説明

水耕栽培装置

【課題】槽に敷き渡されるシート部材の端縁部を容易かつ確実に係止することができる水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】槽1の側壁3のような支持板材の上縁に、シート部材2の端縁部が巻かれ、挟持部材4により支持板材3に係止される。挟持部材4は、弾性合成樹脂製で、一対の板状脚部5と、当該脚部の基端部間を接続するばね部6と、受け入れ空間7とを具備する。ばね部6は、脚部5の基端部間を間隔を置いて接続し、脚部5の先端側相互間を接近方向に付勢する。受け入れ空間7は、脚部5とばね部6とに囲まれて形成される。さらに、脚部5は、基端から先端に向かうにしたがって閉じるように互いに接近し、先端よりやや基端側の位置で縊れ、当該縊れ部8から先端に向かって開くように互いに離れる方向に屈折して導入部9を形成し、先端は断面ほぼ円形に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜などの植物を水耕栽培(養液栽培)によって育成し、効率的に収穫を得るための水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水耕栽培装置として、上部が開放した槽内に栽培床と養液が収容されると共に、遮水シート又は透水防根シートのようなシート部材が敷き渡され、当該シート部材の端縁部が槽の側壁の上縁を越えて槽外へ延出するように設けられる構造のものが知られている。
その一例として、特許文献1に記載されたものが挙げられる。これを図5に示す。この水耕栽培装置は、養液貯留槽21内の養液に対して浮くことのできる浮き板22と、吸水性シート23と、透水性を有するが根の通過を阻止できる透水防根シート24と、植物支持部材25とを備えている。浮き板22は槽21内の養液中で浮いた状態に配置され、この浮き板22の上に吸水性シート22が配置され、当該吸水性シート22の両端部は養液中に浸漬されている。吸水性シート23の上に透水防根シート24が配置され、その両端部は槽21の側壁の上縁に掛けられている。透水防根シート24上にロックウール等からなる植物支持部材25が載置される。植物支持部材25に植物Pが植え付けられる。
上記の例では、透水防根シート24としてのシート部材が槽に掛け渡されるが、これとは別に、槽の防水目的として槽の底部に遮水シートとしてのシート部材が敷き渡されることがある。
上記いずれの場合にも、シート部材の端縁部は、槽の側壁の上縁を越えて槽外へ延出するのみで、固定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−159410号公報 (図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の水耕栽培装置おいては、シート部材の端縁部を固定する手段が講じられていないので、シート部材が不安定で、予期しないめくれや破損が生じるおそれがある。
したがって、この出願に係る発明は、槽に敷き渡される遮水シートや透水シートのようなシート部材の端縁部を容易かつ確実に係止することができる水耕栽培装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る水耕栽培装置は、上部が開放した槽1内に栽培床22と養液Wが収容されると共に、透水防根シート2又は遮水シート12のようなシート部材が敷き渡され、当該シート部材の端縁部が槽1の側壁3の上縁を越えて槽1外へ延出するように設けられる。槽1の板状の側壁3のような支持板材が、シート部材2,12を支持する。シート部材2,12の端縁部は、支持板材3の上縁に巻かれ、挟持部材4により支持板材3に係止される。挟持部材4は、シート部材2,12もろとも支持板材3の上縁を所定の長さにわたって挟持することによって、シート部材2,12を支持板材3の上縁部に係止する。挟持部材4は、弾性合成樹脂製で、一対の脚部5と、当該脚部の基端部間を接続するばね部6と、脚部5間に支持板材3の上縁部を受け入れる受け入れ空間7とを具備する。一対の脚部5は、板状で、支持板材3の上縁に沿うように所定長さにわたって延びる。ばね部6は、脚部5の基端部間を間隔を置いて接続し、脚部5の先端側相互間を接近方向に付勢する。受け入れ空間7は、脚部5とばね部6とに囲まれて形成される。さらに、脚部5は、基端から先端に向かうにしたがって閉じるように互いに接近し、先端よりやや基端側の位置で縊れ、当該縊れ部8から先端に向かって開くように互いに離れる方向に屈折して導入部9を形成し、先端は断面ほぼ円形に形成される。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の水耕栽培装置によれば、支持板材3の上縁部に掛けられたシート部材2,12を、当該上縁部もろとも、挟持部材4の脚部の外開きの導入部9にあてがい、これを押し込むだけで、極めて容易に、しかも確実にシート部材2,12を支持板材3に係止し、シート部材2,12の予期しないめくれや破損を防止することができる。装置の組立・分解も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る水耕栽培装置の断面図である。
【図2】図1の水耕栽培装置における挟持部材の断面図である。
【図3】図1の水耕栽培装置における挟持部材の一部の斜視図である。
【図4】本発明に係る水耕栽培装置の他の実施形態の断面図である。
【図5】従来の水耕栽培装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1に示す水耕栽培装置においては、養液Wを収容する槽1に、透水防根シート2としてのシート部材が掛け渡される。槽1は、上方に開放した板状の側壁3に囲まれ、シート部材2の縁部は、支持板材である側壁3の上縁に巻くように掛けられ、挟持部材4により支持板材3に係止される。挟持部材4は、シート部材2もろとも支持板材3の上縁を所定の長さにわたって挟持することによって、シート部材2を支持板材3の上縁部に係止する。
【0009】
挟持部材4は、支持板材3の縁部に沿うことができるように、細長に構成され、硬質ポリ塩化ビニル樹脂のような弾性合成樹脂で一体成型される。長尺物を、使用に当たって、適宜寸法に切断するように構成してもよい。挟持部材4は、一対の脚部5と、当該脚部5の基端部間を接続するばね部6と、脚部5間に支持板材3の上縁部を受け入れる受け入れ空間7とを具備する。
【0010】
一対の脚部5は、板状で、支持板材3の上縁に沿うように所定長さ延びる。ばね部6は、脚部5の基端部間を間隔を置いて接続し、脚部5の先端側相互間を接近方向に付勢する。受け入れ空間7は、脚部5とばね部6とに囲まれて形成される。さらに、脚部5は、基端から先端に向かうにしたがって閉じるように互いに接近し、先端よりやや基端側の位置で縊れ、当該縊れ部8から先端に向かって開くように互いに離れる方向に屈折して導入部9を形成し、先端は断面ほぼ円形に形成される。
【0011】
図4に示す水耕栽培装置においては、養液Wを収容する槽1に、図1における透水防根シート2に代えて、あるいはこれと併せて、遮水シート12としてのシート部材が掛け渡される。この場合、遮水シート12は、槽1の遮水壁を構成する。遮水シート12は、図1に示す水耕栽培装置における透水防根シート2と同様、挟持部材4により支持板材3に係止される。
【0012】
なお、このシート部材32の係止方式は、上部が開放した槽1内に栽培床22と養液Wが収容されると共に、透水防根シート2又は遮水シート12のようなシート部材が敷き渡され、当該シート部材の端縁部が槽1の側壁3の上縁を越えて槽1外へ延出するように設けられる構造の水耕栽培装置に広く適用できる。シート部材2,12を係止するための支持板材は、槽1の側壁3に限らない、例えば、側壁の外側に、これと平行に立ち上げられる板材(図示せず)であってもよい。
【0013】
いずれの場合も、支持板材3の上縁部にシート部材32の端縁部を巻き込んで、挟持部材4の導入部9をあてがい、脚部5を弾性的に押し開きつつ受け入れ空間7内へ押し込むことにより、シート部材2,12を容易に係止することができる。脚部5の先端縁に指を掛けて引き上げることにより、挟持部材4を取り外すことで、容易にシート部材2,12の係止を解くことができる。
【符号の説明】
【0014】
1 槽
2 透水防根シート(シート部材)
3 側壁(支持板材)
4 挟持部材
5 脚部
6 ばね部
7 受け入れ空間
8 当接部
9 導入部
12 遮水シート(シート部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開放した槽内に栽培床と養液が収容されると共に、遮水シート又は透水防根シートのようなシート部材が敷き渡され、当該シート部材の端縁部が槽の側壁の上縁を越えて槽外へ延出するように設けられる水耕栽培装置であって、
前記シート部材の端縁部は、槽の板状の側壁又は槽の側壁とほぼ平行に設けられた板材のような支持板材の上縁に巻かれ、かつシート部材もろとも支持板材の上縁を所定の長さにわたって挟持する挟持部材により支持板材に係止され、
前記挟持部材は、弾性合成樹脂製で、前記支持板材の上縁に沿うように延びる一対の板状脚部と、当該脚部の基端部間を間隔を置いて接続し脚部の先端側相互間を接近方向に付勢するばね部と、脚部間に支持板材の上縁部を受け入れることができるように脚部とばね部とに囲まれて形成された受け入れ空間とを具備し、
前記脚部は、基端から先端に向かうにしたがって閉じるように互いに接近し、先端よりやや基端側位置で縊れ、当該縊れ部から先端に向かって開くように互いに離れる方向に屈折して導入部を形成し、先端は断面ほぼ円形に形成されることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記挟持部材は、硬質ポリ塩化ビニル樹脂で形成されることを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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