説明

水虫防止靴

【課題】靴内の通気性を改善し、特に水虫のできやすい足指のつけ根一帯の通気を良くすることによって、水虫の発生を防止するようにした水虫防止靴を提供する。
【解決手段】靴1の中底2の上面であって足指のつけ根3一帯に相当する部位に底面4が平状となる溝5が形成され、この溝5の底面に沿う靴の側部6に1個又は複数個の通気孔7が設けられたことによって、靴の外部の空気を通気孔7から溝5を経て靴の内部に吸入及び排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴を長時間履いた場合でも、靴の内部、特に足指やその周囲が蒸れないように通気性を良くし、水虫を防止するようにした水虫防止靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の靴は内部の通気性が悪く、主に足裏等からの発汗で靴内が蒸れて履き心地が悪くなるうえ、悪臭が発生し、水虫が発生する原因となるものであった。
【0003】
このため、従来から、靴の内部が蒸れないように通気性を改善した靴が開発されている。そのような従来の技術について説明すると、特許文献1に記載の発明は、図7(a)に示すように、中敷21の土踏まず相当部から踵部へ向かって次第に厚さを増した傾斜面22を有し、傾斜面22の裏面に凹部23が設けられると共に、凹部23に傾斜面22の上面に貫通する複数個の通気孔24、24…が設けられた構成を有する。さらに、図7(b)に示すように、中敷21の爪先部に複数個の通気孔25、25…が設けられ、凹部23と通気孔25とは溝26で連結されている。
【0004】
上記の中敷21を靴20の中底27上に挿入することにより、凹部23が中底27の上面によって空間部28を形成し、溝26がエアチャンネル29を構成する。このような靴20を履いて歩行すると、歩行動作によって空間部28の容積が変化し、該空間部28にて圧縮或は膨張する空気はエアチャンネル29及び通気孔25を経て靴内の爪先部に空気を流通する。
【0005】
また、特許文献2に記載の発明は、図8(a)及び(b)に示すように、超高分子量プラスチックからなる選択透過性のある薄板材31を、靴底32に穿設した複数個の通気孔33、33…を覆う大きさに形成して、靴底32と靴30の中底34との間に敷設した構成を有するものである。このような構成もまた、足の爪先部への通気性を良好にするために成されたものであり、複数個の通気孔33、33…を経て靴底32からの空気を靴内に流通させるようにしている。
【特許文献1】特開平08−280410号公報
【特許文献2】特開平10−248604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の発明においては、複数個の通気孔24、24…は、中敷21の土踏まず相当部から踵部へ向かって次第に厚さを増した傾斜面22の裏面の凹部23に設けられたものである。従って、この文献における通気孔24は、最もむれやすい足指のつけ根部に形成されたものではなく、足指のつけ根周辺に生じやすい水虫を防止しうるものではない。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明は、靴底32に形成された複数個の通気孔33、33…から靴内部へ空気を流通させるようにしたものであり、上記の文献同様に、複数個の通気孔33は、最もむれやすい足指のつけ根部に形成されたものではなく、靴底32が地面に接触している間において通気孔33、33…は閉塞され、また地面に接触した状態で通気孔33、33…に砂や土やゴミ等が詰まると、通気孔33、33…が無用のものになるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、靴内の通気性を改善し、特に水虫のできやすい足指のつけ根一帯の通気を良くすることによって、水虫の発生を防止するようにした水虫防止靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の水虫防止靴は、靴の中底の上面であって足指のつけ根一帯に相当する部位に底面が平状となる溝が形成され、この溝の底面に沿う靴の側部に1個又は複数個の通気孔が設けられたことによって、靴の外部の空気を前記通気孔から前記溝を経て靴の内部に吸入及び排出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2の水虫防止靴は、請求項1において、前記靴の中底の上面に形成された溝は、少なくとも足の小指のつけ根一帯に相当する部位に設けられたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3の水虫防止靴は、請求項1又は2において、前記靴の中底の上面に形成された溝は、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に設けられたことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の請求項4の水虫防止靴は、請求項1又は2において、前記靴の中底の上面に形成された溝は、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に設けられた溝が互いに連通されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の水虫防止靴は、靴の中底の上面であって足指のつけ根一帯に相当する部位に底面が平状となる溝が形成され、この溝の底面に沿う靴の側部に1個又は複数個の通気孔が設けられた構成とされている。このため、靴を履いた者が歩かずに静止しているときであっても、上記の通気孔と靴の中底の上面の溝を経て靴の内部の空気を効率的に交換することができる。
【0014】
また、歩行中に、足裏が中底に密着したり離間したりすることを繰り返す動作により、靴内の空気に吸引と排出作用が生じるため、靴の側部に設けられた複数の通気孔を経て靴内の空気を排出したり外部の空気を吸入したりすることができ、靴内の空気は外部の空気と効率的に交換され、靴内は新鮮に保たれることになり、蒸れやすく水虫にかかりやすい足指のつけ根一帯やその周囲の足裏の湿気を外部へ排出し、また外部からの新鮮な空気を流入して、水虫を効率的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明による水虫防止靴は、図3〜図6に示すように、靴1の中底2の上面であって足指のつけ根3一帯に相当する部位に底面4が平状となる溝5が形成され、この溝5の底面4に沿う靴1の側部6に1個又は複数個の通気孔7が設けられたことによって、靴1の外部の空気を夫々の通気孔7から溝5を経て靴1の内部に吸入及び排出するようにしたものである。
【0017】
本発明の構成を詳細に述べると、本発明が適用される靴自体の構成は、特定されるものではなく、図1及び図2に示すように、中底2が甲被8で覆われた形態の靴1であれば、本発明の効果を十分に発揮しうるものである。
【0018】
また、図3〜図6に示す図面は、靴1の中底2の先部一帯に関する上面図であり、その中底2の側部6に図示してあるものは、通気孔7が形成された靴1の側部6をなす甲被8の一部を破断して示したものである。
【0019】
このような靴1において、図3に示すように、靴1の中底2の上面であって足指のつけ根3一帯に相当する部位に、底面4が平状となる溝5が形成されている。ただし、この図3に示す溝5は、図4に示すように、少なくとも足の小指のつけ根3一帯に相当する部位に設けられた溝5に対応するものである。また、図3及び図4に示す溝5は、足の小指のつけ根において最も幅広の溝5aを有し、そこから薬指、中指、人差し指に向かって幅狭の溝5bとなっている。
【0020】
なお、上記のように溝5を足指のつけ根3一帯に相当する部位に設けたことによって、足指の裏側及び足裏が溝5に接触することがほとんどないため、溝5の存在によって靴の履き心地が悪くなるとは回避できる。
【0021】
また、上記のように溝5を少なくとも足の小指のつけ根3一帯に相当する部位に設けたのは、靴1を履いた状態で足の小指のつけ根付近が最も中底2の上面に密着しており、そのため蒸れやすいからである。さらに、本実施例においては、その小指のつけ根一帯に相当する部位から薬指、中指、人差し指に向かって設けられた幅狭の溝5によって、薬指、中指、人差し指のつけ根一帯にも通気を良くして、靴1内のむれを防止するようにしている。
【0022】
このような溝5は、上記のほかに、図5に示すように、足の小指のつけ根3一帯に相当する部位と足の親指のつけ根3一帯に相当する部位に設けてもよい。このような溝5の形成においても、小指のつけ根3一帯に相当する部位から薬指、中指、人差し指に向かって幅狭の溝5を形成するのが望ましい。
【0023】
なお、溝5の段差は滑らかな勾配で平状の底面4に到るように設けてもよいし、図4〜図6の斜線で示す段差5の境界を縦状に掘り下げた凹状としても良い。
【0024】
さらに、上記の靴1の中底2の上面に設けた溝5は、図6に示すように、足の小指のつけ根3一帯に相当する部位と足の親指のつけ根3一帯に相当する部位に設けられた溝5が互いに連通された形状としても良い。
【0025】
さらに、本発明においては、図3〜図6に示すように、上記の溝5の底面4に沿う靴1の側部6に1個又は複数個の通気孔7が設けられたことによって、外部の空気を通気孔7から溝5を経て靴1の内部に吸入及び排出するようにしている。この通気孔7の形状は、各図に示すような円形のほかに、半円形、楕円形等にしてもよい。また、この通気孔7の数は、靴1の側部6における溝5の幅とも関係するもので、複数個の通気孔7を設ける場合は、互いの通気孔7、7間に適当な離間幅を設けて適当数の通気孔7を並設した状態で形成するものとする。
【0026】
また、本発明において、それぞれの通気孔7が溝5の底面4に沿う靴1の側部6に設けられた構成としてあり、中底2の溝5の底面4に段差のない状態で形成されるのが望ましい。こうすることによって、靴1の外部の空気を通気孔7から溝5を経て靴1の内部へ吸入し、また靴1の内部の空気を溝5から通気孔7を経て外部へ排出する効率が最も望ましい状態となる。
【0027】
なお、溝5が設けられない部位にも靴1の側部6に通気孔7を設けることによって、靴1の内部の通気を良くする構成としてもよい。その例として、図2に示すように、靴1の先端付近において靴1の内部と通じる複数個の通気孔7を形成したり、図4に示すように、中底2の上面に溝5が設けられていない足の親指側の側部6にも中底2の上面に沿って段差のない状態で複数個の通気孔7、7…を設けるようにしてもよい。
【0028】
上記の構成によって、図1に示すように、本発明の靴1を履いた状態において、足指周辺の足裏は中底2の上面に接触した状態にある。このように足裏が中底2の上面に接触しているときには、靴1内の空気は流通し難いが、本発明の構成においては、この靴1を履いた者が歩かずに静止している状態のときでも、通気孔7から溝5の形成範囲において外部からの空気が流通しやすいため、靴1内の蒸れやすい箇所に上記のように通気孔7と溝5を設けることによって、靴1内の空気と外部の空気を交換することができる。
【0029】
また、この靴1を履いて、歩行等の動作を行っている際には、足裏が中底2の上面から離間する動作によって靴1内に吸引作用が生じる。このとき、外部の空気は、靴1の側部6に設けられた通気孔7を通過して溝5内に吸入され、その周囲の靴1内に至る。
【0030】
また、靴1を踏みしめる動作に移行したとき、足裏が中底2の上面に密着することによって、足裏と中底2の上面との間を流通していた空気が圧縮されて通気孔7から外部へ排出される。
【0031】
従って、本発明の靴1を履いた歩行者が、上記の動作を繰り返すことによって、通気孔7を経て、空気の吸引と排出を強制的に繰り返し、靴1内の空気は外部の空気と効率的に交換され、靴1内は新鮮に保たれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、布製靴、皮製靴、さらには合成樹脂製靴に適用可能であり、通常の靴に本発明を適用することができる他、特に通風状態の悪い室内等で使用される作業靴や運動靴等において、靴を長時間履いた場合でも、靴の内部、特に足指やその周囲が蒸れないように通気性をよくし、水虫を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による水虫防止靴を親指側から見た外観図である。
【図2】本発明による水虫防止靴を前方から見た外観図である。
【図3】本発明による水虫防止靴の先部周辺の内部を示す斜視図であり、この靴の側部には通気孔を設けた甲被である靴の側部を部分的に示している。
【図4】本発明による水虫防止靴の先部周辺を示す部分平面図であり、少なくとも足の小指のつけ根一帯に相当する部位に溝を設けた状態を示す。
【図5】本発明による水虫防止靴の先部周辺を示す部分平面図であり、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に溝を設けた状態を示す。
【図6】本発明による水虫防止靴の先部周辺を示す部分平面図であり、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に設けられた溝が互いに連通された状態を示す。
【図7】(a)及び(b)は、特許文献1に記載された靴の断面図と中底の底面図である。
【図8】(a)及び(b)は、特許文献2に記載された靴の側面図と靴底の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…靴
2…中底
3…足指のつけ根
4…底面
5…溝
6…靴の側部
7…通気孔
8…甲被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中底の上面であって足指のつけ根一帯に相当する部位に底面が平状となる溝が形成され、この溝の底面に沿う靴の側部に1個又は複数個の通気孔が設けられたことによって、靴の外部の空気を前記通気孔から前記溝を経て靴の内部に吸入及び排出するようにしたことを特徴とする水虫防止靴。
【請求項2】
前記靴の中底の上面に形成された溝は、少なくとも足の小指のつけ根一帯に相当する部位に設けられたことを特徴とする請求項1記載の水虫防止靴。
【請求項3】
前記靴の中底の上面に形成された溝は、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の水虫防止靴。
【請求項4】
前記靴の中底の上面に形成された溝は、足の小指のつけ根一帯に相当する部位と足の親指のつけ根一帯に相当する部位に設けられた溝が互いに連通されたことを特徴とする請求項1又は2記載の水虫防止靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75182(P2006−75182A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259150(P2004−259150)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(503008767)
【Fターム(参考)】