説明

汎用型装置内通信機器の防護装置

【課題】高さや幅の異なる汎用型装置に対して、その作業対称領域を容易に区画することができる上に、防護装置自体の脱着作業や移設作業も容易に行え、これにより、必要とする点検・補修・増設作業等を迅速かつ安全に行うことができる汎用型装置内通信機器の防護装置を提供すること。
【解決手段】通信機器3が上下多段に配列された汎用型装置1の筐体2に対して吊り下げられ、各段の通信機器の少なくとも一部を覆う防護シート6を備えた汎用型装置内通信機器の防護装置であり、防護シート6の巻き取りロール7を収容するケース本体8と、防護シート6を引き出し可能に巻き取る巻き取り機構71と、ケース本体8の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体を筐体2に吊り下げる吊り装置9とを備える。吊り装置9は、ケース本体の長さ方向に移動可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器装置等の汎用型装置内通信機器の点検・補修・増設作業等を行う場合に、点検・補修・増設作業等を行わない汎用型装置内の通信機器に誤って接触したことによる誤作動を防止する、汎用型装置内通信機器の防護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、汎用型装置100内に配列された各段の通信機器101〜105のうち、例えば3段目の通信機器103の点検・補修・増設作業等を行う場合に、点検・補修・増設作業等を行わない他の段の通信機器102等に誤って接触したことによる誤作動を防止するため、その通信機器101、102及び104、105の前面を図示しないビニールシート等で覆い、それをガムテープ110等で汎用型装置100内に張り付けていた。
【0003】
この方法では、汎用型装置100内にビニールシートを張り付けたり、ガムテープ110を除去する際に、通信機器のスイッチに接触、子線の引き抜き等の誤動作を生じる場合があった。また、点検・補修・増設作業のたびに、ビニールシートを張り付けたり、ガムテープ110を除去する必要があるため作業性の悪いものであった。
【0004】
特許文献1には、発電所、変電所、開閉所等に設置される制御盤の点検作業を行う場合に、その制御盤に隣接する他の制御盤に作業中誤って接触し、その隣接する制御盤の誤った作動を行うことを防止する制御盤防護装置の技術が開示されている。
【0005】
この制御盤防護装置は、制御盤の上部に設置した防護本体内に、防護シートを引き出し可能に巻き取った巻き取り機構を設け、防護シートの使用時には防護シートを引き出して制御盤の前面を覆う構成としたものである。
【特許文献1】特開平8−9521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1に記載の制御盤防護装置は、防護本体を制御盤の上面に設置して使用する構造であるため、規格化された大きさの制御盤に対しては適用できるものの、高さや幅が異なる他の制御盤に対してはその機能を充分に発揮させることはできず、その場合には結局、上述したようにビニールシートとガムテープとを用いた応急的な処置を採らざるを得ないという問題があった。
【0007】
さらに、この特許文献1に記載の技術では、汎用型装置内通信機器のように、点検・補修・増設作業等を必要とする通信機器が多段に配列されていて、そのうちのある一段部分について作業を行う場合に、作業に必要な一段部分のみを露出させ、残りの各段については被覆するといった機能(作業領域を区画する機能)を発揮させることはできない問題もあった。
【0008】
よって、本発明は、高さや幅の異なる汎用型装置に対して、その作業対称領域を容易に区画することができる上に、防護装置自体の脱着作業や移設作業も容易に行え、これにより、必要とする点検・補修・増設作業等を迅速かつ安全に行うことができる汎用型装置内通信機器の防護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、通信機器が上下多段に配列された汎用型装置の筐体に対して吊り下げられ、各段の通信機器の少なくとも一部を覆う防護シートを備えた汎用型装置内通信機器の防護装置であって、
防護シートの巻き取りロールを収容するケース本体と、防護シートを引き出し可能に巻き取る巻き取り機構と、ケース本体の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体を筐体に吊り下げる吊り装置とを備え、吊り装置は、ケース本体の長さ方向に移動可能な構成とした。
【0010】
本発明によれば、ケース本体を筐体に吊り下げる吊り装置を、ケース本体の長さ方向に移動可能に構成したので、防護装置の脱着作業や移設作業を容易に行うことができる。即ち、幅の異なる汎用型装置に対してはケース本体の長さ方向に対する吊り装置のスライド位置を調整するだけで対応可能となり、高さの異なる汎用型装置に対しては筐体に対する吊り装置の上下の装着位置を調整するだけで対応可能となる。さらに、防護シートを引き出して作業対象領域以外の通信機器をその防護シートで覆い、作業対象領域を区画することができる。これにより、必要とする点検・補修・増設作業等を迅速かつ安全に行うことができる。
【0011】
本発明は、通信機器が上下多段に配列された汎用型装置の筐体に対して吊り下げられ、各段の通信機器の少なくとも一部を覆う防護シートを備えた汎用型装置内通信機器の防護装置であって、
筐体に対して、上段に配列された通信機器よりも上方位置から吊り下げられる第1の防護装置と、その第1の防護装置よりも下方位置から吊り下げられる第2の防護装置とを備え、
第1の防護装置及び第2の防護装置のそれぞれが、防護シートの巻き取りロールを収容するケース本体と、防護シートを引き出し可能に巻き取る巻き取り機構と、ケース本体の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体を筐体に吊り下げる吊り装置とを備え、吊り装置は、ケース本体の長さ方向に移動可能な構成とした。
【0012】
本発明の防護装置によれば、上段に配列された通信機器よりも上方位置から吊り下げられる第1の防護装置と、その第1の防護装置よりも下方位置から吊り下げられる第2の防護装置とを備えているので、各防護装置の防護シートをそれぞれ引き出して、作業対象領域以外の通信機器を各防護シートでそれぞれ覆い、第1及び第2防護装置の間に位置する通信機器の領域のみを作業対象領域として区画することが可能になる。従って、第2防護装置の筐体に対する吊り下げ位置(上下位置)を調整する操作と、各防護シートの引き出し長さを調整する操作とを行うだけで、通信機器の配列されている各段について任意の段を作業領域として区画することが可能になる。
【0013】
本発明においては、汎用型装置の筐体に着脱自在に装着される本体部と、その本体部に設けられ、吊り装置に係合可能なフックとを有する支持具を更に備えることが望ましい。吊り装置としては、それ自体を筐体に対して装着あるいは取付自在に構成しても良いが、筐体への装着機能あるいは取付機能を別部材で構成することもできる。そうすれば、筐体を構成する素材や形状等に対応さた支持具を複数種類準備することが可能になる。例えば、筐体の素材が磁性金属である場合には支持具の本体部に磁石を設けた構成とし、非磁性金属の場合には粘着力を利用する構成としてワンタッチ取付タイプとすることができる。さらに、筐体が磁性金属や非磁性金属に限らず、吸盤構造とすることもできる。
【0014】
本発明において、前記防護シートは静電気による通信機器への影響を防止できる点で、静電防止ビニールシートにより形成されていることが望ましい。さらに、この防護シートは透明または半透明シートにより形成され、該シートの縁部分には着色部が施されている
ことが望ましい。防護シートを透明または半透明シートとすることで、この防護シートを通して筐体内の各段の通信機器を確認することができるからである。また、防護シートの縁部分に着色部を施すことで、作業者への警告線として機能させることができるからである。
【0015】
本発明においては、前記防護シートが不用意に巻き戻らないようにするために、その防護シートの巻き取り防止用のロック器具を更に備えていることが望ましい。これにより、防護シートとしての機能を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る汎用型装置内通信機器の防護装置によれば、高さや幅の異なる汎用型装置に対して、その作業対称領域を容易に区画することができる上に、防護装置自体の脱着作業も容易に行え、これにより、必要とする点検・補修・増設作業等を迅速かつ安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例に係る防護装置の使用状態を示す概略正面図である。図2は同実施例に係る防護装置の正面図であり、図3はその防護シートを巻き取った状態を示す図である。図4は同実施例に係る防護装置のケース本体と吊り装置を示す図であり、図5は吊り装置と巻き取り機構を示す概略説明図である。
【0018】
図1に示すように、汎用型装置1の筐体2の内部には、情報伝送の目的に応じた交換機等の通信機器3が設置されている。通信機器3は、この実施例では、上から1段目の通信機器31、2段目の通信機器32、今回作業箇所となる3段目の通信機器33、その下の4段目の通信機器34、最下段となる5段目の通信機器35の上下5段に配列されている。
【0019】
防護装置5は、このように通信機器3が上下多段に配列された汎用型装置1の筐体2に対して吊り下げられ、各段の通信機器31〜35の少なくとも一部を覆う防護シート6を備えている。但しこの実施例では、筐体2に対して、最上段に配列された通信機器31よりも上方位置から吊り下げられる第1の防護装置5Aと、その第1の防護装置5Aよりも下方位置から吊り下げられる第2の防護装置5Bとを備えている。
【0020】
そして、第1の防護装置5A及び第2の防護装置5Bのそれぞれが、防護シート6の巻き取りロール7(図5参照)を収容するケース本体8と、防護シート6を引き出し可能に巻き取る巻き取り機構71と、ケース本体8の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体8を筐体2に吊り下げる吊り装置9とを備えている。即ち、第1の防護装置5A及び第2の防護装置5Bはいわゆるロールカーテン構造となっている。
【0021】
ケース本体8は筐体2の幅よりも短く形成されていて、その内部81には巻き取りロール7が回転自在に収容されている。巻き取りロール7の巻き取り機構71には、ロールカーテンで採用されているような、ねじりコイルバネの弾発力を利用して、そのねじりコイルバネの付勢力の蓄積と開放復元とにより、防護シート6の引出伸張および巻取収納を行うことができ、かつ、防護シート6の引き出し長さを調整できるストッパ内蔵型の機構が採用されている。
【0022】
吊り装置9は、ケース本体8側に設けられた、長孔91a付きのL形の引っ掛け金具91と、筐体2側に装着される支持具92とを備えている。引っ掛け金具91は、図3及び図4に示すように、ケース本体8の上面に設けられた溝状のレール9cに沿ってその長さ
方向にスライド移動可能に構成されている。この引っ掛け金具91とケース本体8との間には、引っ掛け金具91のスライド位置を任意に調整可能にするためのロック解除ボタン91b付きのロック機構が設けられている。
【0023】
支持具92は、鉄などの金属製筐体2の左右のフレーム材あるいは左右の側板の内面2aに着脱自在に装着される本体部92aと、その本体部92aに設けられ、引っ掛け金具91の長孔91aに係合可能なフック92bとを有している(図6参照)。本体部92aには磁石が設けられていて、内面2aに着脱自在に装着することができる。なお、本体部92aは、粘着力を利用した構造、あるいは吸盤構造としてもよい。
【0024】
防護シート6は静電気による通信機器3への影響を防止できるように静電防止ビニールシートにより形成されている。例えば、図2に示すように、メッシュ状に編まれた導電性線状体6aをビニールシートで被覆したものなどが用いられている。この防護シート6は、防護シート6を通して筐体2内の各段の通信機器3を確認することができるように、透明または半透明に形成されている。さらに、この防護シート6の縁部分には、作業者への警告線として機能させるために、赤色あるいは黄色に着色した着色部61が施されている。
【0025】
防護シート6の下部にはアンダーバー62が設けられ、そのアンダーバー62には、防護シート6を引き出す際に利用するつまみ部63が設けられている。この防護シート6の両側であって、ケース本体8との間には、防護シート6が不用意に巻き戻らないようにするために、その防護シート6の巻き取り防止用のロック器具10が装着されている。このロック器具10としては、例えば書類を束ねて挟むクリップや洗濯挟みなどを使用しても良いし、専用のクリップを作成して用いてもよい。
【0026】
この実施例の防護装置によれば、ケース本体8を筐体2に吊り下げる吊り装置9を、ケース本体8の長さ方向に移動可能に構成したので、幅の異なる汎用型装置に対しては、ロック解除ボタン91bを押してケース本体8の長さ方向に対する吊り装置9のスライド位置を調整するだけで対応することができる。また、高さの異なる汎用型装置に対しては筐体2に対する支持具92の上下の装着位置を調整するだけで対応することができる。
【0027】
さらに、この実施例によれば、上段に配列された通信機器31よりも上方位置から吊り下げる第1の防護装置5Aと、その第1の防護装置5Aよりも下方位置から吊り下げる第2の防護装置5Bとを備えているので、図1に示すように、各防護装置の防護シート6をそれぞれ引き出して、今回の作業対象領域である通信機器33以外の通信機器を各防護シート6でそれぞれ覆い、第1の防護装置5Aと第2の防護装置5Bの間に位置する通信機器33の領域みを作業対象領域として区画することができる。
【0028】
従って、支持具92の筐体2への装着位置を変えて、第2の防護装置5Bの筐体2に対する吊り下げ位置(上下位置)を調整する操作と、各防護シート6の引き出し長さを調整する操作とを行うだけで、各段に配列されている通信機器31〜35について任意の段の通信機器のみを区画することが可能になる。
【0029】
なお、実施例においては、防護装置を二つ用いた例を示したが、一つ用いた場合でも、幅の異なる汎用型装置内通信機器の防護装置としての機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係る防護装置の使用状態を示す概略正面図である。
【図2】同実施例に係る防護装置の正面図である。
【図3】同実施例に係る防護装置の防護シートを巻き取った状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である
【図4】同実施例に係る防護装置のケース本体と吊り装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】同実施例に係る防護装置の吊り装置の概略構成図である。
【図6】同実施例に係る防護装置の支持具の概略構成図である。
【図7】従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 通信機器汎用型装置
2 筐体
2a 内面
3(31、32、33、34、35) 通信機器
5 防護装置
5A 第1の防護装置
5B 第2の防護装置
6 防護シート
62 アンダーバー
7 巻き取りロール
71 巻き取り機構
8 本体ケース
9 吊り装置
91 引っ掛け金具
92 支持具
10 ロック器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器が上下多段に配列された汎用型装置の筐体に対して吊り下げられ、前記各段の通信機器の少なくとも一部を覆う防護シートを備えた汎用型装置内通信機器の防護装置であって、
前記防護シートの巻き取りロールを収容するケース本体と、
前記防護シートを引き出し可能に巻き取る巻き取り機構と、
前記ケース本体の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体を前記筐体に吊り下げる吊り装置とを備え、
前記吊り装置は、ケース本体の長さ方向に相対移動可能に構成されていることを特徴とする、汎用型装置内通信機器の防護装置。
【請求項2】
通信機器が上下多段に配列された汎用型装置の筐体に対して吊り下げられ、前記各段の通信機器の少なくとも一部を覆う防護シートを備えた汎用型装置内通信機器の防護装置であって、
前記筐体に対して、前記上段に配列された通信機器よりも上方位置から吊り下げられる第1の防護装置と、その第1の防護装置よりも下方位置から吊り下げられる第2の防護装置とを備え、
前記第1及び第2の防護装置は、
前記防護シートの巻き取りロールを収容するケース本体と、
前記防護シートを引き出し可能に巻き取る巻き取り機構と、
前記ケース本体の両端側にそれぞれ設けられ、ケース本体を前記筐体に吊り下げる吊り装置とを備え、
前記吊り装置は、ケース本体の長さ方向に相対移動可能に構成されていることを特徴とする、汎用型装置内通信機器の防護装置。
【請求項3】
前記汎用型装置の筐体に着脱自在に装着される本体部と、その本体部に設けられ、前記吊り装置に係合可能なフックとを有する支持具を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の汎用型装置内通信機器の防護装置。
【請求項4】
前記防護シートは静電防止ビニールシートにより形成されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の汎用型装置内通信機器の防護装置。
【請求項5】
前記防護シートは透明または半透明シートにより形成され、該シートの縁部分には着色部が施されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の汎用型装置内通信機器の防護装置。
【請求項6】
前記防護シートの巻き取り防止用のロック器具を更に備えていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の汎用型装置内通信機器の防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−267474(P2007−267474A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87073(P2006−87073)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)