量部、及び、必要に応じて添加される結合剤、界面活性剤、安定化剤、着色剤 0〜10重量部を、リボンミキサー、ナウターミキサー等の混合機にて混合し、次いで該混合物に適量の水を添加し、混練物を調製する。
2)得られた混練物を、バスケット式造粒機、スクリュー式造粒機等の押出し式造粒機、ローラーコンパクター等の圧縮造粒機、ヘンシェルミキサー等の攪拌造粒機、パングラニュレーター等の皿型造粒機等の造粒機にて造粒し、造粒物を乾燥、整粒、篩別等の通常の処理を行い、本殺虫化合物を含有する核粒剤を調製する。
3)得られた核粒剤を、回転パン、回転ドラム、噴流塔等の装置内にて、転動又は流動状態とし、被膜形成物質を徐々に添加することにより、粒剤の周囲に被膜形成物質による被膜を形成して、本徐放化農薬製剤を調製する。該被膜形成物質としては、例えば硫黄、ワックス、水溶性高分子、熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン等のポリオレフィン)、熱硬化性樹脂(例えば、ポリウレタン、ポリウレタン)等が挙げられる。
【0011】
本発明における珪酸質肥料とは、珪酸カルシウム、珪酸カリウム、液体珪酸カリウム、シリカゲル、シリカヒドロゲル等の、肥料組成物中の可溶性珪酸の量が10重量%以上である肥料を意味する。
本珪酸質肥料に含有される可溶性珪酸の量は、以下に具体的に示すような肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法:1992年版)等により定められる可溶性珪酸の分析法(塩酸法)により定量することができ、可溶性珪酸とは30℃の0.5M塩酸に溶解する珪酸を意味する。
・可溶性珪酸の分析法
〔試料液の調製〕
分析試料1gを250mlのメスフラスコに正確にとり、30℃の0.5M塩酸150mlを加え、1分間30〜40回回転の振り混ぜ機で1時間振り混ぜたのち(浸出中は30℃に保つこと)、速やかに常温に戻し標線まで水を加えて直ちに乾燥ろ紙でろ過する。
〔定量〕
試料液の全部または一定量を磁製蒸発皿またはビーカーに正確にとり、水浴上で蒸発乾固する。これに塩酸(1+1)数mlを加えて蒸発乾固することを数回繰り返したのち、110〜120℃の空気浴に入れて十分乾燥脱水し放冷する。次に塩酸(1+4)約50mlを加え加熱して溶かしたのち直ちにろ過し、沈殿を温塩酸(1+10)で2回洗浄し、次いで熱水で塩化物の反応がなくなるまで洗浄する。沈殿は乾燥・強熱したのち、ケイ酸(SiO2)として重さを正確に量り、またはこれに係数0.4674を乗じてケイ素(Si)の量を算出する。
(上記分析法においては、液体試薬の希釈割合を表すのに(a+b)をもって略示する。
この場合数字aは原試薬の容積、数字bは水の容積を示す。)
【0012】
本発明における珪酸質肥料は、珪酸以外の他の肥料成分を含んでいてもよく、他の肥料成分としては、窒素、燐酸、カリウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素、鉄等が挙げられる。具体的には、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素(IBDU)、グアニール尿素(GU)、過リン酸石灰、重過燐酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン、ホウ酸、ホウ酸塩、鉄鋼スラグ等が挙げられる。
【0013】
本発明の方法においては、施用する際の作業性等の観点から、本徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料を含有する農薬肥料混合物(以下、本混合物と記す。)として用いることが好ましい。本混合物としては、本徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料が、本殺虫性化合物と可溶性珪酸との重量換算比(可溶性珪酸/本殺虫化合物)が、通常5〜20000、好ましくは20〜12000、さらに好ましくは50〜6000の範囲となるような混合割合である。
【0014】
本発明の方法において、本徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料は水稲が移植された水田に、同時若しくは前後して水面施用することにより用いられる。本発明の方法において、本徐放化農薬製剤の施用量は、水田10a当り0.1〜10kg、好ましくは0.25〜5kgであり、本殺虫化合物として通常5〜70gである。珪酸質肥料は、水田10a当り1〜200kg、好ましくは10〜100kgである。
その際の施用方法としては、手で直接散布する方法や、背負式散粒機、パイプ散粒機、多口ホース散粒機等を用いた機械で散布する方法が挙げられる。
本発明においては、本徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料は、本殺虫性化合物と可溶性珪酸との重量換算比(可溶性珪酸/本殺虫化合物)が、通常5〜20000、好ましくは20〜12000、さらに好ましくは50〜6000の範囲となるような割合で施用される。
本発明の方法において、イネの出穂60日前から出穂20日後までの期間内に本徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料を施用することが好ましい。
【0015】
本発明の方法により、カメムシ類に代表される水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制することができる。本発明において、カメムシ類として、例えば、以下のものが挙げられる。
ナカグロカスミカメ、ブチヒゲクロカスミカメ、アカホシカスミカメ、ハナグロミドリカスミカメ、マダラカスミカメ、マキバカスミカメ、アカスジカスミカメ、ムギカスミカメ、アカミャクカスミカメ、ナカムギカスミカメ、アカヒゲホソミドリカスミカメなどのカスミカメムシ科、メダカバガカメムシなどのメダカナガカメムシ科、ヒメヒラタナナガカメムシ、モンシロナガカメムシ、ウスグロシロヘリナガカメムシ、シロヘリナガカメムシ、アムールシロヘリナガカメムシ、チャイロナガカメムシ、ヒメナガカメムシ、ミナミホソナガカメムシ、クロアシホソナガカメムシ、キベリヒョウタンナガカメムシ、ヒラタヒョウタンナガカメムシ、サビヒョウタンナガカメムシ、ヒゲナガカメムシ、ヨツボシヒョウタンナガカメムシ、マダラナガカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシなどのナガカメムシ科、フタモンホシカメなどのホシカメムシ科、アズキヘリカメムシ、ヒメハリカメムシ、ハリカメムシ、ホソハリカメムシ、ホシハラビロヘリカメムシなどのヘリカメムシ科、ヒメクモヘリカメムシ、クモヘリカメムシ、タイワンクモヘリカメムシ、ホソヘリカメムシなどのホソヘリカメムシ科、アカヒメヘリカメムシ、ケブカヒメヘリカメムシ、スカシヒメヘリカメムシ、ブチヒゲヘリカメムシなどのヒメヘリカメムシ科、チャイロカメムシなどのキンカメムシ科、エビイロカメムシ、ウズラカメムシ、トゲカメムシ、ムラサキカメムシ、ブチヒゲカメムシ、ハナダカカメムシ、ムラサキシラホシカメムシ、マルシラホシカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、トゲシラホシカメムシ、シラホシカメムシ、クサギカメムシイネカメムシ、ツマジロカメムシ、アオクサカメムシ、ミナミアオカメムシ、エゾアオカメムシ、イチモンジカメムシ、チャバネアオカメムシ、アカカメムシ、イネクロカメムシ、イワサキカメムシなどのカメムシ類が挙げられる。
【実施例】
【0016】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0017】
製造例1(本徐放化農薬製剤の製造)
(1)粉砕したクロチアニジン約1.6重量部、ポリビニールアルコール3.0重量部、ベントナイト20.0重量部及び炭酸カルシウム微粉末とをよく混合し、更に尿素1.5重量部、蔗糖12.0重量部及びポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル2.0重量部を水15重量部に溶解した水溶液35重量部を添加してよく練合した。得られた練合物を0.9mmφのスクリーン付き小型押し出し造粒機で造粒し、整粒した後、60℃で15分間乾燥することにより、粒径が1400〜850μmのクロチアニジン1.6%粒剤を得た。
(2)得られた粒剤1000重量部を、熱風発生機を付設した温度制御可能な傾斜パン型転動造粒機中で回転させ、80℃に保持しながら、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)37.6重量%、分岐型ポリエーテルポリオール33.2重量%、直鎖ポリエーテルポリオール28.2重量%及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール1.0重量%からなる混合物(以下、混合物Aと記す。)を添加し、5分間80℃に保つとの一連の操作を所定の回数繰返し、最後に80℃で10分間保持することにより、本徐放化農薬製剤1を得た。粒剤1000重量部に対する混合物Aの合計量は100重量部(被覆率10%)であった。
本徐放化農薬製剤1の25℃水中における溶出持続期間は20日間以上であり、初期10日間の溶出率は約50%であった。
【0018】
製造例2(本徐放化農薬製剤の製造)
製造例1の(1)と同様にクロチアニジン1.6%粒剤を調整し、製剤例1の(2)に記載の方法に準じて被覆率7%の本徐放化農薬製剤2を調整した。本徐放化農薬製剤2の25℃水中における溶出持続期間は20日間以上であった。
【0019】
製造例3(本徐放化農薬製剤の製造)
製造例1の(1)と同様にクロチアニジン1.6%粒剤を調整し、製剤例1の(2)に記載の方法に準じて被覆率11.5%の本徐放化農薬製剤3を調整した。本徐放化農薬製剤2の25℃水中における溶出持続期間は20日間以上であった。
【0020】
製造例4(本徐放化農薬製剤の製造)
(1)クロチアニジン約5.4重量部、ベントナイト50重量部、タルク24.6重量部およびクレ−20重量部をレーディゲミキサーで混合して、粉体混合物を得る。次いで該粉体混合物100重量部に対して水18重量部を添加し、さらにチョッパーを併用しながら混合して、得られる混練物を0.7mmφのスクリーン付き小型押し出し造粒機で造粒し、造粒物を得る。該造粒物を球形化装置に供給し、得られる球形化物を流動乾燥機に供給し、乾燥し、振動篩いで0.85mm〜1.4mmに分級し、クロチアニジン粒剤を得る。
(2)噴流層被覆装置を使用し、該クロチアニジン粒剤の表面に、低密度ポリエチレン26重量%、タルク73重量%、ステアリン酸鉄1重量%からなる被覆材料で、被覆率が16重量%になるよう被覆し、本徐放化農薬製剤4を得る。
【0021】
製造例5(本徐放化農薬製剤の製造)
(1)クロチアニジン約2重量部、モンタン酸エステルワックス(凝固点;70〜75℃)20重量部、ホワイトカーボン5重量部、タルク10重量部、炭酸カルシウム63重量部をヘンシェルミキサーに投入して混合し、76℃で粉体の状態で排出する。この粉体を0.7mmφのスクリーン付き小型押し出し造粒機に供給して、78℃で混練を行い、73℃で押し出し造粒を行い、農薬成型物を得る。これを解砕機で粉砕して、本徐放化農薬製剤5を得る。
【0022】
試験例1
開口面積1/2000aのポットで栽培したイネ(ヒノヒカリ)を幅2m×奥行き3m×高さ2mの網室内で育成し、出穂30日前に製造例1により得られた本徐放化農薬製剤1(クロチアニジン換算で10g/10a)及び珪酸カリ液肥(タフゲン、多木化学(株)製、珪酸含量16%)20kg/10aを水面施用した(本発明区1)。また、比較区として、出穂30日前にダントツ粒剤(住友化学(株)製)(クロチアニジン換算で10g/10a)及び珪酸カリ液肥(タフゲン、多木化学(株)製、珪酸含量16%)20kg/10aを水面施用した区(比較区1)を設けた。
その後、出穂7、14、21日後に網室内にアカスジカスミカメ100頭を放飼し、更に収穫期までイネを栽培した。収穫した米について斑点米の発生状況を調査し、下記に示す式にて、斑点米指数を算出した。

〔斑点米指数〕=〔(比較区1の斑点米率)/(本発明区1の斑点米率)〕×100
【0023】

【0024】
試験例2
開口面積1/5000aのポットで栽培したイネ(キヌヒカリ)を育成し、出穂40日前に製造例1により得られた本徐放化農薬製剤1(クロチアニジン換算で10g/10a)及び珪酸カリ(くみあいホウ素入り20.0けい酸加里肥料特号、開発肥料社製)60kg/10aを水面施用した(本発明区2)。また、出穂40日前に本徐放化農薬製剤1(クロチアニジン換算で10g/10a)のみを水面施用した区(比較区2)、および出穂40日前に珪酸カリ(くみあいホウ素入り20.0けい酸加里肥料特号、開発肥料社製、可溶性珪酸の含量は30.0%)60kg/10aのみを水面施用した区(基準区1)を設けた。その後、出穂7日後にイネの穂部分のみをナイロンゴースにて覆い、該ナイロンゴース内にアカヒゲホソミドリカスミカメ10頭を放飼した。放飼4日後に該ナイロンゴースを取り外し、更に収穫期までイネを栽培した。収穫した米について斑点米の発生状況を調査し、下記に示す式にて斑点米抑制率を算出した。

〔斑点米抑制率〕=100−〔(調査区の斑点米率)/(基準区1の斑点米率)〕
×100
【0025】

【0026】
試験例3
開口面積1/5000aのポットで栽培したイネ(キヌヒカリ)を育成し、出穂40日前に製造例1により得られた本徐放化農薬製剤1(クロチアニジン換算で10g/10a)及び珪酸カリ(くみあいホウ素入り20.0けい酸加里肥料特号、開発肥料社製、可溶性珪酸の含量は30.0%)60kg/10aを水面施用した(本発明区3)。また、珪酸カリ(くみあいホウ素入り20.0けい酸加里肥料特号、開発肥料社製)60kg/10aのみを水面施用した区(基準区2)を設けた。その後、出穂7日後、14日後及び21日後に、イネの近傍にクモヘリカメムシを放飼し、収穫期までイネを栽培した。収穫した米について斑点米の発生状況を調査し、下記に示す式にて斑点米抑制率を算出した。

〔斑点米抑制率〕=100−〔(調査区の斑点米率)/(基準区2の斑点米率)〕
×100
【0027】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の方法により、水稲吸汁性害虫による水稲被害(例えば、カメムシ類によるイネの斑点米被害)を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオニコチノイド殺虫化合物の25℃水中における溶出持続期間が20日間以上である徐放化農薬製剤及び珪酸質肥料を、水稲が移植された水田に水面施用する工程を有することを特徴とする水稲吸汁性害虫による水稲被害を抑制する方法。
【請求項2】
水面施用する時期が水稲の出穂60日前から出穂20日後までの期間であることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
ネオニコチノイド殺虫化合物がクロチアニジンである請求項1又は2に記載された方法。

【公開番号】特開2008−133267(P2008−133267A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277342(P2007−277342)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】