説明

水質分析装置

【課題】多種類の試料の多項成分を分析する作業員の労力を軽減できる水質分析装置の提供。
【解決手段】試料水と試薬溶液を混合して分析成分を発色させ、その時の吸光度から分析成分の濃度を求める水質分析装置において、分析する試料水を選択する試料選択部1と、この試料選択部1で選択された試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部2と、試料水を反応セル12に送る試料送液部3と、試薬溶液を反応セル内に添加する水平−垂直移動ロボット10を有する試薬搬送部4と、反応セル12内で試料水と試薬搬送部4で搬送された試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部6と、試料選択部1、前記懸濁物除去部2、前記試料送液部3、前記試薬搬送部4、及び前記側光部6の制御と、側光部6による測定結果から濃度を算出する制御演算部7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水、及び循環水等の各種水中の多項成分の水質分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍機空調関連機器などでは種々の冷却水や循環水等の水が使用されている。これらの水に含まれている成分によって、配管の腐食、スケールやスライムが付着して熱伝導が悪くなることが懸念されている。このため、冷却水や循環水等の水の成分を分析して、適切な濃度に管理することが重要になっている。
【0003】
水質分析を現場でできる方法、及び装置は、すでに種々市販されている。しかし、これらの装置及び方法は、1成分毎に分析するにはよいが、多項成分を分析する場合には、それぞれの分析目的成分毎に分析装置や試薬類を揃えなければならず、1成分毎に分析手順が異なるので、分析操作に慣れていない人にとっては煩わしい作業になっていた。また、肉眼で色調を見る方法では分析精度が悪いという問題もあった。
【0004】
また、特許文献1、特許文献2に示す従来技術では、化学分析法に基づく吸光光度法を使用する自動分析装置が提案されている。この方法は、被測定液を薬液と反応させ、この反応による被測定液の変色を検出することにより、被測定液の濃度を測定する方法である。これらの自動分析装置は、被測定液を収容する容器を洗浄する工程と、前述の容器内に被測定液を所定量収容する工程と、収容された被測定液中に所定量の薬液を注入する工程と、前述の容器内の被測定液と薬剤とを撹拌する工程と、被測定液と薬液の撹拌後、被測定液の変色を測定する工程と、被測定液の変色の測定値に基づいて被測定液の濃度を判定する工程と、前述した被測定液の濃度の測定後、前述の容器内を洗浄する工程とから成っている。
【特許文献1】特開平10−325801号公報
【特許文献2】特開2002−350414公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1,2の従来技術では、1種類の反応液、すなわち試薬を貯蔵する液体吐出装置が、吸光度測定用透明容器、すなわち反応容器と固定されているので、1成分毎の分析には都合がよいが、多項成分を分析する場合の異なる種類の試薬を交換する作業が煩雑であるとともに、分析精度が低下する虞があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実状を考慮してなされたもので、その目的は、多種類の試料の多項成分を分析する作業員の労力を軽減できる水質分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、試料導入管と試料排出管が接続されている反応容器内で、試料水と試薬溶液を混合して分析成分を発色させ、その時の吸光度から分析成分の濃度を求める水質分析装置において、分析する前記試料水を選択する試料選択部と、この試料選択部で選択された前記試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部と、前記試料水を前記試料導入管を介して反応容器に送る試料送液部と、試薬溶液を前記反応容器内に添加する水平−垂直移動ロボットを有する試薬搬送部と、前記反応容器内で前記試料導入管を介して導かれる前記試料水と前記試薬搬送部で搬送された前記試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部と、前記試料選択部、前記懸濁除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、及び前記側光部の制御と、前記側光部による測定結果から濃度を算出する制御演算部とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、試料選択部で分析する試料水を選択した後、懸濁物除去部で、前述の試料選択部で選択された試料水中の懸濁物を除去する。そして、試料送液部で懸濁物が除去された試料水を試料導入管を介して反応容器に送り、この状態から、自動的に試薬搬送部の水平−垂直移動ロボットにより多項目成分の試薬溶液の中から分析項目に該当する試薬溶液を反応容器に搬送する。また、側光部により試料水と試薬溶液とが混合された溶液の吸光度が測定される。前述した試料選択部、懸濁物除去部、試料送液部、試薬搬送部、及び側光部の制御が制御演算部によって行われる。さらに、この制御演算部により側光部の測定結果から混合溶液の濃度が算出される。このようにしたことから、多種類の試料の多項成分を分析する作業員がそれぞれの分析成分ごとに試薬溶液を交換するなどの煩雑な作業を行う必要がなく、これによって作業員の労力を軽減できる。
【0009】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記試薬搬送部は、試薬溶液の吸引・吐出が可能なシリンジポンプを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記試料選択部、前記懸濁除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、前記側光部、前記制御演算部は、略同じ平面形状を有する少なくとも第1収納部材と第2収納部材に分けて収納され、分析作業を行う際は、前記試料選択部、前記懸濁除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、前記側光部、及び前記制御演算部のいずれかに該当するものどうしを配管、又はケーブルを介して結合することを特徴としている。このように構成した本発明は、第1収納部材と第2収納部材の配置を考慮することにより、前記試料選択部、前記懸濁除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、前記側光部、前記制御演算部を近接させて設置することができ、装置を小型化することができる。
【0011】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記第1収容部材には、前記試料選択部、前記懸濁物除去部、及び前記試料送液部が収納され、前記第2収納部材には、前記試薬搬送部、及び前記側光部が収納されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記測光部は、波長が650nm付近のレーザ光を発する可視光半導体レーザと、前記レーザ光を前記反応容器に入射させた際にこの反応容器を透過する光量を検出するホトダイオードとを備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記試料導入管を介して導かれる前記試料水に添加する試薬溶液は、分析目的成分と反応して青色系の色を呈するものから成ることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は前記水質分析装置において、前記制御演算部は、前記試料導入管を介して導かれる試料水中の分析成分の濃度に対して試料採取量を可変できるプログラマブルコントローラを具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、分析する試料水を選択する試料選択部と、この試料選択部で選択された試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部と、試料水を試料導入管を介して反応容器に送る試料送液部と、試薬溶液を反応容器内に添加する水平−垂直移動ロボットを有する試薬搬送部と、反応容器内で試料導入管を介して導かれる試料水と試薬搬送部で搬送された試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部と、試料選択部、懸濁物除去部、試料送液部、試薬搬送部、及び側光部の制御と、側光部による測定結果から濃度を算出する制御演算部とを備えたことから、多種類の試料の多項成分を分析する作業員がそれぞれの分析成分ごとに試薬溶液を交換するなどの煩雑な作業を行う必要がなく、試料の多項成分を分析する作業員の労力を軽減でき、これにより、従来よりも分析作業効率、及び分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る水質分析装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る水質分析装置の一実施形態の要部を示し、第3収納ケースを除いたブロック図、図2は、本実施形態に備えられる第1収納ケースの平面図、図3は、本実施形態に備えられる第2収納ケースの平面図、図4は、本実施形態に備えられる第3収納ケースの平面図、図5は、図3のV−V断面図である。図6は、本実施形態に備えられる可視光半導体レーザから発するレーザ光の波長650nm付近に吸収を生じさせる試薬及び色彩の例を示す図である。
【0018】
[本実施形態の構成]
例えば、本発明に係る水質分析装置の一実施形態は、図1に示すように、主に、分析する試料水を選択する試料選択部1と、この試料選択部1で選択された試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部2と、前述の試料水を試料導入管12Aを介して反応容器、すなわち反応部5に送る試料送液部3とを備えている。また、試薬溶液を反応部5内に添加する図3に示す水平−垂直移動ロボット10を有する試薬搬送部4と、反応容器5内で試料導入管12Aを介して導かれる前述の試料水と試薬搬送部4で搬送された試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部6と、図4に示す試料選択部1、懸濁物除去部2、試料送液部3、試薬搬送部4、及び側光部6の制御と、側光部6の測定結果から濃度を算出する制御演算部7を備えている。
【0019】
前述の試料選択部1は、分析する各種の試料水、例えば冷凍空調機におけるクーリングタワーの水、あるいは循環冷温水等のうちの1つを例えば三方バルブ、または図1、図2に示すように、その何れかを開くことにより試料水を選択するバルブV1〜V3を備えている。
【0020】
前述の懸濁物除去部2は、図2に示すように、クロスフロー方式のろ過器25で構成され、ろ過器ボディー24Aと、このろ過器ボディー24A内に納められたフィルター24Bとを備えている。また、ろ過器ボディー24A内に導入した試料水の一部、または全部を排出するバルブV4とバルブV5を備えている。
【0021】
前述の試料送液部3は、図1、図2に示すように、試料選択部1で選択された試料水を懸濁物除去部2に送るポンプP1と、懸濁物除去部2によって除去した後の試料水を反応部5に送るポンプP2と、廃液を図示しない廃液タンクに送り込むポンプP3とで構成され、これらのポンプP1,P2,P3は、例えば、マイクロチューブポンプから構成されている。
【0022】
前述の試薬搬送部4は、図1、図3に示すように、各分析成分の分析ごとに使用する種々の試薬溶液が入った試薬瓶9と、この試薬瓶9が複数並べて収納される試薬ラック29と、試薬瓶9から試薬を採取する試料採取ニードル11と、この試料採取ニードル11を水平面内で互いに直交する方向、及び鉛直方向に移動させるための水平−垂直移動ロボット10を有している。また、前述の試料採取ニードル11には、図1に示すように、可撓性のチューブ13を介して三方バルブ14の1つのポートが連絡され、この三方バルブ14の残りのポートには、試薬溶液の吸引・吐出が可能なシリンジポンプ15と、試料採取ニードル11内の試薬溶液を洗浄するための純粋瓶16とがそれぞれ連絡されている。
【0023】
前述の反応部5は、前述のろ過器25で懸濁物を除去した試料水と水平−垂直移動ロボット10によって試薬採取ニードル11を移動させて、シリンジポンプ15により分析対象の種類の試薬溶液が入っている試薬瓶9から採取した試薬溶液とを混合・撹拌して分析成分を着色させる反応セル12を備えている。なお、反応セル12には試料を排出する試料排出管12Bが接続されている。
【0024】
前述の側光部6は、波長が650nm付近のレーザ光を発する可視光半導体レーザ17と、この可視光半導体レーザ17のレーザ光を反応部5内の反応セル12に入射させた際に、この反応セル12を透過する光量を検出するホトダイオード18とを備えている。
【0025】
前述の図4に示す制御演算部7は、試料選択部1、懸濁物除去部2、試料送液部3、試薬搬送部4、及び側光部6の制御と、側光部6の測定結果から吸光度や分析成分の濃度を算出するプログラマブルコントローラ、すなわちシーケンサ19を有している。また、シーケンサ19は、前述の試料導入管12Aを介して導かれる試料水中の分析成分の濃度に対して、試料採取量を可変できる。さらに、シーケンサ19には、タッチパネル20が付属しており、シーケンサ19への入力、及び出力は、このタッチパネル20を介して行われる。なお、制御演算部7での分析データの整理、及び他の端末へのデータの転送に利用される図示しないパソコンも備えられている。
【0026】
図6に示すように、前述した試料導入管12Aを介して導かれる試料水に添加する試薬溶液は、分析目的成分と反応して、特に青色系の色を呈するものから成っている。
【0027】
また、各構成部である前述した試料選択部1、懸濁物除去部2、試料送液部3、試薬搬送部4、反応部5、側光部6、及び制御演算部7は、略同じ平面形状を有する少なくとも図1、図2に示す第1収納部材、すなわち第1収納ケース21と、図1、図3、図5に示す第2収納部材、すなわち第2収納ケース22に分けて収納され、また、本実施形態では、第1収納ケース21と第2収納ケース22の他に、図4に示す第3収納部材、すなわち第3収納ケース23にも分けて収納されている。そして、分析作業を行う際には、試料選択部1、懸濁物除去部2、試料送液部3、試薬搬送部4、反応部5、側光部6、及び制御演算部7のいずれかに該当するものどうしを配管、又はケーブルを介して接続している。
【0028】
第1収納ケース21には、図1、図2に示すように、試料選択部1、懸濁物除去部2、及び試料送液部3とが納められている。第2収納ケース22には、図1、図3に示すように、前記試薬搬送部4、及び前記側光部6が収納されている。また、試料送液部3のポンプP2からの試料水を分析対象の試料水を採取するための試料セル26、または反応部5の反応セル12に送るのを切り替える三方バルブ27と、試料水等の水受けであるドレンパン28と、このドレンパン28の領域内に配置された前述の反応セル12、及び試料セル26と、この試料セル26、反応セル12、及びドレンパン28の試料水、又は廃液を排出するかしないかを選択するバルブV7、バルブV8が納められている。第3収納ケース23には、制御演算部7、すなわち前述したシーケンサ19、及びタッチパネル20等が納められている。
【0029】
そして、第1収納ケース21、第2収納ケース22、第3収納ケース23は、例えば、略平面形状が同じの正方形に形成され、これらを積み重ねることが可能となっている。
【0030】
また、前述の試薬搬送部4に含まれる水平−垂直移動ロボット10は、図3、図5に示すように、第2収納ケース22に固定された前後方向ガイド30と、この前後方向ガイド30に沿って移動可能に支持された前後方向スライダ31と、この前後方向スライダ31に固定された左右方向ガイド32と、この左右方向ガイド32に沿って移動可能に支持された左右方向スライダ33と、この左右方向スライダ33に固定された上下方向ガイド34と、この上下方向ガイド34に沿って移動可能に支持された上下方向スライダ35とを備えている。また、前述の上下方向ガイド34内に納められ、出力軸に連結されたスクリュー36と、このスクリュー36に螺合し、上下方向スライダ35に結合された図示しないナットを介して、上下方向スライダ35を上下方向に移動させる上下方向モータ38Aと、前述の左右方向ガイド32内に納められ、出力軸に連結された図示しないスクリューと、このスクリューに螺合し、左右方向スライダ33に結合された図示しないナットを介して、左右方向スライダ33を左右方向に移動させる左右方向モータ38Bと、前述の前後方向ガイド30内に納められ、出力軸に連結された図示しないスクリューと、このスクリューに螺合し、前後方向スライダ31に結合された図示しないナットを介して、前後方向スライダ33を前後方向に移動させる前後方向モータ38Cとを備えている。さらに、前述の試薬搬送部4に含まれる試薬採取ニードル11は、上下方向スライダ35に取り付けられ、前述の上下方向モータ38A、左右方向モータ38B、前後方向モータ38Cによって、上下、左右、及び前後方向のいずれの方向にも移動できるようになっている。
【0031】
[本実施形態の動作]
次に、冷凍空調機が設置された現地での本実施形態による水質分析の手順を説明する。
【0032】
まず、図2に示す第1収納ケース21、図3に示す第2収納ケース22、図4に示す第3収納ケース23を積み重ねて一体とした状態で現地に持ち込む。次に、現地でそれぞれ第1収納ケース21、第2収納ケース22、第3収納ケース23に分散させて、必要な液送用チューブ、及びケーブル等を接続する。この状態で、必要な数の試薬瓶9を試薬瓶ラック29にセットし、装置を可動させてウォーミングアップを行う。
【0033】
装置のウァーミングアップの完了後、水質分析作業を行う際には、まず、図4に示す第3収納ケース23に収納されている制御演算部7のタッチパネル20により、分析対象の試料水情報、例えば現場名や制御情報、運転パターンなどを入力する(ステップ1)。次に、タッチパネル20により、分析の対象とする試料の種類、例えば冷却水を選択する(ステップ2)。さらに、タッチパネル20により、例えば、図6に示された分析成分の中から分析対象とする成分を選択する(ステップ3)。そして、タッチパネル20により、ステップ1で分析対象とした試料水名を入力する(ステップ4)。次に、タッチパネル20により、ステップ1で分析対象とした試料水についての分析繰り返し回数を入力する(ステップ5)。さらに、タッチパネル20により、「分析開始」を入力して試料水についての水質分析を開始する(ステップ6)。
【0034】
前述のように、タッチパネル20により、「分析開始」を入力すると以下の動作が自動的に行われる。まず、分析開始に伴い、1種類の試料が選択され、選択された試料水のバルブ、すなわち図1、図2に示すバルブV1〜バルブV3のいずれか該当するものが開かれ、選択された試料水がポンプP1により、懸濁物除去部2のろ過器25に送られ、このろ過器25により選択された試料水中の懸濁物が除去される(ステップ7)。次に、ステップ7で懸濁物を除去した試料水を図1、図2に示すポンプP2によって、図1に示す三方バルブ27に送り、試料水を試料セル26、及び試料導入管12Aを介して反応セル12に流して、試料セル26、及び反応セル12を洗浄する(ステップ8)。その後、廃液として排出するかどうかを選択するバルブV7、バルブV8が閉モードとなり、試料セル26、及び反応セル12に試料水が充満する(ステップ9)。
【0035】
次に、可視光半導体レーザ17によって試料水で充満している反応セル12に波長が650nm付近のレーザ光を反応セル12に放射し、この反応セル12を透過する光の光量がホトダイオード18で検出される。なお、この時の光量を(I)とする(ステップ10)。そして、ステップ10で光量(I)を検出した後、反応セル12の試料水がバルブ8が開くことにより、図1に示す試料排出管12Bを介して排出され、反応セル12内が空の状態となる(ステップ11)。ステップ11で反応セル12内が空になった後、バルブ8が閉モードとなり、懸濁物が除去された試料水が図1に示すポンプP2によって三方バルブ27に送られ、試料導入管12Aを介して反応セル12に再び試料水が充満する(ステップ12)。次に、試薬搬送部4の水平−垂直移動ロボット10に付属している試料採取ニードル11が試料セル16、及び分析項目に対応する試薬ラック29に収納された試薬瓶9の中に下降し、図1に示す三方バルブ14の流路がシリンジポンプ15側となり、一定量の試料水、及び試薬溶液が吸引される(ステップ13)。
【0036】
さらに、水平−垂直移動ロボット10が可動し、試料採取ニードル11が、試料水が充満している反応セル12に移動して、注入口に挿入される。そして、三方バルブ14が前述した純粋瓶16側となり、シリンジポンプ15により、採取ニードル11で吸引した一定量の試料水、及び試薬溶液が反応セル12内に吐出される(ステップ14)。このように、三方バルブ14とシリンジポンプ15、及び水平−垂直移動ロボット10が動作し、試料採取ニードル11により試料水と試薬溶液を吸引した後、反応セル12内に吐出する動作を繰り返して、試料水と試薬溶液を反応セル12内で混合する(ステップ15)。
【0037】
ステップ15により、反応セル12内で試料水と試薬溶液を混合させることにより、分析成分に対応して反応セル内の溶液が発色するので、可視光半導体レーザ17によって発色した溶液で充満している反応セル12に波長が650nm付近のレーザ光を反応セル12に放射し、この反応セル12を透過する光の光量をホトダイオード18で検出する。なお、この時の光量を(I)とする(ステップ16)。側光部6により測定した前述のステップ11の光量(I)とステップ16の光量(I)を合わせて、制御演算部7により、吸光度を算出し、さらに次の式から分析成分の濃度を算出する(ステップ17)。
【0038】
C=[(−log(I/I)]/a・b
I:ステップ17での透過光の光量
:ステップ11での透過光の光量
C:分析成分の濃度
a:光路長の長さ
b:吸光係数
前述した測定結果を制御演算部7で演算して分析値を算出し、分析成分の濃度が最適な吸光度範囲となるように、試料採取ニードル11で採取する試料量、及び試薬溶液の量を加減し、試料水と試薬溶液を混合して吸光度を求め、対象とした試料水中に含まれる正確な分析成分の濃度を算出する(ステップ18)。
【0039】
ステップ18により、試料水中に含まれる分析成分の濃度を測定後、分析の対象とした試料水を図1に示す試料送液部3のポンプP2から三方バルブ27により、試料導入管12Aを介して過剰に送り、試料セル26、及び反応セル12をオーバーフローさせて排出し、試料セル26、及び反応セル12を洗浄する。なお、試料セル26、及び反応セル12内の廃液は、バルブV7、及びバルブV8を介して試料送液部3のポンプP3により外部へ排出される。(ステップ19)。前述のステップ1〜ステップ19を繰り返し、分析の対象とする試料水、及び分析成分がなければ終了する(ステップ20)。
【0040】
次に、図6に示すように、可視光半導体レーザ17から放射されるレーザ光の波長650nm付近で光を吸収し、青色、及び濁りを生じさせる試薬溶液を使用する測定法の例を示す。例えば、塩化物イオン、及び硫酸イオンの比濁法は、試薬溶液を添加することにより、沈殿の濁りであるが、それ以外の分析成分は、青紫から青色、すなわち青色系に発色する。いずれも可視光半導体レーザ17から放射されるレーザ光の波長が650nm付近に光の吸収が生じるので、ホトダイオード18、すなわち検出器の感度が一定になるため、検出器のゼロとスパン調整が簡単になり、シーケンスの動作が容易になる。
【0041】
このように構成した本実施形態によれば、分析する試料水を選択する試料選択部1と、この試料選択部1で選択された試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部2と、試料水を試料導入管12Aを介して反応セル12に送る試料送液部3と、試薬溶液を反応セル12内に添加する水平−垂直移動ロボット10を有する試薬搬送部4と、反応セル12内で試料導入管12Aを介して導かれる試料水と試薬搬送部4で搬送された試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部6と、試料選択部1、懸濁物除去部2、試料送液部3、試薬搬送部4、及び側光部6の制御と、側光部6による測定結果から分析濃度を算出する制御演算部7とを備えたことから、自動的に、分析対象の試料水中の複数の分析成分に対応する種々の試薬溶液を水平−垂直移動ロボット10によって反応セル12に搬送して、側光部6によって測定した結果を制御演算部7により、目的の分析成分の濃度を求めることができるので、作業員がそれぞれの分析成分ごとに試薬溶液を交換するなどの煩雑な作業を行う必要がなく、試料の多項成分を分析する作業員の労力を軽減でき、これにより、分析作業効率、及び分析精度を向上させることができる。
【0042】
また、試薬溶液の反応セル12への添加に水平−垂直移動ロボット10、及び側光部6に可視光半導体レーザ17を使用するようにしたので、全体の装置構成を簡単にできる。さらに、シーケンサ19により、試料採取量を加減することができるので、冷却水の濃縮や季節要因による水質の変動、例えば試料の濃度が濃くなり過ぎて、測定器の測定可能範囲を超えた場合、試料採取量を少なくし純水を加えることにより、水質の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る水質分析装置の一実施形態の要部を示し、第3収納ケースを除いたブロック図である。
【図2】本実施形態に備えられる第1収納ケースの平面図である。
【図3】本実施形態に備えられる第2収納ケースの平面図である。
【図4】本実施形態に備えられる第3収納ケースの平面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】本実施形態に備えられる可視光半導体レーザから発するレーザ光の波長650nm付近に吸収を生じさせる試薬及び色彩の例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 試料選択部
2 懸濁物除去部
3 試料送液部
4 試薬搬送部
5 反応部
6 側光部
7 制御演算部
10 水平−垂直移動ロボット
11 試料採取ニードル
12 反応セル
12A 試料導入管
12B 試料排出管
15 シリンジポンプ
17 可視光半導体レーザ
18 ホトダイオード
19 シーケンサ
20 タッチパネル
21 第1収納ケース
22 第2収納ケース
23 第3収納ケース
25 ろ過器
26 試料セル
30 前後方向ガイド
31 前後方向スライダ
32 左右方向ガイド
33 左右方向スライダ
34 上下方向ガイド
35 上下方向スライダ
36 スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料導入管と試料排出管が接続されている反応容器内で、試料水と試薬溶液を混合して分析成分を発色させ、その時の吸光度から分析成分の濃度を求める水質分析装置において、
分析する前記試料水を選択する試料選択部と、この試料選択部で選択された前記試料水中の懸濁物を除去する懸濁物除去部と、前記試料水を前記試料導入管を介して反応容器に送る試料送液部と、試薬溶液を前記反応容器内に添加する水平−垂直移動ロボットを有する試薬搬送部と、前記反応容器内で前記試料導入管を介して導かれる前記試料水と前記試薬搬送部で搬送された前記試薬溶液とを混合して反応させた後の溶液の吸光度を測定する側光部と、前記試料選択部、前記懸濁除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、及び前記側光部の制御と、前記側光部による測定結果から濃度を算出する制御演算部とを備えたことを特徴とする水質分析装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の水質分析装置において、
前記試薬搬送部は、試薬溶液の吸引・吐出が可能なシリンジポンプを備えたことを特徴とする水質分析装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載の水質分析装置において、
前記試料選択部、前記懸濁物除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、前記側光部、前記制御演算部は、略同じ平面形状を有する少なくとも第1収納部材と第2収納部材に分けて収納され、分析作業を行う際は、前記試料選択部、前記懸濁物除去部、前記試料送液部、前記試薬搬送部、前記側光部、及び前記制御演算部のいずれかに該当するものどうしを配管、又はケーブルを介して結合することを特徴とする水質分析装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の水質分析装置において、
前記第1収納部材には、前記試料選択部、前記懸濁物除去部、及び前記試料送液部が収納され、前記第2収納部材には、前記試薬搬送部、及び前記側光部が収納されていることを特徴とする水質分析装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載の水質分析装置において、
前記測光部は、波長が650nm付近のレーザ光を発する可視光半導体レーザと、前記レーザ光を前記反応容器に入射させた際にこの反応容器を透過する光量を検出するホトダイオードとを備えていることを特徴とする水質分析装置。
【請求項6】
前記請求項1に記載の水質分析装置において、
前記試料導入管を介して導かれる前記試料水に添加する試薬溶液は、分析目的成分と反応して青色系の色を呈するものから成ることを特徴とする水質分析装置。
【請求項7】
前記請求項1に記載の水質分析装置において、
前記制御演算部は、前記試料導入管を介して導かれる試料水中の分析成分の濃度に対して試料採取量を可変できるプログラマブルコントローラを具備していることを特徴とする水質分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−198313(P2009−198313A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40233(P2008−40233)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】