水質自動監視装置及び低濃度毒性検知方法
【課題】希釈された低濃度の毒性でも検出することができる水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法及び水質自動監視装置の提供。
【解決手段】ヒメダカ11等の小型魚類を監視水槽4内に群れで飼育しておき、その監視水槽4に試料水を連続給水し、その試料水への有毒物質の混入を連続的に監視する水質自動監視装置において、ヒメダカ11等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽4の上部に設置したCCDビデオカメラ18で監視水槽4内のヒメダカ11の動きを撮影し、この映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにした。
【解決手段】ヒメダカ11等の小型魚類を監視水槽4内に群れで飼育しておき、その監視水槽4に試料水を連続給水し、その試料水への有毒物質の混入を連続的に監視する水質自動監視装置において、ヒメダカ11等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽4の上部に設置したCCDビデオカメラ18で監視水槽4内のヒメダカ11の動きを撮影し、この映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や湖沼水、地下水、湧水、排水などのあらゆる水に有害物質が含有したとき、ヒメダカなどの小型魚類を監視水槽に常時飼育しヒメダカ等の小型魚類の動きを画像処理により検知し自動で警報を発報する装置であって、市民の生命と安全、環境保護などのための水質自動監視装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水や湖沼水、地下水、湧水、排水などのあらゆる水に有毒物質が混入する事故が世界的に起こっている。
有毒物質はPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有機塩素系化合物、水銀、カドミュム、鉛、亜鉛、六価クロムなどの有害重金属、史上最悪といわれるダイオキシン、急性毒物であるシアン化カリウムや農薬などあり、また未知の毒物や複合した有毒物質であり、人間の有毒物質は970種で魚類はこのうち97%は反応すると言われており、試薬を使う化学分析法に比べてコストも安く、反応結果も早く、試料水を連続で検査できることから魚類を使ったバイオアッセイ法が広く認知され、魚類を監視水槽に常時飼育して試料水を連続給水してその水質を自動で監視をする装置が実用に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平63−169559号公報
【特許文献2】特開平07−063747号公報
【特許文献3】特開平09−229924号公報
【特許文献4】特開2002−257815号公報
【特許文献5】特開2004−125753号公報
【特許文献6】特開2008−134119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の魚類を監視水槽に飼育して水質を自動で監視をする装置には以下の問題があった。
有毒物質に反応する魚類の異常行動としては、従来、急性毒物のシアン系のシアン化カリウムに対しては魚類の呼吸器官が損傷を受けるため水面上に浮き上がって空気呼吸をする鼻上行動と言われる行動や農薬の殺虫剤でフェニトロチオンなどでは神経系の器官に損傷を受けるため水の中を狂奔する狂奔行動や死んで底部に沈む停止行動などを警報としていたが、これらの行動はいずれも有毒物質の濃度が高く魚類が毒性に身体的損傷を受けた結果の行動であった。
そのため稀釈された薄い毒性に対しては異常行動は現れずバイオアッセイ法が試薬を使う化学分析法に比べて劣るとされていた点であった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、希釈された低濃度の毒性でも検出することができる水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法及び水質自動監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法は、
ヒメダカ等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項7記載の水質自動監視装置は、
ヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と、
前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と、
前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメラと、
前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理手段と、
を備えていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、上述のように、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで、ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、希釈された低濃度の毒性でも検出することができるようになるという効果が得られる。
【0009】
即ち、人間の有毒物質が970種と言われる毒性の従来検査は、試薬を使ったサンプリング検査が主であり、連続水の検査をする装置を導入しようとすれば費用は比べようもない膨大な費用がかかる。しかもスペースも広大な面積を必要とするためサンプリング検査が主である。
例えば水道水は浄水場で製造されるが浄水場は連続的に原水を導水して、ろ過池や沈砂池等を通過しながら人が飲める浄水をつくるが、水道水を断水させることなく給水するためには原水を連続的に浄水場に導水する必要がある。
水道法による水質検査項目は50品目あるが、前記したように連続水の検査をする装置を導入しようとすれば多額の費用とスペースを必要とするため、月1度のサンプリング検査が現状である。
【0010】
連続導水の途中に監視水槽を置いて魚類監視をすることはサンプリング検査で見落としを補完できるが、監視水槽の魚類を常時人が目視するか自動検査装置で監視をするかどちらかである。
人が常時目視することは精神的にも肉体的にも苦痛が伴い、見落としや見誤りも当然起こってくる。そのため自動監視装置が実用に供されてきたが、従来は毒性の濃度が高い場合は監視魚類の身体の損傷による反応でこれらの装置は検出できたが、毒性濃度の薄いものでは身体の損傷が軽く判定が難しく、無理に警報を出そうとすれば正常行動との違いが余りなく誤判定による誤発報を出していた。
本発明によれば、小型魚類が大型魚類に捕食される時の危険を感じた時の群れが固まる捕食防御の生態本能から、低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を利用することで希釈された低濃度の毒性でも検出し、警報を発報することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例の水質自動監視装置における監視水槽の斜視図である。
【図2】本発明実施例の水質自動監視装置における監視水槽の平面図である。
【図3】本発明実施例の監視水槽の捕獲ネットの斜視図である。
【図4】本発明実施例の水質自動監視装置のシステム図である。
【図5】本発明実施例の水質自動監視装置の外観図である。
【図6】本発明実験例におけるモニターテレビの画面の映像に重畳配置されるセンサーブロック群を示す平面図である。
【図7】一つのセンサーブロックのセンサードットを示す拡大図である。
【図8】本発明実施例の水質自動監視装置における水質異常監視フローチャートである。
【図9】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意3監視フローチャートである。
【図10】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意2監視フローチャートである。
【図11】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意1監視フローチャートである。
【図12】本発明実験例におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露する前のヒメダカの群で動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
【図13】本発明実験例における図12の画像処理によりヒメダカの動きを検知したセンサードットの所属するセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【図14】本発明実験例におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露後のヒメダカの群が捕食防御本能で中心部に固まっている様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
【図15】本発明実験例における図14の映像の固まったヒメダカの一部のヒメダカの動きを検知したセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【図16】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【図17】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、この実施例1の水質自動監視装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1、2において、水槽全体1は受水槽2とポンプ水槽3と監視水槽4で構成されている。
【0015】
まず原水6は給水口5から原水6aが給水され、受水槽2に溜まる。受水槽2には階段式に開孔された数個の給水孔7があり、水位状態に応じて階段式に開孔された給水孔7からポンプ槽3に原水6bを給水する。
給水口5の給水量が給水孔7からポンプ槽3に給水する水量より多い場合は、原水6aは受水槽オーバーフロー管15から排水される。
ポンプ水槽3に給水された原水6bは、水中ポンプ8の運転可能水位5センチメートル以上になると原水6cを吸込み、勢いよく原水6dを監視水槽4の内壁面に向かって噴出する。
【0016】
四角形の監視水槽4の水中ポンプ8の噴出口の一角以外の三角に、つば板9a、つば板9b、つば板9cが装着される。
つば板9a、つば板9b、つば板9cは三日月形状で形成されているため原水は四角形の角に滞留せずにスムーズに監視水槽4内を回流する。
原水6dは原水6eとなり、最初のつば板9aにあたり監視水槽4の内壁面に沿って回流する。
例えば、つば板9を装着しなければ角に原水が滞留し腐敗を起こし、アンモニア等の発生でヒメダカの早期の死亡原因につながる。
【0017】
水中ポンプ8で噴出された原水6dはまず一番目のつば板9aにあたり、原水6eはスムーズな回流となって二番目のつば板9bにあたる。原水6eはスムーズな回流となって三番目のつば板9cにあたる。原水6eは原水6gとなり、回流となって最初の原水6dに合流して監視水槽4内を回流する。
【0018】
監視水槽4の内壁面に沿って回流する原水6dや原水6eや原水6gに対して、水流に向かって行動する習性をもつヒメダカ群は、有害物質が混入していない正常時は一定の場所に留まるのではなく行動する場所を移動する。
【0019】
つば板9cは多数孔10aを具備する。つば板9cの多数孔10aからは原水6fが常時流れ込み、例えば監視水槽4の水位が8センチメートル以上になると、つば板9cの対面のオーバーフロー管12から原水6fが排水される。
つば板9cの多数孔10aの一つの孔の直径はヒメダカ11より小径であるためヒメダカ11が多数孔10aの孔を通過することはない。
【0020】
オーバーフロー管12の下部に水位調整管13が接続され、水位調整管13の延長配管と排水口17の延長配管を監視水槽4の下限水位5センチメートルの位置で連結配管したため、下限水位5センチメートル以下になると原水6fと原水6hは排水を停止し、下限水位5センチメートルを保持する。
監視水槽4は最低水位5センチメートルを保持するため、ヒメダカ群が乾水で死亡することはない。
【0021】
回流する原水6eは原水6gとなり、監視水槽4の内壁面に沿って回流し、原水6gは捕獲ネット16の網目16eを通過して原水6dに合流する。
原水6gの一部は監視水槽4とポンプ水槽3間の仕切板14の多数孔10bからポンプ水槽3に流れ込む。仕切板14の多数孔10bの一つの孔の直径はヒメダカ11より小径であるためヒメダカ11が多数孔10bの孔を通過することはない。
【0022】
監視水槽4の上限水位は8センチメートルで下限水位は5センチメートルで設定されているが、下限水位5センチメートルの設定は、ヒメダカの生存可能最低水位である。
【0023】
ポンプ水槽3の下限水位5センチメートルは、水中ポンプ8の空運転故障防止の最低運転可能水位でもある。例えば水位が5センチメートル以下になると、水中ポンプ8は空運転となり、水中ポンプの歯車が加熱し回転停止となる。
下限水位5センチメートルが保持されているため、たとえ給水口5から原水6aの給水が停止しても水中ポンプ8は運転を持続し、監視水槽4内の回流も持続することでヒメダカ群は生存が可能となる。
【0024】
また監視水槽4の上限水位8センチメートル下限水位5センチメートルは、メダカが田圃や小川の浅い水位を好んで生息する習性に合わせている。
また自然界のメダカは、群れで生息する習性をもち、水の流れがある田圃や小川を好んだ生息環境と習性をもつため、本実施例の監視水槽4は約20匹のヒメダカを群で飼育し、監視水槽4内の水位を浅くして、原水を常に回流している。
【0025】
図3において、捕獲ネット16は支柱16aに網目16eを繋着し、網目16eの周辺を縁布16b、縁布16c、縁布16dで付着することで網目16eを水流で形状が変化しないように強化している。
捕獲ネット16の網目16eは、原水6gは通過し、ヒメダカ11dも通過可能であるが、弱ったヒメダカや死亡したヒメダカは横向きの状態で捕獲ネット16に掛止した状態で捕持される。
【0026】
前記支柱16aは支柱固定管16fに固着され、支柱固定管16fは網16gを付着してヒメダカ11の通過を防止し、支柱固定管16fは監視水槽4の底部の中心部に具備した排水口17に冠着する。
【0027】
縁布16dは監視水槽4の底部に密着し、縁布16bは監視水槽4の上限水位8センチメートルと同じ位置にあり、縁布16cは仕切板14に掛着するため、ヒメダカ11dが捕獲ネット16の隙間から通過することはない。
【0028】
監視水槽4を原水6d、原水6e、原水6gは回流しながら給水量と同じ水量を排水して常に新しい原水にヒメダカ群を曝す状態で原水中の毒物含有の監視を可能とする。
【0029】
例えば、原水に毒物や有害物質が含有すると、ヒメダカは含水中の毒性に侵され監視水槽4内の回流に流され捕獲ネット16に掛止する。ヒメダカ11dは死亡しているわけではないが、回流の水圧によって捕獲ネット16に掛止した状態で捕持される。
【0030】
監視水槽4のヒメダカ群の餌は採餌器Cから自動的に毎日1〜2回電気的に給する。
【0031】
監視水槽4のヒメダカ11を監視カメラ18で撮影するが、撮影効果を上げるために5Wの小型の蛍光灯Dが24時間連続点灯している。
小型の5Wの蛍光灯によって光合成が抑制され監視水槽4内の藻の発生を抑えることができる。
【0032】
図4〜7において、本実施例の水質自動監視装置には、
ヒメダカ11を群れ(この実施例では約20匹)で飼育する監視水槽4と、
監視水槽4内に原水6を連続供給する給水手段としての水中ポンプ8と、
監視水槽4内のヒメダカ11の動きを監視水槽4の上部から俯瞰撮影するCCDビデオカメラ18と、
CCDビデオカメラ18で撮影した映像を4つの同一映像(「異常」用、「注意3」用、「注意2」用、「注意1」用)に分配する映像分配部Eと、
映像分配部Eで分配された4つの映像をタイマー制御部Hにより「異常」用、「注意3」用、「注意2」用、「注意1」用の順に0.5秒間隔で順次取り込み、取り込まれた各映像をそれぞれ画像処理によって監視水槽4全面に総数3584個設定されたセンサードットsを64個のセンサードット毎に分割したセンサーブロックSを縦横に配置し、監視水槽4内のヒメダカ11が動いて各センサーブロックS内のセンサードットsに触れるとセンサーブロックSを計数し、計数されたセンサーブロック数が、タイマー制御部Hにより予め設定した検知時間(「異常」用は75秒、「注意3」用は60秒、「注意2」用は45秒、「注意1」用は30秒)連続して、予め設定した設定ブロック数(「異常」用は4、「注意3」用は6、「注意2」用は8、「注意1」用は10)以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知する画像処理部Fと、
CCDビデオカメラ18で撮影したヒメダカの映像と該映像に計数されたセンサーブロックSを映像にして重畳表示するモニターテレビJと、
前記画像処理部Fで原水への低濃度有毒物質の混入を検知すると「異常」、「注意3」、「注意2」、「注意1」の警報をそれぞれ発報する警報出力部Gと、
警報出力部Gで出力された警報をそれぞれ独立に表示する表示部Iと、
を主な構成として備えている。
【0033】
即ち、例えば、原水6に低濃度の有毒物質が混入すると、画像処理部Fで計数されたセンサーブロックSの数によって警報を段階的に自動発報する。段階的な自動発報は事前警報の「注意1」、「注意2」、「注意3」、と緊急対応の「異常」の4段階である。
なお、この実施例では、低濃度有害物質、例えば、シアン化カリウム(0.02mg/L)の混入を監視するために、計数されたセンサーブロックSの数が予め設定された検知時間連続して10以下になると「注意1」、8以下になると「注意2」、6以下になると「注意3」、4以下になると「異常」と判定されるように、4段階の設定ブロック数(10、8、6、4)が予め設定されている。
【0034】
例えば、原水6に低濃度有害物質が混入し、画像処理部Fで計数されたセンサーブロックSの数が予め設定された「異常」用検知時間(75秒)連続して予め設定された「異常」用設定ブロック数(4)以下であると、「異常」と判定し、緊急対応策として、警報出力部Gでは、電磁弁Aを開いて監視水槽4の原水6を検査水にするために採水容器Bに自動的に保管すると共に、表示パネルIの「異常」のランプ点滅やブザー放鳴や外部出力Kで管理者に知らせる。
【0035】
また、表示パネルIは、水質の警報出力G以外に装置警報Lとして、漏水や水位異常や蛍光灯断なども個別に表示する、漏水警報は漏水パットの漏水センサーで感知して漏水警報とし、水位異常警報は監視水槽4に装着した水位センサーで感知して水位異常警報とし、蛍光灯断警報は通電センサーで感知して蛍光灯断警報とする、水位センサーは受水槽2の内壁に設置する、装置警報Lも外部出力Kから外部に発信する。
【0036】
次に、図8〜11の水質監視フローチャートに基づいて水質監視制御の内容を説明する。なお、図8は異常監視フローチャート、図9は注意3監視フローチャート、図10は注意2監視フローチャート、図11は注意1監視フローチャートである。
この4つの水質監視フローチャートにおいて、ヒメダカ11の行動が確認されると、待機モードから監視モードへ移行し、監視状態に入る。
【0037】
監視がスタートすると、ステップS1、S11、S21、S31で監視タイマーが同時に起動し、この時点でステップS2、S12、S22、S32の「異常」用映像処理、「注意3」用映像処理、「注意2」用映像処理、「注意1」用映像処理における画像処理情報がそれぞれ有効となる。
なお、この映像処理は、ステップS1の「異常」用映像処理、ステップS11の「注意3」用映像処理、ステップ21の「注意2」用映像処理、ステップ31の「注意1」用映像処理の順で、0.5秒毎に連続してスタートするようにタイマー制御部Hで設定されている。
【0038】
続くステップS3、S13、S23、S33では、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)であるか否か(センサーブロック判定)が判定され、NO(それぞれ4、6、8、10より多い)である時は、ステップS4、S14、S24、S34でそれぞれタイマーリセットした後、ステップS1、S11、S21、S31に戻る。
【0039】
ステップS3、S13、S23、S33の判定がYES(それぞれ4、6、8、10以下)である時は、2秒後にステップS5、S15、S25、S35に進み、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)であるか否か(センサーブロック判定)が再判定される。
即ち、この再判定は2秒(0.5秒×4)毎に行われ、予め設定された検知時間75秒、60秒、45秒、30秒の時間継続して計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10より多い(NO)時は、ステップS4、S14、S24、S34でそれぞれタイマーリセットした後、ステップS1、S11、S21、S31に戻る。
【0040】
また、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)である時は、ステップS6、S16、S26、S36に進んでそれぞれタイムアップした後、ステップS7、S17、S27、S37に進み、水質の「異常」、「注意3」、「注意2」、「注意1」をそれぞれ検知して警報を発報する。「注意3」、「注意2」、「注意1」の場合は、何度も警報を連続発報し、元の監視状態に戻ることもあるが、「異常」の場合は、監視状態に戻ることはない。
【0041】
次に、実験例を表1、2、図12〜15に基づいて説明する。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
即ち、表1は、シアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露した時の警報の発報経過を試験した表である。
シアン化カリウムの0.02mg/Lは水道法(厚生労働省所管の水道法)によるシアン化カリウムの許容量0.01mg/Lの1段上の危険と認定された濃度であり0.02mg/Lで検出できるのは、従来は試薬を使った化学分析法でバイオアッセイ法では検出できなかった。
【0045】
表2は警報を「注意1」、「注意2」、「注意3」、「異常」の4段階に設定できる表を示す。
「注意1」は警報としては一番軽い警報で順次重い警報になり重大警報は異常で示す。例えば表2によれば注意1の警報は計数されたセンサーブロック数10個、検知時間30秒、動作時間0.5秒の設定であり、これはセンサーブロック10個より多い数を検知時間30秒以内で計数できなかったとき「注意1」の警報を発報することを指し示す。
【0046】
映像のスキャン取り込みは0.5秒間隔で行われる。例えば監視水槽4内に20匹のヒメダカが飼育されている場合は最大で20個のセンサーブロックが計数される。「注意1」の警報が発報されても、発報後の次の30秒以内にセンサーブロック10個より多い数が計数できれば正常状態に自動復帰する。「注意2」、「注意3」も同様である。
しかし異常警報は一度発報すると正常状態に自動復帰できず、手動で復帰させなければならない。
【0047】
各警報は計数されたセンサーブロックの設定ブロック数と検知時間の設定が自由にできる。本件試験によるシアン化カリウムの0.02mg/Lの試験では、警報の「注意1」はセンサーブロック10個、設定時間30秒、動作時間0.5秒で設定し、警報の「注意2」はセンサーブロック8個、設定時間45秒、動作時間0.5秒で設定、警報の「注意3」はセンサーブロック6個、設定時間60秒、動作時間0.5秒で設定、異常警報はセンサーブロック4個、設定時間75秒、動作時間0.5秒で設定した。
【0048】
表1が示すように縦軸はヒメダカの活動数を表し、横軸は試験経過時間を表す。本件試験では監視水槽にヒメダカを20匹入れ試験時間は20時間までとした。
シアン化カリウムの濃度が高い時はヒメダカは順次死んでいくため20匹の数が経過時間とともに右下がりで活動数が下がるが、本件試験のシアン化カリウムの0.02mg/Lでは20時間まで経過しても1匹も死んでいないことを横軸は示している、しかし経過時間で1時間後には注意1が発報し、2時間後には注意2が発報し、7時間後には注意3が発報し、11時間後には重大警報の異常が発報していることが表で分かる。
【0049】
図12の写真は、本件試験におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露する前のヒメダカ群の動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像で、図13の写真は、画像処理によりヒメダカの動きを検知したセンサードットの所属するセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【0050】
図13の写真ではセンサーブロックが12個表示されている。一番軽い注意1の警報はブロック10個以内が警報の対象になるため、12個では警報の対象にならない。
【0051】
図14の写真は、本件試験におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露後のヒメダカ群の動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
監視水槽内のヒメダカの群れは表1が示すように20時間経過しても1匹も死なないシアン化カリウムの0.02mg/Lの希釈された毒性では捕食防御本能で群れが固まる生態本能を示す。
【0052】
図15の写真は、センサーブロックが4個しか表示されていないように、シアン化カリウム0.02mg/Lの毒性で群れが捕食防御本能で固まり、センサーブロック4個しか表示されていないため異常警報の対象である。即ち、4個以下のセンサーブロック(4個、3個、2個、1個、0個)は異常警報の対象になる。ただし設定時間75秒内に例えば4個より多い数が計数されれば異常警報は出ずに注意3の警報が発報されることになる。
【0053】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1の水質自動監視装置では、上述のように、ヒメダカ11等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽4と、監視水槽4内に原水6を連続供給する水中ポンプ8と、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを上部から俯瞰撮影するCCDビデオカメラ18と、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理部Fと、を備える。
これにより、ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、希釈された低濃度の毒性でも容易かつ連続的に検出することができるようになるという効果が得られる。
【0054】
また、画像処理部Fで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報する警報出力部Gを備えることで、この警報により管理者に自動的に確実かつ迅速に知らせることができる。
【0055】
また、CCDビデオカメラ18は、監視水槽4の上部に備えられ、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを俯瞰撮影するようにしたことで、監視水槽の透明側壁を透して側面から撮影する方式に比べて透明側内壁に付着する藻により魚形の撮影が妨害される虞がない点で有利である。
【0056】
また、画像処理部Fは、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態をセンサードットsで検知するもので、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理により監視水槽4全面に所定数のセンサードットs毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックSを配置し、監視水槽4内のヒメダカ11が動いて各センサーブロックS内のセンサードットsに触れるとセンサーブロックSが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにした。
これにより、ヒメダカ11が群れで固まる状態を容易かつ確実に検知することができる。
【0057】
また、画像処理部Fは、設定ブロック数を段階的に複数設定し、センサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して警報出力部Gで異常警報を発報し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して警報出力部で注意警報を発報するようにした。
これにより、緊急対応である異常状態を検知する前に、事前に段階的に警報を発報することができ、これにより緊急時の対応を早めることができる。
【0058】
また、1回の検知でセンサーブロックSの計数が設定ブロック数(「異常」用は4、「注意3」用は6、「注意2」用は8,「注意1」用は10)以下と判定しても、ヒメダカ11は常に動いているため、一瞬だけかもしれないし、また、大きな音や振動で驚いて瞬間的に設定ブロック数以下になることもある。そのための確認機能としてタイマー制御部Hで、検知時間(「異常」用は75秒、「注意3」用は60秒、「注意2」用は45秒、「注意1」用は30秒)を設定し、この検知時間連続してセンサーブロックSの計数が設定ブロック数以下となった場合に異常状態または注意状態を検出して警報を発報する。
この検知時間の設定により、信頼できる警報を発報することができる。
なお、注意警報の段階、設定ブロック数、検知時間等は、状況に応じて任意に設定することができる。
【0059】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0060】
例えば、実施例では、CCDビデオカメラ18は、監視水槽4の上部に備えられ、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを俯瞰撮影するようにしたが、その他に、例えば、図16に示すように、CCDビデオカメラ18aで透明監視水槽Xの透明側壁を透して側面から撮影するようにしてもよい。
【0061】
また、実施例では、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態をセンサードットsで検知するようにしたが、その他に、以下のような方法で検知することも可能である。
即ち、CCDビデオカメラ18aと画像処理(画像解析とも言う)の産業場の利用は、画像処理は本来製造ラインで使用される場合が大半で、例えば製品のラベルのゆがみや欠損や基板のハンダミス等を人間の目の変わりで見分けている。
解析方法は、CCDビデオカメラ18aの画総数が例えば40万画素数あれば、1画素毎に0か1のデジタル処理を行い、黒を1、白を0として判定し1と0を計量する。
そのため外光の変化に大変弱く、照明照度を一定に保つことが重要である。
これを魚類を使った水質自動監視装置に利用するためには、図17に示すように、透明監視水槽Xの側面から照明をあて、その影を透明監視水槽Xの反対側に白いスクリーン幕Wを設置して影絵をCCDビデオカメラ18aで撮影し、撮影された影絵はデジタル処理で黒を1、白を0で判定軽量される。そして、黒の1と白の0の量はコンピューターYで瞬時に計算される。ヒメダカ11eを多数透明監視水槽Xに入れておけば位置の特定で固まりが判定され、固まりの移動も判定される。また魚類が死んだりして下に沈んだりすれば黒の1の量が減ることになり、それを警報とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明に係る水質自動監視装置は、水道事業体以外にも飲料水メーカーや食品メーカーなど水を使用する全ての産業に利用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 水槽全体
2 受水槽
3 ポンプ水槽
4 監視水槽
5 給水口
6、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h 原水
7 給水口
8 水中ポンプ
9、9a、9b、9c つば板
10a、10b 多数孔
11、11a、11b、11c、11d、11e ヒメダカ
12 オーバーフロー管
13 水位調整管
14 仕切板
15 受水槽オーバーフロー管
16 捕獲ネット
16a 支柱
16b、16c、16d 縁布
16e 網目
16f 支柱固定管
16g 網
17 排水口
18、18a CCDビデオカメラ
A 電磁弁
B 採水容器
C 給餌器
D 蛍光灯
E 映像分配部
F 画像処理部
G 警報出力部
H タイマー制御部
I 表示パネル
J モニターテレビ
K 外部出力
L 装置警報
S センサーブロック
s センサードット
X 透明監視水槽
Y コンピューター
Z 画像解析ボード
L ライト
W 白いスクリーン幕
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や湖沼水、地下水、湧水、排水などのあらゆる水に有害物質が含有したとき、ヒメダカなどの小型魚類を監視水槽に常時飼育しヒメダカ等の小型魚類の動きを画像処理により検知し自動で警報を発報する装置であって、市民の生命と安全、環境保護などのための水質自動監視装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水や湖沼水、地下水、湧水、排水などのあらゆる水に有毒物質が混入する事故が世界的に起こっている。
有毒物質はPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有機塩素系化合物、水銀、カドミュム、鉛、亜鉛、六価クロムなどの有害重金属、史上最悪といわれるダイオキシン、急性毒物であるシアン化カリウムや農薬などあり、また未知の毒物や複合した有毒物質であり、人間の有毒物質は970種で魚類はこのうち97%は反応すると言われており、試薬を使う化学分析法に比べてコストも安く、反応結果も早く、試料水を連続で検査できることから魚類を使ったバイオアッセイ法が広く認知され、魚類を監視水槽に常時飼育して試料水を連続給水してその水質を自動で監視をする装置が実用に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平63−169559号公報
【特許文献2】特開平07−063747号公報
【特許文献3】特開平09−229924号公報
【特許文献4】特開2002−257815号公報
【特許文献5】特開2004−125753号公報
【特許文献6】特開2008−134119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の魚類を監視水槽に飼育して水質を自動で監視をする装置には以下の問題があった。
有毒物質に反応する魚類の異常行動としては、従来、急性毒物のシアン系のシアン化カリウムに対しては魚類の呼吸器官が損傷を受けるため水面上に浮き上がって空気呼吸をする鼻上行動と言われる行動や農薬の殺虫剤でフェニトロチオンなどでは神経系の器官に損傷を受けるため水の中を狂奔する狂奔行動や死んで底部に沈む停止行動などを警報としていたが、これらの行動はいずれも有毒物質の濃度が高く魚類が毒性に身体的損傷を受けた結果の行動であった。
そのため稀釈された薄い毒性に対しては異常行動は現れずバイオアッセイ法が試薬を使う化学分析法に比べて劣るとされていた点であった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、希釈された低濃度の毒性でも検出することができる水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法及び水質自動監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法は、
ヒメダカ等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項7記載の水質自動監視装置は、
ヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と、
前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と、
前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメラと、
前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理手段と、
を備えていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、上述のように、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで、ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、希釈された低濃度の毒性でも検出することができるようになるという効果が得られる。
【0009】
即ち、人間の有毒物質が970種と言われる毒性の従来検査は、試薬を使ったサンプリング検査が主であり、連続水の検査をする装置を導入しようとすれば費用は比べようもない膨大な費用がかかる。しかもスペースも広大な面積を必要とするためサンプリング検査が主である。
例えば水道水は浄水場で製造されるが浄水場は連続的に原水を導水して、ろ過池や沈砂池等を通過しながら人が飲める浄水をつくるが、水道水を断水させることなく給水するためには原水を連続的に浄水場に導水する必要がある。
水道法による水質検査項目は50品目あるが、前記したように連続水の検査をする装置を導入しようとすれば多額の費用とスペースを必要とするため、月1度のサンプリング検査が現状である。
【0010】
連続導水の途中に監視水槽を置いて魚類監視をすることはサンプリング検査で見落としを補完できるが、監視水槽の魚類を常時人が目視するか自動検査装置で監視をするかどちらかである。
人が常時目視することは精神的にも肉体的にも苦痛が伴い、見落としや見誤りも当然起こってくる。そのため自動監視装置が実用に供されてきたが、従来は毒性の濃度が高い場合は監視魚類の身体の損傷による反応でこれらの装置は検出できたが、毒性濃度の薄いものでは身体の損傷が軽く判定が難しく、無理に警報を出そうとすれば正常行動との違いが余りなく誤判定による誤発報を出していた。
本発明によれば、小型魚類が大型魚類に捕食される時の危険を感じた時の群れが固まる捕食防御の生態本能から、低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を利用することで希釈された低濃度の毒性でも検出し、警報を発報することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例の水質自動監視装置における監視水槽の斜視図である。
【図2】本発明実施例の水質自動監視装置における監視水槽の平面図である。
【図3】本発明実施例の監視水槽の捕獲ネットの斜視図である。
【図4】本発明実施例の水質自動監視装置のシステム図である。
【図5】本発明実施例の水質自動監視装置の外観図である。
【図6】本発明実験例におけるモニターテレビの画面の映像に重畳配置されるセンサーブロック群を示す平面図である。
【図7】一つのセンサーブロックのセンサードットを示す拡大図である。
【図8】本発明実施例の水質自動監視装置における水質異常監視フローチャートである。
【図9】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意3監視フローチャートである。
【図10】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意2監視フローチャートである。
【図11】本発明実施例の水質自動監視装置における水質注意1監視フローチャートである。
【図12】本発明実験例におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露する前のヒメダカの群で動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
【図13】本発明実験例における図12の画像処理によりヒメダカの動きを検知したセンサードットの所属するセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【図14】本発明実験例におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露後のヒメダカの群が捕食防御本能で中心部に固まっている様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
【図15】本発明実験例における図14の映像の固まったヒメダカの一部のヒメダカの動きを検知したセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【図16】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【図17】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、この実施例1の水質自動監視装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1、2において、水槽全体1は受水槽2とポンプ水槽3と監視水槽4で構成されている。
【0015】
まず原水6は給水口5から原水6aが給水され、受水槽2に溜まる。受水槽2には階段式に開孔された数個の給水孔7があり、水位状態に応じて階段式に開孔された給水孔7からポンプ槽3に原水6bを給水する。
給水口5の給水量が給水孔7からポンプ槽3に給水する水量より多い場合は、原水6aは受水槽オーバーフロー管15から排水される。
ポンプ水槽3に給水された原水6bは、水中ポンプ8の運転可能水位5センチメートル以上になると原水6cを吸込み、勢いよく原水6dを監視水槽4の内壁面に向かって噴出する。
【0016】
四角形の監視水槽4の水中ポンプ8の噴出口の一角以外の三角に、つば板9a、つば板9b、つば板9cが装着される。
つば板9a、つば板9b、つば板9cは三日月形状で形成されているため原水は四角形の角に滞留せずにスムーズに監視水槽4内を回流する。
原水6dは原水6eとなり、最初のつば板9aにあたり監視水槽4の内壁面に沿って回流する。
例えば、つば板9を装着しなければ角に原水が滞留し腐敗を起こし、アンモニア等の発生でヒメダカの早期の死亡原因につながる。
【0017】
水中ポンプ8で噴出された原水6dはまず一番目のつば板9aにあたり、原水6eはスムーズな回流となって二番目のつば板9bにあたる。原水6eはスムーズな回流となって三番目のつば板9cにあたる。原水6eは原水6gとなり、回流となって最初の原水6dに合流して監視水槽4内を回流する。
【0018】
監視水槽4の内壁面に沿って回流する原水6dや原水6eや原水6gに対して、水流に向かって行動する習性をもつヒメダカ群は、有害物質が混入していない正常時は一定の場所に留まるのではなく行動する場所を移動する。
【0019】
つば板9cは多数孔10aを具備する。つば板9cの多数孔10aからは原水6fが常時流れ込み、例えば監視水槽4の水位が8センチメートル以上になると、つば板9cの対面のオーバーフロー管12から原水6fが排水される。
つば板9cの多数孔10aの一つの孔の直径はヒメダカ11より小径であるためヒメダカ11が多数孔10aの孔を通過することはない。
【0020】
オーバーフロー管12の下部に水位調整管13が接続され、水位調整管13の延長配管と排水口17の延長配管を監視水槽4の下限水位5センチメートルの位置で連結配管したため、下限水位5センチメートル以下になると原水6fと原水6hは排水を停止し、下限水位5センチメートルを保持する。
監視水槽4は最低水位5センチメートルを保持するため、ヒメダカ群が乾水で死亡することはない。
【0021】
回流する原水6eは原水6gとなり、監視水槽4の内壁面に沿って回流し、原水6gは捕獲ネット16の網目16eを通過して原水6dに合流する。
原水6gの一部は監視水槽4とポンプ水槽3間の仕切板14の多数孔10bからポンプ水槽3に流れ込む。仕切板14の多数孔10bの一つの孔の直径はヒメダカ11より小径であるためヒメダカ11が多数孔10bの孔を通過することはない。
【0022】
監視水槽4の上限水位は8センチメートルで下限水位は5センチメートルで設定されているが、下限水位5センチメートルの設定は、ヒメダカの生存可能最低水位である。
【0023】
ポンプ水槽3の下限水位5センチメートルは、水中ポンプ8の空運転故障防止の最低運転可能水位でもある。例えば水位が5センチメートル以下になると、水中ポンプ8は空運転となり、水中ポンプの歯車が加熱し回転停止となる。
下限水位5センチメートルが保持されているため、たとえ給水口5から原水6aの給水が停止しても水中ポンプ8は運転を持続し、監視水槽4内の回流も持続することでヒメダカ群は生存が可能となる。
【0024】
また監視水槽4の上限水位8センチメートル下限水位5センチメートルは、メダカが田圃や小川の浅い水位を好んで生息する習性に合わせている。
また自然界のメダカは、群れで生息する習性をもち、水の流れがある田圃や小川を好んだ生息環境と習性をもつため、本実施例の監視水槽4は約20匹のヒメダカを群で飼育し、監視水槽4内の水位を浅くして、原水を常に回流している。
【0025】
図3において、捕獲ネット16は支柱16aに網目16eを繋着し、網目16eの周辺を縁布16b、縁布16c、縁布16dで付着することで網目16eを水流で形状が変化しないように強化している。
捕獲ネット16の網目16eは、原水6gは通過し、ヒメダカ11dも通過可能であるが、弱ったヒメダカや死亡したヒメダカは横向きの状態で捕獲ネット16に掛止した状態で捕持される。
【0026】
前記支柱16aは支柱固定管16fに固着され、支柱固定管16fは網16gを付着してヒメダカ11の通過を防止し、支柱固定管16fは監視水槽4の底部の中心部に具備した排水口17に冠着する。
【0027】
縁布16dは監視水槽4の底部に密着し、縁布16bは監視水槽4の上限水位8センチメートルと同じ位置にあり、縁布16cは仕切板14に掛着するため、ヒメダカ11dが捕獲ネット16の隙間から通過することはない。
【0028】
監視水槽4を原水6d、原水6e、原水6gは回流しながら給水量と同じ水量を排水して常に新しい原水にヒメダカ群を曝す状態で原水中の毒物含有の監視を可能とする。
【0029】
例えば、原水に毒物や有害物質が含有すると、ヒメダカは含水中の毒性に侵され監視水槽4内の回流に流され捕獲ネット16に掛止する。ヒメダカ11dは死亡しているわけではないが、回流の水圧によって捕獲ネット16に掛止した状態で捕持される。
【0030】
監視水槽4のヒメダカ群の餌は採餌器Cから自動的に毎日1〜2回電気的に給する。
【0031】
監視水槽4のヒメダカ11を監視カメラ18で撮影するが、撮影効果を上げるために5Wの小型の蛍光灯Dが24時間連続点灯している。
小型の5Wの蛍光灯によって光合成が抑制され監視水槽4内の藻の発生を抑えることができる。
【0032】
図4〜7において、本実施例の水質自動監視装置には、
ヒメダカ11を群れ(この実施例では約20匹)で飼育する監視水槽4と、
監視水槽4内に原水6を連続供給する給水手段としての水中ポンプ8と、
監視水槽4内のヒメダカ11の動きを監視水槽4の上部から俯瞰撮影するCCDビデオカメラ18と、
CCDビデオカメラ18で撮影した映像を4つの同一映像(「異常」用、「注意3」用、「注意2」用、「注意1」用)に分配する映像分配部Eと、
映像分配部Eで分配された4つの映像をタイマー制御部Hにより「異常」用、「注意3」用、「注意2」用、「注意1」用の順に0.5秒間隔で順次取り込み、取り込まれた各映像をそれぞれ画像処理によって監視水槽4全面に総数3584個設定されたセンサードットsを64個のセンサードット毎に分割したセンサーブロックSを縦横に配置し、監視水槽4内のヒメダカ11が動いて各センサーブロックS内のセンサードットsに触れるとセンサーブロックSを計数し、計数されたセンサーブロック数が、タイマー制御部Hにより予め設定した検知時間(「異常」用は75秒、「注意3」用は60秒、「注意2」用は45秒、「注意1」用は30秒)連続して、予め設定した設定ブロック数(「異常」用は4、「注意3」用は6、「注意2」用は8、「注意1」用は10)以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知する画像処理部Fと、
CCDビデオカメラ18で撮影したヒメダカの映像と該映像に計数されたセンサーブロックSを映像にして重畳表示するモニターテレビJと、
前記画像処理部Fで原水への低濃度有毒物質の混入を検知すると「異常」、「注意3」、「注意2」、「注意1」の警報をそれぞれ発報する警報出力部Gと、
警報出力部Gで出力された警報をそれぞれ独立に表示する表示部Iと、
を主な構成として備えている。
【0033】
即ち、例えば、原水6に低濃度の有毒物質が混入すると、画像処理部Fで計数されたセンサーブロックSの数によって警報を段階的に自動発報する。段階的な自動発報は事前警報の「注意1」、「注意2」、「注意3」、と緊急対応の「異常」の4段階である。
なお、この実施例では、低濃度有害物質、例えば、シアン化カリウム(0.02mg/L)の混入を監視するために、計数されたセンサーブロックSの数が予め設定された検知時間連続して10以下になると「注意1」、8以下になると「注意2」、6以下になると「注意3」、4以下になると「異常」と判定されるように、4段階の設定ブロック数(10、8、6、4)が予め設定されている。
【0034】
例えば、原水6に低濃度有害物質が混入し、画像処理部Fで計数されたセンサーブロックSの数が予め設定された「異常」用検知時間(75秒)連続して予め設定された「異常」用設定ブロック数(4)以下であると、「異常」と判定し、緊急対応策として、警報出力部Gでは、電磁弁Aを開いて監視水槽4の原水6を検査水にするために採水容器Bに自動的に保管すると共に、表示パネルIの「異常」のランプ点滅やブザー放鳴や外部出力Kで管理者に知らせる。
【0035】
また、表示パネルIは、水質の警報出力G以外に装置警報Lとして、漏水や水位異常や蛍光灯断なども個別に表示する、漏水警報は漏水パットの漏水センサーで感知して漏水警報とし、水位異常警報は監視水槽4に装着した水位センサーで感知して水位異常警報とし、蛍光灯断警報は通電センサーで感知して蛍光灯断警報とする、水位センサーは受水槽2の内壁に設置する、装置警報Lも外部出力Kから外部に発信する。
【0036】
次に、図8〜11の水質監視フローチャートに基づいて水質監視制御の内容を説明する。なお、図8は異常監視フローチャート、図9は注意3監視フローチャート、図10は注意2監視フローチャート、図11は注意1監視フローチャートである。
この4つの水質監視フローチャートにおいて、ヒメダカ11の行動が確認されると、待機モードから監視モードへ移行し、監視状態に入る。
【0037】
監視がスタートすると、ステップS1、S11、S21、S31で監視タイマーが同時に起動し、この時点でステップS2、S12、S22、S32の「異常」用映像処理、「注意3」用映像処理、「注意2」用映像処理、「注意1」用映像処理における画像処理情報がそれぞれ有効となる。
なお、この映像処理は、ステップS1の「異常」用映像処理、ステップS11の「注意3」用映像処理、ステップ21の「注意2」用映像処理、ステップ31の「注意1」用映像処理の順で、0.5秒毎に連続してスタートするようにタイマー制御部Hで設定されている。
【0038】
続くステップS3、S13、S23、S33では、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)であるか否か(センサーブロック判定)が判定され、NO(それぞれ4、6、8、10より多い)である時は、ステップS4、S14、S24、S34でそれぞれタイマーリセットした後、ステップS1、S11、S21、S31に戻る。
【0039】
ステップS3、S13、S23、S33の判定がYES(それぞれ4、6、8、10以下)である時は、2秒後にステップS5、S15、S25、S35に進み、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)であるか否か(センサーブロック判定)が再判定される。
即ち、この再判定は2秒(0.5秒×4)毎に行われ、予め設定された検知時間75秒、60秒、45秒、30秒の時間継続して計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10より多い(NO)時は、ステップS4、S14、S24、S34でそれぞれタイマーリセットした後、ステップS1、S11、S21、S31に戻る。
【0040】
また、計数されたセンサーブロック数がそれぞれ4、6、8、10以下(YES)である時は、ステップS6、S16、S26、S36に進んでそれぞれタイムアップした後、ステップS7、S17、S27、S37に進み、水質の「異常」、「注意3」、「注意2」、「注意1」をそれぞれ検知して警報を発報する。「注意3」、「注意2」、「注意1」の場合は、何度も警報を連続発報し、元の監視状態に戻ることもあるが、「異常」の場合は、監視状態に戻ることはない。
【0041】
次に、実験例を表1、2、図12〜15に基づいて説明する。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
即ち、表1は、シアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露した時の警報の発報経過を試験した表である。
シアン化カリウムの0.02mg/Lは水道法(厚生労働省所管の水道法)によるシアン化カリウムの許容量0.01mg/Lの1段上の危険と認定された濃度であり0.02mg/Lで検出できるのは、従来は試薬を使った化学分析法でバイオアッセイ法では検出できなかった。
【0045】
表2は警報を「注意1」、「注意2」、「注意3」、「異常」の4段階に設定できる表を示す。
「注意1」は警報としては一番軽い警報で順次重い警報になり重大警報は異常で示す。例えば表2によれば注意1の警報は計数されたセンサーブロック数10個、検知時間30秒、動作時間0.5秒の設定であり、これはセンサーブロック10個より多い数を検知時間30秒以内で計数できなかったとき「注意1」の警報を発報することを指し示す。
【0046】
映像のスキャン取り込みは0.5秒間隔で行われる。例えば監視水槽4内に20匹のヒメダカが飼育されている場合は最大で20個のセンサーブロックが計数される。「注意1」の警報が発報されても、発報後の次の30秒以内にセンサーブロック10個より多い数が計数できれば正常状態に自動復帰する。「注意2」、「注意3」も同様である。
しかし異常警報は一度発報すると正常状態に自動復帰できず、手動で復帰させなければならない。
【0047】
各警報は計数されたセンサーブロックの設定ブロック数と検知時間の設定が自由にできる。本件試験によるシアン化カリウムの0.02mg/Lの試験では、警報の「注意1」はセンサーブロック10個、設定時間30秒、動作時間0.5秒で設定し、警報の「注意2」はセンサーブロック8個、設定時間45秒、動作時間0.5秒で設定、警報の「注意3」はセンサーブロック6個、設定時間60秒、動作時間0.5秒で設定、異常警報はセンサーブロック4個、設定時間75秒、動作時間0.5秒で設定した。
【0048】
表1が示すように縦軸はヒメダカの活動数を表し、横軸は試験経過時間を表す。本件試験では監視水槽にヒメダカを20匹入れ試験時間は20時間までとした。
シアン化カリウムの濃度が高い時はヒメダカは順次死んでいくため20匹の数が経過時間とともに右下がりで活動数が下がるが、本件試験のシアン化カリウムの0.02mg/Lでは20時間まで経過しても1匹も死んでいないことを横軸は示している、しかし経過時間で1時間後には注意1が発報し、2時間後には注意2が発報し、7時間後には注意3が発報し、11時間後には重大警報の異常が発報していることが表で分かる。
【0049】
図12の写真は、本件試験におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露する前のヒメダカ群の動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像で、図13の写真は、画像処理によりヒメダカの動きを検知したセンサードットの所属するセンサーブロックがモニターテレビ画面に重畳表示された映像である。
【0050】
図13の写真ではセンサーブロックが12個表示されている。一番軽い注意1の警報はブロック10個以内が警報の対象になるため、12個では警報の対象にならない。
【0051】
図14の写真は、本件試験におけるシアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露後のヒメダカ群の動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。
監視水槽内のヒメダカの群れは表1が示すように20時間経過しても1匹も死なないシアン化カリウムの0.02mg/Lの希釈された毒性では捕食防御本能で群れが固まる生態本能を示す。
【0052】
図15の写真は、センサーブロックが4個しか表示されていないように、シアン化カリウム0.02mg/Lの毒性で群れが捕食防御本能で固まり、センサーブロック4個しか表示されていないため異常警報の対象である。即ち、4個以下のセンサーブロック(4個、3個、2個、1個、0個)は異常警報の対象になる。ただし設定時間75秒内に例えば4個より多い数が計数されれば異常警報は出ずに注意3の警報が発報されることになる。
【0053】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1の水質自動監視装置では、上述のように、ヒメダカ11等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽4と、監視水槽4内に原水6を連続供給する水中ポンプ8と、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを上部から俯瞰撮影するCCDビデオカメラ18と、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理部Fと、を備える。
これにより、ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、希釈された低濃度の毒性でも容易かつ連続的に検出することができるようになるという効果が得られる。
【0054】
また、画像処理部Fで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報する警報出力部Gを備えることで、この警報により管理者に自動的に確実かつ迅速に知らせることができる。
【0055】
また、CCDビデオカメラ18は、監視水槽4の上部に備えられ、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを俯瞰撮影するようにしたことで、監視水槽の透明側壁を透して側面から撮影する方式に比べて透明側内壁に付着する藻により魚形の撮影が妨害される虞がない点で有利である。
【0056】
また、画像処理部Fは、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態をセンサードットsで検知するもので、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理により監視水槽4全面に所定数のセンサードットs毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックSを配置し、監視水槽4内のヒメダカ11が動いて各センサーブロックS内のセンサードットsに触れるとセンサーブロックSが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにした。
これにより、ヒメダカ11が群れで固まる状態を容易かつ確実に検知することができる。
【0057】
また、画像処理部Fは、設定ブロック数を段階的に複数設定し、センサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して警報出力部Gで異常警報を発報し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して警報出力部で注意警報を発報するようにした。
これにより、緊急対応である異常状態を検知する前に、事前に段階的に警報を発報することができ、これにより緊急時の対応を早めることができる。
【0058】
また、1回の検知でセンサーブロックSの計数が設定ブロック数(「異常」用は4、「注意3」用は6、「注意2」用は8,「注意1」用は10)以下と判定しても、ヒメダカ11は常に動いているため、一瞬だけかもしれないし、また、大きな音や振動で驚いて瞬間的に設定ブロック数以下になることもある。そのための確認機能としてタイマー制御部Hで、検知時間(「異常」用は75秒、「注意3」用は60秒、「注意2」用は45秒、「注意1」用は30秒)を設定し、この検知時間連続してセンサーブロックSの計数が設定ブロック数以下となった場合に異常状態または注意状態を検出して警報を発報する。
この検知時間の設定により、信頼できる警報を発報することができる。
なお、注意警報の段階、設定ブロック数、検知時間等は、状況に応じて任意に設定することができる。
【0059】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0060】
例えば、実施例では、CCDビデオカメラ18は、監視水槽4の上部に備えられ、監視水槽4内のヒメダカ11の動きを俯瞰撮影するようにしたが、その他に、例えば、図16に示すように、CCDビデオカメラ18aで透明監視水槽Xの透明側壁を透して側面から撮影するようにしてもよい。
【0061】
また、実施例では、CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によってヒメダカ11が群れで固まる状態をセンサードットsで検知するようにしたが、その他に、以下のような方法で検知することも可能である。
即ち、CCDビデオカメラ18aと画像処理(画像解析とも言う)の産業場の利用は、画像処理は本来製造ラインで使用される場合が大半で、例えば製品のラベルのゆがみや欠損や基板のハンダミス等を人間の目の変わりで見分けている。
解析方法は、CCDビデオカメラ18aの画総数が例えば40万画素数あれば、1画素毎に0か1のデジタル処理を行い、黒を1、白を0として判定し1と0を計量する。
そのため外光の変化に大変弱く、照明照度を一定に保つことが重要である。
これを魚類を使った水質自動監視装置に利用するためには、図17に示すように、透明監視水槽Xの側面から照明をあて、その影を透明監視水槽Xの反対側に白いスクリーン幕Wを設置して影絵をCCDビデオカメラ18aで撮影し、撮影された影絵はデジタル処理で黒を1、白を0で判定軽量される。そして、黒の1と白の0の量はコンピューターYで瞬時に計算される。ヒメダカ11eを多数透明監視水槽Xに入れておけば位置の特定で固まりが判定され、固まりの移動も判定される。また魚類が死んだりして下に沈んだりすれば黒の1の量が減ることになり、それを警報とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明に係る水質自動監視装置は、水道事業体以外にも飲料水メーカーや食品メーカーなど水を使用する全ての産業に利用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 水槽全体
2 受水槽
3 ポンプ水槽
4 監視水槽
5 給水口
6、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h 原水
7 給水口
8 水中ポンプ
9、9a、9b、9c つば板
10a、10b 多数孔
11、11a、11b、11c、11d、11e ヒメダカ
12 オーバーフロー管
13 水位調整管
14 仕切板
15 受水槽オーバーフロー管
16 捕獲ネット
16a 支柱
16b、16c、16d 縁布
16e 網目
16f 支柱固定管
16g 網
17 排水口
18、18a CCDビデオカメラ
A 電磁弁
B 採水容器
C 給餌器
D 蛍光灯
E 映像分配部
F 画像処理部
G 警報出力部
H タイマー制御部
I 表示パネル
J モニターテレビ
K 外部出力
L 装置警報
S センサーブロック
s センサードット
X 透明監視水槽
Y コンピューター
Z 画像解析ボード
L ライト
W 白いスクリーン幕
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒメダカ等の小型魚類を監視水槽内に群れで飼育しておき、その監視水槽に試料水を連続給水し、その試料水への有毒物質の混入を連続的に監視する水質自動監視装置において、
ヒメダカ等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項2】
請求項1記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
監視水槽の上部に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを俯瞰撮影するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態をセンサードットで検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し、監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
前記設定ブロック数を段階的に複数設定し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して異常警報を発報し、センサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して注意警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項7】
ヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と、
前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と、
前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメラと、
前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理手段と、
を備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項8】
請求項7記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段で試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報する警報手段を備えることを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の水質自動監視装置において、
前記CCDビデオカメラは、監視水槽の上部に備えられ、監視水槽内の小型魚類の動きを俯瞰撮影するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態をセンサードットで検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項11】
請求項10記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し、監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項12】
請求項11記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、設定ブロック数を段階的に複数設定し、センサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して警報手段で異常警報を発報し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して警報手段で注意警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項1】
ヒメダカ等の小型魚類を監視水槽内に群れで飼育しておき、その監視水槽に試料水を連続給水し、その試料水への有毒物質の混入を連続的に監視する水質自動監視装置において、
ヒメダカ等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能を利用し、監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し、この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項2】
請求項1記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
監視水槽の上部に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型魚類の動きを俯瞰撮影するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態をセンサードットで検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し、監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載の水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法において、
前記設定ブロック数を段階的に複数設定し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して異常警報を発報し、センサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して注意警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置における低濃度有毒物質検知方法。
【請求項7】
ヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と、
前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と、
前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメラと、
前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知する画像処理手段と、
を備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項8】
請求項7記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段で試料水への低濃度有毒物質の混入を検知すると警報を発報する警報手段を備えることを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の水質自動監視装置において、
前記CCDビデオカメラは、監視水槽の上部に備えられ、監視水槽内の小型魚類の動きを俯瞰撮影するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態をセンサードットで検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項11】
請求項10記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し、監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて、計数されたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入を検知するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項12】
請求項11記載の水質自動監視装置において、
前記画像処理手段は、設定ブロック数を段階的に複数設定し、センサーブロック数が最少設定ブロック数に満たない時に低濃度有害物質の混入による水質異常を検知して警報手段で異常警報を発報し、計数されたセンサーブロック数が最少設定ブロック数より多い設定ブロック数以下である時は段階的に注意状態を検知して警報手段で注意警報を発報するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−98150(P2012−98150A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246015(P2010−246015)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4712908号(P4712908)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(507371272)環境電子株式会社 (3)
【出願人】(500548943)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【特許番号】特許第4712908号(P4712908)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(507371272)環境電子株式会社 (3)
【出願人】(500548943)
[ Back to top ]