説明

氷菓用安定剤並びにその応用

【課題】氷菓の食感を改良し、清涼感を有し、かつ、風味も良好な氷菓を提供する。
【解決手段】氷菓用安定剤に寒天及びアンモニウム塩を併用することで固く締まった食感の氷菓とすることができる。また、氷菓用安定剤に寒天、アンモニウム塩及び大豆多糖類を併用することで、軟らかい食感の氷菓とすることができる。寒天及びアンモニウム塩と、大豆多糖類の添加量を調整して添加することにより、氷菓を軟らかい食感にも硬い食感にも改良できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な氷菓用安定剤及び当該氷菓用安定剤を含む氷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、増粘安定剤とアンモニウム塩を併用した冷菓の製造法は知られている。例えば、冷菓を製造するに際し、ローカストビンガム、グアルガム、カラギニン、カルボキシメチルセルロース、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、醗酵多糖類ガム、タマリンド種子抽出物質、ゼラチンなどの増粘多糖類に、アンモニウム塩類を併用した冷菓の製造方法により、凍結時に氷晶の生成時間を短縮することにより、生産能率を高めると共に、凍結時に均一でかつ微細な氷晶を生成せしめ、さらに凍結硬化した氷晶に熱衝撃を与えた際起こる氷晶の成長を防止して冷菓類の品質を向上できることが記載されている(特許文献1)。
【0003】
また、流水式製氷機に水を導入して氷を製造する方法において、アンモニウム塩を含むことにより、シロップ成分が氷中に均一に含有されるようになることが記載されている(特許文献2)。しかし、これらにはいずれも増粘多糖類に寒天を使用できることや、また、氷菓の食感改良に関する技術については何ら示唆されていない。
【0004】
一方、寒天も冷菓用安定剤としての用途は知られており、冷菓中の不溶性固形食品を分散安定化できること(特許文献3)、寒天を冷菓中0.001〜0.03重量%添加することを特徴とする冷菓ミックス調製時における乳清の分離を抑制する方法(特許文献4)などが記載されている。しかし、いずれもアンモニウム塩との併用は開示されておらず、また冷菓の製法といえども、氷菓の食感改良に関する記載は一切ない。
【0005】
更には、大豆由来の水溶性ヘミセルロースとして、大豆多糖類を安定剤として添加する冷菓の製造方法に関しても知られている。例えば、大豆の子葉由来の水溶性ヘミセルロースを安定剤として添加する冷菓においては、ソフトでさっぱりとしており、氷菓においては脆さのある軽い食感を付与できると記載されている(特許文献5)。しかし、寒天とアンモニウム塩の併用で、さらに軟らかさを付与できることについては何ら触れられていない。また、全固形分が5〜25重量%であり、オーバーランが70〜300%である氷菓の安定剤として、少なくとも水溶性大豆多糖類及び小麦グルテン分解物を配合すること(特許文献6)、また、冷菓組織を形成する部分がオーバーラン70〜150であり、配合中に水溶性ヘミセルロースを含有することにより、冷凍下においてスプーン刺さりの良好な、軟らかな組織を有することが記載されている(特許文献7)。これらはオーバーランを70〜300%と高く保持するために安定剤が添加されているものであり、オーバーランを高くすることにより、軽い口当たりとサクサクとした食感が得られるものである。
【0006】
なお、氷菓、特にかち割り氷のような低固形処方でフリージングを行わない形態のものに対する食感改良はほとんど検討されていない。また、食感のバリエーションを広げる目的で増粘多糖類などを使用してもヌメリのある食感が付与され、氷菓本来の清涼感が損なわれるなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】特公昭44−10151号公報
【特許文献2】特公平4−20575号公報
【特許文献3】特開2002−345409号公報
【特許文献4】特許第3660271号公報
【特許文献5】特許第3692875号公報
【特許文献6】特開2003−61585号公報
【特許文献7】特開2002−315513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、食感が改良され、かつ、清涼感を維持した風味良好な氷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、氷菓に含有させる安定剤に特に注目して鋭意研究を重ねていたところ、氷菓用安定剤として、寒天及びアンモニウム塩を必須成分として含むことにより、硬く締まった食感に改良することができるため、清涼感を有し、かつ、風味も良好な新規な氷菓を調製できることを見いだした。
【0010】
また、寒天及びアンモニウム塩に加えて大豆多糖類を併用することにより、今度は意外にも軟らかい食感に改良することができ、かち割り氷などの氷菓に対して、清涼感が有りながらも、軟らかい新規な食感を付与できることを見いだした。更には、寒天及びアンモニウム塩と、大豆多糖類の添加量を調整して添加することにより、氷菓の食感を硬くも軟らかくも自在に調整できることを見出した。
【0011】
本発明は以下の態様を有する新規な氷菓用安定剤並びにその応用に関する;
項1.寒天及びアンモニウム塩を含むことを特徴とする氷菓用安定剤。
項2.更に、大豆多糖類を併用する項1に記載の氷菓用安定剤。
項3.項1又は2に記載の氷菓用安定剤を含有する氷菓。
項4.寒天及びアンモニウム塩と、大豆多糖類の添加量を調整して添加することを特徴とする、氷菓の食感改良方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、食感が改良され、かつ、清涼感を維持した風味良好な氷菓を調製できるようになった。また、氷菓の食感を硬くも軟らかくも自在に調整できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(1)硬く締まった食感に改良する氷菓用安定剤
まず、本発明の氷菓用安定剤は寒天及びアンモニウム塩を必須成分として含むことを特徴とする。当該氷菓用安定剤を氷菓に含有することにより、硬く締まった食感に改良することができ、清涼感を有し、かつ、風味も良好な新規な氷菓となる。
【0014】
寒天としては、天草、オゴノリ、オバクサ、イタニクサなどの紅藻類を原料として熱水抽出して凝固させたものを乾燥させた各種のものをいずれも使用することができる。この寒天には、糸寒天、棒寒天、フレーク寒天、粉末寒天などが含まれる。また、製造技術によりゲル強度を高めた(弱めた)もの、粘弾性を高めた(弱めた)もの、高融点化(低融点化)したもの、低分子化(高分子化)したものなど、いずれのものも使用することができる。また、異なる種類の寒天を組みあわせて使用することもできる。
【0015】
アンモニウム塩としては、リン酸水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、クエン酸鉄アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどを挙げることができ、これらを単独或いは併用して使用することができる。中でも、リン酸水素二アンモニウムを使用するのが好ましい。
【0016】
本発明の氷菓用安定剤の添加量としては、使用する原料や製法によって適宜調整することができるが、最終氷菓全量に対して、例えば、寒天0.001重量%〜1重量%、好ましくは、0.005〜0.5重量%、更に好ましくは、0.01〜0.1重量%、アンモニウム塩0.002重量%〜2重量%、好ましくは、0.01〜1重量%、更に好ましくは、0.02〜0.2重量%となるような量を添加することができる。
更には、寒天とアンモニウム塩の配合割合としては、寒天1重量部に対して、アンモニウム塩0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部を挙げることができる。
【0017】
本発明の氷菓用安定剤には、前述の寒天及びアンモニウム塩の他に、本発明の氷菓に悪影響を与えない限度で、他の氷菓用安定剤を併用することができる。他の氷菓用安定剤として、グルコマンナン、ガラクトマンナン(ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム等)、タマリンドシードガム、カラギナン、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、ゼラチン、ペクチン、カードラン、ラムザンガム、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、グルテン分解物、乳化性澱粉等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0018】
本発明の氷菓は、目的とする製品により、種々の構成をとることができ、例えば、アイスキャンデー、みぞれ、かき氷、シャーベット、フローズンヨーグルト、シェイク等があげられる。また、カップ入りアイス、アイスバーなどの充填・形状にも制限がなく、アイスケーキ、クラッカーサンドアイス、不凍アイスケーキ、コーン入りアイス、シューアイス、アイスもなかなどの他の食品との複合氷菓としてもよい。中でも、本発明の硬い食感を付与する冷菓として最もふさわしい氷菓の形態は、オーバーランをかけない形態の氷菓である。
【0019】
本発明の氷菓は、前述の氷菓用安定剤を添加し、通常の氷菓の製造工程にて製造することができる。例えば、原料の秤量混合→加温(60〜90℃)→溶解・混合→濾過→ホモジナイズ→殺菌(68℃、30分以上またはHTST殺菌やUHT殺菌)→冷却(5℃以下)→エージング→フレーバー添加→フリージング→充填の工程より必要な工程を適宜選択して製造することができ、本発明の氷菓用安定剤は、通常、原料の秤量混合工程中、他の原料と合わせて秤量混合することができる。
【0020】
なお、本発明の氷菓は、含まれる可溶性固形分が50重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下に設定されていることが好ましい。なお、可溶性固形分が少なくなればなるほど本発明の効果が高まるが、氷菓に対する甘味・風味を付与する点より、下限の可溶性固形分量として、0.02重量%以上を挙げることができる。かかる可溶性固形分の成分としては、通常氷菓に使用される水溶性の固形分であれば特に制限はないが、通常の氷菓と同様の構成をとることができる。すなわち、前述の氷菓用安定剤以外に、本発明の効果を奏する限り、水、甘味料、無脂乳固形分、香料、色素、油脂、タンパク質、乳化剤、酸化防止剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合させ溶融したものを用いることができる。
【0021】
甘味料としては、例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、粉末水あめ、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等を挙げることができる。
【0022】
乳化剤として、氷菓用途に一般的に用いられている乳化剤であればよい。例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等などを挙げることができる。
【0023】
また、香料や色素は公知の氷菓生地に添加されるものが選択されて用いられる。その他、カルシウム等のミネラル分やビタミン、カテキン、プロテイン類などの栄養強化に用いられるような食品素材や、果肉、ナッツ類、クッキー、チョコレート、クルトン、パンなど氷菓の風味、食感にバラエティを持たせるために不溶性の固形分を適宜添加することができる。
【0024】
(2)軟らかい食感に改良する氷菓用安定剤
次に、本発明の氷菓用安定剤は寒天及びアンモニウム塩に加えて、大豆多糖類を必須成分として含むことを特徴とする。(1)にて述べた通り、寒天及びアンモニウム塩を併用した氷菓用安定剤を含有する氷菓は、硬く締まった新規な食感を有することが特徴であるが、(2)の寒天、アンモニウム塩及び大豆多糖類を使用した氷菓用安定剤は、大豆多糖類を単独で含有する場合よりも、軟らかい新規な食感を氷菓に付与することが特徴である。なお、前述の通り、大豆多糖類については、オーバーランを付与する冷菓についてスプーン刺さりのよい軟らかさを付与できることが知られている。しかし、本発明では、(1)の硬く締まった新規な食感を付与する冷菓用安定剤に、大豆多糖類を併用することにより、特に、オーバーランを付与しない氷菓について、意外にも大豆多糖類を単独で含有するよりも顕著に軟らかい食感を付与できることを見いだしたものである。
【0025】
寒天及びアンモニウム塩については、(1)で述べたものを使用することができる。
本発明で使用する大豆多糖類は、大豆、特に大豆の子葉由来の多糖類であり、植物由来のラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、ウロン酸の1種もしくは2種以上を含むものであればよい。本発明で使用する大豆多糖類は、その分子量がどの様なものでも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には5千〜100万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は標準プルラン(昭和電工株式会社)を標準物質として0.1MのNaNO溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。かかる大豆多糖類は商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM−700,SM−900、SM−1200などを挙げることができる。
【0026】
本発明の氷菓用安定剤の添加量は、使用する原料や製法によって適宜調整することができるが、最終氷菓全量に対して、例えば、寒天0.001〜1重量%、好ましくは、0.005〜0.5重量%、更に好ましくは、0.01〜0.1重量%、アンモニウム塩0.002重量%〜2重量%、好ましくは、0.01〜1重量%、更に好ましくは、0.02〜0.2重量%、大豆多糖類0.01〜30重量%、好ましくは、0.05〜5重量%、更に好ましくは、0.1〜0.5重量%となるような量を添加することができる。
【0027】
本発明の氷菓用安定剤には、前述の寒天、アンモニウム塩および大豆多糖類の他に、本発明の氷菓に悪影響を与えない限度で、他の氷菓用安定剤を併用することができる。他の氷菓用安定剤として、(1)に挙げるものを使用することができる。
【0028】
本発明の氷菓は、目的とする製品により、種々の構成をとることができ、例えば、(1)に掲げるものをあげることができる。中でも、本発明の軟らかい食感を付与する冷菓として最もふさわしい氷菓の形態は、オーバーランをかけない形態の氷菓であり、一例として、かち割り氷を挙げることができる。
【0029】
本発明の氷菓は、前述の氷菓用安定剤を添加し、通常の氷菓の製造工程にて製造することができる。製造工程としては、(1)に記載した工程を採ることができる。
【0030】
なお、本発明の氷菓は、含まれる可溶性固形分が50重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下に設定されていることが好ましい。なお、可溶性固形分が少なくなればなるほど本発明の効果が高まるが、氷菓に対する甘味・風味を付与する点より、下限の可溶性固形分量として、0.02重量%以上を挙げることができる。かかる可溶性固形分の成分としては、通常氷菓に使用される水溶性の固形分であれば特に制限はないが、通常の氷菓と同様の構成をとることができ、(1)に記載したものを挙げることができる。その他、甘味料、乳化剤、その他の原料についても(1)に記載したものを使用することができる。
【0031】
(3)氷菓の食感の調整方法
更に、本発明は寒天及びアンモニウム塩と、大豆多糖類の添加量を調整して添加することを特徴とする、氷菓の食感の調整方法に関する。
【0032】
具体的には、寒天及びアンモニウム塩としては、前述の(1)で記載の氷菓用安定剤を使用し、氷菓に対する添加量について、(1)で記載する範囲内において、寒天及びアンモニウム塩の添加量を増やすほど硬く締まった食感とすることができる。なお、硬く締まった食感とするためには、大豆多糖類に関しては使用しないか、使用しても極微量(氷菓に対して、0.01%以下)であることが好ましい。
【0033】
また、寒天及びアンモニウム塩を含む氷菓で、大豆多糖類を併用して含むことにより、大豆多糖類単独で使用するよりも氷菓に軟らかい食感を付与することができる。大豆多糖類としては、前述の(2)で記載のものを使用することができる。氷菓の食感を軟らかくする方法としては、寒天及びアンモニウム塩を(1)で記載する範囲内における量を配合した上で、大豆多糖類を併用して添加し、(2)で記載する範囲内において大豆多糖類の添加量を増やすほど、軟らかい食感とすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、文中、「部」は「重量部」とし、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0035】
実験例1:カップ入りかき氷の調製
下記表1に掲げる処方のうち、水を攪拌しながら、予め混合した砂糖、氷菓用安定剤の粉体混合物を投入し、加熱攪拌し80℃達温後、同温度にて10分間攪拌溶解し、5℃まで冷却し、スクラロース溶液、クエン酸溶液、色素、香料を順次添加して、5℃に調温後、カップに充填し、急速凍結庫で硬化したものをハンマーで砕き、かき氷機に投入し、かき氷を調製した。調製したかき氷をカップに充填し、−40℃にて硬化してカップ入りかき氷を調製した。できあがったカップ入りかき氷を、−20℃に調温したものを試食し、氷菓用安定剤無添加(ブランク)を標準として、軟らかくなる順に「+」、硬くなる順に「−」で評価した。結果を表2にあわせて示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表2より、氷菓用安定剤に寒天とアンモニウム塩(リン酸水素二アンモニウム)を併用した実施例1は硬く締まった食感となり、清涼感があり、かつ、風味も良好なかき氷であったが、アンモニウム塩のみの比較例1〜3、寒天のみの比較例4〜5、寒天以外の増粘多糖類を併用した比較例6〜18は、いずれも硬い食感とならなかった。
【0039】
実験例2:カップ入りかき氷の調製
水を攪拌しながら、予め混合した砂糖と氷菓用安定剤の粉体混合物を投入し、加熱攪拌し80℃達温後、同温度にて10分間攪拌溶解した。このミックス液を5℃まで冷却し、スクラロース溶液、クエン酸溶液、色素、香料を順次添加した後、5℃に調温した当該ミックス液をカップに充填し、急速凍結庫で硬化した。硬化させたミックスをハンマーで砕き、かき氷機に投入し、かき氷を調製した。調製したかき氷をカップに充填し、−40℃にて硬化してカップ入りかき氷を調製した。できあがったカップ入りかき氷を、−20℃に調温したものを試食し、氷菓用安定剤無添加(ブランク)を標準として、軟らかくなる順に「+」、硬くなる順に「−」で評価した。結果を表4にあわせて示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
表4より、寒天、アンモニウム塩(リン酸水素二アンモニウム)及び大豆多糖類を併用した実施例2〜5に関して、実施例1で示すように、氷菓用安定剤として、寒天及びアンモニウム塩のみの添加であると硬く締まった食感になるにも拘わらず、大豆多糖類を併用すると、却って氷菓用安定剤無添加(ブランク)よりも食感が軟らかくなることが判り、かつ清涼感は維持されていた。更には、大豆多糖類の添加量が増えるほど、食感が軟らかくなる傾向となった。また、比較例19の大豆多糖類単独添加系よりも実施例2〜5の方が、食感が軟らかくなっており、また、寒天、アンモニウム塩、大豆多糖類のいずれかが不足すると、軟らかい食感は付与されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、氷菓の食感を改良することができ、清涼感を有し、かつ、風味も良好な氷菓が提供できるようになった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天及びアンモニウム塩を含むことを特徴とする氷菓用安定剤。
【請求項2】
更に、大豆多糖類を併用する請求項1に記載の氷菓用安定剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の氷菓用安定剤を含有する氷菓。
【請求項4】
寒天及びアンモニウム塩と、大豆多糖類の添加量を調整して添加することを特徴とする、氷菓の食感改良方法。