説明

永久磁石回転機

【課題】磁束量を増加させて効率を高めることができる技術を提供する。
【解決手段】回転子30の外周面は、曲率半径が異なる第1の曲線部分30a〜30dと第2の曲線部分30ab〜30daにより形成されている。主磁極部a〜dには、第1の磁石収容孔32a〜32dと第2の磁石収容34a〜34dが設けられている。これにより、中間ブリッジ部36a〜36d、第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1および第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2が形成されている。第1の磁石収容孔32cの外側の壁32c1は、中心点c11を中心とする円弧形状に形成されている。また、第2の磁石収容孔34cの外側の壁34c1は、中心点c11と異なる中心点c21を中心とする円弧形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子に設けられた磁石収容孔に永久磁石が収容された永久磁石回転機に関し、特に、永久磁石回転機の効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン(空調装置)や冷蔵庫等の圧縮機を駆動する電動機、車両や車載装置等を駆動する電動機等として、回転子に設けられた磁石収容孔に永久磁石が収容された永久磁石電動機(「永久磁石埋込型電動機」と呼ばれている)が用いられている。この種の永久磁石電動機は、例えば、ティース部が設けられている固定子と、ティース部のティース先端面と間隙を介して回転可能に配置された回転子を備えている。回転子には、回転子の軸方向と直交する断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に交互に配置されている。主磁極部には磁石収容孔が設けられており、磁石収容孔に永久磁石が収容されている。この永久磁石電動機は、主磁極部の磁石収容孔に収容されている永久磁石の磁束によるマグネットトルクと、補助磁極部の突極性によるリラクタンストルクの両方を利用することができる。特許文献1には、回転子の主磁極部に第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔が中間ブリッジ部を挟んで配置されているとともに、第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔が、主磁極部のd軸線上の共通の中心点を中心とする円弧形状に形成されている永久磁石電動機が記載されている。
【特許文献1】特開平11−285186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、永久磁石電動機では、磁束密度が高い希土類磁石が用いられている。特に、Nd(ネオジウム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、B(ボロン)等を構成成分とするネオジウム磁石が用いられている。しかしながら、ネオジウム磁石等の希土類磁石は高価であるため、安価な永久磁石を用いた永久磁石電動機、例えば、磁束密度は希土類磁石に比べて低いが安価であるフェライト磁石等を用いた永久磁石電動機の開発が要望されている。
回転子の主磁極部に設けられている磁石収容孔に永久磁石が収容されている永久磁石電動機では、磁束量は、磁石収容孔の外側の壁(固定子のティース部と対向する側の壁)の長さによって定まる。このため、フェライト磁石等の磁束密度が低い磁石を用いて、磁束密度が高い希土類磁石を用いた場合と同程度の効率を有する永久磁石電動機を得るためには、外側の壁の長さが長い磁石収容孔が設けられている回転子を用いる必要がある。
そこで、直線形状に形成された第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔を中間ブリッジ部を挟んでV字形に配置した回転子に比べて磁石収容孔の外側の壁の長さが長い特許文献1に記載されている回転子を用いることが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の回転子の磁石収容孔にフェライト磁石等の磁束密度が低い永久磁石を収容して永久磁石電動機を構成しても、磁束密度が高い希土類磁石を用いて構成した永久磁石電動機と同等の効率を得ることができない。なお、希土類磁石は、製造コストの点で、一般的には、断面形状が長方形形状に形成されたものが用いられる。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、主磁極部に設けられる磁石収容孔の外側の壁の長さを長くして永久磁石回転機の効率を向上させること、特に、希土類磁石より磁束密度が低いフェライト磁石を用いた場合でも希土類磁石を用いた場合と同程度の効率を有する永久磁石回転機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明の第1発明は、以下の構成を備えている。
本発明の永久磁石回転機は、固定子と回転子を備えている。回転子には、軸方向と直交する断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に交互に配置されている。主磁極部には磁石収容孔が設けられ、磁石収容孔には永久磁石が収容されている。この時、周方向に隣接する主磁極部の極性が逆極性となるように永久磁石が磁石収容孔に収容される。本発明の永久磁石回転機は、典型的には、永久磁石埋込型電動機として構成される。
回転子の外周面は、軸方向と直交する断面で見て、主磁極部のd軸線と交差し、突部が外方向に向いている第1の曲線形状に形成されている第1の曲線部分と、補助磁極部のq軸線と交差し、突部が外方向に向いている第2の曲線形状に形成されている第2の曲線部分により構成されている。そして、第2の曲線形状の曲率半径は、第1の曲線形状の曲率半径より大きく設定されている。「外方向」は、回転子の軸方向に直交する断面で見て、回転子の中心点から離れる方向(固定子と対向する方向)を表している。「d軸線」は、回転子の軸方向と直交する断面で見て、回転子の中心点と主磁極部の周方向の中心点とを結ぶ線を表し、「q軸線」は、回転子の軸方向と直交する断面で見て、回転子の中心点と補助磁極部の周方向の中心点とを結ぶ線を表している。
回転子位置検出センサを用いないで、固定子巻線に誘起される起電力の起電力波形に基づいて回転子の位置を検出するセンサレス制御方式を用いて永久磁石電動機を制御する場合には、起電力波形に含まれる高調波成分が増大すると最適な制御を行うことができなくなって効率が低下する。本発明では、第1の曲線部分と第2の曲線部分の切り換え部分がティース部と対向する箇所を通過する時に、ティース部に流れる磁束量の急激な変化を抑制することができるため、ティース部を流れる磁束量の急激な変化によって固定子巻線に誘起される起電力の起電力波形に含まれる高調波成分が増大するのを防止することができる。これにより、センサレス制御方式を用いて永久磁石電動機を制御する場合に、起電力波形に含まれる高調波成分による効率の低下を防止することができる。
主磁極部には、第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔が設けられている。この第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔によって、第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔の間に中間ブリッジ部が形成され、第1の磁石収容孔と回転子の外周面の間に第1の外周ブリッジ部が形成され、第2の磁石収容孔と回転子の外周面の間に第2の外周ブリッジ部が形成されている。一般的には、第1および第2の磁石収容孔は、回転子の軸方向と直交する断面で見て、外側の壁、内側の壁、中央側の壁、外周面側の壁を有している。「外側の壁」と「内側の壁」は、回転子の軸方向に直交する断面で見て、長手方向に沿った両側の壁のうち、回転子の中心点から遠い方の壁と近い方の壁を表している。「中央側の壁」は、主磁極部に設けられている他の磁石挿入孔と対向する位置に配置されている壁(中間ブリッジ部を形成している壁)を表し、「外周面側の壁」は、回転子の外周面と対向する位置に配置されている壁(第1あるいは第2の外周ブリッジ部を形成している壁)を表している。中間ブリッジ部と第1及び第2の外周ブリッジ部によって、回転子の強度を高めることができる。
中間ブリッジ部と第1の外周ブリッジ部の間に形成されている第1の磁石収容孔の外側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている。また、中間ブリッジ部と第2の外周ブリッジ部の間に形成されている第2の磁石収容孔の外側の壁は、第1の曲率中心点と異なる第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている。「円弧形状に形成されている」構成には、略円弧形状に形成されている態様が包含される。第1の曲率中心点および第2の曲率中心点は、第1の磁石収容孔の外側の壁および第2の磁石収容孔の外側の壁の長さが、第1の磁石収容孔の外側の壁および第2の磁石収容孔の外側の壁をd軸線上の共通の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成した場合に比べて長くなるように設定される。第1の曲率中心点および第2の曲率中心点の位置は、回転子の大きさ、中間ブリッジ部や第1及び第2のブリッジ部の幅、第1および第2の磁石収容孔の大きさ等によって決定される。
第1の磁石収容孔の外側の壁の円弧形状と第2の磁石収容孔の外側の壁の円弧形状を、それぞれ異なる第1の曲率中心点と第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成しているため、第1の曲率中心点と第2の曲率中心点を設定することによって第1の磁石収容孔の外側の壁および第2の磁石収容孔の外側の壁の長さを長くすることができる。これにより、磁束量を増加させることができ、効率を向上させることができる。
本発明では、回転子の外周面を曲率半径が異なる第1の曲線部分と第2の曲線部分によって形成する構成と、主磁極部に設けられる第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外側の壁の長さを長くする構成を用いることによって効率を向上させている。これにより、例えば、希土類磁石より磁束密度が低いフェライト磁石等を用いた場合でも、希土類磁石を用いた場合と同等の効率を得ることができる。
【0005】
本発明の第2発明では、第1の曲線部分は、d軸線上の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、第2の曲線部分は、q軸線上の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている。これにより、第1の曲線部分と第2の曲線部分を容易に形成することができる。
【0006】
本発明の第3発明では、第1の曲線部分は、回転子の中心点を曲率中心点とする円弧形状に形成され、第2の曲線部分は、回転子の中心点より第2の外周面と反対方向に離れた点を曲率中心点とする円弧形状に形成されている。これにより、第1の曲線部分と第2の曲線部分の切り換わり部分が固定子のティース部に対向する箇所を通過する時に、ティース部を流れる磁束量が急激に変化するのをより効果的に抑制することができ、効率をより向上させることができる。
【0007】
本発明の第4発明では、第1の磁石収容孔の外側の壁の曲率半径と第2の磁石収容孔の外側の壁の曲率半径が等しく設定されている。これにより、第1の磁石収容孔からの磁束量と第2の磁石収容孔からの磁束量が略等しくなり、磁束量の脈動を防止することができる。
【0008】
本発明の第5発明では、中間ブリッジ部と第1の外周ブリッジ部の間に形成される第1の磁石収容孔の内側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、また、中間ブリッジ部と第2の外周ブリッジ部の間に形成される第2の磁石収容孔の内側の壁は、第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている。これにより、永久磁石の厚さを一定にすることができ、減磁特性のバラツキを防止することができる。
【0009】
本発明の第6発明では、第1の磁石収容孔の内側の壁の曲率半径と第2の磁石収容孔の内側の壁の曲率半径が等しく設定されている。これにより、第1の磁石収容孔に収容する永久磁石と第2の磁石収容孔に収容する永久磁石として同じ形状の永久磁石を用いることができる。また、第1の磁石収容孔の内側の壁と回転軸挿入孔の間および第2の磁石収容孔の内側の壁と回転軸挿入孔との間の回転子コアによるリラクタンストルクが均一となり、コギングトルクを低減することができる。これにより、コギングトルクによる音や振動の発生を低減することができる。
【0010】
本発明の第7発明では、第1の磁石挿入孔と第2の磁石挿入孔の組が多層に設けられている。「多層に設ける」構成は、各層を構成する第1の磁石挿入孔と第2の磁石挿入孔の組を回転子の径方向に複数設ける構成が対応する。多層構造とすることにより、層間の回転子コアによるリラクタンストルクを利用することができるため、効率をより向上させることができる。また、多層構造とすることにより、主磁極部と補助磁極部の切り換わり部分が固定子のティース部に対向する箇所を通過する時にティース部を流れる磁束量が段階的に変化するため、ティース部を流れる磁束が急激に変化するのを防止することができる。
【0011】
本発明の第8発明では、各層の第1の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、各層の第2の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁は、第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている。これにより、第7発明の効果に加えて、各層を構成する磁石収容孔を効率よく配置することができる。
【0012】
通常、永久磁石回転機では、空隙磁束密度分布を正弦波形状に近づけてコギングトルクによる振動や音の発生を抑制するために、磁石収容孔に収容される永久磁石の磁気配向方向は、共通の配向中心点に収束する様に構成されている(「ラジアル配向」という)。また、第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外周側の壁(第1の永久磁石および第2の永久磁石の外周側の面)は、回転子の外周面に平行(略平行を含む)に形成され、第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の中心側の壁(第1の永久磁石および愛2の永久磁石の中心側の面)は主磁極部のd軸線に平行(略平行を含む)に形成される。このため、第1の永久磁石および第2の永久磁石の磁気配向が共通の配向中心点に収束している場合には、中間ブリッジ部や第1の外周ブリッジ部および第2の外周ブリッジ部を介して流れる短絡磁束量が多い。
本発明の第9発明では、中間ブリッジ部や第1の外周ブリッジ部および第2の外周ブリッジ部を介して流れる短絡磁束量を低減するために、第1の永久磁石および第2の永久磁石の磁気配向方向が、中心部と端部で異なっている。すなわち、第1の永久磁石の磁気配向方向は、第1の永久磁石が第1の磁石収容孔に収容されている状態で軸方向と直交する断面で見て、中央部では、第1の磁石収容孔の外側の壁に対向する外側の面より外側の、第1の永久磁石の中央部の配向中心点に収束し、端部では、第1の永久磁石の中央部の配向中心点よりも遠方の、第1の永久磁石の端部の配向中心点に収束している。同様に、第2の永久磁石の磁気配向方向は、第2の永久磁石が第2の磁石収容孔に収容されている状態で軸方向と直交する断面で見て、中央部では、第2の磁石収容孔の外側の壁に対向する外側の面より外側の、第2の永久磁石の中央部の配向中心点に収束し、端部では、第2の永久磁石の中央部の配向中心点よりも遠方の、第2の永久磁石の端部の配向中心点に収束している。「第1の永久磁石(第2の永久磁石)の中央部の配向中心点よりも遠方の、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点」は、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の外側の面との間の距離が、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の外側の面と中央部の配向中心点との間の距離よりも長い位置に配置された第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点を表している。第1の永久磁石(第2の永久磁石)の中央部および端部は、回転子の周方向に沿った中央部および端部を表している。
「磁気配向方向が配向中心点に収束している」状態は、磁気配向方向を示す線が配向中心点を通る状態を表している(「ラジアル配向」という)。「磁気配向方向が配向中心点に収束している」構成は、磁気配向方向が概略配向中心点に収束している態様を包含する。なお、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点は、無限遠方に配置されていてもよい。すなわち、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点は、無限遠方の配向中心点を包含する。例えば、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の磁気配向方向は、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の外側の面の周方向の中心点と第1の永久磁石(第2の永久磁石)の中央部の配向中心点とを結ぶ線に平行であってもよい(「平行配向」という)。この場合、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の磁気配向方向は、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の外側の面の周方向の中心点と第1の永久磁石(第2の永久磁石)の中央部の配向中心点とを結ぶ線に概略平行であってもよい。
第1の永久磁石(第2の永久磁石)の磁気配向方向は、中央部と端部の間で、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の中央部の配向中心点に収束する状態から、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点に収束する状態に連続的あるいは段階的に変化していてもよい。
「第1の永久磁石の端部」の領域と「第1の永久磁石の端部の配向中心点」の位置(「第2の永久磁石の端部」の領域と「第2の永久磁石の端部の配向中心点」の位置)は、第1の永久磁石(第2の永久磁石)の外側の面あるいは内側の面から発生する磁束が、中間ブリッジ部と第1の外周ブリッジ部(中間ブリッジ部と第2の外周ブリッジ部)を介して第1の永久磁石(第2の永久磁石)の内側の面あるいは外側の面の間で短絡されるのを抑制することができるように設定される。
本発明では、空隙磁束密度分布を正弦波形状に近づけながら、中間ブリッジ部と第1の外周ブリッジ部および第2の外周ブリッジ部を介して流れる磁束短絡量を低減して、主磁極部と固定子の間に流れる磁束量(有効磁束量)を増加させることができる。これにより、コギングトルクによる振動や音の発生を抑制しながら、効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の第10発明では、第1および第2の外周ブリッジ部に、孔あるいは外方向に凹状の切欠部が形成されている。「孔」は、空隙であってもよいし、非磁性体が充填されていてもよい。「切欠部」は、回転子の外周面(例えば、第2の曲線部分)に沿った線から回転子の中心方向に切り欠かれた形状に形成される。孔あるいは切欠部の周方向の長さは、固定子のティース部の基部の幅以上、好適にはティース部のティース先端面の周方向の長さ以上に設定するが好ましい。これにより、第1および第2の磁石収容孔に収容されている第1および第2の永久磁石から発生する磁束が固定子のティース部を介して短絡されるのを防止することができ、有効磁束量を増大させて効率を向上させることができる。また、リラクタンストルクの変動の低減によってトルク脈動が低減し、あるいは、永久磁石の端部での磁束短絡量の低減によって回転子と固定子との間のラジアル方向の磁気吸引力が低減するため、騒音や振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
第1発明〜第10発明を用いることにより、磁束量を増大させて効率を向上させることができる。これにより、希土類磁石に比べて磁束密度が低いフェライト磁石等を用いた場合でも、希土類磁石を用いた場合と同等の効率を有する永久磁石回転機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施の形態を図1及び図2に示す。第1の実施の形態は、本発明を、回転子の主磁極部に設けられている磁石収容孔に永久磁石が収容された永久磁石電動機(「永久磁石埋込型電動機」と呼ばれている)として構成したものである。なお、図1は、第1の実施の形態の永久磁石電動機10を軸方向に直交する方向から見た断面図であり、図2は、回転子30を軸方向に直交する方向から見た断面図である。なお、回転子30は、磁極数が4(極対数が2)の場合を示している。
本実施の形態の永久磁石電動機10は、固定子20と回転子30により構成されている。
固定子20は、例えば、電磁鋼板を積層して形成された固定子コアによって構成される。固定子20は、ヨーク部21と、ティース部22を有している。ティース部22によってスロット23が形成されており、スロット23には、分布巻方式あるいは集中巻方式によって固定子巻線が収容される。ティース部22は、図3に示されているように、基部22aと、基部22aの回転方向の両側に設けられているティース端部22bおよび22cを有している。そして、基部22aとティース端部22bおよび22cの回転子30と対向する側の面によってティース先端面22dが形成されている。回転子30は、回転子30の外周面と固定子20のティース部22のティース先端面22dとの間隙(ギャップ)がgに設定された状態で回転可能に配置されている。
【0016】
回転子30は、例えば、電磁鋼板を積層して形成された回転子コア31によって構成される。回転子コア31には、回転軸が挿入される回転軸挿入孔40が形成されているとともに、主磁極部a、b、c、dと補助磁極部ab、bc、cd、daが周方向に交互に配置されている。回転軸は、例えば、圧入方法や焼きバメ方法等によって回転軸挿入孔40に挿入される。
また、回転子コア31には、積層された電磁鋼板を固定するカシメピンが挿入されるカシメピン挿入孔38a〜38dが形成されている。カシメピンとしては、磁性体で形成されたカシメピンを用いるのが好ましい。
【0017】
回転子コア31(以下では、「回転子30」という)の外周面は、主磁極部a〜dに対応する第1の曲線部分(第1の外周部分)30a、30b、30c、30dと補助磁極部ab〜daに対応する第2の曲線部分(第2の外周部分)30ab、30bc、30cd、30daが交互に配置されて構成されている。
第1の曲線部分30a〜30dは、回転子30の中心点Oと主磁極部a〜dの周方向中心点を結ぶ線(以下、「d軸線」という)と交差し、突部が外方向に向いている第1の曲線形状に形成されている。また、第2の曲線部分30ab〜30daは、回転子30の中心点Oと補助磁極部ab〜daの周方向中心点とを結ぶ線(以下「q軸線」という)と交差し、突部が外方向に向いている第2の曲線形状に形成されている。そして、第2の曲線部分30ab〜30daの第2の曲線形状の曲率半径[Rq]は、第1の曲線部分30a〜30dの第1の曲線形状の曲率半径[Rd]より大きく設定されている(Rq>Rd)。第1の曲線部分30a〜30dと第2の曲線部分30ab〜30daは、接続点30a1〜30d1、30a2〜30d2で接続されている。「外方向」という記載は、回転子の中心点から離れる方向を表す。
本実施の形態では、第1の曲線部分30a〜30dは、回転子30の中心点Oを中心とする半径[Rd]の円弧形状に形成されている。また、第2の曲線部分30ab〜30daは、q軸線上の、回転子30の中心点Oより第2の曲線部分30ab〜30daと反対方向に離れた点を中心とする半径[Rq]の円弧形状に形成されている。図1には、第2の曲線部分30abの円弧形状の中心点(曲率中心点)Pabが示され、図2では、第2の曲線部分30bcの円弧形状の中心点(曲率中心点)Pbcと第2の曲線部分30cdの円弧形状の中心点(曲率中心点)Pcdが示されている。
第1の曲線部分30a〜30dの開角θは、高い効率を得ることができる範囲に設定される。
なお、第1の曲線部分30a〜30dや第2の曲線部分30ab〜30daの曲線形状は、円弧形状や楕円形状等の突型形状であればよい。また、第1の曲線部分30a〜30dの曲線形状の中心点(曲率中心点)や第2の曲線部分30ab〜30daの中心点(曲率中心点)の位置は、適宜変更可能である。例えば、第1の曲線部分30a〜30dの中心点を、d軸線上の、回転子30の中心点Oより第1の曲線部分30a〜30d方向に離れた点に設定してもよい。
本実施の形態では、第1の曲線部分30a〜30dが本発明の「第1の曲線部分」に対応し、回転子30の中心点Oが本発明の「第1の曲線形状の第1の曲率中心点」に対応し、[Rd]が本発明の「第1の曲線形状の曲率半径」に対応する。また、第2の曲線部分30ab〜30daが本発明の「第2の曲線部分」に対応し、点Pab、Pbc、Pcdが本発明の「第2の曲線形状の第2の曲率中心点」に対応し、[Rq]が本発明の「第2の曲線形状の曲率半径」に対応する。
【0018】
第1の曲線部分30a〜30dと第2の曲線部分30ab〜30daの切り換わり部分(接続点30a1〜30d1、30a2〜30d2の部分)がティース部22に対向する箇所を通過する時に、ティース部22に流れる磁束量が急激に変化するのを防止することができ、固定子巻線に誘起される起電力の起電力波形に含まれる高調波成分の増大を防止することができる。これにより、例えば、回転子の位置検出センサを用いずに、固定子巻線に誘起される起電力の起電力波形に基づいて回転子の位置を検出するセンサレス制御装置を用いて永久磁石電動機を制御する場合に、起電力波形に含まれている高調波成分による回転子の位置検出精度の低下を防止することができる。したがって、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。また、固定子巻線に充分な起電力を誘起させることができるため、固定子巻線の巻数を増加させる必要がない。これにより、固定子巻線の銅損による効率の低下を防止することができる。
【0019】
主磁極部a〜dには、第1の磁石収容孔32a〜32dと第2の磁石収容孔34a〜34dが設けられている。第1の磁石収容孔32a〜32dには第1の永久磁石33a〜33dが収容され、第2の磁石収容孔34a〜34dには第2の永久磁石35a〜35dが収容されている。第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)は、例えば、隙間ばめ方法によって第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)に収容される。第1の永久磁石33a〜33dおよび第2の永久磁石35a〜35dは、周方向に隣接する主磁極部a〜dの極性が逆極性となるように磁化されている。図2では、主磁極部aの第1の永久磁石33aおよび第2の永久磁石35a、主磁極部cの第1の永久磁石33cおよび第2の永久磁石35cは、外周面側がN極、中心側がS極となるように磁化され、主磁極aとcに隣接する主磁極部b第1の永久磁石33bおよび第2の永久磁石35b。主磁極部dの第1の永久磁石33dおよび第2の永久磁石35dは、外周面側がS極、中心側がN極となるように磁化されている。
本実施の形態では、第1の磁石収容孔32a〜32dは、外側の壁(外壁)32a1〜32d1、内側の壁(内壁)32a2〜32d3、外周面側の壁(外周側端壁)32a3〜32d3、中央側の壁(中央側端壁)32a4〜32d4によって形成されている。同様に、第2の磁石収容孔34a〜34dは、外側の壁(外壁)34a1〜34d1、内側の壁(内壁)34a2〜34d2、外周面側の壁(外周側端壁)34a3〜34d3、中心側の壁(中心側端壁)34a4〜34d4によって形成されている。「外側の壁」と「内側の壁」は、回転子30を軸方向に直角な断面で見て、長手方向に沿った両側の壁のうち、回転子30(回転子コア31)の中心点Oから遠い方の壁と近い方の壁を表している。また、「外周面側の壁」と「中心側の壁」は、回転子30の外周面と対向する位置に配置される壁と主磁極部a〜dに設けられている他の磁石収容孔と対向する位置に配置される壁を表している。第1の永久磁石33a〜33dの軸方向に直交する断面の形状は、第1の磁石収容孔32a〜32dに収容可能な程度に、第1の磁石収容孔32a〜32dの軸方向に直交する断面の形状に対応した形状に形成される。同様に、第2の永久磁石35a〜35dの軸方向に直交する断面の形状も、第2の磁石収容孔34a〜34dに収容可能な程度に、第2の磁石収容孔34a〜34dの軸方向に直交する断面の形状に対応した形状に形成される。典型的には、第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)は、軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)の外側の壁32a1〜32d1(34a1〜34d1)に対応する形状に形成されている外側の面と、内側の壁32a2〜32d2(34a2〜34d2)に対応する形状に形成されている内側の面と、外周面側の壁32a3〜32d3(34a3〜34d3)に対応する形状に形成されている外周面側の面と、中心側の壁32a4〜32d4(34a4〜34d4)に対応する形状に形成されている中心側の面を有している。
本実施の形態では、磁束量を増大させるために、第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)の外周面側の壁32a3〜32d3(34a3〜34d3)、第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)に収容される第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)の外周面側の面は、回転子コア31(回転子30)の外周面に平行(略平行を含む)に形成されている。また、第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)の中心側の壁32a4〜32d4(34a4〜34d4)、第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)に収容される第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)の中心側の面は、d軸線に平行(略平行を含む)に形成されている。
第1の磁石収容孔32a〜32d(第2の磁石収容孔34a〜34d)、第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)の軸方向に直交する断面の形状については後述する。
【0020】
回転子コア31には、第1の磁石収容孔32a〜32dと第2の磁石収容孔34a〜34dとの間に中間ブリッジ部36a〜36dが形成され、第1の磁石収容孔32a〜32dと回転子30の外周面(前述した第2の曲線部分30ab〜30da)との間に第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1が形成され、第2の磁石収容孔34a〜34dと回転子30の外周面(前述した第2の曲線部分30ab〜30da)との間に第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2が形成されている。すなわち、第1の磁石収容孔32a〜32dの中心側の壁32a4〜32d4と第2の磁石収容孔34a〜34dの中心側の壁34a4〜34d4によって中間ブリッジ部36a〜36dが形成され、第1の磁石収容孔32a〜32dの外周面側の壁32a3〜32d3と回転子30の外周面によって第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1が形成され、第2の磁石収容孔34a〜34dの外周面側の壁34a3〜34d3と回転子30の外周面によって第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2が形成されている。
中間ブリッジ部36a〜36d、第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1および第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2によって、回転子30の強度が高められている。
【0021】
次に、第1の磁石収容孔32a〜32dおよび第2の磁石収容孔34a〜34dの構成について説明する。
先ず、特許文献1に記載されている従来の永久磁石電動機の磁石収容孔の構成を図6により説明する。図6は、従来の永久磁石電動機の回転子830を軸方向に直交する方向から見た断面図であり、主磁極部cの部分を示している。主磁極部cには、第1の磁石収容孔832cと第2の磁石収容孔834cが設けられている。第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)は、外側の壁(外壁)832c1(834c1)、内側の壁(内壁)832c2(834c2)、外周面側の壁(外周側端壁)832c3(834c3)、中心側の壁(中心側端壁)832c4(834c4)によって形成されている。また、第1の磁石収容孔832cと第2の磁石収容孔834cの間に中間ブリッジ部836cが形成され、第1の磁石収容孔832cと回転子830の外周面830Aとの間に第1の外周ブリッジ部837c1が形成され、第2の磁石収容孔834cと回転子830の外周面830Aの間に第2の外周ブリッジ部837c2が形成されている。第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)には、第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)の断面形状に対応する断面形状を有する第1の永久磁石833c(第2の永久磁石835c)が収容される。
従来の永久磁石電動機では、軸方向に直交する断面で見て、主磁極部cに設けられている第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)の外側の壁832c1(834c1)と内側の壁832c2(834c2)は、d軸線上の共通の中心点c811を中心とする円弧形状に形成されている。すなわち、外側の壁832c1と834c1は、d軸線上の中心点c811を中心とする半径[R811]の円弧形状に形成され、内側の壁832c2と834c2は、d軸線上の中心点c811を中心とする半径[R812]の円弧形状に形成されている。
このような構成の永久磁石電動機に希土類磁石より磁束密度が低いフェライト磁石を用いた場合、軸方向に直交する方向から見た断面の形状が長方形形状に形成されている第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔を用いた場合に比べて、外側の壁832c1および834c1の長さが長くなる。これにより、図6に示す軸方向に直交する断面において、第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)に収容される第1の永久磁石833c(第2の永久磁石835c)の、第1の磁石収容孔832c(第2の磁石収容孔834c)の外側の壁832c1(834c1)に対応する外側の壁の長さが長くなり、磁束量が増大する。しかしながら、第1の磁石収容孔832cの外側の壁832c1と第2の磁石収容孔834cの外側の壁834c1が共通の中心点を中心とする円弧形状に形成されている場合には、外側の壁832c1および834c1の長さを長くするには限界がある。このため、磁束密度が高い希土類磁石を用いた場合と同等の効率を得ることができない。
【0022】
本実施の形態では、主磁極部に設けられる第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外側の長さを長くするために、第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外側の壁を異なる中心点を中心とする円弧形状に形成している。
本実施の形態の磁石収容孔および永久磁石の構成を、図2により説明する。なお、主磁極部a〜dに設けられる第1の磁石収容孔32a〜32dおよび第2の磁石収容孔34a〜34dは同じ構成であり、また、第1の磁石収容孔32a〜32dおよび第2の磁石収容孔34a〜34dそれぞれに収容される第1の永久磁石33a〜33dおよび第2の永久磁石35a〜35dは同じ構成である。このため、以下では、主磁極部cに設けられる第1の磁石収容孔32cおよび第2の磁石収容孔34cと、第1の磁石収容孔32cおよび第2の磁石収容孔34cそれぞれに収容される第1の永久磁石33cおよび第2の永久磁石35cについて説明する。
軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔32cの外側の壁32c1と内側の壁32c2は、中心点c11を中心とする円弧形状に形成されている。すなわち、外側の壁32c1は、外方向に凹状である、中心点c11を中心とする半径[R11]の円弧形状に形成され、内側の壁32c2は、内方向(中心方向)に突状である、中心点c11を中心とする半径[R12]の円弧形状に形成されている。また、第2の磁石収容孔34cの外側の壁34c1と内側の壁34c2は、中心点c21を中心とする円弧形状に形成されている。すなわち、外側の壁34c1は、外方向に凹状である、中心点c21を中心とする半径[R21]の円弧形状に形成され、内側の壁34c2は、内方向に突状である、中心点c21を中心とする半径[R22]の円弧形状に形成されている。
そして、軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔32c(第2の磁石収容孔34c)に収容される第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)は、第1の磁石収容孔32c(第2の磁石収容孔34c)の外側の壁32c1(34c1)に対応する形状に形成されている外側の面、内側の壁32c2(34c2)に対応する形状に形成されている内側の面、外周面側の壁32c3(34c3)に対応する形状に形成されている外周面側の面、中心側の壁32c4(34c4)に対応する形状に形成されている中心側の面を有している。すなわち、第1の永久磁石33cは、第1の磁石収容孔32cに収容された状態で見て、外方向に凹状である中心点c11を中心とする円弧形状に形成されている外側の面と、内方向に突状である中心点c11を中心とする円弧形状に形成されている内側の面を有している。また、第2の永久磁石35cは、第2の磁石収容孔34cに収容された状態で見て、外方向に凹状である中心点c21を中心とする円弧形状に形成されている外側の面と、内方向に突状である中心点c21を中心とする円弧形状に形成されている内側の面を有している。
【0023】
中心点c11とc12、半径[R11]、[R12]、[R21]、[R22]は、回転子30の大きさ(直径あるいは半径)、永久磁石の特性や厚さ、中心ブリッジ部36cや第1の外周ブリッジ部37c1および第2の外周ブリッジ部37c2の幅、所望の効率等に応じて設定される。本実施の形態では、半径[R11]と半径[R21]が等しく設定され、半径[R12]と半径[R22]が等しく設定されている。すなわち、第1の磁石収容孔32cと第2の磁石収容孔34c、第1の永久磁石33cと第2の永久磁石35cは、円弧状(弓状)に形成されている。なお、本明細書では、「円弧形状」という記載は、概略円弧形状を包含するものとして用いられている。
本実施の形態では、中間ブリッジ部36a〜36dが本発明の「中間ブリッジ部」に対応し、第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1が本発明の「第1の外周ブリッジ部」に対応し、第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2が本発明の「第2の外周ブリッジ部」に対応し、中心点c11が本発明の「第1の磁石収容孔の外側の壁の円弧形状の第1の曲率中心点」に対応し、中心点c21が本発明の「第2の磁石収容孔の外側の壁の円弧形状の第2の曲率中心点」に対応する。
【0024】
このように、本実施の形態では、軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔の外側の壁および内側の壁と、第2の磁石収容孔の外側の壁および内側の壁を、異なる中心点を中心とする円弧形状に形成している。これにより、軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔の外側の壁および内側の壁、第2の磁石収容孔の外側の壁および内側の壁がd軸上の共通の中心点を中心とする円弧形状に形成されている場合に比べて、第1の磁石収容孔の外側の壁および第2の磁石収容孔の外側の壁の長さを長くすることができる。すなわち、第1の磁石収容孔に収容される第1の永久磁石の、第1の磁石収容孔の外側の壁に対応する外側の面の長さ、第2の磁石収容孔に収容される第2の永久磁石の、第2の磁石収容孔の外側の壁に対応する外側の面の長さを長くすることができる。したがって、磁束量を増大することができ、効率を向上させることができる。
【0025】
前記した構成の回転子では、第1の磁石収容孔32a〜32dに収容されている第1の永久磁石33a〜33dから発生する磁束が、中間ブリッジ部36c〜36dや第1の外周ブリッジ部37a1〜37d1を介して短絡され、また、第2の磁石収容孔34a〜34dに収容されている第2の永久磁石35a〜35dから発生する磁束が、中間ブリッジ部36c〜36dや第2の外周ブリッジ部37a2〜37d2を介して短絡される(短絡磁束が発生する)。
ここで、従来の永久磁石電動機では、図6に示されているように、第1の磁石収容孔832cおよび第2の磁石収容孔834cの外周面側の壁、第1の磁石収容孔832cに収容される永久磁石833cおよび第2の磁石収容孔834cに収容される第2の永久磁石835cの外側の面(磁石収容孔の外側の壁に対向する面)が、回転子830の外周面に平行(略平行を含む)に形成されている。また、第1の永久磁石833cおよび第2の永久磁石835cの磁気配向方向が、d軸上の共通の配向中心点c811を通る線に沿って設定されている(「ラジアル配向」と呼ばれている)。このため、図6に示すように、第1の磁石収容孔832cの外側の壁832c1の中心側の部分(第1の永久磁石833cの、N極に磁化された外側の面の中心側の部分)から発生した磁束が、中間ブリッジ部836cを介して、第1の磁石収容孔832cの内側の壁832c2の中心側の部分(第1の永久磁石833cの、S極に磁化された内側の面の中心側の部分)に流れて短絡される。あるいは、第1の磁石収容孔832cの外側の壁832c1の外周面側の部分(第1の永久磁石833cの、N極に磁化された外側の面の外周面側の部分)から発生した磁束が、第1の外周ブリッジ部837c1を介して、第1の磁石収容孔832cの内側の壁832c2の外周面側の部分(第1の永久磁石833cの、S極に磁化された内側の面の外周面側の部分)に流れて短絡される。第2の外周ブリッジ部837c2も同様である。
中間ブリッジ部836cや第1の外周ブリッジ部837c1および第2の外周ブリッジ部837c2を介して、第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外側の壁から内側の壁(あるいは、内側の壁から外側の壁)に磁束(短絡磁束)が流れると、主磁極部a〜dと固定子20のティース部22の間に流れる磁束量(有効磁束量)が減少し、効率が低下する。
【0026】
本実施の形態では、第1の磁石収容孔および第2の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁の間を流れる磁束(短絡磁束)を減少させて有効磁束量を増加させるために、第1の永久磁石および第2の永久磁石の端部の磁気配向方が中央部の磁気配向方と異なっている。
本実施の形態の永久磁石の磁気配向方向を、図3〜図5により説明する。なお、図3は、本実施の形態の磁束の流れを示す図であり、図4は、第1および第2の永久磁石の磁気配向方向を説明する図であり、図5は、中間ブリッジ部を介して流れる磁束(短絡磁束)を説明する図である。
第1の永久磁石33a〜33dおよび第2の永久磁石35a〜35dの磁気配向方向は同様であるため、以下では、主磁極部cの第1の磁石収容孔32cに収容される第1の永久磁石33cおよび第2の磁石収容孔34cに収容される第2の永久磁石35cの磁気配向方向を、軸方向に直交する方向から見た断面図を示している図4を用いて説明する。第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)は、軸方向に直交する断面で見て、第1の磁石収容孔32c(第2の磁石収容孔34c)の外側の壁32c1(34c1)に対向する外側の面と内側の壁32c2(34c2)に対向する内側の面の一方がN極、他方がS極となるように(外側の面および内側の面に交差する方向に)磁化される。以下では、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部および端部は、軸方向に直交する断面で見て、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の外側の面に沿った中央部および端部を表す。
第1の永久磁石33cの中央部の磁気配向方向33Aは、第1の永久磁石33cの外側の面より外側の位置に配置されている中央部の配向中心点c11に収束している。すなわち、第1の永久磁石33cの中央部では、中央部の磁気配向方向33Aを示す線(図4に実線で示されている)が中央部の配向中心点c11を通る様に設定されている。また、第1の永久磁石33cの端部の磁気配向方向33Cは、中央部の配向中心点c11より遠方に配置されている端部の配向中心点c13に収束している。すなわち、第1の永久磁石33cの端部では、端部の磁気配向方向33Cを示す線(図4に二点差線で示されている)が端部の配向中心点c13を通る様に設定されている。そして、第1の永久磁石33cの中央部と端部の間の中間部の磁気配向方向33Bは、中央部の配向中心点c11と端部の配向中心点c13の間に配置されている中間部の配向中心点c12に収束している。すなわち、第1の永久磁石33cの中間部では、中間部の磁気配向方向33Bを示す線(図4に破線で示されている)が中間部の配向中心点c12を通る様に設定されている。
同様に、第2の永久磁石35cの中央部の磁気配向方向35Aは、第2の永久磁石35cの外側の面より外側の位置に配置されている中央部の配向中心点c21に収束している。すなわち、第2の永久磁石35cの中央部では、中央部の磁気配向方向35Aを示す線(図4に実線で示されている)が中央部の配向中心点c21を通る様に設定されている。また、第2の永久磁石35cの端部の磁気配向方向35Cは、中央部の配向中心点c21より遠方に配置されている端部の配向中心点c23に収束している。すなわち、第2の永久磁石35cの端部では、端部の磁気配向方向35Cを示す線(図4に二点鎖線で示されている)が端部の配向中心点c23を通る様に設定されている。そして、第2の永久磁石35cの中央部と端部の間の中間部の磁気配向方向35Bは、中央部の配向中心点c21と端部の配向中心点c23の間に配置されている中間部の配向中心点c22に収束している。すなわち、第2の永久磁石の中間部では、中間部の磁気配向方向35Bを示す線(図4に破線で示されている)が中間部の配向中心点c22を通る様に設定されている。
なお、第1の永久磁石33a〜33d(第2の永久磁石35a〜35d)は、磁気配向方向33A〜33C(35A〜35C)の一方側がN極、他方側がS極となるように磁化される。
本実施の形態では、磁気配向方向33Aが本発明の「第1の永久磁石の中央部の磁気配向方向」に対応し、中央部の配向中心点c11が本発明の「第1の永久磁石の中央部の配向中心点」に対応し、磁気配向方向33Cが本発明の「第1の永久磁石の端部の磁気配向方向」に対応し、端部の配向中心点c13が本発明の「第1の永久磁石の端部の配向中心点」に対応し、磁気配向方向35Aが本発明の「第2の永久磁石の中央部の磁気配向方向」に対応し、中央部の配向中心点c21が本発明の「第2の永久磁石の中央部の配向中心点」に対応し、磁気配向方向35Cが本発明の「第2の永久磁石の端部の磁気配向方向」に対応し、端部の配向中心点c23が本発明の「第2の永久磁石の端部の配向中心点」に対応する。
【0027】
ここで、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中間部の配向中心点c12(c22)、端部の配向中心点c13(c23)は、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部の配向中心点c11(c21)より遠方に設定されていればよいが、図5に示すように、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の外側の面の中心点(周方向中心点)c32(c34)と中央部の配向中心点c11(c21)を結ぶ線c1(c2)(図4および図5に一点鎖線で示されている)上に設定するのが好ましい(概略線c1上に設定する態様を包含する)。
また、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の端部の磁気配向方向33C(35C)は、無限遠方に配置されている端部の配向中心点c13(c23)に収束していてもよい。すなわち、本実施の形態では、「第1の永久磁石(第2の永久磁石)の端部の配向中心点」は、無限遠方に配置されている配向中心点を包含する。この場合、例えば、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の端部の磁気配向方向33C(35C)は、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の外側の面の中心点(周方向中心点)c32(c34)と中央部の配向中心点c11(c21)を結ぶ線c1(c2)に平行(略平行を含む)となる。
なお、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中間部の磁気配向方向33B(35B)は、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部の配向中心点c11(c21)から第1の永久磁石33c(第2の永久磁石ア35c)の端部の配向中心点c13(c23)の間で連続的あるいは段階的に配置された中間部の配向中心点c12(c22)に収束する様に構成されていてもよい。すなわち、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部の配向方向33A(35A)から第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の端部の配向方向33C(35C)の間で連続的あるいは段階的に変化していてもよい。また、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の磁気配向方向は、中央部の磁気配向方向33A(35A)と端部の磁気配向33C(35C)のみであってもよい(中間部の磁気配向方向は省略されていてもよい)。
また、図4では、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部の配向中心点を、第1の磁石収容孔32c(第2の磁石収容孔34c)の外側の壁32c1(34c1)の円弧形状の中心点c11(c21)に配置したが、第1の永久磁石33c(第2の永久磁石35c)の中央部の配向中心点は適宜の位置に配置することができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態では、第1の磁石収容孔32a〜32dに収容される第1の永久磁石33a〜33d(第2の磁石収容孔34a〜34dに収容される第2の永久磁石35a〜35d)の中央部の磁気配向方向33A(35A)は、中央部の配向中心点c11(c21)に収束している。これにより、空隙磁束密度分布を正弦波形状に近づけることができ、コギングトルクによる振動や音の発生を抑制することができる。
また、第1の磁石収容孔32a〜32dに収容される第1の永久磁石33a〜33d(第2の磁石収容孔34a〜34dに収容される第2の永久磁石35a〜35d)の端部の磁気配向方向33C(35C)は、中央部の配向中心点c11(c21)より遠方(無限遠方を含む)に配置された端部の配向中心点c13(c23)に収束している。これにより、図5に示すように、中間ブリッジ部36cを介して、第1の磁石収容孔32cの中心側の壁32c4(第1の永久磁石33cのN極に磁化されている中心側の面)と第1の磁石収容孔32cの内側の壁32c2(第1の永久磁石33cのS極に磁化されている内側の面)との間で磁束(短絡磁束)は流れるが、第1の磁石収容孔32cの外側の壁32c1(第1の永久磁石33cのN極に磁化されている外側の面)と第1の磁石収容孔32cの内側の壁32c2(第1の永久磁石33cのS極に磁化されている内側の面)との間では磁束(短絡磁束)が流れ難くなる。また、中間ブリッジ部36cを介して、第2の磁石収容孔34cの中心側の壁34c4(第2の永久磁石35cのN極に磁化されている中心側の面)と第2の磁石収容孔34cの内側の壁34c2(第2の永久磁石35cのS極に磁化されている内側の面)との間で磁束(短絡磁束)は流れるが、第2の磁石収容孔34cの外側の壁34c1(第2の永久磁石35cのN極に磁化されている外側の面)と第2の磁石収容孔34cの内側の壁34c2(第2の永久磁石35cのS極に磁化されている内側の面)との間では磁束(短絡磁束)が流れ難くなる。同様に、図3に示すように、第1および第2の外周ブリッジ部37a1〜37d1および37a2〜37d2を介して、第1および第2の磁石収容孔32a〜32dおよび34a〜34dの外側の壁32a1〜32d1および34a1〜34d1(第1および第2の永久磁石33a〜33dおよび35a〜35dの外側の面)と第1および第2の磁石収容孔32a〜32dおよび34a〜34dの内側の壁32a2〜32d2および34a2〜34d2(第1および第2の永久磁石33a〜33dおよび35a〜35dの内側の面)との間で磁束(短絡磁束)が流れ難くなる。
したがって、主磁極部a〜dと固定子20のティース部22との間を流れる磁束量(有効磁束量)の減少を防止することができ、効率を向上させることができる。
【0029】
第1の実施の形態では、各主磁極部a〜dに第1および第2の磁石収容孔の組(第1および第2の永久磁石の組)を1組だけ設けた1層構造の永久磁石電動機について説明したが、本発明は、多層構造の永久磁石電動機として構成することもできる。以下に、多層構造の永久磁石電動機として構成した第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態の永久磁石電動機は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図7に示されている回転子130により構成される。本実施の形態は、2層構造の永久磁石電動機として構成されている。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、回転子130(回転子コア131)の外周面は、d軸上の回転子の中心点Oを中心とする半径[Rd]の円弧形状に形成されている第1の曲線部分130a〜130dと、q軸上の回転子130の中心点Oより反対方向に離れた中心点(Pbc、Pcd)を中心とする半径[Rq]の円弧形状に形成されている第2の曲線部分130ab〜130daが交互に接続されて構成されている。
回転子130(回転子コア131)には、各主磁極部a〜dに、第1層の磁石収容孔を構成する、第1層の第1の磁石収容孔142a〜142dと第1層の第2の磁石収容孔144a〜144dの組が設けられている。また、第1層の磁石収容孔より内側(中心側)に、第2層の磁石収容孔を構成する、第2層の第1の磁石収容孔146a〜146dと第2層の第2の磁石収容孔148a〜148dが設けられている。各磁石収容孔には、それぞれ第1の永久磁石143a〜143d、145a〜145d、147a〜147d、149a〜149dが収容される。第1層の第1の磁石収容孔142a〜142dと第1層の第2の磁石収容孔144a〜144dの間には第1層の中間ブリッジ部136a1〜136d1が形成され、第1層の第1の磁石収容孔142a〜142dと回転子130の外周面の間には第1層の第1の外周ブリッジ部137a1〜137d1が形成され、第1層の第2の磁石収容孔144a〜144dと回転子130の外周面との間には第1層の第2の外周ブリッジ部137a2〜137d2が形成されている。第2層の第1の磁石収容孔146a〜146dと第2層の第2の磁石収容孔148a〜148dの間には第2層の中間ブリッジ部136a2〜136d2が形成され、第2層の第1の磁石収容孔146a〜146dと回転子130の外周面の間には第2層の第1の外周ブリッジ部137a3〜137d3が形成され、第2層の第2の磁石収容孔148a〜148dと回転子130の外周面との間には第2層の第2の外周ブリッジ部137a4〜137d4が形成されている。
各磁石収容孔は、第1の実施の形態と同様に、外側の壁、内側の壁、外周面側の壁、中心側の壁によって形成されている。また、各永久磁石は、磁石挿入孔の外側の壁、内側の壁、外周面側の壁、中心側の壁に対応する形状に形成された外側の面、内側の面、外周面側の面、中心側の面を有している。
【0030】
本実施の形態では、各層の第1の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁は、第1の中心点を中心とする円弧形状に形成され、各層の第2の磁石収容孔は、第1の中心点と異なる第2の中心点を中心とする円弧形状に形成されている。すなわち、図7に示されているように、主磁極部cに設けられている、第1層の第1の磁石収容孔142cの外側の壁と内側の壁および第2層の第1の磁石収容孔146cの外側の壁と内側の壁は、それぞれ、中心点c111を中心とする半径[R111]、[R112]、[R113]、[R114]の円弧形状に形成されている。また、主磁極部cに設けられている、第1層の第2の磁石収容孔144cの外側の壁と内側の壁および第2層の第2の磁石収容孔148cの外側の壁と内側の壁は、それぞれ、中心点c121を中心とする半径[R121]、[R122]、[R123]、[R124]の円弧形状に形成されている。
なお、各永久磁石の磁気配向方向を第1の実施の形態のように設定することもできる。また、3層以上の多層構造に構成することもできる。
【0031】
本実施の形態では、多層構造としているため、層間の回転子コアによるリラクタンストルクを利用することができ、効率を向上させることができる。また、多層構造とすることにより、主磁極部a〜dと補助磁極部ab〜daの切り換わり部分(接続点の部分)が固定子のティース部を通過する時に、ティース部を流れる磁束量が急激に変化するのを防止することができる。
また、第1の実施の形態と同様に、外周側に設けられている磁石収容孔(図7では、第1層を構成している第1層の第1の磁石収容孔142a〜142dおよび第1層の第2の磁石収容孔144a〜144d)の外側の壁の長さを長くすることができるため、磁束量を増大させることができる。
また、第1の実施の形態のように永久磁石の磁気配向方向を設定した場合には、中間ブリッジ部や第1の外周ブリッジ部および第2の外周ブリッジ部を介する短絡磁束を低減することができ、有効磁束量を増大させることができる。
また、外周面を曲率半径が異なる第1の曲線部分と第2の曲線部分を接続することによって構成することによって第1の実施の形態と同様の効果を有している。
したがって、本実施の形態を用いることによって、第1の実施の形態と同様に、希土類磁石より磁束密度が低いフェライト磁石等を用いた場合でも、希土類磁石を用いた場合と同等の効率を有する永久磁石電動機を得ることができる。
【0032】
回転子の外周面を曲率半径が異なる第1の曲線部分と第2の曲線部分により構成する方法としては、第1および第2の実施の形態の方法に限定されない。以下に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
第3の実施の形態は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図8に示す回転子230により構成されている。回転子230は、外周面を構成する方法が第1の実施の形態の回転子30と異なるだけで、他の構成は第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態では、回転子230の主磁極部a〜dに対応する第1の曲線部分230a〜230dは、回転子230(回転子コア231)の中心点Oを中心とする半径[R1]の円弧形状に形成され、補助磁極部ab〜daに対応する第2の曲線部分230ab〜230daは、回転子230(回転子コア231)の中心点Oを中心とする半径[R2(<R1)]の円弧形状に形成されている。
【0033】
磁石収容孔に収容されている永久磁石から発生する磁束が固定子のティース部を介して短絡されると、ティース部を流れる磁束が変動し、コギングトルクが発生する。コギングトルクが発生すると、音や振動が発生する。以下に、永久磁石から発生する磁束が固定子のティース部を介して短絡されるのを防止する第4の実施を説明する。
第4の実施の形態は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図9に示す回転子330により構成されている。回転子330は、第1および第2の外周ブリッジ部に切欠部が形成されている点を除いて、第1の実施の形態の回転子30と同様の構成である。
本実施の形態では、回転子330の外周面は、主磁極部a〜dに対応する第1の曲線部分330a〜330dと補助磁極部ab〜daに対応する第2の曲線部分330ab〜330daによって構成されている。
また、回転子330には、第1の磁石収容孔332a〜332dおよび第2の磁石収容孔334a〜334dが設けられている。第1の磁石収容孔332a〜332dと第2の磁石収容孔334a〜334dとの間に中間ブリッジ部336a〜336dが形成され、第1の磁石収容孔332a〜332dと回転子330(回転子コア331)の外周面(図9では、第2の曲線部分330ab〜330da)との間に第1の外周ブリッジ部337a1〜337d1が形成され、第2の磁石収容孔334a〜334dと回転子330(回転子コア331)との間に第2の外周ブリッジ部337a2〜337d2が形成されている。
さらに、本実施の形態では、第1の外周ブリッジ部337a1〜337d1(第2の外周ブリッジ部337a2〜337d2)には、第1の磁石収容孔332a〜332d(第2の磁石収容孔334a〜334d)の外周面側の壁に対向する箇所に切欠部331a1〜331d1(331a2〜331d2)が形成されている。切欠部331a1〜331d1および331a2〜331d2は、第2の曲線部分330ab〜330daに沿った線から中心側に切り欠いて外方向の凹状に形成される。
切欠部331a1〜331d1および331a2〜331d2の周方向の長さは、固定子のティース部22の基部22aの幅以上、好適にはティース部22のティース先端面22dの周方向の長さ以上に設定するが好ましい。
【0034】
第4の実施の形態では。第1および第2の外周ブリッジ部に切欠部を形成したが、孔を形成することもできる。第1および第2の外周ブリッジ部に孔を形成した第5の実施の形態を図10に示す。
第5の実施の形態は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図10に示す回転子430により構成されている。回転子430は、第1および第2の外周ブリッジ部に孔が形成されている点を除いて、第1の実施の形態の回転子30と同様の構成である。
本実施の形態では、第1の外周ブリッジ部437a1〜437d1(第2の外周ブリッジ部437a2〜437d2)には、第1の磁石収容孔432a〜432d(第2の磁石収容孔434a〜434d)の外周面側の壁に対向する箇所に孔431a1〜431d1(431a2〜431d2)が形成されている。孔431a1〜431d1および431a2〜431d2は、空隙として構成してもよいし、非磁性体を充填して構成してもよい。
孔431a1〜431d1および431a2〜431d2の周方向の長さは、固定子のティース部22の基部22aの幅以上、好適にはティース部22のティース先端面22dの周方向の長さ以上に設定するが好ましい。
【0035】
第4の実施の形態および第5の実施の形態では、第1および第2の磁石収容孔に収容されている第1および第2の永久磁石から発生する磁束が固定子のティース部を介して短絡するのを防止することができる。これにより、有効磁束量を増大させて効率を向上させることができる。
また、リラクタンストルクの変動の低減によってトルク脈動が低減し、あるいは、永久磁石の端部での磁束短絡量の低減によって回転子と固定子との間のラジアル方向の磁気吸引力が低減するため、騒音や振動を低減することができる。
【0036】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
磁石収容孔および磁石収容孔に収容される永久磁石としては、少なくとも外側の壁が円弧形状に形成された磁石収容孔および磁石収容孔の外側の壁に対応する形状に形成された外側の面を有する永久磁石であればよい。
また、永久磁石の端部の磁気配向方を、中央部の配向中心点より遠方の端部の配向中心点を通る線に沿う様に設定する構成は省略することもできる。
また、外周ブリッジ部に、磁石収容孔の外周面側の壁に対向する箇所に切欠部や孔を形成する構成は省略することもできる。
実施の形態説明した各構成は単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明は、永久磁石電動機に限定されず種々の構成の永久磁石回転機として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施の形態を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【図2】第1の実施の形態の回転子を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】第1の実施の形態の永久磁石の磁気配向方向を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図6】従来技術の作用を説明する図である。
【図7】第2の実施の形態の回転子を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【図8】第3の実施の形態の回転子を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【図9】第4の実施の形態の回転子を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【図10】第5の実施の形態の回転子を軸方向に直交する方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 永久磁石電動機
20 固定子
21 ヨーク部
22 ティース部
23 スロット
30、130、230、330、430、830 回転子
30a〜30d、130a〜130d、230a〜230d、330a〜330d、430a〜430d 第1の曲線部分
30ab〜30da、130ab〜130da、230ab〜230da、330ab〜330da、430ab〜430da 第2の曲線部分
31、131、231、431 回転子コア
32a〜32d、34a〜34d、142a〜142d、144a〜144d、146a〜146d、148a〜148d、232a〜232d、234a〜234d、332a〜332d、334a〜334d、432a〜432d、434a〜434d、832c、834c 磁石挿入孔
32a1〜32d1、142a1、144a1、146a1、148a1、832c1、834c1 外側の壁
32a2〜32d2、142a2、144a2、146a2、148a2、832c2、834c2 内側の壁
32a3〜32d3、142a3、144a3、146a3、148a3、832c3、834c3 外周面側の壁
32a4〜32d4、142a4、144a4、146a4、148a4、832c4、834c4 中央側の壁
33a〜33d、35a〜35d、143a〜143d、145a〜145d、147a〜147d、149a〜149d、233a〜233d、235a〜235d、333a〜333d、335a〜335d、433a〜433d、435a〜435d、833c、835c 永久磁石
36a〜36d、136a1〜136d1、136a2〜136d2、236a〜236d、336a〜336d、436a〜436d、836c 中間ブリッジ部
37a1〜37d1、37a2〜37d2、137a1〜137d1、137a2〜137d2、137a3〜137d3、137a4〜137d4、237a1〜237d1、237a2〜237d2、337a1〜337d1、337a2〜337d2、437a1〜437d1、437a2〜437d2、837c1、837c2 外周ブリッジ部
38a〜38d、138a〜138d、238a〜238d、338a〜338d、438a〜438d カシメピン挿入孔
40、140、240、340、440 回転軸挿入孔
331a1〜331d1、331a2〜331d2 切欠部
431a1〜431d1、431a2〜431d2 孔
830A 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、回転子を備え、回転子には、軸方向と直交する断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に交互に配置されており、主磁極部には磁石収容孔が設けられ、磁石収容孔には永久磁石が収容されている永久磁石回転機であって、
回転子の外周面は、軸方向と直交する断面で見て、主磁極部のd軸線と交差し、突部が外方向に向いている第1の曲線形状に形成されている第1の曲線部分と、補助磁極部のq軸線と交差し、突部が外方向に向いている第2の曲線形状に形成されている第2の曲線部分により構成されているとともに、第2の曲線形状の曲率半径は、第1の曲線形状の曲率半径より大きく設定されており、
主磁極部には、第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔が、第1の磁石収容孔と第2の磁石収容孔の間に中間ブリッジ部が配置され、第1の磁石収容孔と回転子の外周面の間に第1の外周ブリッジ部が配置され、第2の磁石収容孔と回転子の外周面の間に第2の外周ブリッジ部が配置されるように形成されているとともに、第1の磁石収容孔の外側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、第2の磁石収容孔の外側の壁は、第1の曲率中心点と異なる第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されている
ことを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石回転機であって、第1の曲線部分は、d軸線上の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、第2の曲線部分は、q軸線上の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項3】
請求項2に記載の永久磁石回転機であって、第1の曲線部分は、回転子の中心点を曲率中心点とする円弧形状に形成され、第2の曲線部分は、回転子の中心点より第2の曲線部分と反対方向に離れた点を曲率中心点とする円弧形状に形成されていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石回転機であって、第1の磁石収容孔の外側の壁の曲率半径と第2の磁石収容孔の外側の壁の曲率半径が等しく設定されていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の永久磁石回転機であって、中間ブリッジ部と第1の外周ブリッジ部の間に形成される第1の磁石収容孔の内側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、中間ブリッジ部と第2の外周ブリッジ部の間に形成される第2の磁石収容孔の内側の壁は、第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項6】
請求項5に記載の永久磁石回転機であって、第1の磁石収容孔の内側の壁の曲率半径と第2の磁石収容孔の内側の壁の曲率半径が等しく設定されていることを特徴とする永久磁石回転機、
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の永久磁石回転機であって、第1の磁石挿入孔と第2の磁石挿入孔の組が多層に設けられていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項8】
請求項7に記載の永久磁石回転機であって、各層の第1の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁は、第1の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成され、各層の第2の磁石収容孔の外側の壁と内側の壁は、第2の曲率中心点を中心とする円弧形状に形成されていることを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の永久磁石回転機であって、
第1の磁石収容孔に収容される第1の永久磁石の磁気配向方向は、第1の永久磁石が第1の磁石収容孔に収容されている状態で軸方向と直交する断面で見て、中央部では、第1の磁石収容孔の外側の壁に対向する外側の面より外側の、第1の永久磁石の中央部の配向中心点に収束し、端部では、第1の永久磁石の中央部の配向中心点よりも遠方の、第1の永久磁石の端部の配向中心点に収束しており、
第2の磁石収容孔に収容される第2の永久磁石の磁気配向方向は、第2の永久磁石が第2の磁石収容孔に収容されている状態で軸方向と直交する断面で見て、中央部では、第2の磁石収容孔の外側の壁に対向する外側の面より外側の、第2の永久磁石の中央部の配向中心点に収束し、端部では、第2の永久磁石の中央部の配向中心点よりも遠方の、第2の永久磁石の端部の配向中心点に収束している
ことを特徴とする永久磁石回転機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の永久磁石回転機であって、第1の外周ブリッジ部および第2の外周ブリッジ部には、孔あるいは外方向に凹状の切欠部が形成されていることを特徴とする永久磁石回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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