説明

水質測定装置及び水質測定方法

【課題】遮光方式による測定と蛍光方式による測定とを同時、且つ、安価に実行する。
【解決手段】水質測定装置は、所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる、フローセル1内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水2に向けて光を照射する光源3と、フローセル1を挟んで光源3に対向する位置に配置された、試料水2を介して光源3から照射された光を検出する遮光検出器4と、フローセル1を流れる試料水の蛍光強度を検出する蛍光検出器5と、を備え、遮光検出器4は、光源3の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出し、蛍光検出器5は、光源3の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や湖沼等の環境水や上下水道の各処理プロセスにおける処理水等の原水中に含まれる微生物を光学的に検出する水質測定装置及び水質測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリプトスポリジウム等の原虫類,腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌等の細菌,及びウィルス等の微生物による水系感染症の発生が大きな社会問題となっている。水系感染症の発生を防ぐためには、水処理プロセスにおいて微生物をモニタリングすることが重要である。このような背景から、特許出願人は、試料水中に含まれる微生物を膜ろ過によって濃縮し、洗浄液をろ過ユニットに通水することによって膜上に補足された微生物を回収し、回収した微生物に蛍光標識された抗体を結合し、蛍光検出器を用いて微生物を検出する水質測定装置を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−236861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、微生物の検出方法としては、フローサイトメトリー(フローサイトメーター)を用いた光学的検出方法が知られている。フローサイトメトリーは、流路内を流れる蛍光抗体等によって標識された目的微生物に特定波長のレーザ光を照射し、目的微生物から発せられた前方散乱光や蛍光の強度を測定する装置である。フローサイトメトリーを用いて前方散乱光の強度を測定することによって、目的微生物の大きさを検出することができる。また、フローサイトメトリーを用いて蛍光の強度を測定することによって、目的微生物の種類を検出することができる。
【0005】
しかしながら、前方散乱光の強度は、微生物の屈折率等によって変化する。このため、前方散乱光の強度を測定することによって目的微生物の大きさを検出する場合、目的微生物の種類によっては目的微生物の大きさを正確に検出できないことがある。なお、このような問題を解決するために、前方散乱光ではなく、目的微生物によるレーザ光の遮光時間を測定することによって目的微生物の大きさを検出する方法が考えられる。この方法では、目的微生物の大きさがレーザ光の受光光量に反比例することから、目的微生物の種類に関係なく目的微生物の大きさを検出できる。
【0006】
ところが、レーザ光の遮光時間を測定することによって目的微生物の大きさを検出する場合、レーザ光の強度を小さくする必要があることから、蛍光の強度を検出するためのレーザ光の光源とは別個に光源を用意しなければならない。このため、レーザ光の遮光時間と蛍光の強度とを測定することによって目的微生物の大きさと種類とを検出する場合には、レーザ光の光源が2つ必要になり、目的微生物の大きさと種類とを同時、且つ、安価に測定することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、遮光方式による測定と蛍光方式による測定とを同時、且つ、安価に実行可能な水質測定装置及び水質測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る水質測定装置は、所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる、フローセル内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水に向けて光を照射する光源と、前記フローセルを挟んで光源に対向する位置に配置された、前記試料水を介して前記光源から照射された光を検出する遮光検出器と、前記フローセルを流れる試料水の蛍光強度を検出する蛍光検出器と、を備え、前記遮光検出器は、前記光源の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出し、前記蛍光検出器は、前記光源の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出する。
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る水質測定方法は、所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる光を、フローセル内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水に向けて照射するステップと、前記フローセルを挟んで光源に対向する位置に配置された遮光検出器を用いて前記試料水を介して前記光源から照射された光を検出し、前記光源の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出するステップと、蛍光検出器を用いて前記フローセルを流れる試料水の蛍光強度を検出し、前記光源の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水質測定装置及び水質測定方法によれば、遮光方式による測定と蛍光方式による測定とを同時、且つ、安価に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である水質測定装置の構成を示す概念図である。
【図2】図2は、図1に示す光源から出力される光信号の一例を示す波形図である。
【図3】図3は、図1に示す遮光検出器によって検出される光信号の一例を示す波形図である。
【図4】図4は、図1に示す蛍光検出器によって検出された光信号の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である水質測定装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である水質測定装置の構成を示す概念図である。図2は、図1に示す光源から出力される光信号の一例を示す波形図である。図3は、図1に示す遮光検出器によって検出される光信号の一例を示す波形図である。図4は、図1に示す蛍光検出器によって検出された光信号の一例を示す波形図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態である水質測定装置は、フローセル1内を流れる試料水2中に含まれる微生物を検出する装置であり、光源3,遮光検出器4,及び蛍光検出器5を主な構成要素として備えている。光源3は、図2に示すように、所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替われる光源によって構成されており、フローセル1内を流れる試料水2に向けて光を照射する。
【0014】
遮光検出器4は、フローセル1を挟んで光源3に対向する位置に配置されている。遮光検出器4は、遮光方式によって試料水2中に含まれる微生物の大きさを検出するものである。具体的には、光源3が図2に示す出力状態の光を試料水2に照射した場合、遮光検出器4は、図3(a)に示すような光出力を検出する。そこで、遮光検出器4は、図3(a)に示す光出力に対して信号処理を施すことによって図3(b)に示すような光源3から射出された光が低出力状態の時に検出された光出力を算出し、算出された光出力に基づいて試料水2中に含まれる微生物の大きさを検出する。
【0015】
蛍光検出器5は、光源3の側方位置に配置されている。蛍光検出器5は、蛍光方式によって試料水2中に含まれる微生物の数を検出するものである。具体的には、試料水2中に含まれる微生物には、予め蛍光標識された抗体が結合されている。これにより、光源3が図2に示す出力状態の光を試料水2に照射した場合、蛍光検出器5は、図4に示すような光出力を検出する。そこで、蛍光検出器5は、図4に示す光出力に対して信号処理を施すことによって光源3から射出された光が高出力状態の時に検出された光出力を算出し、算出された光出力に基づいて試料水2中に含まれる微生物の数を検出する。
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である水質測定装置は、所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる、フローセル1内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水2に向けて光を照射する光源3と、フローセル1を挟んで光源3に対向する位置に配置された、試料水2を介して光源3から照射された光を検出する遮光検出器4と、フローセル1を流れる試料水の蛍光強度を検出する蛍光検出器5と、を備え、遮光検出器4は、光源3の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出し、蛍光検出器5は、光源3の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出する。これにより、遮光方式による測定と蛍光方式による測定とを同時、且つ、安価に実行することができる。
【0017】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0018】
1 フローセル
2 試料水
3 光源
4 遮光検出器
5 蛍光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる、フローセル内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水に向けて光を照射する光源と、
前記フローセルを挟んで光源に対向する位置に配置された、前記試料水を介して前記光源から照射された光を検出する遮光検出器と、
前記フローセルを流れる試料水の蛍光強度を検出する蛍光検出器と、を備え、
前記遮光検出器は、前記光源の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出し、
前記蛍光検出器は、前記光源の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出すること
を特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
所定時間毎に高出力状態と低出力状態との間で出力状態が切り替わる光を、フローセル内を流れる蛍光標識された微生物を含む試料水に向けて照射するステップと、
前記フローセルを挟んで光源に対向する位置に配置された遮光検出器を用いて前記試料水を介して前記光源から照射された光を検出し、前記光源の出力状態が低出力状態の時に検出された光出力に基づいて微生物を検出するステップと、
蛍光検出器を用いて前記フローセルを流れる試料水の蛍光強度を検出し、前記光源の出力状態が高出力状態である時に検出された蛍光強度に基づいて微生物を検出するステップと、
を含むことを特徴とする水質測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251962(P2012−251962A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126891(P2011−126891)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】