説明

水系接着剤組成物

【課題】使用直前に混合する必要がある、架橋剤混合後は速やかに使用する必要があるなどの架橋剤を用いた際の作業上の問題がなく、コンタクト性に優れ、耐湿熱性にも優れる水系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】固形分を基準として、クロロプレンゴムラテックス100重量部に対してアクリル変性SBRラテックスを15〜200重量部配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴムラテックス接着剤組成物の耐湿熱性の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムラテックスは水系であるため安全性が高く、コンタクト性を有し初期接着力に優れるという特徴がある。そこで、例えば従来溶剤ゴム系接着剤が使用されていた分野などにおいて、溶剤を使用しない環境対応型の接着剤としてクロロプレンゴムラテックスをベースとした接着剤への置換えが行われている。
【0003】
このような水系コンタクト型接着剤においても接着性能向上が求められており、特に接着体の耐久性に直結する耐湿熱性能は強く求められている。このような要求に対して、従来はカルボジイミドや金属化合物などの架橋剤を添加する方法が検討されてきた。しかしながら、架橋剤を用いているため使用直前に混合する手間がかかり、架橋剤混合後は速やかに使用する必要があったため作業性の点で問題があった。また予め架橋剤を配合した1液タイプもあるが、保存性の点で問題があったり、反応性の低い架橋剤を使用するため耐湿熱性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1には、特定のゲル含有率であるクロロプレンゴムラテックスを用いることによって耐熱クリープ性能を向上させた接着剤組成物が開示されているが、架橋剤を用いているため作業性の点で問題があった。また、耐湿熱性能についても改善の余地があった。
【特許文献1】特開2002−275442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題はコンタクト性に優れ、架橋剤を用いることなく耐湿熱性に優れる水系接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クロロプレンゴムラテックスおよびアクリル変性SBRラテックスを含有することを特徴とする水系接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水系接着剤組成物は耐湿熱性に優れるため、これを用いて製造された接着体は優れた耐久性を有する。また、硬化剤を用いる必要がないため、使用直前に架橋剤を混合したり、混合後は速やかに使用するなどの制約がなく、作業性に優れた接着剤組成物となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明に用いるクロロプレンゴムラテックスはクロロプレンを単独で重合またはクロロプレンと他のモノマーを共重合させたもので、斯かるモノマーとしてはイソプレン、ブタジエン、ジクロロブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。クロロプレンゴムラテックスの合成にはポリビニルアルコールなどの水溶性高分子や乳化剤が使用され、アニオン型、ノニオン型、カチオン型などが使用できるが、ノニオン型が好ましく、ノニオン型の中でも特にポリビニルアルコール系乳化剤の使用が適している。
【0009】
アクリル変性SBRラテックスは、スチレンおよびブタジエンの他に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を共重合したゴムラテックスである。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが例示できる。また、市販品としては、L7430(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。
固形分を基準として、前記クロロプレンゴムラテックス100重量部に対してアクリル変性SBRラテックスが15〜200重量部配合されていることが好ましい。
【0010】
本発明の接着剤組成物は、クロロプレンゴムラテックスおよびアクリル変性SBRラテックスに加えて、粘着付与樹脂、可塑剤、炭酸カルシウムやシリカなどの無機充填材、老化防止剤、加硫促進剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、凍結安定剤、架橋剤などを添加することができる。
【0011】
粘着付与樹脂の添加により、初期強度、常態剥離強度、耐熱性などをさらに向上させることができる。
粘着付与樹脂の具体例として、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、これらロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル、これらの水素添加物などのロジン系樹脂、テルペン樹脂、炭化水素変性テルペン樹脂、これらの水素添加物などのテルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂の水素添加物などのテルペンフェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ピュアーモノマー系石油樹脂、これらの水素添加物などの石油系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、ダンマル、コーパル、シェラックなどが挙げられる。
【0012】
可塑剤の具体例として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバ
シン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ドデカン二酸ビス(2−エチルヘキシル)、アセチルクエン酸トリブチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、アロマオイルのような石油系炭化水素可塑剤などが挙げられる。
【0013】
本発明の水系接着剤組成物は、硬化剤を用いなくても耐湿熱性に優れるため、作業性に優れている。一方、さらに高度の耐湿熱性が要求される場合は、本発明の水系接着剤組成物に硬化剤を添加して用いることもできる。
以下、実施例、比較例により本発明を更に説明する。また、当然のことながら本発明は実施例に制約されるものではない。
【実施例】
【0014】
実施例1
クロロプレンゴムラテックスとしてLC501(電気化学社製、商品名)100重量部、粘着付与樹脂としてタマノルE−100(荒川化学工業社製、商品名)40重量部、アクリル変性SBRラテックスとしてL7430(旭化成社製、商品名)50重量部を配合し、実施例1の接着剤組成物を得た。
【0015】
実施例2〜5、比較例1〜6
実施例1で用いた配合材料の他、クロロプレンゴムラテックスとしてGFL890(東ソー社製、商品名)、粘着付与樹脂としてスーパーエステルE−730−55(荒川化学工業社製、商品名)、アクリルエマルジョンとして2720D(BASF社製、商品名)、アクリル変性していないSBRラテックスとしてDL612(旭化成ケミカルズ社製、商品名)を用い、表1記載の配合(重量部)にて各配合材料を混合し、各接着剤組成物を得た。
比較例4、5については比較例1にて配合した接着剤組成物に、接着試験を行う直前にカルボジイミド化合物としてカルボジライトV02−L2(日清紡ケミカル社製、商品名)、金属架橋剤としてナーセムアルミニウム(日本化学産業社製、商品名)を表1記載の配合(重量部)にて添加して使用した。
【0016】
各接着剤組成物をメラミン化粧板(30cm×90cm)、鋼板(30cm×90cm)にそれぞれ塗布量150g/m2でスプレー塗布し、80℃で240秒間乾燥した。乾燥後、直ぐに貼り合わせてピンチロール(線圧5kg/cm)にて圧締し接着体を得た。各接着体について、以下の方法で評価を行った。
【0017】
耐熱湿試験
作成した試験体を60℃、90%雰囲気下にて3日間平置きし、その後直ぐに60℃、30%雰囲気下に3日間平置きする。その後、メラミン化粧板の伸縮による剥離、浮きの有無を確認する。全周の1/3以上にて剥離、浮きが発生しているものを×、1/3以下のものを○とした。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例の各接着剤組成物を用いた場合、湿熱条件においても優れた接着性能が得られた。一方、クロロプレンゴムラテックスおよびアクリル変性SBRラテックスを併用していない比較例の各接着剤組成物については、湿熱条件において十分な接着性能は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムラテックスおよびアクリル変性SBRラテックスを含有することを特徴とする水系接着剤組成物。
【請求項2】
固形分を基準として、前記クロロプレンゴムラテックス100重量部に対してアクリル変性SBRラテックスが15〜200重量部配合されていることを特徴とする請求項1記載の水系接着剤組成物。
【請求項3】
メラミンと鋼板を接着する請求項1〜2のいずれかに記載の水系接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−82289(P2012−82289A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228454(P2010−228454)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】