説明

水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法

【課題】本発明の目的は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を有機溶媒へ転相/分散させた混合溶液から、水系微粒子の粒径や分散状態を保ったまま、水または転相に用いた有機溶媒を効率よく除去し、第二の有機溶媒からなる新たな有機溶媒分散系に相転移させることにある。
【解決手段】親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒と混合し、更に、第二の有機溶媒と混合する、水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法であって、第二の有機溶媒の混合前に、比重差を利用した相分離によって、水及び第一の有機溶媒を除去することを特徴とする水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、有機溶媒相へ転相、分散させた水系微粒子の有機溶媒分散物から水分を効率的に除去する方法に関し、ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を、有機溶媒相へ転相、分散したハロゲン化銀粒子の有機溶媒分散物から水分を効率的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノオーダーの微粒子に対する関心が高まっている。
【0003】
また、用途の多様化により、ナノオーダーの微粒子についても、粒子形成の場(水系)と実際に使用する場(溶剤系)が異なる場合がある。
【0004】
水系微粒子、特にナノオーダーの水系微粒子を凝集することなく形成する手段として、保護コロイドを用いた粒子形成が有効であり、例えば、生体由来の高分子であるゼラチンはハロゲン化銀粒子の形成において保護コロイドとして広く使用されており、ハロゲン化銀粒子の形状、粒径等、またその特性を制御する重要な役割を担っていることはよく知られているところである。
【0005】
近年、熱現像感光材料が普及してきたが、熱現像感光材料には、感光体としてハロゲン化銀乳剤をベヘン酸銀等高級脂肪酸銀塩と共に、非水系(有機溶剤系)で分散され、感光材料として塗布されるものがあり、ハロゲン化銀微粒子も溶剤系において調製される場合がある。
【0006】
保護コロイドとしてゼラチンを用い調製したハロゲン化銀粒子のような水系で形成した微粒子を溶剤系に転相し、使用する際、噴霧乾燥など乾燥工程を経ると粒子の凝集が起こってしまう。
【0007】
また、乾燥させない場合でも親水性の保護コロイドが疎水性の溶剤中に添加されると溶剤中において凝集を引き起こしてしまい、別添加することは困難である。
【0008】
従って、親水性の保護コロイドを用いて形成した微粒子を凝集することなく溶剤系へ転相する技術が必要とされている。
【0009】
これまでにも、水性媒体に分散した水系微粒子を疎水性媒体中に均一に分散する方法が幾つか知られている。
【0010】
例えば、特許文献1には、酸素含有無機質微粒子を疎水性媒体へ分散するために親水性官能基含有オルガノポリシロキサンを使用する方法が開示されており、また、無機質微粒子分散物を、油系に置換する方法として、例えば特開平7−216273号におけるように、水系のマイクロカプセルを、カプセル粒子同士が互いに凝集していない状態で油系へ置換させる方法等も知られている。しかしながら、マイクロカプセルのような技術はハロゲン化銀粒子への適用が難しい。
【0011】
こういった中で、ハロゲン化銀微粒子を疎水性媒体へ分散する方法として、親水性、親油性を併せもつポリマー分散剤を現行ゼラチンにかえて用いてハロゲン化銀粒子を水系で調製したのち、水系からMEK等の溶剤系に転相することにより溶剤系で分散する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
しかしながら、ゼラチン以外の合成ポリマー分散剤を用いたハロゲン化銀微粒子の調製においては、ハロゲン化銀粒子の形成、その特性制御が難しい。
【0013】
ゼラチンを保護コロイドとしたハロゲン化銀乳剤の調製は、長年にわたる研究の技術蓄積がありその知見が有効に利用できることから、一旦ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を調製したのち、これを有機溶剤系に転相する技術が検討されている。
【0014】
例えば、特許文献3には、ゼラチンを用いてハロゲン化銀乳剤を調製した後、これを水系で有機銀塩を調製する際に添加する方法で均一に分散する方法がとられている。しかしながら、ハロゲン化銀が高アルカリに晒されるためカブリ上昇、また、ハロゲン銀粒子の熟成よる発色点ロス(Dmax低下)が起こる、また、脂肪酸銀塩との接触確率の増大などによるカブリ上昇(現像時、保存時)等の欠点がある。
【0015】
これらの欠点を回避するため、水系で調製したハロゲン化銀ゼラチン乳剤を有機溶剤系に転相し、これを後の工程で混合・使用する技術について、本発明者等は2003年12月19日出願の特願2005−166697号明細書にて提案した。これは、ゼラチンと親和性が高い両親媒性の合成高分子を用いて、一旦調製したハロゲン化銀ゼラチン乳剤を、前記合成高分子(ポリマー)の有機溶剤溶液と混合して有機溶剤系へ転相するものである。これによれば、凝集、また前記カブリ上昇、AgX熟成等が起こるなどの欠点なく、ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒系への転相が可能である。
【0016】
このような水系微粒子の有機溶媒転相/分散液は、均一な分散系を形成しているが、転相の際持ち込まれる水分は分散液中の水系微粒子の分散性や安定性、更に、最終製品の品質にも影響するため、系内の水分を一定レベル以下に速やかに除去する必要がある。本発明者等は2005年8月4日付け出願の特願2005−226365号明細書において、この様な均一な分散媒中から、蒸留或いは膜分離により、水を除去し、含水率の低い水系微粒子の有機溶媒転相/分散液を得る方法についても提案している。しかしながら、均一な系からの水分の除去は工数がかかるため、無機微粒子(ハロゲン化銀微粒子)の粒径や分散性等のを劣化を起こさず水分除去を効率的に行える方法が必要とされる。
【特許文献1】特開平5−111631号公報
【特許文献2】特開2005−181685号公報
【特許文献3】特開2000−10230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を有機溶媒へ転相/分散させた混合溶液から、水系微粒子の粒径や分散状態を保ったまま、水または転相に用いた有機溶媒を効率よく除去し、第二の有機溶媒からなる新たな有機溶媒分散系に相転移させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0019】
1.親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒と混合し、更に、第二の有機溶媒と混合する、水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法であって、第二の有機溶媒の混合前に、比重差を利用した相分離によって、水及び第一の有機溶媒を除去することを特徴とする水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【0020】
2.前記相分離が、前記合成高分子の、溶解度変化を用いたものであることを特徴とする1に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【0021】
3.前記合成高分子において、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基がアミド基であり、かつ、前記親水性高分子が官能基としてペプチド結合を有することを特徴とする1または2に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【0022】
4.前記合成高分子が、下記一般式(1)で表される共重合体であって、一般式(2)、(4)及び(5)で表されるモノマーを含むグラウンド溶液中に、一般式(3)で表されるモノマーを添加することで、重合、形成されたことを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【0023】
【化1】

【0024】
(一般式(1)中、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1から5のアルキル基を表す。
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70、mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、また、l+m+n+o=100である。また、一般式(4)および(5)において、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1およびm1は1〜300、n2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但し、n1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。)
5.前記水系微粒子の分散物において、水系微粒子の粒子径が10〜100nmであることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【0025】
6.前記水系微粒子の分散物がハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、親水性ハロゲン化銀乳剤を、ハロゲン化銀粒子の分散性を保ったまま、有機溶媒系に転相/分散させた分散液から、水および転相に用いた有機溶媒を効率よく(少ない工数で)除去することができ、これにより、特性劣化が少ないハロゲン化銀粒子の有機機溶媒転相/分散液が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒と混合し、更に、第二の有機溶媒と混合する、水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法であって、第二の有機溶媒の混合前に、比重差を利用した相分離によって、水及び第一の有機溶媒を除去することを特徴とする水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法である。
【0028】
本発明によれば、親水性ハロゲン化銀乳剤を、ハロゲン化銀粒子の分散性を保ったまま、有機溶媒系に転相/分散させることができるため、これを非水系の用途に適用でき、例えば、水系において調製したハロゲン化銀ゼラチン乳剤を、ゼラチンと水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む有機溶媒溶液を用いて、有機溶媒転相/分散物とすることができ、例えば有機銀塩を酸化剤として用いる疎水系で調製される熱現像感光材料(所謂ドライシルバー)に、これを適用することが可能となる。
【0029】
しかしながら、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物、即ち、水系において調製したハロゲン化銀ゼラチン乳剤を、ゼラチンと水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒(転相溶媒)と混合し、これを有機溶媒の系に転相させハロゲン化銀粒子の有機溶媒転相/分散物を調製したとき、ハロゲン化銀乳剤と共に持ち込まれた水分及び第一の有機溶媒(例えばメタノール等)は、そのままでは、ハロゲン化銀粒子の有機溶媒転相/分散物の保存期間中の熱履歴等により、分散物中のハロゲン化銀粒子の分散性や特性に変化を与えたり、また、最終製品の品質にも影響するため、系内の水分を一定レベル以下に速やかに除去する必要がある。
【0030】
従って、水溶性の第一の有機溶媒により転相させたのち、更に第二の有機溶媒を混合し、蒸留又は膜分離(限外濾過)等によって、分散物中に含まれる水、及び水溶性の第一の有機溶媒を除き、含有率を低下させることが必要である。
【0031】
しかしながら、この方法は、水、および第一の有機溶媒、第二の有機溶媒の均一な混合溶媒中から、水、及び水溶性である第一の有機溶媒を除くことは、例えば蒸留においては、留出物中に水及び第一の有機溶媒また、第二の有機溶媒も共に所定の比率で留出してしまうため、分散物が濃縮され粒子濃度が上昇して凝集が起こらない様にするには、一定以下に粒子濃度が低下しないよう第二の有機溶媒を加えつつ蒸留を行うことが必要である。
【0032】
水を留出させつつ、新たに溶媒を添加することは、煩雑なプロセスであると同時に、この操作が長時間にわたる場合、ハロゲン化銀粒子の特性劣化が起こる原因ともなり細心の注意を必要とするプロセスである。限外濾過等も状況は同じで、均一な分散媒から特定の成分を除くことはなかなか工数のかかる、又、微妙なプロセスということができる。
【0033】
本発明では、水分およびメタノール等の転相溶媒(第一の有機溶媒)を除去する方法を鋭意検討することで、これを効率よく行え、ハロゲン化銀粒子の粒径や分散性、又その写真特性等を劣化させることなく精製することを可能としている。
【0034】
従って、本発明は、前記の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法において、水系で調製した微粒子分散物、例えばハロゲン化銀ゼラチン乳剤中にもともと含有されている水に由来する前記水系微粒子の有機溶媒転相/分散物中の水及び水溶性の転相溶媒(第一の有機溶媒)を、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子の性質を利用し、相分離によって、混合溶媒との比重差を利用し沈降させることで、上澄みと分離して、媒体中に含まれる水等を除く方法を見出したことに基づくものである。このようにして相分離し、凝集・沈降した合成高分子は均一にハロゲン化銀粒子を含有しており、更にこれを第二の有機溶媒中に溶解・再分散させることで均一な有機溶媒転相/分散物を形成することができる。
【0035】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0036】
本発明において、親水性の高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物の具体的代表例としては、写真感光材料に用いられるハロゲン化銀ゼラチン乳剤が挙げられる。
【0037】
本発明はハロゲン化銀乳剤の調製に用いた高分子保護コロイド(例えば、ゼラチン)と吸着可能な官能基をもつ合成高分子を用いて、ハロゲン化銀乳剤を有機溶媒系に転相/分散するものである。
【0038】
最終製品が熱現像感光材料である場合、写真特性が変化する等の問題を回避するため、転相/分散物中からは速やかに、含水率を3.0質量%以下とする必要がある。下限は0%であってもよいが、水を全て除くのは、実際上は難しくまた現実的でもない。実技的には0.01%以上である。
【0039】
ハロゲン化銀乳剤のような水系微粒子の分散物において保護コロイドとして用いられる前記親水性高分子化合物としてはペプチド結合を分子中に有する高分子化合物が好ましいものとして挙げられる。ここにおいてペプチド結合とは、α−アミノ酸同士がカルボキシル基と他のアミノ基とから脱水結合してつくる酸アミド結合のことであり、タンパク、或いはタンパク由来のゼラチン等の天然高分子中の結合骨格となっている結合である。これらの結合は酸アミド結合であり、活性な水素を有する官能基である。
【0040】
これらタンパク由来の天然の親水性高分子の代表例としてはゼラチンがあげられ、例えばハロゲン化銀写真感光材料において、特にそのハロゲン化銀乳剤の製造において保護コロイドとして用いられ、ハロゲン化銀の晶癖、またその増感等、感光特性に大きな影響を与える。
【0041】
ゼラチンとしては、通常分子量10万程度のアルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン、或いは酸化処理したゼラチンや酵素処理ゼラチン等、また、化学修飾ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチン等のゼラチン誘導体)等も挙げられ、ゼラチンの平均分子量としては1万〜7万であることが好ましく、1万〜5万であることが更に好ましい。
【0042】
これらゼラチンで代表される親水性高分子を保護コロイドとして用いる、水系微粒子の水性分散物の代表例であるハロゲン化銀乳剤について、以下説明する。
【0043】
本発明は、親水性高分子を保護コロイドとして用いる、特に粒子径が10〜100nmである水系微粒子の分散物に適用するのが好ましい。
【0044】
この様な水系微粒子の分散物としては、例えば、熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤があげられ、ここにおいて、ハロゲン化銀粒子の平均粒子径は10〜100nm、好ましくは10〜80nmである。ここでいう平均粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体や八面体のいわゆる正常晶である場合、その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径、いわゆる球相当径をいう。なお、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求める。
【0045】
また、粒径の分布を表す変動係数の最適の値としては、0%以上〜30%以下であり、好ましくは、0%以上〜20%以下である。ここで粒径の変動係数とは、粒径のバラツキの程度を表し、電子顕微鏡を用い1000個の粒子について測定した各粒子の投影面積の円換算直径の標準偏差を平均粒径で割った値のパーセント表示値である。
【0046】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができるが、全体のハロゲン組成としてBrが50質量%以上である事が好ましい。塩化銀が多すぎるとオストワルド熟成が進み易く、粒径の増大が起き易くなる。一方、ヨウ化銀が多すぎるとハロゲン化銀粒子の感度が低下し好ましくない。
【0047】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は、均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。また、塩臭化銀粒子の表面に、臭化銀やヨウ臭化銀、ヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0048】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は、当業界公知の方法、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができる。ゼラチンはハロゲン化銀粒子の分散剤(保護コロイド)としてハロゲン化銀1モルあたり、10〜100gの範囲で用いられる。
【0049】
具体的には、ゼラチン溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製する。特に銀イオン水溶液とハライド水溶液をダブルジェットで添加し粒子形成を行う方法が好ましい。
【0050】
感光性ハロゲン化銀乳剤は、ヌードル法、凝集沈殿法、電気透析等、当業界で知られている水洗方法により脱塩することができるが、限外ろ過によっても脱塩をおこなう事ができる。脱水は最終的に脱水された水の伝導度が好ましくは300μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下になる程度に行う。この場合、伝導度の下限に特に制限はないが、通常、5μS/cm程度である。
【0051】
この様にして形成されるハロゲン化銀乳剤は、用いられるゼラチンのゲル化温度以下では、ゲル状態となりマトリクスとしてハロゲン化銀粒子を沈降することなく保持できる。
【0052】
ちなみに、本発明に係わるハロゲン化銀乳剤は、金増感と他の化学増感とを併用することができ、金増感法と組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、セレン増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。また還元増感を用いることができる。本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すこともできる。
【0053】
前記化学増感、また分光増感は、ゼラチンを用い水系で調製した乳剤において行ってもよいし、また、ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を水系において調製後、有機溶媒系に転相、分散した後に行ってもよい。
【0054】
本発明において水系微粒子の保護コロイドである親水性高分子と均一に共存させるために、本発明に係わる合成高分子は、本発明において用いられる第一、また第二の有機溶媒にそれぞれ可溶であること、また、前記親水性高分子と親和性が高いことが必要であり、特に前記親水性高分子中の構造、或いは官能基と親和性が高い官能基が、これら合成高分子中に存在しているることが好ましく、特に、これらの官能基は前記親水性高分子中の所定の構造部位において水素結合の形成が可能な基であることが好ましい。
【0055】
本発明において用いられる、ゼラチン等の親水性高分子中のペプチド結合にたいし水素結合の形成が可能な官能基を含む前記合成高分子としては、前記一般式(1)で表される共重合体であって、前記一般式(2)、(4)および(5)で表されるモノマーを含むグラウンド溶液中に、前記一般式(3)で表されるモノマーを順次添加することで重合、形成された合成高分子ポリマーが好ましい。
【0056】
前記一般式中、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、また、l+m+n+o=100である。また、一般式(4)および(5)において、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1およびm1は1〜300、n2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但し、n1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。
【0057】
これらの合成高分子ポリマーは、前記親水性高分子であるゼラチン等の分子中に含まれるペプチド結合に親和性が高く、これと水素結合が可能な酸アミド基をその分子中に、均一に分散された状態で含んでいると考えられる。一般式(3)で表される酸アミド基を有するモノマー成分を順次添加する製造方法によって製造されることにより、一般式(3)で表されるモノマー成分、酸アミド基が、合成高分子ポリマー中に均一に導入されるためである。これによりゼラチンのような親水性高分子中のペプチド結合と水素結合(と考えている)による親和性によって、互いに均一に混じりあうようになる。
【0058】
一般式(1)において、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0059】
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、またl+m+n+o=100である。また、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1、m1およびn1は1〜300、m2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但しn1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。
【0060】
1で表される炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、1,1−ジメチルエチレン等の基を表す、特に1,1−ジメチルエチレンが好ましい。
【0061】
1で表される炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基としては、無置換のアルキル基、置換アルキル基を含み、無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の基を表す。また、置換アルキル基における置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシ、カルボキシ基等の基を含み、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、また、例えばオキソラニル基、オキサニル基、ピラジニル基等、複素原子を含む飽和炭化水素基でもよい。R1としては水素原子、イソプロピル基等が好ましい。
【0062】
2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を表すが、好ましくは直鎖の、炭素数16以上のアルキル基、例えば、ステアリル基、ベヘニル基等を表す。
【0063】
またR3で表される炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましい。
【0064】
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70,mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、またl+m+n+o=100である。
【0065】
また、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表すが、n1、m1およびn1は6〜100の範囲が好ましく、さらに好ましいのは8〜50である。また、m2およびm2は0〜30の範囲が好ましく、さらに好ましいのは0〜15である。また、n1+n2、m1+m2はそれぞれ好ましくは8以上の整数である。
【0066】
これらの共重合体の製造は、各成分モノマー即ち、下記一般式(2)、(3)、(4)および(5)で表されるモノマーの共重合により得ることができる。
【0067】
一般式(2)で表されるモノマーにおいて、R0、L1は前記と同じ基である。これらのモノマーとしては、代表的にはダイアセトンアクリルアミドがあり好ましいモノマーである。
【0068】
また、一般式(3)で表されるアクリルアミドモノマーとしては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)等が挙げられる。
【0069】
この成分はゼラチンのペプチド結合と親和性が高い酸アミド基を有するモノマー成分であり、共重合体中に均一に、ランダムに配置されることが好ましいと考えられる。
【0070】
一般式(4)および一般式(5)で表されるモノマーにおいてR0、EO、PO、R2、R3等の基は前記一般式(1)におけるものと同義である。これらのポリオキシアルキレン基を有するモノマーとしては、下記の中から選択して用いることができる。
【0071】
例えば(ポリオキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名”プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)]、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、トリトン[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))]およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
【0072】
また、上市されているものとして、日本油脂株式会社製のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどがあげられ、これらの中から選択し用いることができる。
【0073】
これらの共重合体は水に対する親和性と油性を併せもつ両親媒性のポリマーであり、有機溶媒、水の両者中においてそれぞれ溶解分散する性質を有している。
【0074】
前記原料モノマー例えば、DAAM、NIPAM、前記PSE−400、PME−400等の本発明に係わる共重合体ポリマーの構成成分である各モノマーを共重合比に応じて反応溶媒(例えばメチルエチルケトン等各原料モノマーや生成する共重合体が溶解する溶剤)中において、混合し、重合開始剤を添加し、室温或いは加温して共重合させることで共重合体を得ることができる。
【0075】
しかしながら、本発明において、前記一般式(1)で表される共重合体は、一般式(2)、(4)および(5)で表されるモノマーを含むグラウンド溶液中に、一般式(3)で表されるモノマーを順次添加することで共重合させ製造することが好ましい。この製造方法をとることでゼラチン等のペプチド結合を有するタンパク由来の高分子と親和性の高い共重合体を得ることができる。
【0076】
本発明の製造方法によれば、
(A)親水性/親油性をバランスよくもつ例えばDAAMに代表される様なアクリル系モノマー、また、疎水性、親水性を併せもつ長鎖アルキル基を末端に有するポリアルキレンオキシ基含有アクリルモノマー、また、親水性が高いノニオン性ポリアルキレンオキシ基含有アクリルモノマーを前記の混合比率で、例えば溶媒として各モノマーの溶解性また共重合体の溶解性のよいメチルエチルケトン等の溶媒に溶解する。
(B)これをグラウンド溶液として加温しつつ、前記一般式(3)で表される例えばNIPAMのようなアクリルアミド系モノマーを、重合開始剤と共に、徐々に添加してゆく。
【0077】
反応は溶媒の還流温度で行うのが、反応の促進の面から好ましい。用いる溶媒の沸点以上の温度が好ましい。溶媒を用いて均一に溶液重合することが、好ましい。
【0078】
一般式(3)で表されるアクリルアミド系モノマーの添加パターンは、一度に、相対的に多量のモノマーが添加される状況でなければ特に限定されず、例えば一定の流量で滴下或いは添加することが好ましい。但し、厳密に一定の流量で添加する必要はなく、一度に、相対的に多量のモノマーが添加される状況でなければよい。要は、共重合体中に、一度に、相対的に多量の一般式(3)で表されるモノマーが添加されることで、一般式(3)で表されるアクリルアミド単一成分からなる重合体が反応溶液中に生成したり、共重合体骨格中に一般式(3)で表されるアクリルアミド系モノマー単一成分からなるブロックポリマー部が生成したりすることが過度にないようにする。
【0079】
この様に共重合反応の経過と共に、少量ずつ一度に添加量が偏らないように添加することで共重合体の骨格中にその成長に応じてランダムな状態でアクリルアミド成分が共重合体の一部として取り込まれるものと考えられる。
【0080】
また、最初に一度に多くの量を添加すると、グラウンド溶液に添加したのと同様になっては本発明の効果が得られない。また、重合反応の後半に、即ち、グラウンド溶液中のモノマー成分が余り少ない状態で、アクリルアミドモノマーを添加すると、アクリルアミドのプロックポリマーを生じたり、或いは、ポリマー骨格中にブロックポリマー的な形態で共重合するため好ましくない。
【0081】
従って、一般式(3)で表されるアクリルアミドモノマーの添加は、グラウンド溶液中の残モノマー量が仕込んだ全モノマー量にたいし20質量%以下になるまでに終了することが共重合体を製造する上で好ましい。
【0082】
この様に、ゼラチンのペプチド結合と親和性の高い一般式(3)で表されるアクリルアミドモノマーを、前記他の3成分を混合したグラウンド溶液に、順次、添加してゆくことによりゼラチンと相溶性のよい重合体を得ることができる。
【0083】
重合開始剤は一般式(3)で表されるアクリルアミドモノマーと共に添加されることが好ましい。グラウンド溶液中に添加すると、グラウンド溶液中のモノマーの重合が先行し、グラウンド溶液中のモノマー成分量が偏って重合したブロックが植えるので、結果として後から添加するアクリルアミドモノマーの共重合体への取り込まれ方が不均一となり、好ましくない。
【0084】
また、水素結合性の官能基を有するアクリルアミドモノマー成分の添加後には、充分な時間反応をおこなって、残モノマーを低下させる必要がある。好ましくは、反応溶液をポリマー溶液として利用するためにも、好ましい。残モノマーの定量は、液クロ等により反応液をサンプリングすることでリアルタイムに知ることができる。
【0085】
また、重合開始剤は、アクリル系モノマーの重合であり、ラジカルを発生する開始剤であることが好ましく、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては油溶性の過酸化物系(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ターシャリイソブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等)あるいはアゾ系開始剤(例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等)が好ましく挙げられる。
【0086】
これら重合開始剤は、重合性単量体に対して、0.01〜20質量%、特に、0.1〜10質量%使用されるのが好ましい。
【0087】
本発明の溶液重合において反応の場として用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等野ケトン類、エーテル、イソプロピルエーテル等エーテル類、またテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、或いは芳香族炭化水素であるトルエン等特に制限はないが、原料となるモノマーに対しまた生成する共重合体ポリマーに対し、溶解性の高い溶媒を選択して用いることが好ましい。
【0088】
本発明の重合体においては、原料モノマー、共重合体に対する溶解性が充分にあること等から、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0089】
重合温度が余り低くならない様に、溶媒の沸点としては50℃以上が好ましく、70度以上がさらに好ましい。しかしながら、150℃以上と高くなると、その後の取り扱いに工数を要するので、150℃以下であることが好ましい。
【0090】
本発明により得られた共重合体は、重合反応により残モノマー等を1質量%以下とし、反応を終了させる。残モノマー1質量%以下ということは、アミド系モノマーである一般式(2)そして(3)で表されるモノマー(例えば、前記NIPAMおよびDAAM)の合計の質量%であり、これで測定値とする。この測定は、ガスクロマトグラフにて行うが、一般式(4)そして(5)で表されるモノマーはGCにて測定が出来ない。共重合体は、共重合反応を終了させたのち、貧溶媒と混合し、析出させ、溶解、析出を繰り返し、固形分として、単離することができる。例えば水と混合し、共重合体を沈降させ、濾取することで、開始剤断片や、少量の残モノマー、また副生物が除かれ、本発明の共重合体を純度よく得ることができる。
【0091】
また共重合体の重合度としては、ゼラチン等との混合の容易性や、余り高くなると、溶解度が低下する等のため、ポリマー溶液の粘度として固形分30質量%(メタノール溶液 25℃)換算で10cp以上500cp以下となるような重合度であることが好ましい。
【0092】
本発明に係わるこれらの共重合体は有機溶媒にもまた水系にも親和性がある両親媒性ポリマーであるが、一般式(3)で表されるアクリルアミド系のモノマーを前記の如く共重合させるために、ゼラチン等のタンパク、即ちペプチド結合を有する天然高分子に高い親和性を有するものである。
【0093】
アクリルアミド成分は、ゼラチン等の親水性高分子中のペプチド成分と水素結合等を形成するためゼラチン等と親和性が高いものと推定しており、本発明に係わる製造方法によって得られた前記一般式(1)で表される共重合体ポリマーは一般式(3)で表されるアクリルアミド成分が共重合体中においてランダムに分散して存在しており、そのためゼラチン中のペプチド結合と、均一に多くのサイトで水素結合するため、相互作用がつよく、部分的な凝集を起こしにくく好ましいと考えられる。4成分を同時に溶液重合させる方法では、例えば共重合体骨格中にランダムに前記アクリルアミドモノマー成分が取り込まれず、局所的にブロック共重合体を形成したり、共重合体骨格中にゼラチンとの相互作用のサイトとなるアクリルアミド成分が均一に分散せず、そのために、ゼラチン中のペプチド結合との相互作用のサイトが不足し、凝集等を起こすと考えられる。
【0094】
本発明において、ゼラチン等、親水性の高分子化合物と吸着可能な官能基をもつ合成高分子は、水系微粒子の分散体と混合し、これを有機溶媒系に転相/分散するため、第一の有機溶媒(転相溶媒)に溶解する。第一の有機溶媒としては、親水性有機溶媒が好ましく、本発明において親水性有機溶媒(転相溶媒ともいう)とは、水と自由に混合可能な有機溶媒であり、例えば溶解性パラメータで23.0[(MPa)1/2](J.Brandrup,E.H.Immergut ’POLYMER HANDBOOK’ Third Edition JOHN WILEY & SONS)以上の極性の高い有機溶媒、特にプロトン系有機溶媒が好ましい。代表例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が上げられる。最終的には、さらに溶媒置換を受けることが多いため、沸点が低く、特に好ましいのは、メタノールである。
【0095】
水系微粒子の分散体の溶剤系への転相において、本発明に係わる合成高分子のこれら親水性有機溶媒溶液中における濃度は、固形分濃度で1質量%以上、30質量%以下であることが好ましく、余り濃くなると均一な混合が不可能となり、また低すぎても全体の濃度が低下し、必要な量を確保するのに大量が必要になるなど好ましくない。
【0096】
また、ハロゲン化銀乳剤等の水系微粒子の分散体と、前記合成高分子の第一の有機溶媒(転相溶媒)溶液との混合は、合成高分子の転相溶媒溶液中に、水系微粒子の分散物を添加する方法が好ましく、前記合成高分子の転相溶媒の溶液中への水系微粒子の分散物を順次添加する添加速度は、
5×10-3[mol/min/L]以上、5×10-2[mol/min/L]以下
(合成高分子の第2の有機溶媒溶液単位体積当りの水系微粒子のモル換算の添加速度)
であることが好ましい。
【0097】
5×10-2[mol/min/L]よりも速い速度で添加すると、混合時に、高分子同士が、水素結合等による相互作用によって、均一に混じり合った状態(疑似平衡)が達成される前に、更に親水性高分子を含んだ水系微粒子の分散物が添加されることになるので、凝集が起こり好ましくない。また、余り添加速度が遅い場合には、前記のようにゼラチンのような親水性高分子のゲル化点以上の温度で行われるため、転相溶媒の蒸発等、溶媒の組成が変化したり、また転相に要する時間がかかりすぎるという工程上の問題から好ましくない。
【0098】
また、前記合成高分子のこれら親水性有機溶媒の溶液と、親水性高分子を含有する水系微粒子の分散物の混合は、前記親水性高分子の凝集が起こらないようにするため、前記親水性高分子のゲル化温度よりも5℃〜30℃、より好ましくは、10〜20℃高い温度で行われるのがよい。
【0099】
ゼラチンの場合ゲル化点は15〜20℃であるので、用いられるゼラチンの種類によっても変化するが、前記合成高分子のこれら親水性有機溶媒の溶液と、親水性高分子を含有する水系微粒子の分散物の混合においては、通常35℃〜50℃の範囲の温度が用いられる。
【0100】
前記親水性高分子はペプチド結合を有するタンパク由来の天然高分子であり、ゼラチンのように、通常はゲル化温度を有する。ゲル化温度以下で転相すると、合成高分子との均一な混合が、特に水素結合を通した相互作用が妨げられるので、凝集が起こりやすくなり好ましくない。
【0101】
親水性高分子(ゼラチン)に対する共重合体の比率は質量比で0.5倍〜5倍の範囲が好ましく、これよより少ないと、本発明による共重合体によるゼラチンの被覆、或いは溶解が充分でなく、凝集を生じやすい。また多すぎる場合効果が飽和するのみであり、別に希釈が必要となったり材料の損失を招きメリットがない。
【0102】
有機溶媒転相分散物中の無機微粒子分散物濃度は、凝集を起こさない0.1〜10質量%、好ましくは、0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%の範囲である。
【0103】
親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、合成高分子の転相溶媒と混合し、均一な水系微粒子の転相/分散物を形成した後、本発明においては、第二の有機溶媒と混合する前に、前記合成高分子の性質を利用して、相分離により調製した分散物の脱水を行うものである。これにより、混合物から水及び第一の有機溶媒を除くことができる。
【0104】
相分離による混合物からの水及び第一の有機溶媒の除去は、親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、合成高分子の転相溶媒溶液と混合した後、混合物の温度、及び/又は、水と第一の有機溶媒との混合割合などを変えることにより、本発明に係わる合成高分子の溶解度を変化させることで行うことができる。温度、及び/又は、水と第一の有機溶媒との混合割合等の変化により行われる本発明の相分離による脱水方法は、蒸留、又、膜分離等の大きな装置を用いず行うことができる。
【0105】
親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、合成高分子の転相溶媒溶液と混合し形成した均一な水系微粒子の転相/分散物において、水系微粒子の分散物(例えばハロゲン化銀乳剤)から持ち込まれた水を、分散物の媒体を構成する混合溶媒中から除き、安定な分散物とするには、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒とハロゲン化銀乳剤を混合したのち(第二の有機溶媒の混合前に)、混合温度から、該分散物の温度を変化させること、及び/又は、水と第一の有機溶媒との混合割合を調整することで、実施することができる。
【0106】
合成高分子の種類、組成などにより、温度変化及び水と第一の有機溶媒と乃混合割合などの条件は変わってくる。
【0107】
一例として、温度変化に関しては、ハロゲン化銀乳剤と、合成高分子の転相溶媒溶液との混合は、前記のように親水性高分子のゲル化温度よりも5℃〜30℃高い温度、即ち、例えば30℃〜50℃の範囲で行われるが、混合後に、該分散物の温度を10℃〜35℃程度の温度に、即ち混合温度から5℃〜20℃程度温度を低下させ、その状態で静置することで達成される。
【0108】
また、水と第一の有機溶媒の混合割合に関しては、溶媒組成中での含水率(質量%)が、30〜50%に調整することで達成される。
【0109】
前記相分離の条件としては、合成高分子の種類や組成に合わせて、温度変化又は水と第一の有機溶媒の混合割合を最適な条件に調整することが好ましく、両者の条件を組み合わせて調整することがより好ましい。
【0110】
これにより均一な媒体中から、速やかに、本発明に係わる合成高分子がゲル化し相分離を起こし、混合溶媒との比重差により沈降する。沈降したゲル中には、合成高分子、ハロゲン化銀粒子が均一に凝集体を形成することなく含有されており、これを分離後、第二の有機溶媒に再溶解・再分散することで、均一な分散物を形成する。これにより水分は、第一の有機溶媒と共に分離され除かれる。
【0111】
本発明において、水系のハロゲン化銀ゼラチン乳剤と、合成高分子の第一の有機溶媒であるメタノール溶液は、ゼラチンのゲル化温度以上の温度である30〜50℃程度の温度で混合される。混合時のハロゲン化銀の有機溶媒転相/分散物中における含水率は、用いられるハロゲン化銀乳剤と合成高分子の第一有機溶媒溶液中の濃度から、15〜60%、好ましくは25%〜50%、特に好ましくは35%〜45%程度に調整される(いずれも質量%)。ここでは合成高分子の転相溶媒溶液と混合したハロゲン化銀粒子の分散物は均一な溶液を形成している。
【0112】
均一な溶液を形成後、ここで前記のように混合時の温度を低下させると、合成高分子の相分離が引き起こされ、混合溶媒からハロゲン化銀粒子を含有する合成高分子ゲルが比重差により沈降する。相分離には、均一な混合分散物を10℃〜35℃程度の温度範囲まで冷却することが必要である。これにより、合成高分子で被覆されたハロゲン化銀粒子が、合成高分子の混合溶媒中における溶解度が変化することで凝集・沈降してくる。
【0113】
この相分離については、以下のように考えられる。
【0114】
合成高分子単体は、有機溶媒には可溶だが、水に対しては溶解度が低下する。従って、混合溶媒系において、水の割合が増えることで合成高分子の溶解度が低下する。更に温度を下げることで溶解度が低下して、相分離、沈降すると考えられる。
【0115】
寄与は少ないかもしれないが、温度低下によって、凝集してくる性質には、ゼラチンが、ゲル化する現象とも関係しているかもしれない。
【0116】
こうして相分離したハロゲン化銀の有機溶媒転相/分散物からデカンテーション等により均一な上澄みをのぞくことで、分散媒中からの脱水が可能である。
【0117】
次いで、相分離、沈降した部分を分離してこれを第二の有機溶媒と混合、再溶解・再分散することで、脱水された第二の有機溶媒を媒体とする有機溶媒分散物を容易に得ることができる。例えば、メチルエチルケトンを混合し、数分〜数時間(スケールによって異なるが)、攪拌、溶解させることで、メチルエチルケトンを主体とする媒体中に均一にハロゲン化銀粒子が分散したハロゲン化銀粒子の有機溶媒転相/分散物を得ることができる。
【0118】
また、本発明の相分離による脱水は、同時に精製工程を一段階設けたことに相当するので、ハロゲン化銀調製、また、合成高分子調製時の混入物(例えば、残モノマー、開始剤断片)等も同時に除くことができ、これもハロゲン化銀粒子(水系微粒子)の有機溶媒転相/分散物の安定性及びこれを用いた最終製品の特性向上に寄与する。
【0119】
本発明に係わる合成高分子の性質を利用した相分離は、合成高分子の組成によっても変わるが、水が15〜60%程度混入した系において起きやすい。好ましくは25%〜50%、特に35%〜45%(いずれも質量%)程度程度混入した系で起こる。従って、こういった相分離を利用するには用いる合成高分子の種類、また組成、濃度に応じて水の組成%の最適点を求め相分離による脱水を実施することが好ましい。
【0120】
相分離により、水を除いた後、分離した合成高分子で被覆されたハロゲン化銀粒子の凝集物は、これを第二の有機溶媒中に溶解、再分散することで、均一な、含水率の低下した、水性微粒子(ハロゲン化銀粒子)の有機溶媒転相/分散物を得ることができるが、これら第二の有機溶媒としては、最終製品の多くに好ましく用いられる、第一の有機溶媒(転相溶媒)として好ましく用いられるプロトン性の溶媒ではなく、溶解性パラメータで18.5〜21.0[(MPa)1/2]の範囲にある、より疎水性(油性)の有機溶媒であり、また、第一の有機溶媒とも混合する溶媒が好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル等の溶媒であり、最終製品により使用される溶媒は変化するが、例えば、後述の熱現像感光材料感光層塗布液を、通常支持体としてよく用いられる耐熱性のポリエチレンテレフタレート支持体上に塗布し熱現像感光材料を製造する場合には、メチルエチルケトンが用いられる。
【0121】
即ち、第一の有機溶媒(転相溶媒)に溶解した合成高分子溶液中に、水系微粒子の水性分散物を添加、混合して、有機溶媒系への転相を行った後に、本発明に係わる相分離による方法で、水系微粒子及び合成高分子のゲル化物と水及び第一の有機溶媒を分離させた後、水系微粒子及び合成高分子からなるゲル化物を分離して第二の有機溶媒中に再溶解・再分散すればよい。特に方法は限定されないが、分離したゲル化物は、乾燥させずに、第二の有機溶媒と混合し、再溶解、分散するのが好ましい。例えば、混合して加温、溶解すればよい。
【0122】
本発明の相分離による、脱水について以上説明したが、このようにして相分離により、脱水した後、第二の有機溶媒に再溶解、再分散した後、更に、蒸留法または膜分離法等を用いて、媒体中から、更に残留する水又は少量の他の溶媒成分を除いてもよい。
【0123】
分散系が余り高温に晒されると、分散系が不安定になり、凝集が起こりやすいことから、蒸留法としては比較的低温で実施できる減圧蒸留法が好ましく、例えば、減圧沸点で10℃以上40℃以下の範囲で蒸留が行われることが好ましい。
【0124】
また、膜分離に用いられる膜としては、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、透析膜などのうち、特に、限外濾過膜を用いることが好ましい。
【0125】
蒸留法或いは膜分離法等による脱水法は、いずれも水の留出、溶出が高度に選択的ではないため、水と他の溶媒は所定の比率で留出乃至溶出するので、置換すべき溶媒を新たに追加しつつ行う必要があり、これのみで脱水を行おうとすれば、これを実質的には二度、三度と複数回繰り返したり、また連続的に長時間行う必要がある。従って、本発明に係わる方法を用いることで、蒸留又は膜分離等の、大きな設備を必要とし煩雑で工数のかかる工程の低減を図ることができる。これに伴いハロゲン化銀粒子の有機溶媒転相/分散物の調製の過程における熱履歴等も軽減されるため、本発明によれば、カブリ等が少なく、感度の高い、ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒転相/分散物が得られる。
【0126】
以上、本発明に係わる相分離による脱水を行って得られるハロゲン化銀乳剤の有機溶媒転相/分散物は、効率よく充分に脱水が行われ、分散性の劣化がなく、有機溶媒転相/分散物調製の過程における熱履歴等も大幅に低減されるため、特性変化も少なく、本発明によれば、カブリ等が少なく、感度の高い、ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒転相/分散物が得られ、これを別途調製された例えばベヘン酸銀等の長鎖脂肪酸銀塩分散液と混合し、必要な増感の後(増感色素、増感剤等)、還元剤をはじめとする添加剤、追加のバインダー等が添加された後、熱現像感光材料塗布液(有機溶媒系)を調製し、これを基材(支持体フィルム)上に塗布し、乾燥することで、塗布欠陥等がなく、高感度、高カバリングパワーの熱現像感光材料を製造することができる。
【実施例】
【0127】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0128】
実施例
以下の手順によりハロゲン化銀ゼラチン乳剤を調製した。
【0129】
《ハロゲン化銀乳剤の調製》
〔ハロゲン化銀乳剤1の調製〕
(溶液A1)
フタル化ゼラチン 66.2g
化合物A(*1)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げた
(溶液B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(溶液C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げた。
【0130】
(溶液D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
3IrCl6(4×10-5mol/Ag相当) 50.0ml
水で1982mlに仕上げた。
【0131】
(溶液E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(溶液F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げた。
【0132】
(溶液G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(溶液H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げた。
【0133】
(*1)化合物A:
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
特公昭58−58288号に記載の混合撹拌機を用いて、溶液A1に、溶液B1の1/4量及び溶液C1の全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。この間pAgの調整を、溶液E1を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液B1の3/4量及び溶液D1の全量を、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間撹拌した後、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり651gになるように水を添加し、ハロゲン化銀乳剤1を得た。
【0134】
以上の様にして調製したハロゲン化銀乳剤1中のハロゲン化銀粒子は、平均球相当径0.045μm、球相当径の変動係数12%、[100]面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。平均球相当径、球相当径の変動係数については電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。またこの粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて求めた。
【0135】
なお、ハロゲン化銀乳剤1中の平均粒径が0.001μm以上、0.050μm以下のハロゲン化銀粒子の比率は、銀量換算で全ハロゲン化銀粒子の61質量%であった。
【0136】
《ポリマーAの合成》
0.5リットルの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン50g、及びNIPAM以外のモノマーを表1に記載の組成割合(単位g)で仕込み、80℃に加熱した。さらに表1に記載のNIPAM(単位g)、更にラウリルパーオキサイド0.12gをメチルエチルケトン43gに溶解した液をフラスコ中に2時間かけて滴下した。その後1時間かけて昇温し、還流状態になった時点で、ラウリルパーオキサイド0.17gをメチルエチルケトン33gに溶解した液をフラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて更に3時間反応させた。その後メチルハイドロキノン0.33gをメチルエチルケトン107gに溶解した液を添加し冷却後、ポリマーAのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度≒30質量%)を得た。
PME−400;ブレンマーPME−400
−(EO)m−CH3(m≒9)を有するメタアクリレート
PSE−400:ブレンマーPSE−400
−(EO)m−C1837(m≒9)を有するメタアクリレート
(EO;エチレンオキシ基)
上記はすべて日本油脂製。
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
DAAM:ダイサセトンアクリルアミド(協和発酵製)。
【0137】
【表1】

【0138】
《ポリマーAの精製及び組成分析》
ポリマーAのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度≒30質量%)100gを10倍量の純水に滴下、析出させ、濾過することで水洗、精製を行った。得られたポリマー析出物をメタノールに溶解させ、全量を300gに仕上げた。
【0139】
得られたポリマー/メタノール溶液の組成分析を以下の方法で行った。
(1) ホットオーブンで試料を乾燥固化させ、固形分濃度を測定した。
(2) KF法(カールフィッシャー)で試料の含水率を測定した。
(3) GC法(ガスクロマトグラフィー)で残存メチルエチルケトンの量を定量した。
(4) (1)〜(3)より、含有メタノール量を算出した。
得られた結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
《ポリマーAの溶解度変化の測定》
ポリマーAのメタノール溶液を用いて、表3に示す組成割合になるように水/メタノールを用いてサンプル1〜4を調製した。
【0142】
【表3】

【0143】
得られたサンプル1〜4を温度30℃に調整してポリマーの溶解状態を目視で観察した。観察結果を表4に示す。
【0144】
尚、ここで溶解状態は、目視で以下の様に判断した。
【0145】
[溶解状態の評価]
1:透明である。
【0146】
2:白濁している。
【0147】
3:二層分離している。
【0148】
【表4】

【0149】
表4より、含水率40%(溶媒組成のみ)あたりでポリマーAの溶解性が変化していることがわかる。
【0150】
《ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒転相/分散》
〔第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤1〕
前記ポリマーAのメタノール溶液70.75gに希釈メタノール31.14gを加えポリマー濃度を調整した。次に前記ハロゲン化銀乳剤1を33.21g計量し、5%KOH水溶液0.2gを加え、pH調整した。先ほど濃度調整したポリマー溶液を撹拌しながら45℃に保ち、pH調整したハロゲン化銀乳剤を20分かけて添加した。なお、ハロゲン化銀乳剤も45℃で添加した。ハロゲン化銀乳剤の添加終了後、さらに30分攪拌した。その後、液温を30℃に変えてから水を加え、含水率(固形分を除く溶媒組成のみ)が35%となるように調整した。
【0151】
〔第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤2〜4〕
希釈メタノールと含水率を表5に示すように変える以外は第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤1と同様にして第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤2〜4を調整した。
【0152】
【表5】

【0153】
〔第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤の沈降分離〕
第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤1〜4を30℃に保ったまま、撹拌を停めて静置した。1時間経過したところで状態を確認したところ、1と2に関しては変化無かったが、3と4に関しては、乳剤が沈降分離し、乳剤層と上澄み層の二層に分離していた。
【0154】
〔第二有機溶剤への転相/水及び第一有機溶剤の除去〕
〈第二有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤1〉
第一有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤(以降第一転相乳剤と略記)1を撹拌しながら液温を18℃に調整した。そこに18℃に調整したメチルエチルケトン600gを添加することにより、第二有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤(以降第二転相乳剤と略記)1を得た。得られた第二転相乳剤1から以下の方法に従って水および第一転相に使用したメタノールの除去を行った。市販のエバポレーターを用いて第二転相乳剤1を質量換算で1/2に濃縮する。1/2濃縮後、濃縮したのと等量のメチルエチルケトンを追加し、再度1/2濃縮を繰り返す。先ほどと同様にして1/2濃縮後、濃縮したのと等量のメチルエチルケトンを追加し、更に濃縮する。質量が157gになるまで濃縮して、水およびメタノールの除去を行い、第二転相乳剤1(脱水、脱メタノール済み)を得た。なお、エバポレーターの操作条件は、減圧度1.6×10-2MPa、バス温度=40℃で実施した。除去後の水およびメタノール含有量は、それぞれ0.5%、0.1%であった(いずれも質量%)。
【0155】
〈第二有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤2〉
第二転相乳剤1と同様にして、第二転相乳剤2を作成した。除去後の水およびメタノール含有量は、それぞれ0.6%、0.1%であった。
【0156】
〔沈降分離/第二有機溶剤への転相/水及び第一有機溶剤の除去〕
〈第二有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤3〉
静置操作で乳剤層と上澄み層に二層分離した第一転相乳剤3の上澄み液を除去することで、水及び第一転相に使用したメタノールの除去を行った。なお、上澄み液は、質量換算で1/2を除去した。次に、残った乳剤層を撹拌しながら、そこに18℃に調整したメチルエチルケトン500gを添加し、再分散30分行うことにより、第二転相乳剤3を得た。この段階ではまだ水、メタノールの除去が不十分であるため、エバポレーターによる水、メタノールの除去を行った。第二転相乳剤3を質量換算で1/2に濃縮し、濃縮したのと等量のメチルエチルケトンを追加した。質量が157gになるまで再濃縮して、水およびメタノールの除去を行い、第二転相乳剤3(脱水、脱メタノール済み)を得た。なお、エバポレーターの操作条件は、減圧度1.6×10-2MPa、バス温度=40℃で実施した。除去後の水およびメタノール含有量は、それぞれ0.8%、0.1%であった(いずれも質量%)。
【0157】
〈第二有機溶剤転相ハロゲン化銀乳剤4〉
第二転相乳剤3と同様にして、第二転相乳剤4を作成した。除去後の水およびメタノール含有量は、それぞれ1.0%、0.1%であった(いずれも質量%)。
【0158】
《有機銀塩粒子の調製》
図1に示すような装置を使って有機銀塩粒子を調製した。タンク101の中でベヘン酸500g、純水16.2kgを80℃で撹拌しながら5.0mol/L−KOH水溶液280mlを5分かけて添加した後に60分間反応させてベヘン酸カリウム溶液を得た。
次に、タンク102の中に硝酸銀238gを溶解した水溶液17.1Lを用意し、10℃に保温した。図1中の104に示す混合器(供給管と排出管の内径3mm)に、先のベヘン酸カリウム溶液、硝酸銀水溶液を3000cm3/minの一定流量で添加し、タンク103にストックした。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を透過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。得られた脱水済みケーキを40℃/72時間乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉体(粉末有機銀塩)を得た。
【0159】
《有機銀塩分散液の作製》
ポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製エスレックB・BL−SHP)49gをメチルエチルケトン1300gに溶解し、VMA−GETZMANN社製デゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液を調製した。粉末有機銀塩を全量添加してからは、1500rpmで15分攪拌を行った。この予備分散液をポンプを用いてミル内滞留時間が1.2分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ(株)製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速9m/sにて分散を行なうことにより有機銀塩分散液を調製した。得られた有機銀塩分散液の固形分濃度は約27%であった。
【0160】
[下引き済み支持体の作製]
青色染料濃度0.135の二軸延伸済みポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に10W/m2・minの条件でコロナ放電処理を施し、一方の面に下記バック面側下引き下層用塗布液を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設し、140℃で乾燥し、続いて下記バック面側下引き上層用塗布液を乾燥膜厚0.2μmになるように塗設した後140℃で乾燥した。また反対側の面には下記感光性層側下引き下層用塗布液を乾燥膜厚0.25μmになるように塗設し、続いて下記感光性層側下引き上層用塗布液を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設した後140℃で乾燥した。これらを140℃で2分間熱処理し、下引き済み試料を作製した。
【0161】
《バック面側下引き下層用塗布液》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート
(20/20/40)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 16.0g
スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシメチルメタクリレート
(25/45/30)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 4.0g
SnO2ゾル(固形分10%) 91g
(特開平10−059720号公報記載の方法で合成)
界面活性剤A 0.5g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0162】
《バック面側下引き上層用塗布液》
変性水性ポリエステルA(固形分18%) 215.0g
界面活性剤A 0.4g
真球状シリカマット剤 シーホスター KE−P50(日本触媒(株)製) 0.3g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0163】
【化2】

【0164】
《変性水性ポリエステルAの合成》
重合用反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去し、エステル化を行った。その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、変性水性ポリエステルAの前駆体を得た。前駆体の固有粘度は0.33であった。
【0165】
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記前駆体を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、固形分濃度が15質量%の前駆体の溶液を調製した。
【0166】
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、上記前駆体溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱した。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルAの溶液を調製した。
【0167】
《感光性層側下引き下層用塗布液》
スチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート
(40/40/20/0.5)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 70g
界面活性剤A 0.3g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0168】
《感光性層側下引き上層用塗布液》
変性水性ポリエステルB(固形分18%) 80.0g
界面活性剤A 0.4g
真球状シリカマット剤 シーホスター KE−P50(日本触媒(株)製) 0.3g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、固形分濃度0.5%の塗布液とした。
【0169】
《変性水性ポリエステルBの合成》
前記前駆体溶液を1800ml、単量体混合液組成をスチレン31g、アセトアセトキシエチルメタクリレート31g、グリシジルメタクリレート61g、n−ブチルアクリレート7.6gとした以外、編成水性ポリエステルAと同様にして変性水性ポリエステルBの溶液を作製した。
【0170】
《塗布試料101〜106の作製》
下記の手順に従って、熱現像感光材料である塗布試料101〜106を作製した。
【0171】
《表面保護層塗布液の調製》
メチルエチルケトン 1056g
セルロースアセテートプロピオネート
(イーストマンケミカル社製、CAP141−20) 148g
ポリメチルメタクリレート
(ロームアンドハース社製、パラロイドA21) 6g
マット分散液
(分散度10%の平均粒子サイズ4μmシリカ、固形分濃度1.7%) 170g
CH2=CHSO2CH2CH(OH)CH2SO2CH=CH2 3.6g
ベンゾイミダゾール 2g
917O(CH2CH2O)23917 5.4g
LiO3S−CF2CF2CF2−SO3Li 0.12g
《バック層》
メチルエチルケトン 1350g
セルロースアセテートプロピオネート
(イーストマンケミカル社製、CAP482−20) 121g
染料−A 0.23g
染料−B 0.62g
フッ素系アクリル共重合体
(ダイキン工業(株)、オプトフロンFM450) 1.21g
非結晶性飽和共重合ポリエステル
(東洋紡績(株)製、バイロン240P) 18.1g
マット剤分散液 下記参照
917O(CH2CH2O)23917 5.21g
LiO3S−CF2CF2CF2−SO3Li 0.81g
高分子分散剤(セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−20))2gを溶解したMEK90g中に、有機固体潤滑剤粒子(N−ステアリルステアリン酸アマイド(融点:95℃ 平均粒径:5.5μm))を2g添加した。このマット剤液を超音波分散機(アレックス社(ALEX Corporation)製、商品名:ウルトラソニック・ジェネレーター(Ultrasonic Generator)、周波数25kHz、600W)にて30分間分散を行い、マット分散液とした。
【0172】
【化3】

【0173】
(感光性塗布液1〜4の調製)
前記有機銀塩分散液(1670g)に890gのメチルエチルケトンを加え撹拌しながら18℃に保温し、前記第二転相乳剤1を157g添加して30分攪拌した。その後、ビス(ジメチルアセトアミド)ジブロモブロメート(11%メタノール溶液)12.6gを添加して1時間撹拌した。続いて、臭化カルシウム(11%メタノール溶液)20.1gを添加して30分間撹拌した。さらに、安定剤液および赤外増感色素液を添加して1時間撹拌し、その後、温度を13℃まで降温して更に30分間撹拌した。13℃に保温したままポリビニルブチラール樹脂粉末(積水化学工業(株)製エスレックB・BL−5)416gを添加して溶解させた。溶解を確認した後、テトラクロロフタル酸19.8g(13%メチルエチルケトン溶液)を添加し、さらに撹拌を続けながら以下の添加物を15分間隔で添加し、感光性塗布液1とした。
フタラジン 12.4g
DesmodurN3300(モーベイ社、脂肪族イソシアネート) 17.6g
かぶり防止剤液 下記参照
現像剤液 下記参照
〈赤外増感色素液の調製〉
赤外増感色素−1を300mg、赤外増感色素−2を400mg、5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール130mg、2−クロロ−安息香酸21.5g、増感色素溶解剤2.5gをメチルエチルケトン135gに溶解し、赤外増感色素液を調製した。
【0174】
〈安定剤液の調製〉
安定剤0.9g、酢酸カリウム0.3gをメタノール14gに溶解し安定剤液を調製した。
【0175】
〈現像剤液の調製〉
現像剤を120g、4−メチルフタル酸9gをメチルエチルケトンに溶解し、1200gに仕上げて現像剤液とした。
【0176】
〈かぶり防止剤液の調製〉
トリブロモメチルスルホニルピリジン11.6gをメチルエチルケトンに溶解し、180gに仕上げてかぶり防止剤液とした。
【0177】
【化4】

【0178】
上記感光性塗布液1の調製において、第二転相乳剤1に代えて、それぞれ第二転相乳剤2〜4を用いた以外は同様にして、感光性塗布液2〜4を調製した。
【0179】
《試料101の作製》
[感光層、表面保護層、バック層の塗設]
前記下引き済み試料の感光層面側下引きの上に、総銀量が1.6g/m2になるように感光性塗布液1を、その上にウェット付量が23g/m2になるように表面保護層を重層塗布した。続いて反対側の感光層面側下引きの上にウェット付量が4.2g/m2になるようにバック層を塗布した。なお、乾燥は各々60℃、15分間行った。両面塗布された試料を搬送しながら79℃で10分熱処理をして熱現像感光材料(試料101)を得た。
【0180】
《試料102〜104の作製》
上記試料101の作製において、感光性塗布液1の代わりに感光性塗布液2〜4をそれぞれ用いて、試料102〜104を作製した。
【0181】
《熱現像感光材料の評価》
上記作製した試料101〜104について、下記の方法に従って各種評価を行った。
【0182】
〔露光及び現像処理〕
上記作製した各試料の感光性層塗設面側から、光学楔を介して高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査による露光を施した。この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75°として画像を形成した。(この場合、当該角度を90°とした場合に比べ、ムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。)その後、ヒートドラムと冷却ゾーンを有する自動現像機を用いて、試料の保護層とドラム表面が接触するようにして現像を行った。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。尚、現像は、137℃で5秒間加熱を行った。
【0183】
〔感度、カブリ濃度及び最高濃度の測定〕
得られたウェッジ階調からなる銀画像の濃度を、濃度計により測定し、縦軸が銀画像濃度(D)、横軸が露光量(E)の対数(LogE)からなる特性曲線を作成した。
【0184】
この特性曲線において、最小濃度(Dmin;カブリ濃度)よりも1.0高い濃度を与えるに要する露光量の比の逆数を感度と定義して、これを求めた。また、最小濃度(Dmin;カブリ濃度)と最高濃度を求めた。なお、評価は、試料101の値を100とした相対値とした。表6に結果を示した。
【0185】
〔湿度依存性の評価〕
試料101〜104について、23℃80%RH環境下で3日間調湿した後に、上記と同様の方法で露光および現像を行った。そのときのカブリ濃度を測定し、湿度依存性の評価とし、表6に示した。尚、調湿前の試料101のカブリ濃度を100とした値で示した。
〔生保存性の評価〕
作製した各試料を、40℃55%RHにて遮光容器中に30日保存し、これを強制劣化処理とした。比較として、同じ試料を25℃、55%RHにて遮光容器中に7日保存し、これを基準処理とした。これらの各試料を、上記と同様の方法で露光及び熱現像処理を行い、同様の方法で最小濃度(カブリ濃度)を測定し、下記式よりカブリの増加(ΔDmin)を算出し、これを生保存性の尺度とし、試料101のそれを100とした相対値で表示した。
【0186】
ΔDmin=(強制劣化処理試料のカブリ濃度)−(基準処理試料のカブリ濃度)
【0187】
【表6】

【0188】
表6の結果より明らかなように、本発明の熱現像感光材料は、カブリ、感度、最高濃度及び湿度依存性及び生保存性の評価において比較例よりも優れており、診断画像として適切な出力画像が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】有機銀塩粒子の調製に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0190】
101,102、103 タンク
104 混合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性高分子を保護コロイドとする水系微粒子の分散物を、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基を有する合成高分子を含む第一の有機溶媒と混合し、更に、第二の有機溶媒と混合する、水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法であって、第二の有機溶媒の混合前に、比重差を利用した相分離によって、水及び第一の有機溶媒を除去することを特徴とする水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【請求項2】
前記相分離が、前記合成高分子の、溶解度変化を用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【請求項3】
前記合成高分子において、前記親水性高分子と水素結合可能な官能基がアミド基であり、かつ、前記親水性高分子が官能基としてペプチド結合を有することを特徴とする請求項1または2に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【請求項4】
前記合成高分子が、下記一般式(1)で表される共重合体であって、一般式(2)、(4)及び(5)で表されるモノマーを含むグラウンド溶液中に、一般式(3)で表されるモノマーを添加することで、重合、形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【化1】

(一般式(1)中、R0は水素原子またはメチル基を表し、L1は炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキレン基を、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基を表す。また、R2は炭素原子数10以上、22以下のアルキル基を、またR3は水素原子、または炭素原子数1から5のアルキル基を表す。
また、ここにおいて、l、m、n、oはそれぞれのモノマー成分の質量%を表し、lは20〜70、mは2〜40、nは5〜20、oは5〜20の範囲であり、また、l+m+n+o=100である。また、一般式(4)および(5)において、EOはエチレンオキシ基を、またPOはプロピレンオキシ基を表す。n1およびm1は1〜300、n2およびm2は0〜60の範囲の整数を表す。但し、n1+n2、m1+m2はそれぞれ2以上の整数である。)
【請求項5】
前記水系微粒子の分散物において、水系微粒子の粒子径が10〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。
【請求項6】
前記水系微粒子の分散物がハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系微粒子の有機溶媒転相/分散物の調製方法。

【図1】
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