説明

汎用エンジン

【課題】重く嵩張る容量の大きなバッテリなしでもエンジンをスタータにより始動できるとともに稼働時の負荷エネルギーにも対応できて小形化・軽量化を可能にする。
【解決手段】スタータ2と、スタータ2に接続された燃料電池5と、スタータ2と燃料電池5との間に接続された継電器4と、継電器4ON/OFF制御する制御回路7と、発電機3の出力回路8に接続された電圧検出回路10とを有し、発電機3の出力回路8に電圧が生じていないエンジン始動時に継電器4をON作動させて燃料電池5によりスタータを駆動し、エンジン1が始動して発電機3の出力回路8に電圧が生じたときに継電器4をOFF作動させて燃料電池5とスタータ2との接続を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電機、草刈機、農耕機、スノーモビルなどに幅広く用いられている汎用エンジン、殊に、バッテリレス式の汎用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用エンジンは、例えば、発電機、草刈機、農耕機、スノーモビルなどに幅広く用いられており、軽量化、康価化などを図る目的で、バッテリにより駆動するスタータを使用するものに代わって、所謂、リコイル型といわれる手動で始動するとともに、始動後はエンジンにより駆動する発電機により電力を得てエンジンの回転を維持するタイプのものが増加している。
【0003】
リコイル型の汎用エンジンはスタータ(セルモータ)を始動させるための容量の大きなバッテリを使用しないことから取り扱いが容易であるという利点を有しているが、反面、冬場における低温時には始動し難いという問題がある。
【0004】
そこで、例えば実開平4−42242号公報や特開平5−321798号公報、特開2005−30250号公報に提示されているように、主電源である発電機にコンデンサからなる蓄電手段やニッケルカドミウム電池などのバックアップ電源を備えたリコイル型エンジンが提示されている。
【0005】
ところが、前記公報に提示されているような従来のリコイル型エンジンにおいて、エンジン始動時や低回転時など発電機の出力が不足した際の電力を補うものであり、スタータを使用して容易に始動させるには、容量の大きなバッテリを使用しなければならず、エンジンシステムの大型化・重量増加を招き、ひいては搭載機の大型化・重量増加に繋がって、加速性能や燃費の悪化等の不都合を招いていた。
【0006】
そのため、特に小形化・軽量化の要請の強い小排気量の汎用エンジンにおいて、重く嵩張る容量の大きなバッテリを搭載しなくてもスタータによるエンジン始動に必要な電力を供給できるとともに通常運転時に生じる負荷エネルギーに対応できる手段の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−42242号公報
【特許文献2】特開平5−321798号公報
【特許文献3】特開2005−30250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、重く嵩張る容量の大きなバッテリなしでもエンジンをスタータにより始動できるとともに稼働時の電気的な負荷エネルギーにも対応できて小形化・軽量化を可能な汎用エンジンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、エンジン駆動中は必要とする電力を発電機で供給するバッテリーレス式の汎用エンジンであって、スタータと、前記スタータに接続された燃料電池と、前記スタータと燃料電池との間に接続された継電器と、前記発電機の出力回路に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路により検出された出力回路の電圧により継電器をON/OFF制御する制御回路とを有し、発電機の出力回路に電圧が生じていないエンジン始動時に前記継電器をON作動させて燃料電池によりスタータを駆動し、エンジンが始動して
発電機の出力回路に電圧が生じたときに前記継電器をOFF作動させて燃料電池とスタータとの接続を遮断することを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記燃料電池と発電機の出力回路との間に前記発電機の出力回路に接続された電圧検出回路と前記制御装置とによりON/OFF制御される第2の継電器を有する場合には、始動後のエンジン運転時における電気的な負荷による電力不足を補うこともできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、大型で重量のあるバッテリーを搭載しなくてもエンジン始動時に必要な電力を供給することができる小型化・軽量の汎用エンジンを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態を示す電気系統についてのブロック配置図。
【図2】図1の実施の形態についてのエンジン始動時における動作説明図。
【図3】本発明の異なる実施の形態を示す電気系統についてのブロック配置図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明における汎用エンジンの電気系統についてのブロック配置図を示すものであり、エンジン本体1はバッテリーレス式であり、エンジン1にはスタータ(セルモータ)2と発電機(ジェネレータ)3が付設されており、前記スタータ2には継電器(リレー)4を介して燃料電池5が接続されている。
【0015】
この燃料電池5は、例えばエンジン1のガソリンなどの燃料を用いて改質することにより取り出した水素(H2)の還元反応により発電しながら(酸素O2)を生成し、燃料電池内で空気を用いて水にする従来知られているものであり、殊に、エンジン1に用いる燃料を用いることにより、燃料電池5用の燃料を別途に用意することがなく、きわめて簡易に燃料電池を起動させることができる。また、前記発電機3は、従来周知のものであり整流器を有して直流電流を得られるものである。
【0016】
殊に、本実施の形態では、基本的に燃料電池5はエンジン1の始動時にスタータ2を稼働させるだけの電気容量を有するものであれば足り、例えば、6〜14V、10〜100mAの範囲内で、使用するエンジンの大きさに適合したものを選択して用いればよく、小型のものでよく、汎用エンジン全体の小型・軽量化を図れる。
【0017】
また、前記燃料電池5とエンジン1のイグニッションスイッチ6の始動端子61が接続されており、更に、イグニッションスイッチ6の始動側の出力端子62が前記継電器4に接続された制御回路7が接続されている。
【0018】
前記制御回路7は、イグニッションスイッチ6の運転を側の端子63,63を介して前記発電機3に接続されてエンジン1の点火などの負荷9に電力を供給する出力回路8に接続されている。
【0019】
さらに、前記制御回路7には前記出力回路8の電圧を検出するための電圧検出回路10が接続されている。
【0020】
次に、図2に示した動作説明図を参照して本実施の形態の動作について説明する。
【0021】
まず、エンジン1の始動前はイグニッションスイッチ6の始動スイッチおよび運転スイッチ(図示せず)がOFF状態であるとともに継電器4もOFF状態であることから、燃料電池5の電流はイグニッションスイッチ6の始動端子61と継電器4の入力側端子41とで停止状態にある。
【0022】
そして、操作者がイグニッションスイッチ6の始動スイッチをON作動させると、始動端子61から入力した燃料電池5から電流がイグニッションスイッチ6の始動側の出力端子62を介して制御回路7に制御電源を供給する。このとき、イグニッションスイッチ6の運転側の端子63,63間に接続される運転スイッチも同時にON状態となり、発電機3と負荷9とを接続する出力回路8も接続状態となるが、エンジン1が回転していないので発電が行われず出力回路8の電位はゼロである。
【0023】
従って、電圧検出回路10が出力回路8のゼロ電位を検出して検出信号を制御回路7に送信し、制御回路7が出力回路8のゼロ電位を確認して継電器4をON作動させることになり、燃料電池5によりセルモータ2が回転してエンジン1が始動する。
【0024】
エンジン1が始動すると発電機3が発電を開始して出力回路8を介して負荷9にエンジンの運転維持に必要な電力を供給するようになる。同時に出力回路8に接続されている電圧検出回路10により出力回路8を流れる電流の電圧が予め定めたエンジン1の運転に必要な電位を超えると、その検出信号を制御回路7に送信し、制御回路7が継電器4をOFF作動させることにより燃料電池5とスタータ2とを切断して燃料電池5によるスタータの駆動が停止される。
【0025】
同時に、エンジン1が回転すると操作者がイグニッションスイッチ6の始動スイッチをOFF作動させることにより、燃料電池5からの制御回路7への電流の供給も切断され、燃料電池5はきわめて短時間だけ使用することにより少ない消費電力により運用することができ、燃料電池5の寿命も長くなる。
【0026】
そして、エンジン1を停止させるには従来と同様に、イグニッションスイッチ6の運転スイッチをOFF作動させると、発電機3と出力回路8との接続が切断されて発電機3からの電流が負荷9に流れなくなるのでエンジン1が停止して始動前の状態に復帰する。
【0027】
以上、述べたように、本発明によりエンジンシステムについてバッテリーなしでもエンジンを始動できるようになり、小形化・軽量化を可能なものとした。
【0028】
図3は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、特に、前記燃料電池5と発電機3の出力回路8との間に第2の継電器11を有する点が異なり、第2の継電器11は発電機3の出力回路8に接続された電圧検出回路10と前記制御装置とによりON/OFF制御される。尚、他の部分の構成並びに始動時における動作に関しては、前記図1に示した実施の形態とほぼ同様であることから、これらの部分についての詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施の形態における第2の継電器11は出力回路8に接続された電圧検出回路10が予め定めた所定の電圧範囲にあるときにだけON作動する。即ち、前記第2の継電器11は、エンジン1が始動して発電機3から出力回路8に電力が供給されてエンジン1が運転されている状態で、負荷9に必要な出力回路8の電圧よりも所定量だけ低電圧であることを電圧検出回路10が検出したときにON作動して燃料電池5から出力回路8へ電流を供給して負荷9により低下した電圧を上昇させて始動後のエンジン運転時における負荷による電力不足を補い、前記電圧検出回路10が負荷9に必要な電圧であることを検出したときにOFF作動して燃料電池5からの供給が必要なくなったとき、或いは必要のないときには燃料電池5からの出力回路への電力の供給を停止して燃料電池5を必要な短期間だけ使用することにして長寿命かを図ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン、2 スタータ、3 発電機、4 継電器、5 燃料電池、6 イグニッションスイッチ、7 制御回路、8 出力回路、9 負荷、10 電圧検出回路、11 第2の継電器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動中は必要とする電力を発電機で供給するバッテリーレス式の汎用エンジンであって、スタータと、前記スタータに接続された燃料電池と、前記スタータと燃料電池との間に接続された継電器と、前記発電機の出力回路に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路により検出された出力回路の電圧により継電器をON/OFF制御する制御回路とを有し、発電機の出力回路に電圧が生じていないエンジン始動時に前記継電器をON作動させて燃料電池によりスタータを駆動し、エンジンが始動して発電機の出力回路に電圧が生じたときに前記継電器をOFF作動させて燃料電池とスタータとの接続を遮断することを特徴とする汎用エンジン。
【請求項2】
前記燃料電池と発電機の出力回路との間に前記発電機の出力回路に接続された電圧検出回路と前記制御装置とによりON/OFF制御される第2の継電器を有することを特徴とする請求項1記載の汎用エンジン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168946(P2010−168946A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10790(P2009−10790)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)