説明

水質計測装置及び蒸気質モニタリング装置

【課題】 蒸気中に空気が混入していても、溶存酸素濃度センサ等を用いて、フローセル内を流れる凝縮水の水質を正しく計測できる蒸気質モニタリング装置を提供する。
【解決手段】 ボイラ100から発生した空気を含む蒸気Sを、冷却装置2を用いて冷却し、生じた凝縮水Wを水質計測装置3内の複数のフローセル30a,31a,32a中に順次通すことにより、この凝縮水Wの水質を各フローセルに設けられている計測センサ30b,31b,32bにより計測して、空気を除いた蒸気Sの質をモニタリングする蒸気質モニタリング装置1であって、最初のフローセル30a出口の凝縮水流路33を、次のフローセル31aに向かう下向き流路33cと、この下向き流路33cよりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路35aとに分岐させていることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を多量に含んだ蒸気の凝縮水について、その水質を計測する水質計測装置に関するものである。また、本発明は、空気を多量に含む蒸気を冷却し、このとき発生した凝縮水の水質を計測することにより、空気を除いた蒸気の質をモニタリングする蒸気質モニタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラで発生した蒸気を冷却装置で冷却し、このとき生じた凝縮水の水質を水質計測装置により計測することで、蒸気の質、すなわち、蒸気中に含まれる不純物量や蒸気の腐食性等をリアルタイムにモニタリング(監視)する、蒸気質モニタリング装置は知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この蒸気質モニタリング装置では、サンプリングされた蒸気を冷却装置により冷却して得られる凝縮水を、例えば、特許文献1に記載されているように、水質計測装置中の、溶存酸素濃度計測用のフローセルと、電気伝導率計測用のフローセルと、pH計測用のフローセルとに順次通して、この凝縮水の、溶存酸素濃度と電気伝導率とpH値とを測定することにより、蒸気の質をモニタリングしている。
【0004】
ところで、近年では、大型の水管ボイラや炉筒煙管ボイラに換えて、1缶当たりの蒸発量の小さい小型貫流ボイラを複数缶設置することが主流となっている。かかるボイラを複数缶設置のボイラ装置では、全ボイラが同時に稼働することは稀であり、一般に、一定のローテーションにより、稼働ボイラと停止ボイラとを定期的に取り換えていく運転がなされるし、蒸気の負荷が低い場合には、一部のボイラしか稼働されない。
【0005】
この場合、停止ボイラ内の圧力がゲージ圧でゼロまで下がると、真空破壊弁を介して、ボイラ内に空気が入り込むが、この停止ボイラが稼働ボイラとなった場合、蒸気中に多量の空気が混入することとなる。
【0006】
したがって、蒸気質モニタリング装置では、多量に空気が混入した蒸気の質をモニタリングする場合も多い。この場合、凝縮水中に多量の空気が存在することとなるが、蒸気質モニタリング装置により、凝縮水の水質を測定して、空気以外の蒸気の質をモニタリングしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−93128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、凝縮水中に多量の空気が存在すると、フローセル内に一時的に大量の空気が入り込み、このことによって、フローセル内の凝縮水流量が減少して、凝縮水の溶存酸素濃度や電気伝導率が正しく測定できないという問題があった。
【0009】
また、凝縮水中に多量の空気が存在すると、溶存酸素濃度計測用のフローセル内が加圧状態となり、溶存酸素濃度の計測に悪影響を与えて、溶存酸素濃度が正しく計測できないという問題があった。
【0010】
上記問題は、空気を多量に含んだ蒸気の凝縮水を複数のフローセル中に順次通すことにより、この凝縮水の水質を、前記各フローセルに設けられている計測センサにより計測する水質計測装置についても同様に生じる。
【0011】
この発明は、以上の点に鑑み、蒸気中に空気が混入していても、溶存酸素濃度センサ等を用いて、フローセル内を流れる凝縮水の水質を正しく計測できる水質計測装置及び蒸気質モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の請求項1記載の発明は、空気を含んだ蒸気の凝縮水を複数のフローセル中に順次通すことにより、この凝縮水の水質を、前記各フローセルに設けられている計測センサにより計測する水質計測装置であって、最初のフローセル出口の凝縮水流路を、次のフローセルに向かう下向き流路と、この下向き流路よりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路とに分岐させていることを特徴とする。
【0013】
凝縮水中に空気が含まれる場合、エア抜き流路が無ければ、最初のフローセルを出た凝縮水が、次のフローセルに向かうため下向き流路中を下降すると、凝縮水中の空気泡は、軽いため、凝縮水と共に移動せず、最初のフローセルの出口付近に溜まってくる。そして、この空気泡は、順次、最初のフローセル内に侵入して、最初のフローセル中の凝縮水の流量を減少させるとともに、凝縮水の流れがせき止められる分、最初のフローセル内の圧力を上昇させる。
【0014】
この発明では、最初のフローセル出口側の下向き流路の入口部に、この下向き流路よりサイズが大きい上向きのエア抜き流路を設けているので、最初のフローセルから下向き流路に向かう空気泡を含む凝縮水は、内部の空気泡が上側のエア抜き流路内を上昇して排出されるとともに、凝縮水のみが下向き流路を通って、次のフローセルに入っていく。したがって、最初のフローセルの出口側には、空気の溜まりは生じず、最初のフローセル内に空気が溜まって、最初のフローセル内の凝縮水の流量が減少したり、最初のフローセル内が加圧されてしまうこともない。このことは、後のフローセルについても同様である。
【0015】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、最終のフローセル出口の凝縮水排出流路に、前記エア抜き流路を接続するとともに、このエア抜き流路の上部に、上向きに延びる大気開放部を設けていることを特徴とする。
【0016】
エア抜き流路には、凝縮水流路内の圧力バランスにしたがって、一定高さだけ凝縮水が貯められているが、この凝縮水中を上昇する空気泡が、凝縮水から出た段階で破裂を生じ、周りの凝縮水を周辺に飛散させる。この発明では、エア抜き流路を、計測済み凝縮水を排出する凝縮水排出流路に接続し、空気泡の破裂時に飛散した凝縮水を凝縮水排出流路側に逃がしてやるようにした。この場合、大気開放部は、エア抜き流路の上部から上向きに延びているため、この大気開放部を介して、凝縮水が飛散することはない。
【0017】
この発明の請求項3記載の発明は、ボイラから発生した空気を含む蒸気を、冷却装置を用いて冷却し、生じた凝縮水を水質計測装置内の複数のフローセル中に順次通すことにより、この凝縮水の水質を前記各フローセルに設けられている計測センサにより計測して、前記空気を除いた前記蒸気の質をモニタリングする蒸気質モニタリング装置であって、最初のフローセル出口の凝縮水流路を、次のフローセルに向かう下向き流路と、この下向き流路よりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路とに分岐させていることを特徴とする。
【0018】
この発明の請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の場合において、最終のフローセル出口の凝縮水排出流路に、前記エア抜き流路を接続するとともに、このエア抜き流路の上部に、上向きに延びる大気開放部を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明の請求項1記載の発明によれば、蒸気中に空気が混入していても、凝縮水中の空気泡を最初のフローセル内等に溜め込んでしまうことなく、エア抜き流路を介して外部に排出できるので、例えば、最初のフローセル内に設けられている溶存酸素濃度センサを用いて、凝縮水の溶存酸素濃度を正しく計測することができるとともに、その後のフローセル内に設けられている、例えば、電気伝導率センサやpHセンサを用いて、凝縮水の電気伝導率センサやpH値を正しく計測できる。
【0020】
この発明の請求項2記載の発明によれば、凝縮水中の空気泡破裂により飛び散った凝縮水を、エア抜き流路から凝縮水排出流路に導くことができ、凝縮水の外部への飛散を防止できる。
【0021】
この発明の請求項3記載の発明によれば、蒸気中に空気が含まれていても、水質測定装置により凝縮水の水質を適正に計測できるので、空気を除いた蒸気の質を適正にモニタリングすることができる。
【0022】
この発明の請求項4記載の発明によれば、水質測定装置からの凝縮水の飛散を防止できるので、安全に蒸気の質をモニタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施の形態に係る蒸気質モニタリング装置における、蒸気や凝縮水の流れを示す図である。
【図2】エア抜き流路の作用を示す図であり、(a)はエア抜き流路が設けられていない場合を示し、(b)はエア抜き流路が設けられている場合を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る蒸気質モニタリング装置を示している。
【0025】
蒸気質モニタリング装置1は、図1で示されるように、冷却装置2と、水質計測装置3と、凝縮水Wの流量調整弁4と、冷却水Cの流量調整弁5と、蒸気ライン6と、凝縮水ライン7と、凝縮水排出ライン8と、冷却水供給ライン9と、冷却水排出ライン10等とから構成されている。
【0026】
なお、この蒸気質モニタリング装置1により蒸気Sの質がモニタリングされるボイラ装置100は、図1で示されるように、1缶当たりの蒸発量の小さい、例えば4缶の小型貫流ボイラ100aから構成されている。このボイラ装置100では、3缶の小型貫流ボイラ100aを稼働ボイラとするとともに、1缶の小型貫流ボイラ100aを停止ボイラとして、一定のローテーションにより、停止ボイラが順次替えられていく運転がなされる。このボイラ装置100からの蒸気Sは、蒸気ヘッダ101を介して、工場内の需要部門に送られる。
【0027】
冷却装置2は、図1で示されるように、ボイラ100からの蒸気Sを、冷却水Cによって冷却して、水質計測用の凝縮水Wに変えるものであり、ケーシング20内に伝熱管からなる熱交換部21が収納されたものである。熱交換部21の凝縮水出口側のケーシング20には、冷却水供給ライン9が接続され、熱交換部21の蒸気入口側のケーシング20には、冷却水排出ライン10が接続されている。また、熱交換部21の蒸気S入口側には、蒸気ライン6が接続され、熱交換部21の凝縮水W出口側には、凝縮水ライン7が接続されている。
【0028】
この冷却装置2では、冷却水供給ライン9中に設けられた流量調整弁5により、冷却水Cの流量がコントロールされて、凝縮水Wの温度が、水質の計測に適した所定の温度になるように調整されている。
【0029】
水質計測装置3は、図1で示されるように、凝縮水Wを複数のフローセル中に順次通すことにより、各フローセルに設けられている計測センサにより、凝縮水Wの種々の水質、例えば、溶存酸素濃度(DO)と電気伝導率(EC)とpH値とを計測するものである。この水質計測器3は、図1で示されるように、最初の第1フローセル30a中に溶存酸素濃度センサ30bが設けられている溶存酸素濃度計30と、次の第2フローセル31a中に電気伝導率センサ31bが設けられている電気伝導率計31と、最後の第3フローセル32a中にpHセンサ32bが設けられているpH計32と、溶存酸素濃度計30と電気伝導率計31とを接続する凝縮水流路33と、電気伝導率計31とpH計32とを連結する凝縮水流路34とを有している。
【0030】
ここで、凝縮水Wは、各フローセル30a、30b、30cの下部側から内部に流入して、各フローセル30a、30b、30cの上部側から排出される。このため、凝縮水ライン7は、第1フローセル30aの下部に接続され、凝縮水排出ライン8は、第3フローセル32aの上部に接続される。また、第1フローセル30aの上部と第2フローセル31aの下部とに接続される凝縮水流路33は、水平流路部33a,33b間に下降する下向き流路部33cを有しており、第2フローセル31aの上部と第3フローセル32aの上部とに接続される凝縮水流路34も、水平流路部間に下降する下向き流路部を有している。なお、凝縮水流路33,34の流路径は、内径が4.0mmとなるように形成されている。
【0031】
また、この水質計測装置3には、図1で示されるように、電気伝導率計31とpH計32とを跨ぐように、第1フローセル30aと第2フローセル31a間の凝縮水流路34と、第3フローセル32a出口の凝縮水排出ライン8とを接続する、エア抜き流路35が設けられている。このエア抜き流路35は、垂直に上昇する上向き流路部35aと、その後の水平流路部35bと、その後下降する下向き流路部35cとを有して、略(コ)字形に形成されており、流路径は、凝縮水流路33,34より充分に大きい、内径8mmに形成されている。そして、このエア抜き流路35は、上向き流路部35aの下端が、凝縮水流路33の下向き流路部33cの直上に(T)字形をなすように接続され、下向き流路部35cの下端が、凝縮水排出ライン8の下降部直上に(T)字形をなすように接続されている。
【0032】
エア抜き流路35の上向き流路部35aには、図2の(b)で示されるように、凝縮水流路33内の圧力バランスにより、一定の高さだけ凝縮水Wが溜められる。したがって、上向き流路部35aは、内部の凝縮水Wが凝縮水排出ライン8側に流れ込まないような高さまで立ち上げられている。また、このエア抜き流路35の上部側の水平流路部35bには、上向きに、上部が90度屈曲した大気開放部35dが形成されており、その一端側に大気開放孔が形成されている。
【0033】
蒸気ライン6は、ボイラ装置100側の蒸気Sを、詳細には、図1で示されるように、ボイラ装置100の蒸気ヘッダ101に設けられた圧力計102横の枝管103側から、冷却装置2に取り込むための蒸気流路である。この蒸気ライン6の流路径は、内径4mmとなっている。
【0034】
凝縮水ライン7は、冷却装置2からの凝縮水Wを水質計測装置3に送るための凝縮水流路であり、途中に流量調整弁4が設けられている。この蒸気ライン6の流路径は、内径4mmとなっている。なお、流量調整弁4は、水質計測装置3に送られる凝縮水Wの流量を、計測に適した所定の流量にコントロールするものである。
【0035】
凝縮水排出ライン8は、水質計測装置3から排出される計測済み凝縮水Wを外部に排出するための凝縮水排出流路であり、その流路径は、エア抜き流路35と同じく、内径8mmとなっている。
【0036】
この蒸気質モニタリング装置1では、蒸気ライン6を通って取り込まれたボイラ100側の蒸気Sは、冷却装置2により冷却されて凝縮水Wに変えられる。この凝縮水Wは、凝縮水ライン7を通って水質計測装置3に送られ、この水質計測装置3内の、第1フローセル30a、凝縮水流路33、第2フローセル31a、凝縮水流路34、第3フローセル32aを通って、凝縮水排出ライン8に送られる。この凝縮水Wは、第1フローセル30aを通過中に、溶存酸素濃度センサ30bにより、溶存酸素濃度が計測され、第2フローセル31aを通過中に、電気伝導率センサ31bにより、電気伝導率が計測され、第3フローセル32aを通過中に、pHセンサ32bにより、pH値が計測される。そして、計測された凝縮水Wの、溶存酸素濃度と電気伝導率とpH値とにより、ボイラ装置100からの蒸気Sの質がモニタリングされる。
【0037】
一方、ボイラ装置100では、4缶の小型貫流ボイラ100aのうち、1缶の小型貫流ボイラ100aを停止ボイラとし、一定のローテーションにより、この停止ボイラを取り換えていく運転がなされる。ところが、この停止ボイラには、停止中の蒸気圧の低下により、真空破壊弁を介して、内部に空気が導入されるため、この停止ボイラが稼働ボイラとなった場合に、一時的ではあるが、蒸気S中に多量の空気が混入することとなる。
【0038】
つぎに、蒸気S中に多量の空気が混入している場合に、この蒸気質モニタリング装置1で蒸気Sの質をモニタリングするにあたっての、水質計測装置3の作用効果について、図2を参照しつつ説明する。
【0039】
ここで、溶存酸素濃度計30は、図2で示されるように、第1フローセル30aが、下部に入口部H1、上部に出口部H2を有する、上方が開口した凹状に形成されており、溶存酸素濃度センサ30bが、つば部B3から下方に延びる棒状部B1の下端にセンサ部B2が設けられた形状に形成されている。第1フローセル30aに溶存酸素濃度センサ30bを取り付けるには、溶存酸素濃度センサ30bのつば部B3で蓋をするように、棒状部B1を第1フローセル30a内に差し込むようにすればよい。
【0040】
図2の(a)は、水質計測装置3の凝縮水流路33側にエア抜き流路35が設けられていない場合の、溶存酸素濃度計30内と凝縮水流路33内の状態を示している。
【0041】
凝縮水W中に多量の空気Aが含まれる場合、エア抜き流路35が無ければ、最初の第1フローセル30aを出た凝縮水Wが、次の第2フローセル31aに向かうため凝縮水流路33の下向き流路部33cを下降すると、凝縮水W中の空気泡A1は、軽いため、凝縮水Wと共に移動せず、図2の(a)で示されるように、第1フローセル30aの出口部H2付近の水平流路部33aに溜まってくる。そして、この空気泡A1は、順次、第1フローセル30a内に侵入して、第1フローセル30a内の凝縮水Wの流量を減少させるとともに、凝縮水Wの流れをせき止め、第1フローセル30a内の圧力を上昇させる。このため、この溶存酸素濃度計30により、正確な溶存酸素濃度が測定できなくなる。
【0042】
図2の(b)は、水質計測装置3の凝縮水流路33側にエア抜き流路35を設けた場合の、溶存酸素濃度計30内と、エア抜き流路35及び凝縮水流路33内の状態を示している。
【0043】
凝縮水流路33側にエア抜き流路35が設けられていると、第1フローセル30aから凝縮水流路33の下向き流路部33cに向かう空気泡A1を含む凝縮水Wは、内部の空気泡A1が上側のエア抜き流路35の上向き流路部35a内を上昇して排出されるとともに、凝縮水Wのみが下向き流路部33cを通って、次の第2フローセル31aに入っていく。特に、凝縮水流路33に比べてエア抜き流路35の流路径が大きく形成されているため、凝縮水W中の空気泡A1は、流路抵抗の少ないエア抜き流路35側へ容易に移動する。したがって、第1フローセル30aの出口部H2側には、空気Aの溜まりは生じず、第1フローセル30a内に空気Aが溜まって、第1フローセル30a内の凝縮水Wの流量が減少したり、第1フローセル30aが加圧されてしまうこともない。このことは、後の第2フローセル31a等についても同様である。したがって、この水質計測装置3では、溶存酸素濃度計30により凝縮水Wの溶存酸素濃度を正確に計測できるとともに、電気伝導率計31等により凝縮水Wの電気伝導率等を正確に計測できる。
【0044】
一方、エア抜き流路35の上向き流路部35aには、図2の(b)で示されるように、一定の高さまで凝縮水Wが溜められているので、上向き流路部35a中を上昇する空気泡A1が、凝縮水Wから出たときに破裂して、周りの凝縮水Wを周囲に飛散させる。このため、この水質計測装置3では、エア抜き流路35の他端側を、凝縮水排出ライン8に接続し、空気泡A1の破裂時に飛び散った凝縮水Wを凝縮水排出ライン8に回収して、安全を確保するようにしている。なお、エア抜き流路35の大気開放部35dは、水平流路部35bから上方に延びるように設けられ、上端が90度屈曲されているので、この大気開放部35dから凝縮水Wが飛び出すことはない。
【0045】
以上のように、この蒸気質モニタリング装置1では、蒸気S中に多量の空気Aを有すため、凝縮水W中に多くの空気泡A1を有すこととなっても、水質計測装置3の最初のフローセルである、第1フローセル30a出口の凝縮水流路33を、次の第2フローセル31aに向かう下向き流路33cと、この下向き流路33cよりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路35とに分岐させているので、凝縮水W中の空気泡A1が、このエア抜き流路35から外部に排出され、この空気泡A1が凝縮水流路33の水平流路部33a内や第1フローセル30a内に溜められていくことはない。このため、この蒸気質モニタリング装置1では、蒸気S中に多量の空気Aを有す場合でも、水質計測装置3により凝縮水Wの水質を正確に計測でき、空気Aを除いた蒸気Sの質を精度よくモニタリングすることができる。
【0046】
また、この蒸気質モニタリング装置1では、最終のフローセルである第3フローセル32a出口の凝縮水排出ライン8に、エア抜き流路35を接続するとともに、このエア抜き流路35の上部、すなわち、水平流路部35bに、上向きに延びる大気開放部35cを設けているので、エア抜き流路35中の空気泡A1が内部で破裂して凝縮水Wを飛び散らせても、この飛散凝縮水Wを外部に排出してしまうことなく、凝縮水排出ライン8を使って安全に排出することができる。
【0047】
なお、この蒸気質モニタリング装置1は、水冷式の冷却装置ではなく、大気中の空気により、蒸気Sや凝縮水Wを強制的に冷却する空冷式の冷却装置を有するものであってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
1 蒸気質モニタリング装置
2 冷却装置
3 水質計測装置
8 凝縮水排出ライン(凝縮水排出路)
30a 第1フローセル(最初のフローセル)
30b 第2フローセル(次のフローセル)
30c 第3フローセル(最後のフローセル)
33 凝縮水流路
33c 下向き流路部
35 エア抜き流路
35d 大気開放部
A 空気
S 蒸気
W 凝縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を含んだ蒸気の凝縮水を複数のフローセル中に順次通すことにより、この凝縮水の水質を、前記各フローセルに設けられている計測センサにより計測する水質計測装置であって、
最初のフローセル出口の凝縮水流路を、次のフローセルに向かう下向き流路と、この下向き流路よりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路とに分岐させていることを特徴とする水質計測装置。
【請求項2】
最終のフローセル出口の凝縮水排出流路に、前記エア抜き流路を接続するとともに、このエア抜き流路の上部に、上向きに延びる大気開放部を設けていることを特徴とする請求項1記載の水質測定装置。
【請求項3】
ボイラから発生した空気を含む蒸気を、冷却装置を用いて冷却し、生じた凝縮水を水質計測装置内の複数のフローセル中に順次通すことにより、この凝縮水の水質を前記各フローセルに設けられている計測センサにより計測して、前記空気を除いた前記蒸気の質をモニタリングする蒸気質モニタリング装置であって、
最初のフローセル出口の凝縮水流路を、次のフローセルに向かう下向き流路と、この下向き流路よりサイズが大きく、かつ、端部側が大気に開放されている上向きのエア抜き流路とに分岐させていることを特徴とする蒸気質モニタリング装置。
【請求項4】
最終のフローセル出口の凝縮水排出流路に、前記エア抜き流路を接続するとともに、このエア抜き流路の上部に、上向きに延びる大気開放部を設けていることを特徴とする請求項3記載の蒸気質モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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