説明

水系耐チッピング塗料用バインダー組成物及び水系耐チッピング塗料

【課題】 高温焼付け時における耐ブリスター性に優れた水系耐チッピング塗料を与えるバインダー組成物を提供すること。
【解決手段】高分子化合物構成成分として非イオン性N置換(メタ)アクリルアミド誘導体を50質量%以上含有する高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含んでなることを特徴とする水系耐チッピング塗料用バインダー組成物および該バインダー組成物を含有してなることを特徴とする水系耐チッピング塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系耐チッピング塗料用バインダー組成物に関し、さらに詳しくは、高温焼付け時における耐ブリスター性に優れ、保存安定性が良好な水系耐チッピング塗料を与えるバインダー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水系耐チッピング塗料用バインダーとして、樹脂ラテックスとシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体からなる感温ゲル化剤と酸化亜鉛からなる金属架橋剤によるバインダー組成物(例えば特許文献1など)や樹脂ラテックスと一定の温度を境界にして親水性と疎水性が可逆的に変化するビニル重合体とからなるバインダー組成物(特許文献2)などが提案されている。しかし、上記バインダー組成物は、高温焼付け時における耐ブリスター性において問題があった。それゆえ、高温焼付け時における耐ブリスター性に優れた水系耐チッピング塗料を与えるバインダーの開発が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平06−157938号公報
【特許文献2】特開平09−227796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高温焼付け時における耐ブリスター性に優れた水系耐チッピング塗料を与えるバインダー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高分子化合物構成成分として非イオン性N置換(メタ)アクリルアミド誘導体を50質量%以上含有する高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含んでなることを特徴とする水系耐チッピング塗料用バインダー組成物を用いることで、高温焼付け時における耐ブリスター性に優れた水系耐チッピング塗料が得られることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)高分子化合物構成成分として非イオン性N置換(メタ)アクリルアミド誘導体を50質量%以上含有する高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含んでなることを特徴とする水系耐チッピング塗料用バインダー組成物。
2)発明の1に記載のバインダー組成物を含有してなることを特長とする水系耐チッピング塗料。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバインダー組成物を用いた塗料は、耐ブリスター性ならびに耐チッピング性に優れた塗膜を与え、耐チッピング塗料の水系化を工業的に可能にし、きわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明において、高分子化合物(A)の構成成分である非イオン性N置換(メタ)アクリルアミド誘導体(以下、主モノマー(M)と称す。ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル(又はメタクリル)又はアクリルを簡便に表記したものである)としては、例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。耐ブリスターおよび耐水性の観点から、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0008】
イオン性の置換基を有するN置換(メタ)アクリルアミド誘導体は親水性が高く、本発明の効果を有する高分子化合物(A)を得ることは困難であることから、本発明においては前述の非イオン性のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体を用いることが好ましい。
本発明の高分子化合物(A)は、主モノマー(M))の単独重合高分子化合物、または二種類以上の主モノマー(M)の共重合高分子化合物、さらには、該主モノマー(M)と反応して高分子化合物を作ることができる主モノマー以外のモノマー(以下、副モノマー(N)と称す)と主モノマー(M)との共重合高分子化合物である。主モノマー(M)と副モノマー(N)は各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
【0009】
副モノマー(N)としては親油性ビニル化合物、親水性ビニル化合物、イオン性ビニル化合物などが挙げられ、具体的には、親油性ビニル化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられ、親水性ビニル化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルピロリジン、アクリロニトリル、などが挙げられ、イオン性ビニル化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーなどが挙げられる。特に、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0010】
高分子化合物(A)の構成成分として主モノマー(M)を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有する場合において、本発明の高分子エマルジョンは優れた耐ブリスター性を有する耐チッピング塗料用バインダーとなることを見出した。即ち、共重合に用いる主モノマー(M)と副モノマー(N)における主モノマー(M)の割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
本発明の高分子化合物(A)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良い。
例えば、カチオン性の高分子化合物(A)は、重合に使用する副モノマー(N)として、カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーを含めることによって得ることができる。該カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
【0011】
カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−ジメチル−1−ビニルイミダゾリニウムクロライド、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド)アンモニウムクロライド、1−ビニル−2−メチル−イミダゾール、1−ビニル−2−エチル−イミダゾール、1−ビニル−2−フェニル−イミダゾール、1−ビニル−2、4,5−トリメチル−イミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−アミノスチレンおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−ビニルベンジルアミンおよびその4級アンモニウム塩、N−(ビニルベンジル)ピロリドン、N−(ビニルベンジル)ピペリジン、N−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、2−メチル−1−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、N−ビニルピロリドンおよびその4級アンモニウム塩、N,N’−ジビニルエチレン尿素およびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピリジンおよびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピペリジンおよびその4級アンモニウム塩、2−,または4−ビニルキノリンおよびその4級アンモニウム塩等が例示される。得られる塗膜強度の観点から、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドが好ましく用いられる。
【0012】
本発明に用いる、高分子化合物(A)中のカチオン基を持つエチレン性不飽和モノマー単位の含有率は、用いるモノマーの種類や組み合わせによって好ましい範囲が異なるが、概して、得られる塗膜の耐水性の観点から10質量%以下が好ましい。更に好ましくは5質量%以下である。ただし、カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーは必須成分ではない。
得られる塗膜の耐チッピング性、接着性等の観点から高分子化合物(A)がカルボキシル基を有することは好ましく、該カルボキシル基を有する高分子化合物(A)は例えば、重合に使用する副モノマー(N)として、カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーを含めることによって得ることができる。該カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
【0013】
カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマーなどが好ましい例として挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸を用いることはより好ましい。
本発明に用いる、高分子化合物(A)中のカルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマー単位の含有率は、用いるモノマーの種類や組み合わせによって好ましい範囲が異なるが、概して、得られる塗膜の耐水性の観点から20質量%以下が好ましい。更に好ましくは5質量%以下である。ただし、カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーは必須成分ではない。
本発明に用いる、高分子化合物(A)のガラス転移点は、耐チッピング性の観点から50〜150℃が好ましい。
【0014】
高分子化合物(A)を製造するに際しては、広く知られている高分子エマルジョンの製造技術を用いることができる。具体的には、水に界面活性剤を溶解し、前記主モノマー(M)、副モノマー(N)等共重合モノマー成分を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて一括仕込みによる反応により乳化重合を行う方法のほか、連続滴下、分割添加などの方法により反応系に上記共重合成分や、ラジカル重合開始剤を供給する方法などが挙げられる。
本発明に用いる高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンを製造するにおいては、界面活性剤を利用することが好ましい。
本発明に用いる高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良い。
【0015】
高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンがカチオン性の場合には、カチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムヒドロキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0016】
また高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンがアニオン性の場合には、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、p−スチレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0017】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリール、エーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンが非イオン性である場合には、非イオン性界面活性剤を使用する。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0018】
高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンが両性の場合には、両性界面活性剤を使用することが高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンのpHの変化に対する安定性の観点から好ましいが、本発明の塗料中で該高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンがカチオン性を示す場合にはカチオン性界面活性剤を使用する事ができ、本発明の塗料中で該高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンがアニオン性を示す場合にはアニオン性界面活性剤を使用する事ができる。両性界面活性剤としては、例えばカルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、レシチン等が挙げられる。
これらの界面活性剤の使用量としては、高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンの樹脂固形分100質量部に対して0.05〜50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量部である。
【0019】
本発明においては、前記界面活性剤を1種単独で使用することもできるし、また、その2種以上を併用することもできる。
本発明に用いる高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン重合時に「反応性基を有する界面活性剤」を使用することによって非反応性の界面活性剤の使用量を減らすことは、得られる塗膜の耐水性の観点から好ましい。反応性基を有する界面活性剤は、一般に反応性界面活性剤と称され、分子中に疎水基、親水基および反応性基を有する化合物を挙げることができる。該反応性基としては、例えば、(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素- 炭素二重結合を有する官能基が挙げられる。
【0020】
アニオン性を有する反応性界面活性剤としては、例えばスルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、カルボン酸塩基、燐酸塩基等の構造を含有するものが挙げられ、スルホン酸塩基を有するビニルモノマーとして、例えばアリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の各種のスルホン酸基含有ビニルモノマー類を各種の塩基性化合物により中和することにより得られるもの等が挙げられる。該塩基性化合物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエチルアルコール、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロキサイド等が挙げられる。硫酸エステル塩基を含有するビニルモノマーとして、例えばアリルアルコールの硫酸エステル等の硫酸エステル基を含有するビニルモノマー類を、前記各種塩基性化合物により中和することにより得られるもの等が挙げられる。燐酸塩基を含有するビニルモノマーとして、例えばモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の燐酸基含有ビニルモノマー類を、前記各種塩基性化合物により中和することにより得られるものなどが挙げられる。アリル基(CH =C(−R)−CH−)(ただしRはアルキル基)を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、市販品としては、「アデカリアソープSE−10N」シリーズ(商標:旭電化工業(株)製)、「エレミノールJS- 2」(商標:三洋化成工業(株)製)、「ラテムルS- 180もしくはS−180A」(商標:花王(株)製)、「H3390A」および「H3390B」(商標:第一工業製薬(株)製)等がある。(メタ)アクリロイル基(CH=C(−R)−C(=O)−O−)(ただしRはアルキル基)を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、市販品として、「エレミノールRS- 30」シリーズ(商標:三洋化成工業(株)製)、「Antox MS−60」シリーズ(商標:日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。プロペニル基(CH3 −CH=CH−)を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられ、市販品としては「アクアロンHS−10」シリーズおよび「アクアロンBC」シリーズ(商標:第一工業製薬(株)製)等がある。
【0021】
カチオン性を有する反応性界面活性剤としては、アミン塩基等カチオン性を有する構造を含有するカチオン性ビニルモノマー類等が挙げられる。アミン塩基を有するビニルモノマーとしては、例えばアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルビニルエーテルのアミノ基含有ビニルモノマー類を、各種酸性化合物により中和することによりえられるもの等が挙げられる。該酸性化合物としては、例えば塩酸、蟻酸、酢酸、ラウリル酸等が挙げられる。カチオン性を有する反応性界面活性剤の市販品として、「RF−751」(商標:日本乳化剤(株)製)や「ブレンマーQA」(商標:日本油脂(株)製)等が挙げられる。
【0022】
非イオン性の反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン- ポリオキシプロピレンブロック共重合体ような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類もしくは(メタ)アクリル酸エステル類のモノマー類などが挙げられる。アリル基(CH=C(−R)−CH−)(ただしRはアルキル基)を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルが挙げられ、市販品としては、「アデカリアソープNE」シリーズ(旭電化工業(株)製)等がある。(メタ)アクリロイル基(CH=C(−R)−C(=O)−O−)(ただしRはアルキル基)を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては市販品として、「RMA−560」シリーズ(日本乳化剤( 株) 製)、「ブレンマーPE」シリーズ(日本油脂(株)製)等が挙げられる。プロペニル基(CH−CH=CH−)を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルが挙げられ、市販品としては、「アクアロンRNシリーズ」(第一工業製薬(株) 製)等がある。
【0023】
これらの反応性界面活性剤の使用量としては、高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョン樹脂固形分100質量部に対して0.05〜100質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50質量部である。
本発明においては、前記反応性界面活性剤を1種単独で使用することもできるし、またその2種以上を併用することもでき、さらには、前記反応性を有しない界面活性剤と併用することもできる。
本発明の高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンを製造するに際しては、公知のラジカル重合開始剤が使用される。重合開始剤としては、有機系重合開始剤[パーオキシド類(クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等)、アゾ化合物類(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)]、無機系重合開始剤[過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等)、過酸化水素等]等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー混合物全量に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0024】
また、高分子の分子量を調整する目的で、公知の連鎖移動剤を用いることが出来る。連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等)、ターピノーレン、テルピネン、ジペンテン、炭素数8〜18のアルキルメルカプタン、炭素数8〜18のアルキレンジチオール、チオグリコール酸アルキル、ジアルキルキサントゲンジスルフィド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。連鎖移動剤の使用量は、モノマー混合物全量に対して、0〜15質量%、好ましくは0〜5質量%である。
さらに必要により、還元剤[ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、L−アスコルビン酸(塩)]、キレート剤(グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)pH緩衝剤(トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸カリウム等)等の添加剤を併用してもよい。これら添加剤の使用量は、モノマー混合物全量に対して、0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%である。
【0025】
本発明に用いる高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン粒子の平均粒子径は、塗膜の成膜性や強度と、高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンの製造効率などの観点から、10〜600nmのものが好ましく、さらに好ましくは10〜300nm、最も好ましくは20〜100nmである。ここで言う平均粒子径とは、高分子化合物(A)が疎水性を示す温度領域において動的光散乱法により測定される高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョンの数平均粒子径である。
高分子化合物(A)を架橋し得る架橋剤を塗料に含有させることは得られる塗膜の耐チッピング性向上の観点から好ましい。
【0026】
特に、塗工前の塗料中では架橋反応は進行せず、塗工後架橋反応が進行することが工業的に望ましい。該反応としてカルボニル基とヒドラジン基またはセミカルバジド基との反応が好ましい。即ち、カルボニル基をもつ高分子化合物(A)を重合し、ヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を架橋剤として用いることが好ましい。 カルボニル基を含有する高分子化合物(A)は例えば、主モノマー(M)と、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)とを共重合させて得られる。主モノマー(M)、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)は各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。主モノマー(M)とカルボニル基含有モノマーを含む副モノマー(N)との共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
【0027】
高分子化合物(A)中のカルボニル基含有モノマー単位の含有率は、得られる高分子エマルジョンの重合時の粒子安定性の観点から50質量%以下が好ましく、更に好ましくは20質量%以下である。ただし、カルボニル基含有モノマーは必須成分ではない。
カルボニル基含有モノマーとしては、モノマー中にケト基またはアルド基を含む構造を有するものが挙げられ、例えばアクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等が例示される。
【0028】
高分子化合物(A)がカルボニル基を含有する場合、塗料に、架橋剤として少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を用いることが、得られる塗膜の耐水性や強度などの観点から好ましい。該ヒドラジン誘導体を、高分子化合物(A)を含有する塗料に添加、混合し、塗布、乾燥することによりカルボニル基部位がヒドラジン誘導体によって架橋された分子構造を持つ化合物を含有する塗膜を得ることができる。ヒドラジン誘導体としては少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有する化合物が用いられ、これらの内、ヒドラジン基を有する化合物としては、例えばカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、水加ヒドラジンなどが例示され、セミカルバジド基を有する化合物としては、例えばポリイソシアネート化合物と該ヒドラジン化合物の反応により得られる生成物が例示される。該ヒドラジン誘導体としては、セミカルバジド基を有する化合物が、得られる塗膜の耐水性が高く好ましい。該ヒドラジン誘導体の含有量は、得られた高分子化合物(A)中のカルボニル基含有モノマー単位に対して0.01〜10倍モル量が好ましく用いられる。
【0029】
また、公知の架橋剤を含有させることも出来る。該架橋剤としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなどに代表されるメラミン誘導体、また、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−または4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートなどに代表されるポリイソシアネート系化合物およびこれらの多量体、あるいは、例えばジイソシアネート、その多量体またはアダクト体のケトオキシム、フェノール、ラクタムなどによるブロック化イソシアネート、また、例えばビスフェノールA・エピクロルヒドリン縮合体型のエポキシ化合物、ポリオキシアルキレンポリオールのポリグリシジルエーテル、グリセリンジ−またはトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシリレンジアミンなどに代表されるポリエポキシ化合物などを挙げることが出来る。
【0030】
本発明のバインダー組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて公知の水溶性樹脂(例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体もしくはそのアルカリ塩、エチレン−無水マレイン酸共重合体もしくはそのアルカリ塩、ポリアクリル酸ソーダ、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体など)、増粘剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、造膜助剤などを含有させることができる
【0031】
本発明の水系耐チッピング塗料は、例えば、本発明の水系耐チッピング塗料用バインダー組成物、分散剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、スルホン酸変性ポリビニルアルコールなど)、消泡剤、pH調整剤等を分散機(例えばディスパー、ニーダーなど)に加え、攪拌下に、充填剤(例えば、クレー、焼成クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、サチンホワイト、酸化チタン、酸化アルミニウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、タルクなど)およびその他の添加剤(例えば、増粘剤、凍結防止剤、湿潤剤、造膜助剤など)を徐々に加え、均一になるまで攪拌混合することによって得ることができる。
【0032】
本発明の水系耐チッピング塗料用バインダー組成物を含有してなる水系耐チッピング塗料は、主として、金属または既存塗膜を保護するために好適である。例えば、自動車の床裏、サイドシール、燃料タンク、フロントエプロン、タイヤハウスなどの電着塗装面、亜鉛鋼板板面、ターンシート面、中塗り塗膜または上塗り塗膜、あるいはボディーシーラー等に適用することが出来る。
本発明における該塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー塗装法、ハケ塗り法、ロール塗り法、ヘラ塗り法等の通常の塗工方法が採用されるが、スプレー塗装が一般的である。 本発明の水系耐チッピング塗料の塗膜を乾燥させる手段としては、熱風乾燥機、蒸気加熱乾燥機、遠赤外線乾燥機等の公知の乾燥手段を用いることができる。熱風乾燥機が好ましく用いられ、ドラムドライヤー、エアキャップドライヤー、エアホイルドライヤー、エアコンベアドライヤー及びこれらの組み合わせが挙げられる。乾燥温度はドライヤーの種類によって様々に変化するが、ドライヤー内部の温度は50〜200℃、好ましくは80〜160℃である。
本発明の塗装膜厚は、用途によって異なるが、乾燥後の膜厚として通常10〜3000μmである。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
以下の実施例及び比較例において、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」を表わす。また、諸物性は以下のように測定した。
数平均粒子径;動的光散乱法により、大塚電子(株)製ELS−800を用い測定した
。高分子エマルジョンの粒子径を測定する場合においては、感温点以上の温度で測定し
た。
耐チッピング性;リン酸亜鉛処理鋼板にカチオン電着塗装した塗工板に、各塗料を乾燥膜厚が約400μmになるようにエアレススプレー法で塗布した後、80℃の乾燥機中に10分間放置後、140℃のオーブン中で30分間焼付け乾燥し、室温で一昼夜放置した。これを45°の角度にセットし、JIS B1181に定められた3種−M−4サイズの真鍮六角ナットを2mの高さから連続的に落下させて、素地が露出するまでに落下させたナットの総重量(kg)で評価した。
【0034】
耐ブリスター性;上記と同様の塗工板に各塗料を乾燥膜厚が1000μmになるようにエアレススプレーで塗布した後、80℃の乾燥機中に10分間放置後、150℃のオーブン中で30分間焼付け乾燥し、乾燥中に生じるブリスター(塗膜の膨れ)を目視にて観察し、下記4段階で評価した。
×:実用上問題となるレベルでのブリスターが発生した。
○:実用上問題となるレベルでのブリスターは発生しなかった。
◎:全くブリスターが発生しなかった。
【0035】
(調製例1)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水360部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「エレミノールJS−2」(三洋化成工業(株)製、アニオン性界面活性剤:商品名)の38%水溶液21部、「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)12部を該反応器内に添加した。さらに該反応器内に過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部を投入し、その5分後から、メタクリルアミド1部、メタクリル酸1部、スチレン6部、メタクリル酸メチル6部、アクリル酸ブチル6部の混合液および過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部を各々該反応容器内に添加開始し、30分間かけて添加を終了させた。該添加終了後30分間、反応容器内液温を80℃に保った後、水656部にN−イソプロピルアクリルアミド160部、ダイアセトンアクリルアミド10部、メタクリル酸5部、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)1部、「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)10部および過硫酸アンモニウムの2%水溶液20部を溶解した液と、アクリル酸ブチル27部を各々該反応容器内に添加開始し、3.5時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、室温まで冷却し、数平均粒子径が180nmの高分子エマルジョン1を得た。高分子エマルジョン1のシェル部の主モノマー含有率(主モノマー(M)添加質量/(主モノマー(M)添加質量+福モノマー(N)添加量)×100)は86質量%であった。
【0036】
(調製例2)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水202部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「エレミノールJS−2」(38%水溶液)3部、「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)12部及び過硫酸アンモニウムの2%水溶液6部を該反応器内に添加した。その5分後から、メタクリルアミド1部、2−ヒドロキシメタクリル酸エチル1部、スチレン6部、メタクリル酸メチル6部、アクリル酸ブチル6部の混合液および過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部を各々該反応容器内に添加開始し、30分間かけて添加を終了させた。該添加終了後30分間、反応容器内液温を80℃に保った後、水656部にN−イソプロピルアクリルアミド133部、メタクリル酸5部、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)0.5部、「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)10部および過硫酸アンモニウムの2%水溶液30部を溶解した液と、メタクリル酸メチル63部を各々該反応容器内に添加開始し、3.5時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、室温まで冷却し、数平均粒子径が210nmの高分子エマルジョン2を得た。また、高分子エマルジョン2のシェル部の主モノマー含有率(主モノマー(M)添加質量/(主モノマー(M)添加質量+福モノマー(N)添加量)×100)は66質量%であった。
【0037】
(調製例3)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水202部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「コータミン86W」(花王(株)製、カチオン性界面活性剤:商品名)の29%水溶液3部、「エマルゲン1135S−70」(花王(株)製、非イオン性界面活性剤:商品名)の70%水溶液2部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の3%水溶液4部を該反応器内に添加した。その5分後から、メタクリル酸ジメチルアミノエチル1部、スチレン6部、メチルメタクリレート6部、アクリル酸ブチル6部の混合液および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の3%水溶液4部を各々該反応容器内に添加開始し、1時間かけて添加を終了させた。該添加終了後30分間、反応容器内液温を80℃に保った後、水656部にN−イソプロピルアクリルアミド95部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液2部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル3部、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)0.3部、メタンスルホン酸の70%水溶液4部、コータミン86Wの29%水溶液10部および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の3%水溶液20部を溶解した液と、メチルメタクリレート105部を各々該反応容器内に添加開始し、2時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、室温まで冷却し、数平均粒子径が150nmの高分子エマルジョン3を得た。また、高分子エマルジョン3のシェル部の主モノマー含有率(主モノマー(M)添加質量/(主モノマー(M)添加質量+福モノマー(N)添加量)×100)は46質量%であった。
【0038】
(調製例4)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水600部及び「エレミノールJS−2」(38%水溶液)15部、「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)9部を投入し、反応容器内を80℃とした。次に、ダイアセトンアクリルアミド4部、スチレン128部、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸ブチル66部を混合した添加液(1)と、水100部に「アデカリアソープSE−1025N」(25%水溶液)12部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液40部、を溶解した添加液(2)とを各々滴下槽より反応容器中へ4時間かけて添加した。添加中及び添加が終了してからさらに1時間、反応容器中の温度を80℃に保った後、室温まで冷却し、数平均粒子径60nmの高分子エマルジョン4を得た。その感温点の測定を試みたが、感温点と判断される変化は生じなかった。また、高分子エマルジョン4の主モノマー含有率(主モノマー(M)添加質量/(主モノマー(M)添加質量+福モノマー(N)添加量)×100)は1質量%であった。
【0039】
(調製例5)
ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(質量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は133Pa/160℃の条件下、2回目は13.3Pa/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネート、及び溶媒を留去回収し、残留物を得た。得られた残留物は、99.9質量%のポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネート)及び0.1質量%の残存ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいた。得られた残留物の粘度は1900(±200)mPa.s/25℃、数平均分子量は約600(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.3、−NCO基含有量は23.3質量%であった。
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する反応器にイソプロピルアルコール1000部にヒドラジン1水和物80部を撹拌しながら約30分かけて室温で添加した後、上記ポリイソシアネート(NCO基含量23.3質量%)144部をテトラヒドロフラン576部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続け、1000部の水を添加した。続いて得られた反応液中のイソプロピルアルコール、ヒドラジン、テトラヒドロフラン、水等を加熱減圧下に留去することにより168部のビウレット構造を有するポリセミカルバジド化合物(PSC)を得た。平均セミカルバジド残基数を測定したところ、4.6meq/gであった。
【0040】
〔実施例1〕
調製例1で得た高分子エマルジョン1(固形分150部相当量)と、タルク[浅田製粉(株)製「SWB」]50部、炭酸カルシウム[丸尾カルシウム(株)製「R重炭」]25部、カーボンブラック[東洋インキ製造(株)製「WSBK- 7」]1部を徐々に添加し、添加終了後、1時間撹拌して、水系耐チッピング塗料1を得た。この塗料を前述の方法で評価した結果を表1に示す。
〔実施例2〕
調製例1で得た高分子エマルジョン1(固形分150部相当量)と、タルク[浅田製粉(株)製「SWB」]50部、炭酸カルシウム[丸尾カルシウム(株)製「R重炭」]25部、カーボンブラック[東洋インキ製造(株)製「WSBK- 7」]1部および、調製例5で得たポリセミカルバジド化合物(PSC)の固形分10部を徐々に添加し、添加終了後、1時間撹拌して、水系耐チッピング塗料2を得た。この塗料を前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1における高分子エマルジョン1に代えて、調製例2の高分子エマルジョン2を同量用いた以外は実施例1と同様にして、水系耐チッピング塗料3を得た。この塗料を前述の方法で評価した結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例1における高分子エマルジョン1に代えて、調製例3の高分子エマルジョン3を同量用いた以外は実施例1と同様にして、水系耐チッピング塗料4を得た。この塗料を前述の方法で評価した結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1における高分子エマルジョン1に代えて、調製例4の高分子エマルジョン4を同量用いた以外は実施例1と同様にして、水系耐チッピング塗料を得た。この塗料を前述の方法で評価した結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のバインダー組成物を用いた塗料は、耐ブリスター性ならびに耐チッピング性に優れた塗膜を与え、耐チッピング塗料の水系化を工業的に可能にする上できわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物構成成分として非イオン性N置換(メタ)アクリルアミド誘導体を50質量%以上含有する高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含んでなることを特徴とする水系耐チッピング塗料用バインダー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のバインダー組成物を含有してなることを特徴とする水系耐チッピング塗料。

【公開番号】特開2006−273922(P2006−273922A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91724(P2005−91724)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】