永久磁石界磁形ブラシレスモータ
【課題】永久磁石ロータを有する永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、モータ本体の発生するトルクリップルを少なくするため、永久磁石ロータと同軸に変動トルク相殺用永久磁石ロータを設置した。
【解決手段】ロータ磁極数2P(Pは磁極対数)の永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、永久磁石ロータと同軸に磁極数4PMの変動トルク相殺用永久磁石ロータを設置した。更に、前記永久磁石ロータの特定磁極の中心と、前記特定磁極と同極である前記相殺用永久磁石ロータの最寄り磁極の中心を±(180±20)°/2PMずらした。更に、前記相殺用永久磁石ロータの磁極ピッチに対応して前記ステータ部分に小歯を設けた。尚、前記磁極数4PMの相殺用永久磁石ロータは、歯数2PMの小歯を有するリラクタンス形ロータに代えても良い。
【解決手段】ロータ磁極数2P(Pは磁極対数)の永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、永久磁石ロータと同軸に磁極数4PMの変動トルク相殺用永久磁石ロータを設置した。更に、前記永久磁石ロータの特定磁極の中心と、前記特定磁極と同極である前記相殺用永久磁石ロータの最寄り磁極の中心を±(180±20)°/2PMずらした。更に、前記相殺用永久磁石ロータの磁極ピッチに対応して前記ステータ部分に小歯を設けた。尚、前記磁極数4PMの相殺用永久磁石ロータは、歯数2PMの小歯を有するリラクタンス形ロータに代えても良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石界磁形ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石界磁形ブラシレスモータは、OA機器やFA機器に広く用いられているが、回転むらの低減が重要な課題となることが多い。
【0003】
ブラシレスモータの回転むら低減法としては、従来、大きく分けて2種類の方法が提案されている。
【0004】
1つは固定子巻線に流れる電流を制御する励磁方法等の改善による方法、すなわち、制御によって回転むらを減少させる方法が多数開示されている。例えば、特許文献1, 特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5が挙げられる。
【0005】
しかしながらこれらの方法は、複雑な励磁制御回路を必要とするのみならず、特に周波数の高い回転むらに対しては十分な効果を得るのは困難な欠点がある。
【0006】
もう1つはモータ本体の改善による方法、例えば、アウターロータ形のブラシレスモータに対して、ロータの着磁波形を台形波にし、しかもスキューする方法(特許文献6)やアキシャルギャプ形の永久磁石界磁形ブラシレスモータに対して、コイル側にマグネット片を取り付け、これとロータマグネットとの間に発生する磁気的吸引反発力を利用して変動トルクを相殺する方法(特許文献7)等が示されている。
【0007】
しかしながら、このような、本体の改善による方法も、ブラシレスモータのタイプや、回転むらの発生原因によって、個々に改善策が求められる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−146087
【特許文献2】特開平08−275439
【特許文献3】特開平07−143345
【特許文献4】特開2001−190083
【特許文献5】特開2004−201456
【特許文献6】特開2004−129486
【特許文献7】特開平05−227717
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来技術の欠点に鑑み、本発明においては固定子巻線に流れる電流の制御回路によらず、本体そのものがトルクリップルの少ない永久磁石界磁形ブラシレスモータを提供することを目的としている。
【0010】
ブラシレスモータにおいては、1回転中の位置検出回数が限られるため、ロータの位置によるトルク差が生じることになり、周期的なトルクリップルを発生し、これにより回転むらが生じる。例えば、図1に示すロータ磁極数が2のブラシレスモータについて、ロータ位置により発生トルクに変動が生じることを説明する。図1において、ステータ磁界がθ=120°の位置にあるときに、ロータはθ=0°の位置からθ=60°の位置まで回転することになる。この回転区間において、ロータに発生するトルクはθの関数となりトルクの変動を生じる。このトルクリップルは図2に示すように、負荷電流により大きさが異なり、また1回転中のトルクリップルの回数は、ロータ磁極数が大きくなるにつれて増大するため、制御による方法をもってしても除去することは困難なように思われる。本発明は、このようなトルクリップルを低減し、回転むらの少ない永久磁石界磁形ブラシレスモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
磁極数2P(Pは磁極対数)を有する永久磁石ロータと相数Mの電機子巻線を有するステータをもつブラシレスモータにおいて、例えば、3相120°通電方式の場合には、通常、ロータが1磁極ピッチ間隔(電気角360°)回転する間に、6回励磁が切り替わることになるので、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの場合には、1回転中にトルク変動は6P回生じることになる。
【0012】
本発明は、ロータの位置によってトルクが変動するこのトルクリップルに対して、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの一部を、磁極数12Pをもつ永久磁石ロータに置き換え、これとステータ間に発生するトルクで、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータに発生するトルク変動を打ち消す、または磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの一部を歯数が6P個のリラクタンス形ロータに置き換え、それに発生するリラクタンストルクによって、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータに発生するトルク変動を打ち消すことによって、トルク変動を抑制しようとするものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明による永久磁石界磁形ブラシレスモータは、ロータ磁極数2Pを有する永久磁石ロータと磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置したもので永久磁石ロータに発生するトルク変動を効果的に打ち消すことが出来る。
【0014】
また、この磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータと同等の機能を持つ歯数2PMを有するリラクタンス形ロータを同軸上に設置しても同様にトルク変動を効果的に打ち消すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態を図3乃至図14を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図3は永久磁石界磁ロータRm及びステータSを有するラジアルギャップ形の永久磁石界磁ブラシレスモータに本発明を適用した例を示す。ステータSの磁極U1, V1, W1, U2, V2, W3には図4に示すごとく3相の電機子巻線LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2が巻かれている。
【0017】
本発明のラジアルギャップ形の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいては、磁極数2PをもつロータRmに、図5に示すように6×(2P)=12Pの磁極数をもつロータRsを同軸に設置する。
【0018】
図3に示す本発明のラジアルギャップ形永久磁石界磁ブラシレスモータにおける切断面X1−X1'の構造を、ロータRmについては図6(A)に、ステータSについては
図7(A)に示す。また、当該永久磁石界磁ブラシレスモータの切断面X2−X2'の構造を、ロータRsについては図6(B)に、ステータSについては図7(B)に示す。
【0019】
ロータRmとロータRsは図6(A)および(B)に示すように、ロータRmのN極の点線で示す中心位置(θ=0°)と、その中心位置(θ=0°)に最も近いロータRsのN極の中心位置とが互いに(30°/P)または(θ=―30°/P)ずれて配置されている。
【0020】
また、ロータRsに対応するステータSの部分のステータ磁極には、図7(B)のように小歯をもたせている。これは、ロータRsの磁極数が大きくなるため、ステータ磁極を図7(A)のままにすると、ステータの1磁極中にロータRsの何組ものN−S両磁極が含まれることになり、ロータRsからの磁力が打ち消されることになるからである。
図7(B)の小歯のピッチは、ロータRsの磁極ピッチ(電気角360°)と等しくし、ステータ磁極U1とU2磁極の小歯に対向するロータRsの磁極の極性は、図8(A)、(B)に示すように、異極となるようにしてあり、変動トルクの低減効果を高めている。
【0021】
次に、永久磁石界磁ブラシレスモータに本発明を適用した別の実施例を示す。
【0022】
ステータは上記実施例と同一であるが、磁極数2Pをもつロータの一部を、図9に示すように、磁極をもたずに6P個の歯をもつリラルタンス形のロータRs'に置き換える(元のロータ部分をRm、6P個の歯数をもつロータ部分をRs'で示す)。このとき、図3の切断面X2−X2'の構造は図10に示すようになる。
【0023】
ロータRmとロータRs'は図11に示すように、近接するロータRmの磁極とロータRsの歯の中心位置とが互いに(30°/P)または( ― 30°/P)ずれて配置されている。
【0024】
また、ロータRsに対向するステータ磁極には図7(B)のように小歯をもたせ、
図12のように、小歯間の間隔をロータRs'の歯ピッチ(電気角360°)と等しくしている。これは、前期ロータRsの場合と同様に、ロータRs'の歯数が大きくなっても、一つのステータ磁極の中に複数個のロータRs'の歯が含まれないようにして、変動トルクの低減効果を高めるためである。
【0025】
つぎに、図1(ロータ磁極数2P=2の場合)を参照して、永久磁石界磁形ブラシレスモータのトルク変動を求め、本発明の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいては、トルク変動が抑えられる理由を説明する。
【0026】
図1に示す永久磁石界磁ブラシレスモータには、図13に示す回路により、電機子巻線
LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2に3相電流が流れる。図において、Tr1, Tr2, Tr3, Tr4, Tr5, Tr6は3相電流を流すように制御するトランジスタ、D1, D2,D3,D4, D5, D6はダイオードを示す。
【0027】
ステータの合成磁界がθ=120°の位置にあるとき、ロータRmはθ=0°からθ=60°まで移動することになる。このとき、ロータRmに発生するトルクは最大値を1とすると、
と表されるから、最大トルクは1、最小トルクは
となり、トルク変動が生じることになる。 そこで、ロータRsが発生する脈動トルクの振幅が
となるようにロータRsの界磁の強さを選んだとすると、ロータRsの発生トルクは
となる。
【0028】
このような関係が磁界の移動に伴って60°(電気角)周期で繰り返されることになるので、ロータRmの変動分トルク、ロータRsの発生トルク、および両者を合成した変動トルクは図10のようになり、変動トルクの振幅はロータRmが発生する変動分トルクの0.0401/0.134=0.3倍に減少することになる。
【0029】
また、負荷変化により、電機子電流が変化してトルク変動の大きさが変化した場合でも、同時にロータRsによる発生トルクも電流とともに変化するため、この場合にもトルクリップルが最も抑制される条件は満たされることになる。
【0030】
一般的には、磁極数2Pを有する永久磁石ロータと相数Mの電機子巻線を有するステータをもつブラシレスモータにおいては、該永久磁石ロータに磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置し、ロータRmとロータRsが、それぞれ近接する同極磁極の中心位置が互いに(180°/2PM)または(−180°/2PM)ずれて配置させることにより、図14の関係が得られ、両者の合成変動トルクの振幅はロータRmが発生する変動分トルクの0.0401/0.134=0.3倍に減少することになる。これにより、トルク変動の少ないブラシレスモータが得られることになる。
上記の(180°/2PM)は、M=3の場合、ロータRmとロータRsのずれは
(30°/P)となり、図6および図11に示す場合の一般式であることがわかる。
【0031】
実用的には、RmとRsのずれ角、およびRmとRs'とのずれ角を、
程度に選べば、変動トルクの低減効果は十分期待される。
【0032】
このように、本発明になる永久磁石界磁形ブラシレスモータは、トルク変動を効果的に打ち消すことが出来るので、回転むらが極めて少ないことを要求されるOA機器やFA機器に広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の永久磁石界磁形ブラシレスモータにおけるロータの位置によるトルク変動発生の説明図。
【図2】従来の永久磁石界磁形ブラシレスモータにおけるロータの位置によるトルク変動とその巻線電流による影響。
【図3】本発明における1実施例としての永久磁石界磁ブラシレスモータの断面図。
【図4】図3に示す永久磁石界磁ブラシレスモータにおけるステータの電機子巻線を示す図。
【図5】図3に示す永久磁石界磁ブラシレスモータにおけるロータ構造を示す図。
【図6】図5のロータRmとロータRsを接続する際の互いの磁極位置関係を説明する図。
【図7】図5のロータRmに対向するステータコアSを示す図(図7(A))と、図5のロータRsに対向するステータコアSを示す図(図7(B))。
【図8】図7(B)のステータ磁極中にある小歯のピッチとロータRsの磁極ピッチの関係およびステータ磁極U1、U2の小歯に対向するロータRsの磁極の極性の関係を示す図。
【図9】本発明による他の実施例としての永久磁石界磁ブラシレスモータのロータの説明図。
【図10】図9のロータRs'部分のロータコアを示す図。
【図11】図9のロータRm(図11(A))とロータRs'(図11(B)) を接続する際の互いの歯の位置関係を示す図。
【図12】図7(B)のステータ磁極中にある小歯のピッチとロータRs'の歯ピッチの関係を示す図。
【図13】本発明における永久磁石界磁ブラシレスモータの3相駆動回路。
【図14】本発明における永久磁石界磁ブラシレスモータのロータRmとロータRsまたはRs'が発生するトルクの関係、および合成トルクを説明する図。
【符号の説明】
【0034】
R、Rs、Rs'…ロータ、S…ステータ、U1, V1, W1, U2, V2, W3…ステータSの磁極、LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2…電機子巻線。
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石界磁形ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石界磁形ブラシレスモータは、OA機器やFA機器に広く用いられているが、回転むらの低減が重要な課題となることが多い。
【0003】
ブラシレスモータの回転むら低減法としては、従来、大きく分けて2種類の方法が提案されている。
【0004】
1つは固定子巻線に流れる電流を制御する励磁方法等の改善による方法、すなわち、制御によって回転むらを減少させる方法が多数開示されている。例えば、特許文献1, 特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5が挙げられる。
【0005】
しかしながらこれらの方法は、複雑な励磁制御回路を必要とするのみならず、特に周波数の高い回転むらに対しては十分な効果を得るのは困難な欠点がある。
【0006】
もう1つはモータ本体の改善による方法、例えば、アウターロータ形のブラシレスモータに対して、ロータの着磁波形を台形波にし、しかもスキューする方法(特許文献6)やアキシャルギャプ形の永久磁石界磁形ブラシレスモータに対して、コイル側にマグネット片を取り付け、これとロータマグネットとの間に発生する磁気的吸引反発力を利用して変動トルクを相殺する方法(特許文献7)等が示されている。
【0007】
しかしながら、このような、本体の改善による方法も、ブラシレスモータのタイプや、回転むらの発生原因によって、個々に改善策が求められる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−146087
【特許文献2】特開平08−275439
【特許文献3】特開平07−143345
【特許文献4】特開2001−190083
【特許文献5】特開2004−201456
【特許文献6】特開2004−129486
【特許文献7】特開平05−227717
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来技術の欠点に鑑み、本発明においては固定子巻線に流れる電流の制御回路によらず、本体そのものがトルクリップルの少ない永久磁石界磁形ブラシレスモータを提供することを目的としている。
【0010】
ブラシレスモータにおいては、1回転中の位置検出回数が限られるため、ロータの位置によるトルク差が生じることになり、周期的なトルクリップルを発生し、これにより回転むらが生じる。例えば、図1に示すロータ磁極数が2のブラシレスモータについて、ロータ位置により発生トルクに変動が生じることを説明する。図1において、ステータ磁界がθ=120°の位置にあるときに、ロータはθ=0°の位置からθ=60°の位置まで回転することになる。この回転区間において、ロータに発生するトルクはθの関数となりトルクの変動を生じる。このトルクリップルは図2に示すように、負荷電流により大きさが異なり、また1回転中のトルクリップルの回数は、ロータ磁極数が大きくなるにつれて増大するため、制御による方法をもってしても除去することは困難なように思われる。本発明は、このようなトルクリップルを低減し、回転むらの少ない永久磁石界磁形ブラシレスモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
磁極数2P(Pは磁極対数)を有する永久磁石ロータと相数Mの電機子巻線を有するステータをもつブラシレスモータにおいて、例えば、3相120°通電方式の場合には、通常、ロータが1磁極ピッチ間隔(電気角360°)回転する間に、6回励磁が切り替わることになるので、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの場合には、1回転中にトルク変動は6P回生じることになる。
【0012】
本発明は、ロータの位置によってトルクが変動するこのトルクリップルに対して、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの一部を、磁極数12Pをもつ永久磁石ロータに置き換え、これとステータ間に発生するトルクで、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータに発生するトルク変動を打ち消す、または磁極数2Pをもつ永久磁石ロータの一部を歯数が6P個のリラクタンス形ロータに置き換え、それに発生するリラクタンストルクによって、磁極数2Pをもつ永久磁石ロータに発生するトルク変動を打ち消すことによって、トルク変動を抑制しようとするものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明による永久磁石界磁形ブラシレスモータは、ロータ磁極数2Pを有する永久磁石ロータと磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置したもので永久磁石ロータに発生するトルク変動を効果的に打ち消すことが出来る。
【0014】
また、この磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータと同等の機能を持つ歯数2PMを有するリラクタンス形ロータを同軸上に設置しても同様にトルク変動を効果的に打ち消すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態を図3乃至図14を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図3は永久磁石界磁ロータRm及びステータSを有するラジアルギャップ形の永久磁石界磁ブラシレスモータに本発明を適用した例を示す。ステータSの磁極U1, V1, W1, U2, V2, W3には図4に示すごとく3相の電機子巻線LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2が巻かれている。
【0017】
本発明のラジアルギャップ形の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいては、磁極数2PをもつロータRmに、図5に示すように6×(2P)=12Pの磁極数をもつロータRsを同軸に設置する。
【0018】
図3に示す本発明のラジアルギャップ形永久磁石界磁ブラシレスモータにおける切断面X1−X1'の構造を、ロータRmについては図6(A)に、ステータSについては
図7(A)に示す。また、当該永久磁石界磁ブラシレスモータの切断面X2−X2'の構造を、ロータRsについては図6(B)に、ステータSについては図7(B)に示す。
【0019】
ロータRmとロータRsは図6(A)および(B)に示すように、ロータRmのN極の点線で示す中心位置(θ=0°)と、その中心位置(θ=0°)に最も近いロータRsのN極の中心位置とが互いに(30°/P)または(θ=―30°/P)ずれて配置されている。
【0020】
また、ロータRsに対応するステータSの部分のステータ磁極には、図7(B)のように小歯をもたせている。これは、ロータRsの磁極数が大きくなるため、ステータ磁極を図7(A)のままにすると、ステータの1磁極中にロータRsの何組ものN−S両磁極が含まれることになり、ロータRsからの磁力が打ち消されることになるからである。
図7(B)の小歯のピッチは、ロータRsの磁極ピッチ(電気角360°)と等しくし、ステータ磁極U1とU2磁極の小歯に対向するロータRsの磁極の極性は、図8(A)、(B)に示すように、異極となるようにしてあり、変動トルクの低減効果を高めている。
【0021】
次に、永久磁石界磁ブラシレスモータに本発明を適用した別の実施例を示す。
【0022】
ステータは上記実施例と同一であるが、磁極数2Pをもつロータの一部を、図9に示すように、磁極をもたずに6P個の歯をもつリラルタンス形のロータRs'に置き換える(元のロータ部分をRm、6P個の歯数をもつロータ部分をRs'で示す)。このとき、図3の切断面X2−X2'の構造は図10に示すようになる。
【0023】
ロータRmとロータRs'は図11に示すように、近接するロータRmの磁極とロータRsの歯の中心位置とが互いに(30°/P)または( ― 30°/P)ずれて配置されている。
【0024】
また、ロータRsに対向するステータ磁極には図7(B)のように小歯をもたせ、
図12のように、小歯間の間隔をロータRs'の歯ピッチ(電気角360°)と等しくしている。これは、前期ロータRsの場合と同様に、ロータRs'の歯数が大きくなっても、一つのステータ磁極の中に複数個のロータRs'の歯が含まれないようにして、変動トルクの低減効果を高めるためである。
【0025】
つぎに、図1(ロータ磁極数2P=2の場合)を参照して、永久磁石界磁形ブラシレスモータのトルク変動を求め、本発明の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいては、トルク変動が抑えられる理由を説明する。
【0026】
図1に示す永久磁石界磁ブラシレスモータには、図13に示す回路により、電機子巻線
LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2に3相電流が流れる。図において、Tr1, Tr2, Tr3, Tr4, Tr5, Tr6は3相電流を流すように制御するトランジスタ、D1, D2,D3,D4, D5, D6はダイオードを示す。
【0027】
ステータの合成磁界がθ=120°の位置にあるとき、ロータRmはθ=0°からθ=60°まで移動することになる。このとき、ロータRmに発生するトルクは最大値を1とすると、
と表されるから、最大トルクは1、最小トルクは
となり、トルク変動が生じることになる。 そこで、ロータRsが発生する脈動トルクの振幅が
となるようにロータRsの界磁の強さを選んだとすると、ロータRsの発生トルクは
となる。
【0028】
このような関係が磁界の移動に伴って60°(電気角)周期で繰り返されることになるので、ロータRmの変動分トルク、ロータRsの発生トルク、および両者を合成した変動トルクは図10のようになり、変動トルクの振幅はロータRmが発生する変動分トルクの0.0401/0.134=0.3倍に減少することになる。
【0029】
また、負荷変化により、電機子電流が変化してトルク変動の大きさが変化した場合でも、同時にロータRsによる発生トルクも電流とともに変化するため、この場合にもトルクリップルが最も抑制される条件は満たされることになる。
【0030】
一般的には、磁極数2Pを有する永久磁石ロータと相数Mの電機子巻線を有するステータをもつブラシレスモータにおいては、該永久磁石ロータに磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置し、ロータRmとロータRsが、それぞれ近接する同極磁極の中心位置が互いに(180°/2PM)または(−180°/2PM)ずれて配置させることにより、図14の関係が得られ、両者の合成変動トルクの振幅はロータRmが発生する変動分トルクの0.0401/0.134=0.3倍に減少することになる。これにより、トルク変動の少ないブラシレスモータが得られることになる。
上記の(180°/2PM)は、M=3の場合、ロータRmとロータRsのずれは
(30°/P)となり、図6および図11に示す場合の一般式であることがわかる。
【0031】
実用的には、RmとRsのずれ角、およびRmとRs'とのずれ角を、
程度に選べば、変動トルクの低減効果は十分期待される。
【0032】
このように、本発明になる永久磁石界磁形ブラシレスモータは、トルク変動を効果的に打ち消すことが出来るので、回転むらが極めて少ないことを要求されるOA機器やFA機器に広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の永久磁石界磁形ブラシレスモータにおけるロータの位置によるトルク変動発生の説明図。
【図2】従来の永久磁石界磁形ブラシレスモータにおけるロータの位置によるトルク変動とその巻線電流による影響。
【図3】本発明における1実施例としての永久磁石界磁ブラシレスモータの断面図。
【図4】図3に示す永久磁石界磁ブラシレスモータにおけるステータの電機子巻線を示す図。
【図5】図3に示す永久磁石界磁ブラシレスモータにおけるロータ構造を示す図。
【図6】図5のロータRmとロータRsを接続する際の互いの磁極位置関係を説明する図。
【図7】図5のロータRmに対向するステータコアSを示す図(図7(A))と、図5のロータRsに対向するステータコアSを示す図(図7(B))。
【図8】図7(B)のステータ磁極中にある小歯のピッチとロータRsの磁極ピッチの関係およびステータ磁極U1、U2の小歯に対向するロータRsの磁極の極性の関係を示す図。
【図9】本発明による他の実施例としての永久磁石界磁ブラシレスモータのロータの説明図。
【図10】図9のロータRs'部分のロータコアを示す図。
【図11】図9のロータRm(図11(A))とロータRs'(図11(B)) を接続する際の互いの歯の位置関係を示す図。
【図12】図7(B)のステータ磁極中にある小歯のピッチとロータRs'の歯ピッチの関係を示す図。
【図13】本発明における永久磁石界磁ブラシレスモータの3相駆動回路。
【図14】本発明における永久磁石界磁ブラシレスモータのロータRmとロータRsまたはRs'が発生するトルクの関係、および合成トルクを説明する図。
【符号の説明】
【0034】
R、Rs、Rs'…ロータ、S…ステータ、U1, V1, W1, U2, V2, W3…ステータSの磁極、LU1,LV1,LW1,LU2,LV2,LW2…電機子巻線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ磁極数2Pを有する永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該永久磁石ロータに磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記永久磁石ロータの特定の磁極の中心と、該特定の磁極と同極である前記変動トルク相殺用永久磁石ロータの最寄りの磁極の中心が±(180±20)°/2PMずれるように構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記M相電機子巻線が3相の場合、該変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極数が12Pとなるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極対数2PMは1回転中に発生するトルク変動数と等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該変動トルク相殺用永久磁石ロータに対応する該ステータ部分に小歯を設け、該小歯の間隔を該変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極ピッチに等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項6】
磁極数2Pを有する永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久界磁ブラシレスモータにおいて、
該永久磁石ロータに歯数2PMの小歯を有するリラクタンス形ロータを同軸上に設置したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記永久磁石ロータの特定の磁極の中心と、該リラクタンス形ロータの最寄りの小歯の中心が±(180±20)°/2PMずれるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記M相電機子巻線が3相の場合、該リラクタンス形ロータの歯数が6Pであるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該リラクタンス形ロータの歯数2PMは1回転中に発生するトルク変動数と等しくなるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項10】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該リラクタンス形ロータに対応する該ステータの磁極部分に小歯をもうけ、該小歯の間隔を該リラクタンス形ロータの小歯の間隔に等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項1】
ロータ磁極数2Pを有する永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該永久磁石ロータに磁極数4PMを有する変動トルク相殺用永久磁石ロータを同軸上に設置したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記永久磁石ロータの特定の磁極の中心と、該特定の磁極と同極である前記変動トルク相殺用永久磁石ロータの最寄りの磁極の中心が±(180±20)°/2PMずれるように構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記M相電機子巻線が3相の場合、該変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極数が12Pとなるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極対数2PMは1回転中に発生するトルク変動数と等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該変動トルク相殺用永久磁石ロータに対応する該ステータ部分に小歯を設け、該小歯の間隔を該変動トルク相殺用永久磁石ロータの磁極ピッチに等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項6】
磁極数2Pを有する永久磁石ロータとM相電機子巻線を有するステータからなる永久界磁ブラシレスモータにおいて、
該永久磁石ロータに歯数2PMの小歯を有するリラクタンス形ロータを同軸上に設置したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記永久磁石ロータの特定の磁極の中心と、該リラクタンス形ロータの最寄りの小歯の中心が±(180±20)°/2PMずれるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
前記M相電機子巻線が3相の場合、該リラクタンス形ロータの歯数が6Pであるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項9】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該リラクタンス形ロータの歯数2PMは1回転中に発生するトルク変動数と等しくなるよう構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【請求項10】
請求項6記載の永久磁石界磁ブラシレスモータにおいて、
該リラクタンス形ロータに対応する該ステータの磁極部分に小歯をもうけ、該小歯の間隔を該リラクタンス形ロータの小歯の間隔に等しく構成したことを特徴とする永久磁石界磁ブラシレスモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−221955(P2007−221955A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41893(P2006−41893)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】
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