説明

水電解システム

【課題】電解質膜からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができ、良好な水電解処理を遂行可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、純水を電気分解することによって高圧水素を製造する水電解装置12と、純水を前記水電解装置12に供給するとともに、前記水電解装置12から排出される前記水を、前記水電解装置12に循環供給する水循環装置16とを備える。水循環装置16は、水電解装置12から排出される水及び酸素を分離する酸素側気液分離器78と、前記水電解装置12から前記酸素側気液分離器78に送られる前記水及び前記酸素の混合流体の圧力を検出する圧力センサ86と、前記圧力センサ86により検出された圧力に基づいて、水素の漏れの有無を判断するコントローラ22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解して一方の給電体に酸素を発生させるとともに、他方の給電体に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置から排出される余剰の前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置とを備える水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。すなわち、ユニットは、実質的には、上記の燃料電池と同様に構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素イオンと共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の水電解システムとして、例えば、特許文献1に開示された固体高分子型水電解装置が知られている。この固体高分子型水電解装置は、図7に示すように、高分子電解質膜を用いて水を電解し、陽極に酸素、陰極に水素を発生させる水電解槽1と、前記水電解槽1の陰極に発生した水素と水とを分離する水素気液分離器2と、前記水電解槽1の陽極に発生した酸素と水とを分離する酸素気液分離器3と、前記酸素気液分離器3から前記水電解槽1に水を供給する水循環ライン4と、前記水電解槽1に新規に供給される供給水の処理用イオン交換器5と、イオン交換処理後の水を蓄える純水タンク6と、前記純水タンク6の水を酸素気液分離器3に送るための供給ポンプ7と、前記水循環ライン4の循環水の一部を取り出して処理し処理後の水を前記酸素気液分離器3に送る分岐ライン8とを備えている。水循環ライン4は、酸素気液分離器3から水電解槽1へ水を供給することにより水を循環させる循環ポンプ9を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−173788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、水電解システムでは、高圧水素を生成するために、水及び生成酸素を常圧に維持する一方、生成水素を高圧に維持する差圧生成方式が採用されている。この差圧生成方式では、例えば、水電解層1の陰極に発生した水素は、陽極に発生した酸素よりも高圧となるため、この水素が固体高分子電解質膜を通って陽極側に漏れるおそれがある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、電解質膜からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができ、良好な水電解処理が遂行可能な水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解して一方の給電体に酸素を発生させるとともに、他方の給電体に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置から排出される余剰の前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置とを備える水電解システムに関するものである。
【0010】
水循環装置は、水電解装置から排出される水及び酸素の混合流体を前記水と前記酸素とに分離する気液分離機構と、前記水電解装置から前記気液分離機構に送られる前記水及び前記酸素の混合流体の圧力を検出する圧力検出機構と、前記圧力検出機構により検出された圧力に基づいて、電解質膜からの水素の漏れの有無を判断する制御部とを備えている。
【0011】
また、制御部は、検出された圧力が所定値を超えた際に、水素の漏れが有ると判断することが好ましい。
【0012】
さらに、制御部は、検出された圧力の増加率が所定値を超えた際に、水素の漏れが有ると判断することが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明では、水循環装置は、水電解装置から排出される水及び酸素の混合流体を前記水と前記水素とに分離する気液分離機構と、前記水から分離されて前記気液分離機構から排出される前記酸素の圧力を検出する圧力検出機構と、前記圧力検出機構により検出された圧力に基づいて、電解質膜からの水素の漏れの有無を判断する制御部とを備えている。
【0014】
また、制御部は、検出された圧力が所定値を超えた際に、水素の漏れが有ると判断することが好ましい。
【0015】
さらに、制御部は、検出された圧力の増加率が所定値を超えた際に、水素の漏れが有ると判断することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水電解装置から気液分離機構に送られる水及び酸素の混合流体の圧力を検出し、この圧力に基づいて、電解質膜からの水素の漏れの有無を判断している。水循環装置では、一定流量の循環水が循環されているため、循環水圧も一定の幅で変動している。従って、水素の漏れが僅かであっても、循環水圧(水及び酸素の圧力)の変動を確実に検出することが可能になる。
【0017】
例えば、生成される水素の圧力を検出して前記水素の漏れの有無を判断する際には、前記水素の漏れ量が相当量に達しないと、漏れを確実に検出することができない。一方、排出される酸素に含まれる水素濃度を検出して水素の漏れの有無を判断する際には、前記水素の漏れが非定常的に行われると、漏れを検出することができない。
【0018】
これにより、水電解装置から気液分離機構に送られる水及び酸素の混合流体の圧力を検出することによって、電解質膜からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができ、良好な水電解処理が遂行可能になる。
【0019】
さらに、本発明によれば、水から分離されて気液分離機構から排出される酸素の圧力を検出し、この圧力に基づいて、電解質膜からの水素の漏れの有無を判断している。気液分離機構から排出される酸素の圧力(背圧)は、循環水圧の変動幅に比べて小さいため、水素の漏れが僅かであっても、前記酸素の圧力の変動を確実に検出することが可能になる。このため、電解質膜からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができ、良好な水電解処理が遂行可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】前記水電解システムを構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図3】水素漏れ時における排出水及び酸素の混合流体の圧力と時間との関係図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図5】水素漏れ時における酸素の圧力と時間との関係図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図7】特許文献1に開示された固体高分子型水電解装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、純水を電気分解することによって高圧水素(常圧よりも高圧)を製造する水電解装置12と、純水供給装置14を介して市水から生成された純水が供給され、この純水を前記水電解装置12に供給するとともに、前記水電解装置12から排出される余剰の前記水を、前記水電解装置12に循環供給する水循環装置16と、前記水電解装置12から導出される前記高圧水素に含まれる水分を除去する水素側気液分離器18と、前記水素側気液分離器18から供給される水素に含まれる水分を吸着して除去する水素除湿器20と、コントローラ(制御部)22とを備える。
【0022】
水電解装置12は、高圧水素製造装置を構成しており、複数の単位セル24が積層される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
【0023】
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電源38に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部34aは、電源38のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部34bは、前記電源38のマイナス極に接続される。
【0024】
図2に示すように、単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0025】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0026】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0027】
アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、例えば、球状ガストマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0028】
単位セル24の外周縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び使用済みの水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0029】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に向かう面44aには、水供給連通孔56に連通する供給通路62aと、排出連通孔58に連通する排出通路62bとが設けられる。面44aには、供給通路62a及び排出通路62bに連通する第1流路64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0030】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面46aには、水素連通孔60に連通する排出通路66が設けられる。面46aには、排出通路66に連通する第2流路68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0031】
アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46の外周端部を周回して、シール部材70a、70bが一体化される。このシール部材70a、70bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0032】
図1に示すように、水循環装置16は、水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72には、循環ポンプ74、イオン交換器76及び酸素側気液分離器78が配設される。
【0033】
酸素側気液分離器78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端は、水電解装置12の排出連通孔58に連通する。酸素側気液分離器78には、純水供給装置14に接続された純水供給配管82と、前記酸素側気液分離器78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管84とが連結される。
【0034】
第1の実施形態では、戻り配管80に、水電解装置12から気液分離器78に送られる純水及び酸素の混合流体の圧力を検出する圧力検出機構、例えば、圧力センサ(背圧センサ)86が配設される。
【0035】
水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管88の一端が接続され、この高圧水素配管88の他端が水素側気液分離器18に接続される。高圧水素配管88には、図示しないが、背圧弁が設けられており、水素連通孔60に生成される水素圧力は、酸素側よりも高圧に維持することができる。水素側気液分離器18で水分が除去された高圧水素は、水素除湿器20によって除湿され、ドライ水素配管90にドライ水素が供給される。水素側気液分離器18の下部には、ドレン配管92が接続され、前記ドレン配管92には、排水用バルブ94が配設される。
【0036】
このように構成される水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0037】
先ず、水電解システム10の始動時には、純水供給装置14を介して市水から生成された純水が、水循環装置16を構成する酸素側気液分離器78に供給される。
【0038】
水循環装置16では、循環ポンプ74の作用下に、循環配管72を介して純水が水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電源38を介して電圧が付与される。
【0039】
このため、図2に示すように、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。
【0040】
従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0041】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
【0042】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置16の戻り配管80に排出される(図1参照)。この使用済みの水及び酸素は、酸素側気液分離器78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管84から外部に排出される。
【0043】
水電解装置12内に生成された水素は、高圧水素配管88を介して水素側気液分離器18に送られる。この水素側気液分離器18では、水素に含まれる水蒸気が、この水素から分離される一方、前記水素は、水素除湿器20を介して除湿された後、ドライ水素配管90に導入される。
【0044】
この場合、第1の実施形態では、水循環装置16を構成する戻り配管80には、水電解装置12の排出連通孔58と酸素側気液分離器78との間に位置して、前記排出連通孔58から排出される純水及び酸素の混合流体の圧力を検出する圧力センサ86が配設されている。
【0045】
そして、コントローラ22は、圧力センサ86による検出圧力に基づいて、水電解装置12を構成する各単位セル24の固体高分子電解質膜48に水素の漏れが惹起しているか否かを判断している。
【0046】
水循環装置16では、循環ポンプ74を介して一定流量の循環水が循環されているため、循環水圧も一定の幅で変動している。従って、水素の漏れが僅かであっても、循環水圧(水及び酸素の圧力)の変動を確実に検出することが可能になる。
【0047】
具体的には、圧力センサ86による検出圧力は、水素漏れが惹起している際には、図3に示すように、時間の経過に伴って検出圧力が上昇する。このため、コントローラ22では、検出された値が所定値、例えば、水素漏れのない基準値を超えた際に、固体高分子電解質膜48に水素の漏れが発生していると判断する。
【0048】
また、水素漏れが惹起している際には、時間の経過に伴って、圧力センサ86による検出圧力が増加している。従って、コントローラ22では、検出された圧力の増加率(傾き)が所定値を超えた際に、固体高分子電解質膜48に水素の漏れが発生していると判断してもよい。
【0049】
ここで、例えば、水電解装置12から生成される水素の圧力を検出して前記水素の漏れの有無を判断する際には、前記水素の漏れ量が相当量に達しないと、漏れを確実に検出することはできない。一方、水電解装置12から排出される酸素に含まれる水素濃度を検出して水素の漏れの有無を判断する際には、前記水素の漏れが非定常的に行われると、漏れを明確に検出することができない。
【0050】
これにより、水電解装置12から酸素側気液分離器78に送られる水及び酸素の混合流体の圧力を検出することによって、固体高分子電解質膜48からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができ、良好な水電解処理が遂行可能になるという効果が得られる。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム100の概略構成説明図である。
【0052】
なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0053】
水電解システム100では、酸素排気配管84に、酸素側気液分離器78により水から分離された酸素の圧力を検出する圧力検出機構、例えば、圧力センサ(背圧センサ)102が設けられる。
【0054】
この第2の実施形態では、コントローラ22は、圧力センサ102を介して検出される酸素圧力の変動に基づいて、固体高分子電解質膜48からの水素の漏れの有無を判断している。酸素側気液分離器78から排出される酸素の圧力(背圧)は、循環水圧の変動幅に比べて小さいため、水素の漏れが僅かであっても、前記酸素の圧力の変動を確実に検出することが可能になる。
【0055】
具体的には、固体高分子電解質膜48に水素の漏れが惹起している際、圧力センサ102により検出される酸素の圧力は、図5に示すように、時間の経過に伴って増加している。従って、コントローラ22は、検出された酸素圧力が、所定値である水素漏れのない基準値を超えた際に、固体高分子電解質膜48に水素の漏れが惹起していると判断する。
【0056】
また、コントローラ22は、検出された酸素圧力の増加率が、所定値を超えた際に、固体高分子電解質膜48に水素漏れが惹起していると判断してもよい。
【0057】
これにより、水から分離されて酸素側気液分離器78から排出される酸素の圧力を検出することによって、固体高分子電解質膜48からの水素の漏れの有無を容易且つ確実に検出することができる。このため、第2の実施形態では、良好な水電解処理が遂行可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る水電解システム120の概略構成説明図である。
【0059】
水電解システム120では、戻り配管80に水電解装置12から酸素側気液分離器78に送られる水及び酸素の混合流体の圧力を検出する圧力センサ86と、前記水から分離されて前記酸素側気液分離器78から排出される酸素の圧力を検出する圧力センサ102とを備えている。
【0060】
コントローラ22は、圧力センサ86、102から送られる検出圧力に基づいて少なくともいずれか一方の検出圧力が所定値を超えた際、又は、圧力の増加率が所定値を超えた際、固体高分子電解質膜48から水素の漏れが発生していると判断する。従って、第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
なお、上記の第1〜第3の実施形態では、コントローラ22が、固体高分子電解質膜48からの水素の漏れが発生していると判断した際、水電解装置12の高圧水素側の脱圧処理を行ったり、あるいは、電解処理を停止したりすることにより対応処置が行われる。
【符号の説明】
【0062】
10、100、120…水電解システム
12…水電解装置 14…純水供給装置
16…水循環装置 18…水素側気液分離器
20…水素除湿器 22…コントローラ
24…単位セル 38…電源
42…電解質膜・電極構造体 44…アノード側セパレータ
46…カソード側セパレータ 48…固体高分子電解質膜
50…アノード側給電体 52…カソード側給電体
56…水供給連通孔 58…排出連通孔
60…水素連通孔 64、68…流路
72…循環配管 78…酸素側気液分離器
80…戻り配管 82…純水供給配管
84…酸素排気配管 86…圧力センサ
88…高圧水素配管 102…圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解して一方の給電体に酸素を発生させるとともに、他方の給電体に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から排出される余剰の前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置と、
を備える水電解システムであって、
前記水循環装置は、前記水電解装置から排出される前記水及び前記酸素の混合流体を前記水と前記酸素とに分離する気液分離機構と、
前記水電解装置から前記気液分離機構に送られる前記水及び前記酸素の混合流体の圧力を検出する圧力検出機構と、
前記圧力検出機構により検出された圧力に基づいて、前記電解質膜からの前記水素の漏れの有無を判断する制御部と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記検出された圧力が所定値を超えた際に、前記水素の漏れが有ると判断することを特徴とする水電解システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記検出された圧力の増加率が所定値を超えた際に、前記水素の漏れが有ると判断することを特徴とする水電解システム。
【請求項4】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解して一方の給電体に酸素を発生させるとともに、他方の給電体に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から排出される余剰の前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置と、
を備える水電解システムであって、
前記水循環装置は、前記水電解装置から排出される前記水及び前記酸素の混合流体を前記水と前記酸素とに分離する気液分離機構と、
前記水から分離されて前記気液分離機構から排出される前記酸素の圧力を検出する圧力検出機構と、
前記圧力検出機構により検出された圧力に基づいて、前記電解質膜からの前記水素の漏れの有無を判断する制御部と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項5】
請求項4記載の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記検出された圧力が所定値を超えた際に、前記水素の漏れが有ると判断することを特徴とする水電解システム。
【請求項6】
請求項4又は5記載の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記検出された圧力の増加率が所定値を超えた際に、前記水素の漏れが有ると判断することを特徴とする水電解システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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