説明

汎用かつら、かつらの装着方法及びカスタマイズかつら

【課題】弱い接着剤を用いるにもかかわらず、皮膚に面状接着させることを可能としこれにより確実に装着すること。
【解決手段】ベース3は極薄かつ透湿性のフィルム状素材からなる。ヘア材5は植付け基端となる根部7をベースの一面に密着させて設ける。第1粘着層11は粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なる性質の粘着剤からなる。第2粘着層15は粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なる性質の粘着剤からなる。タンク層13はベースと同一のフィルム状素材からなる。第1粘着層と第2粘着層とをタンク層を介して隣り合わせに設ける。第1剥離層17は第2粘着層の皮膚へ装着される側の全部の面に剥離可能に貼付され、第2剥離層18は上記第1粘着層と上記タンク層の間の一部の面に積層されるとともに第1粘着層に剥離可能に貼付される。上記各層の順に積層され平面状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、かつらの分野、とくに汎用かつら、かつらの装着方法及びカスタマイズかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
かつらとくに頭部に着用するかつらは毎日使用するものであるため、経時的に劣化する。
【0003】
一般に普及している手作業の植付けにより製造されたかつらは価格が数十万円と非常に高価であるため、例えば変色や腰折れ等経時的に多少劣化してもそのまま使用することが多い。このため、ただでさえ着用することにコンプレックスのあるユーザにとって、劣化するとかつらであることが判明し易くなるので、さらに着用に抵抗となっていた。
【0004】
そこで、本願出願人が提案し、商品化にこぎつけた使い捨てをすることができるかつらが我が国だけでなく海外でも好評を博している。
【0005】
この使い捨てかつらとしては、例えば特許第4009910号がある。
特許文献1によるかつら30は図20(A)に示すような構成となっており、ヘア材31の根部35が極薄ベース33の一面に大きく突出され、この根部35の内側とベース33との間を紫外線(UV)硬化剤からなる接着剤34で強固に固定し、その外側に粘着層37を設けていた。
【0006】
この粘着層37は粘着力が比較的強くかつ硬い性質の粘着剤からなり、皮膚に装着したとき不測に剥離しないように構成されていた。
【0007】
また図20(B)に示すように、皮膚20に装着したとき、矢示の如き光の乱反射によるベースのてかり防止、ベース方向への押圧力Fによるヘア材の抜け防止を奏すべく、根部35と他部との間に形成された凹凸38、39が反転する反転現象を惹起するように構成されていた。しかしながら、かかることの結果、皮膚20との接着は、正確には点接着Sとされていた(図18参照)。
【0008】
また着用後の取り外しにおいて、図21に示すように、強い粘着力のため、非常に多くの皮膚20の角質層21が剥離してしまうという難があった。
【0009】
角質層21の剥離を防止するには、粘着力の比較的弱い粘着剤(以下、「弱い粘着剤」と略称する)を用いるのが効果的であり、本願発明者もこれを試みた。しかしながら、粘着力の比較的強い粘着剤(以下、「強い粘着剤」と略称する)の上に弱い粘着剤を重ねると、弱い粘着剤の粘着力も強力になってしまい、問題の解決にならないことが判明した。
【0010】
また、点接着に関しては、皮膚20との接着を面状接着とすることによる解決が期待できるところ、この面状接着とするためには、第1粘着層と第2粘着層との間に介在させる層の厚さを比較的厚くすれば根部の突出を吸収できる期待がある。しかしながら、介在層を厚くすると、かつら全体の厚さが大となるため、とくに生際がかつら然となり、見栄えが極端に悪化する難がある。
【0011】
また、強い粘着剤の場合は、剥離された粘着層の粘着面に付着された角質層21を除去することが実質上できない難がある。
【0012】
さらに強い粘着剤を用いたかつらの場合は、皮膚20に該強い粘着剤を残存させてしまうリスクがあり、また着用をユーザが自ら行うとき、粘着剤の粘着力が強力であるためベースが縮み、所望の部位に上手く被着させることが困難な場合があった。
【0013】
このようにかつらの場合は製品厚による制約があるため、粘着力と面状接着の点で相反するような関係にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4009910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は上記のような背景において、皮膚にやさしい弱い接着剤を用いるにもかかわらず、皮膚に面状接着させることを可能とし、これにより確実に装着することができ、また一旦特定ユーザの頭部形状にカスタマイズされると、頭部への装着がジャストフィットされるような、2次元形状に形成された汎用かつら及びかつらの装着方法を供すること並びにジャストフィット性のあるカスタマイズかつらを供することを目的とする。
【0016】
また、かつらの装着作業がより正確にかつより迅速に行なうことができる汎用かつら、かつらの装着方法及びジャストフィット性のあるカスタマイズかつらを供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的達成のため、本願発明による汎用かつらは、ベースと、該ベースに植え付けられたヘア材と、該ヘア材の根部側の面の全部に形成される第1粘着層と、タンク層と、皮膚に接着される第2粘着層と、第1剥離層と、第2剥離層とからなり、上記ベースは極薄かつ透湿性のフィルム状素材からなり、上記ヘア材は植付け基端となる根部を上記ベースの一面に密着させて設けるとともに、自由端部を他面側に現出させ、上記第1粘着層は粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なる性質の粘着剤からなり、上記第2粘着層は粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なる性質の粘着剤からなり、上記タンク層は上記ベースと同一のフィルム状素材からなり、上記第1粘着層と上記第2粘着層とを上記タンク層を介して隣り合わせに設け、第1剥離層は上記第2粘着層の皮膚へ装着される側の全部の面に剥離可能に貼付され、第2剥離層は上記第1粘着層と上記タンク層の間の一部の面に積層されるとともに上記第1粘着層に剥離可能に貼付され、上記ベース、上記第1粘着層、上記第2剥離層、タンク層、第2粘着層及び上記第1剥離層の順に積層され実質的に2次元形状の多層構造体として形成されることを特徴とする。
また、請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記第2剥離層が上記第1粘着層の後半部に形成されることを特徴とする。
また、請求項1又は請求項2記載の汎用かつらにおいて、上記ヘア材は自由端部を引張状態において上記ベースに植え付けられることを特徴とする。
また、請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記第1粘着層の粘着力は上記第2粘着層の粘着力の約5倍程度であることを特徴とする。
また、請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記ヘア材は上記ベースにランダムに植え付けられることを特徴とする。
また、本願発明によるかつらの装着方法は、第2剥離層が積層されている部分(以下、「積層部位」という)に対応する第1剥離層を剥して露出された第2粘着層を頭部の該当部位に貼付するステップと、残余の第1剥離層を剥して上記積層部位以外の部分の第2粘着層を頭部に貼付するステップと、上記積層部位に対応する第2粘着層に1次シワ付けをするステップと、該1次シワ付けされた部分を隣接部分に接着するステップと、第2剥離層を剥して第1粘着層の上記積層部位を露出するステップと、上記第2粘着層の全部が頭部に貼付された状態で2次シワ付けをするステップと、上記2次シワ付けされた状態のままで上記第1粘着層をタンク層の上に貼付するステップと、上記2次シワ付けされた部分を根本付近から切除するステップとからなることを特徴とする。
また、本願発明によるカスタマイズかつらは、ベースと、該ベースに植え付けられたヘア材と、該ヘア材の根部側の面の全部に形成される第1粘着層と、タンク層と、皮膚に接着される第2粘着層と、第1剥離層と、第2剥離層とからなり、上記ベースは極薄かつ透湿性のフィルム状素材からなり、上記ヘア材は植付け基端となる根部を上記ベースの一面に密着させて設けるとともに、自由端部を他面側に現出させ、上記第1粘着層は粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なる性質の粘着剤からなり、上記第2粘着層は粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なる性質の粘着剤からなり、上記タンク層は上記ベースと同一のフィルム状素材からなり、上記第1粘着層と上記第2粘着層とを上記タンク層を介して隣り合わせに設け、第1剥離層は上記第2粘着層の皮膚へ装着される側の全部の面に剥離可能に貼付され、第2剥離層は上記第1粘着層と上記タンク層の間の一部の面に積層されるとともに上記第1粘着層に剥離可能に貼付され、上記ベース、上記第1粘着層、上記第2剥離層、タンク層、第2粘着層及び上記第1剥離層の順に積層され実質的に2次元形状の多層構造体として形成され、上記タンク層に1次シワ付けにより1次シワが形成され、該1次シワが隣接部分に接着され、上記第1粘着層に2次シワ付けにより2次シワが形成され、該2次シワが根本付近から切除されることを特徴とする。
また、請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記第2剥離層が上記第1粘着層の後半部に形成されることを特徴とする。
また、請求項7又は請求項8記載のカスタマイズかつらにおいて、上記ヘア材は自由端部を引張状態において上記ベースに植え付けられることを特徴とする。
また、請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記第1粘着層の粘着力は上記第2粘着層の粘着力の約5倍程度であることを特徴とする。
また、請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記ヘア材は上記ベースにランダムに植え付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によるかつらは、一旦特定ユーザの頭部形状にカスタマイズされると、頭部への装着が第2粘着層の粘着力によるだけでなく、多層構造体が頭部へ嵌着状態となるため、この物理的な力も装着に寄与する。よって第2粘着層の粘着力が比較的弱くても、また装着面に多少のうぶ毛があっても、確実に装着することができ、不測の離脱を防止することができる。
【0019】
特定ユーザの頭部形状にカスタマイズするために行なうシワ付けが1次と2次の2段に分かれているため、カスタマイズ作業をより正確に、かつ、作業の単純化により迅速に行なうことができる。
【0020】
シワ付けが1次と2次の2段に分かれ、しかも「2次シワ付け」はシワ付けされた部分がカットされる(切除ステップ)ので、多層構造体の表面に不要部分の突出がない。よってベースフィルムにしわ発生による「寄れ」が生じないので、ベースに対する光の透過性が非常に良好となる。この結果、人体の皮膚とフィルムベースの見分けが困難となり、より自然な見映え感となる。また多層構造体の表面に不要部分の突出がないので、ヘア材の流れがしわにより変更されず一定となり、見映え感が一層良好となる。
【0021】
カスタマイズ後のかつらの装着は、皮膚への接着面を視認しながら動作することができるから、非常に装着が容易となる。
【0022】
本願発明によるかつらは何れのユーザにも対応する2次元形状の汎用かつらとして予め製造しておき、現場において特定ユーザの頭部形状にカスタマイズすることができるから、即日に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明による汎用かつらの実施の形態を示す背面図である。
【図2A】(A)は本願発明によるカスタマイズ前の汎用かつらの一部を拡大した断面図、(B)は(A)のB部を拡大した断面図である。
【図2B】(C)はカスタマイズ後のカスタマイズかつらの一部を拡大した断面図、(D)は(C)のD部を拡大した断面図である。
【図3】本願発明に使用するヘア材の横断面図である。
【図4】本願発明による汎用かつらの使用状態を示す平面図である。
【図5】本願発明による汎用かつらの作業工程を示す説明図である。
【図6】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第1ステップを示す。
【図7】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第1ステップを示す。
【図8】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第2ステップを示す。
【図9】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第2ステップを示す。
【図10】(A)は本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第3ステップを示す。(B)は(A)のB矢視拡大図である。
【図11】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第3ステップを示す。
【図12】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第4ステップを示す。
【図13】(A)は本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第5ステップ及び第6ステップを示す。(B)は(A)のB矢視拡大図である。
【図14】本願発明による汎用かつらの装着方法を示す図で、その第7ステップを示す。
【図15】本願発明によるカスタマイズかつらの効果の説明に使用する図で、前方からみた斜視図である。
【図16】本願発明によるカスタマイズかつらの効果の説明に使用する図で、後方からみた斜視図である。
【図17】本願発明による汎用かつらの効果の説明に使用する皮膚の概略拡大断面図である。
【図18】図17の対比例としての概略拡大断面図である。
【図19】本願発明による汎用かつらの効果の説明に使用する皮膚の一部を拡大した概略断面斜視図である。
【図20】(A)は従来の使い捨てかつらの一部を拡大した断面図、(B)は使用時の反転現象を示す一部拡大断面図である。
【図21】従来の汎用かつらの説明に使用する皮膚の一部を拡大した概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による汎用かつらをさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
本願発明による汎用かつら1は、ベース3と、該ベース3に植え付けられたヘア材5と、該ヘア材5の根部7を点状に固定する紫外線(UV)硬化剤9と、上記根部7の面即ち上記ベース3の裏面全面を上記紫外線(UV)硬化剤9の上から均等な厚さで形成される第1粘着層11と、該第1粘着層11の裏面全面に均等な厚さで形成されるタンク層13と、該タンク層13の裏面全面に均等な厚さで形成され頭部の皮膚20に接着される第2粘着層15と、剥離紙からなり上記第2粘着層15の裏面に剥離可能に貼付される第1剥離層17と、剥離紙からなり上記第1粘着層11の後半部の裏面に剥離可能に貼付される第2剥離層18とからなる。上記汎用かつら1は、上記ベース、上記第1粘着層11、上記第2剥離層18、タンク層13、第2粘着層15及び上記第1剥離層17の順に積層され、実質的に2次元形状の多層構造体として形成される。22は自毛である(図4に示す)。
【0026】
上記ベース3は、厚さT1が例えば約30μm程度の極薄かつ透湿性のフィルム状素材例えばポリウレタンからなる。上記ヘア材5は、ポリエステル繊維からなり、植付け基端となる根部7を上記ベース3の裏面に密着させて設け、上記ベース3の表面側に自由端部を現出させる。上記ヘア材5は上記ベース3にランダムに植え付けられる。上記根部7はベース3の1本分の太さだけ上記ベース3の裏面に突出してなる。
【0027】
ヘア材5の直径は、図3に示すように、D1が約0.04mm〜0.05mm、1対としたD2が約0.08mmである。
【0028】
上記第1粘着層11は、主成分がシリコンとアクリルとの混合からなる粘着剤であって、粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なるいわゆる硬い性質の粘着剤からなり、厚さT2が上記ベース3厚の倍の約60μmにて形成される。他方、上記第2粘着層15は主成分がシリコンとアクリルとの混合からなる粘着剤であって、粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なるいわゆる柔らかい性質の粘着剤からなり、厚さT4が上記第1粘着層11と同厚の約60μmにて形成される。
【0029】
具体的には、粘着力の程度(引きはがし粘着力)は、第1粘着層11で16.5N/20mm幅程度、第2粘着層15で3N/20mm幅程度である。この粘着力の測定値はJIS Z 0237第10項(粘着力)に準拠し試験板に対する粘着力をいうが、上記JISの粘着力では試験板をステンレス(SUS)板として測定するのに対し、本願発明ではベークライト板を試験板として測定する。「ゲル化」とは粘着剤の接着成分が半固体状に変化することをいい、具体的な指標は、JIS Z 0237第13項(保持力)を参考にするものの測定が困難であるので、第1粘着層11と第2粘着層15との相対評価とする。
【0030】
上記タンク層13は上記ベース3と同一のフィルム状素材例えばポリウレタンからなり、厚さT3が上記ベース3と同厚の約30μmにて、上記第1粘着層11と上記第2粘着層15との間に隣り合わせに積層され、サンドイッチ構造に接着されている。
【0031】
上記第1剥離層17はポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、第2粘着層15の皮膚20に接着される面に設けられる。
【0032】
上記第2剥離層18はポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、上記第1粘着層11と上記タンク層13との後半部に積層されるとともに、該第1粘着層11の後半部に剥離可能に貼付される。
【0033】
なお、人体の皮膚の角質層21は2週間毎に新陳代謝されると言われている。
【0034】
上記汎用かつら1が特定ユーザの頭部形状に合致したカスタマイズかつら2については、便宜上、装着方法の説明とともに説明する。
【0035】
本願発明によるかつらは、図4に示すように、自毛のない部分に適用されるとき、とくに効果を発揮する。
【0036】
次に本願発明による汎用かつら1の製造工程について説明する。ベース3に植え付けられたヘア材5に対し(図5(A))、供給ピン23により紫外線(UV)硬化剤9が点状に付与される(図5(B))。この紫外線(UV)硬化剤9の供給の際、ヘア材5を引張状態として根部7をベース3に密着させる。これにより上記紫外線(UV)硬化剤9は図5(C)に示すように略すべてが根部7の外側に喰み出た状態となり、この状態で根部7はベース3上に突出して固定される。
【0037】
次いで、強い粘着剤がベース3の全面に供給され、第1粘着層11が形成される。このとき、図2A(B)に示すように、ベース3上における根部7の突設状態は解消されていない。
【0038】
次いで、上記第1粘着層11の後半部に第2剥離層18が積層され、上記第1粘着層11に接着される(図2A(A)参照)。
【0039】
次いで、上記第1粘着層11及び上記第2剥離層18の全面にタンク層13が積層され、上記第1粘着層11に接着される(図2A(A)参照)。
【0040】
次いで、上記タンク層13の全面に弱い粘着剤が供給され、第2粘着層15が形成される。このとき、図2B(D)に示すように、根部7の突設状態は根部7の外側に順次積層された上記タンク層13及び上記第2粘着層15により略解消され、皮膚20に接する粘着面具体的には第2粘着層15が凹凸の殆どない面となる。このとき、第2剥離層18の積層部位に相当する部分が第1剥離層17の側に喰い込んだ状態となっている。
【0041】
上記汎用かつら1を装着し、特定ユーザにカスタマイズされたカスタマイズかつらとするには、次のステップにより行なう。
【0042】
まず第1剥離紙17の前半部17a(多層構造体の中央部より前半の部分に相当する第1剥離紙17の部分)を剥し(図6)、第2粘着層15の前半部15aを前頭部に貼付する(第1ステップ、図7)。
【0043】
次いで第1剥離紙17の後半部17b(多層構造体の中央部より後半の部分に相当する第1剥離紙17の部分)を剥し(図8)、第2粘着層15の後半部15bを露出状態として後頭部に貼付する(第2ステップ、図9)。
【0044】
この第2粘着層15の後半部15bを後頭部に貼付するとき、1次シワ付けをする(第3ステップ)。16は1次シワ付けにより形成された1次シワである(図10)。
【0045】
1次シワ付けは、2次元形状の多層構造体を特定ユーザの頭部形状に概略対応させた球面形状にするために行なう。1次しわ16は、タンク層13と第2粘着層15とからなる素材がぺらぺらの極薄であるため頭部形状に沿って自然に形成されるから、シワの個数は任意である。複数個のシワの場合は、図11に示すように、後頭部の全領域に生成されることを妨げない。
【0046】
1次シワ付けは、図10(B)に示すように、適宜部位の第2粘着層15及びタンク層13からなる積層体を起立させて拝み接着させ1次シワ16を形成し、該1次シワ16を寝かせて隣接する部分へ接着させ、この状態で第2粘着層15を頭皮20に貼付する(図11)。1次シワ付けは第2剥離層18が介在している部分、図示例の場合は後頭部の領域において行なわれる。
【0047】
次いで第2剥離層18を剥す(図12)。これにより第1粘着層11が露出状態となる(第4ステップ)。このとき、第2粘着層15及びタンク層13は頭部に貼付されたままである。この状態で「2次シワ付け」をする(第5ステップ、図13)。2次シワ付けはユーザの頭部形状に概略対応させ球面形状となっている多層構造体をユーザの頭部形状に正確に合致させるために行なう。これによりヘア材5の流れを正確につけることが可能となり、より自然な感じとなって見映え感が良好となる。
【0048】
2次シワ付けは、図13(B)に示すように、シワ付けされる第1粘着層11からなる積層体、即ち当該第1粘着層11と、これに接着されている根部7及びヘア材5を植え付けられたベース3とからなる積層体を起立させて拝み接着させ2次シワ19を形成する。
【0049】
該2次しわ19の箇数は1個又は複数箇とすることができる。単一個とする場合は後頭部の中央部付近が望ましく、複数箇とする場合は後頭部の両側に形成するのが望ましい。また2次シワ付けの部位は、1次シワ付けされた部位16と異なるところに形成するのが望ましい。
【0050】
次いで第1粘着層11を2次シワ付けされた状態のままタンク層13の上に貼付する(第6ステップ、図13(A)参照)。
【0051】
次いで、拝み接着された第1粘着層11等の上記積層体からなる2次シワ19がヘア材5を植え付けられたまま根本付近からカットされる(第7ステップ、図14)。なお、カットラインCを図13(B)に示す。
【0052】
これにより、かつらが特定ユーザの頭部形状に合致した3次元形状にカスタマイズされ、カスタマイズかつら2が形成される。
【0053】
本実施の形態によれば次の如き作用効果がある。
【0054】
<1.ジャストフィット性>
上記実施の形態によるかつらは、一旦特定ユーザの頭部形状にカスタマイズされると、頭部への装着が第2粘着層15の粘着力によるだけでなく、多層構造体が頭部へ嵌着状態となるため、この物理的な力も装着に寄与する。よって第2粘着層15の粘着力が比較的弱くても乃至多少弱くなっても、また装着面に多少のうぶ毛があっても、確実に装着することができ、不測の離脱を防止することができる。
【0055】
このジャストフィット性により第2粘着層15の粘着力を一層弱化させることができ、その分皮膚へ負担を減少することができる。
【0056】
特定ユーザの頭部形状にカスタマイズするために行なうシワ付けが1次と2次の2段に分かれているため、カスタマイズ作業をより正確に、かつ、作業の単純化により迅速に行なうことができる。
【0057】
特定ユーザの頭部形状にジャストフィットしているので、異音の発生、水、汚れ等の浸入等を防止し、使用感を大幅に改善し、また耐久性も良好とすることができる。
【0058】
<2.透過性効果等>
シワ付けが1次と2次の2段に分かれ、しかも「2次シワ付け」はシワ付けされた部分がカットされる(切除ステップ)ので、多層構造体の表面に不要部分の突出がない。よってベースフィルムにしわ発生による「寄れ」が生じないので、ベース3に対する光の透過性が非常に良好となる。この結果、人体の皮膚とフィルムベース3の見分けが困難となり、より自然な見映え感となる。
【0059】
また多層構造体の表面に不要部分の突出がないので、ヘア材5の流れがしわにより変更されず一定となり、見映え感が一層良好となる。
【0060】
シワ付けされたしわはカット処理され、ヘア材部分が突出しないので、しわがあると不可能であった短髪のかつらを作成することが可能となる。さらに特定のヘアスタイルに限定されないので、かつらのバリエーションが増加する。
【0061】
<3.ハンドリング>
2回目以降の装着、即ちカスタマイズかつら2の装着は、図15及び図16に示すように、かつらが3次元形状であるから多層構造体の中央部分4を下方に突出して行なうことになる。よって、皮膚への接着面を視認することができるから、非常に装着が容易となる。
【0062】
また多層構造体の中央部分4が下方に突出するから、ヘア材5が上方に上がることになり、装着時のヘア材5の巻込みを防止することができる。
【0063】
よってかつらの装着動作が容易かつ迅速となり、ハンドリング性が良好となる。
【0064】
<4.即応性>
従来のかつらにおいて、特定ユーザの頭部形状にカスタマイズするには、型取りをする工程、ベースを製造する工程、植毛をする工程等を経て早くても40日程度の日数を要していた。しかしながら、本願発明によるかつらは何れのユーザにも対応する2次元形状の汎用かつらとして予め製造しておき、現場において特定ユーザの頭部形状にカスタマイズすることができるから、即日に対応することができる。
【0065】
よって、納品の迅速性、コストの大幅低減に寄与する。
【0066】
<5.面状接着による粘着保持力>
まず、第2粘着層15はタンク層13の存在により略フラットな面となっている(図2B(C)参照)。しかも、タンク層13が透湿性のある素材からなるため、皮膚20に装着中発せられる汗等を吸収し、これにより根部による突出が益々軽減される。
【0067】
この結果、第2粘着層15が皮膚20に面状に接着することができ、弱い粘着剤であるにもかかわらず、粘着力が長期間保持される。
【0068】
この点につき、第2粘着層15中のゲル化成分は、汗中の水分が仮に第2粘着層15に移行すると、粘着剤の分子構造が破壊され、容易にゲル化されて粘着力が過度に強くなる。しかしながら本実施の形態によれば、タンク層13が第2粘着層15と第1粘着層11との間に介在することにより、上記ゲル化の移行が阻止されるから、弱い粘着力が長期間保持されるのである。
【0069】
顕微鏡的視点において、図17に示すように、皮膚20には若干の凹凸があるところ、上記面状接着をする面は極薄の多層構造体であるから、粘着面が皮膚20の凹凸面に対応して自在に密着されるので、装着される皮膚20の全面に接着することができる。
【0070】
よって皮膚20に接着される粘着剤の粘着力が比較的弱くても皮膚20の全面に接着しているから接着保持力が維持され、不測の脱落を防止することができる。この点につき、図18に示すように粘着層15’が皮膚20に点状にしか接着していないと接着保持力が維持されないので、従来のように粘着層15’の粘着力を比較的強くかつ硬い性質の粘着剤から構成しないと不測に脱落するおそれがある。しかしながら、粘着層15’の粘着力を比較的強くかつ硬い性質の粘着剤から構成すると、図21に示すように非常に多くの皮膚20の角質層21が剥離されてしまう。
【0071】
また汗等水分の存在は粘着力に悪影響を及ぼすところ、第2粘着層15に浸み込んでくる汗等はタンク層13に吸収されるため、第2粘着層15には汗等水分の影響が少なくなり粘着力が保持される。これによっても、比較的弱い粘着力しか有していない第2粘着層15による皮膚20への接着が維持される。
【0072】
かつらの取外しにおいて、皮膚20に接着される第2粘着層15の粘着力は比較的弱いので、図19に示すように皮膚20の角質層21は殆んど剥離されないで済む。
【0073】
また第2粘着層15の粘着力は比較的弱いので、層面に付着される角質層21も水洗いにより簡単に除去することができる。これにより粘着面の活性化を図ることができ、複数回(例えば30回程度)の繰返し使用を可能とする。
【0074】
<6.ハンドリングの容易性>
上記ベース3にはヘア材5が植え付けられており、このヘア材5が一種の芯材として作用する。しかも、第1粘着層11は、ヘア材5の植え付けられた上記ベース3と、該ベース3と同一のフィルム状素材からなるタンク層13により積層接着され、サンドイッチ構造となっている。よって比較的強い粘着力を有する第1粘着層11による縮減力を規制するので、ベース3がくしゃくしゃに縮減するのを防止する。
【0075】
またタンク層13がベース3と同一のフィルム状素材からなるため、粘着剤との相性がアンバランスとならず、この点でもベース3が過度に縮減傾向となることを防止し、また、水分吸湿性の低下を防止する。
【0076】
よってベース3が縮んでいないので、ユーザによる装着の際、取扱いが容易であり、また取外しの際ベース3に引張負荷がかかっても伸び過ぎが制約されるので、ハンドリングの容易性がある。
【0077】
<7.リメイクの容易性>
汎用かつら1は、例えばベース3又はヘア材5が消耗するまで定期的に第2粘着層15を交換することにより再利用可能となる。リメイクの際に第2粘着層15は除去される。
【0078】
第2粘着層15の除去は、例えば擦り取りの如き物理的な除去である。この除去において、第2粘着層15は、その構成面が上記のようなヘア材5の芯材作用や多層構造により、3次元的に変形したり縮減したりすることが防止される。
【0079】
よって第2粘着層15の除去が容易であり、リメイク可能であり、かつ、リメイクの容易性がある。
【0080】
<4.その他の効果>
タンク層13がベース3と同一のフィルム状素材からなり、かつ厚さがベース3と同一であるため、皮膚20に装着した際透過性が一層ある。よってベース3のてかりを防止し、かつらであることの見分けが困難となる効果が一層ある。この点につき、タンク層13がベース3と異素材であったり、厚さが過度に大であったりすると、透過性がアンバランスとなり、かつらであることの判別が容易となる難がある。
【0081】
本願発明は上記実施の形態に制限されない。例えば、第2剥離層18の設置部位(積層部位)は任意であり、第1粘着層11の前半部とすることもできる。またベース3及びタンク層13の厚さは上記実施の形態よりさらに極薄の例えば10μm程度とすることができる。また上記実施の形態で述べたヘア材5の直径の寸法も一例として理解すべきである。また適用部位は人体の皮膚であれば頭部に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本願発明による汎用かつら、かつらの装着方法及びカスタマイズかつらは、例えば頭部のかつらとして活用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 汎用かつら
2 カスタマイズかつら
3 ベース
4 中央部分
5 ヘア材
7 根部
9 紫外線(UV)硬化剤
11 第1粘着層
13 タンク層
15 第2粘着層
16 1次しわ
17 第1剥離層
18 第2剥離層
19 2次しわ
20 皮膚
21 角質層
22 自毛
23 供給ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベースに植え付けられたヘア材と、該ヘア材の根部側の面の全部に形成される第1粘着層と、タンク層と、皮膚に接着される第2粘着層と、第1剥離層と、第2剥離層とからなり、
上記ベースは極薄かつ透湿性のフィルム状素材からなり、
上記ヘア材は植付け基端となる根部を上記ベースの一面に密着させて設けるとともに、自由端部を他面側に現出させ、
上記第1粘着層は粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なる性質の粘着剤からなり、
上記第2粘着層は粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なる性質の粘着剤からなり、
上記タンク層は上記ベースと同一のフィルム状素材からなり、
上記第1粘着層と上記第2粘着層とを上記タンク層を介して隣り合わせに設け、
第1剥離層は上記第2粘着層の皮膚へ装着される側の全部の面に剥離可能に貼付され、
第2剥離層は上記第1粘着層と上記タンク層の間の一部の面に積層されるとともに上記第1粘着層に剥離可能に貼付され、
上記ベース、上記第1粘着層、上記第2剥離層、タンク層、第2粘着層及び上記第1剥離層の順に積層され実質的に2次元形状の多層構造体として形成されることを特徴とする汎用かつら。
【請求項2】
請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記第2剥離層が上記第1粘着層の後半部に形成されることを特徴とする汎用かつら。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の汎用かつらにおいて、上記ヘア材は自由端部を引張状態において上記ベースに植え付けられることを特徴とする汎用かつら。
【請求項4】
請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記第1粘着層の粘着力は上記第2粘着層の粘着力の約5倍程度であることを特徴とする汎用かつら。
【請求項5】
請求項1記載の汎用かつらにおいて、上記ヘア材は上記ベースにランダムに植え付けられることを特徴とする汎用かつら。
【請求項6】
第2剥離層が積層されている部分(以下、「積層部位」という)に対応する第1剥離層を剥して露出された第2粘着層を頭部の該当部位に貼付するステップと、
残余の第1剥離層を剥して上記積層部位以外の部分の第2粘着層を頭部に貼付するステップと、
上記積層部位に対応する第2粘着層に1次シワ付けをするステップと、
該1次シワ付けされた部分を隣接部分に接着するステップと、
第2剥離層を剥して第1粘着層の上記積層部位を露出するステップと、
上記第2粘着層の全部が頭部に貼付された状態で2次シワ付けをするステップと、
上記2次シワ付けされた状態のままで上記第1粘着層をタンク層の上に貼付するステップと、
上記2次シワ付けされた部分を根本付近から切除するステップとからなることを特徴とするかつらの装着方法。
【請求項7】
ベースと、該ベースに植え付けられたヘア材と、該ヘア材の根部側の面の全部に形成される第1粘着層と、タンク層と、皮膚に接着される第2粘着層と、第1剥離層と、第2剥離層とからなり、
上記ベースは極薄かつ透湿性のフィルム状素材からなり、
上記ヘア材は植付け基端となる根部を上記ベースの一面に密着させて設けるとともに、自由端部を他面側に現出させ、
上記第1粘着層は粘着力が比較的強くかつゲル化の程度が比較的大なる性質の粘着剤からなり、
上記第2粘着層は粘着力が比較的弱くかつゲル化の程度が比較的小なる性質の粘着剤からなり、
上記タンク層は上記ベースと同一のフィルム状素材からなり、
上記第1粘着層と上記第2粘着層とを上記タンク層を介して隣り合わせに設け、
第1剥離層は上記第2粘着層の皮膚へ装着される側の全部の面に剥離可能に貼付され、
第2剥離層は上記第1粘着層と上記タンク層の間の一部の面に積層されるとともに上記第1粘着層に剥離可能に貼付され、
上記ベース、上記第1粘着層、上記第2剥離層、タンク層、第2粘着層及び上記第1剥離層の順に積層され実質的に2次元形状の多層構造体として形成され、
上記タンク層に1次シワ付けにより1次シワが形成され、該1次シワが隣接部分に接着され、
上記第1粘着層に2次シワ付けにより2次シワが形成され、該2次シワが根本付近から切除されることを特徴とするカスタマイズかつら。
【請求項8】
請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記第2剥離層が上記第1粘着層の後半部に形成されることを特徴とするカスタマイズかつら。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のカスタマイズかつらにおいて、上記ヘア材は自由端部を引張状態において上記ベースに植え付けられることを特徴とするカスタマイズかつら。
【請求項10】
請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記第1粘着層の粘着力は上記第2粘着層の粘着力の約5倍程度であることを特徴とするカスタマイズかつら。
【請求項11】
請求項7記載のカスタマイズかつらにおいて、上記ヘア材は上記ベースにランダムに植え付けられることを特徴とするカスタマイズかつら。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−149112(P2011−149112A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9413(P2010−9413)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(592191896)株式会社プロピア (16)