水素化金属を含む水を用いた植物の栽培方法
【課題】 新規な植物栽培方法を提供する。
【解決手段】 本発明の植物の栽培方法は、プロチウム化が可能な状態で水素イオンを含むように処理された栽培水を用意し、この栽培水を用いて植物を栽培するものである。この栽培水を用いることで、植物の成長促進、延命、開花などをコントロールすることが可能になる。その結果、切り花だけでなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になる。
【解決手段】 本発明の植物の栽培方法は、プロチウム化が可能な状態で水素イオンを含むように処理された栽培水を用意し、この栽培水を用いて植物を栽培するものである。この栽培水を用いることで、植物の成長促進、延命、開花などをコントロールすることが可能になる。その結果、切り花だけでなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化金属を含む水を用いた植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物などの有用植物をビニールハウス内で栽培することは従来より行われており、さらに低コストで効率よく植物を栽培する方法が研究されている。例えば、特許文献1は、太陽光利用ハウスにおいて、自然光(太陽光)の不足分を白色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの組み合わせで補光する発明を開示している。また、特許文献2は、光強度が150μmol・m-2・S-1以上の光量子束密度に調整された600〜700nmの赤色光を植物に照射することで、主茎の伸長を抑制したままで、自由に、花成を促進または抑制する草姿制御技術を開示している。
【0003】
また、植物の生育を促すため、ジベレリンやオーキシン等に代表される植物成長調整剤や、脂肪酸、有機酸、グリセリド、エーテルを増収剤にすることが提案されている(特許文献2を参照)。さらに特許文献2は、栽培期間中の栽培環境の二酸化濃度に着目し、二酸化炭素濃度を400〜5000ppmとすることで生育を促進させることを提案している。
【0004】
植物を含む生物が生命を維持するのに必要なエネルギーは、呼吸鎖を通して捕獲している。呼吸鎖は、細胞内のミトコンドリアと呼ばれる細胞内器官の内膜に埋め込まれた状態で存在している。その呼吸鎖の中では、H2+1/2O2→H2Oの反応によって生じるエネルギーの大半を、ADP+Pi→ATPの反応によって示される高エネルギー燐酸結合という化学結合エネルギーとして貯蔵する。マイナス水素イオン(H−)は、ミトコンドリアの内膜の呼吸鎖の中に、NADHという中間電子伝達体のNAD+と結合した形で存在している。中間電子伝達体(NAD+)と結合した形のNADH分子には、水素原子ではなく、ヒドリドイオン、すなわちマイナス水素イオン(H−)である。
【0005】
本発明者は、強還元特性を有する磁性セラミックボールを製造する方法(特許文献1)を発案し、このセラミックボールを水中に投入し、セラミックボールのN極から水素の気泡を生じさせることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−130986号
【特許文献2】特開2008−142005号
【特許文献3】特開2008−206454号
【特許文献4】特許4218939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に示されるセラミックボール内で起こる、マイナス水素イオンが発生するメカニズムの模式図を図1に示す。このセラミックボールはS極からN極に着磁によって磁性が生じている。また、セラミックボール周辺の水(H2O=H+とOH−)のH+が、セラミックボール内に侵入し、水素イオンのプロチウム化、すなわち、H−⇔H++ne−(n≧2)が起こり、発生したマイナス水素イオンH−は、磁性に沿って、N極にひかれて行き、外液の水素イオンH+と反応(H++H−→H2↑)し、N極から水素ガスが発生する。
【0008】
このような還元力を持つマイナス水素イオンH−が植物の成長や生育に与える影響は、未だ何ら解明されていない。
【0009】
本発明は、マイナス水素イオンを含む水を用いた、新規であり、斬新な植物栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、特許文献4に示すオリジナルセラミックボールを入れた水が植物に及ぼすさまざまな影響について、長年研究をしてきた。そこから分かった事実は、この水を吸わせた切り花は、水の中で成長し、丈も伸び、更には新たな花をつける。また、切ったそのままの状態を維持したり、葉だけ、時には花だけをつけて行く。さらには、突然、枯死することもある。切り花は、普通、萎れていくものであるが、水素化金属を入れた水を吸わせると、生命活動を維持していると考えられる。
【0011】
金属水素化物の中でも、CaH2などのイオン結合性水素化物は、水素がマイナスイオン状で結合されていることから、このマイナス状の水素イオンがさまざまな現象を引き起こしていると推察される。このマイナス水素イオンの量を変えることにより、成長促進、延命(現状維持)開花などのコントロールが可能になり、その結果、切り花だけではなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になり、農業分野での応用が期待される。同じpHのアルカリイオン水では、同じ現象は起こらないことをつけ加えておく。
【0012】
本発明に係る植物の栽培方法は、プロチウム化された水素を含む栽培水により植物を栽培するものである。好ましくは、栽培水は、H++H−のイオンを含む。好ましくは、栽培水は、H++H−⇔H02(電離水素水)の条件付けされた水である。好ましくは栽培水は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つを含む水素化金属によって処理された水である。好ましくは栽培水は、セラミックボールによってプロチウム化された水である。例えば水素化金属は、CaH2、MgH2などである。
【0013】
好ましくは前記植物は、水耕栽培される。さらに植物は、土を用いて栽培されるものであってもよい。植物は、根を有するものの栽培、あるいは切り花の水耕栽培である。好ましくは前記植物は、結実する植物、または開花する植物である。例えば、植物は、カーネーション、バラ、レタス、ランなどである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素がプロチウム化された栽培水を用いることで、植物の成長促進、延命、開花などをコントロールすることが可能になる。その結果、切り花だけでなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】セラミックボール内で起こるマイナス水素イオンの発生メカニズムを説明する模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る植物の栽培方法説明するフローである。
【図3】栽培水の製造方法を説明するフローである。
【図4】水素のプロチウム化の模式図である。
【図5】原水(水道水)と条件付け水のpHと酸化還元電位(ORP)の時間的変化を示すグラフである。
【図6】水素化カルシウムおよび水素化マグネシウムによってそれぞれ条件付け水のpHとORPと、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを含む水のpHとORPを示す。
【図7A】実験開始時のカーネーションの状態を示す写真である。
【図7B】実験開始後21日目にカーネーションが開花した状態を示す写真である。
【図8】カーネーションの切り花の別の実験結果を示す写真であり、実験開始時から、35日目、69日目、118日目の様子を示す。
【図9A】実験開始時のバラの状態を示す写真である。
【図9B】実験開始後101日目にバラの開花状態を示す写真である。
【図10】切り花の開花がコントロールされた状態を示す写真である。
【図11】切り花の枯死がコントロールされた状態を示す写真である。
【図12A】切り花の延命効果を説明する写真である。
【図12B】切り花の延命効果を説明する写真である。
【図13】実験開始から9ヶ月目の切り花の写真である。
【図14】9ヶ月を経過したときの栽培水の写真である。
【図15】左側は、実験開始時のピンポンギクの切り花の様子を示す写真、右側は、実験開始後55日目のピンポンギクの切り花の様子を示す写真である。
【図16】花芽のそれぞれを拡大したものである。
【図17A】実験開始時の染色されたスイートピーの切り花の様子を示す写真である。
【図17B】実験開始から24時間後のスイートピーの様子を示す写真である。
【図18】バラの再生実験を示す写真である
【図19】実験開始後のバラの開花の様子を示す写真である。
【図20】栽培水にレタスを入れて実験を開始した様子を示す写真である。
【図21】胡蝶蘭の実験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図2は、本発明の実施例に係る植物の栽培方法を説明するフローであり、この栽培方法は、次のステップを含んで構成される。先ず、水素のプロチウム化が可能な状態で含まれるように条件付けされた栽培水(条件付け水またはアルカリ還元性ミネラルイオン水ともいう)を用意し(ステップS101)、次に、栽培水を植物に与え(ステップS102)、植物を栽培する。
【0018】
図3は、栽培水の製造方法を説明するフローである。ここでは、一例として水素化金属または水素貯蔵金属により条件付け水を生成する方法を説明する。先ず、元素周期律表上に示されているアルカリ金属、アルカリ土金属、第13族そして第14族の金属のいずれか、またはそれらの少なくとも1つの金属を含む物質を用意する(ステップS201)。次に、この物質は、高温で酸化焼成する。(ステップS202)。
【0019】
次に、物質は、高温無酸素状態(水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合ガスを含む炉内)におかれる(ステップS203)。例えば、上記の炉内の温度を700℃またはそれ以上の温度に保ち一定時間、還元焼成する。次に、物質は、無酸素状態のまま、常温にさます。(ステップS204)。
【0020】
こうして水素化金属または水素貯蔵金属が生成される(ステップS205)。高温酸化焼成から高温無酸素還元焼成を経て常温無酸素状態の処理を行うことで、炉中の水素ガスH2は、H2⇔H++H−のようにプラズマ化し、水素化金属すなわちイオン結合性の水素化金属が生成される。この水素化金属が水に浸されたとき、水素化金属の表面でプロチウム化が起こり、マイナス水素イオン(H−)を含むアルカリ還元性ミネラルイオン水である、栽培水すなわち、電離水素水が生成される(ステップS206)。
【0021】
また、本発明者によって発明された特許第4218939号のセラミックボールや、特許第4404657号のサンゴカルシウムを用いて条件付け水を生成することも可能である。セラミックボールやサンゴカルシウムの製造において、高温酸化焼成状態から、高温無酸素還元焼成状態を経て常温無酸素還元状態に戻る工程中に、炉の雰囲気中に含まれる水素ガスH2は、H2⇔H++H−のようにプラズマ化し、素材中の粘土の中に含まれる珪素が溶けてセラミック化する。サンゴカルシウム粉末中に含まれるCaCO3は、CaCO3→CaO→CaH2と変化し、カルシウムの水素化物(水素化カルシウム=水素化金属の一種であるイオン結合性の水素化金属)ができる。このような栽培水においても、マイナス水素イオンが発生され得る。
【0022】
図4は、水素のプロチウム化の模式図であり、H2⇔2H0、H+⇔H0、H2⇔2H−、H+⇔H−の如く水素原子における荷電変換が起こると考えられる。水素工学の分野では、H−⇔H+⇔2e−の物理化学反応が実験的に確かめられており、水中に置かれた水素化金属の表面では水素のプロチウム化が起こっていることは確実である。よって、水素化金属の構造表面上で、水素のプロチウム化が起こり、H+⇔H0⇔H−が起こり、水素化金属による処理をした水には、マイナス水素イオン(H−)が含まれている。
【0023】
図5は、原水(水道水)と条件付け水とのpHとORP(酸化還元電位)の時間的変化を対比するグラフである。図中、縦軸はpHとORP(mV)、横軸は時間(h)である。原水のpHは、7よりも幾分大きい状態を継続し、ORPは約760mV程度でほぼ一定である。他方、条件付け水では、水素化金属の表面でプロチウム化が生じ、周囲の水のpHを11弱にコントロールし、そしてORPを−260mVにコントロールし、この状態が長時間(グラフでは6時間)にわたって継続される。従って、条件付け水は、原水とは全く異なる水質に変化しており、この条件が作り出されるとき、常温、アルカリ還元性ミネラルイオン水の中で、マイナス水素イオン(H−)がイオンとして長時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0024】
図6は、水素化金属として水素化カルシウム(CaH2)および水素化マグネシウム(MgH2)によってそれぞれ条件付け水のpHとORPを示し、比較例として、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を含む水のpHとORPを示す。水素化カルシウムでは、pHが13弱、ORPが約0mVであり、この状態が24時間継続されるのに対し、水酸化カルシウムでは、pHは13弱で同程度であるが、ORPは約300mVである。また、水素化マグネシウムでは、pHが11弱、ORPが−700mV〜−500mV弱の範囲で約24時間継続されるのに対し、水酸化マグネシウムでは、pHはほぼ10であり、ORPは約450mVである。このように、水素化カルシウムや水素化マグネシウムにより処理された条件付け水では、水素のプロチウム化によるマイナス水素イオン(H−)がイオンとして長時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0025】
また、プロチウム化されたマイナス水素イオンを含む栽培水の還元性と水素ガスとの違いは、メチレンブルーによって確認することができる。メチレンブルーは、酸化、還元を示す試薬として知られているが、本発明の栽培水をメチレンブルーに添加しその様子を観察すると、還元型の無色のロイコメチレンブルーに変化することが確認された。一方、メチレンブルーに水素ガスを1時間吹き込んだものは、酸化型のメチレンブルーのままであった。つまり、マイナス水素イオンは、還元型のロイコメチレンブルーになる。
【0026】
次に、プロチウム化された水素を含む栽培水(アルカリ還元性ミネラルイオン水)を植物に与えたときの種々の実験結果について説明する。実験では、200mlの水の中にセラミックボールを入れ、栽培水を用意した。また、セラミックボールは、常時、水の中に入れたままでも良いが、以下に示す実験の多くは、セラミックボールを入れた水に約10〜60分間だけ浸した後、水道水に戻している。栽培水の温度は常温であり、植物には、室内の明るさの光が照射され、夜間にはほとんど光が照射されないようにした。切り花の切り口を斜めにカットした。
【0027】
[切り花の成長]
図7Aは、実験開始時のカーネーションの状態を示す写真であり、図7Bは、実験開始後21日目にカーネーションが開花した状態を示す写真である。実験では、水道水に異なる数のセラミックボールを入れ、200mlの栽培水を用意した。図7Aの「1」は水道水のみの栽培、「2」はセラミックボールを1個入れたもの、「3」はセラミックボールを5個入れたもの、「4」はセラミックボールを10個入れたものである。切り花として、カーネーションを用い、カーネーションの切り口が栽培水に浸されるように容器内に収容した。実験開始時には、図7Aに示すようにカーネーションには、小さな蕾がついている。そして、実験開始後、水道水のみで栽培をしたカーネーションは枯れ始めた。他方、セラミックボールを入れた水道水で栽培したカーネーションでは、実験開始後21日目に、図7Bに示すように、蕾が大きく成長し、開花したことが観察された。特に、セラミックボールの数が多いものほど、蕾が生長した。
【0028】
図8は、カーネーションの切り花の別の実験結果を示す写真であり、実験開始時から、35日目、69日目、118日目の様子が示され、また、上の3つの写真は、実験開始時の蕾、69日目の蕾、118日目に蕾が開花した様子が示されている。実験では、200mlの水道水に0.65gのセラミックボールを入れた栽培水を用いた。実験開始時に咲いていた花は、35日経過しても2つの花が咲いた状態を維持し、69日目に小さい蕾が膨らみ始め、118日目に小さな蕾が開花し、新しい蕾が現れはじめた。
【0029】
図9Aは、実験開始時のバラの状態を示す写真であり、図9Bは、実験開始後101日目にバラの開花状態を示す写真である。実験では、200mlの水道水に0.65gのセラミックボールを入れた栽培水を用意した。切り花が栽培水だけの中で101日間成長を続け、花芽をつけ、開花することが観察された。また、根も成長することが確認された。
【0030】
[開花コントロール]
図10は、切り花の開花がコントロールされた状態を示す写真である。実験では、セラミックボールの数が異なる栽培水を用い、切り花には芍薬を用いた。図10の「1」は水道水のみの栽培、「2」はセラミックボールを2個入れたもの、「3」はセラミックボールを10個入れたもの、「4」はセラミックボールを5個入れたもの、「5」はセラミックボールを15個入れたものである。「3」、「4」、「5」の切り花には、一定量を超えるセラミックボールを含む栽培水が与えられ、「2」の切り花には、一定量のセラミックボールが与えられる。「2」の切り花は、蕾のままであり開花しないが、他の切り花は、すべて開花することが観察された。つまり、栽培水の中のマイナス水素イオンの量をコントロールすることで、開花をコントロールすることが可能になる。
【0031】
[枯死コントロール]
図11は、切り花の枯死がコントロールされた状態を示す写真であり、実験開始時、実験開始2日目(「6」の状態の拡大)、実験開始7日目を示している。実験では、200mlの水道水に異なる数のセラミックボールを入れた栽培水を用意し比較検討をした。「1」は0.1gのセラミックボールを入れたもの、「2」は0.15gのセラミックボールを入れたもの、「3」は0.2gのセラミックボールを入れたもの、「4」は0.25gのセラミックボールを入れたもの、「5」は0.3gのセラミックボールを入れたもの、「6」は0.35gのセラミックボールを入れたものである。「6」の切り花は、実験開始後2日目に花の根本から枯れ始まり、7日目に枯死したことが観察された。他の条件の栽培水を与えた切り花は、開花した状態を維持している。
【0032】
[延命効果]
図12ないし図14は、切り花の延命効果を説明する写真である。実験では、異なる数のセラミックボールを入れた栽培水を用意した。「1」は水道水のみ、「2」は0.2gのセラミックボールを入れたもの、「3」は0.4gのセラミックボールを入れたもの、「4」は0.6gのセラミックボールを入れたもの、「5」は0.8gのセラミックボールを入れたものである。切り花は、60分間、栽培水に浸された後、図12Bに示すように、水道水のみの容器に移された。図13は、実験開始から9ヶ月目の切り花の写真である。カルスと根が発生し(葉はそのまま)、実験開始のときとほぼ同じ状態を維持しているものがある一方、切り口も葉も実験開始時と同じ状態を維持しているものもあることがわかる。このように、9ヶ月を過ぎても、切り花が延命されていることが確認された。図14は、9ヶ月を経過したときの栽培水の写真であるが、栽培水は濁らないし、腐らないことが観察された。
【0033】
[側芽の発生]
図15の左側は、セラミックボールを入れた栽培水で処理した実験開始時のピンポンギクの切り花の様子を示す写真、図15の右側は、実験開始後55日目のピンポンギクの切り花の様子を示す写真である。同図に示すように、実験開始時には側芽は発生していないが、実験開始5日後から側芽が出始め、図15Bに示すように、55日後には30個の花芽がついた。図16は、花芽を拡大したものである。
【0034】
[栽培水の循環]
図17Aは、実験開始時の染色されたスイートピーの切り花の様子を示す写真、図17Bは、実験開始から24時間後のスイートピーの様子を示す写真である。実験開始時、水道水のみの栽培水と、水道水に10個のセラミックボールを入れた栽培水を用いて比較した。栽培水に、スイートピーが吸い上げた染料が生じていることが観察された。つまり、水が循環していることがわかる。
【0035】
[再生]
図18は、バラの再生実験を示す写真である。バラの葉を栽培水に浸すと、葉からもカルスが発生することが観察された。また、実験開始時の状態は、半年以上維持されることが確認された。
【0036】
[品種改良されたバラの再生]
図19は、実験開始時のバラの開花の様子であり、再生前の花と全く違う色と形の花が咲き、さらに新しい花芽がつき開花すると、前回とも全く違う形の花が咲くことが確認された。つまり、品種改良されたバラを栽培水につけて再生すると、咲くたびに違う色や形の花が咲くことが確認された。
【0037】
[水耕栽培]
図20は、栽培水にレタスを入れて実験を開始した様子を示しており、実験から5日後にレタスの苗は、根が発達し成長が促進されたことが観察された。図には、比較例として水道水のみのレタスの根の発育と、水道水にセラミックボールを入れた栽培水によるレタスの根の発育が示されている。
【0038】
図21は、胡蝶蘭の実験結果を示す写真である。胡蝶蘭の根を切った苗を栽培水により栽培すると、苗が生長し花芽をつけて開花したことが観察された。この実験ではさらに、水道水に戻しても一年に2〜3回大きな花を咲かせることが観察された。
【0039】
このような実験結果からも明らかなように、水素がプロチウム化された栽培水を用いて植物を栽培すると、その生育(成長、延命、開花、枯死など)をコントロールすることができる。また、上記の実験は、切り花を用いたものであるが、切り花以外の、開花、結実する野菜等の水耕栽培などにおいても同様に成長をコントロールすることが可能になる。さらに、上記の実験には用いられていない他の植物についても同様の効果が生じるものと推測される。
【0040】
さらに上記実験では、主として水耕栽培を例示したが、当業者であれば、土を用いてそこに栽培水(条件付け水)を与えた土壌栽培であっても、同様の結果を得ることができることを理解されよう。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化金属を含む水を用いた植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物などの有用植物をビニールハウス内で栽培することは従来より行われており、さらに低コストで効率よく植物を栽培する方法が研究されている。例えば、特許文献1は、太陽光利用ハウスにおいて、自然光(太陽光)の不足分を白色発光ダイオードと赤色発光ダイオードの組み合わせで補光する発明を開示している。また、特許文献2は、光強度が150μmol・m-2・S-1以上の光量子束密度に調整された600〜700nmの赤色光を植物に照射することで、主茎の伸長を抑制したままで、自由に、花成を促進または抑制する草姿制御技術を開示している。
【0003】
また、植物の生育を促すため、ジベレリンやオーキシン等に代表される植物成長調整剤や、脂肪酸、有機酸、グリセリド、エーテルを増収剤にすることが提案されている(特許文献2を参照)。さらに特許文献2は、栽培期間中の栽培環境の二酸化濃度に着目し、二酸化炭素濃度を400〜5000ppmとすることで生育を促進させることを提案している。
【0004】
植物を含む生物が生命を維持するのに必要なエネルギーは、呼吸鎖を通して捕獲している。呼吸鎖は、細胞内のミトコンドリアと呼ばれる細胞内器官の内膜に埋め込まれた状態で存在している。その呼吸鎖の中では、H2+1/2O2→H2Oの反応によって生じるエネルギーの大半を、ADP+Pi→ATPの反応によって示される高エネルギー燐酸結合という化学結合エネルギーとして貯蔵する。マイナス水素イオン(H−)は、ミトコンドリアの内膜の呼吸鎖の中に、NADHという中間電子伝達体のNAD+と結合した形で存在している。中間電子伝達体(NAD+)と結合した形のNADH分子には、水素原子ではなく、ヒドリドイオン、すなわちマイナス水素イオン(H−)である。
【0005】
本発明者は、強還元特性を有する磁性セラミックボールを製造する方法(特許文献1)を発案し、このセラミックボールを水中に投入し、セラミックボールのN極から水素の気泡を生じさせることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−130986号
【特許文献2】特開2008−142005号
【特許文献3】特開2008−206454号
【特許文献4】特許4218939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に示されるセラミックボール内で起こる、マイナス水素イオンが発生するメカニズムの模式図を図1に示す。このセラミックボールはS極からN極に着磁によって磁性が生じている。また、セラミックボール周辺の水(H2O=H+とOH−)のH+が、セラミックボール内に侵入し、水素イオンのプロチウム化、すなわち、H−⇔H++ne−(n≧2)が起こり、発生したマイナス水素イオンH−は、磁性に沿って、N極にひかれて行き、外液の水素イオンH+と反応(H++H−→H2↑)し、N極から水素ガスが発生する。
【0008】
このような還元力を持つマイナス水素イオンH−が植物の成長や生育に与える影響は、未だ何ら解明されていない。
【0009】
本発明は、マイナス水素イオンを含む水を用いた、新規であり、斬新な植物栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、特許文献4に示すオリジナルセラミックボールを入れた水が植物に及ぼすさまざまな影響について、長年研究をしてきた。そこから分かった事実は、この水を吸わせた切り花は、水の中で成長し、丈も伸び、更には新たな花をつける。また、切ったそのままの状態を維持したり、葉だけ、時には花だけをつけて行く。さらには、突然、枯死することもある。切り花は、普通、萎れていくものであるが、水素化金属を入れた水を吸わせると、生命活動を維持していると考えられる。
【0011】
金属水素化物の中でも、CaH2などのイオン結合性水素化物は、水素がマイナスイオン状で結合されていることから、このマイナス状の水素イオンがさまざまな現象を引き起こしていると推察される。このマイナス水素イオンの量を変えることにより、成長促進、延命(現状維持)開花などのコントロールが可能になり、その結果、切り花だけではなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になり、農業分野での応用が期待される。同じpHのアルカリイオン水では、同じ現象は起こらないことをつけ加えておく。
【0012】
本発明に係る植物の栽培方法は、プロチウム化された水素を含む栽培水により植物を栽培するものである。好ましくは、栽培水は、H++H−のイオンを含む。好ましくは、栽培水は、H++H−⇔H02(電離水素水)の条件付けされた水である。好ましくは栽培水は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つを含む水素化金属によって処理された水である。好ましくは栽培水は、セラミックボールによってプロチウム化された水である。例えば水素化金属は、CaH2、MgH2などである。
【0013】
好ましくは前記植物は、水耕栽培される。さらに植物は、土を用いて栽培されるものであってもよい。植物は、根を有するものの栽培、あるいは切り花の水耕栽培である。好ましくは前記植物は、結実する植物、または開花する植物である。例えば、植物は、カーネーション、バラ、レタス、ランなどである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素がプロチウム化された栽培水を用いることで、植物の成長促進、延命、開花などをコントロールすることが可能になる。その結果、切り花だけでなく、無肥料の野菜等の水耕栽培、成長促進、結実などのコントロールが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】セラミックボール内で起こるマイナス水素イオンの発生メカニズムを説明する模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る植物の栽培方法説明するフローである。
【図3】栽培水の製造方法を説明するフローである。
【図4】水素のプロチウム化の模式図である。
【図5】原水(水道水)と条件付け水のpHと酸化還元電位(ORP)の時間的変化を示すグラフである。
【図6】水素化カルシウムおよび水素化マグネシウムによってそれぞれ条件付け水のpHとORPと、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを含む水のpHとORPを示す。
【図7A】実験開始時のカーネーションの状態を示す写真である。
【図7B】実験開始後21日目にカーネーションが開花した状態を示す写真である。
【図8】カーネーションの切り花の別の実験結果を示す写真であり、実験開始時から、35日目、69日目、118日目の様子を示す。
【図9A】実験開始時のバラの状態を示す写真である。
【図9B】実験開始後101日目にバラの開花状態を示す写真である。
【図10】切り花の開花がコントロールされた状態を示す写真である。
【図11】切り花の枯死がコントロールされた状態を示す写真である。
【図12A】切り花の延命効果を説明する写真である。
【図12B】切り花の延命効果を説明する写真である。
【図13】実験開始から9ヶ月目の切り花の写真である。
【図14】9ヶ月を経過したときの栽培水の写真である。
【図15】左側は、実験開始時のピンポンギクの切り花の様子を示す写真、右側は、実験開始後55日目のピンポンギクの切り花の様子を示す写真である。
【図16】花芽のそれぞれを拡大したものである。
【図17A】実験開始時の染色されたスイートピーの切り花の様子を示す写真である。
【図17B】実験開始から24時間後のスイートピーの様子を示す写真である。
【図18】バラの再生実験を示す写真である
【図19】実験開始後のバラの開花の様子を示す写真である。
【図20】栽培水にレタスを入れて実験を開始した様子を示す写真である。
【図21】胡蝶蘭の実験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図2は、本発明の実施例に係る植物の栽培方法を説明するフローであり、この栽培方法は、次のステップを含んで構成される。先ず、水素のプロチウム化が可能な状態で含まれるように条件付けされた栽培水(条件付け水またはアルカリ還元性ミネラルイオン水ともいう)を用意し(ステップS101)、次に、栽培水を植物に与え(ステップS102)、植物を栽培する。
【0018】
図3は、栽培水の製造方法を説明するフローである。ここでは、一例として水素化金属または水素貯蔵金属により条件付け水を生成する方法を説明する。先ず、元素周期律表上に示されているアルカリ金属、アルカリ土金属、第13族そして第14族の金属のいずれか、またはそれらの少なくとも1つの金属を含む物質を用意する(ステップS201)。次に、この物質は、高温で酸化焼成する。(ステップS202)。
【0019】
次に、物質は、高温無酸素状態(水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合ガスを含む炉内)におかれる(ステップS203)。例えば、上記の炉内の温度を700℃またはそれ以上の温度に保ち一定時間、還元焼成する。次に、物質は、無酸素状態のまま、常温にさます。(ステップS204)。
【0020】
こうして水素化金属または水素貯蔵金属が生成される(ステップS205)。高温酸化焼成から高温無酸素還元焼成を経て常温無酸素状態の処理を行うことで、炉中の水素ガスH2は、H2⇔H++H−のようにプラズマ化し、水素化金属すなわちイオン結合性の水素化金属が生成される。この水素化金属が水に浸されたとき、水素化金属の表面でプロチウム化が起こり、マイナス水素イオン(H−)を含むアルカリ還元性ミネラルイオン水である、栽培水すなわち、電離水素水が生成される(ステップS206)。
【0021】
また、本発明者によって発明された特許第4218939号のセラミックボールや、特許第4404657号のサンゴカルシウムを用いて条件付け水を生成することも可能である。セラミックボールやサンゴカルシウムの製造において、高温酸化焼成状態から、高温無酸素還元焼成状態を経て常温無酸素還元状態に戻る工程中に、炉の雰囲気中に含まれる水素ガスH2は、H2⇔H++H−のようにプラズマ化し、素材中の粘土の中に含まれる珪素が溶けてセラミック化する。サンゴカルシウム粉末中に含まれるCaCO3は、CaCO3→CaO→CaH2と変化し、カルシウムの水素化物(水素化カルシウム=水素化金属の一種であるイオン結合性の水素化金属)ができる。このような栽培水においても、マイナス水素イオンが発生され得る。
【0022】
図4は、水素のプロチウム化の模式図であり、H2⇔2H0、H+⇔H0、H2⇔2H−、H+⇔H−の如く水素原子における荷電変換が起こると考えられる。水素工学の分野では、H−⇔H+⇔2e−の物理化学反応が実験的に確かめられており、水中に置かれた水素化金属の表面では水素のプロチウム化が起こっていることは確実である。よって、水素化金属の構造表面上で、水素のプロチウム化が起こり、H+⇔H0⇔H−が起こり、水素化金属による処理をした水には、マイナス水素イオン(H−)が含まれている。
【0023】
図5は、原水(水道水)と条件付け水とのpHとORP(酸化還元電位)の時間的変化を対比するグラフである。図中、縦軸はpHとORP(mV)、横軸は時間(h)である。原水のpHは、7よりも幾分大きい状態を継続し、ORPは約760mV程度でほぼ一定である。他方、条件付け水では、水素化金属の表面でプロチウム化が生じ、周囲の水のpHを11弱にコントロールし、そしてORPを−260mVにコントロールし、この状態が長時間(グラフでは6時間)にわたって継続される。従って、条件付け水は、原水とは全く異なる水質に変化しており、この条件が作り出されるとき、常温、アルカリ還元性ミネラルイオン水の中で、マイナス水素イオン(H−)がイオンとして長時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0024】
図6は、水素化金属として水素化カルシウム(CaH2)および水素化マグネシウム(MgH2)によってそれぞれ条件付け水のpHとORPを示し、比較例として、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を含む水のpHとORPを示す。水素化カルシウムでは、pHが13弱、ORPが約0mVであり、この状態が24時間継続されるのに対し、水酸化カルシウムでは、pHは13弱で同程度であるが、ORPは約300mVである。また、水素化マグネシウムでは、pHが11弱、ORPが−700mV〜−500mV弱の範囲で約24時間継続されるのに対し、水酸化マグネシウムでは、pHはほぼ10であり、ORPは約450mVである。このように、水素化カルシウムや水素化マグネシウムにより処理された条件付け水では、水素のプロチウム化によるマイナス水素イオン(H−)がイオンとして長時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0025】
また、プロチウム化されたマイナス水素イオンを含む栽培水の還元性と水素ガスとの違いは、メチレンブルーによって確認することができる。メチレンブルーは、酸化、還元を示す試薬として知られているが、本発明の栽培水をメチレンブルーに添加しその様子を観察すると、還元型の無色のロイコメチレンブルーに変化することが確認された。一方、メチレンブルーに水素ガスを1時間吹き込んだものは、酸化型のメチレンブルーのままであった。つまり、マイナス水素イオンは、還元型のロイコメチレンブルーになる。
【0026】
次に、プロチウム化された水素を含む栽培水(アルカリ還元性ミネラルイオン水)を植物に与えたときの種々の実験結果について説明する。実験では、200mlの水の中にセラミックボールを入れ、栽培水を用意した。また、セラミックボールは、常時、水の中に入れたままでも良いが、以下に示す実験の多くは、セラミックボールを入れた水に約10〜60分間だけ浸した後、水道水に戻している。栽培水の温度は常温であり、植物には、室内の明るさの光が照射され、夜間にはほとんど光が照射されないようにした。切り花の切り口を斜めにカットした。
【0027】
[切り花の成長]
図7Aは、実験開始時のカーネーションの状態を示す写真であり、図7Bは、実験開始後21日目にカーネーションが開花した状態を示す写真である。実験では、水道水に異なる数のセラミックボールを入れ、200mlの栽培水を用意した。図7Aの「1」は水道水のみの栽培、「2」はセラミックボールを1個入れたもの、「3」はセラミックボールを5個入れたもの、「4」はセラミックボールを10個入れたものである。切り花として、カーネーションを用い、カーネーションの切り口が栽培水に浸されるように容器内に収容した。実験開始時には、図7Aに示すようにカーネーションには、小さな蕾がついている。そして、実験開始後、水道水のみで栽培をしたカーネーションは枯れ始めた。他方、セラミックボールを入れた水道水で栽培したカーネーションでは、実験開始後21日目に、図7Bに示すように、蕾が大きく成長し、開花したことが観察された。特に、セラミックボールの数が多いものほど、蕾が生長した。
【0028】
図8は、カーネーションの切り花の別の実験結果を示す写真であり、実験開始時から、35日目、69日目、118日目の様子が示され、また、上の3つの写真は、実験開始時の蕾、69日目の蕾、118日目に蕾が開花した様子が示されている。実験では、200mlの水道水に0.65gのセラミックボールを入れた栽培水を用いた。実験開始時に咲いていた花は、35日経過しても2つの花が咲いた状態を維持し、69日目に小さい蕾が膨らみ始め、118日目に小さな蕾が開花し、新しい蕾が現れはじめた。
【0029】
図9Aは、実験開始時のバラの状態を示す写真であり、図9Bは、実験開始後101日目にバラの開花状態を示す写真である。実験では、200mlの水道水に0.65gのセラミックボールを入れた栽培水を用意した。切り花が栽培水だけの中で101日間成長を続け、花芽をつけ、開花することが観察された。また、根も成長することが確認された。
【0030】
[開花コントロール]
図10は、切り花の開花がコントロールされた状態を示す写真である。実験では、セラミックボールの数が異なる栽培水を用い、切り花には芍薬を用いた。図10の「1」は水道水のみの栽培、「2」はセラミックボールを2個入れたもの、「3」はセラミックボールを10個入れたもの、「4」はセラミックボールを5個入れたもの、「5」はセラミックボールを15個入れたものである。「3」、「4」、「5」の切り花には、一定量を超えるセラミックボールを含む栽培水が与えられ、「2」の切り花には、一定量のセラミックボールが与えられる。「2」の切り花は、蕾のままであり開花しないが、他の切り花は、すべて開花することが観察された。つまり、栽培水の中のマイナス水素イオンの量をコントロールすることで、開花をコントロールすることが可能になる。
【0031】
[枯死コントロール]
図11は、切り花の枯死がコントロールされた状態を示す写真であり、実験開始時、実験開始2日目(「6」の状態の拡大)、実験開始7日目を示している。実験では、200mlの水道水に異なる数のセラミックボールを入れた栽培水を用意し比較検討をした。「1」は0.1gのセラミックボールを入れたもの、「2」は0.15gのセラミックボールを入れたもの、「3」は0.2gのセラミックボールを入れたもの、「4」は0.25gのセラミックボールを入れたもの、「5」は0.3gのセラミックボールを入れたもの、「6」は0.35gのセラミックボールを入れたものである。「6」の切り花は、実験開始後2日目に花の根本から枯れ始まり、7日目に枯死したことが観察された。他の条件の栽培水を与えた切り花は、開花した状態を維持している。
【0032】
[延命効果]
図12ないし図14は、切り花の延命効果を説明する写真である。実験では、異なる数のセラミックボールを入れた栽培水を用意した。「1」は水道水のみ、「2」は0.2gのセラミックボールを入れたもの、「3」は0.4gのセラミックボールを入れたもの、「4」は0.6gのセラミックボールを入れたもの、「5」は0.8gのセラミックボールを入れたものである。切り花は、60分間、栽培水に浸された後、図12Bに示すように、水道水のみの容器に移された。図13は、実験開始から9ヶ月目の切り花の写真である。カルスと根が発生し(葉はそのまま)、実験開始のときとほぼ同じ状態を維持しているものがある一方、切り口も葉も実験開始時と同じ状態を維持しているものもあることがわかる。このように、9ヶ月を過ぎても、切り花が延命されていることが確認された。図14は、9ヶ月を経過したときの栽培水の写真であるが、栽培水は濁らないし、腐らないことが観察された。
【0033】
[側芽の発生]
図15の左側は、セラミックボールを入れた栽培水で処理した実験開始時のピンポンギクの切り花の様子を示す写真、図15の右側は、実験開始後55日目のピンポンギクの切り花の様子を示す写真である。同図に示すように、実験開始時には側芽は発生していないが、実験開始5日後から側芽が出始め、図15Bに示すように、55日後には30個の花芽がついた。図16は、花芽を拡大したものである。
【0034】
[栽培水の循環]
図17Aは、実験開始時の染色されたスイートピーの切り花の様子を示す写真、図17Bは、実験開始から24時間後のスイートピーの様子を示す写真である。実験開始時、水道水のみの栽培水と、水道水に10個のセラミックボールを入れた栽培水を用いて比較した。栽培水に、スイートピーが吸い上げた染料が生じていることが観察された。つまり、水が循環していることがわかる。
【0035】
[再生]
図18は、バラの再生実験を示す写真である。バラの葉を栽培水に浸すと、葉からもカルスが発生することが観察された。また、実験開始時の状態は、半年以上維持されることが確認された。
【0036】
[品種改良されたバラの再生]
図19は、実験開始時のバラの開花の様子であり、再生前の花と全く違う色と形の花が咲き、さらに新しい花芽がつき開花すると、前回とも全く違う形の花が咲くことが確認された。つまり、品種改良されたバラを栽培水につけて再生すると、咲くたびに違う色や形の花が咲くことが確認された。
【0037】
[水耕栽培]
図20は、栽培水にレタスを入れて実験を開始した様子を示しており、実験から5日後にレタスの苗は、根が発達し成長が促進されたことが観察された。図には、比較例として水道水のみのレタスの根の発育と、水道水にセラミックボールを入れた栽培水によるレタスの根の発育が示されている。
【0038】
図21は、胡蝶蘭の実験結果を示す写真である。胡蝶蘭の根を切った苗を栽培水により栽培すると、苗が生長し花芽をつけて開花したことが観察された。この実験ではさらに、水道水に戻しても一年に2〜3回大きな花を咲かせることが観察された。
【0039】
このような実験結果からも明らかなように、水素がプロチウム化された栽培水を用いて植物を栽培すると、その生育(成長、延命、開花、枯死など)をコントロールすることができる。また、上記の実験は、切り花を用いたものであるが、切り花以外の、開花、結実する野菜等の水耕栽培などにおいても同様に成長をコントロールすることが可能になる。さらに、上記の実験には用いられていない他の植物についても同様の効果が生じるものと推測される。
【0040】
さらに上記実験では、主として水耕栽培を例示したが、当業者であれば、土を用いてそこに栽培水(条件付け水)を与えた土壌栽培であっても、同様の結果を得ることができることを理解されよう。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロチウム化された水素を含む栽培水により植物を栽培する、植物の栽培方法。
【請求項2】
前記栽培水は、H++H−のイオンを含む、請求項1に記載の栽培方法。
【請求項3】
前記栽培水は、H++H−⇔H02(電離水素水)の条件付けされた水である、請求項1または2に記載の栽培方法。
【請求項4】
前記栽培水は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つを含む水素化金属によって処理された水である、請求項1ないし3いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項5】
前記栽培水は、セラミックボールによってプロチウム化された水である、請求項1ないし4いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項6】
前記水素化金属は、CaH2またはMgH2を含む、請求項4に記載の栽培方法。
【請求項7】
前記植物は、水耕栽培される、請求項1ないし6いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項8】
前記植物は、土を用いて栽培される、請求項1ないし6いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項9】
前記植物は、切り花の水耕栽培である、請求項1ないし7いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項10】
前記植物は、結実する植物である、請求項1ないし9いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項11】
前記植物は、開花する植物である、請求項1ないし10いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項12】
前記植物は、カーネーションである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項13】
前記植物は、バラである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項14】
前記植物は、レタスである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項15】
前記植物は、ランである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項1】
プロチウム化された水素を含む栽培水により植物を栽培する、植物の栽培方法。
【請求項2】
前記栽培水は、H++H−のイオンを含む、請求項1に記載の栽培方法。
【請求項3】
前記栽培水は、H++H−⇔H02(電離水素水)の条件付けされた水である、請求項1または2に記載の栽培方法。
【請求項4】
前記栽培水は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つを含む水素化金属によって処理された水である、請求項1ないし3いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項5】
前記栽培水は、セラミックボールによってプロチウム化された水である、請求項1ないし4いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項6】
前記水素化金属は、CaH2またはMgH2を含む、請求項4に記載の栽培方法。
【請求項7】
前記植物は、水耕栽培される、請求項1ないし6いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項8】
前記植物は、土を用いて栽培される、請求項1ないし6いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項9】
前記植物は、切り花の水耕栽培である、請求項1ないし7いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項10】
前記植物は、結実する植物である、請求項1ないし9いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項11】
前記植物は、開花する植物である、請求項1ないし10いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項12】
前記植物は、カーネーションである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項13】
前記植物は、バラである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項14】
前記植物は、レタスである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【請求項15】
前記植物は、ランである、請求項1ないし11いずれか1つに記載の栽培方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−55225(P2012−55225A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201145(P2010−201145)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月21日 日本植物生理学会主催の「第51回日本植物生理学会年会」において文書をもって発表
【出願人】(503020781)株式会社創造的生物工学研究所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月21日 日本植物生理学会主催の「第51回日本植物生理学会年会」において文書をもって発表
【出願人】(503020781)株式会社創造的生物工学研究所 (3)
【Fターム(参考)】
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