説明

水系洗剤液の改質剤、水系改質洗剤及びその製造方法

【課題】水系洗剤液に配合使用して水系洗剤液の洗浄効果が持続でき、改質剤の改質作用により噴霧後も継続して十分な洗浄効果を発揮すること。
【解決手段】変性吸水性樹脂水溶液からなる水系洗剤液の改質剤であり、好ましくは、I群から選択される少なくとも1種の化合物と、II群から選択される少なくとも1種の化合物を水で希釈して得られる液とを混合して得られることを特徴とし、さらに好ましくは、前記水が脱イオン水であることを特徴とする水系洗剤液の改質剤、前記水系洗剤液の改質剤と水系洗剤液からなることを特徴とする水系改質洗剤、及び、スプレー容器に変性吸水性樹脂水溶液を入れ、次いで、攪拌しながら、I群から選択される少なくとも1種の化合物と、II群から選択される少なくとも1種の化合物を入れ、水で希釈して得られた液を徐々に添加し、次いで、攪拌しながら水系洗剤液を添加し、混合攪拌することを特徴とする水系改質洗剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系洗剤液に配合使用して水系洗剤液の洗浄効果が持続できる水系洗剤液の改質剤及びその改質剤の改質作用により噴霧後も継続して十分な洗浄効果を発揮する水系改質洗剤並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台所などの流し台などに強固にこびり付いた油などの汚染物質の除去方法として、汚染物質付着物を液状洗剤液に付け置きし、一定時間後に取り外す方法が知られている。
【0003】
取り外しできない汚染物質付着物の場合、液状洗剤液への付け置きができないので、液状洗剤液を汚染物質付着面に塗布し、一定時間後に拭き取る方法を採用している。
【0004】
しかし、傾斜した汚染面に洗剤液を塗布した場合、洗剤の液垂れにより汚染面の洗浄効果を充分発揮できず、目的とした汚染面以外に洗剤及び剥がれ落ちた汚染物質が飛び散り、清掃に余計な作業が必要となる欠点がある。
【0005】
傾斜した汚染面に塗布しても洗剤の液垂れを防止する技術として、洗浄液成分にポリアクリル酸系吸水性樹脂を添加した液体洗浄剤組成物が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−302399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、液垂れを起こさないものの、噴霧後に液体洗浄剤組成物の洗浄力が低下し、十分な洗浄効果を得られないという問題がある。
【0008】
そこで本発明の課題は、水系洗剤液に配合使用して水系洗剤液の洗浄効果が持続できる水系洗剤液の改質剤及びその改質剤の改質作用により噴霧後も継続して十分な洗浄効果を発揮する水系改質洗剤並びにその製造方法を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0011】
(請求項1)
変性吸水性樹脂水溶液(A液)からなる水系洗剤液の改質剤。
【0012】
(請求項2)
変性吸水性樹脂水溶液(A液)と;
下記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、下記II群から選択される少なくとも1種の化合物を水で希釈して得られる(B液)と;
を混合して得られることを特徴とする水系洗剤液の改質剤。
〔I群〕
水ガラス(珪酸ナトリウム)、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、オルガノポリシロキサン、シランカップリング剤又はポリビニルアルコール樹脂エマルジョン
〔II群〕
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、寒天、ペクチン、カラギナン、ガーガム、ポリ酢酸ビニール、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸架橋体、水溶性ポリアミド、ポリアルキレンオキサイド重合体、無水珪酸、ヘクトライト、珪酸アルミニウム・マグネシウム又は珪酸ナトリウム・マグネシウム
【0013】
(請求項3)
水が、脱イオン水であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系洗剤液の改質剤。
【0014】
(請求項4)
請求項1、2又は3記載の水系洗剤液の改質剤と、水系洗剤液からなることを特徴とする水系改質洗剤。
【0015】
(請求項5)
スプレー容器に、変性吸水性樹脂水溶液(A液)を入れ、
次いで、攪拌しながら、下記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、下記II群から選択される少なくとも1種の化合物を入れ、水で希釈して得られた(B液)を徐々に添加し、
次いで、攪拌しながら水系洗剤液を添加し、混合攪拌することを特徴とする水系改質洗剤の製造方法。
〔I群〕
水ガラス(珪酸ナトリウム)、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、オルガノポリシロキサン、シランカップリング剤又はポリビニルアルコール樹脂エマルジョン
〔II群〕
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、寒天、ペクチン、カラギナン、ガーガム、ポリ酢酸ビニール、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸架橋体、水溶性ポリアミド、ポリアルキレンオキサイド重合体、無水珪酸、ヘクトライト、珪酸アルミニウム・マグネシウム又は珪酸ナトリウム・マグネシウム
【発明の効果】
【0016】
(A液)を用いた本発明によると、水系洗剤液に配合使用して水系洗剤液の洗浄効果が持続できる水系洗剤液の改質剤及びその改質剤の改質作用により噴霧後も継続して十分な洗浄効果を発揮する水系改質洗剤並びにその製造方法を提供することができる。
【0017】
(A液)及び(B液)を用いた本発明によると、市販のスプレーポンプなどを用いて傾斜した面に噴霧しても液垂れを起こすことなく、傾斜した汚染面でも付け置き効果が得られ、噴霧後も液状洗剤液の洗浄力の低下を防ぎ、継続して十分な洗浄効果を発揮する水系洗剤液の改質剤、水系改質洗剤及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<水系洗剤液の改質剤および水系改質洗剤>
本発明の水系洗剤液の改質剤の第1の態様は、変性吸水性樹脂水溶液(A液)からなる点に特徴がある。変性吸水性樹脂水溶液は、高い吸水能を有しながら、脱水機能(水分を蒸発させる機能)を有することができる点に特徴がある。変性吸水性樹脂を水系洗剤溶液に配合すると、汚れに密着していない面(空気と接触している箇所)において、水系改質洗剤からの脱水作用が働く。脱水作用が働くことによって、変性吸水性樹脂水溶液の吸水性が促進されると、界面活性剤によって水溶化された水溶性脂肪酸塩類等の汚れは、吸水性ポリマー内への吸収が促進される。
【0020】
変性吸水性樹脂は吸水した水を脱水して排出する作用があるので、水の移動は、汚れ面から外部に向かって常時移動する。したがって、吸水作用は持続し、それに伴って水溶化された水溶性脂肪酸塩類等の汚れを持続的に変性吸水性樹脂側に移動させる。このため、噴霧後も洗浄力が低下せず、汚れ面に対して、高い洗浄力を有することができる。
【0021】
本発明において、変性吸水性樹脂水溶液を水系洗剤溶液に配合することが重要であり、これにより、油脂成分の分解で低下した洗浄成分を汚染面に供給する作用、油脂成分の分解で生じた脂肪酸塩を吸収する作用を有し、噴霧後も高い洗浄効果を継続させることができるようになる。
【0022】
特許文献1は、本発明の変性吸水性樹脂を用いていないため、噴霧後長時間放置しても、汚染面に塗布した液体洗浄剤組成物が脱水しにくい。特許文献1の吸水性樹脂は、水分を吸収して保持する性質があるから脱水することはあり得ないからである。吸水性ポリマーが飽和になってしまうために、水分吸水による水の移動が停止してしまうので、界面活性剤によってせっかく汚れを水溶化させても、吸水性ポリマー側への水の移動がないと汚れ成分も移動しない。その結果、吸水性ポリマーに吸水されにくく、洗浄成分を液体洗浄剤組成物の表面に分散させることは非常に困難である。このため、洗浄力が弱く、さらには噴霧後に洗浄力が低下する。
【0023】
また、本発明の変性吸水性樹脂を配合した水系改質洗剤は、汚染面にコートされた水系改質洗剤から蒸発する水分を供給し、洗剤成分が固化するのを防ぐ作用を有する。
【0024】
本発明において、(A液)に用いられる変性吸水性樹脂は、通常の吸水性ポリマーを変性して得られる。吸水性樹脂としては、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリルアミドグラフト共重合体、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体、N−置換アクリルアミド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、ポリビニルアルコール吸水ゲル・凍結・解凍エラストマー、又はヒアルロン酸塩からなるポリマーが挙げられる。
【0025】
本発明では、これらの吸水性ポリマーを希釈、攪拌して、保持して、変性することにより、変性吸水性樹脂を得る。ここで、変性というのは、通常の吸水性ポリマーの吸水能を保持しながら吸水した水分の蒸発速度を高めるように改質させることを意味する。
【0026】
本発明の水系洗剤液の改質剤の第2の態様としては、変性吸水性樹脂水溶液(A液)と;下記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、下記II群から選択される少なくとも1種の化合物を水で希釈して得られる(B液)と;を混合して得られることを特徴とする。
【0027】
第2の態様によると、上記第1の態様において発揮する効果に加え、傾斜面に噴霧しても液垂れを起こさず密着することができ、水で簡単に拭き取ることもできる。また同時に汚れが変性吸水性樹脂内に吸収されているため、汚れを水で簡単に拭き取ることができる効果がある。
【0028】
(B液)に用いられるI群に挙げられる化合物(水溶性接着剤)は、水ガラス(珪酸ナトリウム)、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、オルガノポリシロキサン、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール樹脂エマルジョン又はオルガノポリシロキサンであり、これらから1種を選択使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B液)に用いられるII群に挙げられる化合物(水溶性増粘剤)は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、寒天、ペクチン、カラギナン、ガーガム、ポリ酢酸ビニール、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸架橋体、水溶性ポリアミド、ポリアルキレンオキサイド重合体、無水珪酸、ヘクトライト、珪酸アルミニウム・マグネシウム又は珪酸ナトリウム・マグネシウムであり、これらから1種を選択使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明において、好ましい組み合わせは、変性カルボキシメチルセルロース架橋体又は変性ポリアクリル酸ナトリウム架橋体を変性して得られる変性吸水性樹脂と、前記I群から、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、又はポリビニルアルコール樹脂エマルジョンを選択し、前記II群から、カルボキシメチルセルロース又はポリアクリル酸架橋体を選択し、各々、任意に組み合わる態様が挙げられ、より好ましい組み合わせは、変性カルボキシメチルセルロース架橋体を変性して得られる変性吸水性樹脂と前記I群から、アクリル樹脂エマルジョンを選択し、前記II群から、カルボキシメチルセルロースを選択し組み合わせる態様や、前記I群から、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体を選択し、前記I群から、ポリアクリル酸ナトリウムを選択し、前記II群からポリアクリル酸架橋体を選択し組み合わせる態様が挙げられる。
【0031】
本発明の水系洗剤液の改質剤の各成分の配合比は、(A液)では、変性吸水性樹脂水溶液を構成する水と吸水性ポリマーの配合比は、水100重量部に対し、吸水性樹脂が0.2〜6重量部、好ましくは1〜4重量部、さらに好ましくは1.2〜3重量部の範囲である。(A液)である上記変性吸水性樹脂水溶液中、吸水性樹脂が0.2重量部未満であると、油脂成分の分解で生じた水溶性脂肪酸塩類の吸収量が少なく、実使用にたえないという問題がある。
【0032】
また(B液)では、水100重量部に対し、上記I群から選択される少なくとも1種の化合物が0.1〜3重量部、好ましくは0.3〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.8重量部配合され、上記II群から選択される少なくとも1種の化合物が0.05〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部配合される。(B液)において、上記I群から選択される少なくとも1種の化合物が、0.1重量部未満であると、建材等への接着性が低下し、実使用にたえないという問題があり、3重量部を超えると、水系改質洗剤の拭き取りが水を含んだ布等では難しくなるという問題がある。さらにII群から選択される少なくとも1種の化合物が0.05重量部未満であると、水系改質洗剤の粘性が低くなり塗膜面の形成が難しいという問題があり、5重量部より多いと、水系改質洗剤の粘性が高くなりすぎ、塗布作業が難しくなるという問題がある。
【0033】
本発明において、(A液)や(B液)を作製する際に、希釈用に使用される水は、脱イオン水であることが、前記吸水性樹脂、I群、II群に挙げられる化合物同士が無用の反応をすることを防止する上で好ましい。脱イオン水は、水道水などからイオンを除去した水であり、市販品から入手できる。
【0034】
本発明に用いられる水系洗剤液には、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤や陰イオン系界面活性剤が好ましく用いられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが挙げられ、また、陰イオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0035】
また本発明に用いる水系洗剤液には、苛性ソーダ(NaOH)、珪酸塩(例えばnNaO・mSiO)、炭酸塩(例えばNaCO)、キレート剤(例えばEDTA、ポリアクリル酸、ゼオライト)、研磨剤(例えば珪砂、石英砂、アルミナ)を含むことが好ましい。かかる水系洗剤液は、市販品として入手することもできる。
【0036】
本発明において、水系改質洗剤中に1〜30wt%の界面活性剤が配合されることによって、油脂成分の中に浸透し、油脂成分付着汚染面から剥がれ易くする浸透作用、油脂成分を取り囲み、油脂成分を細かくし、汚染面から剥がれ易くする乳化・分散作用、乳化・分散された油脂成分の細かい粒が汚染面に再付着するのを防ぐ再付着防止作用を有することができる。
【0037】
さらに、1〜20wt%の苛性ソーダ(NaOH)、0.2〜35wt%の珪酸塩(nNaO・mSiO)、2〜35wt%の炭酸塩(NaCO)が配合されることで、界面活性剤の作用で細かくされた油脂成分と成分中のアルカリ成分が反応し、水溶性の脂肪酸塩に変わるケン化現象を起こし、生成された脂肪酸塩は、石鹸の成分であるため、界面活性剤との相乗作用で、更に油成分の分解を進めることができる。
【0038】
また、1〜20wt%のキレート剤が配合されることで、油脂成分の分解で生じてくる金属イオンを捕捉し、洗浄力の低下を防ぐ作用を有する。
【0039】
本発明の水系改質洗剤には、必要に応じて、紫外線防止剤、消臭剤、抗菌剤、電磁波防止剤、静電気防止剤、芳香剤、カビ取り剤、漂白剤などの成分を、本発明の作用効果を阻害しない範囲で含有することができる。
【0040】
紫外線防止剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、シリコーンコート・二酸化チタン、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられ、消臭剤としては、サイクロデキストリン、銀ゼオライト、ミョウバン、アパタイト銀、ジルコニア銀、珪藻土、キトサン粉末などが挙げられ、抗菌剤としては、銀ゼオライト、銅ゼオライト、トリアルキルトリアミン、ピリチオンナトリウムなどが挙げられ、電磁波防止剤としては、ナノニッケル粉、カーボンブラック、ナノ銅粉などが挙げられ、芳香剤としては、ペパーミント・ローズマリー抽出物、ヒノキチオール・月桃・ラベンダー抽出物などが挙げられ、カビ取り剤としては、次亜塩素酸塩などが挙げられ、漂白剤としては、過酸化水素塩酸が挙げられる。
【0041】
<製造方法>
第1の態様の水系洗剤液の改質剤を製造するには、例えば、ガラス製容器などに、ポリマー(吸水性樹脂)を入れて水で希釈する。この水は脱イオン水を用いることが好ましい。希釈中に、あるいは希釈後、攪拌を行なう。攪拌手段は特に限定されず、通常の攪拌翼式の攪拌機を用いることができる。攪拌機の回転数は、1500〜5000rpmの範囲で任意に設定できる。攪拌時間は、10分〜40分の間でよい。攪拌が終了したら、10〜25℃、好ましくは15℃程度で、20〜40分間、好ましくは10〜30分程度保持する。このような温度と時間をかけて保持することにより、ポリマーを変性させた変性吸水性樹脂を得ることができる。この変性吸水性樹脂の水溶液を(A液)として使用する。
【0042】
次に、第2の態様の水系洗剤液の改質剤を製造するには、上記(A液)を製造すると共に、(B液)を製造する。例えば、ガラス製容器に上記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、上記II群から選択される少なくとも1種の化合物を入れて、水で希釈する。この水は脱イオン水を用いることが好ましい。希釈中に、あるいは希釈後、攪拌を行なう。攪拌手段は特に限定されず、通常の攪拌翼式の攪拌機を用いることができる。攪拌機の回転数は、500〜3000rpmの範囲で任意に設定できる。攪拌時間は、5分〜20分の間でよい。攪拌が終了したら、50〜70℃、好ましくは60℃程度に昇温し、10〜40分間、好ましくは30分程度500〜3000rpmの範囲で攪拌し、(B液)を得ることができる。次いで、ガラス製容器内に(A液)を入れ、2000〜4000rpmで攪拌しながら、5分間かけて徐々に(B液)を添加する。添加後、50〜70℃、好ましくは60℃程度に昇温し、1000〜2000rpmで20〜40分攪拌する。このようにして第2の態様の水系洗剤液の改質剤を製造する。
【0043】
次に、本発明の水系改質洗剤を製造するには、上記の水系洗剤液の改質剤を40〜60rpmの範囲、好ましくは50rpmで攪拌しながら、水系洗剤液を10〜40重量部を20〜40分、好ましくは30分かけて添加し、40〜60℃、好ましくは50℃に昇温後、100rpmで60分程度攪拌する。このようにして水系改質洗剤を製造する。
【0044】
本発明において、水系洗剤液の改質剤と水系洗剤液の配合比は、水系洗剤液の改質剤100重量部に対し、上記水系洗剤液が15〜60重量部、好ましくは20〜40重量部、さらに好ましくは25〜30重量部配合される。
【0045】
本発明の水系改質洗剤を充填する容器としては、スプレー容器を用いることができ、スプレー容器の材質としては、HDPE(高密度ポリエチレン)が好ましく用いられる。容器内圧力は、大気圧と同じであることが好ましい。
【0046】
本発明の水系改質洗剤の塗布対象は、特に窓やサッシのような液体が垂れる垂直面に好適に使用できる。
【0047】
本発明の水系改質洗剤は、洗浄性と粘着性を有し、(1)目的とした汚染面にのみ、集中的に洗浄成分をスプレー処理できる、(2)傾斜汚染面からの洗浄成分及び剥ぎ取られた汚染物質が飛び散らず、洗浄成分の有効利用ができる、(3)一定時間経過後、水を含ませた布等で、拭き取れ、無駄な洗浄水が不要となる。さらに(4)本発明では、汚染面に噴霧すると、空気との接触面から脱水が行われることで、界面活性剤によって水溶化された汚れは、水系改質洗剤内への吸収が促進され、高い洗浄力を維持することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。以下の実施例で「部」とあるのは、「重量部」を意味する。
【0049】
実施例1
1.水系洗剤改質剤の製造
ガラス製容器に、カルボキシメチルセルロース架橋体2.7部を入れて、300部の脱イオン水で希釈し、2000rpmで20分間攪拌後、室温で30分保持して、変性吸水性樹脂水溶液(A液)からなる水系洗剤改質剤を得た。
【0050】
2.水系洗剤改質剤の乾燥試験
A、B2枚の60cmのガラスに、ポリアクリル酸系の吸水力を有するポリマーを精製水で希釈し、3gをスプレーしたガラスA(比較例)及び上記(A液)からなる水系洗剤改質剤3gをスプレーしたガラスB(実施例)を、それぞれ湿度53%、温度23℃のガラスケースに入れ、乾燥状態を経時的に測定した。評価結果を以下に示す。
【0051】
<評価結果>
(i)開始5分経過
ガラスAを入れたガラスケース内の湿度及び温度は、開始時と同じ23℃、53%であり、ガラス表面もスプレーした状態と変化がなかった。一方、ガラスBを入れたガラスケース内の湿度が54%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面は所々乾燥していた。
【0052】
(ii)開始10分経過
ガラスAを入れたガラスケース内の湿度が54%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面には変化は見られなかった。一方、ガラスBを入れたガラスケース内の湿度が58%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面は全体に乾燥していた。
【0053】
(iii)開始15分経過
ガラスAを入れたガラスケース内の湿度が55%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面は目視で観察しても変化は見られなかった。指で触れて確認すると、液体の状態であった。一方、ガラスBを入れたガラスケース内の湿度が60%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面は目視で観察すると、ほとんど乾燥していた。指で触れて確認すると、水系洗剤改質剤が厚く塗られているところは、多少しっとりしている部分があるが、ほとんど乾燥していた。
【0054】
(iv)開始20分経過
ガラスAを入れたガラスケース内の湿度が56%に変化した。温度は変化なかった。ガラス表面は目視で確認すると幾らか乾燥しているように見えた。指で触れて確認すると、薄く塗られた部分は、乾燥が見られるが、全体に濡れた状態であった。一方、ガラスBを入れたガラスケース内の湿度が60%と変化はなかった。温度も変化なかった。ガラス表面は目視で観察すると、完全に乾燥していた。指で触れて確認すると、水系洗剤改質剤が乾燥しているのが確認できた。
【0055】
以上の結果から、本発明の水系洗剤改質剤を入れたガラスケースB内の湿度の上昇にも見られるとおり、本発明の水系洗剤液改質剤は脱水作用を有していることが分かる。一方、ポリアクリル酸系の吸水力を有するポリマーを精製水で希釈しても、脱水作用を有さないことが分かる。
【0056】
3.変性吸水性樹脂及び吸水性樹脂の脱水作用(変性吸水性樹脂が、吸水能を有しながら脱水能も有していることを示す試験)
水分を飽和させた実施例1で得られた変性吸水性樹脂A;10gと、変性していない吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム架橋体)B;10gを付けた18cm四方のステンレス板を、一辺25cmのガラス箱2個に、別々に入れ、湿度と温度の変化を測定し、また樹脂の状況を目視観察した。
【0057】
外気温22℃、湿度58%の条件下で実験を行った。評価結果を以下に示す。
【0058】
<評価結果>
(i)開始時
両方のガラス内温度は22℃、湿度は51%であった。
【0059】
(ii)5分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度53%であった。目視での変化は見られなかった。一方、Bを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度51%であった。目視での変化は見られなかった。
【0060】
(iii)10分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度56%であった。樹脂の外側の部分が乾燥していた。一方、Bを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度52%であった。目視での変化は見られなかった。
【0061】
(iv)15分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度60%であった。全体に樹脂の面積が小さくなった。一方、Bを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度52%であった。目視での変化は見られなかった。
【0062】
(v)20分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度62%であった。目視観察では、樹脂全体が少なくなった。一方、Bを入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度53%であった。目視で若干外側に乾燥部分が見られた。
【0063】
(vi)25分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度23℃、湿度64%であった。目視では樹脂の一部分が完全に乾燥していた。一方、Bを入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度51%であった。目視で若干外側に乾燥部分が見られた。
【0064】
(vii)30分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度23℃、湿度65%であった。目視では樹脂の大半が乾燥していた。一方、Bを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度23℃、湿度54%であった。目視で若干外側に乾燥部分が見られた。
【0065】
(viii)35分経過後
Aを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度23℃、湿度66%であった。目視では樹脂全体が乾燥していた。一方、Bを付けた18cm四方のステンレス板を入れたガラス箱内は、温度22℃、湿度55%であった。目視で若干外側に乾燥部分が見られた。
【0066】
以上の評価結果より、変性吸水性樹脂は脱水機能があることが分かった。
【0067】
実施例2
ガラス製容器に、カルボキシメチルセルロース架橋体2.7部を入れて、300部の脱イオン水で希釈し、2000rpmで20分間攪拌後、室温で30分保持して、変性吸水性樹脂水溶液(A液)を得た。次いで、ガラス製容器に、カルボキシメチルセルロース1.5部、アクリル樹脂エマルジョン1.5部を入れて、150部の脱イオン水で希釈し、1500rpmで10分攪拌後、60℃に昇温し、500rpmで30分攪拌して、(B液)を得た。次いで、2000rpmで攪拌しながら(A液)に5分間かけて徐々に(B液)を添加した後、60℃に昇温し、1500rpmで30分攪拌して改質剤を得た。次いで、50rpmで攪拌しながら水系洗剤液25部を30分かけて添加し、50℃に昇温後、100rpmで60分攪拌し、水系改質洗剤を得た。
【0068】
実施例3
ガラス容器に、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体2.5部を入れて、脱イオン水500部で希釈し、3000rpmで10分攪拌後、室温で30分保持して、変性吸水性樹脂水溶液(A液)を得た。次いで、ガラス製容器に、ポリアクリル酸架橋体1.0部、ポリアクリル酸ナトリウム1.5部を入れて、250部の脱イオン水で希釈し、1500rpmで10分攪拌後、60℃に昇温し、500rpmで30分攪拌して、(B液)を得た。次いで、3000rpmで攪拌しながら(A液)に5分間かけて徐々に(B液)を添加した後、60℃に昇温し、1500rpmで30分攪拌した。次いで、50rpmで攪拌しながら水系洗剤液25部を30分かけて添加し、50℃に昇温後、100rpmで60分攪拌し、水系改質洗剤を得た。
【0069】
実施例4
ガラス製容器に、カルボキシメチルセルロース架橋体1.5部を入れて、脱イオン水500部で希釈し、3000rpmで20分間攪拌後、室温で30分保持して、変性吸水性樹脂水溶液(A液)を得た。次いで、ガラス製容器に、カルボキシメチルセルロース1.5部、アクリル樹脂エマルジョン0.7部を入れて、150部の脱イオン水で希釈し、1500rpmで10分攪拌後、60℃に昇温し、1500rpmで30分攪拌して、(B液)を得た。次いで、2,000rpmで攪拌しながら(A液)に5分間かけて徐々に(B液)を添加した後、60℃に昇温し、1500rpmで30分攪拌して改質剤を得た。次いで、50rpmで攪拌しながら水系洗剤液30部を30分かけて添加し、50℃に昇温後、100rpmで60分攪拌し、水系改質洗剤を得た。
【0070】
比較例1、2
市販の水系洗剤液1、2(業務用として販売されている厨房機器・設備用洗剤)を用いた。
【0071】
〔評価試験〕
1.防垂れ性の評価
(測定方法)
ガラス面(600cm)に、調製した上記水系改質洗剤液(実施例2〜4)及び市販の水系洗剤液(比較例1、2)を6.5g塗布した後垂直にして、5分間放置後、垂れ落ちる成分の重量を測定した。測定結果を表1に示す
【0072】
【表1】

【0073】
2.油分解性の評価
(評価方法)
(1)同一面積の2枚のガラス面A、B(60cm)に、10gの油脂を塗り、ドライヤーで乾燥させ、油汚れが付着した検体を作成した。
(2)A、Bのガラス面を垂直にし、各ガラス面に同一重量の水系改質洗剤液(実施例2〜4)と洗剤液のみ(比較例1、2)を塗布し、垂直にして5分間放置した。
(3)5分後、A、B面の成分を濡れた布で拭き取った。
(4)濡れた布で拭き取ったガラス面を水平にし、純水を散布し、散布された純水の水滴の形状で、残存油分成分を目視し、以下の評価基準で評価した。丸まった水滴の数が少ない方が油分解性が優れていることを示す。実験結果を表2に示す。
【0074】
(評価基準)
○:確認できる丸まった水滴の数:3個以下
△:確認できる丸まった水滴の数:4個以上、7個以下
×:確認できる丸まった水滴の数:8個以上
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性吸水性樹脂水溶液(A液)からなる水系洗剤液の改質剤。
【請求項2】
変性吸水性樹脂水溶液(A液)と;
下記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、下記II群から選択される少なくとも1種の化合物を水で希釈して得られる(B液)と;
を混合して得られることを特徴とする水系洗剤液の改質剤。
〔I群〕
水ガラス(珪酸ナトリウム)、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、オルガノポリシロキサン、シランカップリング剤又はポリビニルアルコール樹脂エマルジョン
〔II群〕
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、寒天、ペクチン、カラギナン、ガーガム、ポリ酢酸ビニール、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸架橋体、水溶性ポリアミド、ポリアルキレンオキサイド重合体、無水珪酸、ヘクトライト、珪酸アルミニウム・マグネシウム又は珪酸ナトリウム・マグネシウム
【請求項3】
水が、脱イオン水であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系洗剤液の改質剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の水系洗剤液の改質剤と、水系洗剤液からなることを特徴とする水系改質洗剤。
【請求項5】
スプレー容器に、変性吸水性樹脂水溶液(A液)を入れ、
次いで、攪拌しながら、下記I群から選択される少なくとも1種の化合物と、下記II群から選択される少なくとも1種の化合物を入れ、水で希釈して得られた(B液)を徐々に添加し、
次いで、攪拌しながら水系洗剤液を添加し、混合攪拌することを特徴とする水系改質洗剤の製造方法。
〔I群〕
水ガラス(珪酸ナトリウム)、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、オルガノポリシロキサン、シランカップリング剤又はポリビニルアルコール樹脂エマルジョン
〔II群〕
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、寒天、ペクチン、カラギナン、ガーガム、ポリ酢酸ビニール、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸架橋体、水溶性ポリアミド、ポリアルキレンオキサイド重合体、無水珪酸、ヘクトライト、珪酸アルミニウム・マグネシウム又は珪酸ナトリウム・マグネシウム

【公開番号】特開2011−12089(P2011−12089A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135571(P2009−135571)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(503135719)有限会社プラネットカンパニー (6)
【Fターム(参考)】