説明

汚染土壌の処理方法およびシステム

【課題】油で汚染された汚染土壌は、土地利用など産業上の要望から浄化が当然として望まれている。従来は、界面活性剤を汚染土壌と混合、撹拌する処理方法では、復帰工事が必要であり、また汚染土壌から油を分解、遊離させる場合には、油の分解時間が長時間化されていた。従って、これらの方法によらず汚染土壌から油を除去、またはその場から油の移動を効率的に行い工期を短期間化するための簡便な方法が望まれていた。
【解決手段】油による汚染土壌に、微細気泡を含む微細気泡水を通水することで、該汚染物である油を移動させ、汚染土壌を浄化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
汚染物により汚染された汚染土壌における汚染土壌から汚染物質を分離または分解する浄化に関し、浄化の際に、汚染物の移動により、汚染土壌の浄化をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染土壌における浄化を行う方法は、さまざまな技術が開示されている。
特許文献1には、油で汚染された土壌に、重量比で0.1〜0.4%の界面活性剤と、10%〜20%の洗浄水とを加えて、土壌の水分を低減させた状態で、土壌を一定時間撹拌し、土壌から油分を除去する方法が開示されている。
特許文献2には、環境汚染物質により汚染された汚染土壌中に、炭酸水を浸透させることにより、該汚染土壌中の環境汚染物質を遊離させ、除去する汚染土壌の浄化方法が開示されている。
汚染土壌の浄化においては、汚染土壌に含まれる汚染物を分解または除去することにより達成される。また、浄化においては、短期間で達成されることのが産業上望まれている。汚染物の分解および除去を効率良く達成することが肝要である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−759号公報
【特許文献2】WO00/02676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、汚染土壌を撹拌しなければ油分を除去できないため、その場の汚染土壌以外の土壌も大きく改質されてしまい、汚染土壌の処理後において復帰工事が必要である。他、撹拌により油分で汚染されていない土壌へも油が混入されてしまうため、十分に分解するため処理工期が長時間化してしまう。特許文献2の方法では、炭酸ガスを用いている。炭酸水中に汚染物質を溶出させることで汚染物物質を土壌から遊離させるが、溶出しない場合において汚染物質が移動し難く、汚染物の移動が効率的にできないため浄化期間が長工期化してしまう。
【0005】
このように、汚染土壌を効率的に浄化を行い、工期を短期間化するために、汚染物を分解し、汚染土壌からの汚染物の移動による除去を促進する簡便な方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべく取り組んだものである。
すなわち、第1の手段は、汚染物を含む汚染土壌に微細気泡水を通水し、汚染土壌に含む汚染物を移動させる汚染土壌の処理方法である。微細気泡を含む微細気泡水を汚染土壌に通水させることで、汚染物質が移動され、その場からの除去が可能となる。
【0007】
第2の手段は、汚染物を含む汚染土壌に微細気泡水を通水し、汚染土壌に含む汚染物を移動させ、汚染土壌から水と、汚染物とを揚水する汚染土壌の処理方法である。さらに揚水すれば汚染物質の除去の促進が図られる。
【0008】
第3の手段は、前記微細気泡水がオゾンを含む微細気泡水である汚染土壌のの処理方法である。
【0009】
第4の手段は、記汚染物が油である汚染土壌の処理方法。汚染物として油がもっとも移動が困難であって、本発明において適応可能である。
【0010】
第5の手段は、微細気泡水が注水される注水口と、該水を吐出する吐出口を有する注水管と、地中に配置され、石からなる注水層とであって、該注水管の吐出口が注水層内にあることを特徴とする微細気泡水用システムである。これらの手段、システムにより汚染土壌の浄化が図られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、汚染土壌中の汚染物の移動性が顕著に向上されるため、汚染土壌から汚染物の除去が効率良く達成でき、さらには汚染物を分解することも可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を下記に記すが、本発明はこの態様に限るものではない。本発明は、汚染土壌へオゾンを含む微細気泡水を通水し、汚染土壌中の汚染物質を移動する。図1は、実施例にかかる図であるが、一例として態様を示す。
汚染土壌は、汚染物をなんらかの理由により汚染物を含んだ土壌であり、地下の汚染領域を示す。従って、本発明の適用は、地下の不飽和帯、飽和帯のいづれの個所、または両方であっても可能である。
【0013】
汚染物としては、油や有機物塩素化合物などが挙げられる。例えば、油または油相当の油分としては、ガソリン、軽油、重油、灯油、原油、機械油、潤滑油等の石油系炭化水素等がある。これらのいづれか1種以上の単成分、または複成分が土壌、地下水などを汚染している汚染物となる。
このような油は、石油の貯蔵所、石油の精製所、ガソリンスタンド跡地などでは、貯蔵施設の腐食や事故による油の漏洩などが主原因となり、工場移転、土地の転売、再開発などにより顕在化してきている。
また有機塩素化合物としては、例えばベンゼン、p−キシレン、フェノール、ナフタレン、PCE、TCE、cis−DCEなどが挙げられる。
本発明は、汚染土壌に油、有機塩素化合物のいづれかが含まれている場合であって有効である。特には油が汚染物である場合には効果が顕著である。油は、土壌の粒子間に吸着し、移動が困難な物質であり、より浄化が困難な物質であるため、本発明の適用により顕著な効果を得る。
【0014】
本発明では微細気泡に空気によっても良いが、さらには、オゾン(O)を使用しても良い。オゾンの供給手段としては、特に制限はなく、市販のオゾンガス発生装置を用いれば良い。オゾン発生器におけるオゾン発生方式についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば紫外線、電気分解、低温放電などが挙げられる。
【0015】
前記オゾンガスの使用は、水中にて微細気泡(マイクロバブルとも言う)の形態で用いられることが好ましい。このようなマイクロバブルによれば、気泡表面の界面総面積が大きくなり、汚染物との接触確立が各段に増加し、オゾンガスを含むマイクロバブルと汚染物とが反応しやすくなる。また、気液界面が大きくなり、オゾン溶解性が向上する。さらに、マイクロバブルは浮上速度が遅く、吸着した油を離しにくいため汚染物の土壌への再吸着を抑制する。
【0016】
前記オゾンのマイクロバルの直径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下が好ましく、10〜50μmがより好ましい。前記直径が100μmを超えると、オゾン自体の自己分解が早まること、浮上速度が早くなり、気泡に吸着した油を離しやすくなるためである。
【0017】
なお、前記マイクロバブルの発生方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば加圧溶解法、超音波法、圧壊法、乱流法、電気分解法などが挙げられ、これらの中でも、加圧溶解法が特に好ましい。市販の発生装置において適用可能である。
【0018】
このようにオゾン発生装置により得たオゾンガスと、マイクロバブルを発生する装置とを連結すれば、オゾンが気泡のガス成分となりオゾンを含む微細気泡が発生する。微細気泡の発生装置で媒体として水を用いれば、オゾンを含む微細気泡水となる。オゾンは、微細気泡に含まれるが、水にも若干溶解する。微細気泡のみならず、水によっても浄化作用を可能としている。水量等はポンプの吐出圧、弁の開閉により制御可能である。なお、水は、水道水、工業用水で良く、水の代わりに液体として流動性があって、中性の液を用いても良い。
【0019】
オゾンを含む微細気泡水を地下へ注水際には、注水管を用いて行う。注水管は、地表以下の個所においてオゾンを含む微細気泡水が深さ方向で均等な量が吐出できるように複数のスリット(または孔状)状の吐出口が配設されている。この注水管により地下に水平方向にオゾンを含む微細気泡水が吐出される。もっとも吐出圧は低いため、注水管の周辺の土壌または砂等が粉砕されるような大きな応力的な影響はない。吐出量は、土壌の状態、汚染物の量、位置、処理時間の制限等により設定される。地下水レベル等も考慮しなければならない。
【0020】
注水管の設置は、汚染領域の近傍となる。注水管は、砕石などにより形成した注水層の中に埋設するのが好ましい。砕石によって形成されているため注水管から吐出されたオゾンを含む微細気泡水がさらに均等に分散され地下に通水が可能となる。また注水管の周辺が砕石と注水管の静止位置も安定する。気泡により新たな空隙の形成、オゾンを含む微細気泡水の偏流を防止できるためである。注水管の位置は、注水層の中心部周辺であることが望ましい。
【0021】
注水層は、土壌をトレンチ堀、またはオーガ等の重機により掘削し、石または砕石を充填すれば形成される。砕石の大きさは、注入管のスリットの間隔、または孔径より最大径が長距離である方が好ましい。砕石の最大径である大きさは、浄化条件によって適宜設定すれば良く、注水層内、または各注水層間での砕石の大きさは、必ずしも同等である必要はなく、汚染領域の体積や、自然条件、浄化条件等の浄化施行の条件によって適宜設定すれば良い。汚染領域の土質が砂層である場合は、注水管から吐出されるオゾンを含む微細気泡水の分散性の向上をはかるため7号以上の大きさであることが望ましい。なお、形状は、砕石のように形状がそれぞれの石同志で異なるものが通水性と施工の簡便さから好ましい。
【0022】
注水管によって汚染土壌に通水されたオゾンを含む微細気泡水は、注水層を通過し、土壌の粒子間に流入し、汚染物に到達すると、土壌粒子に吸着している汚染物を土壌粒子から剥離するか、または(および)汚染物をオゾンの酸化作用により分解する。この際、汚染物が油であると、汚染物の移動がさらに促進され速く移動することがわかった。この理由は明らかではないが、オゾンにより油の分子構造が切断され、分子構造が変化したため界面活性剤のような効果をもたらす物質が一部に生成または化合されるためと推測される。このように分解された油の一部は、オゾンを含む微細気泡水と共に他の汚染物である油と反応または接触し、土壌粒子からの油の剥離を促進し、流入された水とにより移動を高速化したものと考えられる。
【0023】
オゾンを含む微細気泡水を汚染土壌に通水することで移動した汚染物と汚染物の分解物等を含む汚染水は、揚水管を通って、地上に揚水される。揚水管は、注水管と同様に地下にて複数のスリットを有しており、ポンプ等により吸引、揚水を可能とする構造となっている。
揚水管の位置は、注入管からの通水の下流側となる。汚染土壌の汚染物質の分布や、土地条件によって設定される。揚水量は、注入量とほぼ同じ程度とすると、揚水後の後処理の設備の大きさ、能力のバランスが取れる。また地下水のレベルの変動させ、汚染物の移動を促進することも可能である。
【0024】
揚水された汚染水は、地上においてさまざまな処理法が適用可能である。一例として、オゾンガス注入による汚染物の分解や、活性炭などの捕集剤による汚染物の吸着除去、他の化学薬品の添加による分解、焼却処理、または運搬など、処理の目的や条件に応じて適宜実施可能である。
【0025】
また、揚水された汚染水は、後処理によって油分を分離、または分解を施した浄水を得れば、前述のマイクロバブル発生装置に再び水として利用可能であり、水処理の負担の軽減となる。再び水として用いる場合は、オゾンによって油等は分解されるので、水中に多少の油(汚染物)が含まれても使用可能である。
【0026】
オゾンガスを用いるため、環境基準を満たすように廃オゾンガス処理装置が必要となる場合もあり、上記の処理にあたっては、排気ガスの浄化処理装置を具備することが望ましい。
【0027】
上記のように、本発明により、汚染土壌中の汚染物の移動性が顕著に高くなり、汚染物の処理方法の選択肢が増大され、さまざまな工事条件であって困難であった場合においても浄化処理が可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
図1に示すような試験装置により擬似的に汚染領域を設定し実施した。なお、図1は、擬似的な汚染領域のを断面で示している。
はじめに、寸法が幅31cm×高さ23cm×奥行き17cm(0.31m×0.23m×0.17m)であって、側面、底面とも透明板で製作した槽を用意した。この槽は、上方が開放されおり、大気圧下で行える。槽2を水平面に設置し、槽2内に、オゾンを含む微細気泡水の注入管31、汚染領域部および揚水管51を配置した。注水管31は、オゾンを含む微細気泡水を供給するための装置と連接されている。注水管31は、所定の領域でオゾンを含む微細気泡水を深さ方向で均等に吐出できるようなスリットが形成されている。
【0030】
注入管31の周囲には、オゾンを含む微細気泡水を注入するための注入方向30により注入管31内をオゾンを含む微細気泡水を流入し、スリットより吐出された該オゾンを含む微細気泡水を分散して汚染領域に流入するための注水層32がある。注水層32は、断面が幅3cm×高さ20cmで槽奥行き方向に渡って壁状に設置してある。注水層32は、砕石7号を充填し形成されている。
【0031】
汚染領域として、砂層4に汚染物6として軽油を100mLの量で汚染領域の底周辺に堆積するように注入してある。砂層4は、川砂を充填してあり、槽の幅方向で28cm×高さ20cm(槽外側基準)にて層の奥行きに渡って充填され形成させれている。
汚染領域では、注入管31に対向する位置に水を排水する揚水管51がある。揚水管は、深さ方向において均等な量にて揚水できるように汚染領域において等間隔のスリット(孔)があり揚水管51と連接したポンプ(図示しない)により、槽から揚水方向50にて揚水を可能としている。
【0032】
この実験槽にて、オゾン発生装置により得たオゾンガスをマイクロバブルを発生装置に取り入れ、得られたオゾンを含む微細気泡水を150ml/minの流量を注入管を等して槽内の汚染領域に注入した。この時、槽内の水位レベル7は、底から18cmの高さとした。汚染領域のほとんどが水に満ちている。揚水も注入流量と同様として水位を一定に保っている。通水時間は、5時間とした。
揚水管により得られた汚染水を赤外線吸収スペクトル分析装置にて測定し、油の濃度値を得た。
【0033】
結果、表1に示すように、油の回収量は、20.62g、油回収率は24.3%であった。オゾンを含む微細気泡水を通水することで汚染物質の移動量が多いため回収量が多いことがわかった。
すなわち、移動した汚染物質の量も多く、汚染物質の移動効率が顕著に高いことがわかり、有効な手段であると言える。特に油においても有効である。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、オゾンを空気とした以外は、同様の微細気泡水を用いて、同様に実施した。すなわち、実施例1のオゾン発生装置を使用しないで、コンプレッサーを用いて、空気圧を調整しながら空気を微細気泡発生装置に連結した。
【0035】
結果、表1に示すように、油の回収量は、12.18g、油回収率は14.3%であった。空気を含む微細気泡水を通水することで汚染物質の移動量が多いため回収量が多いことがわかった。
すなわち、移動した汚染物質の量も多く、汚染物質の移動効率が高いことがわかり、有効な手段であると言える。特に油においても有効である。
【0036】
【表1】





【0037】
(比較例)
実施例のオゾンを含む微細気泡水をイオン交換水とした以外は、同様に実施した。 結果、油の回収量は、0.24g、油回収率は0.28%であった。イオン交換水では、汚染物質が移動量が少ないことがわかった。すなわち、水のみでは、汚染物質はほとんど移動しない、分解し得ないと言える。
【0038】
表1には、比較例の油回収率から回収性能を1と基準化して、実施例1および2の場合における回収性能を示した。それぞれ、回収性能は、実施例1で86.2(倍)、実施例2で51.1(倍)であった。
【0039】
実施例1、2と比較例により、汚染領域における地下の汚染物質の移動は、空気を用いた微細気泡水で可能となり、オゾンガスを用いたオゾンを含む微細気泡水を通水することにより顕著に大きくなる。これは、汚染物質の油の酸化され、有機酸の状態になるため界面活性剤のような効果が発生することと、水溶性を向上させることにより土壌粒子間に吸着した油分を剥離し、移動可能としたと考察される。
また、実施例1,2との比較により、空気よりオゾンガスを用いる方が顕著に汚染物質の移動を促しことがわかり、土壌汚染の浄化期間をさらに顕著に短期間化可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施を説明するための試験装置
【符号の説明】
【0041】
1;実験装置
2;槽(本体)
30;オゾンを含む微細気泡水の注入方向
31;注入管
32;注水層
33;注水方向
4;砂層
50;揚水方向
51;揚水管
6:汚染物(軽油)
7;水位レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物を含む汚染土壌に微細気泡水を通水し、該汚染物を移動させる汚染土壌の処理方法。
【請求項2】
汚染物を含む汚染土壌に微細気泡水を通水し、該汚染物を移動させ、汚染土壌から水と、汚染物とを揚水する汚染土壌の処理方法。
【請求項3】
前記微細気泡水がオゾンを含む微細気泡水である、請求項1または2に記載の汚染土壌の処理方法。
【請求項4】
前記汚染物が油である、請求項1乃至3に記載の汚染土壌の処理方法。
【請求項5】
微細気泡水が注水される注水口と、該水を吐出する吐出口を有する注水管と、地中に配置され、石からなる注水層とであって、該注水管の吐出口が注水層内にあることを特徴とする微細気泡水用システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−272686(P2008−272686A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120169(P2007−120169)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】