説明

水質監視装置

【課題】照明された監視水槽内で遊泳する魚類を撮像した画像を解析して水質判定を行う水質監視装置において、水質判定精度の向上を図る。
【解決手段】監視水槽1の上方に、複数のLED11を直線状に並べた一対の線光源10、10を有する照明器具2と、監視水槽1内で遊泳する魚類を撮像する監視カメラ3を設け、その照明器具2の各線光源10を監視カメラ3の写角から外れた位置に配するとともに、遊泳槽5の水面から突出させた捕集網9の上端縁部で各線光源10から直接水面に向かう光路を遮ることにより、各線光源10からの直接光が水面で反射しないようにして、水質異常の誤検知を生じにくくしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって、その監視水槽に導入された検水の水質を監視する水質監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等から取水した原水を浄化して上水道等に供給する浄化施設においては、浄化水の安全を確保するために、毒物等の混入による原水の水質異常を早期検知できるようにした水質監視装置が設置されていることが多い。このような水質監視装置の一つに、取水した原水の一部を検水として監視水槽に導入し、監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって検水の水質を監視するタイプのものがある。
【0003】
上記の魚類を利用したタイプの水質監視装置では、一般に、魚類を遊泳させる監視水槽の上方に、監視水槽の水面に向けて光を照射する照明器具と魚類を撮像する監視カメラを設け、監視カメラで撮像した魚類の画像を解析することによって監視水槽に導入された検水の水質判定を行っている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
ところが、例えば図4に示すように、監視水槽51の上方に照明器具52を設置していると、照明器具52から照射される光が水面で反射することにより、監視カメラ53に水面の輝度の大きな部分が撮像されて、撮像した画像を解析する際に明暗による魚類の判別が困難になり、水質異常の誤検知が生じやすい。
【0005】
これに対して、例えば特許文献3で提案されているように、監視水槽の一つの壁面の側方に照明器具を設置すれば、照明光の水面での反射はなくなる。しかし、この場合は、通常、監視水槽の壁面間の距離が検水の水深よりもかなり長いために、検水に濁りがあると照明光が反対側の壁面付近まで届かなくなって、監視カメラで撮像した画像が部分的に暗くなり、水質判定の精度が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−59260号公報
【特許文献2】特開昭61−224690号公報
【特許文献3】登録実用新案第3095182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、照明された監視水槽内で遊泳する魚類を撮像した画像を解析して水質判定を行う水質監視装置において、水質判定精度の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、魚類を遊泳させる監視水槽の上方に、監視水槽の水面に向けて光を照射する照明器具と魚類を撮像する監視カメラを設け、前記監視カメラで撮像した魚類の画像を解析することによって前記監視水槽に導入された検水の水質判定を行う水質監視装置において、前記照明器具の光源を線光源とし、その線光源を前記監視カメラの写角から外れた位置に配するとともに、前記監視水槽の水面近傍に前記線光源から直接水面に向かう光路を遮る棒状体を設けるようにした。なお、その棒状体は、線光源からの光路を遮る形状を有していればよく、例えばそれ自体では剛性のない紐状のものを引っ張った状態で設置するようにしてもよい。
【0009】
すなわち、監視水槽の上方に照明器具と監視カメラを設け、監視カメラの写角から外れた位置に配した照明器具の線光源から直接水面に向かう光路を遮る棒状体を監視水槽の水面近傍に設けることにより、線光源からの直接光が水面で反射せず、監視カメラの画像を解析する際に明暗による魚類の判別が容易に行えるようにして、水質異常の誤検知を生じにくくしたのである。
【0010】
ここで、前記線光源は、複数のLEDを直線状に並べたものとすることが望ましい。このようにすれば、蛍光灯や白熱灯を用いる場合に比べて長寿命となる。また、十分な照度を確保しながら光源の幅を狭くすることができ、それに合わせて前記棒状体の幅も狭くできるので、水面に映る影が小さくなり、水質判定精度をさらに向上させることができる。
【0011】
また、前記監視水槽内に監視水槽を直線的に横断する網状体が設けられている場合は、前記網状体の上端縁部を水面から突出させて前記棒状体とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水質監視装置は、上述したように、照明器具の線光源から直接水面に向かう光路を棒状体で遮るようにしたので、線光源からの直接光の水面での反射をなくし、水質異常の誤検知を生じにくくして、水質判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の水質監視装置の外観斜視図
【図2】図1の正面断面図
【図3】図1の側面断面図
【図4】従来の水質監視装置の一例の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図3に基づき、本発明の実施形態を説明する。この水質監視装置は、魚類(ここではメダカ)を遊泳させる監視水槽1の上方に、監視水槽1の水面に向けて光を照射する照明器具2とメダカを撮像する監視カメラ3を設け、監視カメラ3で撮像した魚類の画像を監視カメラ3に電気的に接続された画像処理装置(図示省略)で処理・解析することによって、監視水槽1に導入された検水の水質判定を行うものである。
【0015】
前記監視水槽1は、検水が連続的に導入される入水槽4と、入水槽4から流入した検水の中でメダカを遊泳させる遊泳槽5と、遊泳槽5からオーバーフローした検水を排出する排水槽6とからなる。その入水槽4、遊泳槽5、排水槽6は、互いに仕切壁7、8で仕切られている。そして、図示は省略するが、遊泳槽5を入水槽4および排水槽6と仕切る仕切壁7に、入水槽4と遊泳槽5とを連通させる通水孔と、遊泳槽5から排水槽6へ検水をオーバーフローさせるスリットが設けられている。その通水孔およびスリットは、メダカを通過させない寸法に形成されている。
【0016】
また、前記遊泳槽5には、メダカの死骸を捕捉するための捕集網(網状体)9が、監視カメラ3の直下を通って遊泳槽5を直線的に横断する方向に広がり、上端部を水面から突出させた状態で設置されている。なお、この捕集網9には遊泳するメダカが通過可能な孔(図示省略)が一部にあけられ、捕集網9で仕切られた2つの遊泳領域をメダカが自由に移動できるようになっている。
【0017】
前記照明器具2は、監視カメラ3の写角θの外側で、監視カメラ3の下端部を挟んで対向する位置から斜め下方に延びる一対の線光源10、10を備えている。その線光源10は、複数のLED11を直線状に並べたもので、水平投影面上で捕集網9の上端縁部と同じ方向に延びるように配され、各LED11から照射される光が捕集網9の上端縁部に当たるようになっている。言い換えると、捕集網9の上端縁部が、照明器具2の各線光源10から直接水面に向かう光路を遮る棒状体としての役割を果たしている。
【0018】
この水質監視装置は、上記の構成であり、監視水槽1の上方に照明器具2を設置したので、検水が多少濁っていても監視水槽1内を全体的に明るくすることができる。しかも、照明器具2の各線光源10からの直接光が水面より上にある捕集網9の上端縁部に当たって水面では反射しないようにしたので、水面の波打ち等があっても監視カメラ3で撮像した画像の解析結果への影響はほとんどない。すなわち、監視カメラ3の画像を解析する際には明暗によって容易に魚類を判別することができ、水質異常の誤検知が生じにくい。
【0019】
また、線光源10として複数のLED11を直線状に並べたものを採用したので、蛍光灯や白熱灯を用いる場合に比べて長寿命となるし、十分な照度を確保しながら光源の幅とその光路を遮る捕集網9の上端縁部の幅を狭くして、水面に映る影を小さくすることができ、これによっても水質判定の精度向上が図られている。
【0020】
なお、上述した実施形態では、各線光源10からの直接光を捕集網9の上端縁部に当てるようにしたが、捕集網9とは別に各線光源10から直接水面に向かう光路を遮る棒状体を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 監視水槽
2 照明器具
3 監視カメラ
4 入水槽
5 遊泳槽
6 排水槽
7、8 仕切壁
9 捕集網
10 線光源
11 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類を遊泳させる監視水槽の上方に、監視水槽の水面に向けて光を照射する照明器具と魚類を撮像する監視カメラを設け、前記監視カメラで撮像した魚類の画像を解析することによって前記監視水槽に導入された検水の水質判定を行う水質監視装置において、前記照明器具の光源を線光源とし、その線光源を前記監視カメラの写角から外れた位置に配するとともに、前記監視水槽の水面近傍に前記線光源から直接水面に向かう光路を遮る棒状体を設けたことを特徴とする水質監視装置。
【請求項2】
前記線光源を、複数のLEDを直線状に並べたものとしたことを特徴とする請求項1に記載の水質監視装置。
【請求項3】
前記監視水槽内に監視水槽を直線的に横断する網状体が設けられており、前記網状体の上端縁部を水面から突出させて前記棒状体としたことを特徴とする請求項1または2に記載の水質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191108(P2011−191108A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55755(P2010−55755)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)