説明

水銀放出用装置

【課題】第2の成分の使用を必要とすることなく、蛍光ランプに少量の水銀を正確かつ再現性をもって導入するための水銀放出用装置を提供する。
【解決手段】x及びyが0〜13の範囲で、合計(x+y)が3〜13の範囲で、zが1又は2である金属間化合物TiZrHgの中から選択した水銀放出化合物の粉末を少なくとも収容し、完全に閉じていないが、上記水銀放出化合物の粉末粒子を保持することができる金属容器で形成されている、蛍光ランプに少量の水銀を導入するための水銀放出用装置において、前記装置は、上記開口部として1つのスリットと該装置の両端の、合計3つを有することを特徴とする水銀放出用装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに少量の水銀を導入する水銀放出用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、蛍光ランプは作用するのに少量の水銀を必要とする。技術的開発、またまさに水銀のような潜在的に有害な物質の工業的な使用について国際的な基準はより厳しくなっている結果として、ランプに使用するこの元素の最大量は、近年において1個のランプ当たり20〜30mgから約3mgに減少し、現在においては更に少量の水銀を投与できることを要求する製造業者もある。
【0003】
水銀を投与する従来の方法の多くはこれらの要求を満足できない。
【0004】
例えば、純元素の液滴の形態でのランプへの水銀体積投与(volumetric dosing) は、現在では実用的に適用できず、実際1mgの水銀液滴は約0.07μl の体積を有し、非常に少量の元素の体積投与は非常に複雑で、引き続く投与について元素重量の再現性がいかにしても非常に低い。その上、ランプに液体水銀を直接投与することは、この元素の蒸気圧が高いため、作業環境の汚染問題を引き起こす。
【0005】
他の方法は、例えば米国特許第3,794,402 号、第4,182,971 号及び第4,278,908 号に開示されているように小さなガラスのカプセル、又は例えば米国特許第3,764,842 号、第4,056,750 号、第4,282,455 号、第4,542,319 号、第4,754,193 号及び第4,823,047 号に開示されているように金属製の小さなカプセルに含まれた純元素の形態でランプに水銀を導入することを含む。しかしながら、これらの小さなカプセルを使用することにより、非常に少量の液体水銀の正確でかつ再現性のある投与という前述の問題は、解決されていない。
【0006】
米国特許第4,808,136 号及び欧州特許出願第568,317 号において、多孔性の材料でできていて、水銀で含浸してあるペレット又は小球の使用について開示されていて、水銀はその後、ランプが密閉されると加熱することによって放出される。しかしながらこれらの方法もまた、水銀をペレットに詰め込むために複雑な作業を必要とし、放出される水銀はほとんど再現性がない。その上、これらの方法により、作業環境を汚染する水銀蒸気の問題は解決されていない。
【0007】
本出願人の米国特許第3,657,589 号は、一般式TixZryHgzを有する金属間水銀化合物の使用について開示しており、ここでxとyは0〜13の範囲で、合計(x+y) は3〜13の範囲で、zは1又は2であり、これらの化合物は下記にも水銀放出化合物として言及している。あらゆるこれらの化合物による少量の水銀の投与は非常に単純であり、それは例えば、化合物の粉末を金属テープに積層することができ、また、テープ上の粉末の連続の厚み及び幅を調節することで、テープのcm当たりの水銀のmgとして測定される、予定した値が線形的な詰め込みで得られるためである。St505 という商品名で出願人により製造、販売されている化合物Ti3Hgの使用は、特に有利であり、特に、混合物St505 は、環状形状の容器に圧縮した粉末、又はSTAHGSORB Rの商品名でペレット又はタブレット状に圧縮した粉末の形態で、又はGEMEDIS Rの商品名で金属テープ上に積層した粉末の形態で販売されている。化合物が、例えば積層したテープ片の形態で、ランプに導入されると、水銀はいわゆる「活性化」作業により550 ℃より高温で化合物を加熱することで放出され、熱処理は、例えば化合物を帯びるテープをランプの外から高周波で照射することで実行してもよい。しかしながら、これらの化合物を使用することにより明らかになった問題は、活性化工程の際に放出される水銀は全水銀量の約30〜40%であることである。このことは、ランプの作用に必要な量の、約2〜3倍多い量の水銀(あらゆる前述の放出化合物の形態において)をランプに導入する必要性に帰着する。その使用期間が終わるときにランプに残ったままの過剰の水銀は、おそらく処分の問題を生じる。
【0008】
公開欧州特許第91,297号は、完全に閉じた金属容器で形成した水銀放出用の装置を開示しており、そこではTi3Hg又はZr3Hgとニッケル(Ni)又は銅(Cu)の粉末からなる混合物が存在する。この公報によると、水銀放出化合物にNi及びCuを添加することは、系の溶融を引き起こし、従って、数秒でほとんど全ての水銀を放出するのに好都合となる。容器は鋼、銅又はニッケルの薄板で閉じられ、その薄板は活性化の際に容器内で発生する水銀の蒸気圧により破られる。この解決法は完全に満足のいくものでなく、それは、水銀の流出は激しく、おそらく管の部分を損傷する結果となり、その上、容器の組立は非常に複雑で小さいサイズの金属要素に溶接することを必要とする。
【0009】
米国特許第5,520,560 及び欧州公開特許第691,670 号及び第737,995 号は、本出願人により、あらゆる前述のTixZryHgz化合物、及びスズ、インジウム、銀、シリコン又は希土類元素の中から選択した1又は複数の元素と銅との合金を含む材料の組合せを開示している。これらの銅合金は水銀放出の促進剤として作用し、活性化工程の際に80%以上の元素の放出を可能にする。これらの材料の組合せは、水銀をランプに導入する他の方法に作用する問題を解決しており、水銀放出化合物に加えて第2の成分を必要とする唯一の欠点を持ちながら、少量の水銀を投与することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、第2の成分の使用を必要とすることなく、蛍光ランプに少量の水銀を正確かつ再現性をもって導入するための水銀放出用装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記の目的は、x及びyが0〜13の範囲で、合計(x+y)が3〜13の範囲で、zが1又は2である金属間化合物TiZrHgの中から選択した水銀放出化合物の粉末を少なくとも収容し、完全に閉じていないが、上記水銀放出化合物の粉末粒子を保持することができる金属容器で形成されている、蛍光ランプに少量の水銀を導入するための水銀放出用装置において、
金属薄板を折り曲げて形成されていることを特徴とする水銀放出用装置によって達成される。
【0012】
本発明の装置の容器は、あらゆる形状をとることができるが、それは、使用するTixZryHgz化合物の粉末粒子を保持することができるとすればであり、また容器が完全に閉じておらず、その表面の少なくとも一部に、水銀放出の微細孔又はスリットを有する場合である。
【発明の効果】
【0013】
すでに述べたように、TixZryHgz化合物を、知られている装置に、開いた容器に含まれた粉末ペレット又はテープ上に積層した形態で使用するのであれば、活性化工程の際に放出する水銀の量は、多くとも元素含有量の40%である。これらの化合物を本発明の装置のみに使用すれば、活性化工程の際の水銀量は全体の量の少なくとも80%である。従ってTixZryHgz化合物を含む知られている装置に関して、より少量の水銀を導入することができ、それは実用的には実際に必要な水銀量である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、参考技術による水銀放出用の装置を示す。
【図2】図2は、参考技術による水銀放出用の装置の一実施形態を示す。
【図3】図3は、本発明による水銀放出用の装置の実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明の装置の組み立てについての構造例を、ランプの内部から示す。
【図5】図5は、本発明の装置の組み立てについての他の構造例を、ランプの内部から示す。
【図6】図6は、本発明の装置の他の組立構造を示しており、ここで装置はランプの作用に関してカソードとしても作用する。
【図7】図7は、本発明の装置を使用して水銀をランプに導入する方法の工程(a)〜(e)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
水銀放出用の材料は、前述の米国特許第3,657,589 号に開示されている、一般式TixZryHgzを有する化合物の合成物又は混合物であり、その特許はその同じ化合物の作成及び作用特性について言及している。本出願人によりSt505 という商品名で製造、販売されている前述のTi3Hg 化合物を、好ましくは使用する。放出化合物は好ましくは約150 μm 以下の粒子サイズを有する粉末の形態で使用される。
【0016】
装置は、放出化合物のみ、又はおそらく異なる機能を有する他の材料と混合して含んでもよい。例えば、水銀放出化合物とゲッタ合金(getter alloy)の混合物を使用することができ、その目的は、その分野でよく知られている様式(modality)による、酸化炭素、水、酸素又は水素などのランプの作用に有害な微量なガスを固定することである。これらの合金の中でも、本出願人によりSt101 Rという商品名で製造、販売されている重量組成Zr 84 %−Al 16 %を有する合金と共に、本出願人によりSt198TMいう商品名で製造、販売されている重量組成Zr 76.6 %−Fe 23.4 %を有する合金、及び本出願人によりSt707TMという商品名で製造、販売されている重量組成Zr 70 %−V 24.6%−Fe 5.4%を有する合金を挙げてもよい。また、水銀放出化合物に前述の銅を主成分とする促進剤合金の1種類を添加することもでき、この場合、それらを使用することは活性化工程の際に良好な水銀量を得るには必要でなく、すでに放出化合物のみを含む本発明の装置で保証されるが、生じる量は等しく、水銀放出時間を減少するであろう。放出合金に第2の成分を添加することにより達成される他の目的は、装置への化合物の容量を減らすことであり、例えば、放出化合物と他の成分の体積において1:1 の混合物で装置に詰めることで、粉末の体積は同じであり、水銀のmgは半分に減少し、従って、製造工程に問題を引き起こす、過度に小さいサイズの装置を使用することなく、1mg以下の著しく少量の水銀を詰めた装置が得られる。装置への低い水銀の詰め込みを要求し、前述のゲッタ又は促進剤合金などの第2の活性成分を使用を望まないのであれば、放出化合物にアルミナ、シリカなどの非活性化合物を添加することもできる。放出化合物に添加する成分もまた、好ましくは150 μm 以下の粒子サイズを有する粉末の形態で使用される。水銀放出化合物と本発明の装置で使用できる1又は複数の他の化合物の間の重量比は決定的ではないが、それは装置が所望の水銀量を含むのであればよい。
【0017】
容器はあらゆる金属で作成してもよい。コスト、作業性及び高温での低いガス放出のため、鋼、ニッケル又はニッケル添加した鉄が好ましく使用できる。容器を形成する金属薄板は一般的に50〜300μm の厚みである。
【0018】
本発明の装置はあらゆる形状をとることができ、それは、容器が水銀放出化合物の粉末を保持でき、水銀蒸気の放出ができる、粉末粒子サイズより小さい開口部を有するのであればである。これらの開口部は、容器表面の少なくとも一部に備わる微細孔の形態、又は容器を形成する、いくつかの溶接箇所で溶接した2種類(又はそれ以上)の金属要素の間のスリットの形態であることができ、最後に、容器を単一の金属薄板を折り曲げることにより得る場合は、開口部は互いに折り曲げられる又は互いに向かっての、折り曲げ線の間又は金属薄板の2つの端部の間の間隔であってもよい。
【0019】
これらの実施形態のいくつかを図1〜3に示す。
【0020】
図1は参考技術の装置10を切断図で示し、ここで容器11は2種類の金属要素12及び13で形成され、いくつかの溶接箇所14,14'... で溶接されており、容器の内側には水銀放出化合物15があり、2つの連続した溶接箇所の間にいくつかのスリット16(図にはそのうち1つのみを示す)があり、それを通して活性化工程の際に水銀が放出され、装置は更に、ランプの内側部分に取り付けるための突起部17を含む。
【0021】
図2は、金属薄板21を折り曲げることで得た、参考技術による可能な装置20を示し、薄板の中間部分には中空22が形成され、水銀放出化合物の粉末を含むことを意図しており、その一方、薄板の2つの側の端部23及び24は中央に向かって曲げられ、部分的に重なり合っていて、この組立により端部23及び24の折り曲げ線に沿っていくらかのスリット25及び25' があり、それと共に重なり合う領域の端部にスリット26がある。
【0022】
好ましい実施形態において、発明の装置は、2つの類似した線形な寸法と第3のより大きい寸法を有する細長い形状を有する。装置は例えば円形、楕円形、正方形、矩形又は台形のあらゆる断面形状を有してもよい。この種類の装置は図3に示され、装置30は、おそらく他の材料の粉末と混合した水銀放出化合物の粉末31を含み、容器32の内部には、金属テープ33の平行線に沿って折り曲げることにより得られる台形断面を本質的に有し、開始金属テープの最外部に対応する2つの端部34,34'は、薄いスリット35を備えるように折り曲げられ、この形状は粉末31を保持するのに有効であり、一方活性化工程の際に生成する水銀蒸気がスリット35通って放出されるのを可能にしている。この種類の装置は、示した台形断面以外の異なる形状を有するものであっても、所望の長さを有する「線材」片に切断することにより、不確定の長さ及び生じる装置と同じ断面を有する、いわゆる連続「線材」から適当に得られる。連続「線材」はその分野において知られている方法で容易に製造でき、それは、不確定の長さの金属テープを適当に配置された形成ロールを通過させることにより、また端部34,34'が形成される折り曲げ工程前に、粉末31の連続詰め込み工程を備えることによるものである。本発明の装置を製造するための「線材」切断は、レーザ又は機械的技術により実行できるが、後者の場合、切削はまた装置の端部をわずかに圧縮し、このことが粉末の保持に有利である。
【0023】
発明の装置は、ランプ製造業者に知られている様式に従って、カソードと呼ばれる電極の1個又は両方の支持体、又はカソードに近いランプ内側表面領域が黒くなること(blackening)を防ぐため、大きい直径のランプに備わっている金属遮蔽物上など、ランプ内に通常備わっている1つの金属要素上に据え付けることによりランプに導入することができる。これらの遮蔽物は、ランプのガス雰囲気を調整するための、不揮発性のゲッタ材料の支持体(support) としてしばしば作用する。特に、図1に示した種類の装置は、好ましくはカソード支持体に据え付けられるが、細長い形状の装置は、カソード支持体又は遮蔽物上のいずれに据え付けてもよく、そして、図3に示した種類の装置は、以下に図6と関連して示した様式に従って、小さいサイズの蛍光ランプに、カソードとしても作用するように導入してもよい。
【0024】
ランプに本発明の装置を組み立てるためのいくつかの可能な配置を図4〜6に示す。
【0025】
図4はランプの端部を切断図で示しており、ランプ40は、より厚いガラス要素42によりその端部で閉じているガラス管41で形成されていて、2つの金属取付物43,43'は、ガラス部42にそれが溶融することで閉じこめられ、またそれを貫いており、従って、例えば一般的にタングステン製の金属コイルで形成したカソード44に電流を供給するための2つの電気接点を形成する。本発明の装置の第1の組立方法は図面に示してあり、装置45はカソード44を支持する1つの取付物(43') に固定して示してある。本発明の水銀放出装置は、例えばレーザ溶接により取付物に固定してもよい。
【0026】
図5はランプ50の端部の切断図を示し、装置の他の可能な組立を示しており、この場合、ランプを閉じているより厚いガラス要素52に、第3の取付物53''が挿入され、それは要素52に関して貫通しておらず、また取付物53,53'と電気接触しておらず、取付物53''は、カソード54を遮蔽するためにそこに固定した遮蔽物55を有し、水銀放出装置56を例えば溶接箇所を通じて遮蔽物55に固定する。遮蔽物は、金属テープの端部が非常に近い又は接触しているか互いに重なり合っているように金属テープを折り曲げることで得られる、円筒表面の形態であり、テープの端部が相互に接触していない場合には、水銀放出装置56は、図面に示したように、2つの端部に架橋していくつかの溶接箇所を通じて固定してもよく、遮蔽物がその端部で相互に接触し互いに固定されてすでに閉じている場合には、装置56は遮蔽物上のあらゆる位置に固定することができる(この第2の配置は図面に示していない)。
【0027】
最後に図6は、小さいサイズのランプに適した、本発明の水銀放出装置を組み立てるための他の可能な配置を示しており、ここでカソードは単に線材片又は小型の金属円筒で形成されており、図3に関連して記載した種類の細長い形状を有し、好ましくは円形断面を有する装置を使用することにより、装置をランプ60の端部61でより厚いガラス部上にそれに対して垂直に直接固定することができ、要素62を貫く金属と電気的に接触することで、装置63がカソードとしても作用させることができる。
【0028】
ランプを密封すれば、装置の活性化をランプの外側から加熱することにより実行する。加熱はいくつかの方法で実行してもよいが、誘導による方法が最も好ましくランプの製造業者に使用されており、それは、金属要素の高速で選択的な加熱を可能にするからである。加熱温度と処理時間は、水銀放出を促進する合金が存在するかどうかにより変化することができ、一般的に活性化温度は約600 〜900 ℃の範囲で、時間は約20〜60秒の範囲である。
【0029】
誘導による装置の活性化が提供される場合には、本出願人の英国特許第799921号などに開示されているように、本発明の水銀放出装置の特別な組立を選択してもよい。この場合、「線材」片を、例えば収容しているランプのガラスに関して貫いておらず、カソード取付物と接触していない第3の取付物により、支持された金属受け(bracket) 上に据え付ける。発明の装置は、閉じた金属回路を形成するように、金属受け上に2つの箇所を通じて固定されている。この実施形態は、装置の活性化を高周波の誘導加熱により実行する際に特に有利であり、それは、金属要素の誘導加熱の効率は、磁場の線に関しての相対的な方位に依存するからであり、従って、先に記載したような装置を使用する際に、非再現性の挙動がランプの異なる製造ラインにおいて活性化の際に得られる。一方、金属要素が閉じた回路を形成した装置を使用することにより、高周波との結合が方位に独立して得られる。
【0030】
上記の実施形態の全てにおいて、発明の装置は水銀を放出した後にもランプ内に残ったままである。他の実施形態においては、装置、特に図2及び3に示した種類の装置を、形成したランプ内に残っていないように使用することができる。この場合、ランプをその分野において「2重締め付け(double pinch-off)」と定義される方法で製造する。図7(a)を参照すると、ガラス管70はすでに一端で閉じていて、貫通した電気要素、カソード、可能な遮蔽物又はランプの作用に必要な他の要素(いずれも図示せず)がすでに存在して、工程が示してある。他方の端部も蛍光ランプの作用に必要な全ての要素が固定されているが、この部分は、蛍光ランプに含まれるガス、通常希ガスでランプを排出及び置換するための管72に連結した「尾部」71を通して依然開いている。「尾部」には適当な長さの本発明の装置73が挿入されている。図7(b)に示した引き続く処理工程においては、管70に所望のガス雰囲気を導入した後に、管72への連結部と本発明の装置73を有する領域との間の地点において、74,74'で模式的に示した工具で熱間圧縮することにより一般的に「尾部」71を絞る。「尾部」の熱間絞り作業はその分野において「締め付け」として定義されている。図7(c)に示した引き続く工程は、高温体、高周波源などである外部の加熱要素75の手段による、装置73の活性化であり、管70に放出された水銀蒸気は要素76として図に示されている。活性化工程の後、消耗した装置73は図7(d)に模式的に示した第2の「締め付け」作業により管70から分離し、この場合管70の端部にできる限り近く、いずれにしてもこの端部と装置73の領域との間に位置する「尾部」の箇所で実行する。従って、消耗した装置73は管70から取り外され、開始の「尾部」71から生じたガラス瓶に閉じこめられる。このことで、生じたランプを形成する、図7(e)に示した閉じた管77を生じる。
【0031】
本発明を更に以下の実施例により説明する。これらの限定でない実施例は、本発明がいかに作用するかを当業者に説明すること、及び本発明を実施するのに最善と思われる方法を示すことを意図して、いくつかの実施形態を説明するものである。
【実施例】
【0032】
実施例1〜3
本発明による水銀放出装置の3種類の類似した試料を、Ti3Hg化合物を含む連続「線材」から得た、図3に示したような台形断面の形態で用意する。その片は0.5 ×0.8mm の側面の寸法を有し、10mmの長さである。製造の際に予定した「線材」の線形的な詰め込みは、センチメートル当たり10.3mgのTi3Hgに等しく、「線材」のセンチメートル当たり6mg (mgHg/cm)の公称の水銀詰め込みになる。片の長さにより、それらの各々は6mgの公称の水銀の詰め込みを有する。水銀放出テストを、真空炉内で30秒間に渡り900 ℃でそれらを誘導加熱し、フォルハルト法による錯滴定の方法で試料中の残りの水銀を測定することで、これらの試料に実行した。各々の試料について開始の公称水銀量に関して放出した水銀の%として、単一の試料からの水銀量を表1に示す。
【0033】
比較例4〜6
実施例1〜3のテストを、金属テープ上に積層したTi3Hg化合物を有するテープから、10mmの長さの等しい片に切断することで得た、3種類の試料に繰り返す。Ti3Hg化合物でのテープの積層は、水銀の公称の線形詰め込みが6mgHg/cm を有するように実行する。各々の試料の公称水銀量は従って6mgである。3種類の試料の水銀量を%で表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1のデータは、水銀放出化合物Ti3Hg及び活性化条件が同じで、本発明の試料(実施例1〜3)が先行技術の試料(比較例4〜6)の2倍の水銀量を生じることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、第2の成分の使用を必要とすることなく、蛍光ランプに少量の水銀を正確かつ再現性をもって導入するための装置が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
x及びyが0〜13の範囲で、合計(x+y)が3〜13の範囲で、zが1又は2である金属間化合物TiZrHgの中から選択した水銀放出化合物の粉末を少なくとも収容する金属容器であって、完全に閉じていないが、上記水銀放出化合物の粉末粒子を保持することができる開口部を有する金属容器で形成されている、蛍光ランプに少量の水銀を導入するための水銀放出用装置において、
前記装置は、上記開口部として1つのスリットと該装置の両端の、合計3つを有する
ことを特徴とする水銀放出用装置。
【請求項2】
前記水銀放出化合物がTiHg である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記水銀放出化合物の前記粉末が150μm以下の粒子サイズを有する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
不揮発性のゲッタ材料を前記水銀放出化合物の前記粉末に添加する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
スズ、インジウム、銀、シリコン及び希土類元素の中から選択した1又は複数の元素と銅を含む合金を、前記水銀放出化合物の前記粉末に添加する請求項1に記載の装置。
【請求項6】
非活性化合物を前記水銀放出化合物の前記粉末に添加する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記金属容器を鋼、ニッケル又はニッケル添加した鉄で作成する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記容器を形成する前記金属が、50〜300μmの厚みである請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記金属容器が、前記金属薄板を折り曲げた際の先端部同士の間の間隙を開口部として有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置と同じ断面を有する連続線材から所望の長さに切断して作製される請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記水銀放出装置が金属受け上に2つの箇所を通じて溶接される線材片で形成され、前記片と前記受けの組立品が閉じた回路を形成する請求項10に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−289756(P2009−289756A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197922(P2009−197922)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【分割の表示】特願2008−295407(P2008−295407)の分割
【原出願日】平成10年5月12日(1998.5.12)
【出願人】(500275854)サエス ゲッターズ ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】