水素ガス発生器を用いる貯蔵安定的である流体分与装置
【課題】長い棚持ち、流体送達に関して適切な水素の利用効率、およびその後の水素のガス室からの無抵抗の流出の結果、分与過程が完了した短時間後でも、僅かな水素のみ残留する流体送達装置を提供する。
【解決手段】ガス発生の構成要素としての水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極(亜鉛等)90と;該電解質と接触する陰極92と;該陽極および陰極の少なくとも一部と接触する適切な水性電解質94と;陰極と陽極とを互いに絶縁する、該電解質を通じて陽極と陰極とがイオン的に連絡するように構成された電気的絶縁体93と;該陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と;生成されたガスが、該セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集する室に進入するのを許す排気手段とを含む装置。
【解決手段】ガス発生の構成要素としての水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極(亜鉛等)90と;該電解質と接触する陰極92と;該陽極および陰極の少なくとも一部と接触する適切な水性電解質94と;陰極と陽極とを互いに絶縁する、該電解質を通じて陽極と陰極とがイオン的に連絡するように構成された電気的絶縁体93と;該陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と;生成されたガスが、該セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集する室に進入するのを許す排気手段とを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進の構成要素としてガス発生セルを用いる流体分与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に一定の目的とする速度で流体を長期間にわたって分与できる装置、特に液体の流体分与装置としては、様々な装置が利用されている。
【0003】
Battistaは、米国特許第3,115,280号明細書(特許文献1)において、水を電極で電気化学的に分解することによりH2及びO2のガスを発生させ、これにより流体を分与するのに利用できる装置を開示している。当該装置は、流体が収容されている柔軟な流体貯留槽および当該貯留槽の流体排出口以外を隣接して取り囲む室から成り、隣接する室で発生したガスが流体貯留槽を加圧し、流体貯留槽内の流体が装置の出口から分与される。隣接する室には、分解されたH2及びO2のガスを形成する水性媒体が収容されており、分与液体の貯留槽を取り囲む。
【0004】
Richterは、米国特許第3,894,538号明細書(特許文献2)に、流体を分与するための類似の装置を開示した。この装置では、電気化学的に発生したガスは別個の室(ガス室)に進入し、別個の室と液体を収容する貯留槽とは可撓性隔膜壁を共有する。そして、ガスが発生するにつれて液体が分与される。Richterは、ガスを電気化学的に発生し得る手段として、亜鉛、カドミウム又はアルミニウムより成る陽極を利用するセルの使用を示唆している。
【0005】
Orlitzkyは、米国特許第4,023,648号明細書(特許文献3)に、類似の装置を開示している。この装置においては、電気化学的に水素ガスを発生させるためにセル内の亜鉛またはマグネシウムの陽極を用い、「防ガス隔膜」によって流体室から分離したガス室を加圧する。Orlitzkyの装置は、「発生したガスのいかなるものも漏出することがほぼ不可能であるように」構成されている。
【0006】
同様に、Winselは、米国特許第5,242,565号明細書(特許文献4)で、アルカリ電解質中に亜鉛陽極を用いた、流体を移送する水素発生用化学セルを開示している。
【0007】
Baeらは、米国特許第5,354,264号明細書(特許文献5)に、類似の装置を開示している。この装置においては、水に浸漬したヒドロゲルから水を電気化学的に分解して水素および酸素を形成し、流体室と共有の可撓性隔膜を有するガス室を加圧するか、又は、プランジャ又はシリンダによって液体から分離された注射器の室に発生したガスを進入させる方法を使用している。
【0008】
上記に述べた装置は、特に、流体送達貯留槽として膀胱型の貯留槽を使用した場合に、長い「棚持ち」を考慮して設計されていない。その上、既存の技術において、実際の流体送達速度が、ガスの発生速度とガス室壁およびシールを通じての輸送速度との双方の関数であるという事実を無視している。これは、遅い輸送速度の装置に特に当てはまる。
【0009】
上記の流体分与装置は、すべて、装置の回路を導通する電流に正比例する量のガスを発生する。しかしながら、実際の流体送達速度は、ガスの発生速度に加えて、ガス室の壁およびシールを介して大気に出入りするガスの輸送速度に影響する構成材料の関数であることが見出されている。これらの流体送達速度に対する影響は、生成される一次ガスが水素である場合、非常に顕著である。上記の装置のガス室の外殻の代表的な肉厚は、0.076cm未満(0.030インチ未満)であり、ガス及び液体室間の可撓性隔膜の肉厚は、0.0127cm未満(0.005インチ未満)である。注射器の筒の代表的な肉厚は0.1524cm未満(0.060インチ未満)である。空気中には実質的に水素は皆無であるから、ガス室を出る水素の透過勾配は高い。加えて、そのような装置の材料として一般的に用いられるプラスチックについては、水素に対する透過係数は、空気に対するそれより高い。25℃での水素対空気の透過係数の比は、セロファンの2.1という低さから、ポリプロピレンの93までの範囲である。そのため、ガス室から漏出する水素の透過は、ガス室に進入する空気の透過を常に上回り、これらの結果より、ガス室を出るガスの正味の流速となる。上記の形式の装置から分与される液体の全体の速度は、ガスの発生速度に加えて、構成に用いた材料、表面積、および材料の厚さの関数であることわかっている。低い圧送速度を所望する装置の場合、透過の効果が比例して高いために、透過の効果が顕著となる。
【0010】
Winselは、ドイツ国特許第3,602,214号明細書に、水溶液の存在下で金属から水素ガスを発生させる化学的腐食の手法を開示している。この手法は、腐食性金属に第二の金属をメッキすることを要する。同様に、流体送達装置における金属の化学的腐食による水素の発生法は、ドイツ国特許第2,139,771号明細書およびカナダ国特許第961,420号明細書に開示されている。Sancoffは、米国特許第5,398,850号および第5,398,851号明細書に、流体を分与するのに用いられる貯蔵安定的な装置であって、炭酸塩または重炭酸塩を含有する材料を酸と組合せて二酸化炭素を発生させ、これによって駆動される装置を開示している。Sancoffの装置は、貯蔵中に反応する成分が反応するのを防止するために、別個の区画と活性化の時点で活性成分の結合を可能にする手段とを有する。しかしながら、このような炭酸塩および重炭酸塩を利用する装置は、圧力リリーフ弁の利用なしには、一定の速度で流体を送達できない傾向がある。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3115280号明細書
【特許文献2】米国特許第3894538号明細書
【特許文献3】米国特許第4023648号明細書
【特許文献4】米国特許第5242565号明細書
【特許文献5】米国特許第5354264号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような装置の使用者は、空気中の酸素の存在下で使用するため、スパークに触れた際にガスが発熱的に反応する可能性があるため、水素の存在を懸念している。そのため、装置の作動寿命が終了した際に、水素を迅速かつ無制限に漏出できることが好ましい。
【0013】
流体送達装置の最も重要な評価基準の一つは、適切な棚持ちを有することであって、代表的には、2年より長い棚持ちが必要とされる。従来技術において、この問題点を取扱っていない。従来技術の装置の棚持ちは、次の三つの問題点のために短い。第一は、ガス室のシェル又は可撓性隔膜を介して透過することによる、ガス発生セルからの水分の損失である。水素を発生する反応の大部分は水の消費を伴う。そのため、セルの乾燥は、一般に、望まれる性能より低い性能または短い寿命を招き、ネガティヴな影響を与える。
【0014】
第二に、ガス発生器が金属を消費する形式である場合、セルへの酸素の進入を制御できないため、装置を起動する前に、金属は尚早に酸化して費されることになる。
【0015】
第三に、ガス発生器が金属を消費する形式である場合、水素がある程度尚早に生成する。この現象を効果的に抑制するために腐食防止剤を使用する。しかしながら、活性金属が水溶液の存在下にある場合、特に、貯蔵中に装置の雰囲気温度が上昇した際、多少の水素発生が生じることになる。この水素は、抵抗無く排出しなければならず、さもないと、装置が加圧され、装置を初めて起動した際に、液体の尚早な分与、装置の変形または望ましくない突発的な流体送達を招くことになる。したがって、本発明の他の目的は、長い棚持ちを可能にする装置の材料および設計を選択するための指針を提供することである。
【0016】
ガス発生器が金属を消費して水素を発生する形式である場合、流体送達装置の使用者のもう一つの懸念は、装置を起動した際の、圧送が生じる前の遅延である。それは、ガス発生セルと可撓性隔膜との間の頭隙に拡散した酸素がすべて、水素の発生が始まる前に消費される必要があるためである。この装置の立ち上がりの遅延を最小化または回避する方法を開示することも、本発明の目的である。
【0017】
ガス発生器が金属を消費して水素を発生する形式である場合、流体送達装置の使用者のもう一つの懸念は、従来技術で代表的に認められるように、貯蔵中において、金属が水銀とアマルガム化することによる腐食の量を減らすことである。水銀は有毒であり、食物連鎖中に蓄積するため、装置の最終的廃棄は環境問題を招く。本発明のもう一つの目的は、性能を悪化させることなく、電気化学的活性金属のアマルガム化の必要性を回避する方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明の要旨は、ガス発生の構成要素として水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極と、陰極と、前記陽極および陰極の少なくとも一部と接触する水性電解質と、前記陰極と陽極とを互いに絶縁し、前記電解質を介して陽極と陰極とがイオン的に接続するように構成された電気的絶縁体と、前記陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と、生成された水素ガスが前記水素発生セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集するガス室に進入するのを可能にする排気手段とから成る流体送達装置に存する。
【0019】
水素ガスを利用した流体送達の一般的概念は新規ではない。しかしながら、本発明は、化学的腐食によって、予測可能な速度で水素を発生する新規な手段を開示し、長い棚持ち、流体送達における適切な水素の利用効率、および、使用後に水素がガス室から抵抗無く流出可能であり、分与過程が完了した後、短時間で水素がほとんど残留しない様な特徴を有する。
【0020】
本発明のガス発生器、特にH2発生器を用いる貯蔵安定的流体分与装置は、様々な目的、例えば流体医薬、ビタミン類、ホルモン類、ペットフード、肥料、芳香物質、殺虫剤、駆虫剤、芳香剤、機械潤滑剤などの分与に利用される。装置を消費者向け、工業的または医学的な用途に利用するか否かに拘らず、すべての場合において、棚持ちの良いことが重要であり、一般的に、最低2年の棚持ちが要求される。この要件を満たすため、2年を越える棚持ちを有する水素発生装置のいくつかの新規な実施態様を開示する。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に提示の装置は、圧力リリーフ弁を組み込むという付加された複雑な構成を必要とせずに、ほぼ一定の速度の流体送達を提供することができる。また、化学的腐食によって、予測可能な速度で水素を発生する新規な手段を開示し、長い棚持ち、流体送達における適切な水素の利用効率、および、使用後に水素がガス室から抵抗無く流出可能であり、分与過程が完了した後、短時間で水素がほとんど残留しない様な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施態様は、本明細書中に参照として援用する米国特許第3,894,538号、第4,023,648号、第5,354,264号または第5,242,565号明細書に開示された形式のガス発生セルを包含する。金属の陽極と水素を放出する陰極とを備えたセルは、ガルバーニ電気によって作動してもよい。すなわち、この場合、作動するために回路内に電池を必要としない。しかし、直列または並列の1個以上の電池のような直流電源を回路内に組み込むことは好ましい。これは、同じ形式のセルがより高い速度で水素を発生することを可能にし、、また、特に平滑な放電曲線を有する電源を用いる場合、より安定的な時間あたりの流体送達速度を与え、より大きい抵抗を回路に用いることも可能にする。平滑な放電曲線を有する好適な電池としては、酸化銀/亜鉛、酸化水銀/亜鉛、亜鉛/空気などを包含する。本発明の一実施態様として、ガルバーニ電気で作動され得るガス発生器が、ガスを発生しない電池の補助により、性能のレベルが上昇するようなガス発生の実施態様である。
【0023】
ガス室にガス発生セルを取り付けた際、すべての場合において、水分がガス室を通じて外界へ又はガス室の壁を通じて外界へ直接に、または可撓性隔膜を通じて流体室へ且つ流体室の外壁を通じて透過する可能性がある。逆に、非常に高い湿度の雰囲気では、ガス発生セルは水分を吸収する可能性がある。極端な場合、ガス発生セルがあまりにも水分を吸収してしまい、装置を起動した際に水素を放出する電極構造が適切に機能しなかったり、漏出する点まで溢れるようになる可能性がある。
【0024】
一般に、金属シェルのような、完全に不透性であるシェルを用いることは、装置が貯蔵状態にある間に金属陽極の腐食によって多少の水素が生成される可能性があるため、望ましくない。この生成した水素が漏出できるための副次的な通路を保有しない場合、装置の起動前にガス室の圧力が上昇し、装置の破裂、流体の尚早な圧送、または装置を起動した際の流体送達のサージ等の何れかを招くこととなる。そのため、一般的に、多少の水素透過性を有する材料、または不透性金属シェルと小さい面積の水素透過性材料との組合せを用いるのが望ましい。しかしながら、ガス発生器の水性成分と外界との間に、非常に優れた水分障壁が必要とされる。さもないと、装置が起動した後、乾燥するか、または水分が溢れるかして、機能したとしても、着実な機能ではない。
【0025】
多少の水素透過性を有する材料としては、好ましくは厚さが0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するPET又はナイロン若しくはその他のポリマー材料の様な金属被覆膜であり、ポリマー材料としては、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFEまたはAclar(商標)]およびポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン[PCTFE/PEまたはHalar(商標)]も優れており、ポリ塩化ビニリデン[PVDCまたはSaran(商標)]、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン[PTFEまたはTeflon(商標)]、PFA[Hostaflon(商標)]およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン[TeflonFEP(商標)]も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリエステル[PETまたはMylar(商標)]も、水分透過を低下させるのに用いることができる。これらの材料はすべて、いかなる尚早な水素発生の漏出も可能にすると思われ、金属箔障壁よりも多少の水素透過性を有するという利点を有する。これらの材料は、水分障壁用として、それら自体で用いられても、積層品またはコーティングとして他の材料と組合せて用いられてもよい。
【0026】
水分障壁をどこに設置するかについては、次のような代替策がある。すなわち、ガス室のシェル自体を非常に低い透水性の材料で構成するならば、ガス室のシェル自体を水分障壁としてもよい。この方式の欠点は、水分透過が生じ得る面積が一般に大きいことである。あるいは、低い透水性であるが、多少とも水素透過性である材料で被覆されたポートを有する、不透性のシェルを用いてもよい。また、ガスを発生する電極または成分と、ガス室との間に中間的な水分障壁を用いてもよい。例えば、水分障壁は、ガス発生装置のガス出口に内部もしくは外部に、またはガス発生セルのガス発生電極とガス出口との間に取り付けてよい。殆どの設置位置において中間水分障壁は恒久的に使用されるため、水分障壁に使用される材料は、適当な圧力勾配下での作動の際に、水素が水分障壁を透過するのに充分な水素透過性を要することが好ましい。水分障壁がガス発生器のガス出口の外部にある場合、貯蔵の際の水分障壁の実効面積はガス出口の面積であるが、水素流の圧力下で作動する際は、水分障壁がガス出口から外に屈曲するため、水分障壁の実効面積は、より大きい直径となる。
【0027】
水分障壁をガス発生装置の外部に置く場合、別の実施態様として、水分障壁として良好な材料を使用し、脱着可能な接着剤を備えた、脱着可能な水分障壁を有する。この場合、貯蔵の際は優れた水分障壁を与えるが、作動初期に発生した水素の圧力下で翻転して開いたり、あるいは、材料強度を弱く設計し、作動初期に発生した水素の圧力による応力下で材料が破裂してもよい。この方式では、水分障壁の実効面積を非常に小さくすることが出来、優れた水分包有性が多声でき、さらに、水分障壁が脱着または破裂した後は、水素ガスがガス室へ自由に流入することが出来る。
【0028】
ガス発生セルにおいて、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムのような腐食可能な陽極を用いる場合、上記の水分障壁は、酸素がガス発生セルに高い速度で浸透するのを妨ぐことも出来、棚持ちを増大させることが出来る。パラジウムの薄いコーティングを有するポリマー膜は、低い透水性と、非常に高い比率の水素対酸素透過性とを有するため、上記のガス発生セルにおける水分障壁材料として特に適する。
【0029】
高い水素対酸素透過性の比率を有する材料を恒久的な水分障壁の材料として用いることは、明白ではないもう一つの利点を有する、すなわち、このような水分障壁を用いると、水素発生による圧送が、起動の比較的直後に始まる。一般的に、棚に貯蔵されている間に、ガス室のガス発生セルと可撓性隔膜との間の頭隙は、空気との平衡に達し、一般的に20.9%の酸素を含有する。ガス発生装置が、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムの等の金属が酸化する形式を使用した装置である場合、ガス発生セルと室との間に水分障壁が皆無であるならば、頭隙内の酸素は、起動後に有効となる水素が形成される前に、ガス発生セルによって消費されることになる。しかしながら、ガス発生セルとガス室との間に、高い水素対酸素透過性の比率を有する水分障壁を配置するならば、ガス発生セルへの酸素の移動は妨げられ、起動の後すぐに水素発生が始まるか、または、水分障壁なしの場合より早期に水素発生が始まる。この効果を、下記の図14に示す。そのため、水分障壁をパラジウム、鉄/チタン合金、ニッケルなどの薄層で金属被覆することによりこの効果を最大とすることが出来、この場合、水素対酸素の透過性の比は極めて高くなり、ガス発生装置の外部の酸素の存在による圧送開始の遅延は、実質的に皆無となる。特にパラジウムの薄層は、水素に対してはほぼ透過可能であるが、酸素および水分の透過を劇的に低下することが出来る。そのような薄層は、高い水素透過性を有するOPPのような重合体薄膜に適用できる。パラジウムの薄層は、例えば気相メッキまたはスパッタリングによって形成することが出来、厚さ数オングストロームの層を形成できる。
【0030】
本発明の他の特徴としては、起動の際の圧送の遅延を最小化できることである。すなわち、次のような水素発生セルにおいて、陰極での酸素の利用が極端に無効果であり、酸素の存在下でさえ、水素の放出が始まることを見出した。特に電解質が塩化アンモニウムを包含し、非アルカリセルを用いる場合である。例えば、亜鉛/空気セルのように構成され、ニッケル又はルテニウムメッキしたニッケル、又はニッケルメッキされ更にルテニウムメッキされた鋼メッシュの電極と、亜鉛陽極と、実質的に塩化アンモニウム、塩化亜鉛および水よりなる電解質とを有するガルヴァニックセルは、代表的な亜鉛/空気セルの場合のような1.4Vではなく、ほぼ500mVの回路電位を有する。そうして、電流がセルを通過するように、負荷をセルにかけた際、水素は、前者のセルからは直ちに放出を始めるが、後者のセルからは、実質的にすべての酸素が陰極において不在となるまで、水素は全く放出されない。
【0031】
長い棚貯蔵寿命時間を延長するため、他の実施態様として、最終的なガス発生器の液体および固体の構成要素を別個の区画に貯蔵するように設計する。そして、起動の時点で、隔離された成分を組合せる。この方式は、電気化学的および化学的な形式のガス発生器の双方に用いることができる。米国特許第3,894,538号、第4,023,648号、第5,354,264号または第5,242,565号明細書などに記載されたような電気化学的形式のガス発生器に応用する場合、固体の活性材料は、それらの正常な位置に収容し、水、または電解質のような液体の構成要素は、何れも貫通できる部材を備えた水密性の小袋または区画に貯蔵する。
【0032】
水密性の小袋としては、低腐食金属、PETの金属被覆膜、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するナイロンその他の金属被覆ポリマー材料のような、透水性が低いか、または全くない材料で製造することができる。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFEまたはAclar(商標))およびポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン(PCTFE/PEまたはHalar(商標))が優れており、ポリ塩化ビニリデン(PVDCまたはサラン(商標))、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン(登録商標))、PFA(Hostaflon(商標))およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン(テフロン(登録商標)FEP)も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリエステル(PETまたはMylar(商標))も挙げられ、上記材料と、積層品またはコーティングとしての他の材料との組合せも用いることが出来る。
【0033】
ガス発生器の活性金属陽極に水分が達することを防ぐのであれば、小袋を構成する材料として、水分と水素との双方に完全に不透性であるものが使用でき、貯蔵の間、それ自体が成分と反応して尚早にガスを形成しない限りは、金属箔を用いることができる。起動の時点で、小袋または区画の壁を何らかの手段によって貫通し、液体成分が固体成分に流入して、電気化学的に活性である混合物を形成する。この方法では、尚早な水素発生を無視することが出来、水分の損失は防止される。加えて、装置を起動させることにより発生ガスが充満して流体送達に寄与するまでは、成分が分離されていることから、非常に低いガス発生速度を必要とする場合を除いて、ガス充満防止剤を含ませる必要が無い。これは、貯蔵の際に、ガス充満を許容され得るレベルまで最小化するためにアマルガム化を必要とするWinselのガス発生セルと比較して大きな利点である。
【0034】
水素を発生する腐食混合物の液体および固体の構成要素を分離する方法としては、他の類似の構造が採用できる。例えば、ある種の活性金属は、酸またはアルカリの溶液と接触した際、酸化して水素を放出する。水素放出の速度は極めて再現性が高く、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、マンガン等の腐食性金属の形式、表面積および反応速度を下げるために加えてよい薬剤の関数で表される。そのような薬剤は、ガス発生セルのガス充満を低下させるために、電池業界で一般的に用いられ、多数の特許の主題となっている。この薬剤は、活性金属中の不純物をより陰極性でなく挙動させるのに役立つ合金形成剤と、活性金属の表面を覆う不動態化酸化物層を形成するコーティングと、活性金属表面に引き付けられて被覆しかつ不活性化させる有機阻害剤との三つの範疇に分類される。
【0035】
アルカリ系に広く用いられる薬剤も一つとして、腐食され得る金属とアマルガム化する水銀、または還元されてアマルガム化を形成する塩化第二水銀もしくは塩化第一水銀が挙げられる。その他の薬剤としては、硫酸アルミニウム及び硫酸カリウムアルミニウム(米国特許第5,034,291号明細書)、界面活性剤(X)−CnF2n−(Y)−(CH2CH2O)m−(Z)[式中、Xは−H又は−Fであり、Yは−C2H2−O−CH2CH(OH)−CH2O−であり、Zは−CH3、−PO3W2又は−SO3Wであり、ここでWはアルカリ金属であり、nは4〜14であり、mは20〜100である]、0.01〜1重量%のインジウム、0.005〜0.5%の鉛およびビスマスのうち1種以上より成る亜鉛合金(米国特許第5,128,122号明細書)、アンチモン、ビスマス、カドミウム、ガリウム、インジウム、鉛、水銀、タリウム及びスズから成る群から選択される酸化物(米国特許第5,232,798号明細書)、水銀、鉛、カドミウム、インジウム及びタリウムを含まず、水酸化又は酸化ガリウムを含むビスマス、リチウム、カルシウム及びアルミニウムから成る群の少なくとも1元素(米国特許第5,308,374号明細書)、インジウム、鉛、ガリウム又はビスマスの酸化物または水酸化物(米国特許第5,376,480号明細書)、メチルシリコネートを包含する6個またはそれ以下の炭素原子を有する有機シリコネート(米国特許第4,617,242号明細書)、式:[RO(EtO)n]x−PO−(OM)y[式中、x+y=3、M=H、アンモニウム、アミノ又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属、R=フェニル又は6〜28個の炭素原子を有するアルキル若しくはアルキルアリール]で示される有機リン酸エステルで構成される、極性親和性を有する界面活性異極性材料(米国特許第4,840,644号明細書)、少なくとも1種類の陰イオン界面活性剤と少なくとも1種類の非イオン界面活性剤とで構成され、陰イオン界面活性剤として、式R1(CH2−CH2−OH)n−X1[式中、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール及びそれらの組合せより成る群から選ばれ、X1は、陰イオン性酸の基、陰イオン性酸の基の塩、および陰イオン性リン酸エステルの基よりなる群から選ばれ;nは約3〜40である]で表わされ、非イオン界面活性剤として、式R2(CH2−CH2−O)n−X2[式中、R2は、アルキル、アリール、アルキルアリール、フッ素化脂肪族の基およびそれらの組合せより成る群から選ばれ;X2は、非イオン性の基であり、nは約3〜250である]で表わされる混合物(米国特許第5,401,590号明細書)が例示される。流体送達の用途におけるガス発生速度の調整のため、電池業界においてアルカリ電池系でのガス充満を軽減するのに適したその他の薬剤を使用してもよい。アルカリ電解質での陽極の腐食を軽減することに関連した上記特許の開示を本明細書中に参考として援用する。
【0036】
非アルカリ電解質については、ルクランシェ形式の電池でのガス充満を軽減するのに電池業界が用いる薬剤を適宜使用して、脱気されたガス発生速度を達成すればよい。効果的な薬剤としては、Morehouseらによって、Effect of Inhibitors on theCorrosion of Zinc in Dry-Cell Electrolytes,J.Res.Nat.Bur.Standards,Vol.40,pp151-161(1948)に開示されている。これらの薬剤としては、合金化剤、酸化剤、および、カルボニル基を有する化合物、複素環含窒素化合物、澱粉、小麦粉、グルテン、有機コロイド状化合物などの有機コーティングが挙げられる。Morehouseに開示された薬剤は、水素放出の阻害の際には効果的であるが、電気化学的性能にネガティブな影響力を有するために電池には適さないいくつかの薬剤に言及しているが、そのような薬剤は、電気化学的性能は関係ないため、本発明の腐食形式のガス発生器においては使用できる。非アルカリ電解質での陽極の腐食の軽減に関連する薬剤の開示は、本明細書中に参照として援用する。
【0037】
酸性溶液によるガス発生に関しては、Porbaix及びZoubovが、Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions、Cebelcor,Brussels,1974,p.119において、水素ガス発生と、1リットルあたり0.01モルの鉛、鉄または亜鉛を含有するpH≒0の溶液に対する面積との関係を報告している。それによれば、個々のガス発生速度は、金属の粉末またはペレットの粒径を選択することによって調節することが出来る。加えて、クロム酸または重クロム酸カリウムのような酸化剤を用いて、水素放出速度を下げることも出来る。生態学的見地から、水銀とのアマルガム化での利用を避け、他の薬剤を用いて速度を制御することが好ましい。
【0038】
上記の方法と同様に、腐食し得る金属から隔離して、水密性の小袋または区画に液体を貯蔵する。小袋は、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有する非腐食性金属、PET又はナイロンその他のポリマー材料のような透水性が低いか、または全くない材料で製造される。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE又はAclar)及びポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン(PCTFE/PE又はHalar(商標))が優れており、ポリ塩化ビニリデン(PVDC又はサラン)、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、PFA(Hostaflon(商標))およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン(テフロン(登録商標)FEP)も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリエステル(PET又はMylar(商標))も用いることが出来、上記材料と、積層品またはコーティングとしての他の材料との組合せも用いることが出来る。起動の際、何らかの手段によって小袋または区画の壁を貫通し、液体成分が固体成分に流入して、電気化学的に活性である混合物を生じるようにする。この方法によれば、尚早な水素発生は無視でき、水分の損失は防止される。また、活性金属を有害な水銀でアマルガム化する必要性が回避できる多くの代替策が存在する。
【0039】
水素を電気化学的に又は化学的に発生させるかに拘らず、かつ液体および固体成分を初めに分離するか又は予め混合するかに拘らず、装置から送達される実際の流体は、生成されたガスと、ガス室からのガスの正味の流束との双方の関数で表される。一般に、薄膜または膜を横切る特定のガスの流束は、以下の周知の方程式を用いて算出することができる。
【0040】
【数1】
【0041】
式中、Jiは薄膜または膜を横切る成分Iの流束であり、Piは関連する温度での成分Iに対する透過係数であり、Δpiは薄膜または膜を横切る成分Iの圧力差であり、Aは薄膜の面積であり、そしてtは薄膜の厚さである。水素の透過係数は、一般的に、酸素の透過係数より2〜100倍高く、窒素の透過係数より7〜400倍高い。空気中の酸素および窒素の相対濃度に関しては、水素透過係数は空気より2〜200倍高い。そのため、ガス室シェルを透過するガスの正味の流束は、外向きである結果、発生する水素の体積に関して100%未満の、送達されるべき流体の圧送効率を生じる。加えて、ガス室内へと透過する酸素の多くは、ガス発生セルによって金属酸化物を形成するのに消費されるが、それは、一般的に、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はそのような陽極が、電解質に先行して水素を形成する寄生反応であるからである。そのため、装置から分与しようとする特定の体積の液体に対して、ガス発生セルは、ガス室から外向きに透過する水素と、ガス室内へ透過し、最終的に活性ガス発生成分と反応する酸素とに対応するための過剰な容量を必要とすることになる。
【0042】
ガス室シェルの材料としては、効率の観点から、低い水素透過性と高い酸素透過性とを有する必要がある。意図される送達速度が減少するのに応じて、材料による影響が大きくなる。ポリプロピレンは、高い水素透過係数を有するポリマー材料の一つである。ガス室シェル材料にポリプロピレンを選び、意図する送達速度が100cc/日前後である場合、95%の効率が期待できるが、意図する送達速度が1cc/日の場合、肉厚が0.0381cm(0.015インチ)の10cm2のガス室シェルに対する効率は15%未満である。意図する送達速度が0.2cc/日の場合、効率は3%未満になる。
【0043】
同じ条件下で、ガス室シェルをポリ塩化ビニリデン(PVDC)から構成する場合、同じ範囲の送達速度において、効率は約95%に留まる。PVDCの他にも、低い水素透過係数を有する材料としては、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するPET又はナイロンその他のポリマー材料のような金属被覆膜、エチルビニルアルコール(EVOH)、セロハン、ポリアクリロニトリル[PANまたはBarex(商標)]、ポリフッ化ビニル[PVF又はTedlar(商標)]、ポリフッ化ビニリデン[PVDFまたはKynar(商標)]、ナイロン及びPETが挙げられる。ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFEまたはAclar(商標))、ポリ塩化ビニル(PVC)及びHDPEも、低い水素透過性を有する。
【0044】
アルミニウムの金属被覆コーティングを有する膜は、低い流体分与速度の場合でも、高い効率を達成できるのに充分低い水素透過性を有する。例えば、面積10cm2で肉厚0.0381cm(0.015インチ)の金属被覆していないPET等の材料から構成されたガス室の場合、送達速度が1cc/日では、比較的高い効率(>95%)が達成出来るが、送達速度が0.04cc/日ccでは、効率が50%未満となる。しかしながら、このような材料に、厚さ僅か1.27×10−6cm(0.0000005インチ)のアルミニウムのような金属被覆コーティングを設けると、送達速度が0.04cc/日ccのような低い送達速度であっても、90%を超える効率を達成できる。したがって、低い送達速度の場合、最良の障壁特性を有する材料を選ぶ必要があり、さもなければ、装置に対し低い送達速度を補償するために、非常に大きい容量を付与する必要がある。上記の材料は、互いに又は他の材料と併用して、積層またはコーティングによって所望の特性を達成してよい。
【0045】
一方、送達期間を完了した後に水素が迅速かつ抵抗無く放散できるよう、装置を設計することが望ましい。したがって、上記材料または材料の組合せは、水素透過は出来るだけ高く、且つ、許容され得る効率を有するように選ぶことが好ましい。下記に、水素が直ちに放散できる本発明のもう一つの実施態様を説明する。
【0046】
EVOHは、適度の湿度、高い湿度または水分の存在下であっても優れた障壁特性を有するが、EVOHのガス透過係数は、1,000倍も上昇し、そのため、多くの用途に対して避ける必要がある。しかし、分与しようとする液体が非水性である場合、且つガス室および液体室のシェルが低い透水性を有する場合、ガス室を液体室から分離するための可撓性隔膜として、EVOHを使用することが出来る。これは、その柔軟性と極めて低いガス透過性のためである。
【0047】
もう一つ考慮すべきことは、ガス室内の水素の濃度である。水素を駆動ガスとして用いることに懸念を有し、装置が作動している間は、水素濃度を最小化とすることを好む使用者もいる。水素濃度を最小化とすることは、ガス室への窒素の透過を最大化することによって達成できる。中間的な水分障壁を用いないならば、ガス室へと透過するいかなる酸素も、ガス発生セルによって最高度に消費されるため、装置が作動するにつれて、窒素がガス室に顕著に蓄積する水素以外の唯一のガスとなる。装置が作動する間に達成される窒素濃度の上限は、空気中の窒素濃度である(装置は空気中で作動すると仮定して)。酸素が装置によって消費されると仮定し、作動している間のガス室内の水素濃度に対する理論的最低限度は20.9%である。最高の窒素透過係数を有する材料としては、ポリブタジエン、エチルセルロース、FEP、PTFE、PFA、LDPE及びLLDPEが挙げられる。
【0048】
水素駆動ガスの即時放散を可能にする装置の他の実施態様として、水素ガス発生器を用い、分与しようとする液体に水素を直接流入させ、液体の蒸気を気相に送り込むような装置である。この実施態様において、分与しようとする液体が、分与温度で顕著な蒸気圧を有することを必要とする。水素は液体中を流れ、液体で多少とも飽和され、次いで、ガスまたは蒸気に対して高度に透過性であるが液体には実質的に不透性であるミクロ細孔に富む膜を貫流する。そのような膜材料としては、未焼結のPTFEが挙げられる。この装置が適正に作動するために、ガスが液体を通過してから室の出口へと通過できるように、液体室を設計しなければならない。この実施態様は、空気中に分散しようとする殺虫剤または香料のような流体を分与するのに好適である。この実施態様における、生成されるガスに関する最高分与効率は、液体蒸気圧対環境の気圧の比となる。
【0049】
Orlitzkyが米国特許第4,023,648号明細書に開示したガス発生器では、ほぼ中性のpHであるルクランシェ形式の電解質から、電気化学的に水素を発生する。Orlitzkyのガス発生セルにおいて、電解質は、陰極材料、特に炭素とともに実質的に含有されており、活性陽極材料は、実質的に、セパレータで電解質と接触する。Winselが米国特許第5,242,565号明細書に開示したガス発生器では、電気化学的に水素を発生する点で類似するが、実質的に陽極材料とともに貯蔵されるアルカリ電解質を用い、水素を放出する陰極は、実質的にセパレータで電解質と接触する。
【0050】
Winselが開示したガス発生セルの短所は、作業所で、そして最終的には廃棄の際に危険であるアルカリ電解質を使用していることである。また、Winselにおけるアルカリ電解質は、貯蔵中、二酸化炭素を徐々に吸収することがあり、これは、装置内で炭酸塩の沈澱を生じさせ、装置を起動した際に性能にネガティブな影響を与える。また、アルカリ電解質の存在下では、活性材料、例えば亜鉛は、上記の通り、ガス充満阻害剤の不在下での貯蔵の際にガスを放出する可能性が比較的高い。しかし、Winselは、ガス発生セルの構成として、商業的な亜鉛/空気ボタンセルに非常に類似してもよいことを例示している。Winselは、商業的な亜鉛/空気ボタンセルに酸素ガスの不在下で負荷を通じてショートさせた際、水素ガス発生器として利用できることを指摘している。この事実は、過去30年間、ボタン電池業界で周知であった。
【0051】
本発明は、流体送達を目的とし、長い棚持ちを有することを可能とする商業的な亜鉛/空気セルに類似のセルに応用してもよい。本発明は、非電解質を用いる、亜鉛/空気ボタンセルの一般的構成を利用でき、製造の点でも有利であることも開示する。このようなセルんびおける電解質は、陽極の活性材料と予め混合されていても、または装置を起動したときに、電解質混合物が陽極の活性材料と混合するようにして、小袋または区画に収容されて、別個に貯蔵されていてもよい。また、このようなセルにおける電解質は、認識できる程の二酸化炭素を吸収しないため、作業所での危険や廃棄に関する懸念が生じない。また、ほぼ中性の電解質と活性金属陽極との組合せであるため、廃棄の際に問題となり得る水銀その他の重金属合金化剤とのアマルガム化の手段を必要とせずに、貯蔵の際の望ましくないガス充満を容易に防止することが出来る。
【0052】
本発明の他の実施態様として、活性金属陽極が電気化学的ガス発生セルのキャップに組み込まれた態様である。この実施態様では、ボタン電池業界に用いられる構成とは全く異なるが、セル製造の補助となり得、水素ガス発生セルにおける先行技術に対する利点を提供できる。この利点は、セパレータを省いた実施態様で特に顕著となる。電池業界の通常の実施において、及びWinselの米国特許第5,242,565号明細書の図に示された通り、電気化学的導電性である陰極の集電装置と電気化学的導電性である陽極のペーストとの間には、セパレータが必要とされる。しかし、陽極材料がキャップの一部であり、電解質に導電性材料を全く加えない場合、グロメットが陰極から陽極を充分に隔離できる。セパレータが排除できることにより、装置製造が簡素化でき、材料の必要条件を緩和できる。
【0053】
添付の図および下記説明により、本発明のさらに具体的な実施態様および技術的効果について詳述する。
【0054】
図1aは、通常は水素ガスを発生する、電気化学的セルガス発生器を用いるガス発生装置の断面図である。この実施態様は、ボタン電池と同様に構成されているが、いくつかの違いがある。この実施態様は、陽極金属が粉末またはゲルではないという点で、大部分のボタン電池とは異なる。したがって、典型的なセル製造やOrilitzky及びWinselによって示されているガス発生器設計に必要とされるイオン導電性セパレータを用いずにセルを構成することが出来る。この実施態様のセルは、製造を簡素化するために円形であり、一端が開き、反対側の端の一つ以上のガス出口6aを除いて閉じている円筒形の缶9から成る。ガス出口を有する方の前記缶の端部は、平坦またはわずかに凸状であってもよい。
【0055】
前記缶は、亜鉛/空気ボタン電池の構成に通常に使用される缶と同様のものが使用できる。図では、任意の円形ガス拡散メッシュ16が、前記缶の内部でガス出口に隣接している。拡散メッシュの直径は、前記缶9の内径よりも小さい。シール層15aは、疎水性の微孔質または気体透過性/液体不透過性の膜で構成される。好ましい膜としては、微孔質または焼結PTFEである。シール層15aと缶9の内周との間に接着剤を配することが、シールの有効性を改善するに好適である。図では、第二の疎水性の微孔質層15bが集電装置/触媒層14と密接している。前記集電装置は金属メッシュスクリーンで構成されている。
【0056】
通常、ダイカット及び前記缶9への挿入の前に、金属メッシュに疎水性層15bを密着させる。前記集電装置/触媒層14は、けん濁PTFEのスラリーに浸すし、事前に被覆することによって、前記疎水性層15bの密着を促進できる。層15a及び15bは、一つの層であってもよい。電気活性金属で構成された電子導電性セルキャップ10が電子およびイオン絶縁性のグロメット11にはめ込まれ、これらがいっしよに前記缶にはめ込まれる。缶は、グロメット/キャップアセンブリの周囲でかしめられて、周囲にシールを形成し、グロメット面を前記集電装置に対して機械的に密着させる。触媒層/疎水性層が内部シールを形成する。電子絶縁性水性電解質80はキャップに含まれる。
【0057】
電解質80が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ性の場合、前記集電装置/触媒層14を構成する好適な材料として、ニッケル又はニッケルメッキ鋼のメッシュが挙げられる。電解質80が亜鉛塩、アンモニウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩またはそれらの組み合わせ等の非アルカリ性の場合、前記集電装置/触媒層14を構成する好適な材料として、ルテニウム、イリジウム、白金またはそれらで被覆されたメッシュが上げられる。また、種々の腐食抑制剤を電解質に加えて貯蔵中の電気活性金属陽極の腐食を最小限とすることが望ましい。たとえば、陽極が亜鉛であり、電解質がアルカリ性である場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ガリウム等を添加することが望ましい。陽極が亜鉛であり、電解質が非アルカリ性である場合、第四アンモニウム塩、有機物質を含有するグルテン等を添加することが望ましい。加えて、ゲル化剤を電解質に加えて漏れの発生を減らしてもよい。
【0058】
ガス発生器を作動させるには、作動クリップを発生器の上に滑らせる。前記作動クリップは、発生器缶9の側壁に接触する電子導電性接触リング21を有している。前記接触リングは、前記接触リングよりも大きな高さを有する電子絶縁性シリンダ22の一方の端部に挿入される。電子伝導性接触カップ23が前記絶縁性シリンダの反対側にはめ込まれている。この接触カップは、作動時にガス発生器の前記キャップに接触する接触インデントを有している。抵抗器25が接触リングおよび接触カップと電気的に連絡する状態に配されている。作動クリップは、貯蔵時に缶の壁とすでに接触した状態にあってもよいが、接触インデントがキャップから離れており、作動時に、前記クリップを滑らせて回路が完成するようにする。
【0059】
電解質80が非アルカリ性である場合、特に、電解質が実質的にアンモニウム塩を含む場合は、回路が完成すると、水素ガスが、回路を流れる電流に正比例する速度で発生する。ガスが発生すると、そのガスはガス出口6bから流れ出る。流体の流速は、前記抵抗器25のオーム抵抗によって制御される。抵抗が小さいほど流体の流速は高くなる。電解質が非アルカリ性である場合、回路が完成すると、セルにより、ガス出口の近くにある酸素が電流に比例する速度で消費される。ひとたび酸素が消費されると、電流に正比例する水素ガスの発生が始まる。
【0060】
活性陽極金属としては、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムのような金属で構成されることが好ましい。
【0061】
図1bは、図1aに示すガス発生装置の変形の断面図である。この図では、セルキャップ82は、ボタン電池産業で用いられる典型的な材料、例えばトリクラッドニッケル/鋼/銅積層体から製造される外側シェルで構成され、活性陽極金属のインサート83がキャップの内部に取り付けられている。このインサートは、溶接、接着剤、機械などをはじめとする種々の手段によってキャップに取り付けることが出来る。前記キャップ82とインサート83とは互いに電気的に接続している。
【0062】
図1cは、図1aに示すガス発生器の変形の断面図である。この図では、セルキャップ84aは、ボタン電池産業で用いられる典型的な材料、たとえばトリクラッドニッケル/鋼/銅積層体から製造される外側シェルで構成されるが、加えて、クラッド84bが電気活性金属陽極とともに内側にある。
【0063】
図2は、図1に示す装置とで多くの特徴を共有するガス発生装置の断面図である。しかし、この場合、セパレータが用いられている。円筒形の缶9、ガス出口6a、ガス拡散メッシュ16、シール層15a及び第二の疎水性の微孔質層15bは、図1a〜cのそれと同じ機能を有する。集電装置/触媒層14の構成材料としては、上記の金属メッシュに加えて、触媒粉末または炭もしくは黒鉛粉末に担持された触媒を使用することも出来る。
【0064】
触媒としては、5〜30%PTFE又はPVA等の結着剤と混合して、前記金属メッシュに適用することも出来る。イオン導電性で電子絶縁性の湿分透過性セパレータ13が前記集電装置/触媒層に隣接して配置される。セパレータ材料としては、微孔質ポリオレフィン、紙、イオノマー又は電池製造に本発明と同じ目的で使用される入手可能なセパレータの1種が利用できる。
【0065】
アルカリ性電解質が使用される場合、前記セパレータは、ヒドロキシルイオンに対して導電性であり、水に対して透過性である必要がある。アルカリ性電解質が使用される場合、集電装置/触媒層に適した触媒粉末としてはラネーニッケルが好ましい。中性または酸性の電解質が使用される場合、セパレータはカチオンに対して導電性である必要がある。中性または酸性の電解質が使用される場合、集電装置/触媒層に適した触媒粉末としては、担持または非担持のルテニウム、イリジウム、白金またはそれらの組み合わせが好ましい。
【0066】
電子導電性セルキャップ10が電子およびイオン絶縁性のグロメット11にはめ込まれ、これらがいっしよに前記缶にはめ込まれる。前記缶が、グロメット/キャップアセンブリの周囲でかしめられて、周囲にシールを形成し、グロメット面を前記セパレータ/集電装置に対して機械的に密着させる。触媒層/疎水性層が内部シールを形成する。電解質混合物12がキャップに含まれる。ガス発生器の活性陽極金属が粉末または顆粒として前記電解質混合物に組み込まれる。前記電解質混合物はゲル化剤を含むことが出来る。また、前記電解質は、貯蔵中の陽極の腐食を軽減するための薬剤を含んでもよい。
【0067】
図2に示すガス発生装置は、陽極材料および陰極触媒のより高い表面積を有するため、高速に流体送達させるの特に適している。粉末化陽極が使用されるか、粉末化陰極触媒が使用される場合、セパレータ13が必要である。図1a〜cに示す装置は、製造面で好都合であり、原料がより少なく、セパレータに起因する内部抵抗を持たない。したがって、図1のa〜cに示す装置は、広い範囲のガス発生速度を達成出来る点で好ましい。
【0068】
図3は、通常、水素ガスを発生するための、ガルバーニセルガス発生器を用いるガス発生装置の略図である。外部ガス室シェル1は、十分な流体送達効率が得られ、且つ、最小限の水素透過度を有する材料で構成される。シェル1は低い水蒸気透過度を有する。好適なガス室シェルとしては、フランジ付きでいくらか球形であり、好ましくは剛性を有する。液体室シェル2も、好ましくはいくらか球形であり、その周囲付近において、間に可撓性隔膜3をはさんで前記ガス室シェルの周囲に密着される。前記液体シェル2は、分与される液体と化学的に適合性を有し、分与される液体に対して低い透過度を有する材料で構成され、好ましくは剛性を有する。
【0069】
可撓性隔膜3は、EVOH、金属化ポリマー膜などの水素透過度の低い材料で構成されることが好ましい。最初は、前記ガス室シェル1と前記可撓性隔膜3との間の空間であるガス室5は実質的に容量を有しない。逆に、前記液体室シェル2と可撓性隔膜3との間の空間である液体室4には、分与される液体が満たされている。液体室4は、加圧された際、液体が流れて通過できる出口を有する。図示する実施態様では、管7及び栓8が前記液体室出口に取り付けられる。栓8は作動時に取り外される。
【0070】
本発明のガス発生セルは、図1及び2に示すものの一つである。ガス発生器26は、ガス室シェル1に対してシールされている。前記ガス室シェルのガス入口6bは、前記缶のガス出口6aと同心である。この図に示す実施態様では、中間の水分障壁が前記ガス入口とガス出口との間に配置されている。作動クリップを28として示す。ガス発生器を作動させるためには、作動クリップを発生器の上に滑らせる。作動時には、前記クリップを滑らせて回路を完成させる。回路が完成すると、回路を流れる電流に正比例する速度で水素ガスが発生する。ガスが発生すると、ガスはガス室に流れ込み、可撓性隔膜に対して力を加え、この隔膜が逆に流体を液体ポートおよび出口管に流れさせる。流体の流速は前記抵抗器25のオーム抵抗によって制御される。抵抗が小さいほど流体送達速度が高い。
【0071】
図4.a〜eは、ガス室およびガス発生器部品に対して中間の水分障壁17を配置することが出来る異なる場所を示す図である。図4.a〜eに示すような中間水分障壁が使用される場合、ガス室シェル1は、非常に低い水分透過性を必要としない。ガス発生器をユニットとして26で表し、ガス室シェル1に対するシール27とともに示す。
【0072】
図4.aでは、中間水分障壁17が、ガス室シェル1の内部に対し、ガス入口6bの上に配置される。この位置の障壁は、永久的であってもよいし、剥離可能であってもよい。
【0073】
図4.bでは、中間水分障壁17が、ガス発生器の前記ガス出口6aとガス室シェルのガス入口6bとの間に配置される。この位置で、貯蔵中の有効水分透過面積は、前記ガス出口の面積に相当し、非常に小さくてもよい。
【0074】
図4.cでは、装置を作動させたのち、圧力が障壁を缶9から押し離して、有効水素透過面積がガス出口6aの面積からより大きなガス入口6bの面積まで増大した状態の中間水分障壁17の位置を示す。これは、貯蔵中に水分損失を制御しながらも、作動中に十分な水素流量を可能にするより好ましい態様である。
【0075】
図4.dでは、前記ガス発生器の内側に中間水分障壁17を配置できることを示す。この位置では、作動前後の有効透過面積はガス出口の面積に相当する。
【0076】
図4.eもまた、前記ガス発生器の内側に配置された中間水分障壁17を示す図であるが、この場合、拡散メッシュ16が前記缶9に対して配置され、前記中間水分障壁17が前記疎水性障壁15とメッシュ16との間に配置される。この場合、作動の前後の有効透過面積はほぼ前記缶の面積に相当する。
【0077】
図4.fは、ガス発生装置から発生する圧力の下で剥離する中間水分障壁を示す。したがって、作動中にガス発生セルから水素の流れを妨げることなく貯蔵中の水分保持が達成できる。
【0078】
図4.a〜fに示す態様において有用である水分障壁は、水蒸気透過度が最小限であり、好ましくはゼロに近く、その一方、ガス(水素)発生器の作動中に水素が形成されるのと実質的に同じ速さで水素が障壁を透過できるするほど高い水素ガス透過度を有する。流体送達速度は、究極的には、ガス発生速度によって制御される。したがって、水蒸気障壁は、ガス室への水素通過速度を水素発生速度よりも遅らせない水素ガス透過度を有することが好ましい。水蒸気障壁のガス透過度は、速度制御機構として使用することも出来るが、そのような系は好ましくない。
【0079】
図5は、本発明における電気化学的流体送達装置の注射器タイプ流体容器を備えた実施態様の略図である。ガス発生器をユニットとして26で表し、シールを27及び作動クリップを28として表す。分与される流体4が注射器本体30に含まれている。前記注射器本体にはめ込まれる重厚なプラスチックで構成されているアダプタ31に、ガス発生器が取り付けられている。重厚なプラスチックまたは金属で構成されたピストン33が注射器本体の中に配置されている。前記ピストンは、エラストマーで出来たOリング又はUリングであってもよい1個以上のシールリング34を有している。流体送達の速度が注射器本体の内径のばらつきによってあまり影響されないため、この用途にはUリングを使用することが好ましい。シールリングの材料としては、比較的低い水素透過度を有する多硫化物系ゴム、ニトリルゴム、ポリウレタンおよびFRPゴム、ブチルゴムが好ましい。さらに、ニトリルゴム又はブナNは、注射器本体に対して良好なシールを形成するのに十分に可撓性であるため、特に好ましい。
【0080】
流体4を注射器に充填するため、めねじを持つ取り外し可能な取っ手(図示せず)を使用してピストンを手で駆動することが出来るように、ねじ付きインサート35が設ける。前記ピストン33の前記ねじ付きインサート35がポケットにはまり込み、前記アダプタ31とピストン33との間のヘッドスペースが最小限となる様に、前記アダプタ31は形成される。流体送達チップ36を管セットまたは皮下注射針に接続してもよい。この実施態様における中間水分障壁は、前記ガス発生セル26とアダプタガス入口6bとの間に配置される。
【0081】
図6は、透過窓41を備えた非透過性ガス室シェル40を有する本発明の流体送達装置の実施態様の略図である。貯蔵中に発生する偶発的な水素を抜くために水素に対していくぶん透過性であるが、水分損失を抑制する膜42が、図示するようにシェルの内側または外側で、窓の上にシールされる。この実施態様では、ガス室シェルが可撓性隔膜および液体室シェルの上に飲料缶パッケージング産業分野で行われている方法でかしめられる。
【0082】
図7は、電池を使用してガス発生セルを駆動し、より高く又はより安定な流体送達速度を達成できる本発明の流体送達装置の実施態様の略図である。この実施態様において、注射器とともに用いられる態様を示す。ハウジング50が、ガス発生セル26と、プラスの電池端子が前記ガス発生セルのキャップ10に接触するように配置されるボタン電池51とを含む。この場合、作動クリップの変わりに市販のスイッチを使用できる。接点53及び54が、スイッチおよび抵抗器(図示せず)と電気的に接続され、電池およびガス発生セルとの間で電気回路を形成する。図において、発生した水素によってピストン33が前記ハウジング50からすでに押し離された状態の装置が示されている。
【0083】
図8.aは、電気化学的ガス発生器が、作動の前に互いに隔離された液体成分および固体成分を有する場合の本発明の実施態様の略図である。図において、ガス発生器が腐食型ガス発生器である場合の本発明の実施態様をいくらか変更して示してある。この構造は、図1に示す実施態様に類似している。円筒形の缶9、ガス出口6a、ガス拡散メッシュ16、シール層15a及び第二の疎水性微孔質層15bは、図2で示すそれと同じ機能を有する。集電装置/触媒層14及びセパレータは、図2と同じ相対位置に配置され、図2と同じ機能を有する。セパレータに隣接するところで、缶壁に対し、両端で開口する電子絶縁性の円筒形陽極グロメット60が固着される。前記セパレータに対し、前記陽極グロメット開口の中で、活性陽極金属61が装着されている。前記活性金属は、多孔質ペレットに押し込まれる粉末であってもよいし、固形片であってもよいが、電解質がセパレータを通過することができるよう、孔に対して出入りが出来る必要がある。
【0084】
活性陽極金属ペレットまたはその片は空隙62を有している。仕切り63は、低い水分透過度を有する材料で形成され、前記陽極グロメットに対して適合し、それにシールされる。破断構造64が、前記仕切り63と一体に形成されてもよく、別個の部品であってもよい。電子導電性の可撓性キャップ67がキャップグルメット63にはめ込まれている。可撓性キャップ/グルメットアセンブリが前記仕切り63に適合し、それにシールされる。缶は、開口周囲で、前記キャップグルメットの上にかしめられ、前記アセンブリを定位置に保持し、内部シール接合部を圧縮する。前記可撓性キャップの中に、電解質68が、黒鉛またはカーボンブラック等の不活性で電子導電性の粉末とともに貯蔵されている。
【0085】
接触リング21、電子絶縁性シリンダ22、電子導電性接触カップ23、接触インデント及び抵抗器25からなる作動クリップは、図1と同じ形状を有し、同じ機能を有する。加えて、前記作動クリップを滑らせて回路を完成させると、前記接触インデントが可撓性キャップ67を押して、前記キャップが前記破断構造64を押し、この構造の仕切り63を破壊区域65で破断またはせん断する。仕切りが破断されると、電解質および電子導電性粉末が空隙62に流れ込み、前記陽極金属61中の孔に流れ込む。これにより、ガス発生器が活動し、完成した回路中の電流に比例する速度で水素をガルバーニ電気的に発生させる。貯蔵中は、電解質が活性金属から離れているため、貯蔵中に偶発的に発生する水素はなく、したがって、ガス室シェル1を、完全に不透過性の材料で構成することが出来る。また、貯蔵中の水分の増減は無視し得る程度である。
【0086】
図8.bは、作動させた後の図8.aに示すガス発生装置を示す。仕切り板63は破断区域65で穿孔されている。流体68が押し込まれて活性金属61と接触している。
【0087】
腐食型ガス発生器は、前記集電装置/触媒層14及びセパレータ13を省いてもよいことを除き、図8.a及び図8.bのガス発生セルと同一に構成することが出来る。また、活性陽極金属は、前記キャップとの電気的接を要しないため、前記電解質中の電子伝導性粉末を省いてもよい。特定の流体送達速度を達成するために、電解質または活性金属陽極に腐食軽減剤を添加してもよい。また、活性化キャップ中の前記抵抗器を省くこともできる。接触リング21、絶縁シリンダ22、伝導性キャプ23及びインデント24を、導電性または絶縁性である材料で一体化して形成された単一部品であってもよい。このような腐食型ガス発生装置は、注射器タイプの態様においても使用することが出来る。
【0088】
図9は、乾電池型電池と同様に構成され、減極剤(酸化マンガンまたは二酸化マンガン)とセパレーターが構成から除かれた、本発明のガス発生部分の実施態様の一つの断面図である。円筒缶90は、亜鉛、アルミニウム又はそれらの合金のような、電気的に活性な陽極物質で形成される。缶の一端は閉鎖されている。電気的に絶縁された座金91が、缶の内面に閉鎖端に向かって設置される。電気的に多孔質なロッド92は、陰極として、また発生した水素がセルから出る経路として働く。
【0089】
ロッドを形成する材料としては、多孔質のカーボン又はグラファイトが好ましく、特に、表面にある種の電気触媒的な被覆を有する多孔質のカーボン又はグラファイトが好ましい。上記のロッドは、ロッドが突き抜けている孔をもつ絶縁座金93によって、上記の缶に共心的に支えられている。上記缶は、図1に示されているセルのように、アルカリ性でも非アルカリ性でもよい水性電解液94で満たされている。電解液がアルカリ性の場合、上記のロッド92は、ニッケル又はラネーニッケル等の電気触媒的な被覆を有することが好ましい。電解液が非アルカリ性の場合、上記のロッド92は、ルテニウム、イリジウム、白金またはそれらの組合せ等の電気触媒的な被覆を有することが好ましい。
【0090】
発生したガスが軸方向に流れ、放射方向に外界に漏出しないように、金属管のようなガス不透過性で電子的導電性の管95が、上記ロッド92の端にはめられる。水素透過性の中間水分障壁96が、上記のロッド92の端の上に設置される。上記水分障壁は、貯蔵中の水分の損失が最小限であって、水素が意図された用途に十分な速度でロッドの端を通るように設計されていれば、恒久的であっても、剥離可能であっても、引裂き出来るように設計されていてもよい。電解液または発生ガスの漏出を防ぐように、ピッチのようなシール物質97が絶縁座金93に隣接して設置される。陰極接点座金98は、管95と電気的に接続され、シール物質97を覆う。陽極接点座金は、電気的に活性な金属缶90と電気的に接続される。上記の陰極接点座金と陽極接点座金は、電気的に絶縁性の円筒外装100に把持される。円筒外装は、乾電池型電池で一般的なように、数層をから成っていてもよい。たとえば、円筒外装は、ポリマーフィルムと紙の層から成っていてもよい。
【0091】
ガス発生器を活性化するために、陰極接点座金98と陽極接点座金99の間に電気回路を完成させる。この電気回路は、抵抗、スイッチ及び場合によっては電池のような直流電源から成る。直流電源が用いられる場合、負極は陰極接点座金に接続され、正極は陽極接点座金に接続される。電流が導通するにつれて、ロッド92で水素が形成される。水素が発生すると、それは上記ロッドを軸方向にそして中間水分障壁96に向かって流れ、それを通じて、図示されていない流体送達貯留槽のガス室に入る。
【0092】
図10.aは、図9に示され、全体を110として図示したガス発生器を用いた流体送達装置の実施態様の概略図である。ガス室111及び液体室112は、可撓性隔膜113を共有する。液体室は液体流管114に接続される。電気回路115は、抵抗116及びプルタブスイッチ117からなる。プルタブスイッチ117が除かれると、上記電気回路が完成し、発生した水素がガス室111に入る。可撓性隔膜113は、圧力の増加によって移動し、液体室112から液体流管への流体の流れを引起す。
【0093】
図10.bは、図9に示され、全体を110として図示したガス発生器を用いた流体送達装置の実施態様の概略図である。この実施態様では、より高い流体送達速度における操作を可能にし、また、より安定な供給のために、回路中により大きい抵抗を使用可能にするよう市販の電池が用いられている。ガス発生器110と電池120の両方がハウジング121に収容される。ガス発生器が活性化している間、接点122はガス発生器の陽極接点およびスイッチ123と接続される。接点124は電池120の正極端子および上記のスイッチと接続される。接点125aは上記の電池120の負極端子および抵抗126と接続される。接点125bは上記のガス発生器110の陰極接点および上記抵抗と接続される。電流が回路に流れるにつれて、ガスがベローズ128に流れ込む。ベローズが膨張するにつれて、液体129が液体室127から流管130に押し出される。
【0094】
図11は、水素が製造されるにつれて連続的に消費されるような、本発明の実施態様を示す。液体が環境中に蒸発できるように発散されるならば、この実施態様を用いることが出来る。このような液体は、ある種の芳香剤または駆虫剤あるいは殺虫剤から成る。液体71が注射器状容器70に収容される。水素ガス発生器/活性化クリップの組合せは、上記の液体容器70の基部にはめ込まれた固定具75にシールされる。液体がガス入口76に入ることを防ぐために、OPP又はPFAのような水素透過性フィルム72を用いてもよい。微孔性フィルムで液体蒸気の出口73を覆う。水素ガスが発生するにつれて、それは発散させる液体を通り抜ける。水素は、蒸気出口にある上記の微孔性フィルムを通る前に、液体で飽和される。
【0095】
図12は、図2に示した実施態様に類似の本発明のガルバーニのガス発生セル及び貯留槽を用い、時間に対して分与された液体量をプロットした図である。
【0096】
ガス発生セルは、アルカリ電解液中でアマルガム化された亜鉛ゲル陰極を有する、亜鉛/空気電池と類似に構成される。陽極は、PTFE被覆炭素が圧着されている延伸ニッケルから成る金属遮蔽板を使用した。多孔性のフルオロポリマーの疎水性障壁15bは、メッシュ14から成る陰極のガス側に圧着され、第二の多孔性のフルオロポリマーの疎水性封止層は、障壁15bと不織ポリプロピレンのガス送達メッシュ16との間に配置され、ガス送達メッシュ16は、陽極と缶9の出口6aの間に配置されている。厚さ0.00254cm(0.001インチ)の中間水分障壁17(Mylar(商標))は、図4.bに示されているようにガス流れ孔を覆い、ガス室に入る前に水分障壁を通してガスが透過する。発生したガスが、中間の水分障壁の後で圧力を増大させるので、この水分障壁は曲がり、図4.cに示されているように有効な透過領域が増大する。
【0097】
ガス室1の厚さは0.03175cm(0.0125インチ)であり、約10cm2面積を有するPANに基づく材料:Barex(商標)で実質的に構成されている。Barex(商標)は、さらに密封封止23を形成するための被覆層も有する。可撓性隔膜3は、厚さ0.00762cm(0.003インチ)のEVOHフィルムで構成されている。約1センチポイスの粘性を有する非水流体が分与される。ガス発生セルは、陰極と陽極の間の回路で、4000オーム又は6000オームの抵抗20でガルバニー的に作動した。二つの曲線は、数日の期間にわたり、時間に対して処理した液体量を示している。
【0098】
図13にプロットされているデータは、JacusのU.S.特許第5,034,291号に記載されているものである。亜鉛と、水酸化カリウム38重量%、酸化亜鉛3重量%及び水から成る電解液とを混合した場合に、水素ガスは、150ppmのインジウムを含む亜鉛と種々の量の添加剤との混合物から発生する。この場合の添加剤は、水銀および/または硫酸アルミニウムカリウムであった。このプロットは、発生した水素の速度は、ほぼ一定の速度であり、その速度は、混合物中の添加剤の種類と量に影響されることを示している。水素発生曲線に示される性能は、図6a及びbで示されているように本発明の実施態様でも達成可能である。この実施態様は、非常に長期の棚寿命を有する。
【0099】
図14は、厚さが0.0381cm(0.015インチ)、面積が10cm2の一定の領域である種々の単層から構成されるブラッダーシステムで生成する(または効率)水素ガスの量に対する送達された液体量の割合を示している。このプロットは、1013を乗じた水素透過係数に対する効率であり、係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1日当たり1、0.2及び0.04ccの送達速度を表す曲線が示されている。この効率は、水素透過速度が低い場合に高い。また分与速度が低い場合、増大したガスが時間により損失になるので、効率は低い。
【0100】
図15は、出発濃度が100%であり、ガス室のシェルは、厚さが0.00254cm(0.001インチ)又は0.0381cm(0.015インチ)の種々の単層材料で構成されていると仮定した場合の、ガス室ブラッダー内部水素濃度が10%まで放散するのに要する25℃で日単位の時間と二つの厚さのシェル構成材料とのプロットを示す。
【0101】
図16は、水素濃度が10%に達するまでの相対時間に対する水素と空気の相対濃度を示している。このプロットは、シェルがPETで構成されていると仮定しているが、このプロットは、他の材料にもきわめて類似している。
【0102】
図17.aは、種々の窒素透過定数を有する種々の単層材料から成り、その面積が1〜100cm2で変わるブラッダーシステムのための水素濃度を示している。材料の厚さは、0.0381cm(0.015インチ)の一定に保たれ、流体送達速度は、1日当たり0.2ccの一定に保たれている。このプロットは、1013を乗じた窒素透過係数の逆数に対する水素濃度であり、この係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1、10および100cm2の面積における曲線がそれぞれ示されている。
【0103】
同様に、図17.bは、種々の窒素透過定数を有する種々の単層材料から構成されるブラッダーシステムのための水素濃度を示しており、ここでは流体送達速度を変えている。材料の厚さは、0.0381cm(0.015インチ)で、面積は10cm2の領域に一定に保たれている。このプロットは、1013を乗じた窒素透過係数の逆数に対する水素濃度であり、この係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1日当たり0.04、0.2及び1ccの液体送達速度を示す曲線が示されている。
【0104】
図18は、電気化学的ガス発生装置とガス室との間に中間水分障壁を用いる利点を示した図である。ガス発生器は、dbulin電解液を有する亜鉛H2発生器である。このプロットは、中間の水分障壁の存在または非存在下で、異なる速度で操作された装置の分与された液体量を示している。ガス発生セル、ガス室/液体室貯留槽構成および分与された液体は、図12で記述したものと同様である。
【0105】
図19は、図7で図式的に示されているように、装置の時間に対する液体送達量を示している。このプロットは、電池を有するガス送達セルを駆動する利点を示している。示されている結果は、注射器を有する亜鉛H2発生器に対するものである。
【0106】
実施例1:
ガス発生器としてWinselの米国特許第5,242,565号に開示されている型を使用して装置はを設計した。このガス発生器の寸法は、675亜鉛/空気電池と類似であった。この装置は、1気圧で10ccの液体を送達する出来る。ガス室は10cm2の領域面積を有し、最大厚さが0.0381cm(0.015インチ)であった。可撓性隔膜を通し、かつ液体室のシェルを通しての外への水分損失は、液体の低い溶解性のために無視し得ると考えられる。必要な棚寿命は、37.8℃(100°F)で、20%相対湿度または90%相対湿度で2年である。Winselのガス発生器中で用いられるアルカリ電解液は、典型的には60%相対湿度の環境と湿度平衡する。すなわち、60%を超える湿度において、この電解液は外界から水分を吸収し、60%未満の湿度において、電解液は外界へ水分を失う。そのような仮定は、電池工業で用いられている多くの電解液に対して妥当なものである。設計基準は、理論よりも50%過剰の亜鉛のため、かつ装置が1日当たり0.2ccの一定速度で働くことを保証することを必要とし、ガス発生セルの構成の20%未満の容量変化が、許容しうるように想定されている。電池工業においては、典型的には15%未満の容量変化が許容しうるように想定されている。Winselのガス発生セルに、反応において消費する水を補うに必要な水分を提供する吸収材を使用した。
【0107】
【化1】
【0108】
ガス室中に運ばれる水分を考慮する必要がある。しかしながら、貯蔵期間中または反応中あるいはガス室への移送中に消費される際の、送達装置の寿命期間中に起こる水分の大きな損失をWinselは無視している。Winselは、また、貯蔵または内容物の使用期限までの期間中に、高い湿度環境で十分な水分を吸収する場合に起こると考えられる、ガス発生セルの初期のガスを目一杯に発生する際の有害な条件を無視している。ガス発生セルは、ガス室中へ電解液を漏出させることが出来、水素が水素出口の側から流れ出ようとするガス発生セルの多孔性部分にあふれさせることが出来る。そのような条件は、ガス発生セルの働きに有害な影響を有する。
【0109】
675電池のハードウエア中の水素放出陽極を除いた、ガス発生セル中で利用できる容量は、約0.330ccである。PVDCが、その低い水分透過特性を考慮すれば、図14から、その効率が約95%であるために、1日当たり0.2ccの分与速度を決定することが出来る。したがって、必要な亜鉛は、42.2mg、又はガス発生セルが完全に満たされると仮定し、電解液の容量を0.324ccとして、0.0059ccである。Winselにより推薦された吸収物を用いるならば、0.324ccの分画が、電解液のために用いられる。しかし、0.324ccよりも多量である仮定するならば、約302mgの水が含まれている。302mgの水のうち、7.7mgの水はガス発生セル反応で消費され、0.1mgの水は、ガス室が標準温度および圧力で電解液と平衡であると仮定するならば、十分に広げられたガス室中に移送される。
【0110】
ガス発生セルの導入容量が、20%未満であることを保証するために、ガス室シェル又は他の通路を通り外界へ逃れる水分は、68mg未満であるに違いない。しかしながら、37.8℃(100F)で20%相対湿度下での2年間の貯蔵期間における水分の損失は、約84mgである。シェルがOPP、HDPE又はPTFEであるならば、この損失は約100mgである。シェルが、PETであれば、この損失は、約320mgである。Halar(商標)またはAclar(商標)または金属被覆フィルムのようなPCTFEに基づく材料のみが、2年間の棚寿命の基準を満足する。これらの材料の使用は、いくつかの用途において、高価であるという問題があるかもしれない。
【0111】
実施例2:
ガス室シェル材料の可能性を求め、中間封止材を用いるたこと以外は実施例1に記載の態様と同じ態様が実施できる。図4.bまたは図4.dに示される水分障壁を用いる。ガス出口部分は0.009平方cmの面積を有し、かつ厚さ0.00254cm(0.001インチ)の水分障壁で、OPP、HDPE、LDPE、およびPETを含む容易に入手し得る多くの材料で形成される場合、上記に記載した条件下での貯蔵期間における水分損失は、5mg未満であり、5mg未満の水分損失を達成できる他の材料としては、PFA、FEP、PTFE、PVDC、PCTFE又はAclar(商標)、PCTFE/PE又はHalar(商標)または金属被覆フィルムが挙げられる。これらの材料は、貯蔵期間に生成した偶然の水素を透過させることが出来る。これらの材料の全ては、温度が変化する活性化時において、ガス室中の間の頂部空間に存在する酸素による開始の遅延を減少させることが出来る。パラジウム、鉄/チタン合金またはニッケルで金属被覆されたフィルムを用いる場合、開始の遅延は全くない。PET、PCTFE又はAclar(商標)またはPCTFE/PE又はHalar(商標)は、低い酸素透過性を有するが、十分に高い水素透過性を有し、恒久的な中間水分障壁として、図4.b及び図4.cに示されるようなものを用いることが出来、また貯蔵基準のための水分損失に対する適切な障壁の機能を有する。
【0112】
実施例3:
実施例1に記載の態様において、非透過性のガス室のシェルは、貯蔵中に偶然発生した水素を逃すが、水分透過を阻止できる材料で覆われた窓を有する金属から構成された障壁を用いることができる。その窓が、0.0581平方cm(0.009平方インチ)の領域を有するならば、実施例2の中間水分障壁として適切である同じ材料を使用した場合、窓を覆うために障壁の厚さは0.00254cm(0.001インチ)が適切であると仮定される。
【0113】
実施例4:
実施例1に記載の態様において、ガス室は、装置が水素の発生を止めた後10日以内に10%未満の水素濃度を保持するという別の基準を加える。図15から明らかなように、PFA、OPP、PTFE、PFP、ポリカーボネート、又はLexan(商標)、LDPE、又はLLDPE、ETFE、及びPCTFE/PE又はHalar(商標)の材料が、この基準に合致する。LDPE又はLLDPEが容易に入手できるため好ましく、低い水分透過特性の観点からはHalar(商標)が好ましい。これらの材料の典型的な市販フィルムの水素透過性は、LDPE及びLLDPEの場合7.4×10−13cc-cm/sqcm-Pa、Halar(商標)の場合4.0×10−13cc-cm/sqcm-Paである。図14から、10平方cm領域かつ厚さ0.0381cm(0.015インチ)を有し、流体送達装置が、約20%及び30%効率でそれぞれ稼働することを決定できる。LDPEの水分透過性は高いので、中間水分障壁として使用する場合、貯蔵中低い湿度で水分保持を維持すること、または高い湿度で入り込む水分を防ぐことが必要である。675電池のような寸法のガス発生器は、送達すべき容量が10ccである場合、20%または30%で作用するに要する余分の水素を発生させるのに十分に大きい。多くの亜鉛が用いられ、かつ反応中に多くの水が消費されるので、貯蔵中に環境への水の損失は少なくすることが出来る。20%効率の場合に、最大の水分損失は、48mgであり、30%効率の場合に、最大の水分損失は、56mgである。
【0114】
PCTFE/PE又はHalar(商標)を使用した場合、37.8℃(100F)及び20%湿度における2年の貯蔵期間中の水分損失は、9mgであり、この場合、中間水分障壁なしで許容し得る。他の許容し得る材料としては、Halar(商標)の厚さ0.0076cm(0.003インチ)の単層と、LDPE又はLLDPEの厚さ0.030cm(0.012インチ)の単層のような材料の組み合わせである。この材料は、薄層化されるか削り取られることも出来る。Halar(商標)の単層は、適切な水分障壁を提供することが出来、水分損失を45mgまでにすることが出来、そのために中間の水分障壁は必要がなく、この態様は、水素発生を止めてから10日以内にガス室内の水素濃度を10%未満とする上記の要求を満足する。
【0115】
上記の実施例は、構成材料が棚寿命、および特定の態様のためのガス発生器に含まれるべき活性材料の量にそれぞれ影響する基本的操作効率に大きくに影響し、それらを知るのに重要である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1.a】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図1.b】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図1.c】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図2】亜鉛/空気ボタン電池と同様に構成されているが、イオン伝導性セパレータが構造に含まれている、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図3】電気化学的ガス発生器がブラダタイプ流体容器に一体化されて電気化学的に制御される流体送達を形成している、本発明の実施態様の断面図である。
【図4.a】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.b】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.c】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.d】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.e】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.f】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図5】電気化学的流体送達装置が注射器タイプ流体容器を備えた、本発明の実施態様の略図である。
【図6】流体送達装置が、透過窓を有する金属ブラダタイプシェルを備えた、本発明の実施態様の略図である。
【図7】電池を使用してガス発生セルを駆動してより高くより安定な流体送達速度を達成する、本発明の実施態様の略図である。
【図8.a】電気化学的ガス発生器が、作動の前に互いに隔絶された液体成分および固体成分を有する、本発明の実施態様の略図である。この図はまた、腐食型ガス発生器である本発明の実施態様をいくらかの変更を加えて表す。
【図8.b】仕切りを破断することによって装置を活性化した後の図8aに示す実施態様を表す図である。
【図9】乾電池と同様に構成されているが、減極剤(酸化または二酸化マンガン)およびセパレータが構造から除かれている、本発明のガス発生部分の断面図である。図示する実施態様では、多孔質の炭素または黒鉛ロッドが水素発生陰極およびセルから流体収容タンクに通じる管に送られる水素の通路として働く。
【図10.a】図9に示すタイプのガス発生器を使用する流体送達実施態様の略図である。
【図10.b】図9に示すタイプのガス発生器を使用する流体送達実施態様の略図である。ガス発生器が市販の電池に結合されて、より高い流体送達速度でのイネーブル動作を増大し、または、より安定な送達のために回路中により大きな抵抗器の使用を可能にする。
【図11】水素が液体を通じて直接流れ、液蒸気を気相に運ぶ、本発明の実施態様の略図である。
【図12】ガス室および液体室のシェルがBarex(登録商標)膜で構成された電気化学的タイプガス発生器、より具体的にはシール付き亜鉛/アルカリ性H2発生器を用いた場合の、分与された液体と時間とのプロットを示す。
【図13】H2がZn粉末からガスとして発生する化学タイプガス発生器を用いた場合の、ガス発生と時間とのプロットを示す。
【図14】種々の速度での効率と水素透過係数とのプロットを示す。
【図15】水素濃度が10%まで放散するのに要する時間と二つの厚さのシェル構成材料とのプロットを示す。
【図16】水素および空気の相対濃度と水素濃度が10%に達するまでの相対時間とを示す。
【図17.a】水素濃度と窒素透過係数の逆数とのプロットを示す。
【図17.b】水素濃度と窒素透過係数の逆数とのプロットを示す。
【図18】電気化学的ガス発生装置とガス室との間の中間水分障壁を利用する利点を示すプロットである。このプロットは、中間水分障壁を用いる場合と用いない場合とで、異なる速度で作動する装置から分与される液量を示す。このグラフは、亜鉛H2発生器をアルカリ性電解質とともに用いた場合からの結果を示す。
【図19】流体送達量と図7におけるような装置の時間とのプロットを示す。このプロットは、ガス送達セルを電池で駆動する利点を示す。
【符号の説明】
【0117】
1:外部ガス室シェル
2:液体室シェル
3:可撓性隔膜
4:液体室(流体)
5:ガス室
6a:ガス出口
6b:ガス出口
7:管
8:栓
9:缶
10:電子伝導性セルキャップ
11:グロメット
12:電解質混合物
13:湿分透過性セパレータ
14:集電装置/触媒層
15a:シール層
15b:微孔質層(疎水性層)
16:ガス拡散メッシュ
17:中間水分障壁
20:抵抗
21:電子伝導性接触リング
22:電子絶縁性シリンダ
23:電子伝導性接触カップ
24:インデント
25:抵抗器
26:ガス発生セル
27:シール
28:作動クリップ
30:注射器本体
31:アダプタ
33:ピストン
34:シールリング
35:ねじ付きインサート
36:流体送達チップ
40:非透過性ガス室シェル
41:透過窓
42:膜
50:ハウジング
51:ボタン電池
53:接点
54:接点
60:円筒形陽極グロメット
61:活性陽極金属
62:空隙
63:仕切り板(キャップグルメット)
64:破断構造
65:破壊区域
67:可撓性キャップ
68:電解質(流体)
70:注射器状容器
71:液体
72:水素透過性フィルム
73:出口
75:固定具
76:ガス入口
80:電子絶縁性水性電解質
82:セルキャップ
83:インサート
84a:セルキャップ
90:円筒缶
91:座金
92:ロッド
93:絶縁座金
94:水性電解液
95:管
96:中間水分障壁
97:シール物質
98:陰極接点座金
99:陽極接点座金
100:円筒外装
110:ガス発生器
111:ガス室
112:液体室
113:可撓性隔膜
114:液体流管
115:電気回路
116:抵抗
117:プルタブスイッチ
120:電池
121:ハウジング
122:接点
123:スイッチ
124:接点
125a:接点
125b:接点
126:抵抗
127:液体室
128:ベローズ
129:液体
130:流管
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進の構成要素としてガス発生セルを用いる流体分与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に一定の目的とする速度で流体を長期間にわたって分与できる装置、特に液体の流体分与装置としては、様々な装置が利用されている。
【0003】
Battistaは、米国特許第3,115,280号明細書(特許文献1)において、水を電極で電気化学的に分解することによりH2及びO2のガスを発生させ、これにより流体を分与するのに利用できる装置を開示している。当該装置は、流体が収容されている柔軟な流体貯留槽および当該貯留槽の流体排出口以外を隣接して取り囲む室から成り、隣接する室で発生したガスが流体貯留槽を加圧し、流体貯留槽内の流体が装置の出口から分与される。隣接する室には、分解されたH2及びO2のガスを形成する水性媒体が収容されており、分与液体の貯留槽を取り囲む。
【0004】
Richterは、米国特許第3,894,538号明細書(特許文献2)に、流体を分与するための類似の装置を開示した。この装置では、電気化学的に発生したガスは別個の室(ガス室)に進入し、別個の室と液体を収容する貯留槽とは可撓性隔膜壁を共有する。そして、ガスが発生するにつれて液体が分与される。Richterは、ガスを電気化学的に発生し得る手段として、亜鉛、カドミウム又はアルミニウムより成る陽極を利用するセルの使用を示唆している。
【0005】
Orlitzkyは、米国特許第4,023,648号明細書(特許文献3)に、類似の装置を開示している。この装置においては、電気化学的に水素ガスを発生させるためにセル内の亜鉛またはマグネシウムの陽極を用い、「防ガス隔膜」によって流体室から分離したガス室を加圧する。Orlitzkyの装置は、「発生したガスのいかなるものも漏出することがほぼ不可能であるように」構成されている。
【0006】
同様に、Winselは、米国特許第5,242,565号明細書(特許文献4)で、アルカリ電解質中に亜鉛陽極を用いた、流体を移送する水素発生用化学セルを開示している。
【0007】
Baeらは、米国特許第5,354,264号明細書(特許文献5)に、類似の装置を開示している。この装置においては、水に浸漬したヒドロゲルから水を電気化学的に分解して水素および酸素を形成し、流体室と共有の可撓性隔膜を有するガス室を加圧するか、又は、プランジャ又はシリンダによって液体から分離された注射器の室に発生したガスを進入させる方法を使用している。
【0008】
上記に述べた装置は、特に、流体送達貯留槽として膀胱型の貯留槽を使用した場合に、長い「棚持ち」を考慮して設計されていない。その上、既存の技術において、実際の流体送達速度が、ガスの発生速度とガス室壁およびシールを通じての輸送速度との双方の関数であるという事実を無視している。これは、遅い輸送速度の装置に特に当てはまる。
【0009】
上記の流体分与装置は、すべて、装置の回路を導通する電流に正比例する量のガスを発生する。しかしながら、実際の流体送達速度は、ガスの発生速度に加えて、ガス室の壁およびシールを介して大気に出入りするガスの輸送速度に影響する構成材料の関数であることが見出されている。これらの流体送達速度に対する影響は、生成される一次ガスが水素である場合、非常に顕著である。上記の装置のガス室の外殻の代表的な肉厚は、0.076cm未満(0.030インチ未満)であり、ガス及び液体室間の可撓性隔膜の肉厚は、0.0127cm未満(0.005インチ未満)である。注射器の筒の代表的な肉厚は0.1524cm未満(0.060インチ未満)である。空気中には実質的に水素は皆無であるから、ガス室を出る水素の透過勾配は高い。加えて、そのような装置の材料として一般的に用いられるプラスチックについては、水素に対する透過係数は、空気に対するそれより高い。25℃での水素対空気の透過係数の比は、セロファンの2.1という低さから、ポリプロピレンの93までの範囲である。そのため、ガス室から漏出する水素の透過は、ガス室に進入する空気の透過を常に上回り、これらの結果より、ガス室を出るガスの正味の流速となる。上記の形式の装置から分与される液体の全体の速度は、ガスの発生速度に加えて、構成に用いた材料、表面積、および材料の厚さの関数であることわかっている。低い圧送速度を所望する装置の場合、透過の効果が比例して高いために、透過の効果が顕著となる。
【0010】
Winselは、ドイツ国特許第3,602,214号明細書に、水溶液の存在下で金属から水素ガスを発生させる化学的腐食の手法を開示している。この手法は、腐食性金属に第二の金属をメッキすることを要する。同様に、流体送達装置における金属の化学的腐食による水素の発生法は、ドイツ国特許第2,139,771号明細書およびカナダ国特許第961,420号明細書に開示されている。Sancoffは、米国特許第5,398,850号および第5,398,851号明細書に、流体を分与するのに用いられる貯蔵安定的な装置であって、炭酸塩または重炭酸塩を含有する材料を酸と組合せて二酸化炭素を発生させ、これによって駆動される装置を開示している。Sancoffの装置は、貯蔵中に反応する成分が反応するのを防止するために、別個の区画と活性化の時点で活性成分の結合を可能にする手段とを有する。しかしながら、このような炭酸塩および重炭酸塩を利用する装置は、圧力リリーフ弁の利用なしには、一定の速度で流体を送達できない傾向がある。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3115280号明細書
【特許文献2】米国特許第3894538号明細書
【特許文献3】米国特許第4023648号明細書
【特許文献4】米国特許第5242565号明細書
【特許文献5】米国特許第5354264号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような装置の使用者は、空気中の酸素の存在下で使用するため、スパークに触れた際にガスが発熱的に反応する可能性があるため、水素の存在を懸念している。そのため、装置の作動寿命が終了した際に、水素を迅速かつ無制限に漏出できることが好ましい。
【0013】
流体送達装置の最も重要な評価基準の一つは、適切な棚持ちを有することであって、代表的には、2年より長い棚持ちが必要とされる。従来技術において、この問題点を取扱っていない。従来技術の装置の棚持ちは、次の三つの問題点のために短い。第一は、ガス室のシェル又は可撓性隔膜を介して透過することによる、ガス発生セルからの水分の損失である。水素を発生する反応の大部分は水の消費を伴う。そのため、セルの乾燥は、一般に、望まれる性能より低い性能または短い寿命を招き、ネガティヴな影響を与える。
【0014】
第二に、ガス発生器が金属を消費する形式である場合、セルへの酸素の進入を制御できないため、装置を起動する前に、金属は尚早に酸化して費されることになる。
【0015】
第三に、ガス発生器が金属を消費する形式である場合、水素がある程度尚早に生成する。この現象を効果的に抑制するために腐食防止剤を使用する。しかしながら、活性金属が水溶液の存在下にある場合、特に、貯蔵中に装置の雰囲気温度が上昇した際、多少の水素発生が生じることになる。この水素は、抵抗無く排出しなければならず、さもないと、装置が加圧され、装置を初めて起動した際に、液体の尚早な分与、装置の変形または望ましくない突発的な流体送達を招くことになる。したがって、本発明の他の目的は、長い棚持ちを可能にする装置の材料および設計を選択するための指針を提供することである。
【0016】
ガス発生器が金属を消費して水素を発生する形式である場合、流体送達装置の使用者のもう一つの懸念は、装置を起動した際の、圧送が生じる前の遅延である。それは、ガス発生セルと可撓性隔膜との間の頭隙に拡散した酸素がすべて、水素の発生が始まる前に消費される必要があるためである。この装置の立ち上がりの遅延を最小化または回避する方法を開示することも、本発明の目的である。
【0017】
ガス発生器が金属を消費して水素を発生する形式である場合、流体送達装置の使用者のもう一つの懸念は、従来技術で代表的に認められるように、貯蔵中において、金属が水銀とアマルガム化することによる腐食の量を減らすことである。水銀は有毒であり、食物連鎖中に蓄積するため、装置の最終的廃棄は環境問題を招く。本発明のもう一つの目的は、性能を悪化させることなく、電気化学的活性金属のアマルガム化の必要性を回避する方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明の要旨は、ガス発生の構成要素として水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極と、陰極と、前記陽極および陰極の少なくとも一部と接触する水性電解質と、前記陰極と陽極とを互いに絶縁し、前記電解質を介して陽極と陰極とがイオン的に接続するように構成された電気的絶縁体と、前記陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と、生成された水素ガスが前記水素発生セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集するガス室に進入するのを可能にする排気手段とから成る流体送達装置に存する。
【0019】
水素ガスを利用した流体送達の一般的概念は新規ではない。しかしながら、本発明は、化学的腐食によって、予測可能な速度で水素を発生する新規な手段を開示し、長い棚持ち、流体送達における適切な水素の利用効率、および、使用後に水素がガス室から抵抗無く流出可能であり、分与過程が完了した後、短時間で水素がほとんど残留しない様な特徴を有する。
【0020】
本発明のガス発生器、特にH2発生器を用いる貯蔵安定的流体分与装置は、様々な目的、例えば流体医薬、ビタミン類、ホルモン類、ペットフード、肥料、芳香物質、殺虫剤、駆虫剤、芳香剤、機械潤滑剤などの分与に利用される。装置を消費者向け、工業的または医学的な用途に利用するか否かに拘らず、すべての場合において、棚持ちの良いことが重要であり、一般的に、最低2年の棚持ちが要求される。この要件を満たすため、2年を越える棚持ちを有する水素発生装置のいくつかの新規な実施態様を開示する。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に提示の装置は、圧力リリーフ弁を組み込むという付加された複雑な構成を必要とせずに、ほぼ一定の速度の流体送達を提供することができる。また、化学的腐食によって、予測可能な速度で水素を発生する新規な手段を開示し、長い棚持ち、流体送達における適切な水素の利用効率、および、使用後に水素がガス室から抵抗無く流出可能であり、分与過程が完了した後、短時間で水素がほとんど残留しない様な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施態様は、本明細書中に参照として援用する米国特許第3,894,538号、第4,023,648号、第5,354,264号または第5,242,565号明細書に開示された形式のガス発生セルを包含する。金属の陽極と水素を放出する陰極とを備えたセルは、ガルバーニ電気によって作動してもよい。すなわち、この場合、作動するために回路内に電池を必要としない。しかし、直列または並列の1個以上の電池のような直流電源を回路内に組み込むことは好ましい。これは、同じ形式のセルがより高い速度で水素を発生することを可能にし、、また、特に平滑な放電曲線を有する電源を用いる場合、より安定的な時間あたりの流体送達速度を与え、より大きい抵抗を回路に用いることも可能にする。平滑な放電曲線を有する好適な電池としては、酸化銀/亜鉛、酸化水銀/亜鉛、亜鉛/空気などを包含する。本発明の一実施態様として、ガルバーニ電気で作動され得るガス発生器が、ガスを発生しない電池の補助により、性能のレベルが上昇するようなガス発生の実施態様である。
【0023】
ガス室にガス発生セルを取り付けた際、すべての場合において、水分がガス室を通じて外界へ又はガス室の壁を通じて外界へ直接に、または可撓性隔膜を通じて流体室へ且つ流体室の外壁を通じて透過する可能性がある。逆に、非常に高い湿度の雰囲気では、ガス発生セルは水分を吸収する可能性がある。極端な場合、ガス発生セルがあまりにも水分を吸収してしまい、装置を起動した際に水素を放出する電極構造が適切に機能しなかったり、漏出する点まで溢れるようになる可能性がある。
【0024】
一般に、金属シェルのような、完全に不透性であるシェルを用いることは、装置が貯蔵状態にある間に金属陽極の腐食によって多少の水素が生成される可能性があるため、望ましくない。この生成した水素が漏出できるための副次的な通路を保有しない場合、装置の起動前にガス室の圧力が上昇し、装置の破裂、流体の尚早な圧送、または装置を起動した際の流体送達のサージ等の何れかを招くこととなる。そのため、一般的に、多少の水素透過性を有する材料、または不透性金属シェルと小さい面積の水素透過性材料との組合せを用いるのが望ましい。しかしながら、ガス発生器の水性成分と外界との間に、非常に優れた水分障壁が必要とされる。さもないと、装置が起動した後、乾燥するか、または水分が溢れるかして、機能したとしても、着実な機能ではない。
【0025】
多少の水素透過性を有する材料としては、好ましくは厚さが0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するPET又はナイロン若しくはその他のポリマー材料の様な金属被覆膜であり、ポリマー材料としては、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFEまたはAclar(商標)]およびポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン[PCTFE/PEまたはHalar(商標)]も優れており、ポリ塩化ビニリデン[PVDCまたはSaran(商標)]、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン[PTFEまたはTeflon(商標)]、PFA[Hostaflon(商標)]およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン[TeflonFEP(商標)]も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリエステル[PETまたはMylar(商標)]も、水分透過を低下させるのに用いることができる。これらの材料はすべて、いかなる尚早な水素発生の漏出も可能にすると思われ、金属箔障壁よりも多少の水素透過性を有するという利点を有する。これらの材料は、水分障壁用として、それら自体で用いられても、積層品またはコーティングとして他の材料と組合せて用いられてもよい。
【0026】
水分障壁をどこに設置するかについては、次のような代替策がある。すなわち、ガス室のシェル自体を非常に低い透水性の材料で構成するならば、ガス室のシェル自体を水分障壁としてもよい。この方式の欠点は、水分透過が生じ得る面積が一般に大きいことである。あるいは、低い透水性であるが、多少とも水素透過性である材料で被覆されたポートを有する、不透性のシェルを用いてもよい。また、ガスを発生する電極または成分と、ガス室との間に中間的な水分障壁を用いてもよい。例えば、水分障壁は、ガス発生装置のガス出口に内部もしくは外部に、またはガス発生セルのガス発生電極とガス出口との間に取り付けてよい。殆どの設置位置において中間水分障壁は恒久的に使用されるため、水分障壁に使用される材料は、適当な圧力勾配下での作動の際に、水素が水分障壁を透過するのに充分な水素透過性を要することが好ましい。水分障壁がガス発生器のガス出口の外部にある場合、貯蔵の際の水分障壁の実効面積はガス出口の面積であるが、水素流の圧力下で作動する際は、水分障壁がガス出口から外に屈曲するため、水分障壁の実効面積は、より大きい直径となる。
【0027】
水分障壁をガス発生装置の外部に置く場合、別の実施態様として、水分障壁として良好な材料を使用し、脱着可能な接着剤を備えた、脱着可能な水分障壁を有する。この場合、貯蔵の際は優れた水分障壁を与えるが、作動初期に発生した水素の圧力下で翻転して開いたり、あるいは、材料強度を弱く設計し、作動初期に発生した水素の圧力による応力下で材料が破裂してもよい。この方式では、水分障壁の実効面積を非常に小さくすることが出来、優れた水分包有性が多声でき、さらに、水分障壁が脱着または破裂した後は、水素ガスがガス室へ自由に流入することが出来る。
【0028】
ガス発生セルにおいて、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムのような腐食可能な陽極を用いる場合、上記の水分障壁は、酸素がガス発生セルに高い速度で浸透するのを妨ぐことも出来、棚持ちを増大させることが出来る。パラジウムの薄いコーティングを有するポリマー膜は、低い透水性と、非常に高い比率の水素対酸素透過性とを有するため、上記のガス発生セルにおける水分障壁材料として特に適する。
【0029】
高い水素対酸素透過性の比率を有する材料を恒久的な水分障壁の材料として用いることは、明白ではないもう一つの利点を有する、すなわち、このような水分障壁を用いると、水素発生による圧送が、起動の比較的直後に始まる。一般的に、棚に貯蔵されている間に、ガス室のガス発生セルと可撓性隔膜との間の頭隙は、空気との平衡に達し、一般的に20.9%の酸素を含有する。ガス発生装置が、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムの等の金属が酸化する形式を使用した装置である場合、ガス発生セルと室との間に水分障壁が皆無であるならば、頭隙内の酸素は、起動後に有効となる水素が形成される前に、ガス発生セルによって消費されることになる。しかしながら、ガス発生セルとガス室との間に、高い水素対酸素透過性の比率を有する水分障壁を配置するならば、ガス発生セルへの酸素の移動は妨げられ、起動の後すぐに水素発生が始まるか、または、水分障壁なしの場合より早期に水素発生が始まる。この効果を、下記の図14に示す。そのため、水分障壁をパラジウム、鉄/チタン合金、ニッケルなどの薄層で金属被覆することによりこの効果を最大とすることが出来、この場合、水素対酸素の透過性の比は極めて高くなり、ガス発生装置の外部の酸素の存在による圧送開始の遅延は、実質的に皆無となる。特にパラジウムの薄層は、水素に対してはほぼ透過可能であるが、酸素および水分の透過を劇的に低下することが出来る。そのような薄層は、高い水素透過性を有するOPPのような重合体薄膜に適用できる。パラジウムの薄層は、例えば気相メッキまたはスパッタリングによって形成することが出来、厚さ数オングストロームの層を形成できる。
【0030】
本発明の他の特徴としては、起動の際の圧送の遅延を最小化できることである。すなわち、次のような水素発生セルにおいて、陰極での酸素の利用が極端に無効果であり、酸素の存在下でさえ、水素の放出が始まることを見出した。特に電解質が塩化アンモニウムを包含し、非アルカリセルを用いる場合である。例えば、亜鉛/空気セルのように構成され、ニッケル又はルテニウムメッキしたニッケル、又はニッケルメッキされ更にルテニウムメッキされた鋼メッシュの電極と、亜鉛陽極と、実質的に塩化アンモニウム、塩化亜鉛および水よりなる電解質とを有するガルヴァニックセルは、代表的な亜鉛/空気セルの場合のような1.4Vではなく、ほぼ500mVの回路電位を有する。そうして、電流がセルを通過するように、負荷をセルにかけた際、水素は、前者のセルからは直ちに放出を始めるが、後者のセルからは、実質的にすべての酸素が陰極において不在となるまで、水素は全く放出されない。
【0031】
長い棚貯蔵寿命時間を延長するため、他の実施態様として、最終的なガス発生器の液体および固体の構成要素を別個の区画に貯蔵するように設計する。そして、起動の時点で、隔離された成分を組合せる。この方式は、電気化学的および化学的な形式のガス発生器の双方に用いることができる。米国特許第3,894,538号、第4,023,648号、第5,354,264号または第5,242,565号明細書などに記載されたような電気化学的形式のガス発生器に応用する場合、固体の活性材料は、それらの正常な位置に収容し、水、または電解質のような液体の構成要素は、何れも貫通できる部材を備えた水密性の小袋または区画に貯蔵する。
【0032】
水密性の小袋としては、低腐食金属、PETの金属被覆膜、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するナイロンその他の金属被覆ポリマー材料のような、透水性が低いか、または全くない材料で製造することができる。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFEまたはAclar(商標))およびポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン(PCTFE/PEまたはHalar(商標))が優れており、ポリ塩化ビニリデン(PVDCまたはサラン(商標))、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン(登録商標))、PFA(Hostaflon(商標))およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン(テフロン(登録商標)FEP)も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリエステル(PETまたはMylar(商標))も挙げられ、上記材料と、積層品またはコーティングとしての他の材料との組合せも用いることが出来る。
【0033】
ガス発生器の活性金属陽極に水分が達することを防ぐのであれば、小袋を構成する材料として、水分と水素との双方に完全に不透性であるものが使用でき、貯蔵の間、それ自体が成分と反応して尚早にガスを形成しない限りは、金属箔を用いることができる。起動の時点で、小袋または区画の壁を何らかの手段によって貫通し、液体成分が固体成分に流入して、電気化学的に活性である混合物を形成する。この方法では、尚早な水素発生を無視することが出来、水分の損失は防止される。加えて、装置を起動させることにより発生ガスが充満して流体送達に寄与するまでは、成分が分離されていることから、非常に低いガス発生速度を必要とする場合を除いて、ガス充満防止剤を含ませる必要が無い。これは、貯蔵の際に、ガス充満を許容され得るレベルまで最小化するためにアマルガム化を必要とするWinselのガス発生セルと比較して大きな利点である。
【0034】
水素を発生する腐食混合物の液体および固体の構成要素を分離する方法としては、他の類似の構造が採用できる。例えば、ある種の活性金属は、酸またはアルカリの溶液と接触した際、酸化して水素を放出する。水素放出の速度は極めて再現性が高く、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、マンガン等の腐食性金属の形式、表面積および反応速度を下げるために加えてよい薬剤の関数で表される。そのような薬剤は、ガス発生セルのガス充満を低下させるために、電池業界で一般的に用いられ、多数の特許の主題となっている。この薬剤は、活性金属中の不純物をより陰極性でなく挙動させるのに役立つ合金形成剤と、活性金属の表面を覆う不動態化酸化物層を形成するコーティングと、活性金属表面に引き付けられて被覆しかつ不活性化させる有機阻害剤との三つの範疇に分類される。
【0035】
アルカリ系に広く用いられる薬剤も一つとして、腐食され得る金属とアマルガム化する水銀、または還元されてアマルガム化を形成する塩化第二水銀もしくは塩化第一水銀が挙げられる。その他の薬剤としては、硫酸アルミニウム及び硫酸カリウムアルミニウム(米国特許第5,034,291号明細書)、界面活性剤(X)−CnF2n−(Y)−(CH2CH2O)m−(Z)[式中、Xは−H又は−Fであり、Yは−C2H2−O−CH2CH(OH)−CH2O−であり、Zは−CH3、−PO3W2又は−SO3Wであり、ここでWはアルカリ金属であり、nは4〜14であり、mは20〜100である]、0.01〜1重量%のインジウム、0.005〜0.5%の鉛およびビスマスのうち1種以上より成る亜鉛合金(米国特許第5,128,122号明細書)、アンチモン、ビスマス、カドミウム、ガリウム、インジウム、鉛、水銀、タリウム及びスズから成る群から選択される酸化物(米国特許第5,232,798号明細書)、水銀、鉛、カドミウム、インジウム及びタリウムを含まず、水酸化又は酸化ガリウムを含むビスマス、リチウム、カルシウム及びアルミニウムから成る群の少なくとも1元素(米国特許第5,308,374号明細書)、インジウム、鉛、ガリウム又はビスマスの酸化物または水酸化物(米国特許第5,376,480号明細書)、メチルシリコネートを包含する6個またはそれ以下の炭素原子を有する有機シリコネート(米国特許第4,617,242号明細書)、式:[RO(EtO)n]x−PO−(OM)y[式中、x+y=3、M=H、アンモニウム、アミノ又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属、R=フェニル又は6〜28個の炭素原子を有するアルキル若しくはアルキルアリール]で示される有機リン酸エステルで構成される、極性親和性を有する界面活性異極性材料(米国特許第4,840,644号明細書)、少なくとも1種類の陰イオン界面活性剤と少なくとも1種類の非イオン界面活性剤とで構成され、陰イオン界面活性剤として、式R1(CH2−CH2−OH)n−X1[式中、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール及びそれらの組合せより成る群から選ばれ、X1は、陰イオン性酸の基、陰イオン性酸の基の塩、および陰イオン性リン酸エステルの基よりなる群から選ばれ;nは約3〜40である]で表わされ、非イオン界面活性剤として、式R2(CH2−CH2−O)n−X2[式中、R2は、アルキル、アリール、アルキルアリール、フッ素化脂肪族の基およびそれらの組合せより成る群から選ばれ;X2は、非イオン性の基であり、nは約3〜250である]で表わされる混合物(米国特許第5,401,590号明細書)が例示される。流体送達の用途におけるガス発生速度の調整のため、電池業界においてアルカリ電池系でのガス充満を軽減するのに適したその他の薬剤を使用してもよい。アルカリ電解質での陽極の腐食を軽減することに関連した上記特許の開示を本明細書中に参考として援用する。
【0036】
非アルカリ電解質については、ルクランシェ形式の電池でのガス充満を軽減するのに電池業界が用いる薬剤を適宜使用して、脱気されたガス発生速度を達成すればよい。効果的な薬剤としては、Morehouseらによって、Effect of Inhibitors on theCorrosion of Zinc in Dry-Cell Electrolytes,J.Res.Nat.Bur.Standards,Vol.40,pp151-161(1948)に開示されている。これらの薬剤としては、合金化剤、酸化剤、および、カルボニル基を有する化合物、複素環含窒素化合物、澱粉、小麦粉、グルテン、有機コロイド状化合物などの有機コーティングが挙げられる。Morehouseに開示された薬剤は、水素放出の阻害の際には効果的であるが、電気化学的性能にネガティブな影響力を有するために電池には適さないいくつかの薬剤に言及しているが、そのような薬剤は、電気化学的性能は関係ないため、本発明の腐食形式のガス発生器においては使用できる。非アルカリ電解質での陽極の腐食の軽減に関連する薬剤の開示は、本明細書中に参照として援用する。
【0037】
酸性溶液によるガス発生に関しては、Porbaix及びZoubovが、Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions、Cebelcor,Brussels,1974,p.119において、水素ガス発生と、1リットルあたり0.01モルの鉛、鉄または亜鉛を含有するpH≒0の溶液に対する面積との関係を報告している。それによれば、個々のガス発生速度は、金属の粉末またはペレットの粒径を選択することによって調節することが出来る。加えて、クロム酸または重クロム酸カリウムのような酸化剤を用いて、水素放出速度を下げることも出来る。生態学的見地から、水銀とのアマルガム化での利用を避け、他の薬剤を用いて速度を制御することが好ましい。
【0038】
上記の方法と同様に、腐食し得る金属から隔離して、水密性の小袋または区画に液体を貯蔵する。小袋は、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.3×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有する非腐食性金属、PET又はナイロンその他のポリマー材料のような透水性が低いか、または全くない材料で製造される。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE又はAclar)及びポリクロロトリフルオロエチレン−co−ポリエチレン(PCTFE/PE又はHalar(商標))が優れており、ポリ塩化ビニリデン(PVDC又はサラン)、高密度ポリエチレン(HDPE)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、PFA(Hostaflon(商標))およびポリテトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン(テフロン(登録商標)FEP)も良好である。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリエステル(PET又はMylar(商標))も用いることが出来、上記材料と、積層品またはコーティングとしての他の材料との組合せも用いることが出来る。起動の際、何らかの手段によって小袋または区画の壁を貫通し、液体成分が固体成分に流入して、電気化学的に活性である混合物を生じるようにする。この方法によれば、尚早な水素発生は無視でき、水分の損失は防止される。また、活性金属を有害な水銀でアマルガム化する必要性が回避できる多くの代替策が存在する。
【0039】
水素を電気化学的に又は化学的に発生させるかに拘らず、かつ液体および固体成分を初めに分離するか又は予め混合するかに拘らず、装置から送達される実際の流体は、生成されたガスと、ガス室からのガスの正味の流束との双方の関数で表される。一般に、薄膜または膜を横切る特定のガスの流束は、以下の周知の方程式を用いて算出することができる。
【0040】
【数1】
【0041】
式中、Jiは薄膜または膜を横切る成分Iの流束であり、Piは関連する温度での成分Iに対する透過係数であり、Δpiは薄膜または膜を横切る成分Iの圧力差であり、Aは薄膜の面積であり、そしてtは薄膜の厚さである。水素の透過係数は、一般的に、酸素の透過係数より2〜100倍高く、窒素の透過係数より7〜400倍高い。空気中の酸素および窒素の相対濃度に関しては、水素透過係数は空気より2〜200倍高い。そのため、ガス室シェルを透過するガスの正味の流束は、外向きである結果、発生する水素の体積に関して100%未満の、送達されるべき流体の圧送効率を生じる。加えて、ガス室内へと透過する酸素の多くは、ガス発生セルによって金属酸化物を形成するのに消費されるが、それは、一般的に、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はそのような陽極が、電解質に先行して水素を形成する寄生反応であるからである。そのため、装置から分与しようとする特定の体積の液体に対して、ガス発生セルは、ガス室から外向きに透過する水素と、ガス室内へ透過し、最終的に活性ガス発生成分と反応する酸素とに対応するための過剰な容量を必要とすることになる。
【0042】
ガス室シェルの材料としては、効率の観点から、低い水素透過性と高い酸素透過性とを有する必要がある。意図される送達速度が減少するのに応じて、材料による影響が大きくなる。ポリプロピレンは、高い水素透過係数を有するポリマー材料の一つである。ガス室シェル材料にポリプロピレンを選び、意図する送達速度が100cc/日前後である場合、95%の効率が期待できるが、意図する送達速度が1cc/日の場合、肉厚が0.0381cm(0.015インチ)の10cm2のガス室シェルに対する効率は15%未満である。意図する送達速度が0.2cc/日の場合、効率は3%未満になる。
【0043】
同じ条件下で、ガス室シェルをポリ塩化ビニリデン(PVDC)から構成する場合、同じ範囲の送達速度において、効率は約95%に留まる。PVDCの他にも、低い水素透過係数を有する材料としては、厚さ0.76×10−6〜3.81×10−6cm(0.×10−6〜1.5×10−6インチ)の金属コーティングを有するPET又はナイロンその他のポリマー材料のような金属被覆膜、エチルビニルアルコール(EVOH)、セロハン、ポリアクリロニトリル[PANまたはBarex(商標)]、ポリフッ化ビニル[PVF又はTedlar(商標)]、ポリフッ化ビニリデン[PVDFまたはKynar(商標)]、ナイロン及びPETが挙げられる。ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFEまたはAclar(商標))、ポリ塩化ビニル(PVC)及びHDPEも、低い水素透過性を有する。
【0044】
アルミニウムの金属被覆コーティングを有する膜は、低い流体分与速度の場合でも、高い効率を達成できるのに充分低い水素透過性を有する。例えば、面積10cm2で肉厚0.0381cm(0.015インチ)の金属被覆していないPET等の材料から構成されたガス室の場合、送達速度が1cc/日では、比較的高い効率(>95%)が達成出来るが、送達速度が0.04cc/日ccでは、効率が50%未満となる。しかしながら、このような材料に、厚さ僅か1.27×10−6cm(0.0000005インチ)のアルミニウムのような金属被覆コーティングを設けると、送達速度が0.04cc/日ccのような低い送達速度であっても、90%を超える効率を達成できる。したがって、低い送達速度の場合、最良の障壁特性を有する材料を選ぶ必要があり、さもなければ、装置に対し低い送達速度を補償するために、非常に大きい容量を付与する必要がある。上記の材料は、互いに又は他の材料と併用して、積層またはコーティングによって所望の特性を達成してよい。
【0045】
一方、送達期間を完了した後に水素が迅速かつ抵抗無く放散できるよう、装置を設計することが望ましい。したがって、上記材料または材料の組合せは、水素透過は出来るだけ高く、且つ、許容され得る効率を有するように選ぶことが好ましい。下記に、水素が直ちに放散できる本発明のもう一つの実施態様を説明する。
【0046】
EVOHは、適度の湿度、高い湿度または水分の存在下であっても優れた障壁特性を有するが、EVOHのガス透過係数は、1,000倍も上昇し、そのため、多くの用途に対して避ける必要がある。しかし、分与しようとする液体が非水性である場合、且つガス室および液体室のシェルが低い透水性を有する場合、ガス室を液体室から分離するための可撓性隔膜として、EVOHを使用することが出来る。これは、その柔軟性と極めて低いガス透過性のためである。
【0047】
もう一つ考慮すべきことは、ガス室内の水素の濃度である。水素を駆動ガスとして用いることに懸念を有し、装置が作動している間は、水素濃度を最小化とすることを好む使用者もいる。水素濃度を最小化とすることは、ガス室への窒素の透過を最大化することによって達成できる。中間的な水分障壁を用いないならば、ガス室へと透過するいかなる酸素も、ガス発生セルによって最高度に消費されるため、装置が作動するにつれて、窒素がガス室に顕著に蓄積する水素以外の唯一のガスとなる。装置が作動する間に達成される窒素濃度の上限は、空気中の窒素濃度である(装置は空気中で作動すると仮定して)。酸素が装置によって消費されると仮定し、作動している間のガス室内の水素濃度に対する理論的最低限度は20.9%である。最高の窒素透過係数を有する材料としては、ポリブタジエン、エチルセルロース、FEP、PTFE、PFA、LDPE及びLLDPEが挙げられる。
【0048】
水素駆動ガスの即時放散を可能にする装置の他の実施態様として、水素ガス発生器を用い、分与しようとする液体に水素を直接流入させ、液体の蒸気を気相に送り込むような装置である。この実施態様において、分与しようとする液体が、分与温度で顕著な蒸気圧を有することを必要とする。水素は液体中を流れ、液体で多少とも飽和され、次いで、ガスまたは蒸気に対して高度に透過性であるが液体には実質的に不透性であるミクロ細孔に富む膜を貫流する。そのような膜材料としては、未焼結のPTFEが挙げられる。この装置が適正に作動するために、ガスが液体を通過してから室の出口へと通過できるように、液体室を設計しなければならない。この実施態様は、空気中に分散しようとする殺虫剤または香料のような流体を分与するのに好適である。この実施態様における、生成されるガスに関する最高分与効率は、液体蒸気圧対環境の気圧の比となる。
【0049】
Orlitzkyが米国特許第4,023,648号明細書に開示したガス発生器では、ほぼ中性のpHであるルクランシェ形式の電解質から、電気化学的に水素を発生する。Orlitzkyのガス発生セルにおいて、電解質は、陰極材料、特に炭素とともに実質的に含有されており、活性陽極材料は、実質的に、セパレータで電解質と接触する。Winselが米国特許第5,242,565号明細書に開示したガス発生器では、電気化学的に水素を発生する点で類似するが、実質的に陽極材料とともに貯蔵されるアルカリ電解質を用い、水素を放出する陰極は、実質的にセパレータで電解質と接触する。
【0050】
Winselが開示したガス発生セルの短所は、作業所で、そして最終的には廃棄の際に危険であるアルカリ電解質を使用していることである。また、Winselにおけるアルカリ電解質は、貯蔵中、二酸化炭素を徐々に吸収することがあり、これは、装置内で炭酸塩の沈澱を生じさせ、装置を起動した際に性能にネガティブな影響を与える。また、アルカリ電解質の存在下では、活性材料、例えば亜鉛は、上記の通り、ガス充満阻害剤の不在下での貯蔵の際にガスを放出する可能性が比較的高い。しかし、Winselは、ガス発生セルの構成として、商業的な亜鉛/空気ボタンセルに非常に類似してもよいことを例示している。Winselは、商業的な亜鉛/空気ボタンセルに酸素ガスの不在下で負荷を通じてショートさせた際、水素ガス発生器として利用できることを指摘している。この事実は、過去30年間、ボタン電池業界で周知であった。
【0051】
本発明は、流体送達を目的とし、長い棚持ちを有することを可能とする商業的な亜鉛/空気セルに類似のセルに応用してもよい。本発明は、非電解質を用いる、亜鉛/空気ボタンセルの一般的構成を利用でき、製造の点でも有利であることも開示する。このようなセルんびおける電解質は、陽極の活性材料と予め混合されていても、または装置を起動したときに、電解質混合物が陽極の活性材料と混合するようにして、小袋または区画に収容されて、別個に貯蔵されていてもよい。また、このようなセルにおける電解質は、認識できる程の二酸化炭素を吸収しないため、作業所での危険や廃棄に関する懸念が生じない。また、ほぼ中性の電解質と活性金属陽極との組合せであるため、廃棄の際に問題となり得る水銀その他の重金属合金化剤とのアマルガム化の手段を必要とせずに、貯蔵の際の望ましくないガス充満を容易に防止することが出来る。
【0052】
本発明の他の実施態様として、活性金属陽極が電気化学的ガス発生セルのキャップに組み込まれた態様である。この実施態様では、ボタン電池業界に用いられる構成とは全く異なるが、セル製造の補助となり得、水素ガス発生セルにおける先行技術に対する利点を提供できる。この利点は、セパレータを省いた実施態様で特に顕著となる。電池業界の通常の実施において、及びWinselの米国特許第5,242,565号明細書の図に示された通り、電気化学的導電性である陰極の集電装置と電気化学的導電性である陽極のペーストとの間には、セパレータが必要とされる。しかし、陽極材料がキャップの一部であり、電解質に導電性材料を全く加えない場合、グロメットが陰極から陽極を充分に隔離できる。セパレータが排除できることにより、装置製造が簡素化でき、材料の必要条件を緩和できる。
【0053】
添付の図および下記説明により、本発明のさらに具体的な実施態様および技術的効果について詳述する。
【0054】
図1aは、通常は水素ガスを発生する、電気化学的セルガス発生器を用いるガス発生装置の断面図である。この実施態様は、ボタン電池と同様に構成されているが、いくつかの違いがある。この実施態様は、陽極金属が粉末またはゲルではないという点で、大部分のボタン電池とは異なる。したがって、典型的なセル製造やOrilitzky及びWinselによって示されているガス発生器設計に必要とされるイオン導電性セパレータを用いずにセルを構成することが出来る。この実施態様のセルは、製造を簡素化するために円形であり、一端が開き、反対側の端の一つ以上のガス出口6aを除いて閉じている円筒形の缶9から成る。ガス出口を有する方の前記缶の端部は、平坦またはわずかに凸状であってもよい。
【0055】
前記缶は、亜鉛/空気ボタン電池の構成に通常に使用される缶と同様のものが使用できる。図では、任意の円形ガス拡散メッシュ16が、前記缶の内部でガス出口に隣接している。拡散メッシュの直径は、前記缶9の内径よりも小さい。シール層15aは、疎水性の微孔質または気体透過性/液体不透過性の膜で構成される。好ましい膜としては、微孔質または焼結PTFEである。シール層15aと缶9の内周との間に接着剤を配することが、シールの有効性を改善するに好適である。図では、第二の疎水性の微孔質層15bが集電装置/触媒層14と密接している。前記集電装置は金属メッシュスクリーンで構成されている。
【0056】
通常、ダイカット及び前記缶9への挿入の前に、金属メッシュに疎水性層15bを密着させる。前記集電装置/触媒層14は、けん濁PTFEのスラリーに浸すし、事前に被覆することによって、前記疎水性層15bの密着を促進できる。層15a及び15bは、一つの層であってもよい。電気活性金属で構成された電子導電性セルキャップ10が電子およびイオン絶縁性のグロメット11にはめ込まれ、これらがいっしよに前記缶にはめ込まれる。缶は、グロメット/キャップアセンブリの周囲でかしめられて、周囲にシールを形成し、グロメット面を前記集電装置に対して機械的に密着させる。触媒層/疎水性層が内部シールを形成する。電子絶縁性水性電解質80はキャップに含まれる。
【0057】
電解質80が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ性の場合、前記集電装置/触媒層14を構成する好適な材料として、ニッケル又はニッケルメッキ鋼のメッシュが挙げられる。電解質80が亜鉛塩、アンモニウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩またはそれらの組み合わせ等の非アルカリ性の場合、前記集電装置/触媒層14を構成する好適な材料として、ルテニウム、イリジウム、白金またはそれらで被覆されたメッシュが上げられる。また、種々の腐食抑制剤を電解質に加えて貯蔵中の電気活性金属陽極の腐食を最小限とすることが望ましい。たとえば、陽極が亜鉛であり、電解質がアルカリ性である場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ガリウム等を添加することが望ましい。陽極が亜鉛であり、電解質が非アルカリ性である場合、第四アンモニウム塩、有機物質を含有するグルテン等を添加することが望ましい。加えて、ゲル化剤を電解質に加えて漏れの発生を減らしてもよい。
【0058】
ガス発生器を作動させるには、作動クリップを発生器の上に滑らせる。前記作動クリップは、発生器缶9の側壁に接触する電子導電性接触リング21を有している。前記接触リングは、前記接触リングよりも大きな高さを有する電子絶縁性シリンダ22の一方の端部に挿入される。電子伝導性接触カップ23が前記絶縁性シリンダの反対側にはめ込まれている。この接触カップは、作動時にガス発生器の前記キャップに接触する接触インデントを有している。抵抗器25が接触リングおよび接触カップと電気的に連絡する状態に配されている。作動クリップは、貯蔵時に缶の壁とすでに接触した状態にあってもよいが、接触インデントがキャップから離れており、作動時に、前記クリップを滑らせて回路が完成するようにする。
【0059】
電解質80が非アルカリ性である場合、特に、電解質が実質的にアンモニウム塩を含む場合は、回路が完成すると、水素ガスが、回路を流れる電流に正比例する速度で発生する。ガスが発生すると、そのガスはガス出口6bから流れ出る。流体の流速は、前記抵抗器25のオーム抵抗によって制御される。抵抗が小さいほど流体の流速は高くなる。電解質が非アルカリ性である場合、回路が完成すると、セルにより、ガス出口の近くにある酸素が電流に比例する速度で消費される。ひとたび酸素が消費されると、電流に正比例する水素ガスの発生が始まる。
【0060】
活性陽極金属としては、亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムのような金属で構成されることが好ましい。
【0061】
図1bは、図1aに示すガス発生装置の変形の断面図である。この図では、セルキャップ82は、ボタン電池産業で用いられる典型的な材料、例えばトリクラッドニッケル/鋼/銅積層体から製造される外側シェルで構成され、活性陽極金属のインサート83がキャップの内部に取り付けられている。このインサートは、溶接、接着剤、機械などをはじめとする種々の手段によってキャップに取り付けることが出来る。前記キャップ82とインサート83とは互いに電気的に接続している。
【0062】
図1cは、図1aに示すガス発生器の変形の断面図である。この図では、セルキャップ84aは、ボタン電池産業で用いられる典型的な材料、たとえばトリクラッドニッケル/鋼/銅積層体から製造される外側シェルで構成されるが、加えて、クラッド84bが電気活性金属陽極とともに内側にある。
【0063】
図2は、図1に示す装置とで多くの特徴を共有するガス発生装置の断面図である。しかし、この場合、セパレータが用いられている。円筒形の缶9、ガス出口6a、ガス拡散メッシュ16、シール層15a及び第二の疎水性の微孔質層15bは、図1a〜cのそれと同じ機能を有する。集電装置/触媒層14の構成材料としては、上記の金属メッシュに加えて、触媒粉末または炭もしくは黒鉛粉末に担持された触媒を使用することも出来る。
【0064】
触媒としては、5〜30%PTFE又はPVA等の結着剤と混合して、前記金属メッシュに適用することも出来る。イオン導電性で電子絶縁性の湿分透過性セパレータ13が前記集電装置/触媒層に隣接して配置される。セパレータ材料としては、微孔質ポリオレフィン、紙、イオノマー又は電池製造に本発明と同じ目的で使用される入手可能なセパレータの1種が利用できる。
【0065】
アルカリ性電解質が使用される場合、前記セパレータは、ヒドロキシルイオンに対して導電性であり、水に対して透過性である必要がある。アルカリ性電解質が使用される場合、集電装置/触媒層に適した触媒粉末としてはラネーニッケルが好ましい。中性または酸性の電解質が使用される場合、セパレータはカチオンに対して導電性である必要がある。中性または酸性の電解質が使用される場合、集電装置/触媒層に適した触媒粉末としては、担持または非担持のルテニウム、イリジウム、白金またはそれらの組み合わせが好ましい。
【0066】
電子導電性セルキャップ10が電子およびイオン絶縁性のグロメット11にはめ込まれ、これらがいっしよに前記缶にはめ込まれる。前記缶が、グロメット/キャップアセンブリの周囲でかしめられて、周囲にシールを形成し、グロメット面を前記セパレータ/集電装置に対して機械的に密着させる。触媒層/疎水性層が内部シールを形成する。電解質混合物12がキャップに含まれる。ガス発生器の活性陽極金属が粉末または顆粒として前記電解質混合物に組み込まれる。前記電解質混合物はゲル化剤を含むことが出来る。また、前記電解質は、貯蔵中の陽極の腐食を軽減するための薬剤を含んでもよい。
【0067】
図2に示すガス発生装置は、陽極材料および陰極触媒のより高い表面積を有するため、高速に流体送達させるの特に適している。粉末化陽極が使用されるか、粉末化陰極触媒が使用される場合、セパレータ13が必要である。図1a〜cに示す装置は、製造面で好都合であり、原料がより少なく、セパレータに起因する内部抵抗を持たない。したがって、図1のa〜cに示す装置は、広い範囲のガス発生速度を達成出来る点で好ましい。
【0068】
図3は、通常、水素ガスを発生するための、ガルバーニセルガス発生器を用いるガス発生装置の略図である。外部ガス室シェル1は、十分な流体送達効率が得られ、且つ、最小限の水素透過度を有する材料で構成される。シェル1は低い水蒸気透過度を有する。好適なガス室シェルとしては、フランジ付きでいくらか球形であり、好ましくは剛性を有する。液体室シェル2も、好ましくはいくらか球形であり、その周囲付近において、間に可撓性隔膜3をはさんで前記ガス室シェルの周囲に密着される。前記液体シェル2は、分与される液体と化学的に適合性を有し、分与される液体に対して低い透過度を有する材料で構成され、好ましくは剛性を有する。
【0069】
可撓性隔膜3は、EVOH、金属化ポリマー膜などの水素透過度の低い材料で構成されることが好ましい。最初は、前記ガス室シェル1と前記可撓性隔膜3との間の空間であるガス室5は実質的に容量を有しない。逆に、前記液体室シェル2と可撓性隔膜3との間の空間である液体室4には、分与される液体が満たされている。液体室4は、加圧された際、液体が流れて通過できる出口を有する。図示する実施態様では、管7及び栓8が前記液体室出口に取り付けられる。栓8は作動時に取り外される。
【0070】
本発明のガス発生セルは、図1及び2に示すものの一つである。ガス発生器26は、ガス室シェル1に対してシールされている。前記ガス室シェルのガス入口6bは、前記缶のガス出口6aと同心である。この図に示す実施態様では、中間の水分障壁が前記ガス入口とガス出口との間に配置されている。作動クリップを28として示す。ガス発生器を作動させるためには、作動クリップを発生器の上に滑らせる。作動時には、前記クリップを滑らせて回路を完成させる。回路が完成すると、回路を流れる電流に正比例する速度で水素ガスが発生する。ガスが発生すると、ガスはガス室に流れ込み、可撓性隔膜に対して力を加え、この隔膜が逆に流体を液体ポートおよび出口管に流れさせる。流体の流速は前記抵抗器25のオーム抵抗によって制御される。抵抗が小さいほど流体送達速度が高い。
【0071】
図4.a〜eは、ガス室およびガス発生器部品に対して中間の水分障壁17を配置することが出来る異なる場所を示す図である。図4.a〜eに示すような中間水分障壁が使用される場合、ガス室シェル1は、非常に低い水分透過性を必要としない。ガス発生器をユニットとして26で表し、ガス室シェル1に対するシール27とともに示す。
【0072】
図4.aでは、中間水分障壁17が、ガス室シェル1の内部に対し、ガス入口6bの上に配置される。この位置の障壁は、永久的であってもよいし、剥離可能であってもよい。
【0073】
図4.bでは、中間水分障壁17が、ガス発生器の前記ガス出口6aとガス室シェルのガス入口6bとの間に配置される。この位置で、貯蔵中の有効水分透過面積は、前記ガス出口の面積に相当し、非常に小さくてもよい。
【0074】
図4.cでは、装置を作動させたのち、圧力が障壁を缶9から押し離して、有効水素透過面積がガス出口6aの面積からより大きなガス入口6bの面積まで増大した状態の中間水分障壁17の位置を示す。これは、貯蔵中に水分損失を制御しながらも、作動中に十分な水素流量を可能にするより好ましい態様である。
【0075】
図4.dでは、前記ガス発生器の内側に中間水分障壁17を配置できることを示す。この位置では、作動前後の有効透過面積はガス出口の面積に相当する。
【0076】
図4.eもまた、前記ガス発生器の内側に配置された中間水分障壁17を示す図であるが、この場合、拡散メッシュ16が前記缶9に対して配置され、前記中間水分障壁17が前記疎水性障壁15とメッシュ16との間に配置される。この場合、作動の前後の有効透過面積はほぼ前記缶の面積に相当する。
【0077】
図4.fは、ガス発生装置から発生する圧力の下で剥離する中間水分障壁を示す。したがって、作動中にガス発生セルから水素の流れを妨げることなく貯蔵中の水分保持が達成できる。
【0078】
図4.a〜fに示す態様において有用である水分障壁は、水蒸気透過度が最小限であり、好ましくはゼロに近く、その一方、ガス(水素)発生器の作動中に水素が形成されるのと実質的に同じ速さで水素が障壁を透過できるするほど高い水素ガス透過度を有する。流体送達速度は、究極的には、ガス発生速度によって制御される。したがって、水蒸気障壁は、ガス室への水素通過速度を水素発生速度よりも遅らせない水素ガス透過度を有することが好ましい。水蒸気障壁のガス透過度は、速度制御機構として使用することも出来るが、そのような系は好ましくない。
【0079】
図5は、本発明における電気化学的流体送達装置の注射器タイプ流体容器を備えた実施態様の略図である。ガス発生器をユニットとして26で表し、シールを27及び作動クリップを28として表す。分与される流体4が注射器本体30に含まれている。前記注射器本体にはめ込まれる重厚なプラスチックで構成されているアダプタ31に、ガス発生器が取り付けられている。重厚なプラスチックまたは金属で構成されたピストン33が注射器本体の中に配置されている。前記ピストンは、エラストマーで出来たOリング又はUリングであってもよい1個以上のシールリング34を有している。流体送達の速度が注射器本体の内径のばらつきによってあまり影響されないため、この用途にはUリングを使用することが好ましい。シールリングの材料としては、比較的低い水素透過度を有する多硫化物系ゴム、ニトリルゴム、ポリウレタンおよびFRPゴム、ブチルゴムが好ましい。さらに、ニトリルゴム又はブナNは、注射器本体に対して良好なシールを形成するのに十分に可撓性であるため、特に好ましい。
【0080】
流体4を注射器に充填するため、めねじを持つ取り外し可能な取っ手(図示せず)を使用してピストンを手で駆動することが出来るように、ねじ付きインサート35が設ける。前記ピストン33の前記ねじ付きインサート35がポケットにはまり込み、前記アダプタ31とピストン33との間のヘッドスペースが最小限となる様に、前記アダプタ31は形成される。流体送達チップ36を管セットまたは皮下注射針に接続してもよい。この実施態様における中間水分障壁は、前記ガス発生セル26とアダプタガス入口6bとの間に配置される。
【0081】
図6は、透過窓41を備えた非透過性ガス室シェル40を有する本発明の流体送達装置の実施態様の略図である。貯蔵中に発生する偶発的な水素を抜くために水素に対していくぶん透過性であるが、水分損失を抑制する膜42が、図示するようにシェルの内側または外側で、窓の上にシールされる。この実施態様では、ガス室シェルが可撓性隔膜および液体室シェルの上に飲料缶パッケージング産業分野で行われている方法でかしめられる。
【0082】
図7は、電池を使用してガス発生セルを駆動し、より高く又はより安定な流体送達速度を達成できる本発明の流体送達装置の実施態様の略図である。この実施態様において、注射器とともに用いられる態様を示す。ハウジング50が、ガス発生セル26と、プラスの電池端子が前記ガス発生セルのキャップ10に接触するように配置されるボタン電池51とを含む。この場合、作動クリップの変わりに市販のスイッチを使用できる。接点53及び54が、スイッチおよび抵抗器(図示せず)と電気的に接続され、電池およびガス発生セルとの間で電気回路を形成する。図において、発生した水素によってピストン33が前記ハウジング50からすでに押し離された状態の装置が示されている。
【0083】
図8.aは、電気化学的ガス発生器が、作動の前に互いに隔離された液体成分および固体成分を有する場合の本発明の実施態様の略図である。図において、ガス発生器が腐食型ガス発生器である場合の本発明の実施態様をいくらか変更して示してある。この構造は、図1に示す実施態様に類似している。円筒形の缶9、ガス出口6a、ガス拡散メッシュ16、シール層15a及び第二の疎水性微孔質層15bは、図2で示すそれと同じ機能を有する。集電装置/触媒層14及びセパレータは、図2と同じ相対位置に配置され、図2と同じ機能を有する。セパレータに隣接するところで、缶壁に対し、両端で開口する電子絶縁性の円筒形陽極グロメット60が固着される。前記セパレータに対し、前記陽極グロメット開口の中で、活性陽極金属61が装着されている。前記活性金属は、多孔質ペレットに押し込まれる粉末であってもよいし、固形片であってもよいが、電解質がセパレータを通過することができるよう、孔に対して出入りが出来る必要がある。
【0084】
活性陽極金属ペレットまたはその片は空隙62を有している。仕切り63は、低い水分透過度を有する材料で形成され、前記陽極グロメットに対して適合し、それにシールされる。破断構造64が、前記仕切り63と一体に形成されてもよく、別個の部品であってもよい。電子導電性の可撓性キャップ67がキャップグルメット63にはめ込まれている。可撓性キャップ/グルメットアセンブリが前記仕切り63に適合し、それにシールされる。缶は、開口周囲で、前記キャップグルメットの上にかしめられ、前記アセンブリを定位置に保持し、内部シール接合部を圧縮する。前記可撓性キャップの中に、電解質68が、黒鉛またはカーボンブラック等の不活性で電子導電性の粉末とともに貯蔵されている。
【0085】
接触リング21、電子絶縁性シリンダ22、電子導電性接触カップ23、接触インデント及び抵抗器25からなる作動クリップは、図1と同じ形状を有し、同じ機能を有する。加えて、前記作動クリップを滑らせて回路を完成させると、前記接触インデントが可撓性キャップ67を押して、前記キャップが前記破断構造64を押し、この構造の仕切り63を破壊区域65で破断またはせん断する。仕切りが破断されると、電解質および電子導電性粉末が空隙62に流れ込み、前記陽極金属61中の孔に流れ込む。これにより、ガス発生器が活動し、完成した回路中の電流に比例する速度で水素をガルバーニ電気的に発生させる。貯蔵中は、電解質が活性金属から離れているため、貯蔵中に偶発的に発生する水素はなく、したがって、ガス室シェル1を、完全に不透過性の材料で構成することが出来る。また、貯蔵中の水分の増減は無視し得る程度である。
【0086】
図8.bは、作動させた後の図8.aに示すガス発生装置を示す。仕切り板63は破断区域65で穿孔されている。流体68が押し込まれて活性金属61と接触している。
【0087】
腐食型ガス発生器は、前記集電装置/触媒層14及びセパレータ13を省いてもよいことを除き、図8.a及び図8.bのガス発生セルと同一に構成することが出来る。また、活性陽極金属は、前記キャップとの電気的接を要しないため、前記電解質中の電子伝導性粉末を省いてもよい。特定の流体送達速度を達成するために、電解質または活性金属陽極に腐食軽減剤を添加してもよい。また、活性化キャップ中の前記抵抗器を省くこともできる。接触リング21、絶縁シリンダ22、伝導性キャプ23及びインデント24を、導電性または絶縁性である材料で一体化して形成された単一部品であってもよい。このような腐食型ガス発生装置は、注射器タイプの態様においても使用することが出来る。
【0088】
図9は、乾電池型電池と同様に構成され、減極剤(酸化マンガンまたは二酸化マンガン)とセパレーターが構成から除かれた、本発明のガス発生部分の実施態様の一つの断面図である。円筒缶90は、亜鉛、アルミニウム又はそれらの合金のような、電気的に活性な陽極物質で形成される。缶の一端は閉鎖されている。電気的に絶縁された座金91が、缶の内面に閉鎖端に向かって設置される。電気的に多孔質なロッド92は、陰極として、また発生した水素がセルから出る経路として働く。
【0089】
ロッドを形成する材料としては、多孔質のカーボン又はグラファイトが好ましく、特に、表面にある種の電気触媒的な被覆を有する多孔質のカーボン又はグラファイトが好ましい。上記のロッドは、ロッドが突き抜けている孔をもつ絶縁座金93によって、上記の缶に共心的に支えられている。上記缶は、図1に示されているセルのように、アルカリ性でも非アルカリ性でもよい水性電解液94で満たされている。電解液がアルカリ性の場合、上記のロッド92は、ニッケル又はラネーニッケル等の電気触媒的な被覆を有することが好ましい。電解液が非アルカリ性の場合、上記のロッド92は、ルテニウム、イリジウム、白金またはそれらの組合せ等の電気触媒的な被覆を有することが好ましい。
【0090】
発生したガスが軸方向に流れ、放射方向に外界に漏出しないように、金属管のようなガス不透過性で電子的導電性の管95が、上記ロッド92の端にはめられる。水素透過性の中間水分障壁96が、上記のロッド92の端の上に設置される。上記水分障壁は、貯蔵中の水分の損失が最小限であって、水素が意図された用途に十分な速度でロッドの端を通るように設計されていれば、恒久的であっても、剥離可能であっても、引裂き出来るように設計されていてもよい。電解液または発生ガスの漏出を防ぐように、ピッチのようなシール物質97が絶縁座金93に隣接して設置される。陰極接点座金98は、管95と電気的に接続され、シール物質97を覆う。陽極接点座金は、電気的に活性な金属缶90と電気的に接続される。上記の陰極接点座金と陽極接点座金は、電気的に絶縁性の円筒外装100に把持される。円筒外装は、乾電池型電池で一般的なように、数層をから成っていてもよい。たとえば、円筒外装は、ポリマーフィルムと紙の層から成っていてもよい。
【0091】
ガス発生器を活性化するために、陰極接点座金98と陽極接点座金99の間に電気回路を完成させる。この電気回路は、抵抗、スイッチ及び場合によっては電池のような直流電源から成る。直流電源が用いられる場合、負極は陰極接点座金に接続され、正極は陽極接点座金に接続される。電流が導通するにつれて、ロッド92で水素が形成される。水素が発生すると、それは上記ロッドを軸方向にそして中間水分障壁96に向かって流れ、それを通じて、図示されていない流体送達貯留槽のガス室に入る。
【0092】
図10.aは、図9に示され、全体を110として図示したガス発生器を用いた流体送達装置の実施態様の概略図である。ガス室111及び液体室112は、可撓性隔膜113を共有する。液体室は液体流管114に接続される。電気回路115は、抵抗116及びプルタブスイッチ117からなる。プルタブスイッチ117が除かれると、上記電気回路が完成し、発生した水素がガス室111に入る。可撓性隔膜113は、圧力の増加によって移動し、液体室112から液体流管への流体の流れを引起す。
【0093】
図10.bは、図9に示され、全体を110として図示したガス発生器を用いた流体送達装置の実施態様の概略図である。この実施態様では、より高い流体送達速度における操作を可能にし、また、より安定な供給のために、回路中により大きい抵抗を使用可能にするよう市販の電池が用いられている。ガス発生器110と電池120の両方がハウジング121に収容される。ガス発生器が活性化している間、接点122はガス発生器の陽極接点およびスイッチ123と接続される。接点124は電池120の正極端子および上記のスイッチと接続される。接点125aは上記の電池120の負極端子および抵抗126と接続される。接点125bは上記のガス発生器110の陰極接点および上記抵抗と接続される。電流が回路に流れるにつれて、ガスがベローズ128に流れ込む。ベローズが膨張するにつれて、液体129が液体室127から流管130に押し出される。
【0094】
図11は、水素が製造されるにつれて連続的に消費されるような、本発明の実施態様を示す。液体が環境中に蒸発できるように発散されるならば、この実施態様を用いることが出来る。このような液体は、ある種の芳香剤または駆虫剤あるいは殺虫剤から成る。液体71が注射器状容器70に収容される。水素ガス発生器/活性化クリップの組合せは、上記の液体容器70の基部にはめ込まれた固定具75にシールされる。液体がガス入口76に入ることを防ぐために、OPP又はPFAのような水素透過性フィルム72を用いてもよい。微孔性フィルムで液体蒸気の出口73を覆う。水素ガスが発生するにつれて、それは発散させる液体を通り抜ける。水素は、蒸気出口にある上記の微孔性フィルムを通る前に、液体で飽和される。
【0095】
図12は、図2に示した実施態様に類似の本発明のガルバーニのガス発生セル及び貯留槽を用い、時間に対して分与された液体量をプロットした図である。
【0096】
ガス発生セルは、アルカリ電解液中でアマルガム化された亜鉛ゲル陰極を有する、亜鉛/空気電池と類似に構成される。陽極は、PTFE被覆炭素が圧着されている延伸ニッケルから成る金属遮蔽板を使用した。多孔性のフルオロポリマーの疎水性障壁15bは、メッシュ14から成る陰極のガス側に圧着され、第二の多孔性のフルオロポリマーの疎水性封止層は、障壁15bと不織ポリプロピレンのガス送達メッシュ16との間に配置され、ガス送達メッシュ16は、陽極と缶9の出口6aの間に配置されている。厚さ0.00254cm(0.001インチ)の中間水分障壁17(Mylar(商標))は、図4.bに示されているようにガス流れ孔を覆い、ガス室に入る前に水分障壁を通してガスが透過する。発生したガスが、中間の水分障壁の後で圧力を増大させるので、この水分障壁は曲がり、図4.cに示されているように有効な透過領域が増大する。
【0097】
ガス室1の厚さは0.03175cm(0.0125インチ)であり、約10cm2面積を有するPANに基づく材料:Barex(商標)で実質的に構成されている。Barex(商標)は、さらに密封封止23を形成するための被覆層も有する。可撓性隔膜3は、厚さ0.00762cm(0.003インチ)のEVOHフィルムで構成されている。約1センチポイスの粘性を有する非水流体が分与される。ガス発生セルは、陰極と陽極の間の回路で、4000オーム又は6000オームの抵抗20でガルバニー的に作動した。二つの曲線は、数日の期間にわたり、時間に対して処理した液体量を示している。
【0098】
図13にプロットされているデータは、JacusのU.S.特許第5,034,291号に記載されているものである。亜鉛と、水酸化カリウム38重量%、酸化亜鉛3重量%及び水から成る電解液とを混合した場合に、水素ガスは、150ppmのインジウムを含む亜鉛と種々の量の添加剤との混合物から発生する。この場合の添加剤は、水銀および/または硫酸アルミニウムカリウムであった。このプロットは、発生した水素の速度は、ほぼ一定の速度であり、その速度は、混合物中の添加剤の種類と量に影響されることを示している。水素発生曲線に示される性能は、図6a及びbで示されているように本発明の実施態様でも達成可能である。この実施態様は、非常に長期の棚寿命を有する。
【0099】
図14は、厚さが0.0381cm(0.015インチ)、面積が10cm2の一定の領域である種々の単層から構成されるブラッダーシステムで生成する(または効率)水素ガスの量に対する送達された液体量の割合を示している。このプロットは、1013を乗じた水素透過係数に対する効率であり、係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1日当たり1、0.2及び0.04ccの送達速度を表す曲線が示されている。この効率は、水素透過速度が低い場合に高い。また分与速度が低い場合、増大したガスが時間により損失になるので、効率は低い。
【0100】
図15は、出発濃度が100%であり、ガス室のシェルは、厚さが0.00254cm(0.001インチ)又は0.0381cm(0.015インチ)の種々の単層材料で構成されていると仮定した場合の、ガス室ブラッダー内部水素濃度が10%まで放散するのに要する25℃で日単位の時間と二つの厚さのシェル構成材料とのプロットを示す。
【0101】
図16は、水素濃度が10%に達するまでの相対時間に対する水素と空気の相対濃度を示している。このプロットは、シェルがPETで構成されていると仮定しているが、このプロットは、他の材料にもきわめて類似している。
【0102】
図17.aは、種々の窒素透過定数を有する種々の単層材料から成り、その面積が1〜100cm2で変わるブラッダーシステムのための水素濃度を示している。材料の厚さは、0.0381cm(0.015インチ)の一定に保たれ、流体送達速度は、1日当たり0.2ccの一定に保たれている。このプロットは、1013を乗じた窒素透過係数の逆数に対する水素濃度であり、この係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1、10および100cm2の面積における曲線がそれぞれ示されている。
【0103】
同様に、図17.bは、種々の窒素透過定数を有する種々の単層材料から構成されるブラッダーシステムのための水素濃度を示しており、ここでは流体送達速度を変えている。材料の厚さは、0.0381cm(0.015インチ)で、面積は10cm2の領域に一定に保たれている。このプロットは、1013を乗じた窒素透過係数の逆数に対する水素濃度であり、この係数の単位は、cc-cm/cm2-s-Paである。1日当たり0.04、0.2及び1ccの液体送達速度を示す曲線が示されている。
【0104】
図18は、電気化学的ガス発生装置とガス室との間に中間水分障壁を用いる利点を示した図である。ガス発生器は、dbulin電解液を有する亜鉛H2発生器である。このプロットは、中間の水分障壁の存在または非存在下で、異なる速度で操作された装置の分与された液体量を示している。ガス発生セル、ガス室/液体室貯留槽構成および分与された液体は、図12で記述したものと同様である。
【0105】
図19は、図7で図式的に示されているように、装置の時間に対する液体送達量を示している。このプロットは、電池を有するガス送達セルを駆動する利点を示している。示されている結果は、注射器を有する亜鉛H2発生器に対するものである。
【0106】
実施例1:
ガス発生器としてWinselの米国特許第5,242,565号に開示されている型を使用して装置はを設計した。このガス発生器の寸法は、675亜鉛/空気電池と類似であった。この装置は、1気圧で10ccの液体を送達する出来る。ガス室は10cm2の領域面積を有し、最大厚さが0.0381cm(0.015インチ)であった。可撓性隔膜を通し、かつ液体室のシェルを通しての外への水分損失は、液体の低い溶解性のために無視し得ると考えられる。必要な棚寿命は、37.8℃(100°F)で、20%相対湿度または90%相対湿度で2年である。Winselのガス発生器中で用いられるアルカリ電解液は、典型的には60%相対湿度の環境と湿度平衡する。すなわち、60%を超える湿度において、この電解液は外界から水分を吸収し、60%未満の湿度において、電解液は外界へ水分を失う。そのような仮定は、電池工業で用いられている多くの電解液に対して妥当なものである。設計基準は、理論よりも50%過剰の亜鉛のため、かつ装置が1日当たり0.2ccの一定速度で働くことを保証することを必要とし、ガス発生セルの構成の20%未満の容量変化が、許容しうるように想定されている。電池工業においては、典型的には15%未満の容量変化が許容しうるように想定されている。Winselのガス発生セルに、反応において消費する水を補うに必要な水分を提供する吸収材を使用した。
【0107】
【化1】
【0108】
ガス室中に運ばれる水分を考慮する必要がある。しかしながら、貯蔵期間中または反応中あるいはガス室への移送中に消費される際の、送達装置の寿命期間中に起こる水分の大きな損失をWinselは無視している。Winselは、また、貯蔵または内容物の使用期限までの期間中に、高い湿度環境で十分な水分を吸収する場合に起こると考えられる、ガス発生セルの初期のガスを目一杯に発生する際の有害な条件を無視している。ガス発生セルは、ガス室中へ電解液を漏出させることが出来、水素が水素出口の側から流れ出ようとするガス発生セルの多孔性部分にあふれさせることが出来る。そのような条件は、ガス発生セルの働きに有害な影響を有する。
【0109】
675電池のハードウエア中の水素放出陽極を除いた、ガス発生セル中で利用できる容量は、約0.330ccである。PVDCが、その低い水分透過特性を考慮すれば、図14から、その効率が約95%であるために、1日当たり0.2ccの分与速度を決定することが出来る。したがって、必要な亜鉛は、42.2mg、又はガス発生セルが完全に満たされると仮定し、電解液の容量を0.324ccとして、0.0059ccである。Winselにより推薦された吸収物を用いるならば、0.324ccの分画が、電解液のために用いられる。しかし、0.324ccよりも多量である仮定するならば、約302mgの水が含まれている。302mgの水のうち、7.7mgの水はガス発生セル反応で消費され、0.1mgの水は、ガス室が標準温度および圧力で電解液と平衡であると仮定するならば、十分に広げられたガス室中に移送される。
【0110】
ガス発生セルの導入容量が、20%未満であることを保証するために、ガス室シェル又は他の通路を通り外界へ逃れる水分は、68mg未満であるに違いない。しかしながら、37.8℃(100F)で20%相対湿度下での2年間の貯蔵期間における水分の損失は、約84mgである。シェルがOPP、HDPE又はPTFEであるならば、この損失は約100mgである。シェルが、PETであれば、この損失は、約320mgである。Halar(商標)またはAclar(商標)または金属被覆フィルムのようなPCTFEに基づく材料のみが、2年間の棚寿命の基準を満足する。これらの材料の使用は、いくつかの用途において、高価であるという問題があるかもしれない。
【0111】
実施例2:
ガス室シェル材料の可能性を求め、中間封止材を用いるたこと以外は実施例1に記載の態様と同じ態様が実施できる。図4.bまたは図4.dに示される水分障壁を用いる。ガス出口部分は0.009平方cmの面積を有し、かつ厚さ0.00254cm(0.001インチ)の水分障壁で、OPP、HDPE、LDPE、およびPETを含む容易に入手し得る多くの材料で形成される場合、上記に記載した条件下での貯蔵期間における水分損失は、5mg未満であり、5mg未満の水分損失を達成できる他の材料としては、PFA、FEP、PTFE、PVDC、PCTFE又はAclar(商標)、PCTFE/PE又はHalar(商標)または金属被覆フィルムが挙げられる。これらの材料は、貯蔵期間に生成した偶然の水素を透過させることが出来る。これらの材料の全ては、温度が変化する活性化時において、ガス室中の間の頂部空間に存在する酸素による開始の遅延を減少させることが出来る。パラジウム、鉄/チタン合金またはニッケルで金属被覆されたフィルムを用いる場合、開始の遅延は全くない。PET、PCTFE又はAclar(商標)またはPCTFE/PE又はHalar(商標)は、低い酸素透過性を有するが、十分に高い水素透過性を有し、恒久的な中間水分障壁として、図4.b及び図4.cに示されるようなものを用いることが出来、また貯蔵基準のための水分損失に対する適切な障壁の機能を有する。
【0112】
実施例3:
実施例1に記載の態様において、非透過性のガス室のシェルは、貯蔵中に偶然発生した水素を逃すが、水分透過を阻止できる材料で覆われた窓を有する金属から構成された障壁を用いることができる。その窓が、0.0581平方cm(0.009平方インチ)の領域を有するならば、実施例2の中間水分障壁として適切である同じ材料を使用した場合、窓を覆うために障壁の厚さは0.00254cm(0.001インチ)が適切であると仮定される。
【0113】
実施例4:
実施例1に記載の態様において、ガス室は、装置が水素の発生を止めた後10日以内に10%未満の水素濃度を保持するという別の基準を加える。図15から明らかなように、PFA、OPP、PTFE、PFP、ポリカーボネート、又はLexan(商標)、LDPE、又はLLDPE、ETFE、及びPCTFE/PE又はHalar(商標)の材料が、この基準に合致する。LDPE又はLLDPEが容易に入手できるため好ましく、低い水分透過特性の観点からはHalar(商標)が好ましい。これらの材料の典型的な市販フィルムの水素透過性は、LDPE及びLLDPEの場合7.4×10−13cc-cm/sqcm-Pa、Halar(商標)の場合4.0×10−13cc-cm/sqcm-Paである。図14から、10平方cm領域かつ厚さ0.0381cm(0.015インチ)を有し、流体送達装置が、約20%及び30%効率でそれぞれ稼働することを決定できる。LDPEの水分透過性は高いので、中間水分障壁として使用する場合、貯蔵中低い湿度で水分保持を維持すること、または高い湿度で入り込む水分を防ぐことが必要である。675電池のような寸法のガス発生器は、送達すべき容量が10ccである場合、20%または30%で作用するに要する余分の水素を発生させるのに十分に大きい。多くの亜鉛が用いられ、かつ反応中に多くの水が消費されるので、貯蔵中に環境への水の損失は少なくすることが出来る。20%効率の場合に、最大の水分損失は、48mgであり、30%効率の場合に、最大の水分損失は、56mgである。
【0114】
PCTFE/PE又はHalar(商標)を使用した場合、37.8℃(100F)及び20%湿度における2年の貯蔵期間中の水分損失は、9mgであり、この場合、中間水分障壁なしで許容し得る。他の許容し得る材料としては、Halar(商標)の厚さ0.0076cm(0.003インチ)の単層と、LDPE又はLLDPEの厚さ0.030cm(0.012インチ)の単層のような材料の組み合わせである。この材料は、薄層化されるか削り取られることも出来る。Halar(商標)の単層は、適切な水分障壁を提供することが出来、水分損失を45mgまでにすることが出来、そのために中間の水分障壁は必要がなく、この態様は、水素発生を止めてから10日以内にガス室内の水素濃度を10%未満とする上記の要求を満足する。
【0115】
上記の実施例は、構成材料が棚寿命、および特定の態様のためのガス発生器に含まれるべき活性材料の量にそれぞれ影響する基本的操作効率に大きくに影響し、それらを知るのに重要である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1.a】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図1.b】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図1.c】ボタン電池と同様に構成されているが、電気活性金属陽極がキャップに組み込まれ、イオン伝導性セパレータが構造に含まれていない、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図2】亜鉛/空気ボタン電池と同様に構成されているが、イオン伝導性セパレータが構造に含まれている、本発明のガス発生部分の実施態様の断面図である。
【図3】電気化学的ガス発生器がブラダタイプ流体容器に一体化されて電気化学的に制御される流体送達を形成している、本発明の実施態様の断面図である。
【図4.a】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.b】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.c】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.d】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.e】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図4.f】中間水分障壁をガス室および他のガス発生セル部品に対して配置することができる場所を示す。
【図5】電気化学的流体送達装置が注射器タイプ流体容器を備えた、本発明の実施態様の略図である。
【図6】流体送達装置が、透過窓を有する金属ブラダタイプシェルを備えた、本発明の実施態様の略図である。
【図7】電池を使用してガス発生セルを駆動してより高くより安定な流体送達速度を達成する、本発明の実施態様の略図である。
【図8.a】電気化学的ガス発生器が、作動の前に互いに隔絶された液体成分および固体成分を有する、本発明の実施態様の略図である。この図はまた、腐食型ガス発生器である本発明の実施態様をいくらかの変更を加えて表す。
【図8.b】仕切りを破断することによって装置を活性化した後の図8aに示す実施態様を表す図である。
【図9】乾電池と同様に構成されているが、減極剤(酸化または二酸化マンガン)およびセパレータが構造から除かれている、本発明のガス発生部分の断面図である。図示する実施態様では、多孔質の炭素または黒鉛ロッドが水素発生陰極およびセルから流体収容タンクに通じる管に送られる水素の通路として働く。
【図10.a】図9に示すタイプのガス発生器を使用する流体送達実施態様の略図である。
【図10.b】図9に示すタイプのガス発生器を使用する流体送達実施態様の略図である。ガス発生器が市販の電池に結合されて、より高い流体送達速度でのイネーブル動作を増大し、または、より安定な送達のために回路中により大きな抵抗器の使用を可能にする。
【図11】水素が液体を通じて直接流れ、液蒸気を気相に運ぶ、本発明の実施態様の略図である。
【図12】ガス室および液体室のシェルがBarex(登録商標)膜で構成された電気化学的タイプガス発生器、より具体的にはシール付き亜鉛/アルカリ性H2発生器を用いた場合の、分与された液体と時間とのプロットを示す。
【図13】H2がZn粉末からガスとして発生する化学タイプガス発生器を用いた場合の、ガス発生と時間とのプロットを示す。
【図14】種々の速度での効率と水素透過係数とのプロットを示す。
【図15】水素濃度が10%まで放散するのに要する時間と二つの厚さのシェル構成材料とのプロットを示す。
【図16】水素および空気の相対濃度と水素濃度が10%に達するまでの相対時間とを示す。
【図17.a】水素濃度と窒素透過係数の逆数とのプロットを示す。
【図17.b】水素濃度と窒素透過係数の逆数とのプロットを示す。
【図18】電気化学的ガス発生装置とガス室との間の中間水分障壁を利用する利点を示すプロットである。このプロットは、中間水分障壁を用いる場合と用いない場合とで、異なる速度で作動する装置から分与される液量を示す。このグラフは、亜鉛H2発生器をアルカリ性電解質とともに用いた場合からの結果を示す。
【図19】流体送達量と図7におけるような装置の時間とのプロットを示す。このプロットは、ガス送達セルを電池で駆動する利点を示す。
【符号の説明】
【0117】
1:外部ガス室シェル
2:液体室シェル
3:可撓性隔膜
4:液体室(流体)
5:ガス室
6a:ガス出口
6b:ガス出口
7:管
8:栓
9:缶
10:電子伝導性セルキャップ
11:グロメット
12:電解質混合物
13:湿分透過性セパレータ
14:集電装置/触媒層
15a:シール層
15b:微孔質層(疎水性層)
16:ガス拡散メッシュ
17:中間水分障壁
20:抵抗
21:電子伝導性接触リング
22:電子絶縁性シリンダ
23:電子伝導性接触カップ
24:インデント
25:抵抗器
26:ガス発生セル
27:シール
28:作動クリップ
30:注射器本体
31:アダプタ
33:ピストン
34:シールリング
35:ねじ付きインサート
36:流体送達チップ
40:非透過性ガス室シェル
41:透過窓
42:膜
50:ハウジング
51:ボタン電池
53:接点
54:接点
60:円筒形陽極グロメット
61:活性陽極金属
62:空隙
63:仕切り板(キャップグルメット)
64:破断構造
65:破壊区域
67:可撓性キャップ
68:電解質(流体)
70:注射器状容器
71:液体
72:水素透過性フィルム
73:出口
75:固定具
76:ガス入口
80:電子絶縁性水性電解質
82:セルキャップ
83:インサート
84a:セルキャップ
90:円筒缶
91:座金
92:ロッド
93:絶縁座金
94:水性電解液
95:管
96:中間水分障壁
97:シール物質
98:陰極接点座金
99:陽極接点座金
100:円筒外装
110:ガス発生器
111:ガス室
112:液体室
113:可撓性隔膜
114:液体流管
115:電気回路
116:抵抗
117:プルタブスイッチ
120:電池
121:ハウジング
122:接点
123:スイッチ
124:接点
125a:接点
125b:接点
126:抵抗
127:液体室
128:ベローズ
129:液体
130:流管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生の構成要素として水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極と、陰極と、前記陽極および陰極の少なくとも一部と接触する水性電解質と、前記陰極と陽極とを互いに絶縁し、前記電解質を介して陽極と陰極とがイオン的に接続するように構成された電気的絶縁体と、前記陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と、生成された水素ガスが前記水素発生セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集するガス室に進入するのを可能にする排気手段とから成る流体送達装置。
【請求項2】
前記陽極が亜鉛を含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電解質がアルカリ電解質である請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記電解質が、アンモニウム、ハロゲン化物、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、アルミニウムイオン、またはそれらの組合せよりなる群から成る請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記排気手段が、ガス透過性を有し且つ実質的に水蒸気透過性を有しない膜と接している請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記電解質が破裂可能な外包に封入され、当該外包を破裂させるまで前記電解質を前記水素発生セルの構成要素から隔離できる請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記陰極が、ルテニウム、イリジウム、白金、またはそれらの組合せを含有する請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記水素発生セルが、水素発生セルの外部の電池によって給電される請求項1記載の装置。
【請求項1】
ガス発生の構成要素として水素発生セルを有する流体送達装置であって、セルハウジング(缶またはキャップ)の一部として構造的に組み込まれた連続する固体の電気的活性金属陽極と、陰極と、前記陽極および陰極の少なくとも一部と接触する水性電解質と、前記陰極と陽極とを互いに絶縁し、前記電解質を介して陽極と陰極とがイオン的に接続するように構成された電気的絶縁体と、前記陽極と陰極とを電気的に接続する回路手段と、生成された水素ガスが前記水素発生セルを出て、流体に力を働かせるためにガスを捕集するガス室に進入するのを可能にする排気手段とから成る流体送達装置。
【請求項2】
前記陽極が亜鉛を含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電解質がアルカリ電解質である請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記電解質が、アンモニウム、ハロゲン化物、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、アルミニウムイオン、またはそれらの組合せよりなる群から成る請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記排気手段が、ガス透過性を有し且つ実質的に水蒸気透過性を有しない膜と接している請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記電解質が破裂可能な外包に封入され、当該外包を破裂させるまで前記電解質を前記水素発生セルの構成要素から隔離できる請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記陰極が、ルテニウム、イリジウム、白金、またはそれらの組合せを含有する請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記水素発生セルが、水素発生セルの外部の電池によって給電される請求項1記載の装置。
【図1.a】
【図1.b】
【図1.c】
【図2】
【図3】
【図4.a】
【図4.b】
【図4.c】
【図4.d】
【図4.e】
【図4.f】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8.a】
【図8.b】
【図9】
【図10.a】
【図10.b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17.a】
【図17.b】
【図18】
【図19】
【図1.b】
【図1.c】
【図2】
【図3】
【図4.a】
【図4.b】
【図4.c】
【図4.d】
【図4.e】
【図4.f】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8.a】
【図8.b】
【図9】
【図10.a】
【図10.b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17.a】
【図17.b】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−138019(P2006−138019A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337417(P2005−337417)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【分割の表示】特願平9−514315の分割
【原出願日】平成8年9月25日(1996.9.25)
【出願人】(500039371)ミクロリン・エル・シー (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【分割の表示】特願平9−514315の分割
【原出願日】平成8年9月25日(1996.9.25)
【出願人】(500039371)ミクロリン・エル・シー (9)
【Fターム(参考)】
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