説明

水電解システム

【課題】電力消費を可及的に抑制するとともに、経済性及び利便性の向上を図ることができ、システム効率を向上させることを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置12と、前記高圧水素製造装置12から前記高圧水素を排出する水素配管20に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置22と、水が分離された前記高圧水素を、前記気液分離装置22から導出する高圧水素供給配管24と、前記高圧水素供給配管24に配設され、前記高圧水素の湿度を調整するために該高圧水素の温度を可変に制御することが可能な冷却装置26と、制御部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解してアノード側に酸素とカソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置と、前記高圧水素製造装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、水が分離された前記高圧水素を、前記気液分離装置から導出する高圧水素供給配管とを備える水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池の発電反応に使用される燃料ガスとして、水素が使用されている。この水素は、例えば、水電解装置により製造されている。水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設して単位セルが構成されている。
【0003】
そこで、複数の単位セルが積層されたセルユニットには、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってセルユニットから排出される。
【0004】
上記の水電解装置では、水分を含んだ水素が製造されている。製品水素は、例えば、燃料電池自動車等に供給する際、所望の乾燥状態(水濃度)、例えば、水分量5ppm以下の水素(以下、ドライ水素ともいう)が要求されている。
【0005】
このため、例えば、特許文献1に開示されている除湿機構では、非処理ガスの除湿を行う除湿剤が容器本体に収容された除湿装置を備え、前記容器本体には、冷却用ガスを導通させるための冷却トレースが配設されている。
【0006】
この除湿装置の再生工程は、除湿剤を加熱することによって水分を除去する加熱工程と、加熱された除湿剤を常温程度にまで冷却する冷却工程とからなっている。具体的には、加熱工程では、容器本体に冷却トレースの螺旋の間隙に同じく略均等間隔で配設された電熱線によって前記容器本体全体が加熱されている。さらに、冷却工程では、冷却用ガスが冷却トレースに導通されて、除湿剤が所定の除湿性能を回復するまで冷却されている。
【0007】
また、除湿装置としては、吸着筒内で吸着圧力と脱着圧力との圧力差を利用して、水素ガス中に含まれる水分を除去する圧力変動吸着方法(PSA)等が採用されている。
【0008】
さらにまた、簡易型の除湿装置としては、ゼオライト等の吸着剤を交換式に構成したものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−149890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1では、再生工程が加熱工程と冷却工程とを有しているため、温度変化に伴う工程全体の長時間化が懸念される。しかも、電熱線に供給される電力消費量の観点から、システム効率の低下が惹起されるという問題がある。
【0011】
また、上記のPSA式除湿装置では、高圧吸着筒や高圧デバイスを構成する必要がある。従って、システム全体の複雑化が発生するとともに、コストや耐久性に問題がある。
【0012】
さらにまた、交換式の吸着剤を利用する除湿装置では、水分濃度によっては、吸着剤の交換時期が早くなる。これにより、交換メンテナンスが頻繁に必要となって、利便性が低下するという問題がある。また、交換頻度を抑制するためには、多量の吸着剤が必要になり、システム全体が大型化するという問題がある。
【0013】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、電力消費を可及的に抑制するとともに、経済性及び利便性の向上を図ることができ、システム効率を向上させることが可能な水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を電気分解してアノード側に酸素とカソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置と、前記高圧水素製造装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、水が分離された前記高圧水素を、前記気液分離装置から導出する高圧水素供給配管とを備える水電解システムに関するものである。
【0015】
この水電解システムでは、高圧水素供給配管には、高圧水素の湿度を調整するために、前記高圧水素の温度を可変に制御する冷却装置が設けられている。
【0016】
また、この水電解システムでは、冷却装置は、ペルチェ素子を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置内のカソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、検知された前記圧力に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段とを備えることが好ましい。
【0017】
さらに、この水電解システムでは、冷却装置は、熱交換器を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置内のカソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、検知された前記圧力に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段とを備えることが好ましい。
【0018】
さらにまた、この水電解システムでは、冷却装置は、ペルチェ素子及び熱交換器を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置内のカソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、検知された前記圧力に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、検知された前記圧力に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段とを備えることが好ましい。
【0019】
また、この水電解システムでは、冷却装置は、ペルチェ素子を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、検知された前記電解電流値に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段とを備えることが好ましい。
【0020】
さらに、この水電解システムでは、冷却装置は、熱交換器を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、検知された前記電解電流値に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段とを備えることが好ましい。
【0021】
さらにまた、この水電解システムでは、冷却装置は、ペルチェ素子及び熱交換器を備えるとともに、前記水電解システムは、制御部を備え、前記制御部は、高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、検知された前記電解電流値に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、検知された前記電解電流値に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段とを備えることが好ましい。
【0022】
また、この水電解システムでは、ペルチェ素子の上流に熱交換器が配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高圧水素の温度を可変に制御することができるため、前記高圧水素を効率的且つ確実に除湿することが可能になる。しかも、無駄に電力を消費することがなく、経済性及び利便性の向上を図ることができる。これにより、簡単且つ経済的な構成で、システム効率の向上を容易に図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】圧力と冷却水量及びペルチェ消費電力との関係を示すマップ図である。
【図4】圧力と水分濃度との関係説明図である。
【図5】温度と水分濃度との関係説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図7】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【図8】電解電流値と冷却水量及びペルチェ消費電力との関係を示すマップ図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図10】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図12】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図14】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図16】前記水電解システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって、酸素及び高圧水素(常圧である酸素圧力よりも高圧、例えば、1MPa〜70MPaの水素)を製造する高圧水素製造装置(差圧式水電解装置)12と、前記高圧水素製造装置12から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置14と、前記水貯留装置14に貯留される前記水を、前記高圧水素製造装置12に循環させる水循環装置16と、前記水貯留装置14に市水から生成された純水を供給する水供給装置18と、前記高圧水素製造装置12から水素配管20に導出される前記高圧水素に含まれる水分を除去する気液分離装置22と、水が分離された前記高圧水素を、前記気液分離装置22から導出する高圧水素供給配管24と、前記高圧水素供給配管24に配設され、前記高圧水素の湿度を調整するために該高圧水素の温度を可変に制御する冷却装置26と、システム全体の制御を行う制御部(ECU)28とを備える。
【0026】
高圧水素製造装置12は、複数の単位セル30を積層したセルユニットを備える。単位セル30の積層方向一端には、ターミナルプレート32a、絶縁プレート34a及びエンドプレート36aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル30の積層方向他端には、同様にターミナルプレート32b、絶縁プレート34b及びエンドプレート36bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート36a、36b間は、一体的に締め付け保持される。
【0027】
ターミナルプレート32a、32bの側部には、端子部38a、38bが外方に突出して設けられる。端子部38a、38bは、配線39a、39bを介して電解電源40に電気的に接続される。
【0028】
単位セル30は、例えば、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有する。
【0029】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0030】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0031】
単位セル30の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0032】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に対向する面には、水供給連通孔56及び排出連通孔58に連通する第1流路64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第1流路64には、反応により生成された酸素及び未反応の水が流通する。
【0033】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、水素連通孔60に連通する第2流路68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第2流路68には、反応により生成された高圧水素が流通する。
【0034】
水循環装置16は、高圧水素製造装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72は、循環ポンプ74及びイオン交換器76を配置して水貯留装置14を構成するタンク部78の底部に接続される。
【0035】
タンク部78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端は、高圧水素製造装置12の排出連通孔58に連通する。戻り配管80の一端部は、タンク部78内に貯留される水の中で、常時、開口する位置に設定される。
【0036】
タンク部78には、水供給装置18に接続された純水供給配管84と、前記タンク部78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管86とが連結される。
【0037】
高圧水素製造装置12の水素連通孔60には、水素配管20の一端が接続され、この水素配管20の他端が、気液分離装置22に接続される。気液分離装置22は、水を貯留するためのタンク部88を備える。タンク部88の下部には、排水ライン90が接続されるとともに、前記排水ライン90には、排水用バルブ92が配設される。
【0038】
気液分離装置22で水分が除去された高圧水素は、ドライ水素として高圧水素供給配管24に導出される。高圧水素供給配管24には、冷却装置26が設けられるとともに、前記冷却装置26は、ペルチェ除湿器(ペルチェ素子)94及び熱交換器96を備える。
【0039】
ペルチェ除湿器94は、ペルチェ素子を用いた冷却器により構成されており、可変電源97を備える。ペルチェ除湿器94には、高温側の熱を逃がすための冷媒用配管98が接続される。なお、冷媒用配管98に代えて、放熱フィン等を使用してもよい。
【0040】
熱交換器96は、ペルチェ除湿器94の上流側に直列的に配置される。熱交換器96には、冷媒体として冷却水が供給される冷却水供給管100と、前記冷却水が排出される冷却水排出管102とが接続される。冷却水供給管100には、熱交換器96に流通させる冷却水量を可変にするための流量調整弁104が配設される。
【0041】
なお、冷却水排出管102は、冷媒用配管98の入口側に接続されていてもよく、さらに冷却水供給管100には、電解に使用される水を流通させてもよい。これによって、新たな水の供給源が不要になり、システム全体の簡素化が図られるという効果が得られる。また、冷却水排出管102と冷媒用配管98とは、別体に構成してもよく、熱交換器96とペルチェ除湿器94とのいずれかのみに電解用の水を供給することも可能である。
【0042】
制御部28は、高圧水素製造装置12内のカソード側の圧力を検出する圧力検出手段110と、検出された前記圧力に基づいて、ペルチェ除湿器94に印加される電流値を可変にする電流可変手段112と、検知された前記圧力に基づいて、熱交換器96に流通させる冷却水量を可変にする冷却水量可変手段(冷媒体量可変手段)114とを備える。
【0043】
水素配管20には、高圧水素製造装置12内のカソード側の圧力を測定するための圧力センサ116が配設される。圧力センサ116による検出信号は、圧力検出手段110に送られる。
【0044】
高圧水素供給配管24には、冷却装置26の下流側に位置して凝縮器118と背圧弁120とが配置される。凝縮器118は、焼結フィルタ等で構成されるとともに、背圧弁120は、所定の設定圧力(例えば、35MPa)で開放され、高圧水素を、図示しない燃料電池自動車等に製品水素として供給することができる。
【0045】
このように構成される水電解システム10の動作について、図2に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0046】
先ず、図3に示すように、高圧水素製造装置12のカソード側圧力Pと、ペルチェ除湿器94の消費電力W及び熱交換器96の冷却水量Qとの関係が、予めマップとして作成される。
【0047】
具体的には、水素圧力(カソード側圧力)と水素中に含まれる水分濃度とは、図4に示す関係を有している。水素中の水分濃度は、水素圧力が高くなる程、すなわち、高圧水素になる程低下しており、流速も遅くなることから除湿が容易になされる。
【0048】
一方、図5に示すように、水素中の水分濃度は、水素温度が低くなる程、低下するとともに、水素圧力が高くなる程、冷却温度を高くして水分濃度を低下させ ることができる。
【0049】
上記のように、水素圧力と水分濃度との関係及び水素温度と水素濃度の関係から、図3に示すように、制御マップが得られる。
【0050】
そこで、水電解システム10による電解が開始される(ステップS1)。図1に示すように、水供給装置18を介して市水から生成された純水が、水貯留装置14を構成するタンク部78に供給される。
【0051】
水循環装置16では、循環ポンプ74の作用下に、タンク部78内の水が循環配管72を介して高圧水素製造装置12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート32a、32bの端子部38a、38bには、電気的に接続されている電解電源40を介して電圧(電解電流値A)が付与される。
【0052】
このため、各単位セル30では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる(ステップS2)。
【0053】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて高圧水素製造装置12の外部に取り出し可能となる。
【0054】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置16の戻り配管80に排出される。この未反応の水及び酸素は、タンク部78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管86から外部に排出される。
【0055】
高圧水素製造装置12内に生成された水素は、水素配管20を介して気液分離装置22に送られる。この気液分離装置22では、水素に含まれる水蒸気(水分)が、この水素から分離されてタンク部88に貯留される一方、前記水素は、高圧水素供給配管24に導出される。
【0056】
上記のように、高圧水素製造装置12により水電解処理が行われ、水素の製造が継続されると、背圧弁120の設定圧力までカソード側の圧力(水素圧力)Pが上昇していく。制御部28では、圧力検出手段110が、圧力センサ116からの検出信号に基づいて、高圧水素製造装置12のカソード側の圧力Pを検知する(ステップS3)。圧力検出手段110では、検出された圧力Pに基づいて、図3に示すマップから、熱交換器96に供給される冷却水量Q及びペルチェ除湿器94に印加される電流値、すなわち、ペルチェ消費電力Wが算出される。
【0057】
冷却水量可変手段114では、流量調整弁104を制御することにより、冷却水供給管100から熱交換器96に供給される冷却水量Qmapが、マップに基づいて制御される(ステップS4)。このため、高圧水素供給配管24に沿って熱交換器96に導入される高圧水素は、冷却水との間で熱交換が行われ、所望の水素濃度に除湿される水素温度(図5参照)まで冷却される。
【0058】
次に、高圧水素は、ペルチェ除湿器94に送られる。このペルチェ除湿器94では、可変電源97による印加電流値が、電流可変手段112によりペルチェ消費電力Wmap(図3のマップ)によって制御される(ステップS4)。従って、高圧水素は、ペルチェ除湿器94により所定の水分濃度に対応する水素温度に冷却され、所望の湿度まで除湿されてドライ水素が得られる。
【0059】
ドライ水素は、凝縮器118及び背圧弁120に流通し、設定圧力まで上昇した後、前記背圧弁120の開放作用下に、製造水素として図示しない燃料電池自動車等に供給される。
【0060】
これにより、高圧水素製造装置12は、定常運転に移行し(ステップS5)、電解運転が停止されることにより(ステップS6)、水電解システム10による運転が終了される。
【0061】
この場合、第1の実施形態では、高圧水素供給配管24には、高圧水素の湿度を調整するため、前記高圧水素の温度を可変に制御することが可能な冷却装置26が設けられている。このため、昇圧中であって、圧力が変化していく場合や、何らかの要因で高圧水素供給配管24の圧力が低下した場合であっても、検知された圧力に応じて必要最低限の冷却を行うことができる。従って、無駄に冷却を行うことがなく、システム全体の効率の向上を図ることが可能になる。
【0062】
しかも、無駄に電力を消費することがなく、且つ吸着剤の交換が不要になり、経済性及び利便性の向上を図ることができる。これにより、簡単且つ経済的な構成で、水電解システム10全体のシステム効率の向上を容易に図ることが可能になるという効果がある。
【0063】
さらに、冷却装置26は、ペルチェ除湿器94と、前記ペルチェ除湿器94の上流側に配置される熱交換器96とを備えている。従って、高圧水素製造装置12のカソード側の圧力Pを検知することで、図3に示すマップに基づいて、熱交換用冷却水量Qmap及びペルチェ除湿器94のペルチェ消費電力Wmapを可変制御させることができる。
【0064】
これにより、高圧水素は、所望の水分濃度まで除湿させることができる最小限の冷却水量や消費電力により制御することが可能になり、システム効率を大幅に向上させることが可能になるという利点が得られる。
【0065】
しかも、ペルチェ除湿器94の上流側に、熱交換器96が配置されている。このため、熱交換器96により高圧水素中の水分を略除去した後、前記高圧水素がペルチェ除湿器94に送られる。従って、ペルチェ除湿器94での電力消費量を良好に抑制することが可能になる。
【0066】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム130の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0067】
水電解システム130は、制御部132を備えるとともに、前記制御部132は、高圧水素製造装置12の電解電流値Aを検知する電流検知手段134を設ける。高圧水素製造装置12では、電解電源40に電解電流値を検出するための電流検出センサ136が装着される。
【0068】
このように構成される水電解システム130の動作について、図7に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0069】
この第2の実施形態では、高圧水素製造装置12のカソード側の圧力Pが一定である際に、電解電流値Aと冷却水量Q及びペルチェ消費電力Wとの関係が、図8に示すマップとして予め作成される。
【0070】
すなわち、電解電流値Aを変化させることにより、製造される水素量が可変となる。このため、電解電流値Aが大きくなる程、水素製造量が増加し、これに伴って冷却水量Q及びペルチェ消費電力Wを増加させる。
【0071】
そこで、水電解システム130では、高圧水素製造装置12による水電解処理が開始され(ステップS11)、電解電流値Aで水電解が行われる(ステップS12)。圧力検出手段110では、高圧水素製造装置12のカソード側の圧力Pが検出される。そして、検出された圧力Pが一定であると判断されると(ステップS13中、YES)、ステップS14に進む。
【0072】
このステップS14では、電流検知手段134により、電解電源40に装着された電流検出センサ136を介して電解電流値Aが検知される。従って、図8に示すように、検出された電解電流値Aに対応する熱交換器96の冷却水量Qmap及びペルチェ除湿器94のペルチェ消費電力Wmapに沿って制御される(ステップS15)。さらに、水電解システム130が定常運転に移行した後(ステップS16)、電解処理が停止される(ステップS17)。
【0073】
この場合、第2の実施形態では、高圧水素の圧力Pが一定に維持されている際、電解電流値Aの変化に伴って製造量が変動する高圧水素に応じた除湿処理が、最小限の冷却水量Q及び最小限のペルチェ消費電力Wで制御されている。これにより、水電解システム130全体のシステム効率が大幅に向上できる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る水電解システム150の概略構成説明図である。
【0075】
水電解システム150は、冷却装置152及び制御部154を備える。冷却装置152は、ペルチェ除湿器94のみを設けるとともに、制御部154は、圧力検出手段110及び電流可変手段112を有している。水電解システム150では、熱交換器96及び冷却水量可変手段114を用いていない。
【0076】
この第3の実施形態では、図10に示すフローチャートに沿って、ステップS21〜ステップS26の処理が行われる。その際、高圧水素製造装置12のカソード側の圧力Pが検知され(ステップS23)、この圧力Pに基づいて、ペルチェ消費電力Wmapが読み取られ、ペルチェ除湿器94の印加電流が制御される(ステップS24)。
【0077】
これにより、第3の実施形態では、吸着剤の交換が不要になり、メンテナンス性が向上するとともに、無駄な電力消費を可及的に抑制することができる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る水電解システム160の概略構成説明図である。
【0079】
水電解システム160は、冷却装置162及び制御部164を備える。冷却装置162は、熱交換器96のみを設けるとともに、制御部164は、圧力検出手段110及び冷却水量可変手段114を有する。水電解システム160では、ペルチェ除湿器94及び電流可変手段112を用いていない。
【0080】
この第4の実施形態では、図12に示すフローチャートに沿って、ステップS31〜ステップS36の処理が行われる。その際、検出圧力Pに基づいて、マップから冷却水量Qmapが読み取られ、これによって熱交換器96が制御される(ステップS34)。
【0081】
このため、第4の実施形態では、吸着剤の交換が不要になり、メンテナンス性が向上するとともに、無駄な電力消費を可及的に抑制することができる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る水電解システム170の概略構成説明図である。
【0083】
水電解システム170は、冷却装置172と制御部174とを備える。冷却装置172は、ペルチェ除湿器94のみを有するとともに、制御部174は、冷却水量可変手段114を用いていない。
【0084】
水電解システム170では、図14に示すフローチャートに沿って、ステップS41〜ステップS47の処理が行われる。その際、検知された電解電流値Aに対応するペルチェ消費電力Wmapが読み取られ、これによってペルチェ除湿器94が制御される(ステップS45)。
【0085】
従って、第5の実施形態では、除湿剤の交換が不要になり、メンテナンス性が向上するとともに、無駄な電力消費を可及的に抑制することができる等、上記の第1〜第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
図15は、本発明の第6の実施形態に係る水電解システム180の概略構成説明図である。
【0087】
水電解システム180は、冷却装置182及び制御部184を備える。冷却装置182は、熱交換器96のみを有するとともに、制御部184は、電流可変手段112を不要にする。
【0088】
この第6の実施形態では、図16に示すフローチャートに沿って、ステップS51〜ステップS57の処理が行われる。その際、検知された電解電流値Aに基づいて、マップから冷却水量Qmapが読み取られ、熱交換器96の制御が行われる(ステップS55)。
【0089】
従って、第6の実施形態では、吸着剤の交換が不要になり、メンテナンス性が向上するとともに、無駄な電力消費を可及的に抑制することができる等、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
なお、ドライ水素を一層確実に得るために、ペルチェ除湿器94の下流に吸着器を配設することも可能である。その際、ペルチェ除湿器94により殆どの水分が除去されるため、従来の構成に比べて、吸着剤の交換頻度を著しく低下させることができるとともに、システム全体の小型化が可能になる。
【符号の説明】
【0091】
10、130、150、160、170、180…水電解システム
12…高圧水素製造装置 14…水貯留装置
16…水循環装置 18…水供給装置
20…水素配管 22…気液分離装置
24…高圧水素供給配管
26、152、162、172、182…冷却装置
28、132、154、164、174、184…制御部
30…単位セル 42…電解質膜・電極構造体
44…アノード側セパレータ 46…カソード側セパレータ
48…固体高分子電解質膜 50…アノード側給電体
52…カソード側給電体 56…水供給連通孔
58…排出連通孔 60…水素連通孔
64、68…流路 88…タンク部
94…ペルチェ除湿器 96…熱交換器
97…可変電源 100…冷却水供給管
102…冷却水排出管 104…流量調整弁
110…圧力検出手段 112…電流可変手段
114…冷却水量可変手段 116…圧力センサ
120…背圧弁 134…電流検知手段
136…電流検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解してアノード側に酸素とカソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置と、
前記高圧水素製造装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、
水が分離された前記高圧水素を、前記気液分離装置から導出する高圧水素供給配管と、
を備える水電解システムであって、
前記高圧水素供給配管には、前記高圧水素の湿度を調整するために、該高圧水素の温度を可変に制御する冷却装置が設けられることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、ペルチェ素子を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置内の前記カソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、
検知された前記圧力に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項3】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、熱交換器を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置内の前記カソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、
検知された前記圧力に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項4】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、ペルチェ素子及び熱交換器を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置内の前記カソード側の圧力を検知する圧力検知手段と、
検知された前記圧力に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、
検知された前記圧力に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項5】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、ペルチェ素子を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、
検知された前記電解電流値に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項6】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、熱交換器を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、
検知された前記電解電流値に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項7】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記冷却装置は、ペルチェ素子及び熱交換器を備えるとともに、
前記水電解システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記高圧水素製造装置の電解電流値を検知する電流検知手段と、
検知された前記電解電流値に基づいて、前記ペルチェ素子に印加される電流値を可変にする電流可変手段と、
検知された前記電解電流値に基づいて、前記熱交換器に流通させる冷媒体量を可変にする冷媒体量可変手段と、
を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項8】
請求項4又は7記載の水電解システムにおいて、前記ペルチェ素子の上流に前記熱交換器が配置されることを特徴とする水電解システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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