説明

水蒸気発生装置

【課題】 水蒸気発生装置から負荷設備へ供給する水蒸気中にミストが混入することを防止する。
【解決手段】 燃焼室1の上面2と周面3を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンク4と、水タンク4の上方に連接された水補給用の補助タンク5と、補助タンク5の上部に形成された水供給口7および水蒸気排出口8と、補助タンク5の底部から水タンク4に水を供給する水供給管9と、水タンク4の上部に形成される水蒸気滞留空間10から補助タンク5の上部に形成される水蒸気滞留空間11に水蒸気を排出する水蒸気管12を備えた水蒸気発生装置において、水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層20を、前記補助タンク5の水面または水中、あるいは水タンク4の水中において水平方向に配置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気改質器などに水蒸気を供給する小型の水蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池などで用いられる水素リッチな改質ガスは、都市ガスなどの原料ガスを水蒸気で改質する改質器で生成される。改質器には原料ガスと水蒸気の混合物が供給されるが、このうち水蒸気は通常水蒸気発生装置から供給される。水蒸気発生装置は燃料をバーナで燃焼させて高温の燃焼ガスを生成し、その燃焼ガスで水を加熱して水蒸気を発生させるようになっている。
【0003】
水蒸気発生装置には種々のタイプが存在するが、家庭用燃料電池システムなどに使用されるものは小型で高効率なものが要求される。そのような水蒸気発生装置として本出願人は先に水蒸気発生用の水タンクと、水タンクの上方に連接された水補給用の補助タンクを備えた装置を出願した(特願2007−287514号)。
【0004】
図7は前記水蒸気発生装置であり、円筒状の燃焼室1の上面2と周面3を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンクと4、水タンク4の上方に連接された水補給用の補助タンク5を備えている。補助タンク5の上部には水供給口7と水蒸気排出口8が形成され、補助タンク5の底部から水タンク4に水を供給する水供給管9が設けられ、水タンク4の上部に形成される水蒸気滞留空間10から補助タンク5の上部に形成される水蒸気滞留空間11に水蒸気を排出する水蒸気管12が設けられている。なお、水タンク4と補助タンク5の周囲はケーシング6を構成している。
【0005】
燃焼室1には燃焼用のバーナ13が配置され、バーナ13の入口側にはエジェクターからなる燃料空気混合器14が連結されている。混合器14には燃料ガス供給用配管15と一次空気供給用配管16が接続され、燃焼室1のバーナ13付近に二次空気供給用配管17が接続される。
【0006】
水供給口7から供給される水は補助タンク5に落下し、そこから水供給管9を経て水タンク4に流入する。水タンク4には図示しない水位検出器が設けられ、水位検出器の検出水位が予め設定された値になるように水供給口7から供給される水供給量が自動制御される。燃焼室1のバーナ13で燃料ガスが燃焼されると、高温の燃焼ガスが生成する。生成した燃焼ガスは、燃焼室1の上面2と周面3を介して水タンク4の収容水と熱交換して排ガス用配管18から外部に排出される。なお、図7では補助タンク5の水面がかなり高いレベルに描かれているが、この水面レベルは水タンク4の一時的な蒸発変動により上下に移動し、実際に運転時には図示した状態よりかなり低レベルになることもある。
【0007】
燃焼加熱室1の上面2と周面3からの伝熱により水タンク4内の収容水が加熱されると、その一部が蒸発して水蒸気を生成する。生成した水蒸気は水タンク4の上部に形成される水蒸気滞留空間10に一時的に滞留し、そこから水蒸気管12を通して補助タンク5の上部に形成される水蒸気滞留空間11に流出し、さらに水蒸気排出口8から改質器等の負荷設備に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水供給口7から供給される水にはカルキ等の不純物が含まれることがある。また水タンク4から水中に鉄分等の不純物が溶け出すこともある。ただし、水タンク4の水が加熱されて生成する水蒸気にはそれら不純物は含まれないので、純度の高い清浄な水蒸気を負荷設備に供給することができる。
【0009】
しかし、水蒸気排出口から流出する水蒸気中に僅かなミスト(水滴)が同伴する場合があり、通常、同伴したミスト中には前記不純物が混入するので、負荷設備には不純物を含む水蒸気が供給されることになる。このような不純物を含む水蒸気を長期間負荷設備に供給すると、負荷設備の内部または負荷設備への供給配管等に部分閉塞などの障害が発生し、系内の圧力上昇などを引き起こし負荷設備の運転不具合の原因にもなる。
【0010】
図7に示す水蒸気発生装置において、水蒸気排出口8から流出する水蒸気中にミストが同伴する原因を調べるため、種々の実験を行った。その結果、次のような原因が存在することが判明した。
【0011】
先ず第1の原因として、補助タンク5内部において水蒸気にミストが混入する場合があることが分かった。水蒸気発生装置の運転中は、補助タンク5の水蒸気滞留空間11には水蒸気が充満状態で滞留しているが、補助タンク5下部の滞留水面に水供給口7から水が落下する際に、その落下衝撃による水面の乱れでミストが発生する。発生したミストは水蒸気滞留空間11の水蒸気に混入し、水蒸気排出口8からはミストを同伴した水蒸気が排出することになる。
【0012】
第2の原因として、水タンク4が燃焼室1からの伝熱で加熱される際に、収容された水に突沸現象が発生した場合に、水蒸気滞留空間に滞留する水蒸気にミストが混入しやすいことが分かった。すなわち突沸により水タンク4の水面が乱されてミストが発生し、そのミストが水蒸気滞留空間に滞留する水蒸気に混入し、そのミストを混入した水蒸気が水蒸気管12から補助タンク5に流入し、さらにそれが水蒸気排出口8から排出することになる。
【0013】
本発明は上記知見を基に、これらミスト混入問題を解決した新しい水蒸気発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決する第1の発明は、燃焼室の上面と周面を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンクと、水タンクの上方に連接された水補給用の補助タンクと、補助タンクの上部に形成された水供給口および水蒸気排出口と、補助タンクの底部から水タンクに水を供給する手段と、水タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間から補助タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間に水蒸気を排出する水蒸気管を備えた水蒸気発生装置において、水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層を、前記補助タンクの水面または水中に水平方向に配置したことを特徴とする(請求項1)。
【0015】
前記課題を解決する第2の発明は、燃焼室の上面と周面を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンクと、水タンクの上方に連接された水補給用の補助タンクと、補助タンクの上部に形成された水供給口および水蒸気排出口と、補助タンクの底部から水タンクに水を供給する手段と、水タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間から補助タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間に水蒸気を排出する水蒸気管を備えた水蒸気発生装置において、水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層を、前記燃焼室の上面に接する前記水タンクの底部に水平方向に配置したことを特徴とする(請求項2)。
【0016】
前記課題を解決する第3の発明は、燃焼室の上面と周面を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンクと、水タンクの上方に連接された水補給用の補助タンクと、補助タンクの上部に形成された水供給口および水蒸気排出口と、補助タンクの底部から水タンクに水を供給する手段と、水タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間から補助タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間に水蒸気を排出する水蒸気管を備えた水蒸気発生装置において、前記燃焼室の上面に沿って断熱層を設けたことを特徴とする(請求項3)。
【0017】
前記課題を解決する第4の発明は、燃焼室の上面と周面を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンクと、水タンクの上方に連接された水補給用の補助タンクと、補助タンクの上部に形成された水供給口および水蒸気排出口と、補助タンクの底部から水タンクに水を供給する手段と、水タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間から補助タンクの上部に形成される水蒸気滞留空間に水蒸気を排出する水蒸気管を備えた水蒸気発生装置において、前記水蒸気排出口の内部または入口に、または前記水蒸気管の内部または出口に、水および水蒸気が透過可能な多孔層を配置したことを特徴とする(請求項4)。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置において、前記多孔層は金属メッシュ、金属綿または不織布で形成することができる。(請求項5)。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記水蒸気発生装置において、前記多孔層の空隙率を90%〜95%とすることができる(請求項6)。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置において、前記多孔層を0.05〜0.5mmの線径を有する細線で構成することができる(請求項7)。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置は、原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器への水蒸気供給用とすることができる(請求項8)。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明は、水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層を、補助タンクの水面または水中に水平方向に配置したことを特徴とする。このように構成すると、補助タンク上部の水供給口から水が水面に落下しても、水面または水中に配置された多孔層により、落下衝撃による水面の乱れが緩和もしくは抑制されるので、補助タンク内でミストが発生することを防止できる。また補助タンク内の水が水タンクからの伝熱により加熱されて多少の水蒸気が発生した場合は、多孔層が水蒸気を上方に透過できるので、発生した水蒸気は多孔層を透過して補助タンクの上方に形成される水蒸気滞留空間に放出される。
【0023】
第2の発明は、水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層を、前記燃焼室の上面に接する前記水タンクの底面に水平方向に配置したことを特徴とする。このように構成すると、燃焼室の上面からの伝熱により水タンク内に水の突沸現象が発生したとしても、そのような突沸による水面の乱れは多孔層により緩和もしくは抑制されるので、ミスト発生を防止できる。そのため水タンクの水蒸気滞留空間に滞留する水蒸気中にミストが混入することもない。また、水タンクの内部に生成する水蒸気は多孔層を上方向に透過できるので、水蒸気滞留空間への水蒸気上昇が妨げられることはない。さらに、水タンク内の水が加熱されると上下方向に旋回する対流が発生するが、多孔層は水を透過できるので、その対流を多孔層が妨げることはない。
【0024】
第3の発明は、燃焼室の上面に沿って断熱層を設けたことを特徴とする。このように構成すると、燃焼室の上面から水タンクへの伝熱を抑制できるので、燃焼室の上面からの伝熱により水タンク内に水の突沸現象が発生することを防止できる。なお水タンクの加熱は主として燃焼室の側面からの伝熱により行われる。
【0025】
第4の発明は、水蒸気排出口の内部または入口に、または前記水蒸気管の内部または出口に、水および水蒸気が通過可能な多孔層を配置したことを特徴とする。このように構成すると、仮に水タンクまたは補助タンクの水蒸気滞留空間の水蒸気中にミストが混入したとしても、多孔層に形成されている多数の分岐通路を水蒸気が透過する際に、ミストは多孔層に補足されるので、水蒸気排出口から水蒸気に同伴してミストが排出することを防止できる。また多孔層は水蒸気を透過できるので、水蒸気管または水蒸気排出口を流通する水蒸気が多孔層によってその透過を妨げられることはない。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置において、前記多孔層を金属メッシュ、金属綿または不織布のいずれかで形成することができる。これらの材料で形成した多孔層は容易に高空隙率に形成できるので、高い水面乱れ防止効果やミスト補足効果を得ることができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記水蒸気発生装置において、空隙率が90%〜95%の多孔層を用いることができる。このような高空隙率の多孔層を用いることにより水面乱れ防止効果やミスト補足効果を著しく高くできる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置において、前記多孔層を0.05〜0.5mmの線径を有する細線で構成することができる。このような範囲の線径で多孔層を構成すると、容易に高空隙率の多孔層を作ることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記いずれかの水蒸気発生装置は、原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器への水蒸気供給用とすることができる。改質器内には水蒸気改質触媒やシフト触媒が多段に充填されているので、本発明の水蒸気発生装置から供給される水蒸気がそれら触媒を通過したとしても、水蒸気にミストが同伴されていないので、触媒が不純物で閉塞することを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の水蒸気発生装置の1例を模式的に示す縦断面図。
【図2】本発明の水蒸気発生装置の他の例を模式的に示す縦断面図。
【図3】本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図。
【図4】本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図。
【図5】本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図。
【図6】本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図。
【図7】本発明の基礎となる水蒸気発生装置を模式的に示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面に基づいて本発明の水蒸気発生装置の最良の形態を説明する。図1は本発明の水蒸気発生装置の1例を模式的に説明する縦断面図である。なお、図7に示した本発明の基礎となる水蒸気発生装置と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する(後述する他の実施形態も同様)。
【0032】
前述のように水供給口7から落下する水により補助タンク5の水面に乱れ(または変化)が生じ、それによって水面にミストが発生し、水蒸気排出口8から水蒸気にミストが同伴することがある。本実施形態では、このような補助タンク5の水面の乱れ等を緩和もしくは抑制するため、補助タンク5の水面上(もしくは水面付近)に偏平な多孔層20が水平方向に配置される。多孔層20はステンレス線などの金属線をたわし状に整形したもの(市販品としてSUS−WOOLがある)、天然または合成繊維で作られたフェルトや不織布、或いは金属メッシュ等で形成することができる。
【0033】
水面の乱れ等の緩和もしくは抑制機能を高くするには空隙率が高い多孔層20を使用することが重要であり、実用上は90%〜95%程度の空隙率の範囲が好ましく、そのような多孔層20としては例えばSUS−WOOLで容易に形成することができる。90%〜95%程度の空隙率を有する多孔層20を形成するには、原料となる線材の口径(線径)を0.05〜0.5mm程度の範囲で選択することが望ましい。また水面の乱れ等の緩和もしくは抑制機能を高めるには、前記のように高い空隙率に加えて嵩密度の低いものが好ましい。実用上好ましい嵩密度の範囲は0.4〜0.8程度の範囲である。
【0034】
図1に示すような偏平形状の多孔層20は、水面上または水面付近において水平方向に配置しやすい。多孔層20を水面上または水面付近に水平方向に配置する際に、SUS−WOOLのように水より比重の大きい材料で形成した多孔層20を用いる場合は、多孔層20が水中に沈まないようにその周縁部に沿って細長い発砲体などのフロートを連結または接着して浮かすことができ、不織布のように水より比重の小さい材料で形成した多孔層20を用いる場合は、そのまま水面に浮かせればよい。
【0035】
図2は本発明の水蒸気発生装置の他の例を模式的に示す縦断面図である。本実施形態では、水供給口7から落下する水による補助タンク5の水面の乱れ等を緩和もしくは抑制するために、補助タンク5の水中に、図1の例と同様な多孔層20が水平方向に配置されている。補助タンク5の水位が比較的低い場合は、このように多孔層20をタンク下方に配置しても、図1の例と同様な水面の乱れ等を緩和もしくは抑制する効果がある。
【0036】
本実施形態において、多孔層20を水中に水平方向に配置する際に、SUS−WOOLのように水より比重の大きい材料で形成した多孔層20を用いる場合は、そのまま水中に沈めて配置すればよく、不織布のように水より比重の小さい材料で形成した多孔層20を用いる場合はその周縁部に複数の小さい錘を連結または接着して水中に沈めればよい。
【0037】
図3は本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図である。前記のように、燃焼室1の上面2から水タンク4への過大な伝熱により、水タンク4の収容水に突沸現象が発生することがある。水タンク4内の収容水に突沸が発生すると、収容水または水面が乱されてミストが発生し、そのミストが上方の水蒸気滞留空間10から水蒸気管12を経て補助タンク5の水蒸気滞留空間11に流出する。本実施形態はこの突沸による収容水の乱れを防止するため、燃焼室1の上面2に接する水タンク4の底部付近の水中に図1の例と同様な多孔層20を水平方向に配置している。
【0038】
水タンク4の収容水に突沸が生じた場合、その突沸による収容水の乱れは水平方向に配置した多孔層20により緩和若しくは抑制されるので、水タンク4におけるミスト発生が防止される。本実施形態においても図2の例と同様に、多孔層20を水中に水平方向に配置する際に、SUS−WOOLのように水より比重の大きい材料で形成した多孔層20を用いる場合は、そのまま水中に沈めて配置すればよく、不織布のように水より比重の小さい材料で形成した多孔層20を用いる場合はその周縁部に複数の小さい錘を連結または接着して水中に沈めればよい。
【0039】
水タンク4の収容水が燃焼室1により加熱されると水蒸気が生成する。水タンク4の底部付近で生成した水蒸気は多孔層20を下から上に透過して水面から水蒸気滞留部10に上昇する。また加熱された収容水には上下方向に旋回する対流が生じるが、多孔層20は水が透過可能となっているので、対流生成に支障をきたす恐れはない。
【0040】
図4は本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図である。前記のように、燃焼室1の上面2から水タンク4への過激な伝熱により、水タンク4の収容水に突沸現象が発生しやすいという事実がある。本実施形態ではこの突沸現象を防止するため、燃焼室1の上面2に沿って断熱層21を設けている。
【0041】
断熱層21は断熱性と耐熱性を共に備えた材料、例えばアルミナ等のセラミック板材を上面2に固定して形成するか、またはアルミナ等の粉状または細かい粒状のセラミック材を耐熱性バインダーに混合したものを上面2に吹きつけて形成することができる。燃焼室1で生成する高温の燃焼ガスは、断熱層21を介して上面2に沿って流れるので、上面2から水タンク4の収容水への過激な伝熱は大幅に抑制される。そのため収容水の突沸現象は防止される。
【0042】
図5は本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図である。前記のように水タンク4で生成した水蒸気は、その水蒸気滞留空間10から水蒸気管12を経て補助タンク5の水蒸気滞留空間11に流出し、そこから水蒸気排出管8を経て負荷設備に供給される。何らかの原因で水タンク4または補助タンク5にミストが発生した場合に、そのミストが水蒸気排出管8から負荷設備に流入しないように、本実施形態では水蒸気排出管8の入口部分を閉鎖するように多孔層20を配置している。
【0043】
多孔層20は図1の例と同様なものを使用することができる。すなわちステンレス線などの金属線をたわし状に整形したSUS−WOOL、天然または合成繊維で作られたフェルトや不織布、或いは金属メッシュ等で形成することができる。高空隙率を有する多孔層20は、その細かく分散する多数の流通路により水蒸気に同伴して流通するミストを効率よく補足することができ、さらに補足したミストを蒸発させて純粋な水分のみを含む水蒸気に付加することができる。
【0044】
多孔層20は接着剤や固定ビスなどで水蒸気排出管8の入口部分に固定することができる。なお、多孔層20を水蒸気排出管8の内部に充填して配置することもできる。このように水蒸気排出管8の内部に配置した場合も、水蒸気排出管8の入口部分に配置した場合と同様にミストの補足機能とミスト蒸発機能を共に発揮することができる。
【0045】
図6は本発明の水蒸気発生装置の更に他の例を模式的に示す縦断面図である。本実施形態は図5の例の変形例であって、図5の例と同様な多孔層20を水タンク4と補助タンク5を連通する水蒸気管12の出口部若しくは内部に充填して配置したものである。本実施形態は特に水タンク4におけるミスト発生が問題になる場合に有効である。
【符号の説明】
【0046】
1 燃焼室
2 上面
3 周面
4 水タンク
5 補助タンク
6 ケーシング
7 水供給口
8 水蒸気排出口
9 水供給管
【0047】
10,11 水蒸気滞留空間
12 水蒸気管
13 バーナ
14 燃料空気混合器
15 燃料ガス供給用配管
16 一次空気供給用配管
17 二次空気供給用配管
18 排ガス用配管
20 多孔層
21 断熱層
25 水蒸気発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(1)の上面(2)と周面(3)を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンク(4)と、水タンク(4)の上方に連設された水補給用の補助タンク(5)と、補助タンク(5)の上部に設けられた水供給口(7)および水蒸気排出口(8)と、補助タンク(5)の底部から水タンク(4)に水を供給する手段と、水タンク(4)の上部に形成される水蒸気滞留空間(10)から補助タンク(5)の上部に形成される水蒸気滞留空間(11)に水蒸気を排出する水蒸気管(12)を備えた水蒸気発生装置において、
水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層(20)を、前記補助タンク(5)の水面またはその水中に水平方向に配置したことを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項2】
燃焼室(1)の上面(2)と周面(3)を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンク(4)と、水タンク(4)の上方に連接された水補給用の補助タンク(5)と、補助タンク(5)の上部に形成された水供給口(7)および水蒸気排出口(8)と、補助タンク(5)の底部から水タンク(4)に水を供給する手段と、水タンク(4)の上部に形成される水蒸気滞留空間(10)から補助タンク(5)の上部に形成される水蒸気滞留空間(11)に水蒸気を排出する水蒸気管(12)を備えた水蒸気発生装置において、
水および水蒸気が上下方向に透過可能な多孔層(20)を、前記燃焼室(1)の上面(2)に接する前記水タンク(4)の底部に水平方向に配置したことを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項3】
燃焼室(1)の上面(2)と周面(3)を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンク(4)と、水タンク(4)の上方に連接された水補給用の補助タンク(5)と、補助タンク(5)の上部に形成された水供給口(7)および水蒸気排出口(8)と、補助タンク(5)の底部から水タンク(4)に水を供給する手段と、水タンク(4)の上部に形成される水蒸気滞留空間(10)から補助タンク(5)の上部に形成される水蒸気滞留空間(11)に水蒸気を排出する水蒸気管(12)を備えた水蒸気発生装置において、
前記燃焼室(1)の上面(2)に沿って断熱層(21)を設けたことを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項4】
燃焼室(1)の上面(2)と周面(3)を外側から覆うように形成された水蒸気発生用の水タンク(4)と、水タンク(4)の上方に連接された水補給用の補助タンク(5)と、補助タンク(5)の上部に形成された水供給口(7)および水蒸気排出口(8)と、補助タンク(5)の底部から水タンク(4)に水を供給する手段と、水タンク(4)の上部に形成される水蒸気滞留空間(10)から補助タンク(5)の上部に形成される水蒸気滞留空間(11)に水蒸気を排出する水蒸気管(12)を備えた水蒸気発生装置において、
前記水蒸気排出口(8)の内部もしくは入口に、または前記水蒸気管(12)の内部または出口に、水および水蒸気が透過可能な多孔層(20)を配置したことを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、前記多孔層(20)は金属メッシュ、金属綿または不織布で形成されていることを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項6】
請求項5において、前記多孔層(20)の空隙率は90%〜95%であることを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記多孔層(20)は0.05〜0.5mmの線径を有する細線で構成されていることを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかの水蒸気発生装置は、原料ガスを水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器への水蒸気供給用であることを特徴とする水蒸気発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−190514(P2010−190514A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36729(P2009−36729)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)