説明

水素吸蔵合金電極およびニッケル水素電池

【課題】撥水性に優れた水素吸蔵合金層を有しており、電池内圧の上昇を抑制でき、サイクル特性や負荷特性に優れたニッケル水素二次電池を与える水素吸蔵合金電極を提供する。
【解決手段】含フッ素パーハロオレフィンに由来する構造単位(a1)、ならびにビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)を含む含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを含む水素吸蔵合金層(I)を導電性支持体(II)上に有する水素吸蔵合金電極、およびニッケル水素二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素電池の水素吸蔵合金電極、およびニッケル水素電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素電池では、充電時にアルカリ水溶液を電気分解して得られる水素を吸蔵する水素吸蔵合金粒子を含む層を負極集電体上に形成し、放電時には吸蔵した水素を放出し、酸化して水とする反応が生じている。
【0003】
かかるニッケル水素電池の課題として、充電時に負極で発生する水素ガスと正極で発生する酸素ガスによって上昇する電池の内圧上昇の抑制が重要であり、また、放電時に発生した水による水素ガスの放出阻害によって、電池容量の低下、サイクル特性の低下、負荷特性の低下などが生じてしまうことを抑制することも重要である。
【0004】
そこで、水素吸蔵合金粒子の表面を撥水化させて、水素吸蔵合金粒子表面を固体(合金層)−液体(水またはアルカリ水溶液)−気体(水素ガス)の3相界面状態とすることで、前記課題を改善することが提案されている。
【0005】
特許文献1〜2では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)などの有機溶媒に難溶の固体フッ素樹脂粒子のディスパージョンを水素吸蔵合金層に塗布し、撥水性のフッ素樹脂粒子を水素吸蔵合金粒子表面に点在させる方法が提案されている。
【0006】
特許文献3では、加水分解性シリル基(ヒドロシリル基)を両末端に有する含フッ素共重合体を撥水剤としてフッ素系溶剤に溶解した溶液を水素吸蔵合金層に塗布し、撥水層で水素吸蔵合金粒子の表面を被覆する方法が提案されている。
【0007】
特許文献4〜5では、フッ素樹脂ポリマー(パーフルオロブテニルビニルエーテル重合体、パーフルオロアリルビニルエーテル重合体またはテトラフルオロエチレン/パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール共重合体)のフッ素系溶剤の溶液を水素吸蔵合金層に塗布(またはスプレー)し、撥水層を水素吸蔵合金粒子表面に形成(点在)する方法が提案されている。
【0008】
特許文献6では、炭素含有水素吸蔵合金粒子の表面に存在する炭素の一部または全部をフッ素化することで水素吸蔵合金粒子表面に3相界面状態を形成することが提案されている。
【0009】
特許文献7には、水素吸蔵合金層を形成するためのペーストとして、水素吸蔵合金粒子に対して、特定の不飽和基含有含フッ素アミド化合物とヒドロシリル基を2個以上有する含フッ素共重合体と硬化用の白金触媒とを含む硬化性組成物を5重量%以下配合した水素吸蔵合金層形成材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平02−250260号公報
【特許文献2】特開平02−291665号公報
【特許文献3】特開平09−097605号公報
【特許文献4】特開平10−012228号公報
【特許文献5】特開平10−060361号公報
【特許文献6】特開平08−315814号公報
【特許文献7】特開平08−162101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、撥水性のフッ素樹脂粒子を水素吸蔵合金粒子表面に点在させる方法(特許文献1〜2)では、難溶性のフッ素樹脂粒子層を水素吸蔵合金粒子表面に形成するための工程が必要となり、また、フッ素樹脂粒子を均一に塗布することが難しいといった問題がある。
【0012】
含フッ素エーテル系ポリマーを撥水剤として用いる特許文献3〜5では、有機溶剤としてフッ素系溶剤を用いる必要があるが、フッ素系溶剤は地球温暖化係数(GWP)が高く、できれば使用しない方が望ましい。
【0013】
また、炭素含有水素吸蔵合金粒子の表面に存在する炭素の一部または全部をフッ素化する特許文献6は、炭素をフッ素化する際に炭素以外の合金も一緒にフッ素化される可能性があるため容量低下などの問題が残る。
【0014】
特許文献7は、水素吸蔵合金層を形成した後に撥水層を形成する形態ではなく、水素吸蔵合金層を形成するペースト中に撥水剤として特定の含フッ素共重合体を配合する発明であるが、触媒として白金触媒が必要となるほか、アミド化合物の親水性のアミド基の存在により撥水効果が薄れる傾向にある。
【0015】
本発明は、撥水性に優れた水素吸蔵合金層を形成するために、容易に適用できかつ環境に優しい材料を検討した結果、完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち本発明は、含フッ素パーハロオレフィンに由来する構造単位(a1)、ならびにビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)を含む含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを含む水素吸蔵合金層(I)を導電性支持体(II)上に有する水素吸蔵合金電極に関する。
【0017】
含フッ素共重合体(A)の含フッ素パーハロオレフィンに由来する構造単位(a1)としては、テトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0018】
また、含フッ素共重合体(A)のビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)が非フッ素系単位であることが好ましく、ビニルエーテルに由来する構造単位(a2)としては、水酸基含有ビニルエーテルに由来する構造単位であることが好ましい。
【0019】
含フッ素共重合体(A)は、さらに、水素結合力を有する官能基、または金属ニッケル表面の水酸基に対して結合力を有する官能基を有する単量体に由来する構造単位(a4)を含んでいてもよい。
【0020】
含フッ素共重合体(A)の数平均分子量は10000〜20000であることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、本発明の水素吸蔵合金電極を負極とし、正極およびアルカリ電解液を備えるニッケル水素二次電池にも関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水素吸蔵合金電極によれば、撥水性に優れた水素吸蔵合金層を有しており、電池内圧の上昇を抑制でき、サイクル特性や負荷特性に優れたニッケル水素二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水素吸蔵合金電極は、特定の含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを含む水素吸蔵合金層(I)を導電性支持体(II)上に有する。
【0024】
以下、各要素について説明する。
【0025】
(I)水素吸蔵合金層
本発明において、水素吸蔵合金層(I)は、特定の含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを含む。
【0026】
(A)含フッ素共重合体
本発明で用いる含フッ素共重合体(A)は、(i)撥水性を有すること、および(ii)金属ニッケルとの結合性を有することが重要である。
【0027】
(i)の撥水性を与えるために、含フッ素共重合体(A)は、含フッ素パーフロオレフィンに由来する構造単位(a1)を有することが重要である。具体的には、フッ素含有率の高いテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する構造単位が好ましく例示できる。
【0028】
同じ含フッ素オレフィン単位であっても、フッ化ビニリデン(VdF)に由来する構造単位やトリフルオロエチレン(Trf)に由来する構造単位を多く含有する場合は、ニッケル水素電池の電解液であるアルカリ水溶液に対して耐性が低く適用できない。また、HFPは重合性が低いため、構成比率を上げることが難しい。
【0029】
含フッ素共重合体(A)における構造単位(a1)の含有割合は、多くなると耐アルカリ性に強くなる傾向にあり、また、少なくなると耐アルカリ性に弱くなる傾向にある。この観点から、構造単位(a1)の含有割合は、25〜50モル%、さらには30〜50モル%、特に40〜50モル%が好ましい。
【0030】
(ii)の金属ニッケルとの結合性を付与するためには、ビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)を含むことが重要である。
【0031】
構造単位(a2)を与えるビニルエーテルとしては、具体的には、たとえばエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの非フッ素系ビニルエーテル;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどの水酸基含有非フッ素系ビニルエーテル;パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などのフッ素系ビニルエーテルなどの1種または2種以上が例示できる。
【0032】
なかでも、金属と結合がしやすい点から、非フッ素系ビニルエーテルまたは水酸基含有非フッ素系ビニルエーテルが好ましく、特にヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどの水酸基含有非フッ素系ビニルエーテルがより強固に金属と結合しやすい点から好ましい。
【0033】
含フッ素共重合体(A)における構造単位(a2)の含有割合は、多くなると含フッ素共重合体(A)と金属ニッケルとの結合面積が大きくなって含フッ素共重合体(A)が金属自体を覆ってしまう傾向にあり、また、少なくなると含フッ素共重合体(A)と金属ニッケルとの結合面積が小さくなる傾向にある。この観点から、構造単位(a2)の含有割合は、10〜30モル%、さらには15〜30モル%、特に15〜27モル%が好ましい。
【0034】
構造単位(a3)を与えるビニルエステルとしては、具体的には、たとえば酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどの1種または2種以上が例示できる。
【0035】
なかでも、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルが可とう性が良好な点から好ましい。
【0036】
含フッ素共重合体(A)における構造単位(a3)の含有割合は、多くなると溶剤溶解性が高くなり電池を作製した際に電解液に溶けてしまう傾向にあり、また、少なくなると溶剤溶解性が悪くなる傾向にある。この観点から、構造単位(a3)の含有割合は、20〜55モル%、さらには20〜50モル%、特に20〜48モル%が好ましい。
【0037】
含フッ素共重合体(A)における構造単位(a2)と(a3)の合計の含有割合は、45〜70モル%、さらには50〜70モル%、特に55〜70モル%が好ましい。
【0038】
さらに要すれば、水素結合力を有する官能基、または金属ニッケル表面の水酸基に対して結合力を有する官能基を有する単量体に由来する構造単位(a4)を含んでいてもよい。そのような単量体が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ケイ素含有基、スルホン酸基、燐酸基などがあげられる。特に金属ニッケル表面の水酸基との水素結合力に優れるカルボキシル基、およびそのエステル誘導体基、水酸基、シリル基などのケイ素含有基が好ましい。
【0039】
構造単位(a4)を与える単量体としては、たとえばアクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸などの一塩基性カルボン酸;マレイン酸、フマル酸などの二塩基性カルボン酸およびそのモノアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリイソプロペニルオキシシラン、ビニルメチルジイソプロペニルオキシシラン、トリイソプロペニルオキシシリルエチルビニルエーテル、トリイソプロペニルオキシシリルプロピルビニルエーテル、トリイソプロペニルオキシシリルブチルビニルエーテル、ビニルトリス(ジメチルイミノオキシ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルイミノオキシ)シラン、ビニルメチルビス(ジメチルイミノオキシ)シラン、ビニルジメチル(ジメチルイミノオキシ)シラン、トリス(ジメチルイミノオキシ)シリルエチルビニルエーテル、メチルビス(ジメチルイミノオキシ)シリルエチルビニルエーテル、トリス(ジメチルイミノオキシ)シリルブチルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(ジメチルイミノオキシ)シラン、アリルトリメトキシシランなどのシリル基含有ビニル単量体;ブテンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ジハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基含有単量体などの1種または2種以上があげられる。
【0040】
なかでも、金属ニッケル表面の水酸基との水素結合力が良好な点から、一塩基性カルボン酸または二塩基性カルボン酸およびそのモノアルキルエステルが好ましく、特にアクリル酸やクロトン酸、ビニル酢酸などの一塩基性カルボン酸が好ましい。
【0041】
構造単位(a4)を含む場合、含フッ素共重合体(A)における構造単位(a4)の含有割合は、多くなると撥水性に劣る傾向がある。この観点から、構造単位(a4)の含有割合は、0〜2モル%、さらには0〜1モル%、特に0.5〜1.0モル%が好ましい。
【0042】
好ましい具体的な含フッ素共重合体(A)としては、たとえばテトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/マレイン酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/マレイン酸共重合体、テトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/マレイン酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/マレイン酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/マレイン酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/マレイン酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/マレイン酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/フマル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/フマル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/フマル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/フマル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/フマル酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/フマル酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/フマル酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/フマル酸モノエチル共重合体、テトラフルオロエチレン/酢酸ビニル/フマル酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/フマル酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/ピバリン酸ビニル/フマル酸モノオレイル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシエチルビニルエーテル/バーサティック酸ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサティック酸ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/安息香酸ビニル/バーサティック酸ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシエチルビニルエーテル/安息香酸ビニル/バーサティック酸ビニル/クロトン酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサティック酸ビニル/アクリル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/安息香酸ビニル/バーサティック酸ビニル/アクリル酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサティック酸ビニル/ビニル酢酸共重合体、テトラフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/安息香酸ビニル/バーサティック酸ビニル/ビニル酢酸共重合体などのTFE系共重合体;クロロトリフルオロエチレン/ヒドロキシエチルビニルエーテル/バーサティック酸ビニル共重合体などの1種または2種以上があげられる。
【0043】
本発明で用いる含フッ素共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、5000〜20000、好ましくは10000〜20000である。数平均分子量が大きくなると溶剤溶解性が低下する傾向にあり、小さくなると耐候性に問題が生じる傾向にある。
【0044】
またガラス転移温度(Tg)は、10〜60℃、さらには電極作製の際の作業性が良好な点から20〜40℃であることが好ましい。
【0045】
本発明で用いる含フッ素重合体(A)は、水素吸蔵合金の成分であるニッケルとの親和性が良好であり、水素吸蔵合金粒子に撥水性を長時間付与することができる。
【0046】
(B)結着剤
本発明において用いる結着剤(B)としては、従来からニッケル水素二次電池の水素吸蔵合金層の形成に用いられている公知の材料、たとえば特開2002−15731号公報などに記載されている結着剤が採用できる。
【0047】
具体的には、たとえばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系結着剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどの親水性合成樹脂系結着剤;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂系結着剤;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチロールなどのハイドロカーボン系結着剤;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などのゴム系結着剤が例示できる。
【0048】
これらのうち、非フッ素系結着剤を用いる場合は、含フッ素共重合体(A)がもつ撥水効果が顕著に発現する。また、フッ素樹脂系結着剤を用いる場合については、フッ素樹脂自身が撥水性をもっているが、含フッ素共重合体(A)を添加することにより、より一層電極表面上に撥水性を発現させやすくなる。
【0049】
(C)水素吸蔵合金粒子
本発明において用いる水素吸蔵合金としては、従来からニッケル水素二次電池の水素吸蔵合金層の形成に用いられている公知の材料、たとえば特開平02−291665号公報、特開2008−210554号公報などに記載されている合金が採用できる。
【0050】
具体的には、たとえばAB5型と呼ばれているミッシュメタル(Mm)を主原料とする合金やAB2型と呼ばれているTi−Zr−Mn−V、Ti−Zr−Cr−FeTi−Cr−VやBCC型と呼ばれるTi−Cr−Vなどが例示できる。これらのうち、サイクル特性等の電池特性が良好な点から、ミッシュメタル系の水素吸蔵合金が好ましい。
【0051】
ミッシュメタル系水素吸蔵合金(AB5型)は、CaCu5構造を有するLaNi5系合金のLaの一部をCe、Pr、Ndなどの希土類金属元素で置換した混合物であり、代表例として、Ce/La/Nd/他の希土類金属元素(=45/30/5/20重量%)があげられる。また、Mm、Ni、Co、AlおよびMnをモル比でMm/Ni/Co/Al/Mnが1.0/3.3/0.9/0.2/0.6で合金化した物や1.0/4.1/0.3/0.35/0.3で合金化した物、1.0/3.4/0.8/0.2/0.6で合金化した物も知られている。
【0052】
水素吸蔵合金は粒子(粉末)の形態で使用される。粒子径は通常、40〜300μm程度である。
【0053】
本発明に用いる水素吸蔵合金層(I)における、含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)の含有量は、水素吸蔵合金層(I)中(以下同様)において、含フッ素共重合体(A)0.1〜5.0質量%、結着剤(B)0.5〜5.0質量%および水素吸蔵合金粒子(C)90〜97質量%であることが好ましい。また、含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)の合計量は5質量%以下、さらには0.6〜4.0質量%であることが電池特性の向上の点から好ましい。
【0054】
含フッ素共重合体(A)は、サイクル特性、負荷特性が良好な点から5.0質量%以下、さらには1.0質量%以下であることが好ましく、また、電極の表面を均一に覆うことができる点から0.1質量%以上、さらには0.5質量%以上であることが好ましい。
【0055】
結着剤(B)は、その種類や分子量などによって異なるが、一般に、電池特性が良好な点から5.0質量%以下、さらには3.0質量%以下であることが好ましく、また、接着性が良好な点から0.5質量%以上、さらには1.0質量%以上であることが好ましい。
【0056】
(II)導電性支持体
本発明において用いる導電性支持体(集電体)としては、従来からニッケル水素二次電池の水素吸蔵合金電極(負極)に用いられている公知の材料の支持体、たとえば特開2002−260646号公報などに記載されている支持体が採用できる。
【0057】
具体的には、たとえば繊維状ニッケル、発泡ニッケルなどの三次元導電性支持体;パンチングメタル、エクスパンドメタル、金属ネットなどの二次元導電性支持体などが例示できる。
【0058】
本発明の水素吸蔵合金電極は、種々の方法で導電性支持体(II)上に水素吸蔵合金層(I)を形成することにより製造できる。
【0059】
たとえば、
(1)含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)を溶媒の不存在下に所定量混合してペーストを調製し、導電性支持体に塗布するか圧着する方法;
(2)結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを溶媒を用いて混合してペーストを調製し、導電性支持体に塗布するか圧着して水素吸蔵合金層を形成し、ついで、この水素吸蔵合金層に含フッ素共重合体(A)を塗布する方法;
(3)結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを溶媒を用いて混合してペーストを調製し、キャスト法や圧縮成形法で水素吸蔵合金シートを形成し、ついで、この水素吸蔵合金シートに含フッ素共重合体(A)を塗布または含浸した後、導電性支持体に貼付する方法
などが採用できる。
【0060】
これらの方法の中でも、方法(1)が、均一に含フッ素共重合体(A)を水素吸蔵合金粒子(C)上に塗布することができる点から好ましい。
【0061】
本発明はまた、本発明の水素吸蔵合金電極を負極とし、正極とアルカリ電解液を備えたニッケル水素二次電池にも関する。本発明のニッケル水素二次電池は、負極として本発明の水素吸蔵合金電極を用いるほかは、従来のニッケル水素二次電池と同様であり、正極、アルカリ電解液のほか、セパレータ、負極缶などの構成、材料なども従来公知のものが採用できる。
【0062】
正極としては、具体的には、たとえば水酸化ニッケルを充填したニッケル極が一般的である。このニッケル極は、表面にオキシ水酸化コバルト層が形成された水酸化ニッケル粉末を主成分とするペーストを発泡状ニッケルに充填することで作製できる。
【0063】
アルカリ電解液としては、たとえば水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムあるいはそれらの混合溶液などがあげられる。
【0064】
本発明のニッケル水素二次電池は、水素吸蔵合金層に撥水性に優れかつニッケルへの親和性が良好な含フッ素共重合体を含有させているため、良好な固体−液体−気体−3相界面状態が形成され、水素ガスの吸蔵・放出をスムーズに行うことができるので電池内圧の上昇を抑制でき、その結果、サイクル特性や負荷特性などの電池特性も向上する。
【実施例】
【0065】
つぎに合成例、実施例および比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
本発明において採用した測定方法は以下のとおりである。
【0067】
(数平均分子量)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:(株)東ソー製HLC−8320GPC)を用い測定を行う。
【0068】
(ガラス転移温度)
DSC(示差走査熱量計:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製のEXSTAR DSC7020)を用いて測定を行い、2ndrunの値をガラス転移温度(Tg)とする。
【0069】
(対水接触角)
自動接触角測定装置DSA100S(協和界面科学(株)製)を使用し純水0.5μLを電極に落とし8秒後の接触角を測定する。
【0070】
合成例1(含フッ素共重合体の合成)
容量6000mlのステンレス製オートクレーブに酢酸ブチル2891g、炭素数9のカルボン酸からなるバーサティック酸ビニル(VV9)638.0g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)156.7gを仕込み、5℃に冷却したのち減圧窒素置換の操作を3回繰り返した。最後に再度減圧してテトラフルオロエチレン481.7gを仕込んだ。撹拌下に65.0℃まで昇温し、過酸化物系重合開始剤(日本油脂(株)製のパーロイル355)を12.5g仕込み重合を開始した。同時にVV9の639.0gとHBVEの156.7gとの混合物を1.5時間かけて連続的に仕込んだ。その温度で開始剤を仕込んでから3時間反応させ、重合開始剤(パーロイル355)を12.5g追加で仕込んだ。さらにその温度で4時間反応させ、反応器内圧が1.4MPaG(14.5kgf/cm2G)から0.2MPaG(2.1kgf/cm2G)へ低下した時点で反応を停止した。重合収率は92.3%であった。得られた含フッ素共重合体を19F−NMR、1H−NMRおよび元素分析法で分析したところ、テトラフルオロエチレンが45モル%、VV9が39モル%およびHBVEが16モル%からなる含フッ素共重合体であり、数平均分子量(Mn)は1.5×104で、ガラス転移温度(Tg)は35℃であった。
【0071】
合成例2〜8
表1に記載した単量体を使用して共重合したほかは実施例1と同様にして含フッ素共重合体を合成した。得られた含フッ素共重合体の組成(モル%)、数平均分子量(Mn)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0072】
なお、表1の単量体の略号は、以下の化合物である。
TFE:テトラフルオロエチレン
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル
HEVE:4−ヒドロキシエチルビニルエーテル
VBz:安息香酸ビニル
VV9:炭素数9の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(シェル化学社製のベオバ9)
CA:クロトン酸
VA:ビニル酢酸
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1
(1)水素吸蔵合金粉末の調製
MmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6(モル比。Mmはミッシュメタルである)となるように市販の各金属元素Mm、Ni、Co、AlおよびMnを秤量して所定の比率で混合した。この混合物を高周波溶解炉に投入して溶解させた後、鋳型に流し込み、冷却してMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金の塊(インゴット)を作製した。この水素吸蔵合金の塊を粗粉砕した後、不活性ガス雰囲気中で平均粒径が50μm程度になるまで機械的に粉砕して、水素吸蔵合金粉末を調製した。なお、得られた水素吸蔵合金粉末の平均粒径はレーザ回折法により測定した値である。
【0075】
(2)水素吸蔵合金電極の作製
工程(1)で調製した水素吸蔵合金粉末98質量部に、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)、合成例1で合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を0.5質量部(固形分)加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0076】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、125.0度であった。
【0077】
実施例2〜8
合成例2〜8でそれぞれ合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を用いたほかは実施例1と同様に混合物を混練して水素吸蔵合金層形成用ペーストを調製した。このペーストをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し、90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製し、水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べた。結果を表2に示す。
【0078】
実施例9
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末98.5質量部に、結着剤としてPTFEのディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行った。
【0079】
ついで、得られた水素吸蔵合金電極に合成例1で合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を厚さ15μm程度になるように均一に塗布した後、再度、90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0080】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、125.6度であった。
【0081】
実施例10
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末97.9質量部に、結着剤としてSBR水性エマルション(JSR(株)製TRD2001。固形分48.0質量%)を1.5質量部(固形分)、合成例1で合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を0.5質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を0.1質量部加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0082】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、126.1度であった。
【0083】
実施例11
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末98.4質量部に、結着剤としてPTFEのディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)、合成例1で合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を0.1質量部加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0084】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、123.9度であった。
【0085】
実施例12
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末93.5質量部に、結着剤としてPTFEのディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)、合成例1で合成した含フッ素共重合体(33質量%の酢酸ブチル溶液としたもの)を5.0質量部加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0086】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、128.9度であった。
【0087】
比較例1
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末98.5質量部に、結着剤としてPTFEのディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0088】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、63.5度であった。
【0089】
比較例2
実施例1の工程(1)で調製したMmNi3.4Co0.8Al0.2Mn0.6からなる水素吸蔵合金粉末98.5質量部に、結着剤としてPTFEのディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を1.5質量部(固形分)加え、さらに純水を加えて混練して水素吸蔵合金層形成用スラリーを調製した。この水素吸蔵合金層形成用スラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布し90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行った。
【0090】
ついで、得られた水素吸蔵合金電極にPTFEディスパージョン(ダイキン工業(株)製のD−210C)を厚さ15μm程度になるように均一に塗布した後、再度、90℃の恒温槽で水分がなくなるまで乾燥を行い、水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0091】
得られた水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金層表面の対水接触角を調べたところ、105.0度であった。
【0092】
実施例13
実施例1で作製した本発明の水素吸蔵合金電極を330mm×30mmの大きさに裁断して負極とし、焼成ニッケル板(270mm×30mm)を正極とし、正極と負極の間にセパレータとして厚さ130μmの親水化処理を施したポリプロピレン不織布を挟んで渦巻状に巻回した後、SUBC(直径22.5mm、全長43mm)の大きさの電池缶に収容した。ついで、6N−水酸化カリウム水溶液を電池缶内に充填した後密封して、本発明のニッケル水素二次電池を作製した。
【0093】
このニッケル水素二次電池について、サイクル特性および負荷特性をつぎの要領で調べた。結果を表2に示す。
【0094】
(負荷特性)
1Cの電流値で1.5時間充電した後、3.0Cの電流値で終止電圧1.0Vまで放電させたときの放電容量を測定する。評価は、比較例3の放電容量を100とした指数で行う。
【0095】
(サイクル特性)
1Cの電流値で1.5時間充電した後、放電容量を測定しながら1Cの電流値で終止電圧1.0Vまで放電させる充放電サイクルを1サイクルとする。放電容量が初期の放電容量の80%以下になるまでのサイクル数を計数し、比較例3のサイクル数を100とした指数で評価する。
【0096】
実施例14〜24および比較例3〜4
実施例2〜12および比較例1〜2でそれぞれ製造した水素吸蔵合金電極を用いたほかは実施例13と同様にしてニッケル水素二次電池を作製し、そのサイクル特性および負荷特性を調べた。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2の結果から、すべての実施例が、比較例3および4に比べて明らかに負荷特性およびサイクル特性のいずれにおいても向上していることが分かる。また、PTFEのディスパージョンを水素吸蔵合金層に後から塗布した電極を用いた比較例4については、水素吸蔵合金の粒子の一部が均一に覆われていないため、全体として撥水性がわるくなり、含フッ素共重合体Aを水素吸蔵合金層に後から塗布した電極を用いた実施例9に比べて負荷特性とサイクル特性が向上しなかったものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素パーハロオレフィンに由来する構造単位(a1)、ならびにビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)を含む含フッ素共重合体(A)と結着剤(B)と水素吸蔵合金粒子(C)とを含む水素吸蔵合金層(I)を導電性支持体(II)上に有する水素吸蔵合金電極。
【請求項2】
含フッ素共重合体(A)の含フッ素パーハロオレフィンに由来する構造単位(a1)が、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位および/またはクロロトリフルオロエチレンに由来する構造単位である請求項1記載の水素吸蔵合金電極。
【請求項3】
含フッ素共重合体(A)のビニルエーテルに由来する構造単位(a2)および/またはビニルエステルに由来する構造単位(a3)が、非フッ素系単位である請求項1または2記載の水素吸蔵合金電極。
【請求項4】
含フッ素共重合体(A)のビニルエーテルに由来する構造単位(a2)が、水酸基含有ビニルエーテルに由来する構造単位である請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
【請求項5】
含フッ素共重合体(A)が、さらに、水素結合力を有する官能基、または金属ニッケル表面の水酸基に対して結合力を有する官能基を有する単量体に由来する構造単位(a4)を含む請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
【請求項6】
含フッ素共重合体(A)の数平均分子量が10000〜20000である請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極を負極とし、正極およびアルカリ電解液を備えるニッケル水素二次電池。

【公開番号】特開2011−198510(P2011−198510A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61134(P2010−61134)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】