説明

氷蓄熱システム

【課題】氷蓄熱槽内のシャーベット状氷上面を常に平に維持する氷蓄熱システムを得る。
【解決手段】氷蓄熱槽10内下部から溶液1を抜き出し、熱交換器12で負荷側との熱交換を行わせ暖められた戻り溶液を、氷蓄熱槽内の氷部分1aを解氷するためにこれの上面に散水する氷蓄熱槽内上部に設けられた戻りノズル10aaが多数分散配置された戻りノズル配管10aに戻す解氷機構、氷蓄熱槽内下部から溶液を抜き出し、熱源機11で冷却して生成されたシャーベット状の氷を氷蓄熱槽内の溶液下部から供給する製氷機構、解氷機構における氷蓄熱槽へ戻る戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方が戻りノズル配管の戻りノズルにより氷部分の上面を均一に散水するための予め定められたそれぞれの散水必要最低値を超えていなければ、戻り溶液を氷蓄熱槽内の溶液内の下部に戻すようにする切り替え制御機構、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷水を取り出し空調負荷等に利用する氷蓄熱システム、特にその解凍制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷蓄熱槽内の蓄氷を均一に解氷しながら冷水を取り出す氷蓄熱システムとして、氷蓄熱槽の下部に空調設備等からなる負荷側に供給する冷水を取り出す多数の抜出しノズルを分散配置し、氷蓄熱槽の上部に負荷側で熱交換を行い温度が上昇した戻り水を水の上に浮いたシャーベット状の氷の上にスプレー散水する多数の戻りノズルを分散配置したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−300326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような従来の氷蓄熱システムでは、例えば負荷側での冷水の利用率が悪く負荷側からの戻り水の量が足りないこと等により、均一にスプレー散水するための戻りノズルでの所定の噴射力(すなわち水の流量)が得られない場合には、均一な解氷が行えず、例えばシャーベット状の氷上面の各戻りノズルの真下の部分だけが掘れた状態になる。このような状態になると、シャーベット状の氷の上部が凸凹になり、氷のない部分ができることからシャーベット状の氷全体の重心位置が下方に移動し、シャーベット状の氷の水面の上に出ている部分の高さが高くなり、また根氷を発生させ、上部に突出した部分で氷蓄熱槽の天井や戻りノズルの配管等を破壊してしまう恐れがあるという課題があった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解消するためになされたもので、氷蓄熱槽内のシャーベット状の氷の上面を常に平に維持できるように均一に解氷するようにして、氷で氷蓄熱槽の天井や戻りノズルやその配管等を破壊することのないようにした氷蓄熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷熱媒体を取り出し負荷に利用する氷蓄熱システムであって、熱媒体である溶液をこれをシャーベット状に凍らせた氷部分が浮いた状態で貯めた氷蓄熱槽と、ポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱交換器で負荷側との熱交換を行わせ暖められた戻り溶液を、上記氷蓄熱槽内の氷部分を解氷するためにこれの上面に散水する上記氷蓄熱槽内の上部に設けられた戻りノズルが多数分散配置された戻りノズル配管に戻す解氷機構と、ポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱源機で冷却して生成されたシャーベット状の氷を上記氷蓄熱槽内の溶液下部から供給する製氷機構と、上記解氷機構における上記氷蓄熱槽へ戻る戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方を測定し、少なくとも一方が、上記戻りノズル配管の戻りノズルにより上記氷部分の上面を均一に散水するための予め定められたそれぞれの散水必要最低値を超えていなければ、上記戻り溶液を上記氷蓄熱槽内の溶液下部に戻すように切り替え制御機構と、を備えたことを特徴とする氷蓄熱システムにある。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、氷蓄熱槽内のシャーベット状の氷の上面を常に平坦に維持できるように均一に解氷するようにすることで、氷蓄熱槽天井部の破壊を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による氷蓄熱システムの構成を示す図である。断面図で示されている氷蓄熱槽10には熱媒体溶液(ブライン)1が貯められていて、この溶液1に溶液とこれの水だけが凍った微細な氷粒が混合状態にあるシャーベット状の氷部分1aが浮いている。この溶液1は例えば水に不凍液を溶かしたものからなり、凍るのは基本的に水だけである。
【0009】
氷蓄熱槽10の溶液1内の下部には、潜熱により冷やされた低温の溶液1を抜出すための多数の抜出し口10ccが分散配置された抜出し配管10c、および熱源機11で生成されたシャーベット状の氷や氷部分1aを解氷するための熱交換器(HEX)12における負荷側との熱交換で暖められた溶液を氷蓄熱槽10の溶液1内の下部に供給するための開口10bbが分散配置された製氷/解氷配管10bが設けられている。抜出し配管10cは、溶液一次ポンプ1Pおよび例えば4つ(台数に限定なし)の溶液二次ポンプ2P1〜2P4にそれぞれ配管L1を介して低温の溶液1を供給する。ON/OFF制御により駆動する溶液一次ポンプ1Pはシャーベット状の氷を生成するための製氷機を搭載した熱源機11に配管L6を介して低温の溶液1を供給する。インバータ(INV)制御される溶液二次ポンプ2P1〜2P4は負荷側へ冷水を供給するための熱交換器12に配管L2を介して低温の溶液1を供給する。製氷/解氷配管10bは配管L7、L8を介して得た熱源機11で生成されたシャーベット状の氷を氷蓄熱槽10内に供給したり、後述する氷部分1aの上方からの均一な解氷ができない場合には配管L3、L4、L9、L8を介して得た熱交換器12からの氷部分1aを解氷するための熱交換器12で熱交換されて暖められた戻り溶液を氷蓄熱槽10内に供給する。さらに氷蓄熱槽10内には溶液1の温度を検出するための温度センサT2が設けられており、後述するように溶液1の温度に従って溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11の駆動制御を行う。
【0010】
氷蓄熱槽10内の上部には、配管L3、L4、L5を介して得られた熱交換器12からの熱交換により暖められた戻り溶液を、氷部分1aを解氷するためにこれの上方から水平方向に均一にスプレー散水するための戻りノズル10aaが多数分散配置されている。これらの戻りノズル10aaは戻りノズル配管10aに設けられている。
【0011】
なお、戻りノズル配管10a、製氷/解氷配管10bおよび抜出し配管10cは氷蓄熱槽10の天井面全体又は床面全体に渡って設けられている。
【0012】
熱交換器12では、配管L2から供給される低温の溶液1と空調設備等の負荷側からの配管L11を介して得られる負荷側で暖められた水(例えば12℃以上)との間で熱交換を行い、水は所定温度(例えば7℃)まで冷却されて配管L10により負荷側に再度供給される。一方この熱交換により温度が上昇した溶液は氷蓄熱槽10内の氷部分1aを解氷する溶液としてそれぞれの配管を介して戻りノズル配管10aや製氷/解氷配管10bから氷蓄熱槽10内に戻される。
【0013】
負荷側との熱交換により暖められた熱交換器12からの戻り溶液が通る配管L3にはこの溶液の流量を測定する流量計(FM)FM1が設けられ、また配管L3を戻りノズル配管10a側および製氷/解氷配管10b側にそれぞれ接続する配管L5、L9には、戻り溶液の流れの切り替えを行うための電動二方弁MV1、MV2がそれぞれ設けられている。また負荷側へ冷却された水を供給する配管L10には水の温度を測定するための温度センサT1が設けられている。配管L9は連結用の配管である。
【0014】
コンピュータを内蔵した制御盤13は製氷プロセスに関して温度センサT2、溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11に接続され、温度センサT2で測定された温度の信号に従って溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11の駆動制御を行う。また解氷プロセスに関して温度センサT1、流量計FM1、溶液二次ポンプ2P1〜2P4のそれぞれのインバータ制御部INV、並びに電動二方弁MV1、MV2に接続され、温度センサT1および流量計FM1で測定された温度および流量の信号に従って溶液二次ポンプ2P1〜2P4および電動二方弁MV1、MV2の駆動制御を行う。
【0015】
次に制御盤13の制御による動作について説明する。まず製氷プロセスの一般的動作として、溶液一次ポンプ1Pを動作させることにより氷蓄熱槽10下部の抜出し配管10cから配管L1を介して抜き出された溶液1が配管L6により熱源機11に送られると、熱源機11は溶液からシャーベット状の氷を生成する。生成されたシャーベット状の氷は配管L7、L8を介して氷蓄熱槽10の下部の製氷/解氷配管10bより氷蓄熱槽10内に供給される。氷蓄熱槽10内に供給されたシャーベット状の氷は氷蓄熱槽10内で浮上し徐々に蓄積され、最終的にIPF(製氷率)40〜50%程度まで製氷する。ここで水に不凍液等を溶かしたものである溶液1は、溶液中の水分が氷となるため、製氷量が増えていくと溶液濃度が濃くなり、温度も低下する。溶液濃度とIPFの関係は既知のため、実際には製氷量は温度で管理する。
【0016】
従って制御盤13での制御は、温度センサT2からの氷蓄熱槽10内の溶液1の温度をチェックし、溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11の駆動中に溶液1の温度が設定温度以下になると、溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11を停止させて製氷を止め、設定温度を超えると、溶液一次ポンプ1Pおよび熱源機11を駆動させて製氷を行うようにする。
【0017】
次に解氷プロセスの一般的な動作として、溶液二次ポンプ2P1〜2P4をインバータ制御部INVの制御により動作させることにより氷蓄熱槽10下部の抜出し配管10cから配管L1を介して抜き出された低温の溶液1が配管L2により熱交換器12に送られると、熱交換器12は配管L2から供給される低温の溶液1と空調設備等の負荷側からの配管L11を介して得られる負荷側で暖められた水(例えば12℃以上)との間で熱交換を行い、水は所定温度(例えば7℃)まで冷却されて配管L10により負荷側に再度供給される。一方この熱交換により温度が上昇した溶液は氷蓄熱槽10内の氷部分1aを解氷する溶液としてそれぞれの配管を介して戻りノズル配管10a又は製氷/解氷配管10bから氷蓄熱槽10内に戻される。
【0018】
負荷側からの配管L11を介して得られる負荷側で暖められた水の温度は負荷側が高負荷になれが高くなり、低負荷なれば低くなる。熱交換器12は配管L10からの負荷側に再度供給される水を常に例えば約7℃に維持しなければならない。そこで溶液二次ポンプ2P1〜2P4の駆動制御に関し制御盤13での制御は、熱交換器12から配管L10を介して負荷側に再度供給される水の温度を温度センサT1でチェックし、負荷側の負荷変動の影響を受けないように常に設定値(例えば約7℃)になるように、水の温度が上がれば溶液二次ポンプ2P1〜2P4の出力を上げ、温度が下がれば出力を下げるように制御する。
【0019】
そして熱交換により暖められた溶液は氷蓄熱槽10内の氷部分1aを解氷する戻り溶液として戻されるが、以下に図2に従って氷蓄熱槽10上部の戻りノズル10aaからの散水について説明する。氷蓄熱槽10上部の戻りノズル10aaから散水することにより解氷を行う場合に、適正な解氷(ここでは特に氷部分1aに上面の平坦性を損なわないような均一な散水)を行うには、「ノズルの配置が適正であること」「ノズルへの溶液の必要最低流量又は必要最低圧力を確保すること」の2点を守る必要がある。「ノズルの配置が適正であること」とは、ノズルから散水された溶液が氷面に到達したときの範囲を散水範囲とした場合に、その散水範囲が図2の(a)に示すように氷部分1の表面全てを網羅するように配置されていることをいう。「ノズルへの溶液の必要最低流量又は必要最低圧力を確保すること」とは、ノズル自体の性能を確保するために、ノズルの使用範囲内で使用することをいう。図2の(b)にはノズルのピッチが大きく配置が適正でない場合、図2の(c)には流量が極端に少なく適正な散水が行われていない場合をそれぞれ示す。
【0020】
つまり、散水範囲が網羅されるようにノズルを配置すれば、それだけノズル個数も増し、またノズル性能を確保しようとすれば、それだけ必要流量も増す。すなわち、適正な解氷を行うためには、ノズル個数を増やし、散水流量を増やす必要がある。逆にこれらを守らない場合は、均一に解けないため、氷面が凹凸になり、浮力により凸部分はさらに浮上し、散水範囲を狭め、根氷の発生といった悪循環を繰り返す。根氷が成長すると氷蓄熱槽天板等を破壊するケースもある。
【0021】
そこで、図1の10c→L1→2P1〜2P4→L2→12→L3→L4→L5からなる解氷サイクル(解氷機構を構成)に10c→L1→1P→L6→11→L7→L8→10bからなる製氷サイクル(製氷機構を構成)への図1のL9からなるバイパス回路を形成し、解氷プロセスの戻り溶液の流量が冷房(空調)負荷が小さい等で設定値以下の場合には、戻り溶液を製氷サイクルへバイパスし、氷蓄熱槽10下部の製氷/解氷配管10bより溶液を戻す。なお、13、FM、P、MV1、MV2、L9等が切り替え制御機構を構成する。
【0022】
従って制御盤13での制御は、図3にフローチャートに示すように、溶液二次ポンプ2P1〜2P4が駆動中の時に(ステップS1)、流量計FM1で測定される解氷サイクルの配管L3に流れる戻り溶液の流量をチェックして、流量Qが個々の氷蓄熱システムの設計により決まる予め定められた散水必要最低流量Fを超えていれば(ステップS2)、配管L5に設けられた電動二方弁MV1を全開(ステップS3)、配管L9に設けられた電動二方弁MV2を全閉(ステップS4)にすることで、戻り溶液は図1の流路Aで戻りノズル配管10aに戻り、氷部分1解氷のための上面への散水が氷蓄熱槽10上部の戻りノズル10aaより行われる。また、ステップS2で流量Qが散水必要最低流量Fを超えていなければ(以下なら)、配管L5に設けられた電動二方弁MV1を全閉(ステップS5)、配管L9に設けられた電動二方弁MV2を全開(ステップS6)にすることで、戻り溶液は図1の流路Aから流路Bに切り替えられて製氷/解氷配管10bから氷蓄熱槽10の溶液内下部に戻される。これにより戻り溶液の流量が散水必要最低流量Fを超えなければ氷蓄熱槽10内の氷部分の上面への散水が行われないため、氷部分の上面の平坦性が損なわれることはない。なおステップS1で溶液二次ポンプ2P1〜2P4が停止している時には、電動二方弁MV1を全開(ステップS3)、電動二方弁MV2を全閉(ステップS4)にする。
【0023】
なお上記説明では、戻り溶液の流量や圧力が散水必要最低値を超えていなければ、連結用の配管L9により製氷側に切り替えて配管L8、製氷/解氷配管10b経由で氷蓄熱槽10内の溶液の下部に戻すようにしているが、例えば連結用の配管L9を氷蓄熱槽10内の溶液の下部まで延ばし直接、配管L9から戻すような構造にしてもよい。これは以下の各実施の形態でも同様である。
【0024】
実施の形態2.
なお上記実施の形態では、戻り溶液の流量により氷蓄熱槽10内上部の戻りノズル配管10aによる氷部分の上面への散水を行うか否かを判断しているが、流量計FM1の代わりに図1に破線で示す圧力センサPで戻り溶液の配管内における圧力を測定し、圧力が散水必要最低圧力を超えていなければ(以下なら)、戻り溶液を図1の流路Bで製氷/解氷配管10bに戻り、氷蓄熱槽10内の溶液下部に戻すようにしてもよい。
【0025】
実施の形態3.
さらに、流量計FM1および圧力センサPをそれぞれ設け、双方が散水必要最低値を超えていなければ(以下なら)、戻り溶液を図1の流路Bで製氷/解氷配管10bから氷蓄熱槽10内の溶液下部に戻すようにしてもよい。
【0026】
実施の形態4.
また上述のような「戻りノズルひいては戻りノズル配管への溶液の必要最低流量又は必要最低圧力を確保する」等の制約から、負荷変動に合わせて解氷用の溶液二次ポンプの流量制御や台数制御を行う場合、流量や台数の下限値が高くなり、省エネ効果が低い。そのため、解氷プロセスを定流量方式としたものがある。このような方式の氷蓄熱システムにこの発明の適用したものを図4に示す。図1と同一もしくは相当部分は同一符号で示し、説明は省略する。溶液二次ポンプ3P1〜3P4はインバータ制御ではなく、溶液一次ポンプ1Pと同様のそれぞれが制御盤13aによりON/OFF制御による台数制御されるものである。さらに図1の配管L3に当たる配管L3aとL3bの間に電動三方弁MV3が設けられ、制御盤13aの制御により配管L2に流れる溶液を所望の割合で熱交換器12を通す分(配管L2a)と通さない分(配管L2b)に分岐させる。
【0027】
この氷蓄熱システムでは制御盤13aの制御により、溶液二次ポンプ3P1〜3P4は、制御盤13a内のメモリに内蔵された、例えば1日の各時間帯の溶液二次ポンプ3P1〜3P4の駆動するポンプ台数が記載されたタイムチャート(共に図示せず)に従って台数制御される。さらにその制御下で電動三方弁MV3が、熱交換器12から配管L10を介して負荷側に再度供給される水の温度を測定する温度センサT1の値が、負荷側の負荷変動の影響を受けないように常に設定値(例えば約7℃)になるように、図4の流路C,Dに流す溶液の割合を変更するように制御される。
【0028】
そしてこのような制御下において、上記実施の形態1ないし3のいずれか1つに従って、流量計FM1および圧力センサPの少なくとも一方が散水必要最低値を超えているという氷蓄熱槽10上部の戻りノズル10aaによる氷部分1解氷のための上面への散水の条件を満たさない場合には、配管L5に設けられた電動二方弁MV1を全閉、配管L9に設けられた電動二方弁MV2を全開にすることで、戻り溶液は図4の流路Bで製氷/解氷配管10bから氷蓄熱槽10内の溶液下部に戻される。これにより氷部分の上面の平坦性が損なわれることはない。
【0029】
実施の形態5.
さらに上記実施の形態4では、上記実施の形態1ないし3のいずれか1つに従った流量計FM1および圧力センサPの少なくとも一方が散水必要最低値を超えているという氷部分1上面への散水の条件を満たさない場合には、戻り溶液を氷蓄熱槽10の下部に戻していたが、溶液二次ポンプ3P1〜3P4が台数制御される場合には、例えば駆動中の二次ポンプ台数が所定台数(氷部分1上面への散水の条件を満たす戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方を満たすか否かを考慮して氷蓄熱システム毎に予め決められた散水必要最低台数)を超えているか否かで、氷蓄熱槽10上部の戻りノズル10aaによる氷部分1解氷のための上面への散水を行うか否かを判定するようにしてもよい。この場合は流量計FM1および圧力センサPが不要となり、さらに制御盤13aでの制御も単純なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施の形態による氷蓄熱システムの構成を示す図である。
【図2】この発明に関する氷蓄熱槽上部の戻りノズルからの氷蓄熱槽内の氷部分上面への散水について説明するための図である。
【図3】この発明による氷蓄熱システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】この発明の別の実施の形態による氷蓄熱システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 溶液、1a 氷部分、1P 溶液一次ポンプ、2P1〜2P4,3P1〜3P4 溶液二次ポンプ、10 氷蓄熱槽、10a 戻りノズル配管、10aa 戻りノズル、10b 製氷/解氷配管、10bb 開口、10c 抜出し配管、10cc 抜出し口、11 熱源機、12 熱交換器(HEX)、13,13a 制御盤、FM1 流量計、INV インバータ制御部、L1〜L11,L2a,L2b,L3a,L3b 配管、MV1,MV2 電動二方弁、MV3 電動三方弁、P 圧力センサ、T1,T2 温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷熱媒体を取り出し負荷に利用する氷蓄熱システムであって、
熱媒体である溶液をこれをシャーベット状に凍らせた氷部分が浮いた状態で貯めた氷蓄熱槽と、
ポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱交換器で負荷側との熱交換を行わせ暖められた戻り溶液を、上記氷蓄熱槽内の氷部分を解氷するためにこれの上面に散水する上記氷蓄熱槽内の上部に設けられた戻りノズルが多数分散配置された戻りノズル配管に戻す解氷機構と、
ポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱源機で冷却して生成されたシャーベット状の氷を上記氷蓄熱槽内の溶液下部から供給する製氷機構と、
上記解氷機構における上記氷蓄熱槽へ戻る戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方を測定し、少なくとも一方が、上記戻りノズル配管の戻りノズルにより上記氷部分の上面を均一に散水するための予め定められたそれぞれの散水必要最低値を超えていなければ、上記戻り溶液を上記氷蓄熱槽内の溶液下部に戻すように切り替え制御機構と、
を備えたことを特徴とする氷蓄熱システム。
【請求項2】
氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷熱媒体を取り出し負荷に利用する氷蓄熱システムであって、
熱媒体である溶液をこれをシャーベット状に凍らせた氷部分が浮いた状態で貯めた氷蓄熱槽と、
上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部に設けられ溶液の抜き出しを行う抜出し配管と、
上記氷蓄熱槽内の上部に設けられ、溶液二次ポンプにより上記抜出し配管から抜き出されて熱交換器に供給された溶液が負荷側との熱交換により暖められた戻り溶液を、上記氷蓄熱槽内の氷部分を解氷するためにこれの上面に散水する戻りノズルが多数分散配置された戻りノズル配管と、
溶液一次ポンプにより上記抜出し配管から抜き出されて供給された溶液から熱源機が生成したシャーベット状の氷を上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部から供給するための製氷/解氷配管と、
上記抜出し配管、溶液一次ポンプ、熱源機および製氷/解氷配管の順で配管された製氷用の配管列と、
上記抜出し配管、溶液二次ポンプ、熱交換器および戻りノズル配管の順で配管された解氷用の配管列と、
上記製氷用の配管列の上記熱源機出力側と上記解氷用の配管列の上記熱交換器出力側とを連結する連結用の配管と、
上記解氷用の配管列の上記熱交換器出力側における戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方を測定する測定部と、
上記連結用の配管、および上記解氷用の配管列の上記連結用の配管より上記戻りノズル配管側でそれぞれ戻り溶液の開閉を行う電動弁群と、
上記測定部における戻り溶液の流量および圧力の少なくとも一方が、上記戻りノズル配管の戻りノズルにより上記氷部分の上面を均一に散水するための予め定められたそれぞれの散水必要最低値を超えていなければ、上記電動弁群の上記解氷用の配管列側を全閉、上記連結用の配管側を全開にして戻り溶液を上記製氷/解氷配管から上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部に戻す制御手段と、
を備えたことを特徴とする氷蓄熱システム。
【請求項3】
上記溶液二次ポンプを複数備え出力制御を駆動するポンプの台数制御により行い、さらに上記解氷用の配管列が上記熱交換器を通る配管と通らない配管、並びにこれらの配管を通る溶液の割合を切り替える電動三方弁を備え、上記解氷用の配管列を通る溶液の流量変化を少なくした定流量方式のものであることを特徴とする請求項2に記載の氷蓄熱システム。
【請求項4】
氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷熱媒体を取り出し負荷に利用する氷蓄熱システムであって、
熱媒体である溶液をこれをシャーベット状に凍らせた氷部分が浮いた状態で貯めた氷蓄熱槽と、
複数のポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱交換器で負荷側との熱交換を行わせ暖められた戻り溶液を、上記氷蓄熱槽内の氷部分を解氷するためにこれの上面に散水する上記氷蓄熱槽内の上部に設けられた戻りノズルが多数分散配置された戻りノズル配管に戻す解氷機構と、
ポンプにより上記氷蓄熱槽内の溶液下部から溶液を抜き出し、熱源機で冷却して生成されたシャーベット状の氷を上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部から供給する製氷機構と、
上記解氷機構の複数のポンプを駆動台数制御することにより出力制御を行うと共に、上記ポンプの駆動台数が、上記戻りノズル配管の戻りノズルにより上記氷部分の上面を均一に散水するための予め定められた散水必要最低台数を超えていなければ、上記戻り溶液を上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部に戻すようにする切り替え制御機構と、
を備えたことを特徴とする氷蓄熱システム。
【請求項5】
氷蓄熱槽内に蓄氷された氷の潜熱を利用して冷水を取り出し負荷に利用する氷蓄熱システムであって、
熱媒体である溶液をこれをシャーベット状に凍らせた氷部分が浮いた状態で貯めた氷蓄熱槽と、
上記氷蓄熱槽内に貯められた溶液内の下部に設けられ溶液の抜き出しを行う抜出し配管と、
上記氷蓄熱槽内の上部に設けられ、複数の溶液二次ポンプにより上記抜出し配管から抜き出されて熱交換器に供給された低温の溶液が負荷側との熱交換により暖められた戻り溶液を、上記氷蓄熱槽内の氷部分を解氷するためにこれの上面に散水する戻りノズルが多数分散配置された戻りノズル配管と、
溶液一次ポンプにより上記抜出し配管から抜き出されて供給された低温の溶液から熱源機が生成したシャーベット状の氷を上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部から供給するための製氷/解氷配管と、
上記抜出し配管、溶液一次ポンプ、熱源機および製氷/解氷配管の順で配管された製氷用の配管列と、
上記抜出し配管、複数の溶液二次ポンプ、熱交換器および戻りノズル配管の順で配管され、かつ上記熱交換器を通る配管と通らない配管を含む解氷用の配管列と、
上記製氷用の配管列の上記熱源機出力側と上記解氷用の配管列の上記熱交換器出力側とを連結する連結用の配管と、
上記連結用の配管、および上記解氷用の配管列の上記連結用の配管より上記戻りノズル配管側にそれぞれ設けられ戻り溶液の開閉を行う電動弁、および上記解氷用の配管列の上記熱交換器を通る配管と通らない配管を通る溶液の割合を切り替える電動三方弁を含む電動弁群と、
上記複数の溶液二次ポンプを駆動台数制御することにより出力制御を行うと共に、上記複数の溶液二次ポンプの駆動台数が、上記戻りノズル配管の戻りノズルにより上記氷部分の上面を均一に散水するための予め定められた散水必要最低台数を超えていなければ、上記電動弁群の上記解氷用の配管列側を全閉、上記連結用の配管側を全開にして戻り溶液を上記製氷/解氷配管から上記氷蓄熱槽内の溶液内の下部に戻す制御手段と、
を備えたことを特徴とする氷蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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